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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1316616 |
審判番号 | 不服2015-20461 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-16 |
確定日 | 2016-08-01 |
事件の表示 | 特願2012- 14539「管理装置、管理装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101584、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年1月26日(優先権主張、2011年11月7日、米国)の出願であって、平成27年10月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月16日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。 第2 平成27年11月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 (1)請求項1について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「複数台のユーザ端末装置によって複数のコンテンツが要求されている場合、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を管理する管理手段と、 前記複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、前記管理手段が前記複数のコンテンツのそれぞれについて管理している台数を用いて決定する決定手段と、 前記複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツについて前記決定手段が決定した台数分のコンテンツサーバに該コンテンツをインストールすると共に、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置に対し、該コンテンツを提供するコンテンツサーバへのアクセスを許可する制御手段と を備えることを特徴とする管理装置。」から、 「複数台のユーザ端末装置によって複数のコンテンツが要求されている場合、該複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を管理する管理手段と、 特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数及び該特定のコンテンツ以外の他のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を用いて決定する決定手段と、 前記特定のコンテンツについて前記決定手段が決定した台数分のコンテンツサーバに該特定のコンテンツをインストールすると共に、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置に対し、該特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバへのアクセスを許可する制御手段と を備えることを特徴とする管理装置。」(下線は補正箇所を示す。)と変更する補正事項(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。 (2)請求項6について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項6を、 「管理装置の制御方法であって、 前記管理装置の管理手段が、複数台のユーザ端末装置によって複数のコンテンツが要求されている場合、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を管理する管理工程と、 前記管理装置の決定手段が、前記複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、前記管理手段が前記複数のコンテンツのそれぞれについて管理している台数を用いて決定する決定工程と、 前記管理装置の制御手段が、前記複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツについて前記決定手段が決定した台数分のコンテンツサーバに該コンテンツをインストールすると共に、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置に対し、該コンテンツを提供するコンテンツサーバへのアクセスを許可する制御工程と を備えることを特徴とする管理装置の制御方法。」から、 「管理装置の制御方法であって、 前記管理装置の管理手段が、複数台のユーザ端末装置によって複数のコンテンツが要求されている場合、該複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を管理する管理工程と、 前記管理装置の決定手段が、特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数及び該特定のコンテンツ以外の他のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を用いて決定する決定工程と、 前記管理装置の制御手段が、前記特定のコンテンツについて前記決定手段が決定した台数分のコンテンツサーバに該特定のコンテンツをインストールすると共に、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置に対し、該特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバへのアクセスを許可する制御工程と を備えることを特徴とする管理装置の制御方法。」(下線は補正箇所を示す。)と変更する補正事項(以下、「補正事項2」という。)を含んでいる。 2.補正の適否 (1)補正事項1について 補正事項1の「複数台のユーザ端末装置によって複数のコンテンツが要求されている場合、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を管理する管理手段」を「複数台のユーザ端末装置によって複数のコンテンツが要求されている場合、該複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を管理する管理手段」とし、「前記複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、前記管理手段が前記複数のコンテンツのそれぞれについて管理している台数を用いて決定する決定手段」を「特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数及び該特定のコンテンツ以外の他のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を用いて決定する決定手段」とし、「複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツについて前記決定手段が決定した台数分のコンテンツサーバに該コンテンツをインストールすると共に、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置に対し、該コンテンツを提供するコンテンツサーバへのアクセスを許可する制御手段」を「特定のコンテンツについて前記決定手段が決定した台数分のコンテンツサーバに該特定のコンテンツをインストールすると共に、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置に対し、該特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバへのアクセスを許可する制御手段」とする補正は、それぞれ「管理手段」、「決定手段」、「制御手段」を限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 刊行物の記載事項・引用発明 原査定の拒絶の理由で引用した特開2002-259354号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は、当審において注目する部分を示す。) 「【0011】さらに本発明では、少なくとも1以上のコンテンツを格納する少なくとも1台以上のファイルサーバと、クライアントからのコンテンツ配信要求に応じて、そのコンテンツを格納するファイルサーバにアクセスし、コンテンツ配信要求により要求されたコンテンツを読み出して、外部ネットワークを介してクライアントに配信する少なくとも2台以上のウェブサーバと、各ファイルサーバと各ウェブサーバとを接続するネットワークを備えたネットワークシステムにおけるコンテンツ配信方法であって、任意のコンテンツに対するコンテンツ配信要求の数に応じて、その任意のコンテンツを配信するウェブサーバの台数を増減することを特徴とするコンテンツ配信方法により、クライアントから要求されたコンテンツを配信する。」 「【0018】CWS203?210は、ネットワーク214に接続されたファイルサーバ211?213が保持する何れのコンテンツでも配信可能なように設定される。これには、それぞれのCWS203?210がコンテンツを配信する際に、そのコピーをファイルサーバから取得して保持する方法と、それらコンテンツの保持はせず、配信の際にファイルサーバ211?213へアクセスを行い、ファイルサーバ211?213からコンテンツを取得しインターネット121に送出する方法が考えられる。 【0019】配信するコンテンツのコピーを各CWS203?210が保持する方法の実施例としては、UNIXにおけるrsyncのようなディレクトリ同期ツールを用いて、ファイルサーバ211?213のコンテンツ内容が更新された際等にそのコンテンツを配信するCWSに適時コピーする方法が考えられる。」 「【0024】負荷分散装置201は、コンテンツに対するリクエストを受信すると、そのコンテンツを配信するように設定されたCWS203?210の中からこのリクエストに対する処理を行わせるCWSを選択し、選択したCWSにそのリクエストを転送する。 【0025】また、負荷分散装置201は各CWS203?210の負荷の状態をモニタリングする。図4は、負荷分散装置がある1台のCWS401の負荷をモニタリングする手法の1つを示している。負荷分散装置201は、CWS401に転送したリクエストが処理されるのに要する時間を計測するため、インターネット121からCWS401へ向かうリクエストパケット411が負荷分散装置201を通過する時刻t1と、リクエストパケット411の処理を行ったCWS401からインターネット121へ向かう、リクエストパケット411に対する応答パケット412が負荷分散装置201を通過する時刻t2の差である(t2-t1)をCWS401のレスポンスタイムとして記録する。 【0026】この他にもCWS401の負荷状況を計測する手段として、ある一定時間内におけるCWS401へのリクエスト数をカウントするものや、CWS401のCPU等の資源使用率を直接CWS401に問い合わせ収集するもの、CWS401がインターネット121へ向けて送出するトラフィックを計測するもの、等が考えられる。 【0027】このように、図2に示す負荷分散装置201はクライアントから受信したリクエストを処理する、つまりクライアントから要求されたコンテンツを配信するCWSが複数存在する場合はそれらCWSの間で負荷分散を行い、また各CWSについてその負荷を計測する。 【0028】コントロールサーバ202は各CWS203?210と、それらが配信するコンテンツの対応関係を管理する。図2の例では、ファイルサーバ211が保持するA社のコンテンツとそのコンテンツを配信するCWSの対応関係を管理し、同様にB社とC社のコンテンツについてもCWSとの対応関係の管理を行う。 【0029】またコントロールサーバ202は、各コンテンツ種別ごとに負荷の状況を調べ、そのコンテンツ種別のコンテンツの配信を行うCWSを制御する。ここでいうコンテンツ種別とは、例えば図2の例ではA社が本システムによる配信サービスを要求するコンテンツを「A社」というコンテンツ種別で表現するように、システム管理者がシステムの配信するコンテンツを何らかの意味を持つまとまりに集約したものを指す。コントロールサーバ202は、あるコンテンツ種別のコンテンツの配信を行うCWSの負荷状態を負荷分散装置201に問合せ、負荷分散装置からの回答をもとにそのコンテンツ種別のコンテンツの配信を行うCWSの台数の増減を決定する。そしてこの決定に基づきコントロールサーバ202は、コンテンツに付与されたグローバルアドレスとCWSとの対応関係の変更を負荷分散装置201に指示する。 【0030】各コンテンツ種別に対するリクエスト状況をコントロールサーバ202が監視し、CWS203?210の負荷の状態を負荷分散装置201が監視し、コントロールサーバ202からの指示により、あるコンテンツ種別を配信するCWSの台数をダイナミックに変更することで、システムがそれぞれのコンテンツ種別を配信する能力を、状況に応じて動的に変化させることが出来る。」 「【0047】次に本実施例のシステムにおいて、コントロールサーバ202が、クライアントからの各コンテンツに対する配信要求の度合いに応じて、各コンテンツを配信するCWSの数を増減する処理について説明する。 【0048】コントロールサーバ202は、図9に示すコンテンツ管理テーブル93を用いて各コンテンツを配信する際のサービス・クオリティを管理する。コンテンツ管理テーブル93には、コンテンツ種別90、レスポンス設定値91、割当てCWS数92が設定される。 【0049】コンテンツ種別90はCWSが配信するコンテンツのまとまりを識別するための情報であり、図8に示すコンテンツ配信テーブル83と同様に図9ではコンテンツの配信を依頼した企業名としてA社、B社、C社そしてD社という情報が格納されている。 【0050】レスポンス設定値91には、各コンテンツ種別に対するレスポンスタイムの上限値94と下限値95が設定される。コントロールサーバ202は、これらの設定値と負荷分散装置201の計測したレスポンスタイムを比較し、あるコンテンツを配信するCWSのレスポンスタイムが設定された上限値94を上回れば、そのコンテンツを表示するCWSを増やすように、下限値95を下回ればそのコンテンツを配信するCWSを減らすようにシステムを制御する。 【0051】割当CWS数92には、各コンテンツ種別90に対し割り当てを行うCWSの最大96と最小97の値を設定する。各コンテンツ種別90に対し、そのコンテンツを配信するCWSを1台は必ず存在させるため、割当CWS数の最小値は1以上の数値とし、最大値は、割当CWS数の最小値が1である場合は、(システムに接続されているCWSの総数)-(コンテンツの種類-1)で求められる数値以下とする。このように、事前に書くコンテンツ種別に対して割当てるCWSの台数を決定することで、あるコンテンツ種別がCWSを独占する状況や、あるコンテンツ種別に対しCWSが割当てられないという状況を回避することができる。 【0052】以下に、コントロールサーバがコンテンツ配信テーブル83とコンテンツ管理テーブル93を用いて、各コンテンツ種別80に割当てられたCWSの変更を行う処理について図10を用いて説明する。図10は、この負荷分散処理時に負荷分散装置201、コントロールサーバ202及びCWS203?210において行われる処理のフロー図である。 【0053】まず、コントロールサーバ202は負荷分散装置201に各CWS203?210のレスポンスタイム51を定期的に問合せる(ステップ1001)。この際、システムに組み込まれている全てのCWS203?210についてレスポンスタイム51を要求する方法や、ある特定のコンテンツ種別を配信しているCWSのみを対象にレスポンスタイム51を要求する方法等いくつかの問合せ方があるが、何れの方法においてもコントロールサーバは任意のCWSを選択し、それのレスポンスタイムを負荷分散装置201に問い合わせることが可能である。 【0054】この問い合わせを受けた負荷分散装置201は、指定されたCWSのレスポンスタイム51をコントロールサーバ202に回答する(ステップ1002)。負荷分散装置201のレスポンスタイム管理テーブル52には、過去3回分のレスポンスタイムの履歴と、その平均値である3回平均511が格納されているが、これらのいずれをコントロールサーバ202に返送するかは、コントロールサーバ202からのレスポンスタイムの問合せ方により異なる。最も単純なのは、指定されたCWSの3回平均511の値をコントロールサーバ202が要求する場合であるが、その他にもコントロールサーバ202が、過去3回分のレスポンスタイムの履歴から負荷の変動の傾向を加味したレスポンスタイムを要求する場合もある。この時、負荷分散装置201は一回前512、二回前513、三回前514のレスポンスタイム値に重み付け(最近のものほど大きい等)をし、それら重み付けした値の平均値を返送する等の場合も考えられる。 【0055】コントロールサーバ202はこの回答によって得られたCWSのレスポンスタイムの値からそれぞれのCWSの負荷状態を認識する。そしてコントロールサーバ202は、コンテンツ管理テーブル93のレスポンス設定値91との比較を行い、コンテンツに対するCWSの割当ての変更を決定する(ステップ1003)。この場合において最も単純な方法は、各CWSについて負荷分散装置201から取得したレスポンスタイムとレスポンス設定値91の比較を行う方法である。 【0056】例えば、CWS1にかかる負荷が、設定したレスポンスタイムの範囲内に収まっているか否かは、以下の方法で検出する。まず、図8のコンテンツ配信テーブル83のCWS割当て状況82を参照し、CWS1がどのコンテンツ種別80を配信しているか参照する。図8の例の場合、CWS1はC社のコンテンツを表示していることがわかる。次に、負荷分散装置から取得したレスポンスタイムとC社のコンテンツに対し設定されたレスポンス設定値とを比較することで、C社のコンテンツを配信するCWSを増減するか否かを決定する。」 上記下線部及び関連する記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「少なくとも2台以上のウェブサーバ(CWS)と、各ファイルサーバと各ウェブサーバ(CWS)とを接続するネットワークを備えたネットワークシステムにおいて、 負荷分散装置は、コンテンツに対するクライアントからのリクエストを受信すると、そのコンテンツを配信するように設定されたCWSの中からこのリクエストに対する処理を行わせるCWSを選択し、選択したCWSにそのリクエストを転送し、CWSはクライアントにコンテンツを配信する際に、ファイルサーバへアクセスを行い、ファイルサーバからコンテンツを取得してインターネットに送出するものであり、 コントロールサーバは各CWSと、それらが配信するコンテンツの対応関係を管理、例えば、ファイルサーバが保持するA社のコンテンツとそのコンテンツを配信するCWSの対応関係を管理し、同様にB社とC社のコンテンツについてもCWSとの対応関係の管理を行うものであり、 コントロールサーバのコンテンツ管理テーブルには、コンテンツ種別、レスポンス設定値、割当てCWS数が設定され、コンテンツ種別はウェブサーバが配信するコンテンツのまとまりを識別するための情報であり、コンテンツの配信を依頼した企業名としてA社、B社、C社そしてD社という情報が格納され、レスポンス設定値には、各コンテンツ種別に対するレスポンスタイムの上限値と下限値が設定され、 コントロールサーバは、負荷分散装置に各CWSのレスポンスタイム51を定期的に問合せ、上記レスポンス設定値と負荷分散装置の計測したレスポンスタイムを比較し、あるコンテンツを配信するCWSのレスポンスタイムが設定された上限値を上回れば、そのコンテンツを表示するCWSを増やすように、下限値を下回ればそのコンテンツを配信するCWSを減らすようにシステムを制御、例えば、CWS1にかかる負荷が、設定したレスポンスタイムの範囲内に収まっているか否かは、コンテンツ配信テーブル83のCWS割当て状況を参照し、CWS1がどのコンテンツ種別80を配信しているか参照し、CWS1はC社のコンテンツを表示していることがわかり、負荷分散装置から取得したレスポンスタイムとC社のコンテンツに対し設定されたレスポンス設定値とを比較することで、C社のコンテンツを配信するCWSを増減するか否かを決定するコントロールサーバ。」 イ 対比 補正発明1と引用発明を対比する。 ・引用発明の「ウェブサーバ(CWS)」は、クライアントにコンテンツを配信するから、補正発明1の「特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバ」に相当する。 ・引用発明の「コントロールサーバ」は、「負荷分散装置に各CWSのレスポンスタイムを定期的に問合せ、上記レスポンス設定値と負荷分散装置の計測したレスポンスタイムを比較し、あるコンテンツを配信するCWSのレスポンスタイムが設定された上限値を上回れば、そのコンテンツを表示するCWSを増やすように、下限値を下回ればそのコンテンツを配信するCWSを減らすようにシステムを制御、例えば、CWS1にかかる負荷が、設定したレスポンスタイムの範囲内に収まっているか否かは、コンテンツ配信テーブルのCWS割当て状況を参照し、CWS1がどのコンテンツ種別を配信しているか参照し、CWS1はC社のコンテンツを表示していることがわかり、負荷分散装置から取得したレスポンスタイムとC社のコンテンツに対し設定されたレスポンス設定値とを比較することで、C社のコンテンツを配信するCWSを増減するか否かを決定する」から、補正発明1の「特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数及び該特定のコンテンツ以外の他のコンテンツの要求しているユーザ端末装置の台数を用いて決定する決定手段」と「特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を決定する決定手段」である点では共通するといえる。 また、引用発明の「コントロールサーバ」は、「管理装置」といい得るものである。 そうすると、両者は、次の点で一致する。 「特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を決定する決定手段を備えることを特徴とする管理装置。」 他方、補正発明1と引用発明は次の点で相違する。 <相違点1> 補正発明1は、「複数台のユーザ端末装置によって複数のコンテンツが要求されている場合、該複数のコンテンツのそれぞれについて、該コンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数を管理する管理手段」を備えているのに対し、引用発明は、そのような管理手段を備えていない点。 <相違点2> 特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を決定する決定手段は、補正発明1では、「特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数及び該特定のコンテンツ以外の他のコンテンツの要求しているユーザ端末装置の台数を用いて決定する」のに対し、引用発明は、そのようなものではない点。 <相違点3> 補正発明1は、「特定のコンテンツについて前記決定手段が決定した台数分のコンテンツサーバに該特定のコンテンツをインストールすると共に、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末に対し、該特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバへのアクセスを許可する制御手段」を備えているのに対し、引用発明は、そのような制御手段を備えていない点。 ウ 判断 上記相違点2について検討する。 刊行物1の段落【0026】には、「この他にもCWS401の負荷状況を計測する手段として、ある一定時間内におけるCWS401へのリクエスト数をカウントするものや・・・等が考えられる」と記載されており、引用発明の「コントロールサーバ」が「ある一定時間内における特定のCWSへのリクエスト数を用いて特定のコンテンツを提供するCWSの数を決定すること」が示されているといえるが、補正発明1の上記相違点2に係る構成を示唆するものではない。 したがって、引用発明自体には、引用発明において、補正発明1の上記相違点2に係る構成を採用する動機付けはない。 また、拒絶査定及び前置報告書において引用された他の刊行物にも、「特定のコンテンツを提供するコンテンツサーバの台数を、該特定のコンテンツを要求しているユーザ端末装置の台数及び該特定のコンテンツ以外の他のコンテンツの要求しているユーザ端末装置の台数を用いて決定する決定手段」を備えたものは記載されておらず、示唆されてもいない。 ほかに、引用発明において相違点2に係る補正発明1の構成を採用することが、当業者が容易に想到し得たことというべき理由は見当たらない。 以上のとおりであるから、相違点1、3について検討するまでもなく、補正発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ほかに、補正発明1を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。 (2)補正事項2について 補正事項2についても、補正事項1と同様に、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 3.むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?7に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、補正発明1及び補正発明6は、上記第2の2.のとおり、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 また、補正発明1を直接又は間接的に引用する補正発明2?5、7は、補正発明1に係る発明をさらに限定した発明であるから、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-07-20 |
出願番号 | 特願2012-14539(P2012-14539) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 古河 雅輝 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
和田 志郎 山澤 宏 |
発明の名称 | 管理装置、管理装置の制御方法 |
代理人 | 永川 行光 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 下山 治 |