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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F21S 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21S |
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管理番号 | 1316661 |
審判番号 | 不服2015-7691 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-24 |
確定日 | 2016-07-08 |
事件の表示 | 特願2012-530379号「ぎらつき低減を伴う反射型遮光部を備えた導光板を有する発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年3月24日国際公開、WO2011/033424、平成25年2月14日国内公表、特表2013-505549号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年9月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年9月21日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月1日付けで拒絶理由が通知され、同年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月22日付けで拒絶査定がなされ、平成27年4月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。 第2 平成27年4月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年4月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成27年4月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (補正前の請求項1) 「複数の光源と導光板とを有する発光装置であって、前記導光板は、光出射面と、前記複数の光源に面する対向光入射面とを持ち、前記光入射面は、前記光源により発せられた光の前記導光板への結合のために配置され、前記結合された光の少なくとも一部は、内部全反射により前記導光板内を伝達され、ここで異なる光源からの光は前記導光板内で混合され、前記光出射面の少なくとも一部は、光の脱結合のための光学構造を備え、前記発光装置は更に、前記導光板に向かう前記光源の直接光の光束が前記光源の通電状態における最大密度を持つ位置において配置された反射型遮光部を有し、 複数の光学構造が、前記導光板の前記光出射面に亘って別々の出射窓として配置され、前記導光板の前記光出射面の非構造化領域の少なくとも一部は平坦であり、前記反射型遮光部が、前記導光板における、前記光出射面の平坦な非構造化領域に、又は前記光出射面の平坦な非構造化領域と反対側の前記光入射面に、取り付けられる、発光装置。」 (補正後の請求項1) 「基板上に装着される複数の光源と、前記基板に略平行な導光板と、前記導光板の外側端及び前記基板の外側端に沿って設けられる側壁であって、前記基板、前記導光板及び前記側壁によって囲まれるキャビティを形成するように前記導光板の前記外側端と前記基板の外側端を接続する側壁とを有する発光装置であって、前記導光板は、光出射面と、前記複数の光源に面する対向光入射面とを持ち、前記光入射面は、前記光源により発せられた光の前記導光板への結合のために配置され、前記結合された光の少なくとも一部は、内部全反射により前記導光板内を伝達され、ここで異なる光源からの光は前記導光板内で混合され、前記光出射面の少なくとも一部は、光の脱結合のための光学構造を備え、前記発光装置は更に、前記導光板に向かう前記光源の直接光の光束が前記光源の通電状態における最大密度を持つ位置において配置された反射型遮光部を有し、 複数の光学構造が、前記導光板の前記光出射面に亘って別々の出射窓として配置され、前記導光板の前記光出射面の非構造化領域の少なくとも一部は平坦であり、前記反射型遮光部が、前記導光板における、前記光出射面の平坦な非構造化領域に、又は前記光出射面の平坦な非構造化領域と反対側の前記光入射面に、取り付けられる、発光装置。」 2 請求項1についての補正の適否 (1)新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の光源」について、補正前の請求項3や本願明細書の段落【0023】の記載を根拠に「基板上に装着される」との限定をし、補正前の請求項1に記載された発明を特定するための必要な事項である「導光板」について、本願明細書の段落【0023】の記載を根拠に「前記基板に略平行な」との限定をし、補正前の請求項1に記載された発明を特定するための必要な事項である「発光装置」について、補正前の請求項5や本願明細書の段落【0028】の記載を根拠に、「前記導光板の外側端及び前記基板の外側端に沿って設けられる側壁であって、前記基板、前記導光板及び前記側壁によって囲まれるキャビティを形成するように前記導光板の前記外側端と前記基板の外側端を接続する側壁」を有するとの限定をするものであるから、発明特定事項を限定するものであって新規事項を追加するものではない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)独立特許要件 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。 ア 刊行物の記載事項 (ア)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献2として示された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2006-344409号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1a)「【請求項1】 複数の点光源が配置された基板と、前記点光源を介して前記基板と対向するように設けられた光制御板と、を備える照明装置であって、前記複数の点光源の1つ1つに対して前記点光源からの出射光の照射方向を制御するためのプリズム体が前記光制御板上に形成されたことを特徴とする照明装置。」 (1b)「【請求項3】 前記光制御板の光出射面には、前記点光源の真上の位置に部分透過鏡が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」 (1c)「【請求項6】 前記プリズム体は前記光制御板の光照射面に形成された前記点光源からの照射光の中心を共通の中心として有する同心円凹状プリズムであることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の照明装置。」 (1d)「【0001】 本発明は、携帯情報機器や携帯電話や液晶テレビなどに用いられる液晶表示装置の液晶素子を照明する照明装置に関する。」 (1e)「【0020】 ・・・図2の矢印で示されているようにLED光源1から出射した光は、光制御板3に屈折して入射した後、同心円凹プリズム群4aによって略垂直に出射される。・・・」 (1f)「【0026】 ・・・同心円凹プリズム群4aの断面形状を二等辺三角形とすることによって、他のLED光源から光制御板3内部に入射し、そのままその内部を導波してきた光をも効率良く光出射面側から出力することが可能となり、輝度の向上をはかることができた。」 (1g)「【0040】 光制御板3の内面や平坦部3aで反射した光は、光制御板3の裏面を透過するため損失光となる。この損失光を再利用して有効に用いるために光反射層7が配されている。・・・」 (1h)図1には、以下の図が示されている。 (1i)図9には、以下の図が示されている。 (イ)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献5として示された、本願の優先権主張の日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2009/068007号(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 なお、翻訳文については、引用文献2の国際特許出願にかかる日本国内出願の内容を公表した特表2011-505057号公報の記載を参考に当審で付したものである。 (2a)明細書第10頁第25?30行 (翻訳文:図1に示した照明装置1は、チップハウジング2を備えており、この中に放射放出半導体チップ3が配置されている。チップから隔てられている角度フィルタ要素6はチップハウジング2に組み込まれており、このフィルタ要素は、好ましい方向Vにおける放射放出半導体チップ3の下流に配置されている。) (2b)明細書第11頁第14?30行 (翻訳文:チップハウジング2の内側は、例えば、内面4が反射性であるように鏡面化することができる。反射性内面4の反射率は、好ましくは90%またはそれ以上であり、好ましくは95%またはそれ以上であり、特に好ましくは98%またはそれ以上である。このような反射率によって、チップハウジング2においてわずかな放射部分のみが吸収によって失われるため、照明装置1の効率を高めることが可能であり、これは有利である。 チップハウジング2の内側は、例えば、内面4が反射性であるように鏡面化することができる。反射性内面4の反射率は、好ましくは90%またはそれ以上であり、好ましくは95%またはそれ以上であり、特に好ましくは98%またはそれ以上である。このような反射率によって、チップハウジング2においてわずかな放射部分のみが吸収によって失われるため、照明装置1の効率を高めることが可能であり、これは有利である。) (2c)明細書第12頁第11?16行 (翻訳文:角度フィルタ要素6は、傾いた側面を有する複数の角錐状構造要素6aを備えている。この例示的な実施形態においては、傾いた側面の間の角度は、すべての構造要素6aにおいて同じである。本発明の目的には、70゜?110゜の間の角度が好ましい。) (2d)明細書第14頁第25?32行 (翻訳文:照明装置1によって放出される放射は、角度フィルタ要素6によって混合される、すなわち、照明装置1の放射出口面の任意の望ましい領域において、第1の角度範囲の光ビームと第2の角度範囲の光ビームとが均等に存在し、これは有利である。この場合、放射出口面は、好ましい方向Vに垂直に延在する。) (2e)明細書第16頁第4?9行 (翻訳文:放射放出半導体チップ3と角度フィルタ要素6との間に形成されている空洞は、この例示的な実施形態においては空気で満たされている。このようにして、空洞と角度フィルタ要素6との間の接合部における、屈折率の有利に大きな段差を達成することができる。) (2f)明細書第17頁第4?7行 (翻訳文:図3は、複数の放射放出半導体チップ3を備えている照明装置1を示している。放射放出半導体チップ3は、底板2bの上に互いに並んで配置されている。) (2g)明細書第17頁第16行?第18頁第2行 (翻訳文:放射放出半導体チップ3は、さまざまな波長の放射を発生する。好ましくは、照明装置1は、赤色光を発生させる少なくとも1つの半導体チップと、緑色光を発生させる少なくとも1つの半導体チップと、青色光を発生させる少なくとも1つの半導体チップと、を備えており、したがって、全体として照明装置1によって白色光が放出される。 角度フィルタ要素6によって、放射出口面において異なる色の放射が混合され、したがって、単一の色の光のスポットが生じ、これは有利である。 凹部5は、一部分が充填組成物11によって満たされている。このようにして、半導体チップ3からの放射の取出しを改良することができる。さらには、充填組成物11と角度フィルタ要素6との間の空気の隙間によって、角度フィルタ要素との接合部における屈折率の有利に大きな段差を達成することができる。) (2h)図1には、以下の図が示されている。 (2i)図3には、以下の図が示されている。 イ 引用文献1に記載された発明 (ア)引用文献1には、「携帯情報機器や携帯電話や液晶テレビなどに用いられる液晶表示装置の液晶素子を照明する照明装置」(摘示(1d))について開示されるところ、その特許請求の範囲の請求項1、3、6の記載によれば、 「複数の点光源が配置された基板と、前記点光源を介して前記基板と対向するように設けられた光制御板と、を備える照明装置であって、前記複数の点光源の1つ1つに対して前記点光源からの出射光の照射方向を制御するためのプリズム体が前記光制御板上に形成され、 前記光制御板の光出射面には、前記点光源の真上の位置に部分透過鏡が設けられ、 前記プリズム体は前記光制御板の光照射面に形成された前記点光源からの照射光の中心を共通の中心として有する同心円凹状プリズムである、照明装置。」(摘示(1a)?(1c))が記載されているものといえる。 (イ)図1、図9から、基板(回路基板2)と光制御板(光制御板3)とは略平行であることが看取される(摘示(1h)(1i))。 以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものといえる。 「複数の点光源が配置された基板と、前記点光源を介して前記基板と対向するように設けられた光制御板と、を備える照明装置であって、前記複数の点光源の1つ1つに対して前記点光源からの出射光の照射方向を制御するためのプリズム体が前記光制御板上に形成され、 前記光制御板の光出射面には、前記点光源の真上の位置に部分透過鏡が設けられ、 前記プリズム体は前記光制御板の光照射面に形成された前記点光源からの照射光の中心を共通の中心として有する同心円凹状プリズムであり、 前記基板と前記光制御板とは略平行である、照明装置。」 ウ 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明において「基板」に「配置された」「複数の点光源」は、「基板」上に装着されることは明らかであるから、本願補正発明における「基板上に装着される複数の光源」に相当する。 引用発明において「前記点光源を介して前記基板と対向するように設けられた光制御板」は、「前記基板」と略平行であるから、本願補正発明における「前記基板に略平行な導光板」と、「前記基板に略平行な光学部品」の限度で共通するものといえる。 また、引用発明における「照明装置」は、その技術的意義において、本願補正発明における「発光装置」に相当する。 よって、引用発明において、「基板」に「配置された」「複数の点光源」と、「前記基板」と「略平行」である「前記点光源を介して前記基板と対向するように設けられた光制御板」とを有する「照明装置」と、本願補正発明において、「基板上に装着される複数の光源と、前記基板に略平行な導光板と、前記導光板の外側端及び前記基板の外側端に沿って設けられる側壁であって、前記基板、前記導光板及び前記側壁によって囲まれるキャビティを形成するように前記導光板の前記外側端と前記基板の外側端を接続する側壁とを有する発光装置」とは、「基板上に装着される複数の光源と、前記基板に略平行な光学部品とを有する発光装置」の限度で共通するものといえる。 (イ)引用発明における「光制御板」は、「光出射面」(「光照射面」と同義。)と、「複数の点光源」と「対向する」対向光入射面とを持ち、前記対向光入射面は、前記「点光源」により発せられた光の前記「光制御板」への結合のために配置され、前記「光出射面」の少なくとも一部は、「前記点光源からの照射光の中心を共通の中心として有する同心円凹状プリズム」を備えたものである。 また、引用発明における「前記点光源からの照射光の中心を共通の中心として有する同心円凹状プリズム」は、「前記点光源からの照射光」のための光学構造であることは明らかであるから、本願補正発明における「光の脱結合のための光学構造」に相当する。 上記(ア)で述べたとおり、引用発明における「光制御板」は本願補正発明における「導光板」と「光学部品」の限度で共通するものといえるから、引用発明において「光制御板」が、「光出射面」と、「複数の点光源」と「対向する」対向光入射面とを持ち、前記対向光入射面は、前記「点光源」により発せられた光の前記「光制御板」への結合のために配置され、前記「光出射面」の少なくとも一部は、「前記点光源からの照射光の中心を共通の中心として有する同心円凹状プリズム」を備えることは、本願補正発明において「前記導光板は、光出射面と、前記複数の光源に面する対向光入射面とを持ち、前記光入射面は、前記光源により発せられた光の前記導光板への結合のために配置され、前記結合された光の少なくとも一部は、内部全反射により前記導光板内を伝達され、ここで異なる光源からの光は前記導光板内で混合され、前記光出射面の少なくとも一部は、光の脱結合のための光学構造を備え」ることと、「前記光学部品は、光出射面と、前記複数の光源に面する対向光入射面とを持ち、前記光入射面は、前記光源により発せられた光の前記光学部品への結合のために配置され、前記光出射面の少なくとも一部は、光の脱結合のための光学構造を備え」る限度で共通するといえる。 (ウ)上記(ア)で述べたとおり、引用発明における「照明装置」は本願補正発明における「発光装置」に相当し、引用発明における「光制御板」は本願補正発明における「導光板」と「光学部品」の限度で共通するものといえる。 また、引用発明において「複数の点光源が配置された基板」と「光制御板」とは「略平行」であるから、前記「光制御板」の「光出射面」における「前記点光源の真上の位置」は、「光制御板」に向かう「点光源」の直接光の光束が前記「点光源」の通電状態における最大密度を持つ位置であるといえる。 よって、引用発明において「照明装置」は更に、「前記光制御板の光出射面」における「前記点光源の真上の位置」において配置された「部分透過鏡」を有することは、本願補正発明において「前記発光装置は更に、前記導光板に向かう前記光源の直接光の光束が前記光源の通電状態における最大密度を持つ位置において配置された反射型遮光部を有」することと、「前記発光装置は更に、前記光学部品に向かう前記光源の直接光の光束が前記光源の通電状態における最大密度を持つ位置において配置された反射型遮光部を有」する限度で共通するものといえる。 (エ)上記(ア)で述べたとおり、引用発明における「光制御板」は本願補正発明における「導光板」と「光学部品」の限度で共通するものといえる。 また、上記(イ)で述べたとおり、引用発明において、前記「光出射面」の少なくとも一部に形成された「前記点光源からの照射光の中心を共通の中心として有する同心円凹状プリズム」は、本願補正発明において「光出射面の少なくとも一部」に設けられた「光の脱結合のための光学構造」に相当する。 そして、引用発明において「前記点光源からの照射光の中心を共通の中心として有する同心円凹状プリズム」は、「光制御板」の「光出射面」に亘って別々の出射窓として配置されることは明らかであり、「光制御板」の「光出射面」における「前記点光源からの照射光の中心」は、「同心円凹状プリズム」の中心であるから「同心円凹状プリズム」が形成されない非構造化領域であって、平坦であり、「前記点光源の真上の位置」でもある。 引用発明において「前記点光源の真上の位置」には「部分透過鏡」が設けられるのであるから、引用発明において複数の「同心円凹状プリズム」が、「光制御板」の「光出射面」に亘って別々の出射窓として配置され、前記「光制御板」の「光出射面」の非構造化領域の少なくとも一部は平坦であり、「部分透過鏡」が、前記「光制御板」における、前記「光出射面」の平坦な非構造化領域に取り付けられることは、本願補正発明において「複数の光学構造が、前記導光板の前記光出射面に亘って別々の出射窓として配置され、前記導光板の前記光出射面の非構造化領域の少なくとも一部は平坦であり、前記反射型遮光部が、前記導光板における、前記光出射面の平坦な非構造化領域に、又は前記光出射面の平坦な非構造化領域と反対側の前記光入射面に、取り付けられる」ことと、「複数の光学構造が、前記光学部品の前記光出射面に亘って別々の出射窓として配置され、前記光学部品の前記光出射面の非構造化領域の少なくとも一部は平坦であり、前記反射型遮光部が、前記光学部品における、前記光出射面の平坦な非構造化領域に、又は前記光出射面の平坦な非構造化領域と反対側の前記光入射面に、取り付けられる」限度で共通するものといえる。 以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、 「基板上に装着される複数の光源と、前記基板に略平行な光学部品とを有する発光装置であって、前記光学部品は、光出射面と、前記複数の光源に面する対向光入射面とを持ち、前記光入射面は、前記光源により発せられた光の前記光学部品への結合のために配置され、前記光出射面の少なくとも一部は、光の脱結合のための光学構造を備え、前記発光装置は更に、前記光学部品に向かう前記光源の直接光の光束が前記光源の通電状態における最大密度を持つ位置において配置された反射型遮光部を有し、 複数の光学構造が、前記光学部品の前記光出射面に亘って別々の出射窓として配置され、前記光学部品の前記光出射面の非構造化領域の少なくとも一部は平坦であり、前記反射型遮光部が、前記光学部品における、前記光出射面の平坦な非構造化領域に、又は前記光出射面の平坦な非構造化領域と反対側の前記光入射面に、取り付けられる、発光装置。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。 〔相違点1〕 「基板」に略平行な「光学部品」に関し、本願補正発明においては「導光板」であって「前記結合された光の少なくとも一部は、内部全反射により前記導光板内を伝達され、ここで異なる光源からの光は前記導光板内で混合され」るものであるのに対し、引用発明においては「光制御板」であり、上記のような機能を有することが特定されていない点。 〔相違点2〕 本願補正発明が「前記導光板の外側端及び前記基板の外側端に沿って設けられる側壁であって、前記基板、前記導光板及び前記側壁によって囲まれるキャビティを形成するように前記導光板の前記外側端と前記基板の外側端を接続する側壁」を有するのに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点。 エ 判断 (ア)相違点1について 引用発明における光制御板も、光入射面から入射した光のうち、光出射面から出射される光以外は、内面で反射され、光制御板内部を導波されたり、光入射面(裏面)を透過したりすることが明らかであるから(摘示(1e)?(1g))、導光板といえる。 そうしてみると、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。 仮に実質的な相違点であるとしても、基板上に装着される複数の光源を有する発光装置において、前記基板に略平行な光学部品が、結合された光の少なくとも一部を内部全反射によりその内部に伝達させ、ここで異なる光源からの光をその内部で混合する導光板であることは、当業者にとって周知の技術的事項であるから(引用文献2の明細書第17頁第16行?第18頁第2行参照(摘示(2g))。角度フィルタ要素6が導光板に相当。特開2007-141546号公報の第5頁第18行?第6頁第5行及び図2、図3参照。光混合板23が導光板に相当。特開2007-157520号公報の第4頁第9行?第44行及び図3、図4参照。光混合板23が導光板に相当。)、引用発明において上記周知の技術的事項を適用し、光制御板を、結合された光の少なくとも一部を内部全反射によりその内部に伝達させ、ここで異なる光源からの光をその内部で混合する導光板とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 (イ)相違点2について 引用文献2には、底板2b(引用発明の基板に対応)上に装着される放射放出半導体チップ3(引用発明の光源に対応)と、前記基板に略平行な角度フィルタ要素6(引用発明の光制御板に対応)とを有する照明装置1(引用発明の発光装置に対応)において、前記底板2b及び前記角度フィルタ要素6とともに空洞(引用発明のキャビティに対応)を形成するよう前記角度フィルタ要素6の外側端と前記底板2bの外側端に沿って設けられ両者を接続する側壁2a(引用発明の側壁に対応)を設けることが記載されている(摘示(2a)?(2i))。 引用発明においても、基板と光制御板とを略平行に支持する何らかの部材が必要であることは当業者にとって自明であるから、引用発明において上記引用文献2に記載の技術的事項を適用し、基板と光制御板とを略平行に支持する部材として、前記基板及び前記光制御板とともにキャビティを形成するよう前記光制御板の外側端と前記基板の外側端に沿って設けられ両者を接続する側壁を設けることは、当業者であれば容易になし得たことである。 したがって、上記相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明、引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、審判請求人は、審判請求書の「3.(2)」において、引用文献1に記載の発明は、より少ないLED光源を用いて視角特性と輝度分布がよい直下型照明装置を提供することを本来の目的としており、このような目的を達成するために、光制御板3の、LED光源1を覆うモールド5に対応する位置にモールド5の表面形状と相似な凹部9を形成するものであるから、引用文献1に記載の発明において、例えば引用文献2に記載の構成を適用するなどして、回路基板2、光制御板3及び側壁によって囲まれるキャビティを形成するようにすることは、上記目的に反することになり、当業者が容易に想到し得たことではない旨主張する。 しかし、引用文献1の特許請求の範囲の請求項1?13には、上記「LED光源1を覆うモールド5に対応する位置にモールド5の表面形状と相似な凹部9を形成する」ことは何ら記載されておらず、上記「イ」において認定した引用発明も、上記「凹部(9)を形成する」構成を有するものではない。 また、引用文献1には、上記「凹部9を形成する」構成を有しない実施例も多数記載されており(段落【0018】?【0025】及び図1?4の【実施例1】、段落【0033】?【0038】及び図6、図7の【実施例3】、段落【0039】?【0041】及び図8の【実施例4】、段落【0042】、【0043】及び図9の【実施例5】)、上記「凹部9を形成する」構成は、引用発明が上記目的を達成するために必須の構成であるとはいえない。 よって、引用発明において引用文献2に記載の技術的事項を適用し、基板及び光制御板とともにキャビティを形成するよう前記光制御板の外側端と前記基板の外側端に沿って設けられ両者を接続する側壁を設けることは、引用発明が達成しようとする目的に反することにはならないから、審判請求人の上記主張は採用することができない。 (ウ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載の技術的事項(及び上記周知の技術的事項)から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ まとめ したがって、上記相違点1が実質的な相違点ではないとすれば、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、相違点であるとした場合でも、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術的事項及び上記周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成26年8月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(補正前の請求項1)」に記載されたとおりのものである。 第4 刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献2として示された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2 2(2)ア(ア)」に記載したとおりであり、刊行物1に記載された発明(引用発明)は、上記「第2 2(2)イ」に記載したとおりである。 第5 当審の判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「複数の光源」の構成について「基板上に装着される」との限定事項を省き、「導光板」の構成について「前記基板に略平行な」との限定事項を省き、「発光装置」の構成について「前記導光板の外側端及び前記基板の外側端に沿って設けられる側壁であって、前記基板、前記導光板及び前記側壁によって囲まれるキャビティを形成するように前記導光板の前記外側端と前記基板の外側端を接続する側壁」を有するとの限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明と引用発明とは、上記「第2 2(2)ウ」で述べた相違点1の点でのみ、一応相違する。 しかしながら、上記「第2 2(2)エ(ア)」で述べたとおり、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。 仮に実質的な相違点であるとしても、上記「第2 2(2)エ(ア)」で述べたとおり、上記相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び上記周知の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たことである。 よって、上記相違点1が実質的な相違点ではないとすれば、本願発明は引用発明(引用文献1に記載された発明)であり、相違点であるとした場合でも、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-15 |
結審通知日 | 2016-02-16 |
審決日 | 2016-02-29 |
出願番号 | 特願2012-530379(P2012-530379) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(F21S)
P 1 8・ 575- Z (F21S) P 1 8・ 121- Z (F21S) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 則夫、柿崎 拓 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
島田 信一 櫻田 正紀 |
発明の名称 | ぎらつき低減を伴う反射型遮光部を備えた導光板を有する発光装置 |
代理人 | 津軽 進 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 柴田 沙希子 |