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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S |
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管理番号 | 1316701 |
審判番号 | 不服2015-12869 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-06 |
確定日 | 2016-07-07 |
事件の表示 | 特願2011-244160「車載器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101013〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成23年11月8日 拒絶理由通知: 平成26年12月19日(発送日:同年同月24日) 手続補正: 平成27年2月20日(以下、「補正1」という。) 拒絶査定: 平成27年3月30日(送達日:同年4月7日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成27年7月6日 手続補正: 平成27年7月6日 (以下、「本件補正」という。) 上申書: 平成27年9月9日 第2 補正の却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正によって、特許請求の範囲は、以下のように補正された。 (補正前) 「 【請求項1】 車両に搭載される車載器であって、 前記車載器は、位置標定装置を備え、 前記位置標定装置は、 測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、 前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いて自己位置の座標値を算出する位置標定部とを備え、 前記車載器は、 前記位置標定装置の位置標定部によって算出された自己位置の座標値を前記車両の座標値として含んだ車両情報を複数の他の車両へ送信し、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から前記他の車両の座標値を含んだ車両情報を受信する車両間通信部と、 前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値と、を運転制御支援装置に出力する相対位置情報生成部とを備え、 前記運転制御支援装置は、 前記車両の座標値と、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両の座標値とに基づいて、前記複数の他の車両から前記車両に接近している車両を判定し、 前記車両が前記接近している車両に衝突しないように前記車両を制御する ことを特徴とする車載器。 【請求項2】 前記相対位置情報生成部は、前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値とに基づいて、前記車両に対する前記他の車両の相対位置を表す他車両相対位置情報を生成し、生成した他車両相対位置情報を出力する ことを特徴とする請求項1記載の車載器。 【請求項3】 前記車載器は、 前記車両が走行している走行道路に設けられる路側機から前記走行道路に存在する走行車両の位置を表す走行道路情報を受信する路車間通信部を備え、 前記相対位置情報生成部は、前記路車間通信部によって受信された前記走行道路情報に基づいて前記車両に対する前記走行車両の相対位置を表す走行車両相対位置情報を生成し、生成した走行車両相対位置情報を出力する ことを特徴とする請求項2記載の車載器。 【請求項4】 前記車載器は、 通行者が所有する通信端末と前記通信端末の通信を中継する中継器との少なくともいずれかから前記通行者の位置を表す通行者情報を受信する通行者情報受信部を備え、 前記相対位置情報生成部は、前記通行者情報受信部によって受信された前記通行者情報に基づいて前記車両に対する前記通行者の相対位置を表す通行者相対位置情報を生成し、生成した通行者相対位置情報を出力する ことを特徴とする請求項2または請求項3記載の車載器。 【請求項5】 前記車載器は、 有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部と、 前記位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と前記有料道路情報記憶部に記憶される有料道路情報とに基づいて前記車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に所定の課金制御を行う課金制御部と を備えることを特徴とする請求項1から請求項4いずれかに記載の車載器。 【請求項6】 車両に搭載される車載器であって、 前記車載器は、位置標定装置を備え、 前記位置標定装置は、 測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、 前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いて自己位置の座標値を算出する位置標定部とを備え、 前記車載器は、 有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部と、 前記位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と前記有料道路情報記憶部に記憶される有料道路情報とに基づいて前記車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に所定の課金制御を行う課金制御部とを備え、 前記課金制御によって課金される金額は、2つの地点間の通行に要した時間と、通行した時間帯との少なくともいずれかによって異なる ことを特徴とする車載器。 【請求項7】 車両に搭載する車載器によって実行する運転支援方法であって、 測位信号受信部が、測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出し、 概略位置算出部が、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出し、 測位補強信号受信部が、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得し、 測位補強情報選択部が、前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択し、 補正量算出部が、前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出し、 位置標定部が、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量 車両間通信部が、前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値を前記車両の座標値として含んだ車両情報を複数の他の車両へ送信し、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から前記他の車両の座標値を含んだ車両情報を受信し、 相対位置情報生成部が、前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値と、を運転制御支援装置に出力し、 前記運転制御支援装置は、 前記車両の座標値と、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両の座標値とに基づいて、前記複数の他の車両から前記車両に接近している車両を判定し、 前記車両が前記接近している車両に衝突しないように前記車両を制御する ことを特徴とする運転支援方法。 【請求項8】 車両に搭載される車載器を機能させる運転支援プログラムであって、 測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、 前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いて自己位置の座標値を算出する位置標定部と、 前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値を前記車両の座標値として含んだ車両情報を複数の他の車両へ送信し、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から前記他の車両の座標値を含んだ車両情報を受信する車両間通信部と、 前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値と、を運転制御支援装置に出力する相対位置情報生成部として 前記車載器を機能させて、 前記運転制御支援装置は、 前記車両の座標値と、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両の座標値とに基づいて、前記複数の他の車両から前記車両に接近している車両を判定し、 前記車両が前記接近している車両に衝突しないように前記車両を制御する ことを特徴とする運転支援プログラム。 【請求項9】 有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部を備える車載器によって実行する道路課金方法であって、 測位信号受信部が、測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出し、 概略位置算出部が、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出し、 測位補強信号受信部が、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得し、 測位補強情報選択部が、前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択し、 補正量算出部が、前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出し、 位置標定部が、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いて自己位置の座標値を算出し、 課金制御部が、前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と前記有料道路情報記憶部に記憶される有料道路情報とに基づいて車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に所定の課金制御を行い、 前記課金制御によって課金される金額は、2つの地点間の通行に要した時間と、通行した時間帯との少なくともいずれかによって異なる ことを特徴とする道路課金方法 【請求項10】 有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部を備える車載器を機能させる道路課金プログラムであって、 測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、 前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いて自己位置の座標値を算出する位置標定部と、 前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と前記有料道路情報記憶部に記憶される有料道路情報とに基づいて車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に所定の課金制御を行う課金制御部として 前記車載器を機能させて、 前記課金制御によって課金される金額は、2つの地点間の通行に要した時間と、通行した時間帯との少なくともいずれかによって異なる ことを特徴とする道路課金プログラム。 【請求項11】 測位衛星と、準天頂衛星と、車両に搭載される車載器と、前記車両の運転を制御する運転制御支援装置とを有する運転支援システムであって、 前記測位衛星は測位信号を送信し、 前記準天頂衛星は、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信し、 前記車載器は、 前記測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、 前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いて自己位置の座標値を算出する位置標定部と、 前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値を前記車両の座標値として含んだ車両情報を複数の他の車両へ送信し、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から前記他の車両の座標値を含んだ車両情報を受信する車両間通信部と、 前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値と、を前記運転制御支援装置に出力する相対位置情報生成部とを備え、 前記運転制御支援装置は、 前記車両の座標値と、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両の座標値とに基づいて、前記複数の他の車両から前記車両に接近している車両を判定し、 前記車両が前記接近している車両に衝突しないように前記車両を制御する ことを特徴とする運転支援システム。 【請求項12】 測位衛星と、準天頂衛星と、車載器とを有する道路課金システムであって、 前記測位衛星は測位信号を送信し、 前記準天頂衛星は、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信し、 前記車載器は、 前記測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、 前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いて自己位置の座標値を算出する位置標定部と、 有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部と、 前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と前記有料道路情報記憶部に記憶される有料道路情報とに基づいて車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に所定の課金制御を行う課金制御部とを備え、 前記課金制御によって課金される金額は、2つの地点間の通行に要した時間と、通行した時間帯との少なくともいずれかによって異なる ことを特徴とする道路課金システム。」 (補正後) 「【請求項1】 車両に搭載される車載器であって、 前記車載器は、位置標定装置を備え、 前記位置標定装置は、 測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、 前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いてセンチメートル級の精度で自己位置の座標値を算出する位置標定部とを備え、 前記車載器は、 前記位置標定装置の位置標定部によって算出された自己位置の座標値を前記車両の座標値として含んだ車両情報を複数の他の車両へ送信し、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から前記他の車両の座標値を含んだ車両情報を受信する車両間通信部と、 前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値と、を運転制御支援装置に出力する相対位置情報生成部と、 有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部と、 前記位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と前記有料道路情報記憶部に記憶される有料道路情報とに基づいて前記車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に所定の課金制御を行う課金制御部とを備え、 前記相対位置情報生成部は、前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値とに基づいて、前記車両に対する前記他の車両の相対距離と相対移動方向と相対速度とを算出し、算出した相対距離と相対移動方向と相対速度とを示す情報を、前記車両に対する前記他の車両の相対位置を表す他車両相対位置情報として生成し、生成した他車両相対位置情報を出力し、 前記運転制御支援装置は、 前記車両の座標値と、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両の座標値とに基づいて生成された他車両相対位置情報を用いて、前記複数の他の車両から前記車両に接近している車両を判定し、 前記車両が前記接近している車両に衝突しないように前記車両を制御し、 前記課金制御部は、 前記位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値から構成される走行履歴データが示す走行経路に、前記有料道路情報が示す有料道路における特定の通過地点が含まれている場合に、前記車両が有料道路を走行していると判定し、 前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に、前記所定の課金制御によって、2つの地点間の通行に要した時間と通行した時間帯とに応じた金額の通行料を課金する ことを特徴とする車載器。 【請求項2】 前記車載器は、 前記車両が走行している走行道路に設けられる路側機から前記走行道路に存在する走行車両の位置を表す走行道路情報を受信する路車間通信部を備え、 前記相対位置情報生成部は、前記路車間通信部によって受信された前記走行道路情報に基づいて前記車両に対する前記走行車両の相対位置を表す走行車両相対位置情報を生成し、生成した走行車両相対位置情報を出力する ことを特徴とする請求項1記載の車載器。 【請求項3】 前記車載器は、 通行者が所有する通信端末と前記通信端末の通信を中継する中継器との少なくともいずれかから前記通行者の位置を表す通行者情報を受信する通行者情報受信部を備え、 前記相対位置情報生成部は、前記通行者情報受信部によって受信された前記通行者情報に基づいて前記車両に対する前記通行者の相対位置を表す通行者相対位置情報を生成し、生成した通行者相対位置情報を出力する ことを特徴とする請求項1記載の車載器。」(下線は補正箇所を示す。) 上記補正のうち請求項1についての補正を見ると、補正後の請求項1は、補正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5において、さらに構成を限定したものである。 よって、この補正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2 検討 (1)引用例1記載の事項・引用発明1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-62874号公報(以下「引用例1」という。)には、車両に取り付けられる通信装置(段落【0011】)の発明に関し、図面と共に次の事項(a)ないし(i)が記載されている。 (a) 「【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、通信装置、準天頂衛星、保険料割引サービスシステム及び、課金システムに関するものである。」 (b) 「【0011】 この発明に係わる保険料割引サービスシステムは、通信装置を取り付けている車両を登録し、登録されている車両に対して自動車保険料の割引サービスを実施するものである。」 (c) 「【0013】 【発明の実施の形態】 実施の形態1. 図1から図4はこの発明の実施の形態1を示すものである。本実施の形態では、送受信装置により、位置、種別などを送受信することで、出合い頭事故の防止が可能である事を示す。図1は通信装置の構成を示す図であり、図1において、101は自己位置を高精度に測位する高精度測位装置、102は自己の種別を記憶する種別記憶部、103は高精度測位装置101で測位された自己位置及び、種別記憶部102に記憶されている自己の種別、場合により各種情報を直接的または間接的に他の通信装置へ送信すると共に、他の通信装置からの位置、種別、場合により各種情報等を直接的または、間接的に受信する送受信装置であり、104は高精度測位装置101、種別記憶部102及び、送受信装置103等から構成されている通信装置である。 【0014】 図1の動作について説明する。高精度測位装置101では、準天頂衛星を用いて自己の位置を高精度に測位し、自己位置情報を送受信装置103へ出力する。種別記憶部102には自己の種別が予め記憶されており、その記憶されている自己の種別を送受信装置103へ出力する。送受信装置103では、高精度測位装置101の自己位置情報、種別記憶部102に記憶されている自己の種別、場合により各種情報を直接的または間接的に他の通信装置104へ向けて送信する。また、送受信装置103では、他の通信装置104から直接的または間接的に他の通信装置の位置、種別、場合により各種情報等を受信する。 ・・・ 【0018】 次に、高精度測位について説明する。現在GPS衛星を使用したカーナビゲーションシステム等においては、その精度は概ね5?10m程度と言われている。これは、GPS衛星のみを利用する方式のため単独測位と呼ばれている。なお、GPS(Global Positioning Systems)とは、軌道高度約20,000km、周期12時間、24個の地球周回衛星を利用した位置測位システムであり、それらの衛星をGPS衛星と言う。それに対して高精度測位とは、前記単独測位と比較して一桁以上精度が高い測位を言う。このため、高精度測位を利用することにより、車両が走行している車線まで充分識別することが可能となる。」 (d) 「【0021】 以下で、高精度測位装置101の動作を説明する。まず、通常の単独測位を行い、その後、高精度測位のための情報を元に単独測位結果の補正を行うことで、高精度測位を実現する。はじめに、単独測位に関して説明する。単独測位は、一般的なGPS衛星を利用する方法でよい。なお、搭載スペースの関係で、GPS衛星から入手した情報を元に自己位置の演算が、自己の中で実施できない場合は、他の場所に設けられたホストコンピュータ等で実施しても良い。もちろん、自己の中で演算しても良い。 【0022】 次に、準天頂衛星から高精度測位のための情報を高精度測位装置101で受信し、前記で演算した単独測位結果を補正する。準天頂衛星からの高精度測位のための情報は、高仰角で配信されるため、建物、地形等により情報が遮られることはない。なお、高精度測位のための情報は前記の通りである。 【0023】 他の通信装置104へ送信する位置情報について説明する。送信する位置情報は、高精度測位装置101の測位結果である。この測位結果は、地球に対しての絶対的な位置を表現できる方式で有れば良く、直交座標系、球座標系、極座標系等どの様な形式でも良い。一般的に、GPSを利用した測位システムでは、直交座標系を用いているため、この座標系が利用しやすいが、データ量が少なくて済む方式で有れば、それを採用しても良い。」 (e) 「【0031】 202Aは第1の移動体であり、通信装置104Aを搭載している大型車、202Bは第2の移動体であり、通信装置104Bを搭載している普通車とする。第1の移動体202Aは、見通しの悪い交差点部201へ図4の左から右へ走向しているとする。また、第2の移動体202Bは、見通しの悪い交差点部201へ図の下から上へ走向しているとする。202Aと202Bとは建物等203に遮られお互いの存在を確認できないものとする。」 (f) 「【0033】 ここまでは、2台の移動体に対して記載したが、移動体が複数有っても同様である。」 (g) 「【0078】 実施の形態5. 図12から図20は、この発明の実施の形態5を示すものである。図12から図20は、通信装置104の内部機能を示すもので、通信装置104を移動体に取り付けた場合である。図12は移動体の移動方向を演算する移動体方向演算部を備えた構成である。図12において、121は他の移動体の位置情報、122は前記位置情報121から他の移動体の進行方向、移動方向を演算する移動体方向演算部である。これは、他の移動体の各種情報として移動体の移動方向、移動速度が分からなくても、自己で演算する事で、他の移動体の移動方向、移動速度を演算する方式を示すものである。他の移動体の移動方向、移動速度が分かれば、他の移動体が接近しているか否か判断することが可能となる。以下動作について説明する。位置情報121は、時々刻々と移動方向演算部122に入力される。移動量演算部122では、時間ごとに移動体の位置を処理することで、移動方向を演算することができる。また、前記移動体の位置情報の時間変化を演算することで、移動速度を演算することができる。更に、前記移動速度を時間で微分することにより加速度の演算を行うことが可能となる。例えば、移動方向、移動速度等をモニタに表示する場合は、移動方向を矢印の方向で、移動速度を前記矢印の長さで示せばよく、インターフェイスに合わせて、移動量演算部122の演算結果出力結果を適当に調整すればよい。実際問題として、他の移動体は、車線変更したり、路上駐車車両等の障害物を避けたりするため、一時的に方向を変える場合がある。この様な、マクロ的な移動方向を示す事は望まれないため、平均的な移動方向を示しても良い。なお、図12は、通信装置104の機能の一つである。この様に、他の移動体の各種情報として移動体の移動方向、移動速度が分からなくても、自己で他の移動体の移動方向、移動速度を演算することができ、結果として、自己に対する危険性を把握するための情報となる。」 (h) 「【0083】 図16は衝突を予測する衝突予測部を備えた構成である。図16において151は移動体方向演算部122から出力される他の移動体の位置、移動方向及び、移動速度、152は自己の位置、移動方向及び、移動速度、153は前記151及び、152の情報から衝突の予測を行う衝突予測部である。なお、図16は通信装置104の機能の一つである。以下動作について説明する。衝突とは、同一時間に同一場所に到達した場合に発生するため、衝突予測部151では、自己と他の移動体の位置、移動方向及び、移動速度から同一時間に同一場所に到達するかの判定を行う。具体的な衝突判定方法の一例を図17にて説明する。図17において、154は自己と他の移動体がX方向で会合するX方向会合点、155は、自己と他の移動体とがY方向で会合するY方向会合点を示す。図17(1)は、横軸時間、縦軸がX方向の位置である。なお、ここで、X方向とは、南北方向または、東西方向等を示す。この図で、実線は自己の位置の時間変化、点線は他の移動体の位置の時間変化であり、位置、移動方向、移動速度から演算することができる。この図においてX方向における実線と点線との交点154が、2つの移動体がX方向で同一場所を通過する時間である。図17(2)は、横軸時間、縦軸がY方向の位置である。ここで、Y軸とは、移動体のX軸と直交する方向の位置である。この図で、実線は自己の位置の時間変化、点線は他の移動体の位置の時間変化、一点鎖線は点線とは別の他の移動体の位置の時間変化である。Y方向における実線と点線との交点155Aの時間と、X方向における交点154とが同一時間で会合する場合は、衝突と判定できる。また、155Bの様にX方向における交点154と同一時間で会合しないときは、衝突しないと言える。ここまでは、2次元方向に関して記載したが、3次元的な場合も同じである。例えば、立体交差での誤判断を防ぐため、3次元的な情報が優れるが、計算速度、情報精度等により平面的な衝突演算でも良い。この様に、自己の移動状態及び、他の移動体の移動状態から衝突するか否か判定することができる。更に、この場合は自己の中で相手の進行方向及び進行速度を演算することを記載したが、移動体情報132を利用すれば、前記演算無しで、衝突判定を実施することができる。更に、前記では、自己の大きさを考慮していなかったが、自己の大きさを考慮して衝突判定を行った方がより精度が高くなる。また、衝突すると判定されたと、警告出しても良い。さらには、移動体を緊急停止させる等の強制的な措置を取っても良い。」 (i) 「【0111】 実施の形態8. 図25はこの発明の実施の形態8を示すものである。本実施の形態では、有料道路などにおいても料金所を不要にしたものであり、例えば都心に流入する車両に一律課税する場合などにも利用できる。図25において、103は全段と同じであり、901は移動体が走向するに当たり料金がかからない無料領域、902は移動体が走向するに当たり料金がかかる有料領域、903は前記無料領域901と前記有料領域902との境界を示す境界、904は通信装置104を搭載して無料領域901を走行中の移動体、905は移動体904の通信装置104から送信される位置、種別等を受信する準天頂衛星基地局、906は準天頂衛星基地局からの移動体904の位置、種別等を元に境界903を通過して有料領域902に入ったことを判定し課金を行う課金部、910は境界903の有料領域902側近傍に設けられた、移動体904が有料領域を走向していることを判定するために利用される有料判定線である。境界903と有料判定線910との距離は、通信装置104の高精度測位装置101で充分分離できる距離だけ離れていればよい。また、課金部906は、準天頂衛星の中に設けても良いし、地上に設けても良い。 ・・・ 【0113】 以下動作について説明する。通信装置104を搭載している移動体904は、無料領域901から有料領域902に向かって走向しているとする。移動体904に搭載されている通信装置104は、位置及び種別等に関する情報を送信している。準天頂衛星基地局905は、通信装置104から送信された位置及び、種別等に関する情報を受信する。受信した情報は、課金部906に伝送される。課金部906には予め無料領域901と有料領域902との境界903及び、有料判定線910の位置に関する情報が記憶されている。課金部906では、移動体904が境界903を通過後、有料判定線910を通過した場合、移動体904は有料領域902に入ったと判断し、移動体904から課金を行う。移動体904が境界903を通過後、有料判定線910を通過して有料領域902へ入ったことの判定は、通信装置104から送信される位置情報と、課金部906が記憶している境界903及び有料判定線910の位置情報とを比較し、一致したことで判断する。つまり、通信装置104から送信された位置と、境界903の位置とを比較し一致した後に、有料判定線910の位置と比較し一致した場合、移動体904は有料領域902に入ったと判断する。通信装置104から送信される位置情報のデータレートによっては、一致が確認できない場合が有るが、この場合は、通信装置104の移動軌跡により推定すればよい。前記において、有料領域902側に有料判定線910を設けたが、無料領域901側に無料判定線を設けて、無料判定線を通過後、境界903を通過したことを判定しても同じである。または、課金部906では境界903の情報のみ保有しており、準天頂衛星基地局905からの移動体904の移動方向が無料領域901から有料領域902であり、かつ境界903を通過した移動体904からのみ課金を行い、逆に有料領域902から無料領域901へ移動している移動体904が境界903を通過しても課金を行わなければよい。」 上記【0021】の記載から、引用例に記載の通信装置の高精度測位装置が、「GPS衛星から入手した情報を元に自己位置の演算」を行うための構成を有しているものを含むことは明らかであり、同様に上記【0022】の記載から、「準天頂衛星から高精度測位のための情報を受信し、単独測位結果を補正」して自己位置を算出するための構成を有していることも明らかである。 また上記【0018】の記載から、高精度測位により算出される自己位置の精度は、単独測位の「概ね5?10m程度」と比較して一桁以上精度が高い、すなわちセンチメートル級の精度であることがわかる。(なおこの点に関しては、本願明細書において引用されている先行技術文献が「【非特許文献3】齋藤,佐藤,宮,大村,吉野,浅里,“「みちびき」を利用したセンチメータ級測位補強システムの開発”,第54回宇宙科学技術連合,Nov. 2010.」であることから見ても、準天頂衛星を用いる高精度測位においてセンチメートル級の精度は通常期待されるものといえる。) そうすると、上記記載(a)ないし(i)の記載から、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。 「車両に搭載されている通信装置であって、 前記通信装置は、高精度測位装置を備え、 前記高精度測位装置は、GPS衛星から入手した情報を元に自己位置の演算を行うための構成と、 準天頂衛星から高精度測位のための情報を受信し、単独測位結果を補正してセンチメートル級の精度で自己位置を算出するための構成とを備え、 前記通信装置は、 前記高精度測位装置で測位された自己位置の座標値を含んだ情報を直接的または間接的に複数の他の通信装置へ送信すると共に、前記複数の他の通信装置からの自己位置の座標値を含んだ情報を直接的または、間接的に受信する送受信装置とを備え、 移動方向演算部は、時々刻々と入力される他の移動体の位置情報から移動方向及び移動速度を演算して衝突予測部へ出力し、 前記衝突予測部は、 自己の位置、移動方向及び、移動速度、並びに移動体方向演算部から出力される他の移動体の位置、移動方向及び、移動速度、の情報から衝突の予測を行い、衝突すると判定されたときに移動体を緊急停止させる等の強制的な措置を取り、 有料道路の無料領域と有料領域との境界及び、有料判定線の位置に関する情報と、前記高精度測位装置で測位された自己位置の座標値を含んだ情報とを用いて課金を行う ことを特徴とする通信装置。」(以下、「引用発明1」という。) (2)引用例2記載の事項・引用発明2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2011-112576号公報(以下「引用例2」という。)には、測位に使用する補正データを送信するデータ送信装置及びデータ送信方法及び測位装置(段落【0001】)の発明に関し、図面と共に次の事項(a)ないし(d)が記載されている。 (a) 「【0001】 この発明は、測位に使用する補正データを送信するデータ送信装置及びデータ送信方法及び測位装置に関する。」 (b) 「【0013】 図1を参照して、測位用補正データ配信システム500の概要を説明する。 (1)GPS衛星300a・・・300n等は測位情報1を送信する。 (2)電子基準点10a・・・10n等は、この測位情報1を受信して所定の情報を電子基準点情報2として出力する。所定の情報は、電子基準点とGPS衛星との擬似距離、ドップラ周波数、及び搬送波位相などを含む。 (3)センター局100の備えるデータ送信装置101は、電子基準点10a等のそれぞれが出力する電子基準点情報2を収集し、収集した電子基準点情報2に基づいて補正データを作成する。そして作成した補正データを、例えば準天頂衛星400を介して配信する。なお、準天頂衛星400を介して補正データを配信するのは一例である。他の衛星を介して配信しても構わない。また、衛星によらず地上波として配信しても構わない。また、インターネットなどのネットワークを介して配信しても構わない。」 (c) 「【0087】 図21は、実施の形態2のデータ送信装置101によって配信される各ブロックごとの測位補強情報である。 図21は日本の領域が3つのブロック(ブロック1?ブロック3)に分割されている状態を示している。3つの分割は例示であり、いくつでもよい。各ブッロク1?3は、実施の形態1の地域データを意味する。データ送信装置101は、各ブロックの測位補強情報を配信する。」 (d) 「【0100】 (D.測位装置201) 次に実施の形態2の測位装置201を説明する。図24は実施の形態2の測位装置201の構成を示す図である。測位装置201は、測位補強情報受信部21、概略位置算出部22、高精度測位部23を備えている。測位補強情報受信部21は、データ送信装置101から配信装置である準天頂衛星400等を介して配信された各測位補強情報B(1)?B(N)を受信する。一方、概略位置算出部22は、測位情報(測位信号ともいう)を送信する人工衛星(GPS衛星300a等)から測位情報を受信し、この測位情報に基づいて概略位置を算出する。高精度測位部23は、概略位置算出部22の算出した概略位置に基づいて、測位補強情報受信部21の受信するそれぞれの測位補強情報B(k)(k=1?N)の中から概略位置に対応する測位補強情報B(i)を特定する。あるいは、隣接するブロックの測位補強情報を使用する設定の場合は、隣接するブロックの測位補強情報も特定対象となる。各測位補強情報B(1)?B(N)は、概略位置から特定可能な情報を含んでいる。そして、高精度測位部23は、特定した測位補強情報B(i)を用いて概略位置における現時刻の補正量を算出し、算出した現時刻の補正量を用いて概略位置よりも精度の高い高精度位置を測位計算する。この場合、高精度測位部23は、算出した補正量を概略位置と人工衛星との距離に反映することにより、概略位置における仮想観測データを生成し、生成した前記仮想観測データを基準点データとして用いることにより測位計算する。」 また引用例2の図1の記載から、「測位装置201」が車両に搭載されるものを含むことは明らかである。 そうすると、上記記載(a)ないし(d)の記載から、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。 「車両に搭載される測位装置は、 測位情報(測位信号ともいう)を送信する人工衛星から測位情報を受信し、この測位情報に基づいて概略位置を算出する概略位置算出部と、 準天頂衛星を介して配信された(地域)ブロックごとの各測位補強情報を受信する測位補強情報受信部と、 概略位置算出部の算出した概略位置に基づいて、測位補強情報受信部の受信するそれぞれの測位補強情報の中から概略位置に対応する測位補強情報を特定し、また特定した測位補強情報を用いて概略位置における現時刻の補正量を算出し、算出した現時刻の補正量を用いて概略位置よりも精度の高い高精度位置を測位計算する高精度測位部と、 を備えた測位装置。」(以下、「引用発明2」という。) (3)引用例3記載の事項・引用発明3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-319904号公報(以下「引用例3」という。)には、「有料道路等における料金収受システム及びこの料金収受システムに使用される料金徴収用車載機」(【0001】)の発明に関し、図面と共に次の事項(a)ないし(c)が記載されている。 (a) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、有料道路等における料金収受システム及びこの料金収受システムに使用される料金徴収用車載機に関する。」 (b) 「【0018】この為に、図3に示すような車載機システムを提案する。これはGPSシステムを適用したものである。すなわち、本車載機システムは、カーナビゲーションシステム21と、料金収受システム22の第1及び第2の無線送受信システム31,32とが、お互いにインタフェース回路(I/F回路)210,34で接続されており、お互いに独立の機能分担をなしている。更に、カーナビゲーションシステム21には、走行車両に対して課金すべき条件を記憶、読出す課金条件記憶作動部24がインタフェース回路210,241で接続される。この課金条件記憶作動部24は、有料道路の運営者が封印すべき箇所を示している。また、上記無線通信システム31,32には、課金情報記憶部33がインタフェース回路331で接続されており、前述したように、本部分についても有料道路の運営者が封印をすべき部分である事を示している。 ・・・ 【0020】図5は、GPS衛星を使用するという事では、図3と同一なものであるが、一般のGPS衛星を使用したのでは、測定位置精度に限界がある為、D-GPS(Differentical GPS)を適用した例を示すものである。これは、GPSの情報から位置を計算する時に生じる誤差要因を、位置の分かっている定点観測データから割り出し、その情報によってGPS情報の補正をして、車両の位置情報を算出する方式である。ここで取上げた理由は、日本全国に行き渡っている高速道路網の料金収受を行なうのとは別に、都市内の比較的狭い範囲での料金徴収(料金徴収というよりは、道路課金という方が妥当である、というのは、都市内へ車両の進入を規制したりする為に、使用する制度であるからである。)を行なう必要からである。」 (c) 「【0049】1)有料道路の料金収受システム(実施の形態4件) 2)道路課金システム(実施の形態2件) 3)駐車場管理システム(実施の形態2件) 4)電話システムと結合した車載機システム(実施の形態1件) [1 有料道路の料金収受システム]本実施の形態では、1)GPS衛星で位置標定し、料金徴収を行なうものに対して、(1)既存の料金所システムを全く無くす方法、(2)既存の料金所システムと連動して行なう方法について説明する。 【0050】「1.1 GPS衛星で位置標定し、料金徴収を行なう方法(料金所なしの場合)(図3、及び図6、図15)」図3の車載機システム中の、課金条件記憶作動部24には、図6における地図情報と、チェックポイント(課金ポイント)65、あるいは必要に応じて、バリヤ情報66が記憶されている。これらの情報は、図3においてはCD-ROMに記憶されている。 【0051】通行車両が、全国の有料道路を通行すれば、CD-ROMに書き込まれている課金ポイントを通過する時点で、GPS受信器212及びアンテナ211から受信されたGPS衛星61?63からの時間情報と比較され、課金すべき位置であれば、CPU217の動作において、カーナビゲーションシステム21のインタフェース回路210を経由して、料金徴収システム22のインタフェース回路34を介して、メモリ回路321に記憶されている料金計算情報と、CPU320の情報において、R/W回路312の作用により課金情報記憶部33のインタフェース回路331を経由し、CPU333の作用によって、メモリ回路332に当該車両の料金徴収情報が記憶される。」 そうすると、上記記載(a)ないし(c)の記載から、引用例3には、次の発明が記載されていると認められる。 「有料道路等における料金収受システムに使用される料金徴収用車載機であって、 有料道路の地図情報と課金ポイントを含んだ情報及び料金計算情報を記憶する課金条件記憶作動部及びメモリ回路を備え、GPS衛星で位置標定して、課金ポイントを通過する時点で、当該車両の料金徴収情報が記憶される車載機。」(以下、「引用発明3」という。) (4)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 まず、引用発明1における「車両に搭載されている通信装置」は、本願補正発明の「車両に搭載される車載器」に相当する。 また、引用発明1の「高精度測位装置」は「GPS衛星から入手した情報を元に自己位置の演算を行うための構成と、準天頂衛星から高精度測位のための情報を受信し、単独測位結果を補正してセンチメートル級の精度で自己位置を算出するための構成とを備え」ているものであるから、例えば文献「民間利用実証成果報告高精度走行システムの実証実験」(第9回衛星測位と地理空間情報フォーラム(SPAC)2011.5.18 http://www.eiseisokui.or.jp/media/pdf/forum_09/forum_09-08.pdf)の内容を考慮してみると、これがGPS衛星から測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて単独測位による概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、前記測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いてセンチメートル級の精度で自己位置の座標値を算出する位置標定部とを実質的に備えていることは明らかといえる。したがって、引用発明1の「高精度測位装置」が「GPS衛星から入手した情報を元に自己位置の演算を行うための構成と、準天頂衛星から高精度測位のための情報を受信し、単独測位結果を補正してセンチメートル級の精度で自己位置を算出するための構成とを備え」ている点と、本願補正発明の「位置標定装置」が「測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いてセンチメートル級の精度で自己位置の座標値を算出する位置標定部とを備え」ている点とは、共に「位置標定装置」が「測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、前記測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いてセンチメートル級の精度で自己位置の座標値を算出する位置標定部とを備え」ている点で共通する。 次に、引用発明1の「前記高精度測位装置で測位された自己位置の座標値を含んだ情報を直接的または間接的に複数の他の通信装置へ送信すると共に、前記複数の他の通信装置からの自己位置の座標値を含んだ情報を直接的または、間接的に受信する送受信装置」は、本願補正発明の「前記位置標定装置の位置標定部によって算出された自己位置の座標値を前記車両の座標値として含んだ車両情報を複数の他の車両へ送信し、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から前記他の車両の座標値を含んだ車両情報を受信する車両間通信部」に相当する。 引用発明1の「移動方向演算部」は「時々刻々と入力される他の移動体の位置情報から移動方向及び移動速度を演算して衝突予測部へ出力」するものであるから、本願補正発明の「前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値とに基づいて、前記車両に対する前記他の車両の相対距離と相対移動方向と相対速度とを算出し、算出した相対距離と相対移動方向と相対速度とを示す情報を、前記車両に対する前記他の車両の相対位置を表す他車両相対位置情報として生成し、生成した他車両相対位置情報を出力」する「相対位置情報生成部」に対し、共に「前記車両間通信部によって受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値に基づいて、前記車両に対する前記他の車両の移動方向と速度とを算出し、算出した移動方向と速度とを示す情報を、前記車両に対する前記他の車両の相対位置を表す他車両相対位置情報として生成し、生成した他車両相対位置情報を出力」する「相対位置情報生成部」である点で共通する。 また、引用発明1の「自己の位置、移動方向及び、移動速度、並びに移動体方向演算部から出力される他の移動体の位置、移動方向及び、移動速度、の情報から衝突の予測を行い、衝突すると判定されたときに移動体を緊急停止させる等の強制的な措置を取」る「衝突予測部」は、本願補正発明の「前記車両の座標値と、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両の座標値とに基づいて生成された他車両相対位置情報を用いて、前記複数の他の車両から前記車両に接近している車両を判定し、前記車両が前記接近している車両に衝突しないように前記車両を制御」する「運転制御支援装置」に相当する。 さらに、引用発明1において「有料道路の無料領域と有料領域との境界及び、有料判定線の位置に関する情報と、前記高精度測位装置で測位された自己位置の座標値を含んだ情報とを用いて課金を行う」点と、本願補正発明において「有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部と、前記位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と前記有料道路情報記憶部に記憶される有料道路情報とに基づいて前記車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に所定の課金制御を行う課金制御部とを備え」る点とは、共に「位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と有料道路情報とに基づいて所定の課金制御を行う」点で共通する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「車両に搭載される車載器であって、 前記車載器は、位置標定装置を備え、 前記位置標定装置は、 測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いてセンチメートル級の精度で自己位置の座標値を算出する位置標定部とを備え、 前記車載器は、 前記位置標定装置の位置標定部によって算出された自己位置の座標値を前記車両の座標値として含んだ車両情報を複数の他の車両へ送信し、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から前記他の車両の座標値を含んだ車両情報を受信する車両間通信部と、 前記位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と有料道路情報とに基づいて所定の課金制御を行い、 相対位置情報生成部は、前記車両間通信部によって受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値とに基づいて、前記車両に対する前記他の車両の移動方向と速度とを算出し、算出した移動方向と速度とを示す情報を、前記車両に対する前記他の車両の相対位置を表す他車両相対位置情報として生成し、生成した他車両相対位置情報を出力し、 前記運転制御支援装置は、 前記車両の座標値と、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両の座標値とに基づいて生成された他車両相対位置情報を用いて、前記複数の他の車両から前記車両に接近している車両を判定し、 前記車両が前記接近している車両に衝突しないように前記車両を制御する ことを特徴とする車載器。」 (相違点) 相違点1:本願補正発明においては「測位補強情報」が「地域別」とされ、「前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部」を備えており、補正量算出部が用いる測位補強情報が、該選択された測位補強情報であるのに対し、引用発明1においてはそのような構成は不明である点。 相違点2:本願補正発明の「相対位置情報生成部」は、「前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値と、を運転制御支援装置に出力する」のに対し、引用発明1においてはそのような構成は不明である点。 相違点3:本願補正発明の「相対位置情報生成部」は、「前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値」と「相対距離」と「相対」移動方向と「相対」速度とを示す情報を算出しているのに対し、引用発明1においては他の移動体の位置情報から「移動方向及び移動速度を演算」するとされている点。 相違点4:本願補正発明が「有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部」を備え、自己位置の座標値と有料道路情報とに基づいて「前記車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に」所定の課金制御を行う課金制御部とを備えており、また前記課金制御部は、「前記位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値から構成される走行履歴データが示す走行経路に、前記有料道路情報が示す有料道路における特定の通過地点が含まれている場合に、前記車両が有料道路を走行していると判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に、前記所定の課金制御によって、2つの地点間の通行に要した時間と通行した時間帯とに応じた金額の通行料を課金する」のに対し、引用発明1においてはそのような構成を有していない点。 (5)判断 ア 相違点1について 上記「(2)引用例2記載の事項・引用発明2」に示したように、引用発明2は、準天頂衛星を用いる測位装置として、地域別(地域ブロックごと)の各測位補強情報を受信し、概略位置算出部の算出した概略位置に基づいて、測位補強情報受信部の受信するそれぞれの測位補強情報の中から概略位置に対応する測位補強情報を選択(特定)して補正量を算出するようにした測位装置である。引用発明1は、引用発明2と同様に準天頂衛星を用いる測位装置を備えているから、引用発明1に引用発明2の構成を採用し、相違点1の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。 イ 相違点2について 引用発明1の「衝突予測部」は、「自己の位置、移動方向及び、移動速度、並びに移動体方向演算部から出力される他の移動体の位置、移動方向及び、移動速度、の情報から衝突の予測を行」うものであるから、引用発明1の通信装置において「前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値」とが出力されていることは明らかである。また、該出力を「相対位置情報生成部」から行うか否かは、通信装置を具体的に設計するに際し適宜選択されるべき設計事項である。 ウ 相違点3について 引用発明1の「衝突予測部」は、自己の移動体と他の移動体との衝突の予測を行うものであるから、引用発明1の通信装置において、「直接的または間接的に複数の他の通信装置へ送信」される「前記高精度測位装置で測位された自己位置の座標値を含んだ情報」(本願補正発明の「前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値」に相当。)と、両者の間の「相対距離」と「相対」移動方向と「相対」速度とを示す情報が算出されていることは明らかである。該算出を「相対位置情報生成部」が行うかは、通信装置を具体的に設計するに際し適宜選択されるべき設計事項である。 エ 相違点4について 上記「(3)引用例3記載の事項・引用発明3」に示したように、引用発明3は、有料道路等における料金収受システムに使用される料金徴収用車載機であって、有料道路の地図情報と課金ポイントを含んだ情報及び料金計算情報(「有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報」に相当。)を記憶する課金条件記憶作動部及びメモリ回路を備え、GPS衛星で位置標定して、課金ポイント(「有料道路情報が示す有料道路における特定の通過地点」に相当。)を通過する時点で、当該車両の料金徴収情報が記憶される車載機の発明である。引用発明3と同様にGPSを用いた有料道路の課金を行う引用発明1においても、引用発明3の構成を採用し、有料道路の走行の判定に関する相違点4の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。 また、例えば本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-113247号公報には、 「【0002】 【従来の技術】有料施設、例えば有料道路を走行する車両は、その車種及び有料道路における走行距離に応じて課金される。・・・ ・・・ 【0005】ところで、一度設定した課金対象領域は、月日、時間帯及び種々の環境要因によって交通状況が変化した場合、もはや課金の必要のなくなったエリアや新たに課金の必要が出てくるエリアが発生する。また、課金額も交通状況の変化や物価の変動に応じて変化させる必要が生じる。」 「【0044】第1の課金演算条件は、以下の表1にエリア毎の料金を表すテーブルで示した時間帯に応じたエリア進入回数及び走行距離を使用する。 【0045】 (表1 省略) ・・・上記のように設定することで、課金対象エリアへの時間帯に応じた進入回数及び走行距離(500m毎)に従って課金額が増加する。 【0046】第2の課金演算条件は、エリア毎の料金を表すテーブルで示したエリア滞在時間を使用し、第3の課金演算条件としてはエリア毎の料金を表すテーブルで示したエリア混雑度を使用し、第4の課金演算条件は、エリア毎の料金を表すテーブルで示したエリア内を走行したときの車速(平均車速でもよい)を使用する。」 と記載されているように、有料道路の課金条件として、通行に要した時間と通行した時間帯を用いることは周知技術であって、引用発明1に引用発明3の構成を採用するに際し、課金される料金が「エリア滞在時間」及び「時間帯」に応じたものとすることも、設計事項に過ぎない。 したがって、本願補正発明は、引用発明1ないし3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 まとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5に係る発明は、補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5に係る発明をまとめて書き下したものは次のとおりである。 「車両に搭載される車載器であって、 前記車載器は、位置標定装置を備え、 前記位置標定装置は、 測位信号を送信する測位衛星から前記測位信号を受信し、受信結果に基づいて前記測位信号の観測量を算出する測位信号受信部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を用いて概略位置の座標値を算出する概略位置算出部と、 前記測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための地域別の測位補強情報を含んだ測位補強信号を送信する準天頂衛星から前記測位補強信号を受信し、受信した前記測位補強信号から前記地域別の測位補強情報を取得する測位補強信号受信部と、 前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部と、 前記測位補強情報選択部によって選択された測位補強情報に基づいて、前記測位信号の観測量に含まれる誤差量に相当する補正量を算出する補正量算出部と、 前記測位信号受信部によって算出された前記測位信号の観測量を前記補正量算出部によって算出された補正量に基づいて補正し、補正した前記測位信号の観測量を用いて自己位置の座標値を算出する位置標定部とを備え、 前記車載器は、 前記位置標定装置の位置標定部によって算出された自己位置の座標値を前記車両の座標値として含んだ車両情報を複数の他の車両へ送信し、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から前記他の車両の座標値を含んだ車両情報を受信する車両間通信部と、 前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値と、を運転制御支援装置に出力する相対位置情報生成部とを備え、 前記運転制御支援装置は、 前記車両の座標値と、前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両の座標値とに基づいて、前記複数の他の車両から前記車両に接近している車両を判定し、 前記車両が前記接近している車両に衝突しないように前記車両を制御し、 前記相対位置情報生成部は、前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値とに基づいて、前記車両に対する前記他の車両の相対位置を表す他車両相対位置情報を生成し、生成した他車両相対位置情報を出力し、 有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部と、 前記位置標定装置の前記位置標定部によって算出された自己位置の座標値と前記有料道路情報記憶部に記憶される有料道路情報とに基づいて前記車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に所定の課金制御を行う課金制御部と を備えることを特徴とする車載器。」(以下「本願発明」という。) 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由2は、本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1ないし3(引用例1ないし3)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用例1記載の事項・引用発明1 引用例1に記載されている事項、及び引用発明1は、上記「第2 補正却下の決定 2 検討 (1)引用例1記載の事項・引用発明1」に示したとおりである。 4 対比 本願発明と引用発明1とを対比すると(上記「第2 補正却下の決定 2 検討 (4)対比」を参照。)、両者の相違点は、以下のとおりである。 (相違点) 相違点5:本願補正発明においては「測位補強情報」が「地域別」とされ、「前記測位補強信号受信部によって取得された前記地域別の測位補強情報から、前記概略位置算出部によって算出された概略位置の座標値が示す概略位置を含んだ地域の測位補強情報を選択する測位補強情報選択部」を備えるのに対し、引用発明1においてはそのような構成は不明である点。 相違点6:本願補正発明の「相対位置情報生成部」は、「前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値と、前記車両間通信部によって前記複数の他の車両のそれぞれの他の車両から受信された車両情報に含まれる前記他の車両の座標値と、を運転制御支援装置に出力する」のに対し、引用発明1においてはそのような構成は不明である点。 相違点7:本願補正発明の「相対位置情報生成部」は、「前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値」を示す情報を算出しているのに対し、引用発明1においては他の移動体の位置情報から「移動方向及び移動速度を演算」するとされている点。 相違点8:本願補正発明が「有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報を記憶する有料道路情報記憶部」を備え、自己位置の座標値と有料道路情報とに基づいて「前記車両が有料道路を走行しているか否かを判定し、前記車両が有料道路を走行していると判定した場合に」所定の課金制御を行う課金制御部とを備えているのに対し、引用発明1においてはそのような構成を有していない点。 5 判断 相違点5,6はそれぞれ相違点1,2と同一であり、これについては上記「第2 補正却下の決定 2 検討 (5)判断」で検討したとおりである。 相違点7について検討すると、引用発明1の「衝突予測部」は、自己の移動体と他の移動体との衝突の予測を行うものであるから、引用発明1の通信装置において、「前記車両間通信部によって送信される車両情報に含まれる前記車両の座標値」を示す情報が算出されていることは明らかである。該算出を「相対位置情報生成部」が行うか否かは、通信装置を具体的に設計するに際し適宜選択されるべき設計事項である。 相違点8について検討すると、上記「(3)引用例3記載の事項・引用発明3」に示したように、引用発明3は、有料道路等における料金収受システムに使用される料金徴収用車載機であって、有料道路の地図情報と課金ポイントを含んだ情報及び料金計算情報(「有料道路の場所と料金とを含んだ有料道路情報」に相当。)を記憶する課金条件記憶作動部及びメモリ回路を備え、GPS衛星で位置標定して、課金ポイント(「有料道路情報が示す有料道路における特定の通過地点」に相当。)を通過する時点で、当該車両の料金徴収情報が記憶される車載機の発明である。引用発明3と同様にGPSを用いた有料道路の課金を行う引用発明1においても、引用発明3の構成を採用し、相違点8の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。 したがって、本願発明は、引用発明1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-09 |
結審通知日 | 2016-05-10 |
審決日 | 2016-05-24 |
出願番号 | 特願2011-244160(P2011-244160) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須中 栄治、大和田 有軌 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
酒井 伸芳 中塚 直樹 |
発明の名称 | 車載器 |
代理人 | 渡辺 敏雄 |
代理人 | 溝井 章司 |