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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1316704
審判番号 不服2015-17210  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-18 
確定日 2016-07-07 
事件の表示 特願2011- 20531「内燃機関の排気ガス浄化システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月23日出願公開、特開2012-159054〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年2月2日の出願であって、平成26年9月10日付けで拒絶理由が通知され、平成26年11月13日に意見書が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成27年6月25日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成27年9月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年9月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年9月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成27年9月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年11月13日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1ないし3の記載を下記の(2)に示す請求項1ないし3の記載に補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「【請求項1】
内燃機関の排気ガス中の有害物質を浄化する内燃機関の排気ガス浄化システムにおいて、第1酸化触媒を排気ポートから排気マニホールドの間に気筒毎に配置すると共に、排気マニホールドより下流の排気通路に、前記排気マニホールド側から順に、第2酸化触媒、尿素噴射ノズル、ディーゼルパティキュレートフィルタ、選択還元型触媒を排気通路に配置したことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項2】
前記尿素噴射ノズルと前記ディーゼルパティキュレートフィルタとの間にターボチャージャのタービンを配置し、前記第1酸化触媒より下流側となる前記排気マニホールドと吸気通路を接続するEGR通路を設けたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
前記第1酸化触媒に酸素吸蔵能力を有する酸化物と酸化物半導体が混在した触媒を担持させると共に、前記第2酸化触媒に貴金属触媒又は炭化水素吸着材と貴金属触媒が混在した触媒を担持させ、前記ディーゼルパティキュレートフィルタは、加水分解層を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「【請求項1】
内燃機関の排気ガス中の有害物質を浄化する内燃機関の排気ガス浄化システムにおいて、第1酸化触媒を排気ポートから排気マニホールドの間に気筒毎に配置すると共に、排気マニホールドより下流の排気通路に、前記排気マニホールド側から順に、第2酸化触媒、尿素噴射ノズル、ろ過壁表面に加水分解層を形成したディーゼルパティキュレートフィルタ、選択還元型触媒を配置したことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項2】
前記尿素噴射ノズルと前記ディーゼルパティキュレートフィルタとの間にターボチャージャのタービンを配置し、前記第1酸化触媒より下流側となる前記排気マニホールドと吸気通路を接続するEGR通路を設けたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
前記第1酸化触媒に酸素吸蔵能力を有する酸化触媒と酸化物半導体が混在した触媒を担持させると共に、前記第2酸化触媒に貴金属触媒又は炭化水素吸着材と貴金属触媒が混在した触媒を担持させることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。」(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1についてみると、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項である「ディーゼルパティキュレートフィルタ」が「ろ過壁表面に加水分解層を形成した」ものである旨を限定することを目的としたものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 独立特許要件の判断
(1) 刊行物
(1-1) 刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-239109号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物(以下、NOxという)の還元剤として尿素系液体を用いたNOx浄化装置に関するものである。」(段落【0001】)

(イ) 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に示されたエンジンの排ガス浄化装置では、排ガス温度が220℃以上にならないと、尿素系液体がNOx還元剤として十分に作用しないため、排ガス温度が220℃未満となるエンジンの軽負荷運転時に発生する排ガス中のNOxを効果的に還元できない問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、排ガス温度が180℃程度の低温域から450℃程度の高温域までの広い温度範囲にわたって、排ガス中のNOxを除去することができ、これにより大気に排出される排ガス中のNOxを効率良く低減できる、エンジンの排ガス浄化装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、プリ選択還元型触媒に到達する尿素系液体を排ガスに均一に分散させることにより、大気に排出される排ガス中のNOxを更に効率良く低減できるとともに、アンモニアの大気中への排出を有効に防止できる、エンジンの排ガス浄化装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、エンジン11の排気通路13に設けられたメイン選択還元型触媒17と、メイン選択還元型触媒17より排ガス上流側の排気通路13に設けられたプリ選択還元型触媒18と、プリ選択還元型触媒18より排ガス上流側の排気通路13に設けられ尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22と、尿素系液体20を貯留可能に構成された液体タンク23と、液体タンク23に貯留された尿素系液体20を液体噴射ノズル22に流量を調整して供給する尿素系液体供給手段24と、メイン選択還元型触媒17より排ガス下流側の排気通路13に設けられたメイン酸化触媒26と、液体噴射ノズル22より排ガス上流側の排気通路13に設けられたプリ酸化触媒27とを備えたエンジンの排ガス浄化装置である。
【0008】
この請求項1に記載されたエンジンの排ガス浄化装置では、先ずエンジン11から排出された排ガス中に含まれるNOの一部がプリ酸化触媒27にてNO_(2)に酸化され、液体噴射ノズル22から噴射された尿素系液体20がプリ選択還元型触媒18に到達するまでの高温部で加水分解してアンモニアが生成される。上記NO_(2)を含むNOxとアンモニアはプリ選択還元型触媒18に導かれ、この触媒18にて排ガス中のNOxの一部がアンモニアと反応してN_(2)まで還元された後に、メイン選択還元型触媒17にて残りのNOxがアンモニアと反応してN_(2)まで還元される。更にメイン選択還元型触媒17を通過した余剰のアンモニアがメイン酸化触媒26にて酸化されてN_(2)及び水が生成される。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1に示すように、液体噴射ノズル22より排ガス下流側であってプリ選択還元型触媒18より排ガス上流側の排気通路13にターボ過給機14のタービンケース14bが設けられたことを特徴とする。
この請求項2に記載されたエンジンの排ガス浄化装置では、液体噴射ノズル22から噴射された尿素系液体20がターボ過給機14のタービンケース14bに流入して、このタービンケース14b内でタービンホイールにより攪拌される。これにより上記尿素系液体20は排ガスに均一に分散された状態でプリ選択還元型触媒18に流入し、更にメイン選択還元触媒17に流入する。
また排気通路13は、エンジン11の排気ポート13aと、この排気ポート13aに接続された排気マニホルド13bと、この排気マニホルド13bに接続された排気管13cとを有し、プリ酸化触媒27は排気ポート13aに設けられたポート触媒28又は排気マニホルドに設けられたマニホルド触媒のいずれか一方又は双方からなることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド12aを介して吸気管12bが接続され、排気ポート13aには排気マニホルド13bを介して排気管13cが接続される。吸気管12bには、ターボ過給機14のコンプレッサケース14aと、ターボ過給機14により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ16とがそれぞれ設けられ、排気マニホルド13bに近い排気管13cにはターボ過給機14のタービンケース14bが設けられる。図示しないがコンプレッサケース14a内にはコンプレッサホイールが回転可能に設けられ、タービンケース14bにはタービンホイールが回転可能に設けられ、これらのホイールはシャフトにより連結される。エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービンホイール及びシャフトを介してコンプレッサホイールが回転し、このコンプレッサホイールの回転により吸気管12b内の吸入空気が圧縮されるように構成される。
【0011】
上記吸気ポートと吸気マニホルド12aと吸気管12bとにより吸気通路12が構成され、上記排気ポート13aと排気マニホルド13bと排気管13cにより排気通路13が構成される。排気管13cの途中にはメイン選択還元型触媒17が設けられ、メイン選択還元型触媒17より排ガス上流側であってタービンケース14bより排ガス下流側の排気管13cにはタービンケース14bに接近してプリ選択還元型触媒18が設けられる。メイン選択還元型触媒17は排気管13cの直径より大径の筒状のコンバータ19に収容され、プリ選択還元型触媒18は排気管13cの直径と略同一か或いはこの直径よりやや大径の短管21に収容される。
【0012】
メイン選択還元型触媒17は銅-ゼオライト系のモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM-5)がコーティングされたものである。この銅イオン交換ゼオライト触媒はNa型のZSM-5ゼオライトのNaイオンをCuイオンとイオン交換した物質である。またプリ選択還元型触媒18は、図3に詳しく示すように、両端に一対のフランジ21a,21aが固着された上記短管21内にステンレス鋼製箔を螺旋状及び波形状に曲げて挿入されたメタル担体18aと、メタル担体18aの表面にコーティングされた上記銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM-5)とを有する。なお、銅イオン交換ゼオライトを用いた触媒ではなく、ゼオライト、酸化チタン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等を用いた触媒であってもよい。
【0013】
プリ選択還元型触媒18より排ガス上流側の排気通路13、即ちタービンケース14bより排ガス上流側であって排気ポート13aより排ガス下流側の排気マニホルド13bには、尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22が設けられる。この尿素系液体20は尿素水溶液、アンモニア水、アンモニア誘導物質等であり、液体タンク23に貯留される。液体タンク23内の尿素系液体20は尿素系液体供給手段24によりその流量を調整して液体噴射ノズル22に供給される。具体的には、尿素系液体供給手段24は、液体タンク23及び液体噴射ノズル22を連通接続する液体供給管24aと、この液体供給管24aに設けられ液体噴射ノズル22への尿素系液体20の流量を調整する流量調整弁24bと、流量調整弁24b及び液体タンク23間の液体供給管24aに設けられ液体タンク23内の尿素系液体20を液体噴射ノズル22に圧送するポンプ24cとを有する。流量調整弁24bは液体供給管24aの開度を変更することにより、液体噴射ノズル22への尿素系液体20の流量が調整される。
【0014】
一方、メイン選択還元型触媒17より排ガス下流側の排気管13cにはメイン酸化触媒26が設けられ、液体噴射ノズル22より排ガス上流側の排気ポート13a又は排気マニホルド13bのいずれか一方又は双方にプリ酸化触媒27が設けられる。メイン酸化触媒26は上記メイン選択還元型触媒17より排ガス下流側のコンバータ19に収容される。またプリ酸化触媒27は、この実施の形態では、排気ポート13aに設けられたポート触媒28により構成される。」(段落【0005】ないし【0014】)

イ 刊行物1発明
上記ア(特に、段落【0007】及び【0009】)及び図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物1発明>
「エンジン11の排気ガス中の有害物質を浄化するエンジン11の排ガス浄化装置において、排気ポート13a、排気マニホルド13b及び排気管13cから構成されるエンジン11の排気通路13に、上流から順に、プリ酸化触媒27、尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22、プリ選択還元型触媒18及びメイン選択還元型触媒17を配置するとともに、プリ酸化触媒27は、排気ポート13aに設けられたポート触媒28と排気マニホルド13bに設けられたマニホルド触媒の双方からなり、排気マニホルド13bには尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22が設けられるエンジン11の排ガス浄化装置。」

(2) 対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における「エンジン11」は本願補正発明における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「排ガス浄化装置」は「排気ガス浄化システム」に、「排気マニホルド13b」は「排気マニホールド」に、「尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22」は「尿素噴射ノズル」に、「プリ選択還元型触媒18及びメイン選択還元型触媒17」は「選択還元型触媒」に、それぞれ相当する。
そして、刊行物1発明における「排気ポート13aに設けられたポート触媒28」と本願補正発明における「第1酸化触媒を排気ポートから排気マニホールドの間に気筒毎に配置する」は、「第1酸化触媒を排気系通路に気筒毎に配置する」という点において一致する。
また、刊行物1発明における「マニホルド触媒」は、「排気マニホルド13bに設けられた」ものであるところ、その具体的配置状況は別途検討することとして、本願補正発明における「第2酸化触媒」に相当し、したがって、刊行物1発明における 「エンジン11の排気通路13に、上流から順に、プリ酸化触媒27、尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22、プリ選択還元型触媒18及びメイン選択還元型触媒17を配置」し、「プリ酸化触媒27」として「排気マニホルド13bに設けられたマニホルド触媒」を備えることと、本願補正発明における「排気マニホールドより下流の排気通路に、前記排気マニホールド側から順に、第2酸化触媒、尿素噴射ノズル、ろ過壁表面に加水分解層を形成したディーゼルパティキュレートフィルタ、選択還元型触媒を配置」することは、「第1酸化触媒より下流の排気系通路に、順に、第2酸化触媒、尿素噴射ノズル、選択還元型触媒を配置した」という限りにおいて一致する。
したがって、本願補正発明の記載に倣って整理すると、本願補正発明と刊行物1発明とは、「内燃機関の排気ガス中の有害物質を浄化する内燃機関の排気ガス浄化システムにおいて、第1酸化触媒を排気系通路に気筒毎に配置すると共に、第1酸化触媒より下流の排気系通路に、順に、第2酸化触媒、尿素噴射ノズル、選択還元型触媒を配置した内燃機関の排気ガス浄化システム。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明においては、「第1酸化触媒を排気ポートから排気マニホールドの間に気筒毎に配置すると共に、排気マニホールドより下流の排気通路に、前記排気マニホールド側から順に、第2酸化触媒、尿素噴射ノズル、ろ過壁表面に加水分解層を形成したディーゼルパティキュレートフィルタ、選択還元型触媒を配置した」のに対し、
刊行物1発明においては、「排気ポート13a、排気マニホルド13b及び排気管13cから構成されるエンジン11の排気通路13に、上流から順に、プリ酸化触媒27、尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22、プリ選択還元型触媒18及びメイン選択還元型触媒17を配置」するとともに、「プリ酸化触媒27は、排気ポート13aに設けられたポート触媒28と排気マニホルド13bに設けられたマニホルド触媒の双方からなり」、「排気マニホルド13bには尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22が設けられる」点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。
まず、本願補正発明における「第1酸化触媒を排気ポートから排気マニホールドの間」に「配置する」という事項は、その記載ぶりからすると、第1酸化触媒を配置する部位として排気ポートを含む趣旨と理解されること、及び、刊行物1発明においては、「排気ポート13aに設けられたポート触媒28」とされているが、刊行物1の図1をみると、ポート触媒28は排気ポート13aと排気マニホルド13bの分岐管の両方にわたって設けられていることからすると、刊行物1発明におけるポート触媒28は排気ポート13aから排気マニホールド13bの間に気筒毎に配置されているということができる。
また、刊行物1発明は「排気マニホルド13bに設けられたマニホルド触媒」を備えるが、排気マニホルドないしその近傍に触媒を設ける場合、例えば、実願昭62-84539号(実開昭63-193722号)のマイクロフィルム(特に、図面等参照。)、実願平3-59078号(実開平5-12622号)のCD-ROM(特に、段落【0003】及び図4等参照。)等に示されているように、排気マニホルドの合流部(集合部)の下流側近傍に触媒を設けることが本願の出願前に広く知られて(以下、「周知技術1」という。)おり、しかも、刊行物1発明におけるマニホルド触媒という用語は周知技術1におけるマニホールドコンバータ(マニバータ)等の用語と酷似している。
以上からすると、刊行物1発明に周知技術1を適用して、刊行物1発明における「排気マニホルド13bに設けられたマニホルド触媒」を、排気マニホルド13bの合流部(集合部)の下流側近傍に設けることはごく自然ないし普通であり、格別のことではない。
ここで、以上のようにマニホルド触媒を設けると、排気マニホルド13b(合流部の下流側)にマニホルド触媒及び液体噴射ノズル22が設けられることになるが、それは、刊行物1の図1にみられるように、排気マニホルド13bの合流部から排気管13cへの接続部までの寸法ないし距離が比較的長く形成されていることによる。このようにマニホルド触媒等を排気マニホルドに設けるか、それとも排気マニホルドに接続する排気管に設けるかは、排気系の構成部品である排気マニホルド等の形状・構造に依存する設計的事項(ないし呼称の問題)にすぎず、技術内容的にみると、概ね、該合流部の下流側にマニホルド触媒(第2酸化触媒)及び液体噴射ノズル22(尿素噴射ノズル)が設けられる点において本願補正発明と比べて格別異なるものではない。
そして、一般に、排気マニホルドの合流部から排気管への接続部までの寸法等をどの程度の長さとするかはレイアウトや取付け作業性等を考慮して適宜設計する事項であって、該寸法等を比較的短くして、排気マニホルドに接続する排気管等にマニホルド触媒及び液体噴射ノズル22を設けるように構成することは適宜なし得ることである。
次に、刊行物1発明はディーゼルパティキュレートフィルタを備えていないが、排気系に、順に、酸化触媒、尿素噴射ノズル、加水分解触媒を担持したディーゼルパティキュレートフィルタ及び選択還元型触媒を配置することは、例えば、特開2009-114930号公報(特に、図1及び段落【0026】等参照。)、特開2010-242515号公報(特に、図1並びに段落【0025】及び【0026】等参照。)等に示されているように本願の出願前に周知の技術である(以下、「周知技術2」という。)。
してみると、刊行物1発明ないし刊行物1発明に上記のようにマニホルド触媒を設けたものにおいても排気系にディーゼルパティキュレートフィルタを設けることが好適であることは自明ないし常識であり、ディーゼルパティキュレートフィルタに加水分解触媒を担持させるか、ろ過壁表面に形成するかは設計事項であるから、刊行物1発明ないし刊行物1発明に上記のようにマニホルド触媒を設けたものにおいて周知技術2を適用して、液体噴射ノズル22とプリ選択還元型触媒18の間にろ過壁表面に加水分解触媒を形成したディーゼルパティキュレートフィルタを設けることは適宜なし得ることである。
なお、念のため補足すると、以上において、刊行物1発明における「上流から順に、プリ酸化触媒27、尿素系液体20を噴射する液体噴射ノズル22、・・・を配置するとともに、プリ酸化触媒27は、排気ポート13aに設けられたポート触媒28と排気マニホルド13bに設けられたマニホルド触媒の双方からなり、」という事項から、マニホルド触媒が液体噴射ノズル22の上流に位置すると認定し、したがって、「順に、第2酸化触媒、尿素噴射ノズル、・・・を配置した」点を一致点としたが、このようにマニホルド触媒(第2酸化触媒)が液体噴射ノズル22の上流に位置するという構成が一般的であることは、周知技術2からも裏付けられる。
以上からすると、刊行物1発明において、周知技術1及び周知技術2を適用して、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
そして、本願補正発明は、全体としてみても、刊行物1発明、周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(3) まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年9月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲は、平成26年11月13日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、そのうち、本願の請求項1に記載した発明(以下、「本願発明」という。)の特許請求の範囲は、上記第2の[理由]の1(1)に記載したとおりである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物1には、図面とともに、上記第2の[理由]の3に摘記したとおりの事項及び発明が記載されている。

3 対比・判断
上記第2の[理由]の2で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項を限定したものである。そして、本願発明の発明特定事項を限定した本願補正発明が上記第2の[理由]の3のとおり、刊行物1発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、実質的に同様の理由により、刊行物1発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-20 
結審通知日 2016-04-26 
審決日 2016-05-20 
出願番号 特願2011-20531(P2011-20531)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 敏行  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 松下 聡
伊藤 元人
発明の名称 内燃機関の排気ガス浄化システム  
代理人 平井 功  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 山田 祐樹  
代理人 昼間 孝良  
代理人 境澤 正夫  

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