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審決分類 |
審判 査定不服 審理方式、審理手続 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1316722 |
審判番号 | 不服2015-9234 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-19 |
確定日 | 2016-07-06 |
事件の表示 | 特願2013-553500「CDMAダイバーシティ受信機経路が時間二重受信機と共有されたCDMAトランシーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月16日国際公開、WO2012/109276、平成26年 4月17日国内公表、特表2014-509496〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2012年2月7日(パリ条約に基づく優先権主張2011年2月7日、アメリカ合衆国、2012年2月6日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月1日付けて手続補正がなされ、平成26年10月16日付けて拒絶の理由が通知され、平成27年1月9日付けで意見書が提出されるとともに、同時に手続補正がなされ、平成27年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年5月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされ、平成27年9月3日付けで上申書が提出されたものである。 2.平成27年5月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年5月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された(下線は補正箇所を示す)。 〈補正前〉 【請求項1】 少なくとも第1および第2のアンテナと、 ワイヤレスデバイスが第1のモードで動作しているか、または第2のモードで動作しているかに基づいて、前記第1及び第2のアンテナから異なるフィルタ経路への受信信号の経路を制御するための少なくとも第1及び第2のスイッチと、 前記デバイスが前記第2のモードで動作しているとき、前記第1のアンテナだけで第1のワイヤレスシステムから受信された信号を処理することと、 前記デバイスが前記第1のモードで動作しているとき、受信ダイバーシティを使用して前記第1および第2のアンテナで第2のワイヤレスシステムから受信された信号を処理することと、 のための少なくとも1つのプロセッサと、 を備え、 前記少なくとも1つのプロセッサは、前記デバイスが前記第1のモードで動作しているとき、前記第2のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路と同じ周波数帯に対応する、前記第1のアンテナでの受信のためのフィルタ経路を選択するように前記第1及び第2のスイッチを制御するように構成される、 ワイヤレスデバイス。 〈補正後〉 【請求項1】 少なくとも第1および第2のアンテナと、 ワイヤレスデバイスが第1のモードで動作しているか、または第2のモードで動作しているかに基づいて、前記第1及び第2のアンテナから異なるフィルタ経路への受信信号の経路を制御するための少なくとも第1及び第2のスイッチと、 前記デバイスが前記第2のモードで動作しているとき、前記第1のアンテナだけで第1のワイヤレスシステムから受信された信号を処理することと、 前記デバイスが前記第1のモードで動作しているとき、受信ダイバーシティを使用して前記第1および第2のアンテナで第2のワイヤレスシステムから受信された信号を処理することと、 のための少なくとも1つのプロセッサと、 を備え、 前記少なくとも1つのプロセッサは、前記デバイスが前記第1のモードで動作しているとき、前記第2のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路と同じ周波数帯に対応する、前記第1のアンテナでの受信のためのフィルタ経路を選択するように前記第1及び第2のスイッチを制御するように構成され、前記第1のモードにおける前記第1のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路は、前記第2のモードにおける前記第1のアンテナでの受信のためのフィルタ経路の1つと同じである、 ワイヤレスデバイス。 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路」について「前記第1のモードにおける前記第1のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路は、前記第2のモードにおける前記第1のアンテナでの受信のためのフィルタ経路の1つと同じである」との限定を付加するものである。 本件補正の根拠箇所として、審判請求人は、審判請求書にて第0074段落及び第0077段落並びに図8及び図9の説明文を、平成27年9月3日付け上申書にて第0077段落、第0080段落、第0093段落及び第0099段落を挙げている。 そこで、上記根拠箇所について検討する。 第0074段落には、「いくつかの態様によれば、ワイヤレスデバイスは、第1のワイヤレスシステムと第2のワイヤレスシステムとの間の受信経路の共有を有効にするために制御可能なスイッチの構成を含み得る。たとえば、ワイヤレスデバイスは、ワイヤレスデバイスの動作モードに基づいて第1および第2のワイヤレスシステムの受信経路を選択的に完了するために、第1のアンテナに結合された第1のスイッチと、第2のアンテナに結合された第2のスイッチとを有することができる。態様によれば、第1および第2のワイヤレスシステムの受信経路を選択的に完了するために、スイッチが使用され得る。第2のワイヤレスシステムから受信される信号を処理するとき、デバイスは、第1のモードで動作するように構成され得る。」と記載されている。 上記記載によれば、制御可能なスイッチの構成によって、第1のワイヤレスシステムと第2のワイヤレスシステムとの間の受信経路の共有が有効となることが読み取れる。 しかしながら、ワイヤレスシステムが異なれば通信に用いる帯域は異なることは技術常識であるから、例えば、図8において、第1のワイヤレスシステム(例えばGSM)を用いる場合にT/Rスイッチ808が選択するフィルタ経路(すなわちBPF)と、第2のワイヤレスシステム(例えばWCDMA)を用いる場合にT/Rスイッチ808が選択するフィルタ経路(すなわちBPF)とは、当然異なると理解される。 仮に、GSMを用いる場合とWCDMAを用いる場合とで同じBPFを使用できるとするならば、相異なる帯域で伝送された信号を同一の帯域通過特性を持つBPFでフィルタすることによっても良好に復調及び復号が可能となるような特別な手段が必要となるが、そのような手段は発明の詳細な説明に記載されていない。 してみると、第0074段落の記載は、異なるワイヤレスシステム間で、アンテナ及びそれに付属するアンテナモジュール(例えば、図9におけるアンテナ1 804及びアンテナ1モジュール908)を全体として共有することについて述べたに過ぎないと理解され、アンテナモジュール内の特定のフィルタ経路を共有することまでを述べたものとは理解されない。 第0077段落には、「図8は、半二重トランシーバシステムと全二重トランシーバシステムとの間でアンテナを共有することをサポートする無線フロントエンド800の例示的なシステムブロック図を示す。態様によれば、全二重ダイバーシティ受信経路は、時間二重受信機と共有され得る。図示されていないが、フロントエンドは、信号を、たとえば図2?図6に関して上述したものなど、RFユニット250およびモデムプロセッサ260と交換することができる。」と記載されている。 これについても第0074段落の記載と同様であり、例えば図4のダイバーシティアンテナ204及びそれに付属する第2のセクション214cが全体としてGSMシステムとCDMAシステムとで共用されていることを述べているに過ぎないと理解され、、アンテナモジュール内の特定のフィルタ経路を両システムで共有することまでを述べたものとは理解されない。 第0080段落には、「(たとえば、FDD、CDMA、WCDMA、LTEおよびTDMAなど)第2のワイヤレスシステムから受信される信号を処理するとき、ワイヤレスデバイスは、第1のモードで動作するように構成され得る。第1のモードでは、デバイスは、受信ダイバーシティを使用して、第1のアンテナ804および第2のアンテナ802において受信信号を処理し得る。たとえば、ワイヤレスデバイスは、第1のアンテナ804および第2のアンテナ802において並行して受信信号を処理することができる。第1のモードである間、デバイスは、第2のアンテナ802およびT/Rスイッチ806を介して受信するために選択される周波数経路に対応し得る第1のアンテナ804およびT/Rスイッチ808を介した受信フィルタ経路816、818、828を選択することができる。このようにしてフィルタ経路を選択することによって、デバイスは、受信ダイバーシティのために第1および第2のアンテナを使用することができる。」と記載されている。 この記載は、第1のモード(つまり、受信ダイバーシティを行うモード)において、第1のアンテナ及び第2のアンテナが共に第2のワイヤレスシステムの信号を受信する場合について述べたものであって、第1のワイヤレスシステムと第2のワイヤレスシステムとでフィルタ経路を共用することについて述べたものではない。 第0093段落には、「態様によれば、第2のアンテナ802、T/Rスイッチ918、およびアンテナ2モジュール906は、たとえば、デュプレクサ814aを介してアクティブであり得る。デュプレクサ814aに相当する周波数帯域は、第1のアンテナ804を介したダイバーシティ受信のために選択され得る。たとえば、アンテナ804、T/Rスイッチ920、およびアンテナ1モジュール908は、フィルタ916を介して第2のワイヤレスシステムの信号を受信することができる。」と記載されている。 この記載は、第0080段落と同様に、第2のシステムの信号をダイバーシティ受信することについて述べたに過ぎず、第1のワイヤレスシステムと第2のワイヤレスシステムとでフィルタ経路を共用することについて述べたものではない。 第0099段落には、「図8?図9を参照しながら上記で説明したように、第2のワイヤレスシステムからの信号の受信は、第1のアンテナ804および第2のアンテナ802を介し得る。たとえば、CDMA信号は、第2のアンテナ802およびアンテナ2モジュール1002を介して受信され得る。第1のアンテナ804における受信ダイバーシティでは、フィルタは、たとえば916など、アンテナ1モジュール1004において選択され得、これは、アンテナ2モジュール1002において受信するために選択される周波数帯域に等しくてもよい。」と記載されている。 この記載は、第0080段落と同様に、第2のシステムの信号をダイバーシティ受信することについて述べたに過ぎず、第1のワイヤレスシステムと第2のワイヤレスシステムとでフィルタ経路を共用することについて述べたものではない。 そして、上記根拠箇所以外の翻訳文を検討しても、アンテナ及びアンテナモジュールを相異なるシステムで共用すること、並びに、ダイバーシティ受信モードにおいて第2ワイヤレスシステムの信号を受信した2つのアンテナそれぞれに接続される2つのアンテナモジュールにて双方のアンテナモジュールで用いるフィルタ経路を同一の周波数帯域のためのものとすること以上のことは記載されておらず、「前記第1のモードにおける前記第1のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路は、前記第2のモードにおける前記第1のアンテナでの受信のためのフィルタ経路の1つと同じである」ということは読み取ることができない。 以上によれば、本件補正は、翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)独立特許要件 以下では、仮に、本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反せず、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 本件補正によって請求項1に新たに追加された「前記第1のモードにおける前記第1のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路は、前記第2のモードにおける前記第1のアンテナでの受信のためのフィルタ経路の1つと同じである」との事項は、(1)で述べたのと同様の理由で、発明の詳細な説明に記載された事項であるとは認められない。 したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 加えて、上記事項のうち、一方のフィルタ経路が他方のフィルタ経路と「同じである」とは、以下の(ア)から(エ)のいずれを意味するのかが不明確である。 (ア) 一方のフィルタ経路と他方のフィルタ経路とが、回路上で同一の部分である (イ) 一方のフィルタ経路と他方のフィルタ経路とが、回路上では異なる部分であるが、回路特性として同一である (ウ) 一方のフィルタ経路と他方のフィルタ経路とが、フィルタ経路の集合であるアンテナモジュールとして同一のモジュール内に含まれる (エ) その他 したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 上記のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび (1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 仮に、本件補正が限定的減縮に該当するものであったとしても、(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成27年5月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年1月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 【請求項1】 少なくとも第1および第2のアンテナと、 ワイヤレスデバイスが第1のモードで動作しているか、または第2のモードで動作しているかに基づいて、前記第1及び第2のアンテナから異なるフィルタ経路への受信信号の経路を制御するための少なくとも第1及び第2のスイッチと、 前記デバイスが前記第2のモードで動作しているとき、前記第1のアンテナだけで第1のワイヤレスシステムから受信された信号を処理することと、 前記デバイスが前記第1のモードで動作しているとき、受信ダイバーシティを使用して前記第1および第2のアンテナで第2のワイヤレスシステムから受信された信号を処理することと、 のための少なくとも1つのプロセッサと、 を備え、 前記少なくとも1つのプロセッサは、前記デバイスが前記第1のモードで動作しているとき、前記第2のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路と同じ周波数帯に対応する、前記第1のアンテナでの受信のためのフィルタ経路を選択するように前記第1及び第2のスイッチを制御するように構成される、 ワイヤレスデバイス。 (1)引用文献 引用文献1.特表2007-533261号公報(拒絶査定の引用文献2) (1-1)引用文献1の記載 引用文献1には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 (ア)第0020段落、第0026段落、第0027段落及び第0036段落 【0020】 図2は、2本のアンテナの無線デバイス110aのブロック図を示しており、これは、無線デバイス110の1つの実施形態である。無線デバイス110aは、RXダイバーシティを備えたCDMAのための1つの周波数帯域と、GSMのための2つの周波数帯域とを支援するトランシーバシステム210aを含んでいる。1つのCDMA帯域は、例えば、PCSまたはセルラであり得る。2つのGSM帯域は、例えば、(ヨーロッパにおいて、一般に使用されている)GSM1800およびGSM900、または(アメリカ合衆国において、一般に使用されている)GSM1900およびGSM850であり得る。1つのCDMA帯域は、CDMA送信帯域(CDMA TX)とCDMA受信帯域(CDMA RX)とを含む。2つのGSM帯域は、第1および第2のGSM送信帯域(GSM TX1およびTX2)と、第1および第2のGSM受信帯域(GSM RX1およびRX2)とを含む。2つのGSM帯域の設計は、無線デバイス110aが、より多くのGSMシステムと通信し、ローミング能力を向上することを可能にする。 【0026】 さらに加えて、デュプレクサ232aは、主アンテナ202からの受信信号を、T/Rスイッチ220aを介して受信し、受信信号を、主CDMA受信経路へルート設定する。デュプレクサ232aは、CDMAのための送信経路と主受信経路との間に切り離しを与え、これらの2本の経路の各々にとって望ましくない信号成分をフィルタで取り除き、全二重通信のために、これらの2本の信号経路の同時の動作を支援する。(GSMでは、送信および受信経路は、同時にアクティブでないので、デュプレクサは不要である)。主CDMA受信経路は、低雑音増幅器(LNA)234aおよびフィルタ236aを含んでいる。LNA234aは、主アンテナ202からの受信信号を増幅し、増幅された受信信号を与える。フィルタ236aは、増幅された受信信号をフィルタにかけ、主CDMA受信信号(CRMX)をRFユニット250aに与える。フィルタ236aは、CDMA受信帯域(CDMA RX)に等しい帯域幅をもつSAWフィルタで実施され得る。デュプレクサ232aは、CDMA受信帯域を予め選択するためのフィルタリングを行い、フィルタ236aは、CDMA送信経路から来たCDMAアップリンク信号の漏れを取り去る追加のフィルタリングを行う。 【0027】 第2の部分214a内では、ダイプレクサ(dipexer)230aは、ダイバーシティアンテナ204、第2のGSM受信経路、およびダイバーシティCDMA受信経路に結合する。ダイプレクサ230aは、ダイバーシティアンテナ204からの受信信号を、2つの周波数帯域内に信号成分を含む2つの出力信号へ分割する周波数選択ユニットである。ダイプレクサ230aは、(1)GSMの信号成分を含んでいる第1のダイプレクサ出力信号を、第2のGSM受信経路へ、(2)CDMAの信号成分を含んでいる第2のダイプレクサ出力信号を、ダイバーシティCDMA受信経路へ与える。ダイプレクサ230aの代わりに、他の周波数選択ユニットも使用され得る。ダイプレクサ230aは、単極双投接点(single-pole two-throw, SP2T)スイッチ、フィルタリングを行わない信号スプリッタ、または何か他のユニットでも実施され得る。第2のGSM受信経路は、(1)第1のダイプレクサ出力信号を第2のGSM受信帯域(GSM RX2)に対してフィルタにかけるフィルタ226bと、(2)フィルタ226bからのフィルタにかけられた信号を増幅し、第2のGSM受信信号(GRX2)をRFユニット250aに与えるLNA228bとを含む。ダイバーシティCDMA受信経路は、(1)CDMA受信帯域(CDMA RX)のための第2のダイプレクサ出力信号をフィルタにかけるフィルタ236bと、(2)フィルタ236bからのフィルタにかけられた信号を増幅し、ダイバーシティCDMA受信信号(CRXD)をRFユニット250aに与えるLNA234bとを含む。フィルタ226bおよび236bは、それぞれ、第2のGSM受信帯域およびCDMA受信帯域とを予め選択するためのフィルタリングを行う。 【0036】 ダイバーシティモードで動作するとき、主およびダイバーシティCDMA受信経路の両者は、アクティブであり、CDMA受信帯域上の同じRFチャネルに同調させられる。RFユニット250aは、主およびダイバーシティCDMA受信経路からの、主およびダイバーシティCDMA受信信号をそれぞれ処理し、主およびダイバーシティベースバンド受信信号(C RXMおよびC RXD)をそれぞれ与える。次に、(CDMAにおいて一般に使用されている)レーキ受信機が、これらの2つのベースバンド信号の2本のデータサンプルストリームを処理し、組合わせて、向上した受信信号品質をもつ複合受信シンボルストリームを得て、これは、1ビット当りのエネルギ対総雑音比(energy-per-bit-to-total-noise ratio, Eb/No)によって量子化され得る。より高いEb/Noは、CDMA 1X EV-DO、UMTS高速パケットデータ、UMTS高速回線交換データ、等のような、高データレートの応用に向上した性能(例えば、より高い総スループット)を与えることができる。 (イ)第0041段落及び第0045段落から第0047段落 【0041】 図3は、2本のアンテナの無線デバイス110bのブロック図を示しおり、これは、無線デバイス110の別の実施形態である。無線デバイス110bは、トランシーバシステム210bを含み、これは、RXダイバーシティを備えたCDMAのための1つの周波数帯域を支援し(例えば、PCSまたはセルラ)、GSMのための4つの周波数帯域を支援する(例えば、GSM1900、GSM1800、GSM900、およびGSM850)。4帯域のGSMトランシーバは、全ての現在一般に使用されているGSM帯域上で通信することができ、国際的なローミングを支援する。 【0045】 第2の部分214b内では、トリプレクサ(triplexer)230bはダイバーシティアンテナ204に結合し、アンテナ204から受信信号を得て、第1および第2のトリプレクサ出力信号を、第2および第4のGSM受信経路にそれぞれ与え、第3のトリプレクサ出力信号を、ダイバーシティCDMA受信経路に与える。第2のGSM受信経路は、フィルタ226bおよびLNA228bを含み、これらは、第1のトリプレクサ出力信号をフィルタにかけ、増幅し、第2のGSM受信信号(GRX2)をRFユニット250bに与える。第4のGSM受信経路は、フィルタ226dおよびLNA228dを含み、これらは、第2のトリプレクサ出力信号をフィルタにかけ、増幅し、第4のGSM受信信号(GRX4)をRFユニット250bに与える。フィルタ226bおよび226dは、それぞれ、第2および第4のGSM受信帯域に等しい帯域幅をもつSAWフィルタであり得る。 【0046】 部分212b内のCDMA送信経路および主CDMA受信経路は、図2の部分212a内のものと同じである。部分214b内のダイバーシティCDMA受信経路は、図2の部分214a内のものと同じものである。 【0047】 トランシーバシステム210bは、種々のやり方で動作され得る。テーブル2は、トランシーバシステム210bによって支援されている幾つか動作モードを載せている。 (ウ)第0047段落中の表2からは、動作モード1では主アンテナ及びダイバーシティアンテナによってCDMAシステムからの信号のダイバーシティ受信が行われること、及び、動作モード4ではダイバーシティアンテナだけでGSMシステムからの信号の受信が行われることが読み取れる。 (エ)第0049段落から第0052段落 【0049】 図4は、2本のアンテナの無線デバイス110cのブロック図を示しており、これは、無線デバイス110のさらに別の実施形態である。無線デバイス110cは、トランシーバシステム210cを含み、これは、RXダイバーシティを備えたCDMAのための2つの周波数帯域を支援し(例えば、PCSおよびセルラ)、GSMのための4つの周波数帯域を支援する(例えば、GSM1900、GSM1800、GSM900、およびGSM850)。トランシーバシステム210cは、第1の部分212c、第2の部分214c、およびRFユニット250cを含んでいる。第1の部分212cは、4つのGSM帯域のための2本のGSM送信経路、2つのGSM帯域のための第1および第3のGSM受信経路、並びに2つのCDMA帯域のための2本のCDMA送信経路および2本の主CDMA受信経路を含んでいる。第2の部分214cは、他の2つのGSM帯域のための第2および第4のGSM受信経路と、2つのCDMA帯域のための2つのダイバーシティCDMA受信経路とを含んでいる。RFユニット250cは、部分212cおよび214cのために信号を調整する。 【0050】 第1の部分212c内では、SP5TのT/Rスイッチ220cは、主アンテナ202に結合された1つの共通のRFポートと、5つのI/O RFポートとをもち、5つのI/O RFポートは、2本のGSM送信経路、第1および第3のGSM受信経路、並びにCDMA送信/主受信経路のためのダイプレクサ222に結合されている。部分212c内の2本のGSM送信経路と、第1および第3のGSM受信経路とは、図3の部分212b内のものと同じものである。第1のCDMA帯域のための送信経路および主受信経路は、図2において既に記載されたデュプレクサ232a、LNA234a、フィルタ236aおよび242a、電力増幅器244a、並びにアイソレータ246aで実施される。第2のCDMA帯域のための送信経路および主受信経路は、デュプレクサ232b、LNA234c、フィルタ236cおよび242b、電力増幅器244b、並びにアイソレータ246bで実施され、これらは、第2のCDMA帯域のために設計されている。ダイプレクサ222は、T/Rスイッチ220cの1つのI/O RFポート、デュプレクサ232aの1つのポート、およびデュプレクサ232bの1つのポートに結合している。ダイプレクサ222は、T/Rスイッチ220cとデュプレクサ232aとの間で、第1のCDMA帯域のための第1のCDMA信号をルート設定し、さらに加えて、T/Rスイッチ220cとデュプレクサ232bとの間で、第2のCDMA帯域のための第2のCDMA信号をルート設定する。 【0051】 第2の部分214c内では、クアドプレクサ(quadplexer)230cは、ダイバーシティアンテナ204、第2および第4のGSM受信経路、並びに2本のダイバーシティCDMA受信経路に結合している。部分214c内の第2および第4のGSM受信経路と第1のダイバーシティCDMA受信経路とは、図3の部分214b内のものと同じものである。第2のダイバーシティCDMA受信経路は、フィルタ236dおよびLNA234dで実施され、これらは、第2のCDMA帯域のために設計されている。 【0052】 トランシーバシステム210cにおいて、主アンテナ202は、送信および受信の両者に使用され、一方で、ダイバーシティアンテナ204は、受信のみに使用される。SP5Tスイッチ220cは、第1の部分212c内の全てのGSMおよびCDMA送信経路、2本のGSM受信経路、並びに2本の主CDMA受信経路を支援することができる。クアドプレクサ230cは、第2の部分214c内の2本のGSM受信経路および2本のダイバーシティCDMA受信経路を支援することができる。 (オ)図2及び図3よれば、図3の実施形態は、図2の実施形態に対して、主アンテナ側にGSMの送信経路としてGTX3及びGTX4とGSMの受信経路としてGRX3とを追加し、ダイバーシティアンテナ側にGSMの受信経路としてGRX4を追加し、これらの経路の増加に伴って、図2の実施形態のSP3T T/Rスイッチ220aをSP5T T/Rスイッチ220bに変更し、図2の実施形態のダイプレクサ230aをトリプレクサ230bに変更したものであることが理解できる。 (カ)図3及び図4によれば、図4の実施形態は、図3の実施形態に対して、主アンテナ側にCDMAの送受信経路としてCTX2及びCRX2Mを追加し、ダイバーシティアンテナ側にCDMAの受信経路としてCRX2Dを追加し、ダイバーシティアンテナ側の経路の増加に伴って、図3の実施形態のトリプレクサ230bをクアドプレクサ230cに変更したものであることが理解できる。 (キ)図4によれば、RFユニット250cがモデムプロセッサ260cと接続されていることが理解できる。 以上の引用文献1の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 無線デバイス110cは、トランシーバシステム210cを含み、これは、RXダイバーシティを備えたCDMAのための2つの周波数帯域を支援し(例えば、PCSおよびセルラ)、GSMのための4つの周波数帯域を支援し(例えば、GSM1900、GSM1800、GSM900、およびGSM850)、 トランシーバシステム210cは、第1の部分212c、第2の部分214c、およびRFユニット250cを含み、 第1の部分212cは、4つのGSM帯域のための2本のGSM送信経路、2つのGSM帯域のための第1および第3のGSM受信経路、並びに2つのCDMA帯域のための2本のCDMA送信経路および2本の主CDMA受信経路を含み、 第2の部分214cは、他の2つのGSM帯域のための第2および第4のGSM受信経路と、2つのCDMA帯域のための2つのダイバーシティCDMA受信経路とを含み、 RFユニット250cは、部分212cおよび214cのために信号を調整し、 第1の部分212c内では、SP5TのT/Rスイッチ220cは、主アンテナ202に結合された1つの共通のRFポートと、5つのI/O RFポートとをもち、5つのI/O RFポートは、2本のGSM送信経路、第1および第3のGSM受信経路、並びにCDMA送信/主受信経路のためのダイプレクサ222に結合され、 部分212c内の2本のGSM送信経路と、第1および第3のGSM受信経路とは、図3の部分212b内のものと同じものであり 第1のCDMA帯域のための送信経路および主受信経路は、図2において既に記載されたデュプレクサ232a、LNA234a、フィルタ236aおよび242a、電力増幅器244a、並びにアイソレータ246aで実施され、 第2のCDMA帯域のための送信経路および主受信経路は、デュプレクサ232b、LNA234c、フィルタ236cおよび242b、電力増幅器244b、並びにアイソレータ246bで実施され、これらは、第2のCDMA帯域のために設計されており、 ダイプレクサ222は、T/Rスイッチ220cの1つのI/O RFポート、デュプレクサ232aの1つのポート、およびデュプレクサ232bの1つのポートに結合し、ダイプレクサ222は、T/Rスイッチ220cとデュプレクサ232aとの間で、第1のCDMA帯域のための第1のCDMA信号をルート設定し、さらに加えて、T/Rスイッチ220cとデュプレクサ232bとの間で、第2のCDMA帯域のための第2のCDMA信号をルート設定し、 第2の部分214c内では、クアドプレクサ(quadplexer)230cは、ダイバーシティアンテナ204、第2および第4のGSM受信経路、並びに2本のダイバーシティCDMA受信経路に結合し、 部分214c内の第2および第4のGSM受信経路と第1のダイバーシティCDMA受信経路とは、図3の部分214b内のものと同じものであり、 第2のダイバーシティCDMA受信経路は、フィルタ236dおよびLNA234dで実施され、これらは、第2のCDMA帯域のために設計されており、 トランシーバシステム210cにおいて、主アンテナ202は、送信および受信の両者に使用され、一方で、ダイバーシティアンテナ204は、受信のみに使用され、SP5Tスイッチ220cは、第1の部分212c内の全てのGSMおよびCDMA送信経路、2本のGSM受信経路、並びに2本の主CDMA受信経路を支援することができ、 クアドプレクサ230cは、第2の部分214c内の2本のGSM受信経路および2本のダイバーシティCDMA受信経路を支援することができ、 図3は、2本のアンテナの無線デバイス110bのブロック図を示しおり、これは、無線デバイス110の別の実施形態であり、第2の部分214b内では、トリプレクサ(triplexer)230bはダイバーシティアンテナ204に結合し、アンテナ204から受信信号を得て、第1および第2のトリプレクサ出力信号を、第2および第4のGSM受信経路にそれぞれ与え、第3のトリプレクサ出力信号を、ダイバーシティCDMA受信経路に与え、部分214b内のダイバーシティCDMA受信経路は、図2の部分214a内のものと同じものであり、 図2は、2本のアンテナの無線デバイス110aのブロック図を示しており、これは、無線デバイス110の1つの実施形態であり、フィルタ236aは、CDMA受信帯域(CDMA RX)に等しい帯域幅をもつSAWフィルタで実施され、 第2の部分214a内では、ダイプレクサ(dipexer)230aは、ダイバーシティアンテナ204、第2のGSM受信経路、およびダイバーシティCDMA受信経路に結合し、ダイバーシティCDMA受信経路は、CDMA受信帯域(CDMA RX)のための第2のダイプレクサ出力信号をフィルタにかけるフィルタ236bと、フィルタ236bからのフィルタにかけられた信号を増幅し、ダイバーシティCDMA受信信号(CRXD)をRFユニット250aに与えるLNA234bとを含み、フィルタ236bは、CDMA受信帯域を予め選択するためのフィルタリングを行い、 RFユニット250cがモデムプロセッサ260cと接続されている 無線デバイス。 (2)対比 本願発明と引用発明1とを以下で対比する。 引用発明1の「無線デバイス」は、本願発明の「ワイヤレスデバイス」に相当する。 引用発明1の「主アンテナ202」及び「ダイバーシティアンテナ204」は、それぞれ本願発明の「第2のアンテナ」及び「第1のアンテナ」に相当する。 引用発明1の「GSM」及び「CDMA」は、それぞれ本願発明の「第1のワイヤレスシステム」及び「第2のワイヤレスシステム」に相当する。 引用発明1の部分212c内の「第1のCDMA帯域のための」「主受信経路」は、フィルタ236aを有しているから、本願発明の「フィルタ経路」のうちの1つに相当する。 引用発明1の部分212c内の「第2のCDMA帯域のための」「主受信経路」は、フィルタ236cを有しているから、本願発明の「フィルタ経路」のうちの別のものに相当する。 引用発明1の部分214c内の「第1のダイバーシティCDMA受信経路」は、図3の部分214b内のものと同じものであり、図3の部分214b内のダイバーシティCDMA受信経路は、図2の部分214a内のものと同じものであり、図2の第2の部分214a内のダイバーシティCDMA受信経路は、フィルタ236bを有するから、本願発明の「フィルタ経路」のうちのさらに別のものに相当する。 引用発明1の部分214c内の「第2のダイバーシティCDMA受信経路」は、フィルタ236dを有するから、本願発明の「フィルタ経路」のうちの、上記3つのものとは別のものに相当する。 引用発明1の「T/Rスイッチ220c」は、第1のCDMA帯域のための主受信経路及び第2のCDMA帯域のための主受信経路への受信信号の経路を制御するものであるから、本願発明の「第2のアンテナから異なるフィルタ経路への受信信号の経路を制御するための」「第2のスイッチ」に相当する。 引用発明1の「クアドプレクサ230c」は、第1のダイバーシティCDMA受信経路及び第2のダイバーシティCDMA受信経路に対して受信経路を支援するものであるから、「第1のアンテナから異なるフィルタ経路への受信信号の経路を制御するための経路制御手段」である点で、本願発明の「第1のスイッチ」と一致する。 引用発明1は、部分214cにおいてダイバーシティアンテナ204が第2および第4のGSM受信経路に結合し、RFユニット250cが部分212cおよび214cのために信号を調整し、RFユニット250cがモデムプロセッサ260cと接続しているのであるから、「第1のアンテナで第1のワイヤレスシステムから受信された信号を処理する」点で、本願発明と一致する。 引用発明1は、RXダイバーシティを備えたCDMAのための2つの周波数帯域を支援し、部分212cにおいて主アンテナ202が第1及び第2のCDMA主受信経路に結合し、部分214cにおいてダイバーシティアンテナ204が第1及び第2のダイバーシティCDMA受信経路に結合し、RFユニット250cが部分212cおよび214cのために信号を調整し、RFユニット250cがモデムプロセッサ260cと接続しているので、「受信ダイバーシティを使用して前記第1および第2のアンテナで第2のワイヤレスシステムから受信された信号を処理する」点で、本願発明と一致する。 引用発明1の「モデムプロセッサ」は、本願発明の「プロセッサ」に相当する。 すると、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「少なくとも第1および第2のアンテナと、 前記第1及び第2のアンテナから異なるフィルタ経路への受信信号の経路を制御するための少なくとも経路制御手段及び第2のスイッチと、 前記第1のアンテナで第1のワイヤレスシステムから受信された信号を処理することと、 受信ダイバーシティを使用して前記第1および第2のアンテナで第2のワイヤレスシステムから受信された信号を処理することと、 のための少なくとも1つのプロセッサと、 を備える、 ワイヤレスデバイス。」 〈相違点1〉 本願発明は、第1のアンテナから異なるフィルタ経路への受信信号の経路を制御する経路制御手段として「第1のスイッチ」を用いているのに対し、引用発明1は「クアドプレクサ230c」を用いている点。 〈相違点2〉 本願発明は、動作モードとして第1のモードと第2のモードとを備えており、第1のモードでは、第2のアンテナでの受信のために選択されたフィルタ経路と同じ周波数帯に対応する、第1のアンテナでの受信のためのフィルタ経路を選択するように、第1及び第2のスイッチで受信経路を制御して第1及び第2のアンテナから受信された信号を受信ダイバーシティ処理し、第2のモードでは、第1のアンテナだけで第1のワイヤレスシステムから受信された信号を処理するのに対し、引用発明1は、動作モードを持つか否かが不明確である点。 (3)判断 (3-1)相違点1について 引用文献1には、引用発明の他に、図2に示される実施形態(以下、「図2実施形態」という)及び図3に示される実施形態(以下、「図3実施形態」という)が記載されており、図2実施形態のダイプレクサ230a、図3実施形態のトリプレクサ230b及び引用発明1のクアドプレクサ230cは、いずれもダイバーシティアンテナ204で受信した受信信号を、その周波数帯域に応じた受信経路に入力するためのものである(摘記事項(オ)及び(カ)並びに(ア)第0027段落を参照)。 そして、引用文献1には、ダイプレクサ230aの代わりにSP2Tスイッチを用いることもできるとの記載がある(摘記事項(ア)第0027段落を参照)。 してみれば、ダイプレクサ230aと基本的に同等な機能を持つ引用発明1のクアドプレクサ230cを、スイッチ(分岐の数に合わせてSP4Tスイッチ)に置き換えることは、当業者が容易になし得たことである。 (3-2)相違点2について 引用文献1には、図3実施形態において複数の動作モードを持つことが示されており、そのうちの動作モード1では主アンテナ及びダイバーシティアンテナによってCDMAシステムからの信号のダイバーシティ受信が行われ、動作モード4ではダイバーシティアンテナだけでGSMシステムからの信号の受信が行われること(摘記事項(ウ)を参照)が記載されている。 摘記事項(カ)のとおり、引用発明1は図3実施形態に対してCDMAの送受信経路を主アンテナ側及びダイバーシティアンテナ側の双方に1経路ずつ増やしたものに過ぎないから、図3実施形態と同様の動作モード、特に、動作モード1及び動作モード4を設けることは、当業者が容易になし得ることである。 技術常識に鑑みれば、ダイバーシティ受信は同一の送信信号を別のアンテナで受信することで達成されるものであるから(摘記事項(ア)第0036段落も参照)、ダイバーシティ受信を行う動作モード(動作モード1)において、主アンテナのCDMA受信経路とダイバーシティアンテナのCDMA受信経路とが、同一の信号を受信できるように、すなわち、同一の信号帯域に対応する受信経路を選択するようにしなければならないことは、必然のことである。 してみれば、引用発明1に対して、動作モード1及び動作モード4を導入することによって、動作モード1(本願発明の「第1のモード」に対応)で動作しているか、または動作モード4(本願発明の「第2のモード」に対応)で動作しているかに基づいて、ダイバーシティアンテナ及び主アンテナから異なる受信経路への受信信号の経路を制御し、動作モード4で動作しているときは、ダイバーシティアンテナだけでGSMから受信した信号を処理し、動作モード1で動作しているときは、受信ダイバーシティを使用してダイバーシティアンテナ及び主アンテナでCDMAから受信された信号を処理し、主アンテナでの受信のために選択された経路と同じ周波数帯に対応するダイバーシティアンテナでの受信のための経路を選択するように経路制御を行うことは、当業者が容易になし得ることである。 (3-3)効果について また、本願発明の構成によって生じる効果も、引用発明1から当業者が予測し得る範囲内のもので格別顕著であるとはいえない。 (3-4)審判請求書での主張について 審判請求書における審判請求人の主張の大部分は、却下された本件補正に基づくものである。 しかしながら、「(2)審査官は、拒絶理由通知において、引用文献2における主アンテナ(202)を第1のアンテナ、ダイバーシティアンテナ(204)を第2のアンテナと称されているが、拒絶査定においては、第1のアンテナ(204)、第2のアンテナ(202)と称されており、一貫していない。」との点については、本件補正とは無関係で、手続違背に関する主張であると認められるので、この点について以下で検討する。 拒絶理由通知時の請求項1(平成25年10月1日付け手続補正書の請求項1)は、以下のとおりである。 〈拒絶理由通知時の請求項1〉 少なくとも第1および第2のアンテナと、 前記第1のアンテナだけで第1のワイヤレスシステムから受信される信号を処理することであって、前記第1のワイヤレスシステムが、時分割同期符号分割多元接続(TD-SCDMA)、および時分割複信ロングタームエボリューション(TDD-LTE)のうちの少なくとも1つを備えることと、 受信ダイバーシティを使用して前記第1および第2のアンテナで第2のワイヤレスシステムから受信される信号を処理することであって、前記第2のワイヤレスシステムが、ロングタームエボリューション(LTE)および時分割多元接続(TDMA)のうちの少なくとも1つを備えることと のための少なくとも1つのプロセッサと を備えるワイヤレスデバイス。 拒絶理由通知時の請求項1に係る発明において、第1のアンテナと第2のアンテナとの差は、第1のワイヤレスシステムからの信号が第1のアンテナだけで受信される点だけである。 引用文献1(拒絶理由通知書及び拒絶査定の引用文献2)の第0047段落の表2によれば、動作モード2ではGSMの受信を主アンテナのみで行っており、動作モード4ではGSMの受信をダイバーシティアンテナのみで行っている。 すると、引用文献1に記載された無線デバイスのGSMを拒絶理由通知時の請求項1に係る発明の第1のワイヤレスシステムと対応させ、CDMAを第2のワイヤレスシステムと対応させて対比を行った場合、主アンテナを第1のアンテナとしても、主アンテナを第2のアンテナとしても、対比結果には差が生じない。 そして、拒絶理由通知書では、引用文献1の第0047段落の表2を引用箇所として明記しているのであるから、主アンテナを第1のアンテナとするか第2のアンテナとするかによって、拒絶理由通知時の請求項1に係る発明の進歩性の有無に差が生じないことは、拒絶理由通知書及び引用文献1の引用箇所を精読した時点で当然に理解されることである。 一方、本願発明(平成27年1月9日付け手続補正書の請求項1に係る発明)においても、第1のアンテナと第2のアンテナとの差は、第1のワイヤレスシステムからの信号が第1のアンテナだけで受信される点だけである。 してみると、拒絶査定においてアンテナの対応関係を変えたとしても、拒絶査定の備考の記載は請求項1に関して拒絶理由通知書の備考の記載に反する結論を導くものではなく、このことは拒絶理由通知書から予見可能なことであるから、拒絶査定に手続違背が存在したとまでは言えない。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-03 |
結審通知日 | 2016-02-09 |
審決日 | 2016-02-22 |
出願番号 | 特願2013-553500(P2013-553500) |
審決分類 |
P
1
8・
05-
Z
(H04B)
P 1 8・ 561- Z (H04B) P 1 8・ 537- Z (H04B) P 1 8・ 121- Z (H04B) P 1 8・ 575- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原田 聖子 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
丸山 高政 久松 和之 |
発明の名称 | CDMAダイバーシティ受信機経路が時間二重受信機と共有されたCDMAトランシーバ |
代理人 | 奥村 元宏 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |