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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1316785
審判番号 不服2015-952  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-16 
確定日 2016-07-15 
事件の表示 特願2012-501329「画像プレートを取り扱う装置並びに医用撮像の方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月30日国際公開、WO2010/109064、平成24年 9月13日国内公表、特表2012-521238〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月22日(パリ条約による優先権主張平成21年3月23日、フィンランド)を国際出願日とし、発明者がタスキネン,ヤリ、アンティラ,ミカ、クレモラ,ティモであって、出願人をパロデックス グループ オイとする出願であって、平成25年9月3日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月5日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年9月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年1月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年1月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成27年1月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成26年3月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の、

(補正前)
「画像プレートと、
検査対象の画像を前記画像プレート上に生成するX線デバイスと、
前記画像プレートに含まれる画像情報を読み取る読み取りデバイスと、
遠隔で書き込み又は読み取りができ、前記画像プレート又はその移送若しくは保護手段に取り付けられるタグと、
を少なくとも備え、
前記タグ内又は別の手段の前記タグのIDに関連付けられた情報を読み取り、
読み取られたその情報を基に、
前記検査対象の生体組織構造に関する前記画像プレート、撮像動作の際に用いられる他の画像プレート、又は前記X線デバイスの位置についての情報、
前記画像プレートを正しい向きに向けるための前記画像プレートの取り扱いについての情報、
前記画像プレートに欠陥があるか否か、前記画像プレートが空か否か、又は画像プレートが前記画像情報を保持しているか否かについての情報、
の少なくとも1つを生成することを特徴とする医用撮像用の装置。」
が、

(補正後)
「画像プレートと、
検査対象の画像を前記画像プレート上に生成するX線デバイスと、
前記画像プレートに含まれる画像情報を読み取る読み取りデバイスと、
遠隔で書き込み及び読み取りができ、前記画像プレートに取り付けられるタグと、
を少なくとも備え、
前記タグ内の情報又は前記タグのIDに関連付けられた情報を書き込み、前記タグ内の前記情報又は前記タグの前記IDに関連付けられてデータベース手段に保存された前記情報を読み取り、
読み取られたその情報を基に、
前記検査対象の生体組織構造に関する前記画像プレート、撮像動作の際に用いられる他の画像プレート、又は前記X線デバイスの位置についての情報、
前記画像プレートを正しい向きに向けるための前記画像プレートの取り扱いについての情報、
前記画像プレートに欠陥があるか否か、前記画像プレートが空か否か、又は画像プレートが前記画像情報を保持しているか否かについての情報、
の少なくとも1つを生成することを特徴とする医用撮像用の装置。」
と補正された。(下線は、補正箇所を示す。)

(2)そして、上記の本件補正による請求項1の補正は、本件補正前の発明特定事項である「遠隔で書き込み又は読み取りができ、前記画像プレート又はその移送若しくは保護手段に取り付けられるタグ」を「遠隔で書き込み及び読み取りができ、前記画像プレートに取り付けられるタグ」に限定し、また、本件補正前の発明特定事項である「前記タグ内又は別の手段の前記タグのIDに関連付けられた情報を読み取り」を「前記タグ内の情報又は前記タグのIDに関連付けられた情報を書き込み、前記タグ内の前記情報又は前記タグの前記IDに関連付けられてデータベース手段に保存された前記情報を読み取り」に限定するものである。
よって、上記の本件補正による請求項1の補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明のいわゆる限定的減縮を目的とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)特許法第29条第2項違反を理由とする独立特許要件について
ア 本願補正発明
本願補正発明は、平成27年1月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記「1(1)」の記載を参照。)であり、当審において(A)?(H)の見出しを付けて分節すると、次のとおりである。

「(A)画像プレートと、
(B)検査対象の画像を前記画像プレート上に生成するX線デバイスと、
(C)前記画像プレートに含まれる画像情報を読み取る読み取りデバイスと、
(D)遠隔で書き込み及び読み取りができ、前記画像プレートに取り付けられるタグと、
を少なくとも備え、
(E)前記タグ内に情報又は前記タグのIDに関連付けられた情報を書き込み、
(F)前記タグ内の前記情報又は前記タグの前記IDに関連付けられてデータベース手段に保存された前記情報を読み取り、
(G)読み取られたその情報を基に、
前記検査対象の生体組織構造に関する前記画像プレート、撮像動作の際に用いられる他の画像プレート、又は前記X線デバイスの位置についての情報、
前記画像プレートを正しい向きに向けるための前記画像プレートの取り扱いについての情報、
前記画像プレートに欠陥があるか否か、前記画像プレートが空か否か、又は画像プレートが前記画像情報を保持しているか否かについての情報、
の少なくとも1つを生成することを特徴とする
(H)医用撮像用の装置。」

本願補正発明(E)の「前記タグ内の情報又は前記タグのIDに関連付けられた情報を書き込み」は、「前記タグ内に情報又は前記タグのIDに関連付けられた情報を書き込み」の誤記であると認められるため、上記のように認定した。

イ 引用例
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-275310号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

引a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の放射線画像情報を画像撮影装置により蓄積性蛍光体パネルに蓄積記録した後、前記放射線画像情報を放射線画像情報読取装置により読み取る放射線画像情報記録読取システムであって、
前記被写体の被写体情報及び撮影情報を含むID情報を保持するID情報保持部材を備え、
前記画像撮影装置は、前記ID情報保持部材から前記ID情報を読み取る第1ID情報読取部と、前記放射線画像情報が蓄積記録された前記蓄積性蛍光体パネルに前記ID情報を付与するID情報付与部とを備え、
前記放射線画像情報読取装置は、前記蓄積性蛍光体パネルに付与された前記ID情報を読み取る第2ID情報読取部と、前記蓄積性蛍光体パネルに蓄積記録された放射線画像情報を前記ID情報に関連させて処理する画像情報処理部とを備えることを特徴とする放射線画像情報記録読取システム。
・・・
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記ID情報付与部は、前記蓄積性蛍光体パネルに装着された記憶素子に前記ID情報を記憶させることを特徴とする放射線画像情報記録読取システム。
・・・
【請求項5】
請求項3又は4記載のシステムにおいて、
前記第2ID情報読取部は、前記記憶素子から前記ID情報を読み取ることを特徴とする放射線画像情報記録読取システム。」

引b「【背景技術】
【0002】
例えば、放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を照射すると、この放射線エネルギの一部が蓄積され、その後、可視光等の励起光を照射すると、蓄積されたエネルギ強度に応じて輝尽発光を示す蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)が知られている。」

引c「【0019】
なお、蓄積性蛍光体パネルから被写体情報を消去しておくことにより、放射線画像情報が蓄積記録されていない未撮影の蓄積性蛍光体パネル、あるいは、被写体情報が未登録の蓄積性蛍光体パネルを放射線画像情報読取装置に装填した際、放射線画像情報の読取対象となっていない蓄積性蛍光体パネル等が装填されたことを報知し、ユーザの注意を喚起することが可能である。」

引d「【0031】
蓄積性蛍光体パネルIPは、フレキシブルなパネルから構成され、後述するように、IDカード17から読み取ったID情報を記憶するRFID等のICチップ21(記憶素子)が装着されている。ICチップ21には、画像撮影装置14に蓄積性蛍光体パネルIPが装填された際、放射線がICチップ21に直接照射されて情報が破壊されることのないように、例えば、原子量が207以上の重元素からなる放射線遮蔽部材22が蓄積性蛍光体パネルIPとICチップ21との間に配設される。」

引e「【0042】
放射線画像情報読取装置10は、制御部126によって制御されており、制御部126には、装填されたカセッテ18に収納されている蓄積性蛍光体パネルIPのICチップ21からID情報を読み取る一方、放射線画像情報の読取処理が完了した蓄積性蛍光体パネルIPのICチップ21に対して、必要な情報を記録し、あるいは、ICチップ21に記録されている不要なID情報を消去するID情報読取記録部32a?32dが接続される。また、制御部126には、蓄積性蛍光体パネルIPから読み取られた放射線画像情報をIDカード17に記録し、必要に応じてIDカードからID情報を読み取るカードリーダ/ライタ138が接続される。さらに、制御部126には、走査ユニット54を制御する走査ユニット制御部130と、読取ユニット56a及び56bを制御する読取ユニット制御部132と、消去ユニット42を制御する消去ユニット制御部134と、撮影情報に基づき、蓄積性蛍光体パネルIPから読み取った放射線画像情報に対する画像処理を行う画像処理部136(画像情報処理部)とが接続される。さらにまた、放射線画像情報読取装置10は、画像表示出力装置16及び画像保存装置19との間で必要な情報の授受を行うインタフェース(I/F)140及び142を有する。」

引f「【0057】
次に、図9に示すフローチャートに基づき、放射線画像情報読取装置10における処理について説明する。
【0058】
技師は、放射線画像情報が蓄積記録された蓄積性蛍光体パネルIPを収納したカセッテ18を画像撮影装置14から取り出し、放射線画像情報読取装置10のカセッテ装填部20a?20dの1つに装填する(ステップS31)。
【0059】
カセッテ18が装填されると、枚葉収納部30に配設されたID情報読取記録部32a?32dは、蓄積性蛍光体パネルIPに装着されたICチップ21からID情報を読み取る(ステップS32)。
【0060】
ICチップ21からID情報を読み取った後、放射線画像情報読取装置10は、蓄積性蛍光体パネルIPに蓄積記録されている放射線画像情報の読取処理を開始する(ステップS33)。
【0061】
そこで、図示しない開蓋機構がカセッテ18の蓋体28を開蓋した後、枚葉収納部30の吸着盤34a?34dがカセッテ18内に移動し、この吸着盤34a?34dにより蓄積性蛍光体パネルIPが吸着保持される。蓄積性蛍光体パネルIPは、吸着盤34a?34dによってカセッテ18から取り出され、搬送ローラ対36a?36dに供給される。
【0062】
搬送ローラ対36a?36dは、蓄積性蛍光体パネルIPを挟持し、ガイド板39a?39dを介して搬送路40に供給する。搬送路40は、複数のローラ対38の回転作用下に蓄積性蛍光体パネルIPを鉛直下方向に向かって搬送し、読取部50を構成する副走査搬送機構52に供給する。
【0063】
副走査搬送機構52では、蓄積性蛍光体パネルIPが第1及び第2ローラ対60、62に挟持されて矢印A方向(水平方向)に副走査搬送される一方、走査ユニット54からレーザビームLが導出される。このレーザビームLは、蓄積性蛍光体パネルIPを主走査する。レーザビームLの照射により蓄積性蛍光体パネルIPから得られた輝尽発光光は、光ガイド96a及び96bを介してフォトマルチプライヤ98a及び98bにより光電的に読み取られる。
【0064】
画像処理部136は、ステップS32で読み取ったID情報に含まれる撮影情報に画像処理条件の指定がある場合(ステップS34)、読み取られた放射線画像情報に対して画像処理条件に従った画像処理を施す(ステップS35)。
【0065】
次いで、放射線画像情報読取装置10は、必要に応じて画像処理された放射線画像情報を、ID情報に出力先の指定がある場合には、その出力先の画像表示出力装置16に表示し、あるいは、フイルム等に出力する(ステップS36)。これにより、医師による診断が可能となる。また、この放射線画像情報は、画像保存装置19に送信され、保存される(ステップS37)。
【0066】
一方、蓄積性蛍光体パネルIPから読み取られた放射線画像情報は、カードリーダ/ライタ138によってIDカード17に記録される(ステップS38)。
【0067】
放射線画像情報の読み取りが終了した蓄積性蛍光体パネルIPは、上方向に延在する搬送路40を介して一旦退避路51に搬送された後、戻されて消去搬送路53に搬入される。消去ユニット42は、消去搬送路53を矢印B方向に搬送される蓄積性蛍光体パネルIPに対して消去用光源46から消去光を照射し、蓄積性蛍光体パネルIPに残存する放射線画像情報を消去する(ステップS39)。
【0068】
消去後の蓄積性蛍光体パネルIPは、消去搬送路53から搬送路40に搬入された後、選択されたガイド板39a?39dの1つを介して枚葉収納部30によりカセッテ18に戻される
【0069】
このとき、ID情報読取記録部32a?32dは、蓄積性蛍光体パネルIPのICチップ21に記録されているID情報の消去処理を行う(ステップS40)。なお、ICチップ21に対して、蓄積性蛍光体パネルIPから読み取った放射線画像情報に基づいて算出した放射線照射量情報を記録しておき、蓄積性蛍光体パネルIPの劣化判断等の資料とすることもできる。
【0070】
次いで、蓄積性蛍光体パネルIPを収納したカセッテ18は、蓋体28が閉じられた後、カセッテ装填部20a?20dから排出される(ステップS41)。なお、カセッテ18に収納された蓄積性蛍光体パネルIPは、再び放射線画像情報の撮影処理に供せられる。」

(イ)引用例に記載された発明の認定
a 上記引fには、「放射線画像情報読取装置10」が、「蓄積性蛍光体パネルIPに装着されたICチップ21からID情報を読み取」「(ステップS32)」り、「読み取ったID情報に含まれる撮影情報に画像処理条件の指定がある場合(ステップS34)、読み取られた放射線画像情報に対して画像処理条件に従った画像処理を施す」ことが記載されている。

b 上記aの点を含めて上記(ア)の記載を総合すると、引用例には、

「(a)被写体の放射線画像情報を画像撮影装置により蓄積性蛍光体パネルに蓄積記録した後、前記放射線画像情報を放射線画像情報読取装置により読み取る放射線画像情報記録読取システムであって、
(b)前記被写体の被写体情報及び撮影情報を含むID情報を保持するID情報保持部材を備え、
(c)前記画像撮影装置は、前記ID情報保持部材から前記ID情報を読み取る第1ID情報読取部と、前記放射線画像情報が蓄積記録された前記蓄積性蛍光体パネルに前記ID情報を付与するID情報付与部とを備え、
(d)前記放射線画像情報読取装置は、前記蓄積性蛍光体パネルに付与された前記ID情報を読み取る第2ID情報読取部と、前記蓄積性蛍光体パネルに蓄積記録された放射線画像情報を前記ID情報に関連させて処理する画像情報処理部とを備え、
(e)前記ID情報付与部は、前記蓄積性蛍光体パネルに装着された記憶素子に前記ID情報を記憶させ、
(f)前記第2ID情報読取部は、前記記憶素子から前記ID情報を読み取り、
(g)前記記憶素子は、RFID等のICチップであり、
(h)前記放射線画像情報読取装置は、蓄積性蛍光体パネルIPに装着されたICチップから読み取ったID情報に含まれる撮影情報に画像処理条件の指定がある場合、読み取られた放射線画像情報に対して画像処理条件に従った画像処理を施し、
(i)前記放射線画像情報読取装置は、放射線画像情報の読取処理が完了した蓄積性蛍光体パネルのICチップに対して、必要な情報を記録し、あるいは、ICチップに記録されている不要なID情報を消去する、
(j)放射線画像情報記録読取システム。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 本願補正発明と引用発明との対比
(ア)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

a 本願補正発明(A)の特定事項について
引用発明(a)の「被写体の放射線画像情報」を「蓄積記録した後」、「読み取る」「蓄積性蛍光体パネル」は、本願補正発明(A)の「画像プレート」に相当する。

b 本願補正発明(B)の特定事項について
引用発明(a)の「被写体の放射線画像情報を」「蓄積性蛍光体パネルに蓄積記録」する「画像撮影装置」と、本願補正発明(B)の「検査対象の画像を前記画像プレート上に生成するX線デバイス」とは、「検査対象の画像を前記画像プレート上に生成する放射線デバイス」である点で共通する。

c 本願補正発明(C)の特定事項について
引用発明(a)の「蓄積性蛍光体パネルに蓄積記録した」「前記放射線画像情報を読み取る」「放射線画像情報読取装置」は、本願補正発明(C)の「前記画像プレートに含まれる画像情報を読み取る読み取りデバイス」に相当する。

d 本願補正発明(D)の特定事項について
本願補正発明(D)の「タグ」について、本願明細書に「【0060】アクティブタグ及びパッシブタグ、例えばRFID識別器の代わりに又はこれらのタグに加えて、準アクティブタグ、例えばRFIDも、画像プレート104で用いることができる。」と記載されている。
そして、引用発明(e)の「前記蓄積性蛍光体パネルに装着された記憶素子」は、(g)の「RFID等のICチップである」から、本願補正発明(D)の「遠隔で書き込み及び読み取りができ、前記画像プレートに取り付けられるタグ」に相当する。

e 本願補正発明(E)の特定事項について
引用発明(e)の「前記ID情報付与部は、前記蓄積性蛍光体パネルに装着された記憶素子に前記ID情報を記憶させ」ることは、本願補正発明(E)の「前記タグ内に情報又は前記タグのIDに関連付けられた情報を書き込み」のうち「前記タグ内に情報」「を書き込」むことに相当する。

f 本願補正発明(F)の特定事項について
引用発明(f)の「前記第2ID情報読取部は、前記記憶素子から前記ID情報を読み取」ることは、本願補正発明(F)の「前記タグ内の前記情報又は前記タグの前記IDに関連付けられてデータベース手段に保存された前記情報を読み取り」のうち「前記タグ内の前記情報」「を読み取」ることに相当する。

g 本願補正発明(G)の特定事項について
引用発明(h)の「読み取ったID情報に含まれる撮影情報に画像処理条件の指定がある場合、読み取られた放射線画像情報に対して画像処理条件に従った画像処理を施」すことは、「読み取った」「画像処理条件」を基に、「放射線画像情報に対して」「画像処理を施」すための情報を生成しているといえる。
よって、引用発明(h)の「読み取ったID情報に含まれる撮影情報に画像処理条件の指定がある場合、読み取られた放射線画像情報に対して画像処理条件に従った画像処理を施」すことと、本願補正発明(G)の「読み取られたその情報を基に、
前記検査対象の生体組織構造に関する前記画像プレート、撮像動作の際に用いられる他の画像プレート、又は前記X線デバイスの位置についての情報、
前記画像プレートを正しい向きに向けるための前記画像プレートの取り扱いについての情報、
前記画像プレートに欠陥があるか否か、前記画像プレートが空か否か、又は画像プレートが前記画像情報を保持しているか否かについての情報、
の少なくとも1つを生成すること」とは、「読み取られたその情報を基に、情報を生成する」点で共通する。

h 本願補正発明(H)の特定事項について
引用発明(a)の「放射線画像情報記録読取システム」は、「被写体の放射線画像情報を」「蓄積記録」する「画像撮影装置」を備えるものであるから、本願補正発明(H)の「医用撮像用の装置」に相当する。

(イ)一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、

(一致点)
「画像プレートと、
検査対象の画像を前記画像プレート上に生成する放射線デバイスと、
前記画像プレートに含まれる画像情報を読み取る読み取りデバイスと、
遠隔で書き込み及び読み取りができ、前記画像プレートに取り付けられるタグと、
を少なくとも備え、
前記タグ内に情報を書き込み、前記タグ内の前記情報を読み取り、
読み取られたその情報を基に、情報を生成する、
医用撮像用の装置。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

(ウ)相違点
a 相違点1
放射線デバイスについて、本願補正発明では、「X線」デバイスであるのに対し、引用発明では、画像撮影装置がX線画像撮影装置であることの特定がない点。

b 相違点2
読み取られた情報を基に生成する情報が、本願補正発明では、「前記検査対象の生体組織構造に関する前記画像プレート、撮像動作の際に用いられる他の画像プレート、又は前記X線デバイスの位置についての情報、
前記画像プレートを正しい向きに向けるための前記画像プレートの取り扱いについての情報、
前記画像プレートに欠陥があるか否か、前記画像プレートが空か否か、又は画像プレートが前記画像情報を保持しているか否かについての情報、
の少なくとも1つ」であるのに対し、引用発明では、放射線画像情報に対して画像処理を施すための情報である点。

エ 当審の判断
(ア)上記各相違点について検討する。

a 相違点1について
引用例の上記引bには、「【背景技術】【0002】例えば、放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を照射すると、この放射線エネルギの一部が蓄積され・・・蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)が知られている。」と記載されているように、放射線デバイスに、X線を照射することにより被写体の放射線画像情報を蓄積記録する蓄積性蛍光体パネルを用いることは、本願の優先日前において技術常識であることを踏まえると、引用発明において、X線を照射することにより「被写体の放射線画像情報を」「蓄積性蛍光体パネルに蓄積記録」するX線「画像撮影装置」にし、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に為し得たことである。

b 相違点2について
(a)生成する情報が、上記相違点2のうち「前記画像プレートに欠陥があるか否か」「についての情報」である点について

引用発明の放射線画像情報読取装置は、「読み取ったID情報に含まれる撮影情報に画像処理条件の指定がある場合、読み取られた放射線画像情報に対して画像処理条件に従った画像処理を施」すことに加えて、「蓄積性蛍光体パネルのICチップに対して、必要な情報を記録し、あるいは、ICチップに記録されている不要なID情報を消去する」ことが特定されている。
また、引用例の上記引fには、「【0069】 ・・・ICチップ21に対して、蓄積性蛍光体パネルIPから読み取った放射線画像情報に基づいて算出した放射線照射量情報を記録しておき、蓄積性蛍光体パネルIPの劣化判断等の資料とすることもできる。」と記載されている。
上記引fの記載を併せて読むと、引用発明で特定される上記「必要な情報」には、「蓄積性蛍光体パネルIPから読み取った放射線画像情報に基づいて算出した放射線照射量情報」があり、さらに、「記録」された前記「放射線照射量情報」は読み取られ、読み取られた前記「放射線照射量情報」を基に、前記「蓄積性蛍光体パネルの劣化判断等の資料」とすることが理解できる。
ここで、劣化とは、使用等により品質・性能が悪くなることであるから、上記「蓄積性蛍光体パネルの劣化判断等」が、蓄積性蛍光体パネルの使用に伴う性能の低下、すなわち蓄積性蛍光体パネルの使用によって欠陥が生じているか否か等を判断することを意味することは、技術的に明らかである。
よって、引用発明において、上記引fの記載を踏まえると、読み取られた前記「放射線照射量情報」(本願補正発明の「読み取られたその情報」に相当する。)を基に、生成する前記「蓄積性蛍光体パネルの劣化判断等の資料」として、「蓄積性蛍光体パネル」に欠陥があるか否かの判断の資料(本願補正発明の「前記画像プレートに欠陥があるか否か」「についての情報」に相当する。)とし、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に為し得たことである。

(b)生成する情報が、上記相違点2のうち「前記画像プレートが空か否か、又は画像プレートが前記画像情報を保持しているか否かについての情報」である点について

引用発明の放射線画像情報読取装置は、上記(a)に記載したとおり、「読み取ったID情報に含まれる撮影情報に画像処理条件の指定がある場合、読み取られた放射線画像情報に対して画像処理条件に従った画像処理を施」すことに加えて、「蓄積性蛍光体パネルのICチップに対して、必要な情報を記録し、あるいは、ICチップに記録されている不要なID情報を消去する」ことが特定されている。
また、引用例の上記引cには、「【0019】・・・蓄積性蛍光体パネルから被写体情報を消去しておくことにより、放射線画像情報が蓄積記録されていない未撮影の蓄積性蛍光体パネル・・・を放射線画像情報読取装置に装填した際、放射線画像情報の読取対象となっていない蓄積性蛍光体パネル等が装填されたことを報知し、ユーザの注意を喚起することが可能である。」と記載されている。
上記引cの記載を併せて読むと、引用発明で特定される上記「不要なID情報」には、「被写体情報」があり、さらに、前記「被写体情報」が「消去」されている場合、「放射線画像情報が蓄積記録されていない未撮影の蓄積性蛍光体パネル」であることが理解できる。
そして、前記「被写体情報」が「消去」されていることを把握するために、「ICチップに記録されている」「被写体情報」が未記載という情報を読み取っていることは、明らかであるから、読み取られた前記被写体情報が未記載という情報を基に、「放射線画像情報が蓄積記録されていない未撮影の蓄積性蛍光体パネル」か否かについての情報を生成しているといえる。
よって、引用発明において、上記引cの記載を踏まえると、読み取られた前記「被写体情報が未記載という情報」(本願補正発明の「読み取られたその情報」に相当する。)を基に、生成する情報を、「放射線画像情報が蓄積記録されていない未撮影の蓄積性蛍光体パネル」か否かについての情報(本願補正発明の「前記画像プレートが空か否か、又は画像プレートが前記画像情報を保持しているか否かについての情報」に相当する。)とし、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に為し得たことである。

(イ)本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる作用効果は、引用例に記載の事項及び技術常識から当業者が予測し得る程度のものである。

(ウ)まとめ
上記のとおり、本願補正発明は、引用発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)特許法第29条の2違反を理由とする独立特許要件について

ア 引用先願
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の2007年9月26日に出願され、本願の優先日後に出願公開された特許出願である特願2007-249939号(特開2009-80032号)(以下、「引用先願」という。)は、発明者が水本 学、鬼頭 英一、安田 裕昭、弘田 浩之であって、出願人を富士フイルム株式会社とする出願であって、その出願の最初に願書に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

先a「【0002】
蓄積性蛍光体を利用した記録媒体に人体等の被写体の放射線画像情報を一旦記録し、この放射線画像情報を写真フイルム等の感光材料上に再生し、或いは、表示装置に可視画像として出力させるシステムが知られている。」

先b「【0027】
放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bには、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ20が貼り付けられている。RFIDタグ20には、図示しないデジタル処理部や不揮発性メモリを有するICチップ24を備えるIC22が設けられている。
【0028】
このIC22はループ状のアンテナ部26が形成されたプリント配線板上に実装され、プリント配線板が樹脂板等の支持体に貼り付けられることでRFIDタグ20が製作される。そして、使用に供される際には、RFIDタグ20のIC22に、図示しないリーダライタによりデータが書き込まれ、或いはデータが読み出される。
【0029】
放射線画像変換パネル10の非撮影面10BにおけるRFIDタグ20のIC22と対向する領域には、放射線を減衰させるシート状の放射線遮蔽材30が貼り付けられている。
【0030】
よって、撮影面10Aに放射線が照射されても、放射線遮蔽材30によって、IC22の、特にICチップ24に照射される放射線が減衰される。
【0031】
なお、放射線遮蔽材30の材料としては、物質のX線吸収量が、原子番号の3乗に比例して増加することを考慮し、鉛、スズ、アンチモン、ビスマス等の原子番号が50以上の金属を使用する。また、本実施形態においては、放射線遮蔽材30は、鉛を使用し、厚さを0.5mmとした。」

先c「【0038】
放射線画像変換パネル10は、保護袋50に入れられたのち、口腔内500に挿入される。そして、放射線撮影装置100の放射線照射部104から照射された放射線Sによって放射線撮影される。なお、撮影面10Aが放射線で照射されるように、口腔内500に挿入し配設する。また、撮影後は、画像読取装置(図示略)で、画像が読み取られ表示される。」

先d「【0040】
図2と図3とに示すように、放射線画像変換パネル10を口腔内500(図2参照)に正しく、すなわち、撮影面10Aが放射線撮影装置100の放射線照射部104(RFIDリーダ108)に向いていると(撮影面10Aに放射線Sが照射されるように挿入され配設されていると)、放射線装置100の放射線照射部104に設けられたRFIDリーダ108は、撮影面10A側にあるので、放射線画像変換パネル10のRFIDタグ20と無線通信が良好である、すなわちRFIDタグ20から応答がある。このように放射線画像変換パネル10のRFIDタグ20と無線通信が良好である場合(RFIDタグ20から応答がある場合)、制御部114は、放射線画像変換パネル10の撮影面10Aが放射線装置100の放射線照射部104側に向いていると判断し、撮影を許可すると共に撮影者Hに放射線画像変換パネル10の撮影面10Aが放射線装置100の放射線照射部104側に向いている旨を、操作部112の表示部120に表示する。」

先e「【0046】
さて一方、図4に示すように、放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bが放射線撮影装置100の放射線照射部104(RFIDリーダ108)に向いていると、電波強度が非常に弱いので、放射線画像変換パネル10のRFIDタグ20との無線通信が不良(無線通信ができない状態)となり、放射線撮影装置100がRFIDタグ20と無線通信を行なおうとしても、RFIDタグ20から応答が返ってこない。このようにRFIDタグ20と無線通信が不良である場合、つまり、RFIDタグ20からの応答がない場合、制御部114は放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bが向いていると判断し、撮影を許可しないと共に撮影者Hに放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bが放射線撮影装置100の放射線照射部104側を向いている旨を、操作部112の表示部120に表示する。また、同時に警告音を発したり警告灯(図示略)を点灯させたりしてもよい。そして、これにより放射線画像変換パネル10の撮影面10Aと非撮影面10Bとを間違えて撮影することが防止される。」

先f「【0050】
また、例えば、上記実施形態では、放射線画像変換パネル10及び放射線撮影装置100は、歯科用であったが、これに限定されない。他の放射線撮影用にも本発明は適用できる。」

先g 図1


先h 図2


(イ)先願明細書等に記載された発明の認定
上記(ア)の記載を総合すると、引用先願の先願明細書等には、

「(a)放射線画像変換パネル10は、口腔内500に挿入され、放射線撮影装置100の放射線照射部104から照射された放射線Sによって放射線撮影され、撮影後は、画像読取装置で、画像が読み取られ表示される、システムであって、
(b)放射線画像変換パネル10及び放射線撮影装置100は、歯科用であり、
(c)放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bには、RFIDタグ20が貼り付けられ、RFIDタグ20には、IC22が設けられており、
(d)使用に供される際には、RFIDタグ20のIC22に、リーダライタによりデータが書き込まれ、或いはデータが読み出され、
(e)放射線画像変換パネル10の非撮影面10BにおけるRFIDタグ20のIC22と対向する領域には、放射線を減衰させるシート状の放射線遮蔽材30が貼り付けられ、放射線遮蔽材30の材料としては、物質のX線吸収量が、原子番号の3乗に比例して増加することを考慮し、原子番号が50以上の金属を使用し、
(f)放射線画像変換パネル10を口腔内500に正しく、すなわち、撮影面10Aが放射線撮影装置100の放射線照射部104に向いていると、放射線画像変換パネル10のRFIDタグ20と無線通信が良好であり、制御部114は、放射線画像変換パネル10の撮影面10Aが放射線装置100の放射線照射部104側に向いていると判断し、
(g)放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bが放射線撮影装置100の放射線照射部104に向いていると、放射線画像変換パネル10のRFIDタグ20との無線通信が不良となり、制御部114は放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bが向いていると判断する、
(h)システム。」
の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

イ 本願補正発明と先願発明との対比
(ア)対比
本願補正発明と先願発明とを対比する。

a 本願補正発明(A)の特定事項について
先願発明(a)の「放射線画像変換パネル10」は、本願補正発明(A)の「画像プレート」に相当する。

b 本願補正発明(B)の特定事項について
先願発明は、(b)「放射線画像変換パネル10及び放射線撮影装置100は、歯科用であ」ることから、歯の画像を撮影するためのものであることは明らかである。
また、先願発明(a)の「放射線撮影装置100の放射線照射部104から照射された放射線S」が、X線であることは、(e)「放射線画像変換パネル10」の「放射線遮蔽材30の材料としては、物質のX線吸収量が、原子番号の3乗に比例して増加することを考慮し、原子番号が50以上の金属を使用し」ていることから明らかである。
よって、先願発明(a)の歯の「画像」を「放射線画像変換パネル10」にX線「撮影」する「放射線撮影装置100」は、本願補正発明(B)の「検査対象の画像を前記画像プレート上に生成するX線デバイス」に相当する。

c 本願補正発明(C)の特定事項について
先願発明(a)の「放射線画像変換パネル10」の「画像」を「読み取」る「画像読取装置」は、本願補正発明(C)の「前記画像プレートに含まれる画像情報を読み取る読み取りデバイス」に相当する。

d 本願補正発明(D)の特定事項について
本願補正発明(D)の「タグ」について、本願明細書に「【0060】アクティブタグ及びパッシブタグ、例えばRFID識別器の代わりに又はこれらのタグに加えて、準アクティブタグ、例えばRFIDも、画像プレート104で用いることができる。」と記載されている。
そして、先願発明(c)の「放射線画像変換パネル10」に「貼り付けられ」た「RFIDタグ20」は、(d)の「データ」の「書き込」み及び「読み出」しがされるものであるから、本願補正発明(D)の「遠隔で書き込み及び読み取りができ、前記画像プレートに取り付けられるタグ」に相当する。

e 本願補正発明(E)の特定事項について
先願発明(d)の「RFIDタグ20」に「データ」を「書き込」むことは、本願補正発明(E)の「前記タグ内に情報又は前記タグのIDに関連付けられた情報を書き込み」のうち「前記タグ内に情報」「を書き込」むことに相当する。

f 本願補正発明(F)の特定事項について
先願発明(d)の「RFIDタグ20」の「データ」を「読み出」すことは、本願補正発明(F)の「前記タグ内の前記情報又は前記タグの前記IDに関連付けられてデータベース手段に保存された前記情報を読み取り」のうち「前記タグ内の前記情報」「を読み取」ることに相当する。

g 本願補正発明(G)の特定事項について
本願補正発明(G)の特定事項のうち「読み取られたその情報を基に、」「前記画像プレートを正しい向きに向けるための前記画像プレートの取り扱いについての情報」「を生成する」点について、その技術的意味を明確にする上で本願明細書の記載を参照するに、本願明細書には、段落【0063】に「1つの実施形態では、画像プレートの方向は、1つのRF識別器によっても求めることができる。RF識別器は、当該RF識別器の一方の側にRF放射線を吸収する材料、例えば金属プレートが存在するように画像プレート内に配置することができる。その場合、例えば撮像動作中に、当該RF識別器によって放出されたRF放射線の強度を測定することができ、特に、RF識別器とRF放射線を読み取るデバイスとの間に吸収材料がない場合及び/又は吸収材料がある場合のいずれかの当該RF識別器によって放出されたRF放射線の強度が知られている際、測定強度に基づいて、当該RF放射線吸収材料が、RF識別器とRF放射線を読み取るデバイスとの間に位置付けられているか否かを判断することができる。さらに、当該RF放射線吸収材料が、撮像中にRF識別器とRF放射線を読み取るデバイスとの間にあるか否かに基づいて、画像プレートが正しい順序か又は逆であるかを判断することが可能である。」と記載されており、上記記載から、画像プレート内に配置したRF識別器によって放出された測定強度を基に、前記画像プレートの方向が正しいか否かの情報を生成することが理解できるから、本願補正発明(G)の「読み取られたその情報」として、画像プレート内に配置したRF識別器によって放出された測定強度が含まれることは明らかである。
他方、先願発明は、(f)及び(g)「放射線画像変換パネル10のRFIDタグ20との無線通信が良好」又は「不良」、すなわち電波の測定強度を基に、「放射線画像変換パネル10」が「正しく」「向いている」か否かの情報を生成しているものである。
よって、先願発明の「(f)放射線画像変換パネル10を口腔内500に正しく、すなわち、撮影面10Aが放射線撮影装置100の放射線照射部104に向いていると、放射線画像変換パネル10のRFIDタグ20と無線通信が良好であり、制御部114は、放射線画像変換パネル10の撮影面10Aが放射線装置100の放射線照射部104側に向いていると判断し、
(g)放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bが放射線撮影装置100の放射線照射部104に向いていると、放射線画像変換パネル10のRFIDタグ20との無線通信が不良となり、制御部114は放射線画像変換パネル10の非撮影面10Bが向いていると判断する」ことは、本願補正発明(G)の特定事項のうち「読み取られたその情報を基に、」「前記画像プレートを正しい向きに向けるための前記画像プレートの取り扱いについての情報」「を生成する」ことに相当する。

h 本願補正発明(H)の特定事項について
先願発明(a)の「システム」は、(a)「放射線画像変換パネル10」を「口腔内500に挿入」し、「放射線撮影」する「放射線撮影装置100」を備えるものであるから、本願補正発明(H)の「医用撮像用の装置」に相当する。

(イ)一致点・相違点、及び当審の判断
よって、本願補正発明と先願発明は、
「画像プレートと、
検査対象の画像を前記画像プレート上に生成するX線デバイスと、
前記画像プレートに含まれる画像情報を読み取る読み取りデバイスと、
遠隔で書き込み及び読み取りができ、前記画像プレートに取り付けられるタグと、
を少なくとも備え、
前記タグ内に情報を書き込み、前記タグ内の前記情報を読み取り、
読み取られたその情報を基に、
前記画像プレートを正しい向きに向けるための前記画像プレートの取り扱いについての情報を生成する
医用撮像用の装置。」
の発明である点で一致し、両者の間に相違するところはない。

(ウ)まとめ
上記のとおり、本願補正発明は、先願発明と同一であり、発明者が同一でなく、特許出願の時に出願人が同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(3)補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成27年1月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年3月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりもの(上記「第2 1(1)」の記載を参照。)である。

2 引用例及び引用先願
原査定の拒絶の理由に引用された引用発明は、上記「第2 2(1)イ」に記載したとおりである。
また、原査定の拒絶の理由に引用された先願発明は、上記「第2 2(2)ア」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 1(2)」を踏まえると、本願発明は、本願補正発明の発明特定事項である「遠隔で書き込み及び読み取りができ、前記画像プレートに取り付けられるタグ」を「遠隔で書き込み又は読み取りができ、前記画像プレート又はその移送若しくは保護手段に取り付けられるタグ」とし、また、本願補正発明の発明特定事項である「前記タグ内の情報又は前記タグのIDに関連付けられた情報を書き込み、前記タグ内の前記情報又は前記タグの前記IDに関連付けられてデータベース手段に保存された前記情報を読み取り」を「前記タグ内又は別の手段の前記タグのIDに関連付けられた情報を読み取り」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2(1)エ」で検討したとおり、引用発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2(2)イ」で検討したとおり、先願発明と同一であるから、本願発明も同様の理由により、先願発明と同一である。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
また、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-22 
結審通知日 2016-02-23 
審決日 2016-03-07 
出願番号 特願2012-501329(P2012-501329)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 九鬼 一慶  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
▲高▼場 正光
発明の名称 画像プレートを取り扱う装置並びに医用撮像の方法  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 岡部 讓  
代理人 内田 浩輔  
代理人 松井 孝夫  
代理人 越智 隆夫  

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