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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1316854
審判番号 不服2015-9396  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-20 
確定日 2016-07-13 
事件の表示 特願2013-117233「視覚的な多次元の検索」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日出願公開、特開2013-225319〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2007年6月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年6月28日,米国)を国際出願日とする特願2009-518262号の一部を,平成25年6月3日に新たな特許出願としたものであって,平成26年3月3日付けで拒絶理由通知がなされ,同年6月10日に手続補正がなされ,同年8月4日に拒絶理由通知(最後)がなされ,同年11月11日付けで手続補正がなされたが,平成27年1月14日付けで補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月20日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年5月20日の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の目的

平成27年5月20日の手続補正(以下,「本件補正」という。)は,請求項11(補正前の請求項13)に係る補正を含むものである。
補正前の請求項13と補正後の請求項11は次のとおりである。(下線は,審判請求人が付与したものである。)

<補正前の請求項13>
「【請求項13】
画像ファイルからの画像データと,テキスト又はオーディオデータの少なくとも一方とを含む入力を受信する手段と,
前記入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識コンポーネントを使用して,前記画像ファイルから,該画像ファイルにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む,複数の特徴を抽出する手段と,
前記複数の特徴のサブセットに基づいてテキストベースの検索クエリを生成する手段と を備える,コンピュータで実装可能なシステム。」

<補正後の請求項11>
「【請求項11】
画像ファイルからの画像データと,テキスト又はオーディオデータの少なくとも一方とを含む入力を受信する手段と,
前記入力を解析し,前記入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識コンポーネントを使用して前記入力の前記画像データを解析し,前記画像データにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む特徴を決定し,かつ前記入力の前記テキスト及び音声データの少なくとも一方を解析して,前記テキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を決定し,決定された画像データの特徴並びにテキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を集めて,複数の特徴を抽出する手段と,
前記複数の特徴を抽出したことに応答して,該抽出した特徴のサブセットから,前記入力に対するテキストベースの検索クエリを生成する手段と
を備え,
前記検索クエリに対応する検索結果を提供する,コンピュータで実装可能なシステム。」

請求項11(補正前の請求項13)に係る補正は,以下の補正をするものである。
(1)「前記入力から複数の特徴を抽出する手段」を,「前記入力を解析し,前記入力から複数の特徴を抽出する手段」に限定する補正。
(2)「パターン認識コンポーネントを使用して」を,「パターン認識コンポーネントを使用して前記入力の前記画像データを解析し」に補正して,パターン認識コンポーネントを,入力の画像データを解析するものに限定する補正。
(3)「画像ファイルからの画像データと,テキスト又はオーディオデータの少なくとも一方とを含む入力を受信する手段」は,「画像データ」を受信することから,「画像ファイルから,該画像ファイルにおいて」を「前記画像データにおいて」に補正して,記載を整合させる補正。
(4)「視覚的に識別可能な物理的属性を含む,複数の特徴」を,「視覚的に識別可能な物理的属性を含む特徴を決定し,かつ前記入力の前記テキスト及び音声データの少なくとも一方を解析して,前記テキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を決定し,決定された画像データの特徴並びにテキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を集めて,複数の特徴」に補正して,複数の特徴が,画像データの特徴だけでなく,テキスト及び音声データの少なくとも一方の特徴も集めたものに限定する補正。
(5)「前記複数の特徴のサブセット」を,「前記複数の特徴を抽出したことに応答して,該抽出した特徴のサブセット」に補正して,特徴のサブセットを,「複数の特徴を抽出したことに応答して,抽出した」ものに限定する補正。
(6)「テキストベースの検索クエリ」を,「前記入力に対するテキストベースの検索クエリ」に補正して,「テキストベースの検索クエリ」を,「入力に対する」ものに限定する補正。
(7)「前記検索クエリに対応する検索結果を提供する」の記載を追加して,システムが,検索クエリを生成するだけでなく,その検索クエリに対応する検索結果を提供するものに限定する補正。

したがって,請求項11に係る補正は,特許法第17条の2第5項に規定される特許請求の範囲の減縮,及び,誤記の訂正(または,明りょうでない記載の釈明)を目的とするものである。
そこで,補正後の請求項11に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるか,すなわち,請求項11に係る補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか否かについて検討する。

2. 引用文献

原査定の拒絶の理由において引用された特開2001-75980号公報(以下,「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

A.「【0018】
・・・(中略)・・・データベース検索システム10は,データベース端末装置として機能するカメラ付携帯電話装置11と,携帯電話装置11と無線通信回線を介して接続される無線基地局12と,無線基地局12と通信回線を介して接続される交換局13と,交換局13とネットワーク14を介して接続され,データベース検索支援を行うデータベース検索支援装置として機能する検索支援サーバ15と,検索支援サーバ15とネットワーク14を介して接続され,データベースが構築されているデータベースサーバ16と,を備えて構成されている。この場合において,ネットワーク14は,無線電話網および固定電話網のいずれをも含むものとする。」

B.「【0020】[1.3] 実施形態の動作
次に実施形態のデータベース検索システムの動作について説明する。この場合において,ユーザは,初期状態においてカラーカメラ11Iにより,道端に咲いていた「花」を撮像し,対応する画像データを検索キーデータとして携帯電話装置11内のRAM11C内に格納しているものとする。図3および図4にデータベースシステムの概要処理フローチャートを示す。携帯電話装置11からデータベース検索を行う場合には,まず,検索支援サーバ15に対して無線基地局12,交換局13およびネットワーク14を介して発呼処理を行う(ステップS1)。この発呼処理により通信回線が接続されると,検索支援サーバ15は,検索用インデックスデータを送信し(ステップS2),検索用初期画面を携帯電話装置11の表示装置11Fに表示させる(ステップS3)。図示しない検索用初期画面には,検索用インデックスデータを選択して入力するためのインデックスデータ入力部の他,任意のキーワードを入力するためのキーワード入力部,検索キーデータとして,画像データや音声を用いる場合の検索キーデータ入力部がある。
【0021】検索用インデックスデータとしては,階層構造を有するキーワード等が用いられる。例えば,検索用インデックスデータとしては,「政治」,「経済」,「趣味」,「施設」,「図鑑」等のメインインデックスデータの下に,「図鑑」のメインインデックスデータの下位階層には,「植物」,「動物」,「魚」,「鳥」,「宇宙」等の第1サブインデックスデータがあり,さらにこの第1サブインデックスデータの下には,第2,第3のサブインデックスデータがある。この段階において,ユーザは,検索用インデックスデータのみに基づいて検索を行わせたり,検索用インデックスデータにキーワード入力部からいくつかのキーワードを入力して検索を行わせるようにすることも可能である。
【0022】次にユーザは,検索用初期画面を介して,検索キーデータを確定し,入力する(ステップS4)。本実施形態においては,撮像した「花」に対応する画像データのデータファイル名を選択し,確定する。これにより携帯電話装置11は,撮像した「花」に対応する画像データを検索キーデータとして検索支援サーバ15に対して送信する(ステップS5)。これにより,検索支援サーバ15は,送信された画像データの中から,画像の色,明暗,フォーカス位置等から背景から花の画像を分離し,輪郭抽出等を行って,当該画像の特徴パターンを抽出し,当該画像に対応するデータを絞り込むための絞込用データを特定する(ステップS6)。絞込用データとしては,例えば,上述の例の場合,「植物」,「花」,「おもちゃ」,「絵画」等のテキストデータが特定される。次に検索支援サーバ15は,特定した絞込用データを携帯電話装置11に対して送信する(ステップS7)。
【0023】これにより携帯電話装置11の表示装置11Fには,特定された絞込用データが表示されるので,ユーザは,表示された絞込用データのうちから,一または複数の絞込用データを選択し,検索支援サーバ15に送信する(ステップS8)。より具体的には,上述の例の場合,絞込用データ=「花」を選択絞込用データとする。この結果,検索支援サーバ装置15は,選択絞込用データを新たな検索用キーデータとして,再度絞込用データを特定する(ステップS9)。この場合において,画像データに撮像年月日データ,撮像場所データ等が含まれている場合には,これらと選択絞込用データを組み合わせて絞込用データを特定することとなる。より具体的には,絞込用データ=「花」の場合,開花時期,自生場所などから可能性のある種類のみを次の絞込用データとする。
【0024】次に検索支援サーバ15は,特定した絞込用データを携帯電話装置11に対して送信する(ステップS10)。これによりユーザが,当該絞込用データを確定するための操作を行うと(ステップS11),検索支援用サーバ15は,当該絞込用データをデータベースサーバ16に送信する(ステップS12)。これによりデータベースサーバ16は,絞込用データに基づいてデータベース検索を行い(ステップS13),検索結果を検索支援用サーバ15に通知する(ステップS14)。さらに検索支援用サーバ15は,携帯電話装置11に対して,検索結果を通知し(ステップS15),携帯電話装置11は,検索結果を表示装置11Fに表示する(ステップS16)。これによりユーザは,検索結果に基づいて,上述の例の場合,撮像した「花」の種類,特徴などを知ることができる。なお,以上の説明では,ユーザによる絞込用データの選択,確定を2回行っている構成としたが,必要に応じた回数行わせるように構成すればよい。
【0025】[1.4] 実施形態の変形例
[1.4.1] 第1変形例
以上の説明においては,最初の検索キーデータとして,画像データのみを用いる場合について説明したが,検索キーデータとしては,上述した検索用インデックスデータ,テキストデータ,音声データ等を併用あるいは単独で用いることも可能である。この場合において,検索キーデータとして,音声データを用いる場合には,検索支援用サーバ15側に音声認識装置を設け,音声データをテキストデータ等に変換してから,キーワードを抽出して検索キーデータとして用いるように構成すればよい。」

C.「【0031】[1.5] 実施形態の効果
以上の説明のように本実施形態によれば,検索キーデータとして,画像データ,音声データ,テキストデータ,検索用インデックスデータのいずれか若しくはそれらの組み合わせを用いることにより,携帯電話装置をデータベース端末装置として,様々な場所で,いつでもデータベース検索を行うことができる。
【発明の効果】本発明によれば,検索キーデータとして画像データが含まれる場合に画像データに対応する画像の画像認識を行い,画像認識の結果に基づいてデータベースに格納されているデータのうちから検索対象を絞り込むための絞込用データを提示し,提示された絞込用データのうちから一または複数の絞込用データを前記データベース検索に用いるための選択絞込用データとしてユーザに選択させるように構成しているため,画像認識結果を踏まえたデータベース支援検索を行える。さらに加えて,携帯端末装置側からの検索の検索キーデータとして,画像データ,テキストデータ,音声データ等を用いることができ,検索操作場所を選ばないとともに,柔軟なデータベース検索を行うことが可能となる。」

上記A.のデータベース検索システムの構成,上記B.の実施形態の動作(ステップ1?ステップ16),上記C.の実施形態の効果をまとめると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

<引用発明>
「 カメラ付携帯電話装置11と,検索支援サーバ15と,データベースサーバ16とを備え,
携帯電話装置11は,検索支援サーバ15に対して発呼処理を行い(ステップS1),
検索支援サーバ15は,
この発呼処理により通信回線が接続されると,検索用インデックスデータを携帯電話装置11に送信し(ステップS2),
検索用初期画面を携帯電話装置11の表示装置11Fに表示させ(ステップS3),
当該検索用初期画面には,検索用インデックスデータを選択して入力するためのインデックスデータ入力部の他,任意のキーワードを入力するためのキーワード入力部,検索キーデータとして,画像データや音声を用いる場合の検索キーデータ入力部があり,
ユーザは,検索用初期画面を介して,検索キーデータを確定し,入力し,例えば,撮像した花に対応する画像データのデータファイル名を選択し,確定し(ステップS4),
携帯電話装置11は,撮像した花に対応する画像データを検索キーデータとして検索支援サーバ15に対して送信し(ステップS5),
検索支援サーバ15は,送信された画像データの中から,当該画像の特徴パターンを抽出し,当該画像に対応するデータを絞り込むための絞込用データを特定し,当該絞込用データとしては,例えば,上記画像データの場合,植物,花,おもちゃ,絵画等のテキストデータが特定され(ステップS6),
検索支援サーバ15は,特定した絞込用データを携帯電話装置11に対して送信し(ステップS7),
ユーザは,携帯電話装置11に表示された絞込用データのうちから,一または複数の絞込用データを選択し,検索支援サーバ15に送信し,より具体的には,上記の例の場合,絞込用データ=花を選択絞込用データとし(ステップS8),
検索支援サーバ装置15は,選択絞込用データを新たな検索用キーデータとして,再度絞込用データを特定し(ステップS9),
検索支援サーバ15は,特定した絞込用データを携帯電話装置11に対して送信し(ステップS10),
ユーザが,当該絞込用データを確定するための操作を行うと(ステップS11),
検索支援用サーバ15は,当該絞込用データをデータベースサーバ16に送信し(ステップS12),
データベースサーバ16は,絞込用データに基づいてデータベース検索を行い(ステップS13), 検索結果を検索支援用サーバ15に通知し(ステップS14),
検索支援用サーバ15は,携帯電話装置11に対して,検索結果を通知し(ステップS15),
携帯電話装置11は,検索結果を表示装置11Fに表示し,上記の例の場合,撮像した「花」の種類,特徴などを知ることができ(ステップS16),
なお,上記の場合,ユーザによる絞込用データの選択,確定を2回行う構成としたが,必要に応じた回数行わせるように構成すればよく,
最初の検索キーデータとして画像データのみを用いたが,検索用インデックスデータ,テキストデータ,音声データ等を併用することも可能であり,音声データを用いる場合には,検索支援用サーバ15側に音声認識装置を設け,音声データをテキストデータ等に変換してから,キーワードを抽出して検索キーデータとして用いるように構成され,
画像認識の結果に基づいて絞込用データを提示し,提示された絞込用データのうちから一または複数の絞込用データを前記データベース検索に用いるための選択絞込用データとしてユーザに選択させるように構成しているため,画像認識結果を踏まえたデータベース支援検索を行うことができる,
,データベース検索システム。」

3. 対比

次に,本件補正発明と引用発明とを対比する。

A.引用発明の「ユーザは,検索用初期画面を介して,検索キーデータを確定し,入力し,例えば,撮像した花に対応する画像データのデータファイル名を選択し,確定し(ステップS4),
携帯電話装置11は,撮像した花に対応する画像データを検索キーデータとして検索支援サーバ15に対して送信し(ステップS5)」,
「上記の例では,最初の検索キーデータとして画像データのみを用いるが,検索キーデータとしては,検索用インデックスデータ,テキストデータ,音声データ等を併用あるいは単独で用いることも可能であり」によれば,
最初の検索キーデータとして画像データと音声データとを併用する場合に,検索支援サーバは,画像ファイル(データファイル)からの画像データと,オーディオデータ(音声データ)とを含む入力を受信する手段を有するといえる。
したがって,引用発明の上記手段は,本件補正発明の「画像ファイルからの画像データと,テキスト又はオーディオデータの少なくとも一方とを含む入力を受信する手段」に相当する。

B.引用発明の「検索支援サーバ15は,送信された画像データの中から,当該画像の特徴パターンを抽出し,当該画像に対応するデータを絞り込むための絞込用データを特定し,当該絞込用データとしては,例えば,上記画像データの場合,植物,花,おもちゃ,絵画等のテキストデータが特定され(ステップS6)」,
「音声データを用いる場合には,検索支援用サーバ15側に音声認識装置を設け,音声データをテキストデータ等に変換してから,キーワードを抽出して検索キーデータとして用いるように構成され」によれば,
画像データと音声データとを併用する場合に,検索支援サーバは,入力されたデータを解析し,入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識を使用して入力の画像データを解析し,画像データにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む特徴(すなわち,植物,花など)を決定し,かつ,入力の音声データを解析して,音声データに関連する特徴(すなわち,音声データをテキストデータに変換してから抽出されたキーワード)を決定し,決定された画像データの特徴並びに音声データに関連する特徴を集めて,複数の特徴を抽出する手段を有するといえる。
したがって,引用発明の上記手段と,本件補正発明の「前記入力を解析し,前記入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識コンポーネントを使用して前記入力の前記画像データを解析し,前記画像データにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む特徴を決定し,かつ前記入力の前記テキスト及び音声データの少なくとも一方を解析して,前記テキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を決定し,決定された画像データの特徴並びにテキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を集めて,複数の特徴を抽出する手段」は,
「前記入力を解析し,前記入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識を使用して前記入力の前記画像データを解析し,前記画像データにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む特徴を決定し,かつ前記入力の前記テキスト及び音声データの少なくとも一方を解析して,前記テキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を決定し,決定された画像データの特徴並びにテキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を集めて,複数の特徴を抽出する手段」の点で共通する。
ただし,本件補正発明は「パターン認識コンポーネント」を使用するのに対し,引用発明はパターン認識を使用するものの,「パターン認識コンポーネント」を使用するかどうかは不明である点で相違する。

C.引用発明の「検索支援用サーバ15は,当該絞込用データをデータベースサーバ16に送信し(ステップS12)」は,データベースサーバへの検索クエリを生成する手段といえる。
また,上記「絞込用データ」は,画像データと音声データから抽出された特徴であり,ユーザによって選択された選択絞込用データ(抽出した特徴のサブセット)から生成され,また,テキストデータである。
したがって,引用発明の上記手段は,本件補正発明の「前記複数の特徴を抽出したことに応答して,該抽出した特徴のサブセットから,前記入力に対するテキストベースの検索クエリを生成する手段」に相当する。

D.引用発明の「データベースサーバ16は,絞込用データに基づいてデータベース検索を行い(ステップS13),検索結果を検索支援用サーバ15に通知し(ステップS14),
検索支援用サーバ15は,携帯電話装置11に対して,検索結果を通知し(ステップS15)」は,本件補正発明の「前記検索クエリに対応する検索結果を提供する」に相当する。

E.前記A.?D.に係る引用発明の各手段,機能は,検索支援用サーバ15及びデータベースサーバ16に実装されるものである。また,これらのサーバがコンピュータであることは自明である。
したがって,引用発明のデータベース検索システムは,本件補正発明の「コンピュータで実装可能なシステム」に相当する。

前記A.?E.によれば,本件補正発明と引用発明は次の点で一致する。

<一致点>
「画像ファイルからの画像データと,テキスト又はオーディオデータの少なくとも一方とを含む入力を受信する手段と,
前記入力を解析し,前記入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識を使用して前記入力の前記画像データを解析し,前記画像データにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む特徴を決定し,かつ前記入力の前記テキスト及び音声データの少なくとも一方を解析して,前記テキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を決定し,決定された画像データの特徴並びにテキスト及び音声データの少なくとも一方に関連する特徴を集めて,複数の特徴を抽出する手段と,
前記複数の特徴を抽出したことに応答して,該抽出した特徴のサブセットから,前記入力に対するテキストベースの検索クエリを生成する手段と
を備え,
前記検索クエリに対応する検索結果を提供する,コンピュータで実装可能なシステム。」

そして,本件補正発明と引用発明は,次の点で相違する。
<相違点>
パターン認識が,本件補正発明では「コンポーネント」であるのに対し,引用発明では「コンポーネント」かどうか不明である点。

4. 判断

本願明細書には,「コンポーネント」について次の事項が記載されている。

「【0013】
本出願で使用する,「コンポーネント」および「システム」という用語は,コンピュータ関連のエンティティ,すなわちハードウェア,ハードウェアとソフトウェアの組合せ,ソフトウェア,または実行中のソフトウェアを指すものとする。たとえば,コンポーネントは,1つのプロセッサで実行中のプロセス,プロセッサ,オブジェクト,実行ファイル,実行のスレッド,プログラム,および/またはコンピュータである可能性があるが,これらに限定されない。」

上記記載によれば,本件補正発明の「パターン認識コンポーネント」は,パターン認識を行う,コンピュータ関連のハードウェア,ソフトウェア,あるいはその組合せを含む。
一方,引用発明は,特徴パターンの抽出を検索支援サーバで行うことから,パターン認識を,コンピュータ関連のハードウェア,ソフトウェア,あるいはその組合せにより行うことは明らかである。
してみると,引用発明において,検索支援サーバのハードウエア,ソフトウエアのうち,パターン認識に関わるハードウェア,ソフトウェアの構成要素を,「パターン認識コンポーネント」とすることは容易に想到し得ることである。
そして,本件補正発明の作用効果も,引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本件補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

5. 補正却下の決定のむすび

よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

平成27年5月20日の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項13に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年6月10日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項13に記載された事項により特定されるものである(前記第2,1.の<補正前の請求項13>)。

第4 引用文献

引用文献1の記載事項は,前記第2,2.に記載したとおりである。

第5 対比及び判断

A.前記第2,3.,Aにおいて検討したとおり,引用発明の検索支援サーバは,最初の検索キーデータとして画像データと音声データとを併用する場合に,画像ファイル(データファイル)からの画像データと,オーディオデータ(音声データ)とを含む入力を受信する手段を有するといえる。
したがって,引用発明の上記手段は,本願発明の「画像ファイルからの画像データと,テキスト又はオーディオデータの少なくとも一方とを含む入力を受信する手段」に相当する。

B.引用発明の「検索支援サーバ15は,送信された画像データの中から,当該画像の特徴パターンを抽出し,当該画像に対応するデータを絞り込むための絞込用データを特定し,当該絞込用データとしては,例えば,上記画像データの場合,植物,花,おもちゃ,絵画等のテキストデータが特定され(ステップS6)」,
「音声データを用いる場合には,検索支援用サーバ15側に音声認識装置を設け,音声データをテキストデータ等に変換してから,キーワードを抽出して検索キーデータとして用いるように構成され」によれば,
引用発明は,入力された画像データと音声データとから複数の特徴を抽出する手段を有し,画像データから抽出される特徴には,パターン認識を使用して,画像ファイル(データファイル)から,該画像ファイルにおいて視覚的に識別可能な物理的属性(植物,花など)が含まれるといえる。
したがって,引用発明の上記手段と,本願発明の「前記入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識コンポーネントを使用して,前記画像ファイルから,該画像ファイルにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む,複数の特徴を抽出する手段」は,「前記入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識を使用して,前記画像ファイルから,該画像ファイルにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む,複数の特徴を抽出する手段」の点で共通する。
ただし,本願発明は「パターン認識コンポーネント」を使用するのに対し,引用発明はパターン認識を使用するものの,「パターン認識コンポーネント」を使用するかどうかは不明である点で相違する。

C.引用発明の「検索支援用サーバ15は,当該絞込用データをデータベースサーバ16に送信し(ステップS12)」は,データベースサーバへの検索クエリを生成することにほかならないから,検索クエリを生成する手段といえる。
また,上記「絞込用データ」は,画像データと音声データを併用する場合,これらのデータから抽出された特徴であり,ユーザによって選択された選択絞込用データ(サブセット)から生成され,また,テキストデータである。
したがって,引用発明の上記手段は,本願発明の「前記複数の特徴のサブセットに基づいてテキストベースの検索クエリを生成する手段」に相当する。

D.引用発明の前記各手段,機能は,検索支援用サーバ15及びデータベースサーバ16に実装されるものである。また,これらのサーバが,コンピュータであることは自明である。
したがって,引用発明のデータベース検索システムは,本願発明の「コンピュータで実装可能なシステム」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明は,次の点で一致する。

<一致点>
「画像ファイルからの画像データと,テキスト又はオーディオデータの少なくとも一方とを含む入力を受信する手段と,
前記入力から複数の特徴を抽出する手段であって,パターン認識を使用して,前記画像ファイルから,該画像ファイルにおいて視覚的に識別可能な物理的属性を含む,複数の特徴を抽出する手段と,
前記複数の特徴のサブセットに基づいてテキストベースの検索クエリを生成する手段と を備える,コンピュータで実装可能なシステム。」

そして,本願発明と引用発明は,次の点で相違する。
<相違点>
パターン認識が,本願発明では「コンポーネント」であるのに対し,引用発明では「コンポーネント」かどうか不明である点。

次に上記相違点について検討する。
前記第2,4.において検討したとおり,本願明細書の記載によれば,本願発明の「パターン認識コンポーネント」は,パターン認識を行う,コンピュータ関連のハードウェア,ソフトウェア,あるいはその組合せを含む。
一方,引用発明は,特徴パターンの抽出を検索支援サーバで行うことから,パターン認識を,コンピュータ関連のハードウェア,ソフトウェア,あるいはその組合せにより行うことは明らかである。
してみると,引用発明において,検索支援サーバのハードウエア,ソフトウエアのうち,パターン認識に関わるハードウェア,ソフトウェアの構成要素を,「パターン認識コンポーネント」とすることは容易に想到し得ることである。
そして,本願発明の作用効果も,引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-04 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-03-02 
出願番号 特願2013-117233(P2013-117233)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 学  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 手島 聖治
小田 浩
発明の名称 視覚的な多次元の検索  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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