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審決分類 |
審判 一部無効 1項1号公知 B07C 審判 一部無効 2項進歩性 B07C 審判 一部無効 1項3号刊行物記載 B07C 審判 一部無効 1項2号公然実施 B07C |
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管理番号 | 1316885 |
審判番号 | 無効2014-800040 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2014-03-17 |
確定日 | 2016-08-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3702110号発明「農産物の選別装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第3702110号の請求項1ないし6に係る発明についての出願は、平成10年10月23日に出願され、平成17年7月22日に特許権の設定登録がされたものである。 これに対して、平成26年3月17日に近江度量衡株式会社(以下、「請求人」という。)より、本件特許第3702110号発明の請求項1、2、3、5及び6に記載された発明について本件無効審判の請求がされ、同年4月15日(4月14日差出)に手続補正書が提出され、同年6月23日にシブヤ精機株式会社(以下、「被請求人」という。)より審判事件答弁書(以下、「答弁書」ともいう。)が提出され、同年8月1日付けで審理事項が通知され、同年9月8日に被請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、同年9月9日(9月8日差出)に請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、同年9月29日に被請求人から上申書が提出され、同年10月6日に第1回口頭審理が行われ、同年10月17日(10月16日差出)に請求人から上申書が提出され、同年11月7日に被請求人から上申書が提出されたものである。 第2 本件特許発明 本件特許第3702110号の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許第3702110号の特許権の設定登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 搬送手段に連結されていない受皿と、農産物供給位置から農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え、この搬送手段には、この受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域、及び該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し、前記各受皿に、その上に載せられている農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し、前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置において、 前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に、このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたことを特徴とする農産物の選別装置。 【請求項2】 請求項1において、前記仕分ラインは、仕分けるべき全ての区分毎に少なくとも1条設けられていることを特徴とする農産物の選別装置。 【請求項3】 請求項1又は2において、搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排出制御する排出手段と、各仕分ラインに排出された受皿の貯溜状態を監視する監視手段とを備え、受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させないことを特徴とする農産物の選別装置。 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかにおいて、仕分ラインは搬送手段の水平横方向に分岐延出して設けられ、リターンコンベアはこれら仕分ラインを構成するコンベアの下方を前記搬送手段に並行して延設されていることを特徴とする農産物の選別装置。 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかにおいて、リターンコンベアで戻された受皿の搬送手段への送り込みのために、該搬送手段上の受皿が途切れたときに該送り込みを行う送り込み制御手段を設けたことを特徴とする農産物の選別装置。 【請求項6】 請求項5において、受皿の搬送手段への送り込み制御手段は、搬送手段上の受皿の途切れが受皿一個分以上であることを検知する途切れ長さ検知手段と、常時はリターンコンベアで戻された受皿を搬送手段への送り込み位置の手前で停止させかつ前記該検知手段の検知に連動して該停止を解除して送り込みを行わせるストッパ手段とを備えていることを特徴とする農産物の選別装置。」 第3 請求人が主張する無効理由の概要 1 請求人の主張の全体概要及び証拠 請求人は、「特許第3702110号発明の特許請求の範囲の請求項1、2、3、5及び6に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」との趣旨で特許無効審判を請求しており、その理由の概要は、請求人が提出した審判請求書、手続補正書、口頭審理陳述要領書及び上申書からみて、以下のとおりである。 (1)理由1(特許法第29条第1項第3号) 特許第3702110号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、2、5及び6に係る特許発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。(以下、「無効理由1」ともいう。) (2)理由2(特許法第29条第2項) 本件特許の請求項1、2、3、5及び6に係る特許発明(以下、「本件特許発明1、2、3、5及び6」という。)は、下記アないしエに述べるとおり、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明及び甲第6号証?第10号証による公知公用の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。(以下、「無効理由2」ともいう。) ア 本件特許発明1は、甲2発明及び甲第3号証に記載の発明並びに甲第6号証?甲第10号証による公知公用の技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 イ 本件特許発明2は、上記アに加え、甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 ウ 本件特許発明3は、上記アに加え、甲第4号証及び甲第5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 エ 本件特許発明5及び6は、上記アにより、当業者が容易に想到し得たものである。 (3)証拠方法 請求人は、証拠として、以下の甲第1ないし11号証を提出している。 甲第1号証:特許第3702110号公報(本件特許公報) 甲第2号証:特開平5-50041号公報 甲第3号証:実願平5-74395号(実開平7-40634号公報)のCD-ROM 甲第4号証:特開平9-248523号公報 甲第5号証:実願平5-48904号(実開平7-13831号公報)のCD-ROM 甲第6号証:JA松本ハイランドのスイカ選果包装施設配置図 甲第7号証:JA松本ハイランドのスイカ選果包装施設感謝状 甲第8号証:JA松本ハイランドすいか集出荷施設のパンフレット 甲第9号証:日本農業新聞の平成10年6月19日付けJA松本ハイランドすいか集出荷施設の記事 甲第10号証:施設建設契約書 甲第11号証:特開平3-137976号公報 (4)参考資料 請求人は、参考資料として、以下の資料を提出している。 資料1(特許第3071249号公報) 資料2(甲第8号証において、○9(審決注:原文は○の中に9。以下、同様に記載する。)製品箱文字認識装置の位置を修正した図) 資料3(特開昭64-80479号公報) 資料4(1998年2月10日作成の図面) 資料5(松本ハイランド農業協同組合すいか集出荷施設について) 資料6(甲8号証の各部写真) 資料7(甲8号証の平面図) 資料8(読取装置及びコントロールパネル群の配線図) 資料9(コントロールパネル群の制御エリア図) 資料10(プールコンベアの光電スイッチについて) 資料11(光電スイッチとCP-61の配線図) 資料12(袖カーブコンベアの光電スイッチについて) 資料13(袖カーブコンベアの詰まり検知について) 資料14(袖カーブコンベアの駆動について) 資料15(袖カーブコンベアの駆動について) 資料16(CP-61のプログラム) 資料17(CP-61のプログラム) 資料18(CP一2のプログラム) 資料19(CP-2とCP-3の接続図) 資料20(CP-3のプログラム) 資料21(CP-3のプログラム) 資料22(CP-3のプログラム) 資料23(フローチャート) 2 無効理由に係る主張の概要 請求人が提出した審判請求書、手続補正書、口頭審理陳述要領書及び上申書からみて、主張の概要は、以下のとおりである。 2-1 本件特許発明の分説 【請求項1】 A 搬送手段に連結されていない受皿と、 B 農産物供給位置から農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え、 C1 この搬送手段には、この受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域、 C2 及び該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し、 C3 前記各受皿に、その上に載せられている農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し、前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置において、 D 前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に、 E このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたことを特徴とする F 農産物の選別装置。 【請求項2】 請求項1において、 G 前記仕分ラインは、仕分けるべき全ての区分毎に少なくとも1条設けられていることを特徴とする F 農産物の選別装置。 【請求項3】 請求項1又は2において、 H 搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排出制御する排出手段と、 I 各仕分ラインに排出された受皿の貯溜状態を監視する監視手段とを備え、 J 受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させないことを特徴とする F 農産物の選別装置。 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかにおいて、 K リターンコンベアで戻された受皿の搬送手段への送り込みのために、該搬送手段上の受皿が途切れたときに該送り込みを行う送り込み制御手段を設けたことを特徴とする F 農産物の選別装置。 【請求項6】 請求項5において、 L 受皿の搬送手段への送り込み制御手段は、搬送手段上の受皿の途切れが受皿一個分以上であることを検知する途切れ長さ検知手段と、 M 常時はリターンコンベアで戻された受皿を搬送手段への送り込み位置の手前で停止させかつ前記該検知手段の検知に連動して該停止を解除して送り込みを行わせるストッパ手段とを備えていることを特徴とする F 農産物の選別装置。 2-2 甲第2号証ないし甲第11号証の記載 (1)甲第2号証:特開平5-50041号公報(審判請求書21ページ6行ないし39ページ10行) ア 構成要件A 甲第2号証における段落【0010】、【0012】、【0015】及び【0023】の記載によれば、受皿2は、仕分コンベア101aの搬送路に沿って設けられた排出装置6aによって、仕分コンベア101aの搬送路の側方へ排出される。したがって、受皿2は搬送路と連結されていないことは明らかである。ここで、「受皿2」、「搬送路」は、それぞれ本件特許発明1の「受皿」、「搬送手段」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件Aに相当する構成が記載されている。 イ 構成要件B 甲第2号証における段落【0010】ないし【0013】、【0033】ないし【0041】の記載によれば、例えば人手の作業により青果物Fが選別コンベア100上で搬送される受皿2に載せられると、搬送途中に読取計測手段3により固有情報信号を読み取るとともに階級判別要素を計測される。読取計測手段3を通過して仕分コンベア101上に送り出された青果物F入り受皿2は、仕分コンベア101から分岐コンベア102上へ排出される。そして、この分岐コンベア102により搬送されて第1プールコンベア103上にプールされた青果物F入り受皿2は、この第1プールコンベア103の終端部103bから所定数を切り出して搬出コンベア104により一列に合流コンベア105へ搬出される。この合流コンベア105により第2仕分コンベア106上へ送られた青果物F入り受皿2は箱詰プール装置10上へ排出され、排出された青果物F入り受皿2は、自動箱詰装置11により所定数まとめて段ボール箱12に箱詰されて製品となって送り出される。 ここで、「例えば人手の作業により青果物Fが選別コンベア100上で搬送される受皿2に載せられる」(位置)は、本件特許発明1の「農産物供給位置」に相当する。また、「排出された青果物F入り受皿2は、自動箱詰装置11により所定数まとめて段ボール箱12に箱詰されて製品となって送り出される。」ことから、「箱詰プール装置10」の設置位置は、本件特許発明1の「農産物包装作業位置」に相当する。そして、選別コンベア100上で青果物Fを載せられた受皿2は、選別コンベア100、仕分コンベア101、分岐コンベア102、第1プールコンベア103、搬出コンベア104、合流コンベア105、第2仕分コンベア106を介して箱詰プール装置10へと搬送されることから、「選別コンベア100、仕分コンベア101、分岐コンベア102、第1プールコンベア103、搬出コンベア104、合流コンベア105、第2仕分コンベア106からなる搬送手段1」は、本件特許発明1の「農産物供給位置から農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件Bに相当する構成が記載されている。 ウ 構成要件C1 甲第2号証における段落【0016】ないし【0019】の記載によれば、読取計測手段3は、搬送中の受皿2のバーコードマーク22を読取る読取装置31と受皿2上の青果物Fの所定の計測項目を計測する計測装置32とを組み合わせて構成されており、読取計測手段3は選別コンベア100の所定位置に設けられている。そして、演算判定部41は読取計測手段3の計測装置32から入力される計測情報信号から予め設定した区分値を比較して仕分クラス(等級及び階級)を算出するようになっており、演算判定部41で算出された仕分クラスを、読取計測手段3の読取装置31から受皿2のバーコードマーク22を読取ったコード番号と共に更新記憶するようになっている。 よって、読取計測手段3(読取装置31+計測装置32)は受皿2に載せられた青果物Fの仕分するために必要とする情報を計測するために選別コンベア100の所定位置に設けられている。また、本件特許発明1の上記構成要件Bについて検討したように、選別コンベア100は本件特許発明1の搬送手段の一部に相当するものである。してみると、「読取計測手段3が選別コンベア100に設けられた所定位置」は、本件特許発明1の「この受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件C1に相当する構成が記載されている。 エ 構成要件C2 甲第2号証における段落【0019】、【0023】、【0024】及び【0040】の記載によれば、演算判定部41は前記読取計測手段3の計測装置32から入力される計測情報信号から予め設定した区分値と比較して仕分クラス(等級及び階級)を算出するようになっており、アドレスメモリ部42は、演算判定部41で算出された仕分クラスを、前記読取装置31が受皿2のバーコードマーク22を読取ったコード番号と共に更新記憶され、第2仕分コンベア106の搬送路に沿って等級の数よりも所定数少ない数を所定間隔に配置し、第2仕分コンベア106上の受皿2のバーコードマークを第2仕分読取装置50によって読取り、読取られたバーコードマークのコード番号に対応した受皿2の等級をアドレスメモリ部42から読出し、読出された等級信号に従って排出装置60を動作させ、第2仕分コンベア106に沿って設けられた排出装置60は、階級別に等級を混在して仕分コンベア106に搬送される青果物F入り受皿2を等級別に仕分けるように構成されている。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件C2に相当する構成が記載されている。 オ 構成要件C3 甲第2号証における段落【0019】、【0022】ないし【0024】、及び【0040】の記載によれば、各受皿2に、その上に載せられている青果物Fの仕分クラスをバーコードマーク22を介して間接的に読出し可能にアドレスメモリ部42に記録し、前記第2仕分コンベア106の上流側所定位置に配置された第2仕分読取装置50により受皿2のバーコードマーク22を読取られて固有情報信号(コード番号)が仕分制御手段7の等級読出部71へ入力され、等級読出部71はこのコード番号からアドレスメモリ部42に記憶された等級を読出して等級信号を排出制御部73へ入力し、排出制御部73はこの等級が予め排出位置設定部72で指定された排出位置のいずれに属するか判別し、排出位置の指定がある場合に該当する排出装置60へ向けて等級別排出信号を受皿2の進行と同期させて出力する。 ここで、「各受皿2に、その上に載せられている青果物Fの仕分クラスをバーコードマーク22を介して間接的に読出し可能にアドレスメモリ部42に記録し、」は、本件特許発明1の「前記各受皿に、その上に載せられている農産物の仕分け情報を識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し、」に相当する。また、「前記第2仕分コンベア106の上流側所定位置に配置された第2仕分読取装置50により受皿2のバーコードマーク22を読取られて固有情報信号(コード番号)が仕分制御手段7の等級読出部71へ入力され、等級読出部71はこのコード番号からアドレスメモリ部42に記憶された等級を読出して等級信号を排出制御部73へ入力し、排出制御部73はこの等級が予め排出位置設定部72で指定された排出位置のいずれに属するか判別し、排出位置の指定がある場合に該当する排出装置60へ向けて等級別排出信号を受皿2の進行と同期させて出力する。」は、本件特許発明1の「前記仕分け排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件C3に相当する構成が記載されている。 カ 構成要件D 甲第2号証における段落【0027】及び【0028】の記載の「前記第2仕分コンベア106上で排出されない排出位置の指定がない青果物F入り受皿2を、前記合流コンベア105の始端部へ還元するリターン手段8」は、本件特許発明1の「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベア」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件Dに相当する構成が記載されている。 キ 構成要件E 甲第2号証における段落【0013】、【0028】及び【0040】の記載によれば、リターン手段8は、第2仕分コンベア106上で排出されない青果物F入り受皿2を、合流コンベア105の始端部へ還元する手段である。そして、合流コンベア105の終端部は第2仕分コンベア106に青果物Fが載置された受皿2が送り出されるようになっている。合流コンベア105から第2仕分コンベア106に送り出された青果物F入り受皿2に載置された青果物Fは、第2仕分読取装置50により受皿2のバーコードマーク22を読取らせて固有情報信号(コード番号)が仕分制御手段7の等級読取部71へ入力される。 ここで、「第2仕分読取装置50」は本件特許発明1の「仕分け情報読み出し手段」に相当する。してみると、「第2仕分コンベア106上で排出されない青果物F入り受皿2を合流コンベア105の始端部へ還元するリターン手段8」は、本件特許発明1の「このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたことを特徴とする」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件Eに相当する構成が記載されている。 ク 構成要件F 甲第2号証における【請求項1】の記載から、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件Fに相当する構成が記載されている。 ケ 構成要件G 甲第2号証における段落【0003】ないし【0005】、並びに【請求項1】の記載によれば、「選別装置は、計測後の青果物を搬送して仕分ける搬送ラインの側方に、箱詰めするための手段を仕分クラス(等級、階級)の数と同数配置して構成したものである。」、および、「仕分読取装置の後段で搬送路に沿って仕分クラスの数よりも所定数少ない数設けられ、送られてくる排出信号により作動して青果物入り受皿を前記搬送手段から排出させる排出装置」は、本件特許発明2の「前記仕分ラインは、仕分けるべき全ての区分毎に少なくとも1条設けられていることを特徴とする選別装置。」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の上記構成要件Gに相当する構成が記載されている。 コ 構成要件H 甲第2号証における段落【0025】の記載事項は、本件特許発明3の「搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排除する排出手段と」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明3の上記構成要件Hに相当する構成が記載されている。 サ 構成要件K、L及びM 甲第2号証における段落【0028】及び【0029】の記載によれば、図示しないタイミング送り装置は、前記第1プールコンベア103から送り出される青果物F入り受皿2と合流コンベア105上でスムースに合流する如く、終端部82bに合流のためのタイミングを調整するものである。したがって、タイミング送り装置は、本件特許発明5の「リターンコンベアで戻された受皿の搬送手段への送り込みのために、該搬送手段上の受皿が途切れたときに該送り込みを行う送り込み制御手段」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明5の上記構成要件Kに相当する構成が記載されている。 また、青果物F入り受皿2が合流コンベア105上でスムースに合流するためには、青果物F入り受皿2が相互に衝突しないようにする必要がある。そのためには、青果物F入り受皿2の一個分以上(青果物Fが受皿より大きければそれ以上)離間するようになすことは当業者が当然なすべき事項にすぎない。 してみると、「前記第1プールコンベア103から送り出される青果物F入り受皿2と合流コンベア105上でスムースに合流する如く、終端部82bに合流のためのタイミング送り装置(図示せず)を設けて構成する」は、本件特許発明6の「L 受皿の搬送手段への送り込み制御手段は、搬送手段上の受皿の途切れが受皿一個分以上であることを検知する途切れ長さ検知手段と、M 常時はリターンコンベアで戻された受皿を搬送手段への送り込み位置の手前で停止させかつ前記該検知手段の検知に連動して該停止を解除して送り込みを行わせるストッパ手段」に相当する。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明6の上記構成要件Lおよび構成要件Mに相当する構成が記載されている。 (2)甲第3号証:実願平5-74395号(実開平7-40634号公報)のCD一ROM(審判請求書39ページ11行ないし41ページ14行) ・構成要件H、I及びJ 甲第3号証の段落【0014】ないし【0019】の記載における、「主流シュート13と副流シュート15とによって仕分物品W1,W2は1箇所に集められるが,集められた仕分物品W1,W2を作業員が処理しきれない場合、仕分物品W1,W2は、滞留し、満杯検知センサー40によって検知される。満杯検知センサー40は、仕分物品W1,W2を検知し、ある一定時間、ON状態が続いた場合に、その仕分物品W1,W2を、滞留仕分物品として検知する」構成は、「搬送手段から各仕分区分のラインに受皿を排出制御する排出手段と、各仕分ラインに排出された受皿の貯留状態を監視する監視手段」の構成に相当する。 また、「滞留仕分物品を検知したとき、仕分コンベア17からの投入された新たな仕分物品が投入検知センサー21,31の前を通過した場合、その後の、仕分コンベア17からの仕分物品の投入を停止させる」は、本件特許発明3の「受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させないこと」に相当する。 したがって、甲第3号証には、本件特許発明3の上記構成要件H、構成要件Iおよび構成要件Jに相当する構成が記載されている。 (3)甲第4号証:特開平9-248523号公報(審判請求書41ページ15行ないし43ページ2行) ・構成要件H、I及びJ 甲第4号証の段落【0004】、【0016】及び【0017】における記載の「トレイ方向変更板13a,13b・・・を適宜制御する制御装置39」は、本件特許発明3の「搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排出制御する排出手段」に相当する。 また、上記記載の「搬送コンベア1と各仕分けラインとのトレイ排出部には第1センサとして荷溜まりセンサ36a,36b・・・が設置されていてその仕分けラインに供給される等階級の果実nの数をカウント」する構成は、本件特許発明3の「各仕分けラインに排出された受皿の貯留状態を監視する監視手段」に相当する。 また、上記記載の「荷溜まりセンサ36a,36b・・・の信号に基づいて過負荷供給状態の仕分けラインを検出し、その検出信号によってトレイ受取コンベア5の荷溜まりが出来ないようにトレイ方向変更板13a,13b・・・を適宜制御」は、本件特許発明3の「仕分ラインに排出された受皿の貯留状態を監視する監視手段」に相当する。 したがって、甲第4号証には、本件特許発明3の上記構成要件H、構成要件Iおよび構成要件Jに相当する構成が記載されている。 (4)甲第5号証:実願平5-48904号(実開平7-13831号)公報のCD-ROM(審判請求書43ページ3行ないし44ページ下から5行) ・構成要件H、I及びJ 甲第5号証の段落【0022】ないし【0024】の記載における「コンベヤ制御盤で空のコンベヤ番号を自動的に見出して、事前にこの仕分け番号に自動的に設定変更するように制御を行う」は、本件特許発明3の「搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排出制御する排出手段」に相当する。 また、上記記載の「各コンベヤ15上にはバケット11がたまってくる。この時の各コンベヤ15のバケット個数は前記同様にして通過カウンタが計数」は、本件特許発明3の「各仕分ラインに排出された受皿の貯留状態を監視する監視手段」に相当する。 また、上記記載の「通過カウンタ値を基に空きコンベヤ番号を探す。次にこのコンベヤ番号に付与されていた登録データ内の仕分け番号を、満杯間近の仕分け番号に自動変更する。これにより満杯後は、新たに追加された仕分け番号のコンベヤ番号に流れることになる」は、本件特許発明3の「受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させない」に相当する。 したがって、甲第5号証には、本件特許発明3の上記構成要件H、構成要件Iおよび構成要件Jに相当する構成が記載されている。 (5)甲第6号証?甲第10号証について(審判請求書44ページ下から4行ないし45ページ末行) 甲第6号証は、JA松本ハイランドのスイカ選果包装施設配置図である。甲第6号証の施設1階の機器配置図及び機器一覧表1?3に示される資料に基づいて製造された施設が、甲第10号証の施設建設契約書に記載の平成10年3月31日に近江度量衡株式会社から松本ハイランド農業協同組合に引き渡され、甲第7号証の感謝状に示される日付におい竣工式が行われた。 甲第8号証のパンフレットはJA松本ハイランドスイカ集出荷施設の概要を示す。また、甲第9号証は、日本農業新聞の平成10年6月19日付けJA松本ハイランドすいか集出荷施設の竣工を報じる新聞記事である。 甲第6号証に基づいて製造されたJA松本ハイランドスイカ集出荷施設では、パレタイザラインは2系統あり、各々に選別コンベア(一覧表表示名ユニソークE29,E75)かあり、その上流のインダクションコンベア(E27,E72)上に文字認識装置(一覧表E27,E72の備考欄に表記)が設置されている。又、リターンラインは、E19b E30?E34、E60 E76a?E79)の備考欄に表記されている。製品段ボールは、各階級毎(5L?2S)専用の箱なので、原料段階で印刷される。文字認識装置は、その印字、印刷された等階級文字を読み取り、所定のプールコンベアへ仕分けされる。所定のプールコンベアが、満杯であればリターンラインへ搬送される。リターンラインへ戻された製品段ボールは再度、文字認識装置によって読み取られ、所定のプールコンベアに搬送される。 そして、農業協同組合の施設は他の農業協同組合からの視察や社会見学などを受け入れる性質上、当該施設で用いられる技術は公然に知られるものであって、不特定多数の者が知りうる形で公然に実施されるものである。公知公用であることは、甲第9号証で新聞社の取材を受けていることからも明らかである。 そうすると、「搬送される対象物を仕分けるための情報が既に知られており、かつ、仕分けラインが満杯が発生したときには、搬送される対象物をリターンコンベアに戻し、文字認識装置で読み取って仕分けラインを再度探索する技術」が公知公用であったことは明らかである。 2-3 理由1:本件特許発明と先行技術発明との対比(審判請求書46ページ1行ないし49ページ7行) (1)本件特許発明1 本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上述したように、両者は、A、B、C1、C2、C3、D、E及びFで一致する。 (2)本件特許発明2 本件特許発明2と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上述したように、両者は、A、B、C1、C2、C3、D、E及びF、並びにG及びFで一致する。 (3)本件特許発明5 本件特許発明5と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上述したように、両者は、A、B、C1、C2、C3、D、E及びF、並びにK及びFで一致する。 (4)本件特許発明6 本件特許発明6と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上述したように、両者は、A、B、C1、C2、C3、D、E及びF、並びにL、M及びFで一致する。 2-4 理由2:本件特許発明と先行技術発明との対比(審判請求書49ページ8行ないし55ページ3行) (1)本件特許発明1 本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上記説明したように新規性を有しない。 また、本件特許発明1は甲第2号証に記載された発明および甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 上記説明したように甲第2号証には「第2仕分コンベア106から箱詰プール装置10に排出されなかった受皿2を合流コンベア105の始端側に戻すリターン手段8」が記載されている。 また、甲第3号証の段落「0019」に「満杯検知センサー40は、滞留仕分物品を検知したとき、仕分コンベヤ17からの投入された新たな仕分物品が投入検知センサー21,31の前を通過した場合、その後の、仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入を停止させる。物品の投入を停止されられた仕分コンベヤ17は、投入停止が解除されるまで、投入を停止させられた仕分物品を積載したまま循環移動する。そして、仕分物品の滞留が解消されると、仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入が再開される。」と記載されている。 してみると、甲第3号証には、本件特許発明1の構成要件Dが記載されている。そして、甲第2号証と甲第3号証は搬送装置という共通の技術分野に属するものであるから、甲第2号証に記載の発明に甲第3号証に記載の構成を適用することは当業者にとって格別困難なことではない。 また、甲第6号証?甲第10号証に示されるように、搬送される対象物を仕分けるための情報が既に取得されており、かつ、仕分けラインで満杯が発生したときには、搬送される対象物をリターンコンベアに戻し、文字認識装置で読み取って仕分けラインを再度探索することは、本件特許発明の出願前に公用されていた技術である。そして、スイカ選果包装施設という甲第2号証と共通の技術分野に属していることから、甲第6号証?甲第10号証によって証明される公知公用技術を甲第2号証に記載の発明に適用することは当業者にとって困難なことではない。 したがって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、および、甲第6号証?第10号証の公知公用技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (2)本件特許発明2 本件特許発明2と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上記説明したように新規性を有しない。 また、本件特許発明2は甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第6号証?甲第10号証の公知公用技術、および、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 甲第2号証の段落「0003」、「0004」には、排出装置に対応して設けられる(箱詰プール装置及び箱詰手段)を仕分けクラスの数と同数配置することが記載されている。さらに、甲第2号証の請求項1には「仕分読取装置の後段で搬送路に沿って仕分クラスの数よりも所定数少ない数設けられ、送られてくる排出信号により作動して青果物入り受皿を前記搬送手段から排出させる排出装置」と記載されている。また、甲第4号証の段落「0004」、「0016」、「0017」には、トレイ8に載置され、等階級を判別された果実が、搬送コンベアによって搬入された後、階級別に排出されてトレイ受取コンベアに排出されることが記載されている。 してみると、甲第2号証および甲第4号証には、本件特許発明2の上記構成要件Gに相当する構成が記載されている。そして、甲第2号証と甲第4号証は搬送装置という共通の技術分野に属することから、甲第2号証に記載された発明に甲第4号証に記載の構成を適用することは当業者にとって格別困難なことではない。 したがって、上述したように、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第6号証?甲第10号証によって証明された公知公用技術、および、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (3)本件特許発明3 本件特許発明3と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、本件特許発明3は「I 各仕分ラインに排出された受皿の貯溜状態を監視する監視手段」と、「J 受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させない(ことを特徴とする農産物の選別装置)」を構成要件として備えているのに対し、甲第2号証に記載された発明はこの点について明確に記載されていない点て一応相違する。 甲第3号証では、段落「0014」?「0019」に記載されているように、満杯検出センサー40により主流シュート13と副流シュート15上における仕分物品W1,W2の滞留状態を検知することが行われ、満杯検出センサー40は滞留仕分物品を検知したとき、仕分物品の主流シュート13と副流シュート15への仕分コンベヤ17からの投入を停止させ、仕分コンベヤ17は、投入停止が解除されるまで、投入を停止させられた仕分物品を積載したまま循環移動させることが行われている。 してみると、甲第3号証には本件特許発明3の上記「H 搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排出制御する排出手段と、I 各仕分ラインに排出された受皿の貯溜状態を監視する監視手段」と、「J 受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させない(ことを特徴とする農産物の選別装置)」に相当する構成が記載されている。 また、甲第4号証には、段落「0016」に記載されているように、輸送コンベア1と仕分けラインとのトレイ排出部には第1センサとしての荷溜りセンサ36a,36b・・・が設置され、段落「0017」に記載されているように、制御装置39は、荷溜りセンサ36a,36b・・・の信号に基づいて過負荷供給状態の仕分けラインを検出し、その検出信号によってトレイ受取コンベア5上の荷溜まりが出来ないようにトレイ方向変更板13a,13b・・・を適宜制御している。 してみると、甲第4号証には、本件特許発明3の上記「H 搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排出制御する排出手段と、I 各仕分ラインに排出された受皿の貯溜状態を監視する監視手段」と、「J 受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させない(ことを特徴とする農産物の選別装置)」に相当する構成が記載されている。 甲第5号証に記載された発明では、段落「0022」、「0023」に記載されているように、通過カウンタ16cのデータ値を基にして、バケットが満杯真近かであるかを検知し、満杯後は新たに追加された仕分け番号のコンベア番号に流れるようにしている。 してみると、甲第5号証には、本件特許発明3の上記「H 搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排出制御する排出手段と、I 各仕分ラインに排出された受皿の貯溜状態を監視する監視手段」と、「J 受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させない(ことを特徴とする農産物の選別装置)」に相当する構成が記載されている。 そして、甲第2号証?甲第5号証に記載のものは物品の搬送技術という同一の技術分野に属することから、甲第2号証に記載された発明において、甲第3号証?甲第5号証に記載の構成を適用し、各仕分ラインに排出された受皿の貯留状態を監視し、受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させないようにし、本件特許発明3をなすことに格別な困難性はない。 したがって、本件特許発明3は、甲第2号証に記載された発明?甲第5号証に記載された発明、および、甲第6号証?甲第10号証によって証明された公知公用技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (4)本件特許発明5 本件特許発明5と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上記説明したように新規性を有しない。 また、本件特許発明5は甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、および、甲第6号証?甲第10号証によって証明された公知公用技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 甲第3号証では、段落「0015」?「0017」に、主流シュート13と副流シュート15からの物品が干渉しないように、主流シュート13の通過センサーが物品を感知した場合には、副流シュート15のコンベアを停止する制御が行われている。当該事項は、本件特許発明5の「リターンコンベアで戻された受皿への送り込みのために、該搬送手段上の受皿が途切れたときに該送り込みを行う送り込み制御手段を設けたこと」に相当する。そして、甲第2号証と甲第3号証は物品の搬送技術という同一の技術分野に属するものであるから、甲第2号証に記載の発明に甲第3号証に記載の発明を適用して本件特許発明5をなすことは当業者にとって格別困難なことではない。 したがって、本件特許発明5は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、および、第6号証?甲第10号証によって証明された公知公用技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (5)本件特許発明6 本件特許発明6と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上記説明したように新規性を有しない。 また、本件特許発明6は甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、および、甲第6号証?甲第10号証によって証明された公知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 甲第3号証では、段落「0017」に記載されているように、複数の搬送ラインを合流させて仕分け品を搬送する場合、複数の搬送ラインの合流地点において仕分け品が円滑に流れるように、複数の搬送ラインで送られる仕分け品の搬送タイミングを調整するが行われ、このことによって、合流地点において、複数の仕分物品がお互いに衝突しないようにされている。ここで、複数の仕分け品がお互いに衝突しないようにするためには、搬送される仕分け品間の間隔がその大きさ以上である必要がある。 したがって、甲第3号証の「このとき、通過センサー23が作動した後、ある一定の時間内にタイミングセンサー32が作動した場合には、タイミングセンサー32は、搬送コンベヤ24を直ちに停止させ、副流シュート15上の仕分物品W2が合流点22に送り込まれないようにする。」は、本件特許発明5の上記「L 受皿の搬送手段への送り込み制御手段は、搬送手段上の受皿の途切れが受皿一個分以上であることを検知する途切れ長さ検知手段と、M 常時はリターンコンベアで戻された受皿を搬送手段への送り込み位置の手前で停止させかつ前記該検知手段の検知に連動して該停止を解除して送り込みを行わせるストッパ手段(とを備えていることを特徴とする選別装置)」に相当する。 そして、甲第2号証と甲第3号証は物品の搬送技術という同一の技術分野に属するものであり、合流をスムースに行う技術であるから、甲第2号証に記載の発明に甲第3号証に記載の発明を適用して本件特許発明6をなすことは当業者にとって格別困難なことではない。 したがって、本件特許発明6は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、および、甲第6号証?甲第10号証によって証明された公知公用技術に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 2-5 平成26年9月8日付け口頭審理陳述要領書における主張の概要 (1)理由1:合議体の暫定的な見解について(陳述要領書2ページ10行ないし9ページ14行) 合議体の暫定的な見解は、甲第2号証から読み取ることのできる自明の事項を見落としており、承服できない。以下にその理由を述べる。 甲第2号証の段落「0002」に、「従来、青果物の選別装置は、例えば図8に示す如く、青果物が載せられた受皿を搬送コンベアで搬送する途中に、計測装置により受皿上の青果物の所定項目を計測して等級及び階級を判定し、この判定結果に基づき、計測後の青果物を搬送路の側方に等級別階級別に設けた果実受け部に排出するように構成している。」(符号省略)と記載されている。 ここに明文の記載はないが、搬送コンベアから果実受け部(等級別階級別のプールコンベア)への排出が常にスムーズに行われるとは限らず、排出装置の排出タイミングの一時的なずれ等のトラブルやプールコンベア上に青果物入り受皿が満杯で排出できない等の事態は、甲2号証の出願当時の当業者の常識として、すなわち自明な事項(技術常識)として認識されていた。 そして、このような従来の選別装置の技術常識として、搬送コンベアからプールコンベアに排出されなかった青果物入り受皿は、搬送コンベアの最終端部側方に別途設けたプール部上に未選別のまま強制的に排出してプールするように構成されていたのであり、また、ここに排出されプールされた未選別の受皿上の青果物は、手作業により計測装置の上流側の供給部まで運搬され、再び計測、仕分け、排出の過程を繰り返していた。 このように、未選別のまま搬送コンベアの最終部に排出された青果物を手作業で搬送コンベア上の受皿に再供給しなければならず、そのために労力を要する等の課題(周知な課題)も、当業者であれば自明な事項であった。 本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2発明」という)とを対比するために、図1(下記に掲載)を用いて以下説明する。なお、参考図は説明のために図1の一部を拡大して示した図である。 ・・・(図は省略)・・・ 甲第2号証の図1 ・・・(図は省略)・・・ 参考図(図1の一部の構成を拡大) 甲2発明の構成は次のとおりである。 計測装置で読み取った計測情報から仕分クラス(等級及び階級)を判定し、この等級及び階級をアドレスメモリ部で受皿2の識別情報と共に記憶した上、まず第1段階で階級情報に応じて同一階級ごとに選別し、等級が混在する同一階級の青果物入り受皿2を選別コンベア101a,101bから分岐コンベア102a,102bに排出し、103、104、105の各コンベアを経て、仕分(選別)の第2段階に至る。 上記参考図で示される箇所は、第2段階を示したものであり、同一階級であって等級が混在する青果物入り受皿2を、等級情報に応じて仕分(選別)する過程である。 このように階級別と等級別の選別を2段階に分けて行う技術は、特開平3-137976号公報(甲第11号証、その第1図参照)等において既に採用されていた技術であるから、甲2発明の要旨は2つの段階に分けることにあるのではなく、第2段階における仕分けの方法にあるというべきである。 甲第2号証の「課題を解決するための手段」(段落【0006】)においても、ここに甲2発明の特徴があることが述べられている。 そして、上記参考図で示されるように、同一階級ではあるが等級が混在する青果物入り受皿2が第2仕分コンベア106に搬送されると、第2仕分コンベア106の搬送路に沿って配置した第2仕分読取装置50によって受皿2のバーコードマークを読取り、読取られたバーコードマークのコード番号に対応した受皿2の等級をアドレスメモリ部から読出し、読出された仕分クラス(等級信号)に従って排出装置60を動作させ、等級別に青果物F入り受皿2をプールコンベア(箱詰プール装置10。その終端部は自動箱詰装置11に接続している。)に排出して仕分けるように構成されている。 したがって、甲第2号証には、本件特許発明1の構成要件C2(該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し)に相当する構成が開示されている。であるから、甲第2号証に記載されている事項全体を「ひとまとまりの技術として開示されている」ものと理解しなければならないものではないし、また、請求人は、この技術部分のみを恣意的に抜き出しているわけでもない。 すなわち、上記参考図において、第2仕分コンベア106の搬送路に沿って配置される箱詰プール装置10は、仕分けるべき等級の数よりも所定数少ない数(参考図では、秀優良並の4等級のうち並を除いた3)であるが、第2仕分コンベア106の搬送路に沿って配置される箱詰プール装置10の数を所定の階級別等級別の数(例えば階級数がLMSの3で等級数が秀優良並の4であれば12)にすれば、ここに開示された技術は、上記の課題の解決に用いることができる。 甲第2号証の出願当時自明であった技術常識を考慮すれば、上記課題を認識すること、及び上記参考図で示される技術がその解決手段になることは、甲第2号証の明細書から読み取ることが可能である。 すなわち、甲2発明において箱詰プール装置10の数は、選別すべき等級の数より少ないため、該当しない等級の青果物Fを載せた受皿2は排出されないが、箱詰プール装置10が満杯の場合においては、該当する等級の青果物Fを載せた受皿2であっても排出されないことは、既に述べたとおり当業者にとって自明の事項であったのである。 そして、甲第2号証の出願が、その後補正を経て特許第3071249号として特許された(資料1。以下、この発明を資料1の発明という)経過を見れば、被請求人自身もそのように認識していたことが明らかである。 資料1の公報の「従来の技術」(段落【0002】)には、次の記載がある。なお、「従来の選別装置の平面図」である図8も参考のため下記に掲載する(符号は異なるが甲第2号証にも第8図として同じ図が掲載されている)。 「従来、青果物の選別装置は、例えば図8に示す如く、青果物が載せられた受皿17を搬送コンベア18で搬送する途中に、計測装置19により受皿上の青果物の所定項目を計測して等級及び階級を判定し、この判定結果に基づき、受皿17上の青果物を搬送路の側方に等級別階級別に設けた箱詰プール装置20上に排出装置21による受皿17ごと仕分け排出するように構成されていると共に、排出装置21の排出タイミングの一時的なずれ等のトラブルや箱詰プール装置20上に青果物入り受皿17が満杯で排出できない等で排出装置21により排出されなかった青果物入り受皿17を搬送コンベア18の最終端部側方に別途設けたプール部(不図示)上に選別のまま強制的に排出してプールするように構成されている。そして、前記箱詰プール装置20上に仕分け排出された受皿17上の青果物は、人手又は箱詰ロボット等の箱詰手段により段ボール箱内へ箱詰めされて製品として送り出されている。一方、前記プール部上に排出されプールされた未選別の受皿17上の青果物は、通常、作業者により取り上げられコンテナ等に入れられて計測装置19の上流側の供給部迄運搬され、供給作業者により搬送コンベア18上の受皿17に青果物が再び供給されて搬送される。こうして搬送される受皿17上の青果物は計測装置19により再度計測されてその等級及び階級が再判定され、箱詰プール装置20上に受皿17ごと仕分け排出される。」(下線は請求人代理人が付した。以下、公報からの引用部分に付した下線も同様である。) ・・・(図は省略)・・・ 図8 さらに、資料1の発明の「発明が解決しようとする課題」(段落【0003】)には、次の記載がある。 「上記従来の選別装置は、上述の如く、プール部上にプールされた未選別の青果物を作業者により計測装置の上流側の供給部迄運搬して搬送コンベア上の受皿に再供給し、搬送コンベアで搬送される受皿上の青果物を計測装置により再計測してその仕分クラス(等級、階級)を再判定するものであるので、この運搬作業及び再供給作業に労力を要するという問題ばかりでなく、この運搬作業、再供給作業、計測装置による再計測工程、仕分クラスの再判定工程に時間を要することから選別能率が低いという問題があった。」 そして、この課題を解決するための構成が、資料1の請求項1に記載された発明であるが、これは次のとおりである。 「青果物が載せられた多数の受皿を搬送する搬送手段と、該搬送される受皿上の青果物の所定の計測項目を計測する計測装置と、該計測した計測情報に基づき青果物の仕分クラスを判定する判定部と、該判定された青果物の仕分クラスを当該青果物が載せられた受皿と関連付けて更新記憶する記憶手段と、前記搬送手段の下流側に設けられ、送られてくる排出信号により作動して青果物入り受皿を該搬送手段から仕分け排出する複数の排出装置と、前記計測装置よりも下流側において前記搬送手段により搬送されてくる青果物入り受皿と仕分用読取装置が対峙した際当該受皿と関連付けて前記記憶手段に記憶されている青果物の仕分クラスを読出し、排出位置指定部に該読出した仕分クラスに対して指定された排出位置の排出装置に排出信号を送る仕分制御手段とからなる青果物の選別装置において、前記搬送手段の下流端に接続され、前記排出装置により仕分け排出されなかった青果物入り受皿を前記計測装置と前記仕分用読取装置との間の適宜位置で前記搬送手段上へ返還するリターン手段を備えたことを特徴とする青果物の選別装置。」 以上のような特許請求の範囲や明細書の補正を被請求人が行っていることは、請求人が上述したように、資料1の発明の課題や解決手段も甲第2号証の記載を綜合することにより導かれる技術事項であるから、すなわち、当業者にとって甲第2号証の記載から自明の事項であるため新規事項の追加の禁止(特許法17条の2第3項)に違反しないからであると考えられる。 被請求人自身がこのような補正を行っていることは、被請求人がそのように認識していたことを裏付けるものであるが、この補正を特許庁が認めていることは、特許庁の審査担当者も同様の認識を有しており、そのため当該補正は新規事項の追加ではないと判断したものと考えられる。 また、甲2発明において箱詰プール装置10の数が選別すべき等級の数より少ないとしても、箱詰プール装置10が満杯の場合に青果物Fを載せた受皿2が排出されないこと、すなわち、オーバーフローすることは、既に述べたとおり当業者にとって自明の事項であった。 (2)理由1:特許法第29条第1項第3号について(陳述要領書9ページ15行ないし21行) 前述のとおり、甲2発明の出願時における当業者にとって自明の技術事項を参酌すれば、本件特許発明1の主要部ともいえるオーバーフローに係る技術事項は、甲第2号証に記載された事項から自明であり、甲2発明は本件特許発明1のすべての構成を備えているといえる。してみると、本件特許発明1は特許法第29条第1項3号に該当し特許を受けることができない。 (3)理由2:特許法第29条第2項について(陳述要領書9ページ下から3行ないし19ページ2行) ア 甲第2号証に記載された発明について 本件特許発明1の構成要件A(搬送手段に連結されていない受皿と)、同B(農産物供給位置から農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え)、同C1(この搬送手段には、この受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域)、同C2(及び該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し)、同C3(前記各受皿に、その上に載せられている農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し、前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置において)、及び同F(農産物の選別装置)の各構成については、甲第2号証における従来技術の記載から、甲第2号証の出願当時の選別装置か既に具備していた構成であることが明らかである。 してみると、上記で述べた自明の事項を除外した場合、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2発明」という)は、「搬送手段に連結されていない受皿と、農産物供給位置から農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え、この搬送手段には、この受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域、及び該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し、前記各受皿に、その上に載せられている農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し、前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置であって、前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されない受皿を前記搬送手段の上流側の計測装置32と第2仕分読取装置50の間に戻すリターンコンベアを設けた農産物の選別装置。」である。 ここで、本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、本件特許発明1の構成要件D(前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に)を甲2発明が備えていない点で、両者は相違する。 上記相違点については、以下のとおり、甲第3号証に開示された技術事項、および、甲第6号証?甲第10号証の公知公用技術を甲2発明に適用することは、当業者であれば容易に想到することができる。 イ 甲第3号証の記載 甲第3号証におけるの段落【0014】、段落【0018】及び段落【0019】の記載によれば、「主流シュート13と副流シュート15」に、仕分物品W1,W2が集められることから、「主流シュート13と副流シュート15」は請求項1の仕分ラインに相当する。 また、仕分コンベヤ17は、満杯検知センサー40によってシュートの満杯が検知された場合、投入を停止させられた、つまり、仕分ラインに相当する「主流シュート13と副流シュート15」への排出ができない仕分物品を積載したまま循環移動する手段である。 本件特許発明1において、受皿は仕分されるべき農産物を載せていることから仕分物品といえる。また、甲第1号証の段落「0025」の記載にみられるように、本件特許発明1のオーバーフローとは仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されないことを意味することから、甲第3号証に記載の仕分コンベア17は、本件特許発明1におけるオーバーフローした受皿を搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアに相当する。 よって、甲第3号証には、本件特許発明1の構成要件Dが記載されている。 そして、甲第2号証に記載される青果物の選別装置と甲第3号証に記載される仕分システムは、搬送手段によって搬送される仕分物品を仕分けるという共通の技術分野に属するものであるから、甲2発明に甲第3号証に記載のオーバーフローした仕分物品を搬送手段の上流側に戻す構成を適用し、本件特許発明1を想到することは当業者にとって格別困難なことではない。 ウ 請求人は、長野県松本市の松本ハイランド農業協同組合の発注により、平成9年から10年にかけてスイカの集出荷施設を施工し、同年3月30日までに納入した(甲第8号証)。その後同施設は、試運転を行った後、6月19日に竣工式を行って(甲第7号証)、報道関係者を含む関係者に広く公開し、遅くとも同年7月には稼働を開始した。同施設は第三者にも公開されている(公然実施)。 同施設は、スイカの計測、仕分け、箱詰めを行う工程と、箱詰めされたスイカをロボットパレタイザーによりパレットに積み込む工程とに分かれている。以下では、便宜的に前者の工程を「選別箱詰工程」といい、後者の工程を「パレタイザー積込工程」という。 パレタイザー積込工程の構成は、次のとおりである。 まず、選別箱詰工程で同一の等級及び階級の複数のスイカが箱詰され、箱詰されスイカは、搬送コンベアでパレタイザー積込工程に搬送される。そして、パレタイザー積込工程では、特定の箱ごとにロボットパレタイザーでパレットに積み込んで結束することを目的としている。 そのため、パレタイザー積込工程は、次の構成を有する。 (a)箱詰されたスイカ(製品箱)が搬送される製品箱搬送コンベア(甲第8号証)のスイカ選果のシステムフロー図の○10) (b)製品箱搬送コンベア上で製品箱に印刷された仕分情報(箱の中のスイカの等級階級情報)読み取る製品箱文字認識装置(同○9) (c)製品箱搬送コンベアから分岐する仕分情報に対応した多数のプールコンベア (d)プールコンベアの終端に設置されて製品箱をパレットに積み込むロボットパレタイザー (e)プールコンベア上に製品箱が満杯か否かを検知する赤外線センサー (f)プールコンベアが満杯のときには製品箱を製品箱搬送コンベアからプールコンベアに排出せず、製品箱搬送コンベア上で製品箱文字認識装置の上流に製品箱を戻すように搬送する製品ループコンベア(同○13) エ 本件特許発明1の構成要件Dとの対比 構成要件Dは、「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に、」であるところ、パレタイザー積込工程も上述のところから明らかなとおり、次の構成を有している。 「製品箱搬送コンベアからプールコンベアに排出されずにオーバーフローした製品箱を前記製品箱搬送コンベアの上流側に戻す製品ループコンベアを設けると共に、この製品ループコンベアにより戻した製品箱を前記製品箱搬送コンベアに送り込む位置を、製品箱搬送コンベアの開始位置と製品箱文字認識装置との間とした」 以上のように、両者は、リターンコンベア(製品ループコンベア)により戻した受皿(製品箱)を前記搬送手段(製品箱搬送コンベア)に送り込む位置が異なるものの、パレタイザー積込工程の始まりである製品箱搬送コンベアの開始位置においては既に箱詰めされたスイカの等級階級情報は判明しているため改めて箱の中の等級階級情報を計測する必要はない。そして、そのために上記のような相違が生じるにすぎず、製品箱搬送コンベアからプールコンベアに排出する情報(製品箱に印字された文字)を読み取る必要があるため、それより上流側に戻す点では本件特許発明1のDと一致している。 そして、以上のような構成を甲2発明に採用することは、当業者であれば容易に想到するところである。 オ <甲第6号証の作成年月日等> 甲第6号証は、松本ハイランド農業協同組合のスイカ選果包装施設の配置図である。図面には、「作成 SI 06.06.02」と記載してあるが、実際は平成8年4月に請求人の従業員の稲井宗太郎により作成されたものである。(本図作成時に06.06.02に作成した図面の図枠をコピーして日付欄の修正を忘れたものである)松本ハイランドスイカ集出荷施設は、この図面に基づき平成10年3月30日までに施工し、松本ハイランド農業協同組合に引き渡されたものである。 この図面に基づいて施工された松本ハイランドスイカ集出荷施設では、パレタイザーラインは2系統あり、各々に選別コンベア(ユニソータE29、E75)があり、その上流のインダクションコンベア(E27、E72)上に文字認識装置(E27、E72の備考欄に表記)が設置されている。また、リターンラインは、E19b E30?E34、E60 E76a?E79の備考欄に表記されている。スイカ箱詰用の製品段ボールは、各階級毎(5L?2S)専用の箱なので、階級のみ原料段階でプレ印刷されている。等級(A、B、C)は箱詰装置で箱詰された後、印字装置でその等級が印字される。 文字認識装置は、その印字、印刷された等階級文字を読み取り、所定のプールコンベアに仕分けされる。所定の仕分けコンベアが、満杯であればリターンラインへ搬送される。 リターンラインへ戻された箱詰めされたスイカは再度、文字認識装置によって読み取られ、所定のプールコンベアに搬送される。 以上の通り、当社がこの図面により、施工し、松本ハイランド農業協同組合に引き渡した「箱詰めされたスイカ」の「リターンライン」については、本件特許の出願以前に当社が設計、施工した技術であることを証明するものである。 (SIは、宗太郎 稲井のイニシャルである。) カ <甲第7号証> 甲第7号証は、松本ハイランド農業協同組合の選果包装施設竣工に際して、近江度量衡株式会社宛の感謝状である。松本ハイランド「すいか集出荷施設」の「竣工式」が平成10年6月19日に挙行され、この施設が一般に公開されたことを証明するものである。すなわち、平成10年6月19日以降は、この施設の「箱詰めされたスイカ」の「リターンライン」については、広く一般に公開された公知の技術であることを証明するものである。 キ <甲第8号証の作成年月日等> 甲第8号証は、JA松本ハイランドすいか集出荷施設の竣工式(平成10年6月19日)に頒布されたパンフレットである。 甲8号証中に「本日ここに‥‥「すいか集出荷施設」が竣工の運びとなりました。 ‥‥」と記載してあり、平成10年6月19日に挙行された「竣工式」までに松本ハイランド農業協同組合が作成し、当日配布されたものである。なお、このパンフレットには、この施設のレイアウトの図面が掲載されており、その中には、「箱詰めされたスイカ」の「リターンライン」も記載されている。 すなわち、平成10年6月19日に、この施設の「箱詰めされたスイカ」の「リターンライン」が記載された図面について、広く一般に公開されたことを証明するものである。 2系統あるパレタイザーラインの内、1系統を中心に機番をつけて小さな鳥瞰図を見やすくしたものである。その中で○9製品箱文字認識装置の位置が実際とは異なるが、これは単なる校正ミスである。 資料2は、甲第8号証において○9製品箱文字認識装置の位置および数を修正したものである。 パレタイザー積込工程の構成は、次のとおりである。 まず、選別箱詰工程で同一の等級及び階級の複数のスイカが箱詰され、箱詰されたスイカは、搬送コンベアでパレタイザー積込工程に搬送される そして、パレタイザー積込工程では、特定の箱ごとにロボットパレタイザーでパレットに積み込んで結束することを目的としている。 そのため、パレタイザー積込工程は、次の構成を有する。 (a)箱詰されたスイカ(製品箱)が搬送される製品箱搬送コンベア(甲第8号証)のスイカ選果のシステムフロー図の○10) (b)製品箱搬送コンベア上で製品箱に印刷された仕分情報(箱の中のスイカの等級階級情報)読み取る製品箱文字認識装置(同○9) (c)製品箱搬送コンベアから分岐する仕分情報に対応した多数のプールコンベア (d)プールコンベアの終端に設置されて製品箱をパレットに積み込むロボットパレタイザー (e)プールコンベア上に製品箱が満杯か否かを検知する赤外線センサー (f)プールコンベアが満杯のときには製品箱を製品箱搬送コンベアからプールコンベアに排出せず、製品箱搬送コンベア上で製品箱文字認識装置の上流に製品箱を戻すように搬送する製品ループコンベア(同○13) ク <甲第9号証> 甲第9号証は、JA松本ハイランドのすいか集荷施設の竣工を伝える新聞記事である。平成10年6月19日に発行された日本農業新聞の紙面には、この施設の「箱詰めされたスイカ」の「リターンライン」が記載された図面も掲載されており、広く一般に公開されたことを証明するものである。 ケ <甲第10号証> 甲第10号証は、施設建設契約書である。「箱詰めされたスイカ」の「リターンライン」を含む松本ハイランド「すいか集出荷施設」が本契約に基づいて、平成10年3月30日までに施工され、松本ハイランド農業協同組合に引き渡されたことを証明するものである。 2-6 平成26年10月16日付け上申書における主張概要 (1)理由2:特許法第29条第2項について(上申書3ページ3行ないし8ページ9行) a.甲第2号証に記載された発明について 本件特許発明1の構成要件AないしFの各構成については、先に提出した口頭審理陳述要領書でも記載したとおり、甲第2号証の出願当時の選別装置が既に具備していた構成であることが明らかである。 また、これも先に提出した口頭審理陳述要領書において記載したとおり、甲第2号証の出願における被請求人の補正内容及び特許庁における審査の経過から明らかなように、甲第2号証の出願当時に自明な事項を考慮すれば、甲第2発明のリターン手段に係る受皿にはオーバーフローされたものが含まれることが明らかである。 このオーバーフローについての事項を除いた場合、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2発明」という)は、「搬送手段に連結されていない受皿と、農産物供給位置から農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え、この搬送手段には、この受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域、及び該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し、前記各受皿に、その上に載せられている農産物の仕分け情報を識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し、前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置であって、前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されない受皿を前記搬送手段の上流側の前記計測軌道領域と前記読み出し手段の間に戻すリターンコンベアを設けた農産物の選別装置。」である。 b.本件特許発明1と甲2発明との一致点と相違点について 本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、本件特許発明1の構成要件Dについて、特にリターンコンベアに移送される受皿をオーバーフローしたものに限定されている点で、両者は相違し、その余の点で両者は一致する。 ここで、上記相違点であるオーバーフローは、「仕分区分別に設定されている仕分ラインのうちのいずれかが満杯でそれ以上の受皿を受け入れられない状態にある場合」等に生ずるものである(甲第1号証の段落「0025」)。 また、一般的に搬送手段において、途中で仕分け等がされることがなく、搬送経路の最後まで搬送されてしまった場合に、人の手によって再度搬送手段の最初に戻すこととなると煩雑となってしまうということは、搬送手段における一般的な課題であることは明らかである。 c.甲2発明に甲第3号証に記載された発明を適用する論理付けについて 甲第3号証には、後述するとおりシュート(仕分ライン)が満杯の場合には、仕分物品を投入(排出)せずにオーバーフロ?した仕分物品を循環搬送するコンベア、すなわちリターンコンベアを含むコンベアが記載されている。 甲第2号証および甲第3号証は、搬送手段によって搬送される物品をその性質に従って仕分けるという共通の技術分野に属するものである。また、上記のとおり、搬送手段において、途中で仕分け等がされることがなく、搬送経路の最後まで搬送されてしまった場合に、人の手によって再度搬送手段の最初に戻すこととなると煩雑となってしまうということは、搬送手段における一般的な課題であるから、甲第2号証において、「仕分区分別に設定されている仕分ラインのうちのいずれかが満杯でそれ以上の受皿を受け入れられない状態にある場合」等の処理についての記載や示唆がされていないとしても、甲第3号証に接した当業者であれば、甲第3号証に記載されているオーバーフローの構成を、甲2発明に適用することに、特段の困難性があるものではない。 してみれば、当業者にとって、甲第3号証に記載されたオーバーフローに係る技術事項を甲2発明に適用して本件特許発明1を想到することは容易である。 また、甲第3号証に記載されたオーバーフローの技術事項は、甲第2発明における仕分ラインへの分配等と密接に関連する事項とはいえないため、甲第3号証に記載された発明を甲2発明に適用することによる効果も甲2発明およびの甲第3号証に記載された発明にそれぞれ備わった効果以上の複合的な効果であるものではない。 なお、甲2号証に係る出願の審査過程での拒絶理由通知で引用された文献である特開64-80479号公報(資料3)の第3頁左下欄に記載されているように、取出口の取出しミスの果実を選別コンベアの移送上手側へ還元移送すること、すなわち、オーバーフローした果実をリターンコンベアで上流側に搬送するという技術は、甲第2号証の出願当時における当業者の技術水準にあったものである。よって、このことからも、甲2発明に甲第3号証に記載されたオーバーフローに係る技術事項を適用することに何ら阻害要因はない。 よって、本件特許発明1は、甲2発明及び甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 d.甲2発明に甲第6号証?甲第10号証による公知公用の技術を適用する(または甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証?甲第10号証による公知公用の技術を適用する)論理付け 後述するように、甲第6号証?甲第10号証によって示されているように、すいか集出荷施設において、プールコンベア(仕分ライン)が満杯の場合には、すいかを収納した製品箱をプールコンベア(仕分ライン)に排出せずに文字認識装置によりも上流のコンベアにオーバーフローとして戻す製品ループコンベアが公知公用されているといえる。 甲2発明、及び、甲第6号証?甲第10号証によって示されている公知公用の技術は、農産物をその性質によって仕分ける装置という共通の技術分野に属するものである。また、甲第3号証についての説明における記載と同様に、一般的に搬送手段において、途中で仕分け等がされることがなく、搬送経路の最後まで搬送されてしまった場合に、人の手によって再度搬送手段の最初に戻すこととなると煩雑となってしまうということは、搬送手段における一般的な課題であることは明らかである。 甲第6号証?甲第10号証の公知公用の技術を甲2発明に適用することによる効果も、甲第3号証に記載された発明を甲2発明に適用した際と同様に、甲第6号証?甲第10号証の公知公用の技術に備わった効果以上のものではない。 してみれば、当業者にとって、甲第6号証?甲第10号証による公知公用の技術を甲2発明に適用することは容易である。 または、甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証?甲第10号証による公知公用の技術、並びに甲2発明は、搬送手段によって搬送される物品をその性質によって仕分けるという共通の技術分野に属するものである。 してみれば、当業者にとって、甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証?甲第10号証の公知公用の技術のオーバーフローに係る技術事項を、甲2発明に適用して本件特許発明1を想到することは容易である。 また、甲第3号証、甲第6号証?甲第10号証の公知公用の技術を甲2発明に適用することによる効果も甲第3号証、甲第6号証?甲第10号証の公知公用の技術に備わった効果以上のものではない。 なお、甲2号証に係る出願の審査過程での拒絶理由通知で引用された文献である特開64-80479号公報(資料3)の第3頁左下欄に記載されているように、取出口の取出しミスの果実を選別コンベアの移送上手側へ還元移送すること、すなわち、オーバーフローした果実をリターンコンベアで上流側に搬送するという技術は、甲第2号証の出願当時における当業者の技術水準にあったものである。よって、このことからも、甲2発明に、甲第3号証に記載されたオーバーフローに係る技術事項や甲第6号証?甲第10号証による公知公用の技術を適用することに何ら阻害要因はない。 (2)甲第3号証に本件特許発明1の構成要素Dが記載されていることについて(上申書8ページ10行ないし10ページ2行) 甲第3号証の段落「0014」に「合流点22より下流の両側には、満杯検知センサー40,40が設けられている。満杯検知センサー40は、合流点2(合流点22の誤記)の下流側に詰まって滞留した仕分物品W1,W2を検知し、仕分コンベヤ17からの仕分物品Wの投入を停止させるようになっている。」と記載されている。 甲第3号証の段落「0018」に「このようにして、主流シュート13と副流シュート15とによって仕分物品W1,W2は1箇所に集められるが、集められた仕分け物品W1,W2を作業員が処理しきれない場合、仕分物品W1,W2は、滞留し、満杯検知センサー40によって検知される。満杯検知センサー40は、仕分物品W1,W2を検知し、ある一定の時間、ON状態が続いた場合に、その仕分物品W1,W2を、滞留仕分物品として検知する。」と記載されている。 甲第3号証の段落「0019」に「満杯検知センサー40は、滞留仕分物品を検知したとき、仕分コンベヤ17からの投入された新たな仕分物品が投入検知センサー21,31の前を通過した場合、その後の、仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入を停止させる。物品の投入を停止されられた仕分コンベヤ17は、投入停止が解除されるまで、投入を停止させられた仕分物品を積載したまま循環移動する。そして、仕分物品の滞留が解消されると、仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入が再開される。」と記載されている。 上記記載によれば、「主流シュート13と副流シュート15」に、仕分物品W1 ,W2が排出されることから、「主流シュート13と副流シュート15」は本件特許発明1の仕分ラインに相当する。 また、仕分コンベヤ17は、満杯検知センサー40によってシュートの満杯が検知された場合、投入を停止させられた、つまり、仕分ラインに相当する「主流シュート13と副流シュート15」への排出ができない仕分物品を積載したまま循環移動する手段である。 本件特許発明1において、受皿は仕分されるべき農産物を載せていることから仕分物品といえる。また、甲第1号証の段落「0025」の記載にみられるように、本件特許発明1のオーバーフローとは仕分ラインが満杯でそれ以上の受皿を受け入れられない等の理由により仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されないことを意味することから、甲第3号証に記載の仕分コンベア17は、本件特許発明1におけるオーバーフローした受皿を搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを含んでいることは明らかである。 よって、甲第3号証には、本件特許発明1の構成要件Dが記載されている。 (3)甲第6号証ないし甲第10号証における記載、甲第6号証及び甲第8号証の作成日について(上申書10ページ3行ないし19ページ末行) 請求人は、長野県松本市の松本ハイランド農業協同組合の発注により、平成9年から10年にかけてスイカの集出荷施設を施工し(資料4は、松本ハイランド農業協同組合のスイカ選果包装施設の配置図である。)、同年3月30日までに納入した(甲第8号証および甲第10号証)。その後同施設は、試運転を行った後、6月19日に竣工式を行って(甲第7号証)、報道関係者を含む関係者に広く公開した(甲第9号証)。よって同施設にかかる技術は公知となった。そして、遅くとも同年7月には稼働を開始した。よって、同施設に係る技術は公然実施されていた。なお、同施設は第三者にも公開されていた(公知公用)。 同施設は、スイカの計測、仕分け、箱詰めを行う工程と、箱詰めされたスイカをロボットパレタイザーによりパレットに積み込む工程とに分かれている。以下では、便宜的に前者の工程を「選別箱詰工程」といい、後者の工程を「パレタイザー積込工程」という。 まず、選別箱詰工程では、同一の等級及び階級の複数のスイカが箱詰された製品箱が作られて、その等階級が製品箱の表面に印字される。この製品箱はパレタイザー積込工程に移送される。 そして、パレタイザー積込工程では、特定の箱ごとにロボットパレタイザーでパレットに積み込んで結束することを目的としている。 そのため、パレタイザー積込工程は、次の構成を有する。 (a)箱詰されたスイカ(製品箱)が搬送される製品箱搬送コンベア (b)製品箱搬送コンベア上で製品箱に印刷された仕分情報(箱の中のスイカの等級階級情報)を読み取る製品箱文字認識装置 (c)製品箱搬送コンベアから分岐しており、仕分情報に対応した多数のプールコンベア(d)プールコンベアの各々の終端に設置されており、製品箱をパレットに積み込むロボットパレタイザー (e)プールコンベアの各々に設置されており、このプールコンベア上の製品箱が満杯か否かを検知する光電スイッチ (f)製品箱搬送コンベアの終端に接続されており、プールコンベアに排出されない製品箱を文字読取装置よりも上流の製品箱搬送コンベアに戻すように搬送する製品ループコンベア (g)プールコンベアが満杯のときには製品箱を製品箱搬送コンベアからプールコンベアに排出しないように制御するコントロールパネル群 後述するように、上記パレタイザー積込工程は、パレタイザー積込工程の始まりである製品箱搬送コンベアの開始位置においては既に箱詰されたスイカの等級階級情報は判明しているため、改めて箱の中の等級階級情報を計測する必要はない。しかし、製品箱を製品箱搬送コンベアからプールコンベアに排出するときには、情報(製品箱に印字された文字)を読み取る必要がある。このため、プールコンベアが満杯で排出されなかった製品箱は、再度情報を読み取るために、それより上流側に戻される。つまり、「製品箱搬送コンベアからプールコンベアに排出されずにオーバーフローした製品箱を前記製品箱搬送コンベアの上流側に戻す製品ループコンベアを設けると共に、この製品ループコンベアにより戻した製品箱を前記製品箱搬送コンベアに送り込む位置を、製品箱搬送コンベアの開始位置と製品箱文字認識装置の間」を備えている。 上記パレタイザー積込工程の構成は、審判請求書の10および11ページ、同書44ページ下から4行目ないし45ページ末行及び同書50ページ2ないし6行に記載の「搬送される対象物を仕分けるための情報が知られており、かつ、仕分けラインで満杯が発生したときには、搬送される対象物をリターンコンベアに戻し、文字認識装置で読み取って仕分けラインを再度探索する技術」に対応する。 <甲第6号証の作成年月日等> 2014年10月6日実施の口頭審理の後、再度、社内調査を行った。その結果資料4を発見した。資料4は松本ハイランド農業協同組合のスイカ選果包装施設の配置図である。資料4は請求人の近江度量衡株式会社により作成されたものである。資料4の作成日は4枚目に記載されているとおり1998年2月10日(平成10年2月10日)である。 松本ハイランドスイカ集出荷施設は、資料4などの図面に基づき平成10年3月30日までに施工され、松本ハイランド農業協同組合に引き渡されたものである。 同様に、甲第6号証は、松本ハイランド農業協同組合のスイカ選果包装施設の配置図である。甲第6号証の図面には、「作成 SI 06.06.02」と記載してあるが、これは、作成者が請求人の従業員の稲井宗太郎であり(SIは、宗太郎 稲井のイニシャルである。)、作成日が2006年6月2日であることを表している。したがって、甲第6号証は請求人の近江度量衡株式会社により2006年6月2日に作成されたものである。 甲第6号証は、資料4などの図面に基づいて施工された松本ハイランドスイカ集出荷施設に内部品質判定装置を取り付ける工事を行うために作成された図面である。甲第6号証の図面によって改修された箇所は、上記のスイカの計測、仕分け、箱詰めを行う工程に関する箇所であって、上記のパレタイザー積込工程とは関係のない箇所である。つまり、甲第6号証の図面と資料4の図面とにおいて、パレタイザー積込工程については変更はない。 このことについて、資料5に示した通り、松本ハイランド農業協同組合のすいか集出荷施設のパレットに積み込む工程について、リターンライン、文字認識装置、満杯検知センサー(光電スイッチ)等を含めて平成10年3月30日に当社が、同組合に引き渡して以来、改造、追加等は行われておらず、施工当時のままのシステムであることの証明を平成26年10月14日付けで、松本ハイランド農業協同組合の組合長から受けている。 資料4などの図面に基づいて施工された松本ハイランドスイカ集出荷施設では、パレタイザーライン(パレタイザー積込工程)が2系統ある。各パレタイザーラインは上記(a)の製品箱搬送コンベアを有している。各製品箱搬送コンベアは、選別コンベア(ユニソータE29、E75)と、その上流のインダクションコンベア(E27、E72)とを有する。インダクションコンベア上には、上記構成(b)の文字認識装置(E27、E72の備考欄に表記)が設置されている。製品箱搬送コンベアの選別コンベアから分岐し、仕分情報に対応した9つのパレタイザーに対応したそれぞれ1?3本ずつ、合計16本のプールコンベア(構成(c))が設置されており、各プールコンベアにはコンベアが満杯か否かを検出するための満杯検知センサー(光電スイッチ)(構成(e))(資料4及び甲第6号証において不図示)が設置されている。 また、上記構成(f)の製品ループコンベア(リターンライン)は、E19b E30?E34、E60 E76a?E79の備考欄に表記されている。なお、スイカ箱詰用の製品段ボールは、各階級毎(5L?2S )専用の箱なので、階級のみ原料段階でプレ印刷されている。等級(A、B、C)は、選別箱詰工程において、箱詰装置で箱詰された後、印字装置でその等級が印字される。 文字認識装置は、その印字、印刷された等階級文字を読み取る。 所定の仕分けコンベア(プールコンベア)が、満杯であればリターンラインへ搬送される。リターンラインへ戻された箱詰めされたスイカは再度、文字認識装置によって読み取られ、所定のプールコンベアに搬送される。 <甲第8号証の作成年月日等> 甲第8号証の作成年月日については口頭審理陳述要領書に記載のとおりである。 口頭審理陳述要領書に記載のとおりであるが、2系統あるパレタイザーライン(パレタイザー積込工程)の内、1系統を中心に機番をつけて小さな鳥瞰図を見やすくしたものである。 口頭審理において指摘を受けた甲第8号証、特に制御に関する事項については、補足の資料6?23を用いて、以下、補足説明する。なお、資料7は、甲第8号証の図を分かりやすく平面図に表したものであり、資料7に付されている符号は甲第8号証と同一のものを示している。また、資料8、9、12?15、及び18?22は、パレタイザー積込工程の完成図書から一部抜粋したものである。また、資料10、11、16、及び17は、後述するCP-61を示す現地調整図から一部抜粋したものであり、施設稼働前に作成されたものである。また、資料23は、コントロールパネルの主な動作フローを示したものである。なお、前述の通り、本パレタイザー積込工程においてはその稼働後に仕様変更を行っていない。 このスイカ選果包装施設は、資料7に示すように、選果箱詰工程と、パレタイザー積込工程と、から構成されている。 選果箱詰工程は、甲第8号証においては○1?○8で示されている。○8全自動封函機の写真に示されているように、製品箱には、その中のスイカの等級、階級が表示されている。すなわち、次のパレタイザー積込工程で、搬送される製品箱を仕分けるための情報(箱の中の等階級情報)が既に知られている。 パレタイザー積込工程は、甲第8号証○9?○13及び資料7に示されている。スイカを箱詰した製品箱を等階級ごとに纏めてパレットに積み込んで結束する工程である。各パレタイザー積込工程は上述の通り、構成(a)?構成(g)を備えている。 これらの構成について、以下、詳細に説明する。なお、資料7にも記載されているように、パレタイザー積込工程は2か所設けられているが、各パレタイザー積込工程の構成は同様であるため、一方のパレタイザー積込工程について説明する。 構成(a)の製品箱搬送コンベア(甲第8号証の○10)は、資料7にも示されているように、製品箱詰工程の終わりに接続されており、この製品箱詰工程から排出された製品箱を該当するプールコンベアまで搬送する。 構成(b)の文字読取装置(甲第8号証の○9)は、資料7にも示されているように、プールコンベアよりも上流側の製品箱搬送コンベア○10に設置されている。この文字読取装置は、資料8に示されているように、インタフェース(RS-232C)を介してコントロールパネル群(構成g)の一つであるCP-2と通信可能に接続されている。 資料8には、さらに、他のコントロールパネル(構成g)であるCP-61?CP-69及びCP-3が記載されている。CP-61?CP-69は、インクフェース(三菱AシリーズシーケンサMELSECNT-2)を介してCP-2と通信可能に接続されている。また、CP3はインタフェース(RS-232C)を介してCP-2と通信可能に接続されている。 これらのコントロールパネルが制御しているエリアは資料9に示されている。資料9-2にはCP-2の制御エリアが斜線部で示されている。資料9-3にはCP61?CP-69の各々の制御エリアが斜線部で示されている。資料9-4にはCP-3の制御エリアが斜線部で示されている。なお、資料9-1は、資料9-2?9-3が作成された日付を表示している。 次に、構成(c)のプールコンベアの各々は、所定個数の製品箱を一列に並べてプールしながら、順次、パレタイザーロボットに向かって搬送するコンベアである。各プールコンベアには、資料10に示されているように、複数の光電スイッチ(PR C1?PR C11)が、その搬送方向に所定間隔で配置されている。後述の動作説明において示すように、製品箱搬送コンベアに近い光電スイッチ(PR C9?PR C11)がプールコンベアにおける製品箱の満杯状態を検知する満杯検知センサー(資料6参照)として用いられる(構成e)。各プールコンベアに設けられた複数の光電スイッチの出力は、資料11に示されているように、そのプールコンベアを制御対象としているCP-61?CP-69のいずれかに電気的に接続されている。 なお、プールコンベアの各々は、資料7に示されているように、袖カーブコンベアを介して製品箱搬送コンベア○10に接続されている。この袖カーブコンベアには、資料12に示されているように、光電スイッチが配置されている。この光電スイッチは、袖カーブコンベアに流れる製品箱を検知するものである。よって、プールコンベアへの排出ミス等の理由によって、袖カーブコンベアで製品箱の詰まりが発生している場合には、検知信号が継続して出力される。すなわち、この光電スイッチは袖カーブコンベアの詰まり検知センサーとして機能するものである。この光電スイッチの出力は、資料13に示されているように、袖カーブコンベアを制御エリアに含むCP-2に電気的に接続されている。また、資料14及び資料15に示されているように、この袖カーブコンベアを駆動するモータがCP-2により制御される。 次に、パレタイザー積込工程の主な動作について装置ごとに説明する。 なお、資料23は下記の動作を記載したものである。 文字読取装置○9は、製品箱搬送コンベア○10上を流れる製品箱に付されている等級階級文字を読取る。そして、資料8に示されているように、インタフェースを介して等級・階級データをCP-2に送信する。 CP-61?CP-69の動作を説明する。なお、一方のパレタイザー積込工程に用いられているのは、資料9-3に示されているように、CP-61?CP-65である。CP-61?CP-65は、同様に動作するため、CP-61を代表として説明する。 CP-61は、資料9-3において斜線で割り当てられている範囲のプールコンベアを制御するとともに、光電スイッチ(PR C9?PR C11)の出力を監視している(資料11及び資料16)。そして、CP-61のプログラムの一部が示されている資料16及び資料17には、PRC9?PRC11の光電スイッチが製品箱の存在を検出した場合に、満杯であるとしてCP-2が搬入可信号(B04A0)をリセットする処理が記載されている。一方、PRC10とPRC11の両方が製品箱の存在を検出していない場合には搬入可信号をセットする処理が記載されている。 CP-2のプログラムの一部が示されている資料18には、上記の搬入可信号(B04AO)に基づいた処理が記載されている。すなわち、搬入可信号(B04A0)は、インタフェースを介してCP-61からCP-2に入力されている。 次に、CP-2の動作について説明する。 CP-2は、資料9-2において斜線で記載されている範囲にある製品箱搬送コンベア、および袖カーブコンベアを制御するとともに、次の処理を行う。 予め、CP-2には、プールコンベアの識別情報に対応付けて所定の等階級がセットされる。 まず、読取装置から等級・階級データを受け取り(資料8)、この等階級に基づいて該当するプールコンベアの識別情報を決定する。決定したプールコンベアの番号をCP-3にインタフェースを介して送信する(資料8)。 次に、資料18に示されているように、CP-61からの搬入可信号(B04A0)、袖カーブコンベアの光電スイッチ(詰まり検知センサー)、及び袖カーブコンベアの駆動状態を確認する。このとき、搬入可信号がセットされており、詰まり検知センサーが製品箱を検出しておらず、袖カーブコンベアが駆動状態にある場合には、ソートレーンレディ信号(Y01F1)をセットする。一方、上記のいずれかの条件を満たさない場合には、ソートレーンレディ信号(Y01F1)をリセットする。 このソートレーンレディ信号(Y1F1)の出力端は、資料19に示されているように、CP-3のX30201の人力端に接続されている。すなわち、ソートレーンレディ信号は、電気的にCP-2からCP-3に人力されている。 次にCP-3について説明する。 CP-3は、資料9-4において斜線で記載されている範囲にある製品箱搬送コンベアを制御すると共に、次の処理を行う。 CP-3はCP-2からプールコンベアの番号を受け取る。そして、資料20から資料22に示されているように、ソートレーンレディ信号(30201)がセットされていることを条件として、仕分処理が開始される。ソートレーンレディ信号(30201)がセットされていない場合には、仕分処理が開始されない。 以上の通り、パレタイザー積込工程では、CP-61?CP-69により、各プールコンベアの満杯状態が光電センサーにより検出されている。そして、プールコンベアが満杯の場合には、CP-2により、ソートレーンレディ信号がリセットされる。そして、ソートレーンレディ信号がセットされていないことにより、CP-3により、仕分処理が開始されない。このため、製品箱は所定のプールコンベアに排出されずに、製品ループコンベアにより戻されることとなる。 すなわち、パレタイザー積込工程は、プールコンベアに排出されずにオーバーフローした製品箱を製品箱搬送コンベアの上流側に戻す製品ループコンベアを備え、戻された製品箱の情報が文字読取装置で再度読み取られて、該当するプールラインが探索されるものである。 第4 被請求人の主張の概要 1 被請求人の主張の全体概要 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」としており、請求人が主張する無効理由1は、本件発明と甲2発明との間の一致点及び相違点の認定を誤るものであり、甲2発明は、少なくとも本件発明の構成要件B、D及びEを開示しておらず、本件発明は、甲2発明と同一ではない。 また、請求人が主張する無効理由2は、相違点に係る構成の容易想到性について、単に抽象的な可能性を述べただけに過ぎず、甲2発明において、相違点に係る構成を採用する動機付けは全く存在せず、本件発明は、甲2発明ないし甲5発明及び公知公用技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 無効理由に係る主張の概要 2-1 答弁書における主張の概要 (1)甲2発明について(答弁書5ページ下から2行ないし15ページ下から8行) ア 甲第2号証には、発明の課題に関連して段落【0001】及び【0003】ないし【0005】の記載があり、この記載から明らかなように、甲2発明では、従来の選別装置では、計測後の青果物を箱詰めするための手段を仕分クラス(等級、階級)の数と同数配置して構成していたのに対し、仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラスを切換えて排出する青果物の選別装置に関するものである。 イ また、甲第2号証には、課題を解決するための手段及び作用について【0006】ないし【0008】の記載があり、この記載によれば、甲2発明は、前記課題を解決するため、排出信号により作動する排出装置が仕分クラスの数よりも所定数少ない数設けられ、仕分クラス別の排出位置の指定が切換可能でかつ該仕分クラスのうち排出位置の指定ができない排出位置設定部を有し、仕分読取装置が読取った受皿の固有情報から仕分クラスを読出し、仕分制御手段は、読出した仕分クラスの排出位置が前記排出位置設定部に指定されているときは、その排出位置の排出装置へ受皿の進行と同期して排出信号を送り、読出した仕分クラスの排出位置が排出位置設定部に指定されていないときは排出信号を出力せず、排出装置の前を通過してリターン手段へ送られ前記仕分読取装置の前段に還元される。 ウ さらに、甲第2号証には、図6に選別装置の具体的な構成が示されており、その動作について、段落【0037】ないし【0043】の記載がある。なお図6についても、各構成の名称を付記して下に引用した。 ・・・(図は省略)・・・ 上記記載によれば、甲2発明では、まず、選別コンベア100を搬送中の青果物Fを載せた受皿2に対し、読取装置31及び計測装置32によって、受皿2の固有情報信号(コード番号)及び青果物Fの仕分けのためのデータ(等級、階級)を計測し、それぞれ合わせてアドレスメモリ部42に記憶する。 次に、仕分コンベア101を搬送中に第1仕分読取装置5により固有情報信号(コード番号)を読取り、階級仕分制御装置51がアドレスメモリ部42に記億された階級を読出し、該当する階級の排出装置6へ向けて階級別仕分信号を出力し、排出装置6によって階級別に等級を混在して該当する分岐コンベア102に排出される。ここで、「この排出装置6aは仕分コンベア101aの搬送路に沿って階級数に応じた数を所定間隔に配置しており、仕分コンベア101a上の青果物F入り受皿2を階級別に等級を混在して搬出する。」(【0023】)と記載されているように、階級数に応じた数の排出装置6が設けられており、分岐コンベア102も階級数に応じた数設けられていることは明らかである。分岐コンベア102に排出された青果物F入り受皿2は、第1プールコンベア103上にプールされ、その終端部103bから所定数を切り出して搬出コンベア104により一列に合流コンベア105、第2仕分コンベア106へ搬出される。 さらに、第2仕分コンベア106を搬送中に第2仕分読取装置50により固有情報信号(コード番号)を読取り、仕分制御手段7の等級読出部71がアドレスメモリ部42に記億された等級を読出し、排出制御部73に人力する。排出制御部73は、この等級が予め排出位置設定部72で指定された排出位置のいずれに属するか判別し、排出位置の指定がある場合に該当する排出装置60に向けて等級別排出信号を出力し、排出装置60によって等級別に該当する箱詰プール装置10に排出される。ここで、「60は前記符号6aで示されるものと同様の排出装置であり、第2仕分コンベア106の搬送路に沿って等級の数よりも所定数少ない数、実施例では4等級(秀、優、良、並)に対して1つ少ない数(3個)を所定間隔に配置している。」(【0024】)と記載されているように、排出装置60及び箱詰プール装置10は、等級の数よりも所定数少ない数しか設けられておらず、等級別の排出位置が足りず、排出位置の指定がない等級が存在する。 そして、排出位置の指定がない場合には排出制御部73は排出信号を出力せず、受皿は、第2仕分コンベア106から排出されずにリターンコンベア81により第2プールコンベア82上に送られ、その終端部82bから切り出すように合流コンベア15上に再び送出される。排出位置設定部72における等級別の排出位置は、切換制御手段9によって切換えが行われ、改めて第2仕分読取装置50により固有情報信号(コード番号)が読取られた受皿は、排出制御部73によって切換え後の排出位置のいずれに属するか判別され、該当する箱詰プール装置10に排出される。 エ 甲第2号証には、発明の効果について、段落【0044】ないし【0046】の記載がある。 オ 以上の甲第2号証に記載された事項からすると、甲2発明は、仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラスを切換えて排出する青果物の選別装置であり、仕分クラスの数よりも排出装置の数を少なくしたことにより、仕分クラスの中で排出位置を指定できない仕分クラスが発生するが、それについては、排出位置を指定せずにリターンコンベア81により第2プールコンベア82に保持しておき、排出位置の指定を切換えた後に、排出位置を指定して箱詰手段へ排出するものである。つまり、甲2発明において、リターンコンベア81により第2プールコンベア82に送出される受皿は、予め設定された「排出位置を指定していない仕分クラス」の受皿であり、甲2発明の装置は、「排出位置を指定していない仕分クラス」の受皿をリターンコンベア81により第2プールコンベア82に仕分けているのである。 この点、甲2発明は、最初に、階級数に応じた数の排出装置6を設け、第1仕分読取装置5、階級仕分制御装置51によって階級を仕分け、次に、4等級(秀、優、良、並)に対して1つ少ない数(3個)の排出装置60を設け、第2仕分読取装置50、仕分制御手段7によって等級を3つの排出位置と第2プールコンベアの4か所に仕分ける構成を採用したのである。 (2)本件発明1の無効理由(答弁書15ページ下から7行ないし20ページ下から6行) (2-1)甲2発明との対比 ア 構成要件B(審決注:本審決の構成要件C1及びC2) 請求人は、構成要件Bの中の「該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し」(請求人の構成要件C2)という要件について、甲第2号証の以下の構成が相当すると主張する。 「演算判定部41は前記読取計測手段3の計測装置32から人力される計測情報信号から予め設定した区分値と比較して仕分クラス(等級及び階級)を算出するようになっており、アドレスメモリ部42は、演算判定部41で算出された仕分クラスを、前記読取装置31が受皿2のバーコードマーク22を読取ったコード番号と共に更新記憶され、第2仕分コンベア106の搬送路に沿って等級の数よりも所定数少ない数を所定間隔に配置し、第2仕分コンベア106上の受皿2のバーコードマークを第2仕分読取装置50によって読取り、読取られたバーコードマークのコード番号に対応した受皿2の等級をアドレスメモリ部42から読出し、読出された等級信号に従って排出装置60を動作させ、第2仕分コンベア106に沿って設けられた排出装置60は、階級別に等級を混在して仕分コンベア106に搬送される青果物F入り受皿2を等級別に仕分けるように構成されている。」(審判請求書29頁13行?25行) しかし、かかる請求人の主張は、甲2発明の記載事項の一部を恣意的に抽出したものであり、失当である。例えば、知的財産高等裁判所平成24年2月6日判決(平成23年(行ケ)第10134号。「高強度部品の製造方法と高強度部品」事件)では、引用発明の認定について、「刊行物1においては、鋼板の部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却し、得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させて剛性低下部を形成し、その剛性低下部を成形型内で加工する技術が密接に関連したひとまとまりの技術として開示されているというべきであるから、そこから鋼板の部位ごとに冷却速度を異ならせて冷却し、得られる焼入れ硬度を部位ごとに変化させて剛性低下部を形成し、その剛性低下部を加工するという技術事項を切り離して、成形型内で加工を行う技術事項のみを抜き出し引用発明の技術的思想として認定することは許されない。」と判示している。 甲2発明は、上記図6に示すとおり、計測装置32によって等級及び階級を判定し、仕分コンベア101において、第1仕分読取装置5、階級仕分制御装置51及び排出装置6によって、階級数に応じた数設けられた分岐コンベア102に排出されて階級別に仕分け、次に、第2仕分コンベア106において、第2仕分読取装置50、仕分制御手段7、切換制御手段9及び排出装置60によって等級の数よりも所定数少ない数の箱詰プール装置10に仕分ける構成を採用している。つまり、甲2発明の仕分コンベア101以降の領域全てが、本件発明1の「搬送手段下流側の仕分排出軌道領域」に対応するのであり、その一部だけで構成されるものではない。 そして、本件発明1の「所定の仕分区分別の仕分ライン」に対して、甲2発明では、「階級数に応じた数設けられた分岐コンベア102」と「等級の数よりも所定数少ない数の箱詰プール装置10」とが設けられており、仕分排出軌道領域内において2段階で仕分けを行うものであり、両者は相違する。 イ 構成要件D(審決注:本審決の構成要件C3の一部) 請求人は、構成要件Dの「前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する」(請求人の構成要件C(3)の一部)について、次のように主張する。 「『前記第2仕分コンベア106の上流側所定位置に配置された第2仕分読取装置50により受皿2のバーコードマーク22を読取られて固有情報信号(コード番号)が仕分制御手段7の等級読出部71へ人力され、等級読出部71はこのコード番号からアドレスメモリ部42に記憶された等級を読出して等級信号を排出制御部73へ人力し、排出制御部73はこの等級が予め排出位置設定部72で指定された排出位置のいずれに属するか判別し、排出位置の指定がある場合に該当する排出装置60へ向けて等級別排出信号を受皿2の進行と同期させて出力する。』は、本件特許発明1の『前記仕分け排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する』に相当する。」(審判請求書31頁26行?32頁10行) かかる請求人の主張も、構成要件Bと同様、甲2発明の記載事項の一部を恣意的に抽出したものであり、失当である。甲2発明の仕分コンベア101以降の領域全てが、本件発明1の「搬送手段下流側の仕分排出軌道領域」に対応するのであり、その一部だけで構成されるものではない。 そして、甲2発明は、仕分コンベア101を搬送中に第1仕分読取装置5により受皿の固有情報信号(コード番号)を読取り、階級仕分制御装置51がアドレスメモリ部42に記億された階級を読出し、該当する階級の排出装置6へ向けて階級別仕分信号を出力し、排出装置6によって該当する分岐コンベア102に排出される点においては、本件発明1の構成要件Dと一致するものの、甲2発明では、第2仕分コンベア106を搬送中に第2仕分読取装置50により固有情報信号(コード番号)を読取り、仕分制御手段7の等級読出部71がアドレスメモリ部42に記億された等級を読出し、排出制御部73において、 この等級が予め排出位置設定部72で指定された排出位置のいずれに属するか判別し、排出位置の指定がある場合に該当する排出装置60に向けて等級別排出信号を出力し、排出装置60によって等級別に該当する箱詰プール装置10に排出され、排出位置の指定がない場合には、受皿は、第2仕分コンベア106から排出されずにリターンコンベア81により第2プールコンベア82上に送られる点において相違する。また、本件発明1が「前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段」であるのに対し、請求人の主張する甲2発明の「読出し手段」(第2仕分読取装置50)は、仕分排出軌道領域の中間に設けられている点においても相違する。 ウ 構成要件E(審決注:本審決の構成要件D及びE) 請求人は、構成要件Eの「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に、このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたこと」(請求人の構成要件D及びE)について、次のように主張する。 「[甲2発明の]『前記第2仕分コンベア106上で排出されない排出位置の指定がない青果物F入り受皿2を、前記合流コンベア105の始端部へ還元するリターン手段8』は、本件特許発明1の『前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベア』に相当する。」(33頁4行?8行)「[甲2発明の]『第2仕分コンベア106上で排出されない青果物F入り受皿2を合流コンベア105の始端部へ還元するリターン手段8』は、本件特許発明1の『このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたことを特徴とする』に相当する。」(審判請求書34頁19行?24行) しかし、甲2発明の「リターン手段8」は、前記のとおり、「排出位置を指定していない仕分クラス」の受皿をリターンコンベア81により第2プールコンベア82に仕分けるものであり、「仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベア」に該当するものではない。甲第2号証には、「仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿」について一切記載されておらず、「仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿」の取り扱いについて何ら言及していない。この点に関連して、甲2発明は、仕分コンベア101を搬送中に第1仕分読取装置5により階級別に分岐コンベア102に排出しているが、分岐コンベア102及び第1プールコンベア103が満杯になり、受皿をその分岐コンベア102に排出できなくなった場合について、オーバーフローした受皿について何の解決手段も示されていないことからも、甲2発明がオーバーフローした受皿に関する技術事項を開示していないことは明らかである。 また、甲2発明では、基本的に排出先にアキュームレート可能なコンベア(第1プールコンベア103、箱詰プール装置10、第2プールコンベア82)を設けて(【0012】、【0028】【0033】)、余剰分も保持できるように構成されており、受皿が満杯になることは想定されていないのである。 とりわけ、第1プールコンベア103は、「2条型の仕分コンベア101a,101bから仕分けられて分岐コンベア102a,102bによって搬送される同一階級で等級が混在した青果物F入り受皿2を、所定数プール可能なようにアキュームレート可能なコンベアで構成」(【0012】)するものであり、「青果物Fの分布率の違いにより仕分コンベア101から集中的に仕分けられて供給過剰になったときにこの余剰分をプールしておくと共に、この余剰分をまばらに仕分けられたときに次工程に送り出して次工程に送り出す量を一定にする如く構成」(【0012】)するものであるから、第1プールコンベア103を設けている甲2発明では、箱詰プール装置10のアキューム量および自動箱詰装置1 1の処理能力を超える量の青果物Fは供給されないことは明白である。 つまり、そもそも、甲2発明の装置全体として、受皿はオーバーフローが生じないように構成されており、「オーバーフロー」という概念自体が存在していないのである。 よって、甲2発明は、本件発明1の構成要件Eを開示するものではない。 (2-2)無効理由1(答弁書20ページ下から5行ないし下から2行) 前記対比において明らかなように、甲2発明は、少なくとも本件発明1の構成要件B、D及びEを開示していないので、本件発明1は甲2発明とは同一ではない。 (2-3)無効理由2(答弁書20ページ末行ないし24ページ10行) ア 請求人は、無効理由2について、「本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、および、甲第6号証?第10号証の公知公用技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。」と主張する。具体的には、請求人は、「甲第3号証には、本件特許発明1の構成要件D[被請求人の構成要件Eの前半]が記載されている。そして、甲第2号証と甲第3号証は搬送装置という共通の技術分野に属するものであるから、甲第2号証に記載の発明に甲第3号証に記載の構成を適用することは当業者にとって格別困難なことではない。」と主張する。また、請求人は、甲第6号証?甲第10号証について、「搬送される対象物を仕分けるための情報が既に取得されており、かつ、仕分けラインで満杯が発生したときには、搬送される対象物をリターンコンベアに戻し、文字認識装置で読み取って仕分けラインを再度探索することは、本件特許発明の出願前に公用されていた技術である。そして、スイカ選果包装施設という甲第2号証と共通の技術分野に属していることから、甲第6号証?甲第10号証によって証明される公知公用技術を甲第2号証に記載の発明に適用することは当業者にとって困難なことではない。」と主張する(以上、審判請求書49頁9行?50頁12行)。 しかし、甲2発明には、本件発明1の構成要件B、D及びEが開示されておらず、また、仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿について概念自体が存在せず、何らの技術的な課題も記載されていないので、そもそも甲2発明には本件発明1を想到する動機付けは存在しない。 イ 甲3発明は、「本考案は、仕分コンベヤによって搬送される仕分物品を仕分シュートに仕分ける複数の仕分システムの仕分シュートが合流する合流ジュートにおいて、何れか1つの仕分シュートを流れる仕分物品の流れを、他の仕分シュートを流れる仕分物品の流れより優先させて、合流点での仕分物品同士の衝突を回避するための合流シュートに関する。」(【0001】)と記載されているように、仕分シュートが合流する合流シュートに関するものである。具体的には、「倉庫において保管物の仕分」や「運送会社やデパートの集配センターにおいて配達物の仕分」に使用されることが例示されているだけであり(【0002】)、農産物の選別装置に使用することは一切記載されていない。 また、甲第3号証には、甲3発明の具体的な搬送態様について、「仕分システム12は、仕分物品Wを自動的に仕分けるシステムであり、仕分コンベヤ17、仕分シュート13,15等を有している。」(【0008】)、「仕分コンベヤ1 7は、軌道上を循環移動する複数のトレー19を有している。トレー19は、指定された仕分シュートの所まで移動してくると、自動的に傾いて積載している仕分物品Wを仕分シュートに送り込むようになっている。」(【0009】)と記載されている。さらに、甲3発明は、「複数の仕分シュートから送られてきた仕分物品同士が合流点において、衝突し、仕分物品の流れが悪くなるという問題点」または「仕分物品同士が衝突したとき、仕分物品が損傷を受けるという問題点」を解決するためのものであり(【0003】)、合流シュートにおける特有の課題を解決するためのものである。 一方、甲2発明は、「青果物の選別装置」であり、「青果物が載せられた受皿」を搬送手段で搬送するものであり、従来の選別装置では、計測後の青果物を箱詰めするための手段を仕分クラス(等級、階級)の数と同数配置して構成していたのに対し、仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラスを切換えて排出する青果物の選別装置に関するものである。 このように、甲2発明は、そもそも合流シュートに関するものではないので甲3発明を適用する動機付けは全く存在しない。また、甲3発明においては、「青果物」を搬送対象とするものでもなく、「青果物が載せられた受皿」を搬送手段で搬送するものでもないので、具体的な搬送対象も、搬送態様も異なるものであり、両者の技術分野は相違し、甲3発明を甲2発明に適用する動機付けも存在しないのである。さらに、甲2発明と、甲3発明とは解決すべき課題においても共通点は存在せず、両者を組み合わせる具体的な動機付けを欠いている。 ウ また、甲第3号証には、「満杯検知センサー40は、滞留仕分物品を検知したとき、仕分コンベヤ17からの投入された新たな仕分物品が投入検知センサー21, 31の前を通過した場合、その後の、仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入を停止させる。物品の投入を停止されられた仕分コンベヤ17は、投入停止が解除されるまで、投入を停止させられた仕分物品を積載したまま循環移動する。そして、仕分物品の滞留が解消されると、仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入が再開される。」(【0019】)という記載があるだけに過ぎず、単に満杯になった時に仕分物品の投入を停止させ、仕分物品を循環移動してアキュームしているだけである。 前記のとおり、甲2発明には、構成要件Eの「オーバーフロー」の概念自体が存在しない点て、甲3発明との組合せを必要としない。 エ 次に、甲第6号証ないし甲第10号証について、請求人は、「製品段ボールは、各階級毎(5L?2S)専用の箱なので、原料段階で印刷される。文字認識装置は、その印字、印刷された等階級文字を読み取り、所定のプールコンペアヘ仕分けされる。所定のプールコンベアが、満杯であればリターンラインへ搬送される。リターンラインへ戻された製品段ボールは再度、文字認識装置によって読み取られ、所定のプールコンベアに搬送される。」(審判請求書45頁14行?19行)と主張するが、甲第6号証ないし甲第10号証から、公知公用技術を客観的に把握することができない。 そもそも、甲第6号証及び甲第8号証は、作成日が不明であり、本件特許出願前のものであることが立証されていない。また、甲第6号証には、JA松本ハイランドのスイカ選果包装施設の1F機器配置図が示されているが、添付の機器一覧表を見ても単に品名が羅列されているだけであり、具体的な施設構造及び搬送態様を把握することはできない。また、甲第8号証及び甲第9号証には、スイカ選果包装施設の配置図が示されているものの、いずれにおいても「リターンライン」の用語もなく、具体的な動作についても不明である。なお、甲第7号証及び甲第10号証は、施設の具体的な構成を開示するものではない。 したがって、そもそも請求人の認定する公知公用技術が明らかとされておらず、甲第6号証ないし甲第10号証の公知公用技術に基づく請求人の主張は明らかに理由がないが、この点を措くとしても、請求人が主張する公知公用技術なるものを前提としても、本件発明1は、甲2発明及びかかる公知公用技術に基づいて容易に想到できたものではない。 オ 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明を主引例として、甲3発明及び公知公用技術を組み合わせたとしても当業者が容易に想到し得たものではないのである。 (3)本件発明2、3、5及び6の無効理由(答弁書24ページ11行ないし末行) 本件発明2、3、5及び6は、本件発明1を直接または間接的に引用するものであるところ、本件発明1が、上記のとおり、甲2発明と同一ではなく、甲2発明、甲3発明及び公知公用技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものでもない以上、本件発明2、3、5及び6についても、甲2発明と同一ではなく、当業者が容易に想到し得たものではないことは自明である。なお、甲4発明及び甲5発明は、いずれも本件発明1の構成要件Eを開示するものではない。 また、本件発明2の構成要件Gは、「前記仕分ラインは、仕分けるべき全ての区分毎に少なくとも1条設けられている」というものであるが、甲2発明は、従来の選別装置では、計測後の青果物を箱詰めするための手段を仕分クラス(等級、階級)の数と同数配置して構成していたのに対し、仕分クラスの数よりも箱詰手段を少なく配置したことに特徴があるので、甲2発明において、「前記仕分ラインは、仕分けるべき全ての区分毎に少なくとも1条設けられている」という本件発明2の構成要件Gを採用することを阻害する要因が存在するのである。 2-2 平成26年9月8日付け口頭審理陳述要領書における主張の概要 (1)通知書における本件特許発明1にかかる分説は、答弁書記載の分説とは異なるものであるが、特段争うものではない。 (2)合議体の見解は、本件特許発明1及び甲第2号証に記載された発明を正当に認定し、対比したものであり、異論はない。 (3)被請求人から口頭審理陳述要領書において新たな主張がなされれば、必要に応じて反論する予定である。 2-3 平成26年11月7日付け上申書における主張の概要 (1)請求人は、平成26年10月6日に実施された口頭審理における特許庁の指示を受けて、同月16日付上申書(以下「請求人上申書」という。)及び資料3ないし23を提出するので、被請求人は、特許庁からの送付通知にしたがい、本上申書を提出するものである。 そもそも、特許庁が、請求人に対して上申書の提出を求めたのは、請求人が、平成26年9月8日付口頭審理陳述要領書において、同年8月1日付審理事項通知書3.(1)記載の質問事項、すなわち、「甲第2号証に記載された発明の認定、本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明との対比による一致点及び相違点、及び、甲第2号証に記載された発明に、甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証?甲第10号証の公知公用技術を適用する論理付け」を明確に回答しなかったためである。したがって、第1回口頭審理調書記載のとおり、請求人が上申書として提出が許容されるのは、前記審理事項通知書3.(1)に対応する上記事項の説明の範囲に限定されるのであって、これを超えて、新たな資料を提出して公知公用技術であったなどと主張することは、下記に述べるようにそれらの資料の証明力が皆無であることを措くとしても、明らかに時機に遅れたものであり、認められるべきものではない。 (2)請求人は、前記「甲第2号証に記載された発明の認定、本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明との対比による一致点及び相違点、及び、甲第2号証に記載された発明に、甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証?甲第10号証の公知公用技術を適用する論理付け」について、請求人上申書3頁?8頁において繍々主張を行っているが、いずれも請求人の審判請求書及び前記口頭審理陳述要領書の記載を超えて新たな主張も見当たらない。この点、口頭審理における特許庁の請求人に対する前記指示を待つまでも無く、被請求人としては、既に答弁書20頁以下において詳述したとおりであるので、特段の反論を要しない。 念のため整理をすれば、そもそも甲2発明には本件発明1の構成要件C2、C3、D及びE(答弁書における被請求人の分説では構成要件B、D及びE)が開示されておらず、また、仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿について概念自体が存在せず、何らの技術的な課題も記載されていないのであるから、甲2発明には本件発明1を想到する動機付けは存在しない。また、甲2発明は、合流シュートに関するものではないから、甲3発明を適用する動機付けは全く存在せず、一方、甲3発明においては、「農作物」を搬送対象とするものでもなく、「農作物が載せられた受皿」を搬送手段で搬送するものでもないので、そもそも本件発明1の構成要件C2、C3、D及びEを開示しておらず、具体的な搬送対象も、搬送態様も異なり、両者の技術分野は相違し、解決すべき課題においても共通点は存在せず、甲3発明を甲2発明に適用する動機付けも存在しないのである。 この点に関連して、請求人は、甲第3号証に本件発明1の構成要件Dが記載されていると主張するが、甲3発明は、前記のとおり、「農作物」を搬送対象とするものでもなく、「農作物が載せられた受皿」を搬送手段で搬送するものではない。例えば、甲第3号証には「仕分コンベヤ17は、軌道上を循環移動する複数のトレー19を有している。トレー19は、指定された仕分シュートの所まで移動してくると、自動的に傾いて積載している仕分物品Wを仕分シュートに送り込むようになっている。」(【0009】)と記載されている。本件発明1は、そもそも構成要件A、B、C1ないしC3において特定されるように、「農作物が載せられた受皿」を搬送手段で搬送しつつ、「計測軌道領域」において受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測し、「仕分排出軌道領域」において該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する「農作物の選別装置」に関するものであり、かかる構成を前提として、構成要件Dである「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設ける」ことが規定されているのである。よって、甲3発明は、前提となる「農作物の選別装置」を開示しておらず、本件発明1の構成要件Dの「仕分排出軌道領域」も、「仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿」も、「リターンコンベア」も開示していないのであり、本件発明1の構成要件Dを開示するものではない。さらに、甲3発明には「計測軌道領域」が存在していないので、本件発明1の構成要件Eにおける「リターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたこと」も開示されていないのである。 なお、請求人は、資料3に依拠して、オーバーフローした果実をリターンコンベアで上流側に搬送するという技術は、技術水準であったと主張するが、資料3の特開昭64-80479号公報には、「農作物が載せられた受皿」を搬送手段で搬送する技術は開示されていない。 (3)さらに、口頭審理においても議論がなされたとおり、甲第6号証及び甲第8号証は、作成日が不明であり、本件特許出願前に作成された文書であること自体が立証されていない。特に、請求人が公知公用技術なるものの直接の証拠として主張する、松本ハイランド農業協同組合向けのスイカ選果包装施設配置図(甲第6号証)は、その図面上の作成日の記載が「06.06.02」とされており、請求人は、これが2006年6月2日を意味し、同配置図が同日に作成されたことを自白している(請求人上申書12頁下から6行?4行)。かかる請求人上申書の記載内容は、口頭審理における同配置図の作成者による説明内容と齟齬していると言わざるを得ないが、請求人は、前記作成日を自白した上で、パレタイザー積込工程について、「平成10年3月30日に当社が、同組合に引き渡して以来、改造、追加等は行われておらず、施工当時のままのシステムであることの証明を平成26年10月14日付で、松本ハイランド農業協同組合の組合長から受けている」(請求人上申書13頁8行?11行)などと主張し、口頭審理以後に同組合長に作成させた同旨の資料5が提出されているのみである。このような当時の事情を知らない現在の組合長名義の陳述書という証明力の無い迂遠な立証方法に依拠するのであれば、端的に、本件特許出願前の日付にて作成された配置図を証拠提出すれば足り、しかも、松本ハイランド農業協同組合向けのスイカ選果包装施設が一般競争入札の結果施工されていることに照らし、当時の関係書類に基づいてかかる立証を行うことは容易であるにもかかわらず、請求人は全く直接証拠による立証をなし得ないのである。 また、甲第6号証の機器一覧表を見ても単に品名が羅列されているだけであって、具体的な施設構造及び搬送態様を把握することすらできず、甲第7号証及び甲第10号証に至っては、オーバーフローに関する記載はおろか、施設の具体的な構成すら開示されていない。しかも、請求人が主張する公知公用技術の構成(e)の「満杯検知センサー(光電スイッチ)」に至っては、請求人自ら「資料4及び甲第6号証において不図示」(請求人上申書13頁23行?24行)と記載し、何ら証拠に基づかないことを認めている。 したがって、甲第6号証ないし甲第10号証の各書証によって、請求人が主張する公知公用技術の内容すら明らかとされておらず、請求人上申書において添付された資料4ないし23をもっても、何ら立証状況に変わりはないのである。 なお、かかる立証の問題を措くとしても、本件発明1は、甲2発明及びかかる請求人が主張する公知公用技術なるものに基づいて容易に想到できたものではない。請求人が主張する公知公用技術は、結局、同一の等級及び階級のスイカが箱詰めされた製品箱を搬送するパレタイザー積込工程に関するものであり、本件発明1の構成要件A、B、C1ないしC3において特定されるように、「農作物が載せられた受皿」を搬送手段で搬送しつつ、「計測軌道領域」において受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測し、「仕分排出軌道領域」において該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する「農作物の選別装置」に関するものではない。請求人が主張する公知公用技術には、構成要件Dである「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設ける」ことも、構成要件Eにおける「リターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたこと」も開示しておらず、甲2発明と組み合わせても本件発明1を想到することはできない。よって、本件発明1は、甲2発明及びかかる請求人が主張する公知公用技術なるものに基づいて当業者が容易に想到できたものではないのである。 (4)最後に、前記(3)と関連し、資料4ないし23について付言しておく。 まず、請求人が甲第6号証と関連して主張する資料4は、その4頁目のみに「98.02.10」と作成日らしきものが唯一記載されているものの、その図面番号が(#85-2)であり、他の4枚の資料の(#88)とは異なる。換言すれば、この「98.02.10」なる作成日が記載された図面のみ図面番号が(#85-2)とされており、その余の図面は全て(#88)であって、図面の差し替えが合理的に疑われるものである。その他の資料においても、日付らしき記載が存在するものや、一切作成日が不明なものが混在しており、その全てが本件特許出願日以前のものであるかは不明であり、前記資料4同様、文書の成立自体が極めて疑わしい。 また、資料7ないし23は、いずれも図面又は仕様書であるが、前記作成日の問題は措くとしても、これらの資料は何ら公知の文献ではなく、むしろ、公知公用の証拠が無いことを自認しているに等しい。請求人は、これらの追加資料をもって、松本ハイランド農業協同組合向けのスイカ選果包装施設においてオーバーフローが公知公用であったと主張しようと試みるが、そもそも市場における販売品でもなく、不特定多数の者の前で実施しかことにより発明の内容を知り得る状況となったこともないのであり、ましてや、請求人が主張するように、これだけの機器配置図、制御系統図、制御仕様図やプログラムまで用いて説明しなければ理解できない内容というのであれば、公知公用技術とは到底認められない。 このように、そもそも、請求人が殊更に強調する松本ハイランド農業協同組合向けのスイカ選果包装施設が本件特許出願前に設置されたという事実をもっても、請求人が立証せんとする公知公用技術の立証方法たり得ないのである。 第5 当審の判断 1 甲第2号証ないし甲第11号証について (1)甲第2号証 (1-1)甲第2号証の記載 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 各々が固有情報を有する多数の受皿と、この受皿に載せられた青果物を受皿ごと搬送する搬送手段と、該搬送手段の搬送路に沿って設けられ受皿の固有情報を読取ると共に青果物の所定の計測項目を計測する読取計測手段と、この読取計測手段からの計測情報より仕分クラスを判定し、この仕分クラスを受皿の固有情報と共に更新記憶する演算処理手段と、前記読取計測手段の後段で搬送中の青果物入り受皿の固有情報を読取る仕分読取装置と、この仕分読取装置の後段で搬送路に沿って仕分クラスの数よりも所定数少ない数設けられ、送られてくる排出信号により作動して青果物入り受皿を前記搬送手段から排出させる排出装置と、仕分クラス別の排出位置の指定が切換可能で且つ該仕分クラスのうち排出位置の指定ができない排出位置設定部を有し、前記仕分読取装置が読取った固有情報から前記演算処理手段に記億された仕分クラスを読出し、該読出した仕分クラスの排出位置が前記排出位置設定部に指定されているときその排出位置の排出装置へ当該青果物入り受皿の進行と同期して排出信号を送る仕分制御手段と、前記搬送手段に接続され排出装置により排出されない仕分クラスの青果物入り受皿を前記仕分読取装置の前段ヘ還元するリターン手段とからなることを特徴とする青果物の選別装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】) イ 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、青果物の選別装置に係り、詳しくは受皿上に載せられた青果物を選別すると共に、選別後の青果物を仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラスを切換えて排出する青果物の選別装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、青果物の選別装置は、例えば図8に示す如く、青果物が載せられた受皿70を搬送コンベア71で搬送する途中に、計測装置72により受皿上の青果物の所定項目を計測して等級及び階級を判定し、この判定結果に基づき、計測後の青果物を搬送路の側方に等級別階級別に設けた果実受け部73に排出するように構成している。そして、この果実受け部73に排出された青果物は、人手又は箱詰ロボット等の箱詰手段により段ボール箱内へ箱詰めされて製品として送り出されている 【0003】 【発明が解決しようとする課題】即ち、上記の従来の選別装置は、計測後の青果物を搬送して仕分ける搬送ラインの側方に、箱詰めするための手段を仕分クラス(等級、階級)の数と同数配置して構成したものである。 【0004】一方、果実、そ菜類等の青果物は、産地や季節及び年によって等級比率が異なるため、前記箱詰めするための手段を、仕分クラスの数と同数配置することは、比率が高い仕分クラスについては効率がよいが、比率が低い仕分クラスについては設備に対する効果が低く改善が望まれている。 【0005】また、近年、市場、消費者の多様化する要望により仕分クラスの数が増える傾向にあり、従来の如く仕分クラスの数と同数の箱詰めする手段を配置することは選別装置が長大化すると共に箱詰めに従事する作業者の人手不足を招き改善が望まれている。」(段落【0001】ないし【0005】) ウ「【0009】 【実施例】以下、本発明の好ましい一実施例を添付図面に基づいて説明する。 【0010】図において、1は受皿2を搬送する搬送手段であり、本実施例では各種コンベアの組み合わせにより構成する。 【0011】即ち、100a,100bは選別コンベアであり、その搬送路において受皿2上に載せられた青果物Fの所定の計測項目が計測されるようになっている。101a,101bは仕分コンベアであり、前記選別コンベア100a,100bの後段に接続され、計測後の青果物F入り受皿2を搬送すると共に所定の仕分クラスに基づき搬送路の側方に仕分けるようになっている。尚、本例の仕分コンベア101a,101bは階級別に等級を混在して仕分けるようになっている。また、前記選別コンベア100a,100bと仕分コンベア101a,101bは、それぞれを2条型に並設したが限定するものではない。 【0012】102a,102bは分岐コンベアであり、前記仕分コンベア101a,101b上から階級別に等級を混在して仕分けられた青果物F入り受皿2を受けて先方の第1プールコンベア103へ搬送するようになっている。この第1プールコンベア103は、2条型の仕分コンベア101a,101bから仕分けられて分岐コンベア102a,102bによって搬送される同一階級で等級が混在した青果物F入り受皿2を、所定数プール可能なようにアキュームレート可能なコンベアで構成する。尚、この第1プールコンベア103は、青果物Fの分布率の違いにより仕分コンベア101から集中的に仕分けられて供給過剰になったときにこの余剰分をプールしておくと共に、この余剰分をまばらに仕分けられたときに次工程に送り出して次工程に送り出す量を一定にする如く構成する。 【0013】104は搬出コンベアであり、前記第1プールコンベア103から送り出される青果物F入り受皿2を合流のタイミングを計って合流コンベア105上に搬出するようになっている。106は第2仕分コンベアであり、前記合流コンベア105から送り出される青果物F入り受皿2を受けて搬送すると共に搬送路の側方に等級別に仕分けるようになっている。 【0014】以上の如く搬送手段1は、受皿2を搬送するための搬送路を上記の如く各種コンベアの組み合わせで構成する。尚、この搬送手段1を構成する各種コンベアのうち、前記第1プールコンベア103を除く他のコンベアは、受皿2を一列で搬送するのに適合した搬送面を有するチェンコンベアやローラコンベア及びべルトコンベア等で構成することができる。 【0015】受皿2は図3の斜視図によく示すように、平面視で円形状をなしており、上面に逆円錐型の載部21を形成し例えば球塊状の青果物Fでも動くことなく安定して載せられるようになっている。22は受皿2の側面に設けられたバーコードマークであり、多数の受皿2それぞれに背番号付けする如く固有情報を付与してそれぞれの受皿2を区別している。 【0016】3は前記選別コンベア100の搬送路の所定位置に設けられた読取計測手段であり、図2によく示す如く搬送中の受皿2のバーコードマーク22を読取る読取装置31と受皿2上の青果物Fの所定の計測項目を計測する計測装置32とを組み合わせて構成している。読取装置31は公知のバーコード読取装置(バーコードリーダ)が用いられ、選別コンベア100の搬送路側方の所定位置に配置して搬送中の受皿2のバーコードマーク22を読取るようになっている。そしてこの読取った固有情報信号は、コード番号として後述する演算処理手段4へ入力されるようになっている。 【0017】計測装置32は、選別コンベア100a,100bの搬送路の上方所定位置にカメラ装置321と照明装置322とを組み合わせて光学的撮像手段を構成している。この撮像手段は、例えば本出願人が先に提案し公開された特開昭63-42411号公報に示されている技術を用いて青果物Fの形状寸法や表面状態(色、傷、汚れ、模様等)を計測する如く構成する。 【0018】また、この計測装置32は、上記の如く青果物Fの外観を計測する手段と、図示しないが青果物Fの内部品質(熟度、糖度等)を計測する手段とを組み合わせて選別のための所定の項目を計測することもできる。そしてこの計測したときの計測情報信号は後述する演算処理手段4へ入力されるようになっている。尚、この読取計測手段3の読取装置31と計測装置32との位置関係は、図2の配置に限定するものではなく、前後に入れ換わってもよくまた同一位置であってもよい。 【0019】4は演算処理手段であり、CPUを内蔵した処理回路で構成されており、図6に示す如く演算判定部41とアドレスメモリ部42とからなり、演算判定部41は前記読取計測手段3の計測装置32から入力される計測情報信号から予め設定した区分値と比較して仕分クラス(等級及び階級)を算出するようになっている。アドレスメモリ部42は、前記演算判定部41で算出された仕分クラスを、前記読取装置31が受皿2のバーコードマーク22を読取ったコード番号と共に更新記憶するようになっている。 【0020】尚、この演算処理手段4は、実施例の図面では演算判定部41とアドレスメモリ部42とを同一ブロック内に収めて後述する仕分制御手段7と通信回路を組むように構成したが、アドレスメモリ部42を各階級別に設けた仕分制御手段7に対応させて設け、演算判定部41で仕分クラスを判定した都度、各仕分制御手段7に対応させたアドレスメモリ部42に書込みデータを送る如く通信回路により接続することもできる。 【0021】5aは第1仕分読取装置であり、前記読取計測手段3の後段で仕分コンベア101aの所定位置に前記読取装置31と同様のバーコード読取装置(バーコードリーダ)を用いて構成する。尚、符号5bで示される第1仕分読取装置は、前記第1仕分読取装置5aと同様であり説明を省略する。以下各部の構成についても仕分コンベア101aの条側に基づいて説明を行う。この第1仕分読取装置5aで読取ったときの固有情報信号は、階級仕分制御装置51へ入力されるようになっている。そしてこの階級仕分制御装置51は、前記第1読取装置5aが読取った受皿2のコード番号から演算処理手段4のアドレスメモリ部42に記憶された階級の読出しを行い仕分信号を後述の排出装置6aへ向けて受皿2の進行と同期させて出力するようになっている。 【0022】50は第2仕分読取装置であり、前記第2仕分コンベア106の上流側所定位置に前記第1仕分読取装置5aと同様のバーコード読取装置(バーコードリーダ)を配置し、第2仕分コンベア106上を搬送される受皿2のバーコードマーク22を読取るようになっている。そして、この第2仕分読取装置50で読取ったときの固有情報信号は後述する仕分制御手段7と切換制御手段9へ入力されるようになっている。 【0023】6aは仕分コンベア101aの搬送路に沿って設けられた排出装置であり、仕分信号により作動して仕分コンベア101a上で搬送される受皿2を搬送路の側方へ排出するもので、例えばシリンダやソレノイド等のアクチェータを応用して受皿2を押し出し式又は分岐式に排出する如く構成する。この排出装置6aは仕分コンベア101aの搬送路に沿って階級数に応じた数を所定間隔に配置しており、仕分コンベア101a上の青果物F入り受皿2を階級別に等級を混在して搬出する。 【0024】60は前記符号6aで示されるものと同様の排出装置であり、第2仕分コンベア106の搬送路に沿って等級の数よりも所定数少ない数、実施例では4等級(秀,優,良,並)に対して1つ少ない数(3個)を所定間隔に配置している。即ち、この第2仕分コンベア106に沿って設けられた排出装置60は、階級別に等級を混在して仕分コンベア106で搬送される青果物F入り受皿2を等級別に仕分けるように構成する。 【0025】7は仕分制御手段であり、等級読出部71と排出位置設定部72と排出制御部73とからなり、等級読出部71は、前記第2仕分読取装置50で読取った受皿2のコード番号が入力されるようになっており、コード番号が入力されるとこの番号と共に演算処理手段4のアドレスメモリ部42に記憶されている等級の読出しを行うようになっている。 【0026】排出位置設定部72は、等級別の排出位置が切換可能で且つ所定の等級の排出位置が指定されないように予めプリセット装置(図示せず)にセットするようになっている。この排出装置設定部72によれば例えば、図7に示すように秀,優,良,並の等級のうち並の等級の排出位置を指定しない場合、この並の等級のものは第2仕分コンベア106上で排出されずに先方ヘ送られるようになる。 【0027】排出制御部73は、前記等級読出部71で読出した等級信号が入力されると、この等級が前記排出位置設定部72で設定した排出位置のいずれに属するか判別し、排出位置の指定がある場合に該当する排出装置60へ向けて排出信号を受皿2の進行と同期させて出力する。一方、前記入力された等級が排出位置設定部72に排出位置の指定がない場合は排出信号は出力されず、したがって、第2仕分コンベア106上を通過して次工程ヘ送られる。 【0028】8は前記第2仕分コンベア106上で排出されない排出位置の指定がない青果物F入り受皿2を、前記合流コンベア105の始端部へ還元するためのリターン手段であり、前記第2仕分コンベア106の終端部と前記合流コンベア105の始端部とをリターンコンベア81と第2プールコンベア82とで接続している。この第2プールコンベア82は、前記第1プールコンベア103と同様の構造のアキュームレート可能なコンベアで、前記第1プールコンベア103から送り出される青果物F入り受皿2と合流コンベア105上でスムースに合流する如く、終端部82bに合流のためのタイミング送り装置(図示せず)を設けて構成する。 【0029】尚、この第2プールコンベア82は、排出位置の指定のない等級の青果物Fを所定量になるまでプールしておき、所定量に達したときに前記第1プールコンベア103からの送り出しを停止させると共にこの第2プールコンベア82からの送り出しを開始する如く所定量を交互に送り出すように構成することもできる。 【0030】9は切換制御手段であり、前記排出位置設定部72における等級別の排出位置の切換えを、前記第2仕分読取装置50が受皿2のバーコードマーク22を読取った信号に基づき行うものである。この切換制御手段9は、前記第2仕分読取装置50が読取ったコード番号から前記排出位置が指定されない等級についてその個数を積算し、この値が予め設定した個数に達したときに排出位置の切換えを指示するようになっている。この指示は例えば排出位置設定部72の図示しないプリセット装置に切換信号出力するように構成すれば自動的に切換えることができる。 【0031】尚、この切換制御手段9の指示は、ブザーやランプ等により人手により前記プリセット装置(図示せず)の切換えをすることもできる。 【0032】また、本実施例は排出位置が設定されない等級つまりリターンされるものの個数について積算する如く説明したが、限定するものでなはく、例えば、同じ排出位置で良と並を切換えて排出させる場合で、並の等級がリターンにまわって良の等級が箱詰め部に排出されているとき、この排出されたものの個数を積算しておき、この個数がある設定数に達したときに排出位置の切換えを指示する如く構成することもできる。この設定のための個数は、例えば包装荷造り出荷を所定の箱数でまとめるために1パレット当りの個数や箱詰め資材の1ロット当りの個数等任意に設定することができる。 【0033】10は前記排出装置60にそれぞれ対応して設けられた箱詰プール装置であり、排出装置60から排出された青果物F入り受皿2をそれぞれ等級別にプールする如くアキュームレート可能なコンベアで構成する。 【0034】11は前記箱詰プール装置10の終端部に設けられた自動箱詰装置であり、図5によく示す如く、所定数の青果物Fを吸着して取り上げ横移動して所定の箱詰位置で待機する段ボール箱12に箱詰めする真空吸着パッドを有する取上げへッド13と、空の段ボール箱12を所定の箱詰位置に上昇待機させると共に製品となった段ボール箱12を製品送出コンベア14上に降下させる箱詰リフト15とを組み合わせて構成する。 【0035】16は回収コンベアであり、前記自動箱詰装置11により青果物Fが取り上げられて空になった受皿2を、前記選別コンベア100の始端部へ還元させるもので各搬送手段1の下方に搬送方向を逆にして設けられている。」(段落【0009】ないし【0035】) エ 「【0036】以上の如く構成された選別装置の動作について図6のブロック図を参照して以下説明する。 【0037】選別コンベア100上で搬送される受皿2に、例えば人手の作業により青果物Fが載せられると、搬送途中に読取計測手段3の読取装置31により受皿2のバーコードマーク22を読取られてその固有情報信号(コ?ド番号)が演算処理手段4のアドレスメモリ部42へ入力される。そして、計測装置32により、階級判定要素として青果物Fの形状寸法と、等級判定要素として色、傷等の外観表面形態をそれぞれ計測し、それぞれの計測信号を演算処理手段4の演算判定部41へ入力する。この演算判定部41は、入力されたそれぞれの計測信号から仕分けのためのデータとして青果物Fの等級および階級を判定し、それぞれのデータをアドレスメモリ部42ヘ入力する。このアドレスメモリ部42は前記読取装置31から入力される固有情報信号(コード番号)と前記判定された仕分けのためのデータ(等級、階級)とをそれぞれ合わせてアドレス毎(コード番号)に更新記憶しておく。 【0038】そして、読取計測手段3を通過して仕分コンベア101上に送り出された青果物F入り受皿2は、仕分コンベア101上を搬送中に第1仕分読取装置5により受皿2のバーコードマーク22が読取られて固有情報信号(コード番号)が階級仕分制御装置51へ入力される。この階級仕分制御装置51は前記読取ったコード番号を抽出して前記アドレスメモリ部42に記億された階級の読出しを行い、階級別仕分信号を該当する階級の排出装置6へ向けて受皿2の進行と同期させて出力する。 【0039】この階級別仕分信号により該当する排出装置6が作動すると、その階級の青果物F入り受皿2は仕分コンベア101上から階級別に等級を混在して分岐コンベア102上ヘ排出される。そして、この分岐コンベア102により搬送されて第1プールコンベア103上にプールされた青果物F入り受皿2は、この第1プールコンベア103の終端部103bから所定数を切り出して搬出コンベア104により一列に合流コンベア105へ搬出される。 【0040】この合流コンベア105により第2仕分コンベア106上ヘ送られた青果物F入り受皿2は、第2仕分読取装置50により受皿2のバーコードマーク22を読取られて固有情報信号(コード番号)が仕分制御手段7の等級読出部71へ入力される。等級読出部71はこのコード番号からアドレスメモリ部42に記憶された等級を読出して等級信号を排出制御部73ヘ入力する。排出制御部73はこの等級が予め排出位置設定部72で指定された排出位置のいずれに属するか判別し、排出位置の指定がある場合に該当する排出装置60ヘ向けて等級別排出信号を受皿2の進行と同期させて出力する。 【0041】一方、前記入力された等級が排出位置設定部72に排出位置の指定がない場合には排出信号は出力されない。このため排出位置の指定がない青果物F入り受皿2は、第2仕分コンベア106上から排出されずにリターンコンベア81へ送られる。 【0042】そして、リターンコンベア81により第2プールコンベア82上に送られた青果物F入り受皿2は、前記第1プールコンベア103から合流コンベア15上に送られる青果物F入り受皿2と合流のタイミングを計ってその終端部82bから切り出すように送出される。また、この第2プールコンベア82は、その終端部82bにおいて青果物F入り受皿2の送出を一時ストップさせておき、プールされる青果物F入り受皿2の数が所定量になったとき、前記第1プールコンベア103の終端部103bからの送出をストップさせると共に、第2プールコンベア82上の青果物F入り受皿2を送り出すように構成すれば所定量ごと交互に切り換えて送出すこともできる。 【0043】一方、前記排出位置設定部72における等級別の排出位置の切換えは、第2仕分読取装置50が受皿2のバーコードマーク22を読取ると、その都度前記排出位置が設定されない等級についてのみその個数を積算し、この値が予め設定した個数に達したときに排出位置の切換えを指示する。この切換えのために予め設定される数値は、リターンされる青果物Fが第2プールコンベア82上でほぼ満杯になるときの個数や、等級比率から割出された単位時間当たりの個数等目的に応じて任意に決めることが好ましい。そして、前記等級別排出信号により等級別に箱詰プール装置10上へ排出された青果物F入り受皿2は、自動箱詰装置11により所定数をまとめて段ボール箱12に箱詰めされて製品となって送り出される。 【0044】 【発明の効果】以上述ベた如く、本発明の青果物の選別装置によれば、仕分クラスの数よりも所定数少ない数の排出装置を搬送手段の搬送路に沿って設けると共に、仕分制御手段により前記仕分クラスの排出位置が切換可能で、且つ前記所定数の仕分クラスの排出位置が指定されないように設け、前記排出装置により排出されない前記仕分クラスの青果物を仕分読取装置の前段ヘ再び還元する如く構成したものである。 【0045】即ち、搬送手段に沿って設けられる排出装置は仕分クラスの数よりも少なく配置したため、この排出装置に対応して設けられる箱詰装置は、仕分クラスの数と同数を配置する従来のものと比較して少なくてすみ選別装置全体を小型にすることができると共に、箱詰め作業に従事する作業者も同様に少なくてすみ合理化及び省力化に効果がある。 【0046】また、同一排出位置で複数の仕分クラスを切換えて排出可能に構成したことにより、例えば等級比率の低いもの同志を組み合わせて一台の箱詰装置に対する稼動効率を高めて使用することができる。」(段落【0036】ないし【0046】) (1-2)甲第2号証に記載された事項 ア 上記(1-1)ウの記載によれば、搬送手段1は受皿2を搬送するものであり、仕分けコンベア101aは搬送手段1に含まれることが明らかであり、これを「6aは仕分コンベア101aの搬送路に沿って設けられた排出装置であり、仕分信号により作動して仕分コンベア101a上で搬送される受皿2を搬送路の側方へ排出するもので、例えばシリンダやソレノイド等のアクチェータを応用して受皿2を押し出し式又は分岐式に排出する如く構成する。」(上記(1-1)ウ【0023】)という記載とあわせてみると、受皿は搬送手段に連結されていないことが分かる。 イ 上記(1-1)ウ及びエ並びに図1ないし図6の記載から、搬送手段は、農産物供給位置から自動箱詰装置11に渡って青果物を載せた受皿を搬送する搬送手段であることが分かる。 ウ 仕分排出の領域に関して、甲第2号証の実施例は(上記(1-1)ウ及びエ)、第1仕分コンベア101、第1仕分読取装置5、排出装置6及び仕分コンベア102における階級別等級混在の仕分け(以下、「上流側の仕分け」ともいう。)に加え、該仕分けの下流側における第2仕分コンベア106、第2仕分読取装置50、排出装置60及び箱詰プール装置10(アキュームレート可能なコンベア)における等級の数よりも所定数少ない数の排出装置60による仕分け(以下、「下流側の仕分け」ともいう。)について記載されており、合計2つの仕分けを有することが理解できる。 一方、甲第2号証は、【産業上の利用分野】として「選別後の青果物を仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラスを切換えて排出する青果物の選別装置に関する。」(上記(1-1)イの段落【0001】)としており、【発明が解決しようとする課題】の欄において、箱詰めするための手段を仕分クラスと同数配置することに起因する問題を改善することについて記載されている(上記(1-1)イの段落【0003】及び【0004】)。さらに、甲第2号証の請求項1(上記(1-1)ア)には、「この仕分読取装置の後段で搬送路に沿って仕分クラスの数よりも所定数少ない数設けられ、送られてくる排出信号により作動して青果物入り受皿を前記搬送手段から排出させる排出装置」と記載されており、これは、上記2つの仕分けのうち下流側の仕分けのみを記載している。 したがって、上記(1-1)アないしエ並びに図1ないし6の記載によれば、仕分クラスの数よりも所定数少ない数の排出装置60にそれぞれ対応して設けられた、アキュームレート可能なコンベアで構成される箱詰プール装置10(アキュームレート可能なコンベア)が接続されている搬送手段下流側の仕分排出領域が設定されていること、及び仕分排出領域の上流に仕分読取装置50を設けることが分かる。 (1-3)甲第2号証に記載された発明 上記(1-1)及び(1-2)並びに図1ないし6の記載を総合すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「搬送手段に連結されていない受皿と、農産物供給位置から自動箱詰装置11に渡って青果物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え、この搬送手段には、この受皿上の青果物を選別するための所定の計測項目を計測するために搬送手段の途中に設定された読取計測手段3、及び読取計測手段3で計測され判定された仕分クラスに基づいて個々の受皿上の青果物を排出するように仕分クラスの数よりも所定数少ない数の排出装置60にそれぞれ対応して設けられたアキュームレート可能なコンベアで構成される箱詰プール装置10が接続されている搬送手段下流側の仕分排出領域を設定し、各受皿に、その上に載せられている青果物の仕分クラスをバーコード介して読み出し可能に記録し、前記仕分排出領域の上流に設けた仕分読取装置50により受皿の青果物仕分クラスを読み出して該当する箱詰プール装置10に受皿を排出する青果物の選別装置において、 前記仕分排出領域から、仕分クラスの排出位置が指定されている受皿は箱詰プール装置10に仕分け、仕分クラスの排出位置が指定されてない受皿はプールコンベア82にプールしておき、仕分クラスの排出位置を切り換えるときに仕分読取装置50の前段へ受皿を還元するリターン手段とからなる青果物の選別装置。」 (2)甲第3号証 (2-1)甲第3号証の記載 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、仕分コンベヤによって搬送される仕分物品を仕分シュートに仕分ける複数の仕分システムの仕分シュートが合流する合流シュートにおいて、何れか1つの仕分シュートを流れる仕分物品の流れを、他の仕分シュートを流れる仕分物品の流れより優先させて、合流点での仕分物品同士の衝突を回避するための合流シュートに関する。」(段落【0001】) イ 「【0009】 仕分コンベヤ17は、軌道上を循環移動する複数のトレー19を有している。 トレー19は、指定された仕分シュートの所まで移動してくると、自動的に傾いて積載している仕分物品Wを仕分シュートに送り込むようになっている。 なお、仕分コンベヤ17のトレー19は、実公昭62-16404号公報に記載の仕分コンベヤの様に、固定的であってもよい。固定的なトレーの場合、トレー上の仕分物品は、仕分コンベヤに沿って設置されたプッシャーによって、仕分シュートに送り込まれるようになっている。 【0010】 合流シュート11を構成している仕分シュートの内、1つの仕分シュート13は主流シュートであり、残りの仕分シュート15は副流シュートである。 なお、図1では、副流シュート15を1つしか図示していないが、複数の場合もある。 副流シュート15は、主流シュート13に連続的に仕分物品Wが送り込まれたとき、主流シュートに仕分物品が滞留する恐れがあるため、補助的に仕分物品Wを受け取るために設けられている。 このため、主流シュート13上の仕分物品W1の流れは、副流シュート15上の仕分物品W2の流れよりも優先される。 【0011】 主流シュート13は、仕分物品W1が滑り易い鉄板によって断面コ字状に形成され、傾斜して設置されている。 なお、主流シュート13は、仕分物品W1が滑り易い樹脂製であってもよい。 主流シュート13の入口の両側には、主流シュート13に仕分物品W1が投入されたことを検知する投入検知センサー21,21が取付けられている。 又、主流、副流シュート13,15の合流点22のやや上流の両側には、主流シュート13を滑り降りる仕分物品W1を検知する通過センサー(第1物品検知センサー)23,23が取付けられている。 【0012】 副流シュート15は、「く」の字状に屈曲している部分に複数の搬送コンベヤ24を有している。搬送コンベヤ24の両端には、鉄板製或いは樹脂製の案内シュート25,26が接続されている。 副流シュート15の入口の両側にも、副流シュート15に仕分物品W2が投入されたことを検知する投入検知センサー31,31が取付けられている。 【0013】 又、合流点22のやや上流の副流シュート15の両側には、搬送コンベヤ24によって搬送される仕分物品W2を検知するタイミングセンサー(第2物品検知センサー)32,32取付けられている。 このタイミングセンサー32は、通過センサー23が主流シュート13を滑り降りる仕分物品W1を検知した後、所定の時間(オフ・ディレータイム)内に搬送コンベヤ24上に仕分物品W2があることを検知したとき、搬送コンベヤ24を停止させるようになっている。 【0014】 合流点22より下流の両側には、満杯検知センサー40,40が設けられている。満杯検知センサー40は、合流点2の下流側に詰まって滞留した仕分物品W1,W2を検知し、仕分コンベヤ17からの仕分物品Wの投入を停止させるようになっている。 【0015】 次に動作を説明する。 仕分目的が同一な仕分物品Wは、仕分コンベヤ17から主流シュート13或いは副流シュート15に送り込まれる。 主流シュート13に送り込まれた仕分物品W1は、先ず、投入検知センサー21によって、主流シュート13に投入されたことが検知される。 その後、仕分物品W1は、主流シュート13の傾斜によって滑り降りて通過センサー23の前をする。通過センサー23は仕分物品W1の通過を検知する。 そして、仕分物品W1は、合流点22を通過して1箇所に集められる。 【0016】 一方、副流シュート15に送り込まれた仕分物品W2も、先ず、投入検知センサー31によって、副流シュート15に投入されたことが検知される。 その後、仕分物品W2は、搬送コンベヤ24によって合流点22に送り込まれ、主流シュート13によって送り込まれてきた仕分物品W1と同じ場所に集められる。 この間に、タイミングセンサー32は、搬送コンベヤ24上の仕分物品W2の通過を検知する。 【0017】 このとき、通過センサー23が作動した後、ある一定の時間内にタイミングセンサー32が作動した場合には、タイミングセンサー32は、搬送コンベヤ24を直ちに停止させ、副流シュート15上の仕分物品W2が合流点22に送り込まれないようにする。 これによって、主流シュート13の仕分物品W1の流れが優先され、合流点22における、主流シュート13の仕分物品W1と副流シュート15の仕分物品W2との衝突が回避される。 又、合流点22における仕分物品W1,W2の詰まりも回避され、仕分物品W1,W2は円滑に流れる。 さらに、仕分物品W1,W2の損傷も防止される。 【0018】 このようにして、主流シュート13と副流シュート15とによって仕分物品W1,W2は1箇所に集められるが、集められた仕分物品W1,W2を作業員が処理しきれない場合、仕分物品W1,W2は、滞留し、満杯検知センサー40によって検知される。 満杯検知センサー40は、仕分物品W1,W2を検知し、ある一定の時間、ON状態が続いた場合に、その仕分物品W1,W2を、滞留仕分物品として検知する。 【0019】 満杯検知センサー40は、滞留仕分物品を検知したとき、仕分コンベヤ17からの投入された新たな仕分物品が投入検知センサー21,31の前を通過した場合、その後の、仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入を停止させる。 物品の投入を停止されられた仕分コンベヤ17は、投入停止が解除されるまで、投入を停止させられた仕分物品を積載したまま循環移動する。 そして、仕分物品の滞留が解消されると、仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入が再開される。」(段落【0009】ないし【0019】) (2-2)甲第3号証に記載された発明 上記(2-1)及び図面の記載を総合すると、甲第3号証には以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「仕分コンベヤによって搬送される仕分物品を仕分シュートに仕分ける複数の仕分システムの仕分シュートが合流する合流シュートにおいて、合流点より下流に設けられた満杯検知センサーが滞留仕分物品を検知したとき、その後の、仕分コンベヤからの仕分物品の投入を停止し、物品の投入を停止されられた仕分コンベヤは、投入停止が解除されるまで、投入を停止させられた仕分物品を積載したまま循環移動する合流シュート」 (3)甲第4号証 (3-1)甲第4号証の記載 甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、果物や野菜類を階級(品質,大きさ)別に自動的に仕分ける選果仕分け設備に関するものである。」(段落【0001】) イ 「【0008】そこで、本発明の目的は、仕分けラインを効率的に利用して生産性の向上が図れる選果仕分け設備を提供することにある。」(段落【0008】) ウ 「【0013】図1に示すように、トレイ8に載置され等階級を判別された果実nは、トレイルート変更手段としてのトレイ搬送機構2上に載置された状態で搬送コンベア1によって連続的に搬入された後、後述する仕分け機構のトレイ方向変更板13a,13b・・・を切り替えることにより、該当する等階級の仕分けラインのトレイ受取コンベア5へ排出され、箱詰め装置G又は人手によって別途空箱搬入コンベア31及び空箱供給コンベア32によって供給された箱50内に箱詰めされた後、排出コンベア33及び搬出コンベア34によって外部に搬出される。 【0014】図2及び図3に示すように、搬送コンベア1に沿ってガイド溝6が付設され、このガイド溝6の各仕分けライン(図5に示すNo.1?No.8仕分けライン参照)位置には斜め方向に外れて分岐した分岐ガイド溝6a,6b・・・がそれぞれ付設され、このガイド溝6と各分岐ガイド溝との分岐点にはロータリーソレノイド14によって作動するトレイ方向変更板13a,13b・・・が設置されている。 【0015】前記のように、トレイ搬送機構2上にはトレイ8が、この搬送機構2の移動方向(搬送コンベア1のライン方向)と直交する方向に移動可能に、摺動自在に載置され、同じく搬送機構2にはトレイ8と同方向に移動し得るトレイ押出し機構3が設置されている。そして、このトレイ押出し機構3から下方へ突設されたカムフォロア12がガイド溝6と嵌合していてトレイ搬送機構2と連動して移動するが、所定の仕分けライン位置に来たときにロータリーソレノイド14が作動してトレイ方向変更板13a,13b・・・が切り替えられると、カムフォロア12はガイド溝6から分岐ガイド溝6a(又は6b・・・)へ移り替わり、これによってトレイ押出し機構3が移動してトレイ8を仕分けラインのトレイ受取コンベア5上へ押出すようになっている。 【0016】また、搬送コンベア1と各仕分けラインとのトレイ排出部には第1センサとしての荷溜りセンサ36a,36b・・・が設置されていてその仕分けラインに供給される等階級の果実nの数をカウントし、各トレイ受取コンベア5の終端部には第2センサとしての荷有りセンサ37a,37b・・・が設置されていてその仕分けラインの所定位置に所定数の果実nが有るか否かを検知し、各箱詰め位置にはラベラ35a,35b・・・が設置されていて、箱詰めが完了した箱50に該当する等階級等の印字されたラベルを貼付するようになっている。 【0017】制御装置39は、荷溜りセンサ36a,36b・・・の信号に基づいて過負荷供給状態の仕分けラインを検出し、その検出信号によってトレイ受取コンベア5上の荷溜まりが出来ないようにトレイ方向変更板13a,13b・・・を適宜制御し、また、荷有りセンサ37a,37b・・・の信号に基づいて荷が供給されていない空き仕分けラインを検出し、その検出信号及び前記荷溜りセンサ36a,36b・・・の検出信号によって、過負荷供給状態の等階級の果実nを空き仕分けラインへ分流して供給するように該当するトレイ方向変更板13a,13b・・・を適宜制御すると共に、箱詰めが完了した箱50に、該当する等階級の印字されたラベルを貼付するように該当するラベラ35a,35b・・・を適宜制御するようになっている。 【0018】以下、本選果設備の作用を説明する。仕分け作業が開始されると、搬送コンベア1より等階級別に各仕分けラインへ排出される果実nの数が荷溜りセンサ36a,36b・・・によってカウントされ、同時に各トレイ受取コンベア5の終端部に所定数の果実nが有るか否かが荷有りセンサ37a,37b・・・によって検知され、これらの信号は逐一制御装置39へ送られる。 【0019】そして、果実nが各仕分けラインへ等階級別に平均して供給され、従って各トレイ受取コンベア5上には荷溜まりは起こらず、また何処にも空き仕分けラインがないことが検知された場合にはそのまま同じ仕分け制御が継続される。」(段落【0013】ないし【0019】) (3-2)甲第4号証に記載された発明 上記(3-1)及び図面の記載を総合すると、甲第4号証には以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 「果物や野菜類を階級(品質,大きさ)別に自動的に仕分ける選果仕分け設備において、搬送コンベアから等階級別の仕分けラインにトレイを分流して供給するトレイ方向変更板と、トレイ排出部には荷溜りセンサが設置され、荷溜りセンサの信号に基づいて過負荷供給状態の仕分けラインを検出し、その検出信号によってトレイ受取コンベア上の荷溜まりが出来ないようにトレイ方向変更板を適宜制御し、また、各トレイ受取コンベアの終端部には荷有りセンサを設置し、荷有りセンサの信号に基づいて荷が供給されていない空き仕分けラインを検出し、その検出信号及び前記荷溜りセンサの検出信号によって、過負荷供給状態の等階級の果実を空き仕分けラインへ分流して供給するように該当するトレイ方向変更板を適宜制御する、トレイに載置された果物や野菜類の選果仕分け設備。」 (4)甲第5号証 (4-1)甲第5号証の記載 甲第5号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は、送り先方面別、顧客別などに仕分ける仕分け装置において、仕分け用認識マーカーを付与したバケット(部品収納箱)をコンベヤ上を搬送移動して指定のコンベヤに仕分けする装置に関する。」(段落【0001】) イ 「【0006】 まず、仕分けコンベヤ12に投入されて流れてきたバケット11は、読取器13でバケット認識マーカー11aの仕分け番号を識別し、その識別番号(すなわち仕分け番号31である)の信号をコンベヤ制御盤16に入力する。その後当該バケットは複数のバケット引き込み装置14の上を通過する。このとき、当該コンベヤ制御盤は、識別番号である仕分け番号に対応したコンベヤ番号の位置に来た時、対応するバケット引込装置14を駆動させてコンベヤ15側に当該バケットを仕分け出力する。これら一連の動作を繰り返し、各コンベヤ上には、振り分けられた所定の仕分け番号のバケットが順次たまってくる。」(段落【0006】) ウ 「【0016】 【実施例】 (実施例1) 本考案の実施例について、図1の本考案の仕分け装置の構成ブロック図の実施例1と、図3のコンベヤ制御盤内の(a)メモリ内部の登録データの例、及び(b)のデジタルスイッチの入力例の図を参照して説明する。 【0017】 本実施例の、実施概要を説明する。本実施例は、コンベヤ制御盤16に、各コンベヤ毎の通過カウンタ16cを設けてバケットを計数監視して、空きコンベヤか否かの検出をする。また、デジタルスイッチ17と設定ボタン18を設けて入力手段とした。そして、当該コンベヤ制御盤のシーケンサの制御プログラムを変更して、当該デジタルスイッチと当該設定ボタンを入力にして、初期値の登録データを随時設定変更可能なように制御をおこなうことで実現している。 【0018】 登録データの設定変更手順を具体的に説明する。デジタルスイッチ17は、登録データのコンベヤ番号スイッチ17a部分でコンベヤ番号値を設定し、仕分け番号スイッチ17b部分で仕分け番号値を設定をするデジタルスイッチである。 【0019】 例えば当日になって、仕分け番号03のバケットが多く仕分けされることがわかり図3(a)の46の1台のコンベヤでは足りない場合、空いている41のコンベヤ番号(例えば01)を変更する。 図3(b)の51のように、コンベヤ番号スイッチ17aを01にして仕分け番号スイッチ17bを03に設定後、設定ボタン18を押すことで、このデータがメモリ内部の登録データの41のコンベヤ番号01のメモリデータが03の値に更新される。そしてさらに不足であれば、同様にして52、53、54の様にスイッチ設定することで空きコンベヤを仕分け番号03に変更し利用できる。このように、上記操作を繰り返すことで、登録データは任意に更新でき、直ちに仕分け制御動作に反映され実行制御される。 【0020】 ただし上記設定の登録確定には条件がある。それは、設定ボタン18を押した時に、当該コンベヤ番号の通過カウンタがゼロであること、すなわち設定すべきコンベヤ上にバケットが1個もない、空のコンベヤである時のみ設定が有効となる条件である。これは、すでにコンベヤ上にバケットが存在すると宛先の異なるバケットが混在するのを防止する為である。この条件が無効の場合は警報器16aにて警報を出して作業者に注意確認を促す。 【0021】 この条件により、仕分け装置が運転中においても随時操作できる。つまり空きコンベヤを満杯や満杯間近かであるか否かに関係なく、状況に応じていつでも目的の仕分け番号に変更することができる。すなわち、作業者が、仕分け状況を確認して仕分けの中断が発生する前に設定変更することもでき、仕分け運転の中断をなくすることも可能である。 ここで、これら設定変更後の登録データ16b群は、シーケンサの不揮発性メモリに記憶されるので、翌日以降においても同様に有効なので、空きコンベヤとなる確率が減ってくる。 【0022】 また上記において、満杯間近かであることを、未然にブザー通知で知らせる手段を講じても良い。つまり、通過カウンタ16cのデータ値を基にして、バケットが満杯になる任意個数の手前でブザー通知して、作業者に設定変更を促すようにして、仕分け装置の中断を回避するようにしても良い。 (実施例2) 本実施例の、実施概要を説明する。本実施例は、図2のようにコンベヤ制御盤16に、表示器19を設ける。そして、当該コンベヤ制御盤のシーケンサの制御プログラムを変更して、何れかの仕分け番号の該当コンベヤがバケットで満杯を検出又は検出前に、当該コンベヤ制御盤で空のコンベヤ番号を自動的に見出して、事前にこの仕分け番号に自動的に設定変更するように制御を行う。そして、変更したコンベヤ番号の確認表示を、表示器19によって作業者に知らせるように制御をおこなうことで実現している。つまり、実施例1では人手が行っていた設定変更作業を自動設定変更にしたものである。 【0023】 本考案の実施例について、図2の本考案の仕分け装置の構成ブロック図の実施例を参照して説明する。 登録データ16bの初期値の設定は、予め従来の方法で固定設定しておく。仕分け装置が運転されて、各コンベヤ15上にはバケット11がたまってくる。この時の各コンベヤ15のバケット個数は前記同様にして通過カウンタが計数している。その中で、次のコンベヤ番号の登録データがなく、かつ満杯間近かの仕分け番号のコンベヤを見出すと、自動設定変更を開始する。 【0024】 すなわち、通過カウンタ値を基に空きコンベヤ番号を探す。次にこのコンベヤ番号に付与されていた登録データ内の仕分け番号を、満杯間近の仕分け番号に自動変更する。これにより満杯後は、新たに追加された仕分け番号のコンベヤ番号に流れることになる。そしてこの自動変更したことを外部に知らせるための表示器19に変更情報を表示し、通知の確認警報を警報器16aで出して知らせる。 【0025】 この実施例では、確認のための表示器19を設けて仕分け作業者等が確認できるようにしているが、必ずしも必要ではなく、必要により設ける構成手段にしても良い。 (実施例3) 【0026】 上記実施例1や実施例2においては、空きコンベヤの検出手段としては通過カウンタ16cを用いている。この方法では、一度でもバケットが通過すると、空のコンベヤとは見なされない。しかしこれでは不具合な場合がある。例えば配送出荷済みのコンベヤでは、実際にはコンベヤ上のバケットは空でありながら空コンベヤと認識できない場合である。そこで、コンベヤ上にバケットが1個でも在るか無いかを検出する空きセンサ15bを設けてこれに対応する手段がある。この場合は、空きとなったコンベヤを、この空きセンサ15bによりリミット・カウンタをリセットすることにより、実際の空きコンベヤ状態が認識できる為、コンベヤの再利用が実現可能となる。 【0027】 【考案の効果】 本考案は、以上説明したように構成されているので、下記に記載されるような効果を奏する。 運転中でも仕分け番号を随時変更可能にすることで、空いているコンベヤを有効に活用して、かつ停滞をなくすることができる。この結果、仕分け作業の停止ロス時間は無くなるか、又は最小にできる利点が得られる。 【0028】 また、予測を越えて特定の仕分け番号にバケット仕分けが集中した場合でも、運転中に空きコンベヤを見出して随時設定変更できる為、従来のように中断して満杯バケットを人手によりコンベヤ外に移して取り除く作業が不要になり、かつコンベヤ上から取り除いた当該バケットを保管しておく保管スペースを余分に確保しておく必要がなくなる。 一方、コンベヤ制御盤で自動的に設定変更するように制御した場合では、仕分け数量の見込み計画によって事前にコンベヤの台数を固定設定する必要がなくなる利点が得られる。」(段落【0016】ないし【0028】) (4-2)甲第5号証に記載された発明 上記(4-1)及び図面の記載を総合すると、甲第5号証には以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 「バケット(部品収納箱)をコンベヤ上を搬送移動して指定のコンベヤに仕分けする装置において、仕分けコンベヤ12からコンベア15側にバケットを仕分けするバケット引込装置14と、各コンベヤ15毎の通過カウンタを設けてバケットを計数監視し、何れかの仕分け番号の該当コンベヤ15がバケットで満杯を検出又は検出前に、当該コンベヤ制御盤で空のコンベヤ番号を自動的に見出して、事前にこの仕分け番号に自動的に設定変更するように制御を行う仕分けする装置。」 (5)甲第6号証ないし甲第10号証 (5-1)甲第6号証ないし甲第10号証の記載 ア 甲第6号証(JA松本ハイランドのスイカ選果包装施設配置図) 甲第6号証の1枚目ないし4枚目の下方には、次の記載がある。 「作成」の欄:「 S.I 06.06.02」 「機名」の欄:「JA松本ハイランド 農業協同組合のスイカ選果包装施設」 「図番」の欄:一枚目「SIS060602-100」、2枚目「SIS060602-111」、3枚目:「SIS060602-112」及び4枚目:「SIS060602-113」 イ 甲第7号証(JA松本ハイランドのスイカ選果包装施設感謝状) 甲第7号証には、「感謝状 近江度量衡株式会社殿 貴社は ・・・ すいか集出荷施設建設工事にあたり ・・・ 立派に完成されました ここに竣工式を挙行するにあたり記念品を贈り心から感謝の意を表します 平成十年六月十九日 松本ハイランド農業協同組合 代表理事組合長 田中秀一」と記載されている。 ウ 甲第8号証(JA松本ハイランドすいか集出荷施設のパンフレット) 甲第8号証には、概ね次の記載がある。 (ア) 2枚目において、「松本ハイランド農業協同組合 代表理事組合長 田中秀一」の挨拶として、「初夏の候、本日ここに念願でありました「すいか集出荷施設」が竣工の運びとなりました。」と記載されている (イ) 3枚目において、以下の記載がある。 ・図面右下に「スイカ選果のシステムフロー」と記載されている。 ・赤○1(赤丸にアラビア数字の「1」が白抜きで記載。以下、甲第8号証においては同様に記載する。)「荷受スラットコンベア」、赤○2「清浄機」、赤○3「トレー供給とライプセンサ」、赤○4「CCD画像処理装置(形状・模様等)」、赤○5「上下画像処理装置」、赤○6「ストックヤード」、赤○7「全自動箱詰ロボット」、赤○8「全自動封函機」、赤○9「製品箱文字認識装置」、赤○10「製品搬送コンベア」、及び赤○11「ロボットパレタイザ」の説明とともにそれぞれの写真が記載されており、中央の図には、赤○1ないし赤○11に加え、「結束機」に係る赤○12及び「製品ループコンベア」に係る赤○13がそれぞれ対応する機器の箇所に付与されている。 ・図面右下の多数の矢印の記載から、前記赤○1ないし前記赤○11における各機器が、上流から下流の流れ方向に順に配置されている機器であり、赤○11に対応する「ロボットパレタイザ」の次に「出荷」と記載されている。 (ウ) 4枚目の「事業及び施設の概要」の欄において、以下の記載がある。 ・「2.施設名」 「JA松本ハイランドすいか集出荷施設」 ・「3.事業主体」「松本ハイランド農業協同組合」 ・「7.選果設備」「選果ライン 4条一式」 「荷下し・荷受コンベア・検査判定装置・全自動箱詰め装置」 「全自動製函、封函装置・全自動中仕切投入装置」 「自動箱積ロボットパレタイザ」 ・「8.設計管理」「長野県経済事業農業協同組合連合会」 ・「9.工期」「平成10年3月30日完了」 ・「10.工事施工」「○選果機械 近江度量衡 株式会社」 「○建築工事 北信土建 株式会社」 「○電気工事 株式会社 トーエネック」 「○敷地造成工事 株式会社 フカサワイール」 エ 甲第9号証(日本農業新聞の平成10年6月19日付けJA松本ハイランドすいか集出荷施設の記事) 甲第9号証には、概ね次の記載がある。 ・「日本農業新聞」、「1998年(平成10年)6月19日(金曜日)」、「平成10年6月19日竣工の「JA松本ハイランドすいか集出荷施設」」(紙面上部中央の「JA松本ハイランド」の写真の説明) ・紙面中央に「<<すいか集出荷施設配置図>>」と記載され、その配置図に「荷受け」、「荷受け設備」、「選別設備」、「箱詰設備」、「封函設備」、「ロボットパレタイザー」及び「出荷」と記載されている。 ・紙面左側の欄に、「松本ハイランド農業協同組合 代表理事組合長 田中 秀一」の挨拶として、「初夏の候、本日ここに念願でありました「すいか集出荷施設」が竣工の運びとなりました。」と記載されている。 オ 甲第10号証(施設建設契約書) 甲第10号証には、概ね次の記載がある。 (ア) 一枚目において、「施設建設契約書」、「委 任 者 松本ハイランド農業協同組合」、「受 任 者 長野県経済事業農業協同組合連合会」及び「JA松本ハイランド すいか集出荷施設建設工事(機械プラント工事)」と記載されている。 (イ) 二枚目において、「完 成 平成10年3月30日」及び「引 渡 平成10年3月30日」と記載されている。 (5-2)甲第6号証ないし甲第10号証の記載事項について 請求人が主張する公知公用技術とは、特許法第29条第1項第1号に規定する「特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明」及び同条同項第2号に規定する「特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明」のことを意味するものと解せるから、以下、「公然知られた発明」又は「公知技術」、「公然実施をされた発明」又は「公用技術」、更には2つの発明を総称して、「公知公用技術」ともいうこととする。 ア 作成日等について 最初に、甲第6号証の記載(上記(5-1)ア)から作成日について検討する。 「作成」の欄の「06.06.02」については、「図番」の欄の番号「060602」と酷似しており、図番と同様の意味をもつ数字の列であって、単なる作成に関係する記号であると推測される。しかしながら、「作成」の欄にピリオドを用いて3つの数字を並べるものは、通常、作成日として理解すべきものであり、「06.06.02」は、左端の「06」又は右端の「02」のいずれかを、西暦の「2006」又は「2002」と記載することから考慮して、甲第6号証の作成日は2006年6月2日若しくは2002年6月6日である。 一方、請求人は、口頭審理陳述要領書において、「図面には、「作成 SI 06.06.02」と記載してあるが、実際は平成8年4月に請求人の従業員の稲井宗太郎により作成されたものである。(本図作成時に06.06.02に作成した図面の図枠をコピーして日付欄の修正を忘れたものである)」(同要領書15ページ16行ないし19行[上記第3 2-5(3)オ])としていたが、結局、平成26年10月16日付け上申書において、「したがって、甲第6号証は請求人の近江度量衡株式会社により2006年6月2日に作成されたものである。」(上申書12ページ下から5行ないし下から3行[上記第3 2-6(3)])としている。したがって、甲第6号証の作成日は、「2006年6月2日」であり、本件特許の出願後である。 次に、甲第7号証ないし甲第10号証について検討する。 甲第10号証の記載から「JA松本ハイランド すいか集出荷施設建設工事(機械プラント工事)」は、平成10年3月30日に完成及び引渡とされており、甲第8号証においても、「9.工期」「平成10年3月30日完了」と記載されている。そして、甲第7号証及び甲第9号証の記載から、前記完成及び引渡後の年月日である「平成10年6月19日」が、「JA松本ハイランドすいか集出荷施設」の竣工式であることが確認できる。また、甲第8号証は、「代表理事組合長」の挨拶文の記載からみて、竣工式当日に配布されたパンフレットであることが理解できる。したがって、甲第8号証の作成日を確定することはできないが、本件特許の出願前に作成されたパンフレットであることは明らかであるし、配布数については不明であるものの、パンフレットの作成趣旨から考慮して、竣工式への参加者を含め関係者に多数配布されたものと認める。 イ 平成26年10月16日付け上申書並びに資料4ないし資料23について (ア) 審理事項通知書における指摘に対し、請求人は、上申書並びに資料4ないし23を提出して、甲第6号証ないし甲第10号証の何れの記載から満杯に関する公知公用技術が導出されるかについて説明している。 甲第6号証については、審判請求書45ページ15行ないし19行における、「文字認識装置は、その印字、印刷された等階級文字を読み取り、所定のプールコンベアへ仕分けされる。所定のプールコンベアが、満杯であればリターンラインへ搬送される。リターンラインへ戻された製品段ボールは再度、文字認識装置によって読み取られ、所定のプールコンベアに搬送される。」、及び請求人が提出した口頭審理陳述要領書の16ページ8行ないし12行における「文字認識装置は、その印字、印刷された等階級文字を読み取り、所定のプールコンベアに仕分けされる。所定の仕分けコンベアが、満杯であればリターンラインへ搬送される。リターンラインへ戻された箱詰めされたスイカは再度、文字認識装置によって読み取られ、所定のプールコンベアに搬送される。」ことが、甲第6号証のどの記載から、どのように導出されるものであるかについてであり、甲第8号証については、請求人が提出した口頭審理陳述要領書の18ページ12行ないし16行において、「(e)プールコンベア上に製品箱が満杯か否かを検知する赤外線センサー (f)プールコンベアが満杯のときには製品箱を製品箱搬送コンベアからプールコンベアに排出せず、製品箱搬送コンベア上で製品箱文字認識装置の上流に製品箱を戻すように搬送する製品ループコンベア」が、甲第8号証のどの記載から、どのように導出されるものであるかについてである(この点、口頭審理においても指摘したが、具体的な回答がないために、口頭審理後の上申書提出となった。)。 同上申書における請求人の主張は、甲第6号証については、資料4及び資料5を新たに提出し、甲第8号証については、資料6ないし資料23を新たに提出して満杯に関する技術的事項を補足説明するものであり、当該主張は、上記導出されることについての説明ではなく、甲第6号証及び甲第8号証に記載のない技術的事項について、資料4ないし資料23を用いて公知公用技術を完成させるに等しいことである。 そうすると、当該主張が、資料4ないし資料23と称するとおり、たとえ参考資料であるとしても、その参考資料を立証資料として新たな「特許を無効にする根拠となる事実」を主張するものであれば、それは審判請求書の要旨変更となるものである。 したがって、資料4ないし資料23については、証拠としてではなく参考資料として参照することとする。 (イ) 請求人は、平成26年10月16日付け上申書の<甲第6号証の作成年月日等>の欄において、「平成10年3月30日に当社が、同組合に引き渡して以来、改造、追加等は行われておらず、施工当時のままのシステムであることの証明を平成26年10月14日付けで、松本ハイランド農業協同組合の組合長から受けている。」(上申書13ページ8行ないし11行)と主張し、資料5には、「・・・施工当時のままのシステムであることを証明します。」と記載されている。しかしながら、資料5に記載された「代表理事 組合長 伊藤 茂」は、竣工式当時のパンフレットである甲第8号証の2枚目における「代表理事組合長 田中 秀一」及び施設建設契約書である甲第10号証の4枚目における「代表理事組合長田中秀一」とは異なる人物である。さらに、システムの変更がないことを証明する者、すなわち甲第6号証に関する各機器の配置構成のみならず制御内容をも理解して変更のないことを証明する者として、一般的に技術担当者でない又は技術担当者であることが確認できない代表理事組合長による証明では、システムが施工当時のままであるとの事実を認めるまでには至らない。 以上によれば、システムが施工当時のままであることについては、確認できないし、そもそも、システムが施工当時のままであるとしても、それをもって直ちに甲第6号証も施工当時から変更がないとまでいうことはできない。 (ウ) 資料4については、請求人が提出した上申書における「6.添付書類の目録」(20ページ)において、1998年2月10日作成の図面としている。確かに、資料4は全体として5枚となっており、その4枚目の下の欄に「98.02.10」と記載されている。しかしながら、1枚目ないし3枚目及び5枚目には、作成日の記入は無く、さらに1枚目の右側(紙面上では下方位置)における「図名」の欄には、「1F配置図(#88)」と記載され、2枚目の右側(紙面上では下方位置)における「図名」の欄には、「2F配置図(#88)」と記載され、3枚目の右側(紙面上では下方位置)における「図名」の欄には、「機器一覧表(#88-1)」と記載され、5枚目の右側(紙面上では下方位置)における「図名」の欄には、「機器一覧表(#88-3)」と記載されており、作成日の記入の無いものは図名に「#88」という記載を用いることで同一の資料であることが推測される。一方、作成日が記載された4枚目の右側(紙面上では下方位置)における「図名」の欄には、「機器一覧表(#85-2)」と記載されている。そうすると、資料4の4枚目における上記作成日が、同資料の1枚目ないし3枚目及び5枚目における作成日でもあるとすることの確証は得られないから、資料4の特に1枚目ないし3枚目及び5枚目の作成日は不明である。また、唯一作成日の確認できる資料4の4枚目を参照しても、甲第6号証との関係は不明である。したがって、本件特許の出願後が作成日である甲第6号証についての参考資料として、資料4に考慮すべきことはない。 なお、仮に、資料4の1枚目ないし5枚目が一体の資料であるとしても、それらの記載内容は、甲第6号証と同等の技術的事項を開示するものであるから、資料4は、新たな立証資料といえるものであり、審判請求書の要旨を変更するものである。 ウ 甲第6号証ないし甲第10号証の記載事項について 請求人は、「d.甲2発明に甲第6号証?甲第10号証による公知公用の技術を適用する ・・・ 甲第6号証?甲第10号証によって示されているように、すいか集出荷施設において、プールコンベア(仕分ライン)が満杯の場合には、すいかを収納した製品箱をプールコンベア(仕分ライン)に排出せずに文字認識装置によりも上流のコンベアにオーバーフローとして戻す製品ループコンベアが公知公用されているといえる。」(平成26年10月16日付け上申書6ページ下から8行ないし末行。上記第3 2 2-6(1)d.)と主張しているので、以下、甲第6号証ないし甲第10号証の記載事項について検討する。 上記アで検討したとおり、甲第6号証は、本件特許の出願後に作成されたものであり、公知公用技術を立証するためのものとして採用できない。そうすると、請求人主張の公知公用技術については、説明が完遂していない。 しかしながら、甲第8号証の3枚目「スイカ選果のシステムフロー」における中央の図と、甲第6号証の一枚目の配置図とは、両図から看取されるコンベア等の配置構成が類似しており、更に甲第8号証は、上記したとおり、作成日を確定することはできないが、本件特許の出願前に作成されたパンフレットであることは明らかであるし、本件特許の出願前である竣工式当日に配布されたものと認められるから、以下、甲第8号証に基づき、公知公用技術について検討する。 (ア) 甲第8号証の記載事項 3枚目の中央の図には、赤○9「製品箱文字認識装置」、赤○10「製品搬送コンベア」、及び赤○11「ロボットパレタイザ」の位置が示されているが、特に、仕分に係る赤○9「製品箱文字認識装置」がどのコンベアのどの位置に設置されているかについては不明であるし、その「製品箱文字認識装置」がどのような制御に用いるものであるかについての記載はない。また、コンベア等の配置については、図から看取できる部分はあるものの、分岐箇所における流れがどのようであるかについては不明である。また、図面右下の多数の矢印を用いたフローに記載されずに、中央図に付与されている赤○13「製品ループコンベア」は、弧状に曲がったコンベアの写真とともに記載されているが、中央の図におけるどの箇所の曲がり箇所に該当するものであるかについては不明であるし、中央図の赤○9の下方にはループしているコンベアが看取できるため、このコンベアと関係するものとも推測され、いずれにしても流れ態様については不明である。 そうすると、請求人が主張する「プールコンベア(仕分ライン)が満杯の場合には、すいかを収納した製品箱をプールコンベア(仕分ライン)に排出せずに文字認識装置によりも上流のコンベアにオーバーフローとして戻す製品ループコンベア」という技術は、甲第8号証に記載されているとまで認定することができない。 請求人は、甲第8号証について、平成26年10月16日付け上申書において、資料6ないし資料23を用いて補足説明をしているが(14ページ8行ないし19ページ末行)、これらの資料は、甲第8号証に記載のない事項を、新たな証拠を用いて公知公用技術を証明するものといえるから、当審決において考慮すべき事項はない。 ・資料6ないし資料23に対する付言 なお、仮に、資料6ないし資料23が、考慮すべきものであるとしても、竣工式当日に配布された甲第8号証との関係が不明である。 特に、制御仕様等に関する資料8ないし資料23については、「オークラ輸送機株式会社」により作成された資料であると認められるが、この会社は、甲第8号証の4枚目における「10.工事施工」として記載された、「○選果機械 近江度量衡 株式会社」、「○建築工事 北信土建 株式会社」、「○電気工事 株式会社 トーエネック」及び「○敷地造成工事 株式会社 フカサワイール」と異なる会社であるから、甲第8号証との関係が不明である。また、仮に、資料6ないし資料23に記載された制御仕様等が、竣工式前又は本件特許出願前に作成されたものであるとしても、それが装置に実際に採用されていたことの確認はできない。特に、施設を一見しただけでは、施設における制御内容を直ちに知ることはできないし、請求人が、平成26年9月8日付け口頭審理陳述要領書において、「6月19日に竣工式を行って(甲第7号証)、報道関係者を含む関係者に広く公開し、遅くとも同年7月には稼働を開始した。同施設は第三者にも公開されている(公然実施)。」(13ページ14行ないし16行)と記載するように、甲第8号証が配布された竣工式当日における稼働状態及び制御内容については不明であるから、満杯に関するリターンコンベアを含めた公知公用技術についての説明は不十分であるといわざるを得ない。 (イ) 甲第6号証に対する付言 上記したとおり、甲第6号証は、作成日が本件特許の出願後であるものの、仮に、作成日が本件特許出願前であるとしても、次のとおり、上記公知公用技術についての記載はない。 甲第6号証の3枚目には、「E」「27」「インダクションコンベア」「文字認識装置付」及び「E」「72」「インダクションコンベア」「文字認識装置付」と記載され、「E」「19b」「スキュードコンベア」「リターンライン」、と同様に「備考欄」に「リターンライン」と記載されるものが、「E」「30」ないし「E」「34」、「E」「60」、及び「E」「76a」ないし「E」「79」である。 しかしながら、請求人が、「各プールコンベアにはコンベアが満杯か否かを検出するための満杯検知センサー(光電スイッチ)(構成(e))(資料4及び甲第6号証において不図示)が設置されている。」(上申書13ページ下から6行ないし4行)と「不図示」であると説明するように、甲第6号証には満杯検知センサー(光電スイッチ)の記載はないから、そのセンサーによる制御についても当然に記載はない。そうすると、請求人が主張する「プールコンベア(仕分ライン)が満杯の場合には、すいかを収納した製品箱をプールコンベア(仕分ライン)に排出せずに文字認識装置によりも上流のコンベアにオーバーフローとして戻す製品ループコンベア」という技術は、甲第6号証に記載されているとまで認定することができない。 (5-3)公知公用技術について 以上によれば、請求人主張の「すいか集出荷施設において、プールコンベア(仕分ライン)が満杯の場合には、すいかを収納した製品箱をプールコンベア(仕分ライン)に排出せずに文字認識装置によりも上流のコンベアにオーバーフローとして戻す製品ループコンベア」は、公知公用技術とはいえない。 しかしながら、甲第8号証には、すいか集出荷施設配置図の各箇所における機器の写真が記載されており、当該施設が実際に構築されていたことの推測は成り立つし、甲第9号証の日本農業新聞においても甲第8号証と同様のすいか集出荷施設配置図が記載されていることから、当該配置図に係るすいか集出荷施設については、竣工式の出席者に加え、報道関係者にも知り得る状態であり、「公然知られた発明」又は「公然実施をされた発明」について、甲第8号証及び甲第9号証の記載から認定できる発明について検討することは可能である。 そして、請求人主張の上記公知公用技術に対応して、甲第8号証及び甲第9号証の記載を整理すると、以下のとおりの公知公用技術が認定できる(以下、「参考技術」という。)。 「すいかを収納した製品箱の文字を文字認識装置により読み取り、製品搬送コンベアにより搬送及び仕分けを行う、すいか集出荷施設。」 (6)甲第11号証 甲第11号証の特に第1図の記載によれば、「L」、「2L」、「3S」及び「3L」と仕分けた後にそれぞれ、「秀」、「優」及び「良」と仕分けるという2段階の仕分が開示されていることが理解できる。 2 無効理由1(特許法第29条第1項第3号) (1)本件特許発明1 (1-1)対比 (ア) 本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、甲2発明における「搬送手段」は、本件特許発明1における「搬送手段」に相当し、以下同様に、「受皿」は「受皿」に、「青果物」は[農産物]に、「農産物供給位置から自動箱詰装置11に渡って青果物を載せた受皿を搬送する搬送手段」は「農産物供給位置から農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段」に、「受皿上の青果物を選別するための所定の計測項目を計測するために搬送手段の途中に設定された読取計測手段3」は「受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域」に、「仕分クラス」は「仕分け情報」に、「読取計測手段3で計測され判定された仕分クラス」は「計測軌道上で計測され判定された仕分け情報」に、「各受皿に、その上に載せられている青果物の仕分クラスをバーコード介して読み出し可能に記録し」は「各受皿に、その上に載せられている農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し」に、「仕分読取装置50」は「読出し手段」に、「アキュームレート可能なコンベアで構成される箱詰プール装置10」及び「箱詰プール装置10」は「仕分ライン」に、「前記仕分排出領域の上流に設けた仕分読取装置50により受皿の青果物仕分クラスを読み出して該当する箱詰プール装置10に受皿を排出する青果物の選別装置」は「前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置」に、それぞれ相当する。 (イ) 甲2発明における「読取計測手段3で計測され判定された仕分クラスに基づいて個々の受皿上の青果物を排出するように仕分クラスの数よりも所定数少ない数の排出装置60にそれぞれ対応して設けられたアキュームレート可能なコンベアで構成される箱詰プール装置10が接続されている搬送手段下流側の仕分排出領域を設定し」は、 本件特許発明1における「該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し」に、「計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように仕分ラインが分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し」という限りにおいて相当する。 (ウ) したがって、本件特許発明と甲2発明とは、 「搬送手段に連結されていない受皿と、農産物供給位置から農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え、この搬送手段には、この受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域、及び該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように仕分ラインが分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し、前記各受皿に、その上に載せられている農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し、前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置。」で一致し、以下の点で相違する。 (エ) 「計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように仕分ラインが分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し」に関して、 本件特許発明1においては、「該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し」、「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に、このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたこと」に対し、 甲2発明においては、「読取計測手段3で計測され判定された仕分クラスに基づいて個々の受皿上の青果物を排出するように仕分クラスの数よりも所定数少ない数の排出装置60にそれぞれ対応して設けられたアキュームレート可能なコンベアで構成される箱詰プール装置10が接続されている搬送手段下流側の仕分排出領域を設定し」、「前記仕分排出領域から、仕分クラスの排出位置が指定されている受皿は箱詰プール装置10に仕分け、仕分クラスの排出位置が指定されてない受皿はプールコンベア82にプールしておき、仕分クラスの排出位置を切り換えるときに仕分読取装置50の前段へ受皿を還元するリターン手段とからなる」点(以下、「相違点」という。)。 (1-2)判断 上記相違点について検討する。 本件特許発明1の発明特定事項である「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベア」に関して、本件特許の設定登録後の明細書(以下、「本件明細書」という。)を参照すると、「仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されずに受皿がオーバーフローするのは、仕分区分別に設定されている仕分ラインのうちのいずれかが満杯でそれ以上の受皿を受け入れられない状態にある場合、排出装置の動作不良、故障などの場合があり、排出装置の一時的な動作不良の場合にはオーバーフローした受皿は自動的に再度仕分け工程に戻されるので、処理上の不都合は殆ど生じない。」(段落【0025】)及び「仕分排出軌道領域で仕分ラインが満杯で受皿が排出されずにオーバーフローする場合、あるいは排出装置の動作不良、故障などの場合に、オーバーフローした受皿は自動的に再度仕分け工程に戻されるので、従来の選別コンベアの終端部にプール部を設けて手作業で包装していた不具合を解消できる。」(段落【0060】)と記載されており、本件特許発明1における、「オーバーフロー」とは、仕分ラインなる仕分箇所が設定されているにも拘わらず、仕分箇所が満杯の場合、仕分箇所へ排出する手段の動作不良、故障などの場合により、その仕分箇所に受皿が排出されないことであり、該「オーバーフロー」した受皿は「リターンコンベア」により再度仕分け工程に戻されるものである。 これに対し、甲2発明は、甲第2号証における【産業上の利用分野】に記載されているとおり、「選別後の青果物を仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラスを切換えて排出する青果物の選別装置」(上記1(1-1)イの段落【0001】)であることを前提技術とし、さらに【発明が解決しようとする課題】の欄において、箱詰めするための手段を仕分クラスと同数配置することに起因する問題を改善することについて記載されているから(上記1(1-1)イの段落【0003】及び【0004】)、上記前提技術は課題を解決するための手段でもある。そして、相違点に係る甲2発明の上記事項は、上記前提技術及び課題解決手段を具体化したものであり、甲2発明における「プールコンベア82」及び該コンベアの下流側に配置される「リターン手段」は、「受皿」を「仕分クラスの数よりも所定数少ない数の」「箱詰プール装置10」に仕分けた後に、「仕分クラスの排出位置を切り換え」て、残りの仕分クラスの仕分けに供するためにプールしておいた「受皿」をリターンするものであり、本件特許発明1のように、いずれかの「排出装置60」及び「箱詰プール装置10」に排出位置指定があるにも拘わらず、満杯などの原因により「受皿」が排出されないというものではない。 請求人は、農産物の選別装置における技術分野において、排出装置の排出タイミングの一時的なずれ等のトラブルやプールコンベア上に青果物入り受皿が満杯で排出できない等の事態が、当業者の常識として、すなわち自明な事項(技術常識)であり、未選別のまま搬送コンベアの最終部に排出された青果物を手作業で搬送コンベア上の受皿に再供給しなければならず、そのために労力を要する等の課題(周知な課題)も、当業者であれば自明な事項であると主張しているが(口頭審理陳述要領書2ページ末行ないし3ページ15行[上記第3 2-5(1)])、上記したとおり、甲2発明の「プールコンベア82」は、「仕分クラスの排出位置を切り換え」て仕分けするといった、次回工程の仕分けに必要な「青果物」を載せた「受皿」をプールするものであり、「仕分クラスの数よりも所定数少ない数の」「排出装置60」及び「箱詰プール装置10」への排出位置指定とともに、残りの「仕分クラス」についても「プールコンベア82」へ排出位置指定を行うものといえるから、残りの仕分クラスの仕分けには関係のない、「所定数少ない数の仕分クラス」においてオーバーフローした受皿をプールする「プールコンベア82」として、甲第2号証の記載を理解することはできないし、該「プールコンベア82」の下流に配置される「リターン手段」についてもオーバーフローした受皿を還元するものとして、甲第2号証が記載されているとはいえない。 特に、本件特許発明1は、本件明細書を参照すると、「【発明の効果】以上述べたように、本願の各発明によれば、フリートレイというコンベアに非連結の受皿の特徴を生かして、仕分排出軌道の領域を通過してしまった受皿をリターンコンベアで上流側に戻すようにすることで、各仕分ラインに貯溜する受皿の数を大きく設定する必要性を軽減でき、したがって装置全体を小型にできるという利益が得られる」(段落【0060】)とされており、各仕分ラインに貯溜させないことで全体の小型化を図るものである。これに対し、本件特許発明1の「仕分ライン」に対応する甲2発明の「箱詰プール装置10」は、甲第2号証において、「10は前記排出装置60にそれぞれ対応して設けられた箱詰プール装置であり、排出装置60から排出された青果物F入り受皿2をそれぞれ等級別にプールする如くアキュームレート可能なコンベアで構成する。」(段落【0033】)と記載されているとおり、受皿を貯溜するものであるし、当該 「箱詰プール装置10」及び「プールコンベア82」より上流側に位置する「第1プールコンベア103」については、「この第1プールコンベア103は、青果物Fの分布率の違いにより仕分コンベア101から集中的に仕分けられて供給過剰になったときにこの余剰分をプールしておくと共に、この余剰分をまばらに仕分けられたときに次工程に送り出して次工程に送り出す量を一定にする如く構成する。」(下線は当審にて付与。段落【0012】)ものであることから、「箱詰プール装置10」及び「プールコンベア82」における仕分けは、「箱詰プール装置10」及び「プールコンベア82」に貯溜可能な範囲の量を前提とした、すなわち仕分け全体として一定量に調整された状態での仕分けであるから、オーバーフローという概念は存在し得ない。 以上によれば、上記相違点は実質的に相違するものである。 したがって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明ではない。 (2)本件特許発明2、5及び6 (2-1)対比・判断 本件特許発明2、5及び6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備え、本件特許発明1に他の限定を付加したものである。 そうすると、上記(1)で検討したとおり、本件特許発明2、5及び6と甲2発明とは、少なくとも上記相違点で相違する。 したがって、本件特許発明2、5及び6は、甲第2号証に記載された発明ではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件特許発明1、2、5及び6と甲2発明とは、少なくとも上記相違点で相違する。 したがって、本件特許発明1、2、5及び6は、甲第2号証に記載された発明ではない。 よって、無効理由1によっては、本件特許発明1、2、5及び6についての特許を無効とすることはできない。 3 無効理由2(特許法第29条第2項) (1)本件特許発明1 (1-1)対比 上記2(1)で検討したとおり、本件特許発明1と甲2発明とは、上記相違点で相違する。 (1-2)判断 上記相違点について検討する。 ア 甲2発明及び甲3発明の組合せ 甲3発明は上記したとおり、「仕分コンベヤによって搬送される仕分物品を仕分シュートに仕分ける複数の仕分システムの仕分シュートが合流する合流シュート」の技術分野に属するものであり、仕分コンベヤに連結されたトレーは、仕分シュートまで移動すると自動的に傾き積載している仕分物品をシュートに送り込み(上記1(2-1)イの段落【0009】)、送り込まれた仕分物品はシュートを滑り降りるものである(上記1(2-1)イの段落【0011】ないし【0013】)。一方、甲2発明は、搬送手段と受皿は連結されておらず、青果物は受皿に搭載されたまま仕分排出されるものであり、「球塊状の青果物Fでも動くことなく安定して載せられるようになっている」(上記1(1-1)ウの段落【0015】)受皿に搭載された青果物の仕分けと、甲3発明のように、トレーが傾いて送り込まれた仕分物品が、シュートを滑り降りて仕分けとは、仕分物品及び仕分態様といった前提となる技術が明らかに異なる。 甲3発明は、「満杯検知センサーが滞留仕分物品を検知したとき、その後の、仕分コンベヤからの仕分物品の投入を停止し、物品の投入を停止」し、「投入を停止」された「物品」は、「投入停止が解除されるまで、投入を停止させられた仕分物品を積載したまま循環移動」するものであるのに対し、甲2発明は、上記2(1-2)でも述べたとおり、「選別後の青果物を仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラスを切換えて排出する青果物の選別装置」を前提技術及び課題解決手段とし、その具体化手段は、相違点に係る甲2発明の上記事項であるから、甲2発明と甲3発明とは、仕分けに係る目的、作用、機能及び構造についてもそれぞれ異なるものであって、甲2発明に甲3発明を組合せることの動機付けはない。 また、甲2発明の「リターン手段」の上流側に配置される「プールコンベア82」は、「仕分クラスの排出位置を切り換え」て仕分けするといった、次回工程の仕分けに必要な「青果物」を載せた「受皿」をプールするものであり、「仕分クラスの数よりも所定数少ない数の」「排出装置60」及び「箱詰プール装置10」への排出位置指定とともに、残りの「仕分クラス」についても「プールコンベア82」への排出位置指定を行うものといえるから、該「プールコンベア82」及び「リターン手段」において、残りの仕分クラスの仕分けには関係のない技術的事項、例えば、甲3発明の「満杯検知センサーが滞留仕分物品を検知したとき」の「投入を停止」された「物品」を導入すべく構成することは、その適用に阻害があるというべきである。 なお、仮に、甲3発明のように仕分けラインの満杯等に対応した技術を甲2発明に適用することの推測が成り立つとしても、「仕分クラスの数よりも所定数少ない数の」仕分けにおいて満杯等が生じた場合には、今回工程でそれを処理するべく対応することが当業者における当然の発意であり、今回の仕分けクラスとは異なる「残りの仕分クラス」の仕分けといった次回工程の仕分けに、今回の仕分けで生じたオーバーフロー等の仕分物品を持ち越して処理すべく、「プールコンベア82」及び「リターン手段」を変更することの着想はない。 以上によれば、甲2発明及び甲3発明に基づき、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項に想到することはできない。 イ 甲2発明及び甲3発明並びに上記参考技術の組合せ 前記したとおり、甲2発明及び甲3発明に基づき、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項に想到することはできない。 また、上記参考技術は、「すいかを収納した製品箱の文字を文字認識装置により読み取」る施設であり、甲2発明の「各受皿に、その上に載せられている青果物の仕分クラスをバーコード介して読み出し可能に記録し、前記仕分排出領域の上流に設けた仕分読取装置50により受皿の青果物仕分クラスを読み出」す装置とは、前提となる技術が異なる。 したがって、甲2発明及び甲3発明並びに上記参考技術に基づき、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項に想到することはできない。 ウ 平成26年10月16日付け上申書における請求人の主張 請求人は、上申書において、「なお、甲2号証に係る出願の審査過程での拒絶理由通知で引用された文献である特開64-80479号公報(資料3)の第3頁左下欄に記載されているように、取出口の取出しミスの果実を選別コンベアの移送上手側へ還元移送すること、すなわち、オーバーフローした果実をリターンコンベアで上流側に搬送するという技術は、甲第2号証の出願当時における当業者の技術水準にあったものである。よって、このことからも、甲2発明に、甲第3号証に記載されたオーバーフローに係る技術事項や甲第6号証?甲第10号証による公知公用の技術を適用することに何ら阻害要因はない。」(6ページ5ないし12行)と主張しているが、資料3は、農産物を載せた受皿を搬送する装置ではないし、「リタンコンベア36」については、果実の直径等を検出する「センサ2」の下流ではなく上流に還元移送するものであるから、当該技術を参照しても、上記相違点の判断に影響を及ぼすものではない。 エ その他 また、本件特許発明2、3、5及び6について請求人が主張する甲4発明及び甲5発明は、仕分けライン(コンベア)が過負荷供給(満杯)のときに、空きライン(コンベア)に仕分けを変更する旨の技術であるから、甲4発明及び甲5発明を参照しても、甲2発明及び甲3発明並びに上記参考技術とともに、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項に想到することはできない。 オ 作用効果等について 本件特許発明1は、発明が解決しようとする課題と表裏一体の次の効果を奏する。 「【0060】【発明の効果】・・・フリートレイというコンベアに非連結の受皿の特徴を生かして、仕分排出軌道の領域を通過してしまった受皿をリターンコンベアで上流側に戻すようにすることで、各仕分ラインに貯溜する受皿の数を大きく設定する必要性を軽減でき、したがって装置全体を小型にできるという利益が得られると共に、仕分排出軌道領域で仕分ラインが満杯で受皿が排出されずにオーバーフローする場合、あるいは排出装置の動作不良、故障などの場合に、オーバーフローした受皿は自動的に再度仕分け工程に戻されるので、従来の選別コンベアの終端部にプール部を設けて手作業で包装していた不具合を解消できる。」(本件明細書の段落【0060】) また、本件特許発明1における「このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を、前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間とした」という発明特定事項については、「【0023】また上記発明の構成において、仕分排出軌道領域で排出されずにオーバーフローし、リターンコンベアで上流側に戻されたフリートレイを選別コンベアに送り込む位置を、上記計測軌道領域の終端と仕分け情報読出し手段の間としたことは、この発明の重要な特徴の一つである。すなわち、等級(色,傷,糖度,熟度等),階級(大きさ,重量等)の必要な要素を計測し、農産物の仕分区分を判定する計測工程にあっては、荷口別(農家別)に対価を積算集計するので異なる荷口の農産物が混在する可能性は極力避ける必要がある。他方、仕分け排出や包装の工程では、仕分区分別に揃った農産物がまとめられていることが重要であって、個々の農産物がどの荷口に属するものなのかは基本的に問題とならない。したがって、農産物の仕分排出を行うことに支障がなく、同時に代価の積算集計に支障のない位置に、オーバーフローした農産物を戻すことが本発明において必須とされるのである。」(下線は当審にて付与。本件明細書の段落【0023】)という技術的意義を有し、同様の作用効果を奏するものである。 カ 本件特許発明1の判断についてのまとめ 以上のとおり、請求人の主張する理由及び提出した証拠等によっては、本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。 (2)本件特許発明2、3、5及び6 (2-1)対比・判断 本件特許発明2、3、5及び6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備え、本件特許発明1に他の限定を付加したものである。 そうすると、上記(1-1)で検討したとおり、本件特許発明2、3、5及び6と甲2発明とは、少なくとも上記相違点で相違する。 そして、上記相違点が甲2発明ないし甲5発明並びに上記参考技術に基づき、当業者が容易に想到し得ないことは上記述べたとおりである。 したがって、請求人の主張する理由及び提出した証拠等によっては、本件特許発明2、3、5及び6についての特許を無効とすることはできない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1、2、3、5及び6は、甲2発明ないし甲5発明並びに上記参考技術に基づき、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、無効理由2によっては、本件特許発明1、2、5及び6についての特許を無効とすることはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1、2、3、5及び6についての特許を無効とすることはできない。 また、他に本件特許発明1、2、3、5及び6についての特許を無効とすべき理由を発見しない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-02-05 |
結審通知日 | 2015-02-10 |
審決日 | 2015-02-25 |
出願番号 | 特願平10-302617 |
審決分類 |
P
1
123・
113-
Y
(B07C)
P 1 123・ 112- Y (B07C) P 1 123・ 121- Y (B07C) P 1 123・ 111- Y (B07C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 千壽 哲郎 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
槙原 進 藤原 直欣 |
登録日 | 2005-07-22 |
登録番号 | 特許第3702110号(P3702110) |
発明の名称 | 農産物の選別装置 |
代理人 | 白石 光男 |
代理人 | 磯田 志郎 |
代理人 | 安國 忠彦 |
代理人 | 永島 孝明 |
代理人 | 久米川 正光 |
代理人 | 楠本 高義 |
代理人 | 浅野 哲平 |
代理人 | 竹本 松司 |
代理人 | 若山 俊輔 |
代理人 | 一宮 誠 |