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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B65G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B65G |
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管理番号 | 1316907 |
審判番号 | 不服2015-15365 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-18 |
確定日 | 2016-08-02 |
事件の表示 | 特願2011- 55442「粉体定量供給方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-188282、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成23年3月14日の出願であって、平成26年8月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成26年10月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年5月12日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して平成27年8月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成28年1月7日に上申書が提出され、その後、当審において平成28年3月3日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して平成28年4月28日に意見書が提出されるとともに同日に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本件出願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成28年4月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。 「 【請求項1】 上部に受入口を有すると共に、底部にホッパ排出口を有し、粉体を貯蔵する貯蔵容器と、 前記ホッパ排出口に設置され、前記貯蔵容器に貯蔵された粉体を送り出す容積型のフィーダと、 前記貯蔵容器の下部に送気し、前記貯蔵容器に貯蔵された粉体に気体を吹き込むエアレーション装置と、を備えた粉体定量供給装置において、 前記貯蔵容器の内部の状態として、前記貯蔵容器に前記粉体が圧送されていない定常状態であるか、前記貯蔵容器に前記粉体が圧送されているサージ状態であるかを検知し、前記貯蔵容器が前記サージ状態であるときには、前記貯蔵容器が前記定常状態であるときよりも、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを減らすように前記エアレーション装置を制御することで、前記貯蔵容器の下部における粉体の嵩密度の変動を低減し、当該粉体を前記容積型のフィーダにより送り出すことを特徴とする粉体定量供給方法。 【請求項2】 前記エアレーション装置の制御により、前記粉体の供給量の変動が所定値以下となった後に、前記粉体の供給量が目標値と一致するように、前記容積型のフィーダを制御して、前記容積型のフィーダからの前記粉体の供給量を調節することを特徴とする請求項1記載の粉体定量供給方法。 【請求項3】 前記粉体はセメントである、請求項1又は2記載の粉体定量供給方法。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 (1)平成26年8月5日付けで通知した拒絶理由 平成26年8月5日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。 「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-4について 引用文献1(【0016】,【0021】,【0023】、図1,4等)には、タンク2と、スクリュー式輸送管6と、気体噴射手段18及び気体供給装置10と、を備える粉体輸送装置において、粉面計8により計測したタンク2内の粉体量に基づいて、気体供給装置10が供給する高圧ガスの流量及び圧力を可変に制御することが記載されている。 ここで、高圧ガスの流量及び圧力を可変にする際、タンク内の粉体量が多い場合に、増やす方向に制御することは自明である。 ・請求項1-2について 引用文献2(第3ページ左下欄第5-9行、図1等)には、貯留ホッパ1と、ロータリフィーダ2と、エアレーション装置とを備える粉体定量供給装置において、貯留ホッパ1内の圧力に基づいて、エアレーション空気用弁22を絞ることが記載されている。 ・請求項1,7について 引用文献3(第2ページ左下欄第5行-第3ページ左上欄第6行、図1,6-8等)には、ホッパ1と、ロータリバルブと、圧縮空気供給管11とを備える粉体定量供給装置において、ホッパ内が正常な状態(定常状態)であるか、ブリッジが生じた状態(サージ状態)であるかを検知器14-17で検知し、ブリッジが生じた状態と判断されると、ノズル9-13から圧力流体を供給することが記載されている。 2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-9について、引用文献1-5 理由1に示すように、引用文献1-3に記載された各発明に基づいて、請求項1に係る発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 請求項2-4において特定される制御については、上記のとおり引用文献1に記載されている。 請求項5の貯蔵量がいずれの区分に属するかに基づいて制御する点について、変化量を応じた制御を、複数の区分毎に行うか、連続的に行うかは、所望の制御精度に応じて適宜選択すべきことである。 請求項6の貯蔵量を区分内に維持する点について、引用文献4(第2ページ左下欄第13-14行等)には、ホッパ3のレベルをH’L’の間に保つことが記載されている。 請求項7の貯蔵容器のサージ状態に基づいて制御する点について、引用文献3(第2ページ左下欄第5行-第3ページ左上欄第6行、図1,6-8等)には、ホッパ内が正常な状態(定常状態)であるか、ブリッジが生じた状態(サージ状態)であるかを検知器14-17で検知し、ブリッジが生じた状態と判断されると、ノズルから圧力流体を供給すること、また、引用文献5(【0022】等)には、中間タンク2の棚吊りやチャネリング(サージ状態)を検出すると、エアレーションガスの吹き込み量を低減することが記載されている。 請求項8において特定される制御については、上記のとおり引用文献5に記載されている。 請求項9において特定される点について、制御値が安定した後に、制御値を他の値に調節することは、自動制御において周知のことである。 引 用 文 献 等 一 覧 1:特開2005-075621号公報 2:特開昭62-175327号公報 3:特開昭59-004526号公報 4:特開昭49-128454号公報 5:特開2002-284348号公報」 (2)原査定 原査定の概要は、次のとおりである。 「この出願については、平成26年 8月 5日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 ●理由1(特許法第29条第1項第3号)について ・請求項 1 ・引用文献等 1 補正後の請求項1は、補正前の請求項1-3引用する請求項4に「前記前記エアレーション装置を制御することで、前記貯蔵容器の下部における紛体の嵩密度の変動を低減し」なる発明特定事項を付加したものであると認められる。 出願人は意見書において、 『相違点1-1) 本願発明1は容積型のフィーダを備えるのに対し、引用発明1は容積型ではないスクリュー式輸送管を備えている点。 相違点1-2) 本願発明1は、粉体の貯蔵量が増えるのに応じて、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを増やすようにエアレーション装置を制御することで、貯蔵容器の下部における粉体の嵩密度の変動を低減するのに対し、引用発明1はブリッジ防止を目的とするものであり、このような制御を行っていない点。』と主張している。 相違点1-1に関して、本願発明の容積型のフィーダとして、段落[0026]にはロータリフィーダのみが例示されているものの、スクリュー(あるいはネジ)式の供給装置は、通常、容積型に包含されるものである(必要であれば、出願人が段落[0005]において先行技術文献として提示する引用文献6の段落[0002]を参照されたい)。 相違点1-2に関して、確かに引用文献1には、「粉体の嵩密度の変動を低減する」との記載はなく、「引用発明1はブリッジ防止を目的とするものであ」る。 しかしながら、ブリッジは、上方に存在する粉体の重量が、下方に存在する粉体に作用し、粉体同士が過度に密着されて起きる現象であり、ブリッジが発生した領域では、粉体の嵩密度がその他の領域に比較して高密な状態であるといえる。 すると、ブリッジを防止するために気体を噴射することは、嵩密度が高密な状態となることを防止する、すなわち、嵩密度が高密に変動することを防止していると言い換えることができるから、上記の点は、表現上の差異にすぎない。 また、「粉体量が減少した際にこそ、ブリッジ防止効果の向上が望まれることを示唆しています。」との主張もあるが、ブリッジは、粉体量が減少して初めて発生するのではなく、粉体の上方の重量が大きい時点で発生し始め、粉体量が減少した後は、発生したブリッジが解消され難いものであるから、タンク内の粉体量が多い場合に、高圧ガスの流量及び圧力を増やす方向に制御することに矛盾はなく、自明なことである。 よって、意見書の各主張は採用することができない。 したがって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と差異がないから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。 ●理由2(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-3、5、6 ・引用文献等 1、2、4 補正後の請求項1における相違点1-1、1-2に関して、スクリュー式の供給装置が、仮に容積型に含まれないとしても、本願発明のロータリフィーダのような供給装置は、引用文献2にみられるように周知のものであって、引用文献1に記載されたスクリュー式輸送管と置き換えることに格別の困難性はない。 また、タンク内の粉体量が多い場合に、高圧ガスの流量及び圧力を増やす方向に制御することが、仮に自明でないとしても、当該制御を行うことは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 請求項2、3、5において特定される構成については、補正前の請求項5、6、9についての拒絶の理由をそれぞれ参照されたい。 請求項6の粉体の種類を限定する点については、供給装置の用途に応じて適宜選択し得ることであって、当該種類をセメントとすることに特段の困難性はない。 したがって、請求項1-3、5、6に係る発明は、引用文献1、2、4に記載された発明、及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 <拒絶の理由を発見しない請求項> 平成26年10月8日付け手続補正書による補正後の請求項(4)に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。 なお、請求項1-6には、「粉体」及び「紛体」の記載があり、用語が統一されていない。 <引用文献等一覧> 1.特開2005-075621号公報 2.特開昭62-175327号公報 3.特開昭59-004526号公報 4.特開昭49-128454号公報 5.特開2002-284348号公報 6.特開2002-046863号公報(周知技術を示す文献)(新たに引用された文献)」 2.原査定の理由の判断 本件審判請求後、平成28年4月28日に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、この手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、原査定の理由の対象となった原査定時の特許請求の範囲(平成26年10月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲)に記載された請求項1ないし3は削除された。 また、本件補正により、原査定の理由の対象となっていなかった請求項4は請求項1に繰り上げられ、原査定の理由の対象となった請求項5及び6は順に請求項2及び3に繰り上げられ、繰り上げられた請求項2及び3は、繰り上げられた請求項1を直接又は間接的に引用するものに限定された。 さらに、本件補正により繰り上げられた請求項1は、原査定時の請求項4に対して、「定常状態」を「前記貯蔵容器に前記粉体が圧送されていない定常状態」とし、「サージ状態」を「前記貯蔵容器に前記粉体が圧送されているサージ状態」とすることで、「定常状態」及び「サージ状態」がどのような状態であるのか明確になり、また、誤記であった「紛体」を「粉体」に訂正したものとされた。 そうすると、本件補正後の請求項1ないし3に記載された本願発明1ないし3は、原査定の理由の対象ではないものである。 よって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。 「<理由1> 本件出願の請求項1ないし3、5及び6に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない 記 (刊行物については刊行物一覧参照) ・本件発明1 ・刊行物1 ・備考 (1)本件出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特に、段落【0001】ないし【0011】、【0014】ないし【0024】、【0027】ないし【0034】及び【0037】ないし【0039】並びに図1ないし5)には、図1ないし3に主要部の構成が示された第1実施例を基本構成として参照しつつ、図4に示された第2実施例に着目して、本件発明1の表現に倣って整理すると、次の事項からなる発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。 「上部に受入口を有すると共に、下端(底部)に排出口(ホッパ排出口)を有し、粉体材F(粉体)を貯蔵するホッパースケール11(貯蔵容器)と、 前記排出口(ホッパ排出口)に設置され、前記ホッパースケール11(貯蔵容器)に貯蔵された粉体材F(粉体)を送り出すバッチ式切出装置15’(容積型のフィーダ)と、 前記ホッパースケール11(貯蔵容器)の下部に送気し、前記ホッパースケール11(貯蔵容器)に貯蔵された粉体材F(粉体)に圧縮空気(気体)を吹き込む空気圧縮装置16(エアレーション装置)と、を備えた粉体材の定量的な安定供給をする装置(定量供給装置)において、 前記粉体材F(粉体)を前記バッチ式切出装置15’(容積型のフィーダ)により送り出す粉体材の定量的な安定供給をする方法(粉体定量供給方法)。」(括弧内は、本件発明1の用語を示す。) (2)本件発明1と引用発明1とを対比すると、両者は以下の点で相違し、その余は一致する [相違点] 本件発明1においては、「貯蔵容器の内部の状態として、粉体の貯蔵量を計測し、粉体の貯蔵量が増えるのに応じて、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを増やすようにエアレーション装置を制御することで、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを増やすように制御しないで単一の条件でエアレーション装置を動作させた場合に比べて、プラス側及びマイナス側の変動幅が小さくなるように、貯蔵容器の下部における粉体の嵩密度の変動を低減し、当該粉体を容積型のフィーダにより送り出す」ものであるのに対して、引用発明1においては、「粉体材Fをバッチ式切出装置15’により送り出す」ものである点(以下、「相違点」という。)。 (3)上記相違点について検討する。 貯蔵容器内の粉体を定量供給するにあたり、貯蔵容器内の粉体の嵩密度の変動を防止することは、本件出願前に周知の課題(以下、「周知課題」という。必要であれば、特開昭57-10418号公報(特に、1ページ左下欄10ないし13行)、特開平1-147323号公報(特に、2ページ左上欄4ないし13行及び3ページ右上欄3ないし9行)及び特開昭63-281019号公報(特に、2ページ左上欄2ないし11行及び3ページ左下欄3ないし11行)を参照。)である。 また、貯蔵容器内の粉体の貯蔵量が増えると、嵩密度が高くなることは、本件出願前に技術常識(以下、「技術常識1」という。必要であれば、特開平1-147323号公報(特に、2ページ左上欄4ないし13行)、特開昭63-281019号公報(特に、2ページ左上欄2ないし11行)及び特開2001-224986号公報(特に、2ページ2欄9ないし10行)を参照。)である。 さらに、貯蔵容器内の粉体の嵩密度が、エアレーションにより変動することは、本件出願前に周知の事項(以下、「周知事項」という。必要であれば、特開2001-224986号公報(特に、2ページ2欄23ないし25行及び同欄38ないし45行)、特開昭63-274448号公報(特に、2ページ左上欄2ないし7行)及び刊行物2(特開2003-71269号公報:特に、段落【0017】)を参照。)である。 加えて、エアレーションの制御をするのに、送気量、作用圧及び作動時間の少なくとも一つを操作すれば制御できることは、本件出願前に技術常識(以下、「技術常識2」という。)である。 してみると、引用発明1において、周知課題に基づき、周知事項並びに技術常識1及び2を考慮することにより、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (4)そして、本件発明1は、全体としてみても、引用発明1、周知課題、周知事項並びに技術常識1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件発明1は、引用発明1、周知課題、周知事項並びに技術常識1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件発明1 ・刊行物2 ・備考 (1)本件出願前に日本国内において頒布された刊行物2(特に、段落【0017】及び図1)には、本件発明1の表現に倣って整理すると、次の事項からなる発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認めることができる。 「上部に受入口を有すると共に、底部に排出口(ホッパ排出口)を有し、原料粉(粉体)を貯蔵するホッパー21(貯蔵容器)と、 前記排出口(ホッパ排出口)に設置され、前記ホッパー21(貯蔵容器)に貯蔵された原料粉(粉体)を送り出すメジャーリングスクリューコンベヤ23(容積型のフィーダ)と、 前記ホッパー21(貯蔵容器)に送気し、前記ホッパー21(貯蔵容器)に貯蔵された原料粉(粉体)にエア(気体)を吹き込むえエアレーション装置と、を備えた原料粉を定量供給するフィード装置20(定量供給装置)において、 前記原料粉(粉体)を前記メジャーリングスクリューコンベヤ23(容積型のフィーダ)により送り出す原料粉を定量供給する方法(粉体定量供給方法)。」(括弧内は、本件発明1の用語を示す。) (2)本件発明1と引用発明2とを対比すると、両者は以下の点で相違し、その余は一致する。 [相違点1] 本件発明1においては、「エアレーション装置」が「貯蔵容器の下部に送気」するものであるのに対して、引用発明2においては、「エアレーション装置」が「ホッパー21に送気」するものである点(以下、「相違点1」という。)。 [相違点2] 本件発明1においては、「貯蔵容器の内部の状態として、粉体の貯蔵量を計測し、粉体の貯蔵量が増えるのに応じて、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを増やすようにエアレーション装置を制御することで、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを増やすように制御しないで単一の条件でエアレーション装置を動作させた場合に比べて、プラス側及びマイナス側の変動幅が小さくなるように、貯蔵容器の下部における粉体の嵩密度の変動を低減し、当該粉体を容積型のフィーダにより送り出す」ものであるのに対して、引用発明2においては、「原料粉をメジャーリングスクリューコンベヤ23により送り出す」ものである点(以下、「相違点2」という。)。 (3)上記相違点について検討する。 [相違点1について] 貯蔵容器に貯蔵された粉体に気体を吹き込むエアレーション装置において、貯蔵容器の下部に送気することは、本件出願前にごく普通に行われていること(以下、「慣用手段」という。必要であれば、特開2010-228911号公報(特に、段落【0003】及び図1)、特開2001-38716号公報(特に、段落【0029】並びに図1及び5)及び刊行物1(特開平11-301783号公報:特に、段落【0021】並びに図1及び5)を参照。)である。 してみると、引用発明2において、慣用手段を適用することにより、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点2について] 前述した、本件発明1と引用発明1とを対比した場合における(3)の相違点の検討を踏まえると、引用発明2において、周知課題に基づき、周知事項並びに技術常識1及び2を考慮することにより、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (4)そして、本件発明1は、全体としてみても、引用発明2、周知課題、周知事項、慣用手段及び技術常識から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件発明1は、引用発明2、周知課題、周知事項、慣用手段及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件発明2 ・刊行物1、2 ・備考 貯蔵量のレベルを複数の区分に設定して、貯蔵容器内の粉体の貯蔵量を検出することは、本件出願前に周知の技術(必要であれば、特開昭62-175327号公報(特に、3ページ左上欄8ないし14行並びに第1及び4a図)及び特開昭59-4526号公報(特に、2ページ左下欄5行ないし同ページ右下欄7行)を参照。)である。 ・本件発明3 ・刊行物1、2 ・備考 粉体の貯蔵量が、所定の区分内に維持されるように管理することは、本件出願前に周知の技術(必要であれば、特開昭62-175327号公報(特に、3ページ左上欄8ないし14行並びに第1及び4a図)及び特開昭49-128454号公報(特に、2ページ右上欄14行ないし同ページ右下欄3行)を参照。)である。 ・本件発明5 ・刊行物1、2 ・備考 本件出願の請求項5に記載された事項は、貯蔵容器からの粉体の供給量の変動が所定値以下となることが、粉体の供給量が目標値と一致するように、容積型のフィーダを制御して粉体の供給量を調節するための前提条件であることを示したに過ぎず、当業者が適宜なし得ることである。 ・本件発明6 ・刊行物1、2 ・備考 粉体がセメントであることについては、刊行物1(特に、段落【0001】)を参照。 刊 行 物 一 覧 刊行物1:特開平11-301783号公報 刊行物2:特開2003-71269号公報 <理由2> 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 本件出願の請求項4には、「前記貯蔵容器がサージ状態であるときには、前記貯蔵容器が定常状態であるときよりも、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを減らすように前記エアレーション装置を制御することで、前記貯蔵容器の下部における粉体の嵩密度の変動を低減し、当該粉体を前記容積型のフィーダにより送り出す」と記載されている。 しかしながら、本件出願の明細書及び図面には、貯蔵容器がサージ状態であるときには、前記貯蔵容器が定常状態であるときよりも、一回の停止時間を増やすことは記載されているが、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを減らすことについては記載されていない。 ここで、貯蔵容器がサージ状態であるときには、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを減らすことについて、本件出願の明細書における段落【0036】、【0049】及び【0050】には請求項4における記載と重複する程度の記載があるのみで、実質的には、図6及び7に示されているように、貯蔵容器がサージ状態であるときには、一回の停止時間を増やすことが記載されているのみである。 よって、本件発明4、本件出願の請求項4を引用する関係にある請求項5に記載された本件発明5及び本件出願の請求項4を引用する関係にある請求項6に記載された本件発明6は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 <理由3> 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項4において、「前記貯蔵容器の内部の状態として、前記貯蔵容器が定常状態であるかサージ状態であるかを検知し、前記貯蔵容器がサージ状態であるときには、前記貯蔵容器が定常状態であるときよりも、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを減らすように前記エアレーション装置を制御することで、前記貯蔵容器の下部における粉体の嵩密度の変動を低減し、当該粉体を前記容積型のフィーダにより送り出す」と記載されているが、「貯蔵容器が定常状態である」こと及び「貯蔵容器がサージ状態である」ことについて、それぞれ、どのような状態であるのか不明であり、また、「貯蔵容器がサージ状態である」ときの制御内容は記載されているが、前提となる「貯蔵容器が定常状態である」ときの制御内容については、何ら記載されておらず、全体としてどのような制御が行われるのか不明である。 よって、請求項4並びに請求項4を引用する請求項5及び6の記載では、本件発明4ないし6が不明確である。 (2)請求項5において、「前記粉体の供給量」と記載されているが、どの部分からの粉体の供給量であるのか不明である。 よって、請求項5及び請求項5を引用する請求項6の記載では、本件発明5及び6が不明確である。」 2.当審拒絶理由の判断 (1)理由1についての判断 本件審判請求後、本件補正により、当審拒絶理由の理由1の対象となった請求項、すなわち、審判請求時における請求項1ないし3は削除された。 また、本件補正により、当審拒絶理由の理由1の対象となっていなかった請求項4は請求項1に繰り上げられ、当審拒絶理由の理由1の対象となった請求項5及び6は順に請求項2及び3に繰り上げられ、繰り上げられた請求項2及び3は、繰り上げられた請求項1を直接又は間接的に引用するものに限定された。 さらに、本件補正により繰り上げられた請求項1は、当審拒絶理由通知時の請求項4に対して、「定常状態」を「前記貯蔵容器に前記粉体が圧送されていない定常状態」とし、「サージ状態」を「前記貯蔵容器に前記粉体が圧送されているサージ状態」とすることで、「定常状態」及び「サージ状態」がどのような状態であるのか明確になった。 そうすると、本件補正後の請求項1ないし3に記載された本願発明1ないし3は、当審拒絶理由の理由1の対象ではないものである。 (2)理由2についての判断 平成28年4月28日に提出された意見書の【意見の内容】(3)B.における主張によって、本件出願の明細書及び図面において、貯蔵容器がサージ状態にあるときには、貯蔵容器が定常状態であるときよりも、送気量・作用圧・作動時間の少なくとも一つを減らすことが記載されていることが合理的に説明されたので、当審拒絶理由の理由2は解消した。 (3)理由3についての判断 本件補正により繰り上げられた請求項1は、当審拒絶理由通知時の請求項4に対して、「定常状態」を「前記貯蔵容器に前記粉体が圧送されていない定常状態」とし、「サージ状態」を「前記貯蔵容器に前記粉体が圧送されているサージ状態」とすることで、「定常状態」及び「サージ状態」がどのような状態であるのか明確になり、制御内容も明確になった。 また、本件補正により繰り上げられた請求項2は、当審拒絶理由通知時の請求項5に対して、「前記粉体の供給量」を「前記容積型のフィーダからの前記粉体の供給量」とすることで、「前記粉体の供給量」がどの部分からの粉体の供給量であるのか明確になった。 よって、当審拒絶理由の理由3は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。 また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-07-21 |
出願番号 | 特願2011-55442(P2011-55442) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B65G)
P 1 8・ 537- WY (B65G) P 1 8・ 113- WY (B65G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 土井 伸次、中島 慎一 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
槙原 進 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 粉体定量供給方法 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 松尾 茂樹 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 近藤 寛 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 近藤 寛 |