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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04Q 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04Q |
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管理番号 | 1316908 |
審判番号 | 不服2015-2347 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-06 |
確定日 | 2016-08-02 |
事件の表示 | 特願2012-181112「データ接続ポイント選択」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日出願公開、特開2013- 31180、請求項の数(30)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は,2008年6月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年6月8日,2008年6月4日 米国)を国際出願日とする特願2010-511391号の一部を平成24年8月17日に新たな特許出願としたものであって,平成26年8月21日付けで拒絶理由が通知され,同年10月20日に意見書と手続補正書が提出されたが同年11月21日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,平成27年2月6日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において平成28年1月27日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,平成28年6月2日に意見書と手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし30に係る発明は,平成28年6月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし30に記載された事項により特定されるものと認める。 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「無線アクセスネットワーク(AN)のためのデータ接続ポイント(DAP)の選択の方法において, 前記無線AN中のエンティティーが,前記無線ANの少なくとも二つの無線アクセスポイント(AP)に関する資源コストを確定することと,ここで,前記資源コストは,データ・ネットワーク・ゲートウェイのデータ・インタフェースまでの資源コストに基づく, 前記無線AN中の前記エンティティーが,サービングAPの資源コストを,現在又はデフォルトのDAPの資源コストと比較することと, 前記無線AN中の前記エンティティーが,前記サービングAPの資源コストが,前記現在又はデフォルトのDAPの資源コストより低い場合に,前記DAPとして前記サービングAPを確立することを含む方法。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由 ■理由1 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項:1-30 ・引用文献等:1-3 ・備考 引用文献1(特に"2.1 Data Attachment Point Handoff"参照)には,UWBネットワークにおいて,ルーティングの効率向上のためDAPハンドオフが行われること,AGWとDAPとFLSA(Forward-Link Serving AN:本願の「サービングAP」に相当)の三角ルーティングを解消するため,DAPをFLSAに切り替えること,ATのFLSAがDAPとはるかに離れて,DAPがATのアクティブセットにない場合,アクティブセットのANにDAPを移動するべきであることが記載されている。 また,引用文献2(特に,段落【0044】,【0085】-【0122】等参照)には,無線LAN基地局が無線LAN端末に,ゲートウェイへのコストや無線LAN基地局からゲートウェイ間の回線状態などのゲートウェイに関する情報を送信し,無線LAN端末は,前記ゲートウェイに関する情報を利用して,現在接続している回線より低いコストを提供する無線LAN基地局を発見した場合は,新しい無線LAN基地局へハンドオフすること,前記無線LAN基地局は,ゲートウェイが複数ある場合,各ゲートウェイとの間のコストが最小になる経路を選択すること,コストとして,ホップ数,帯域幅や遅延,回線の混雑具合などが考えられること,トポロジーが変更された場合,経路制御部から取得した情報を更新し,自動的に変更することが記載されている。 さらに,引用文献3(特に,段落【0001】,【0046】-【0058】,【0080】-【0096】等参照)には,移動局が接続する最適な基地局を選択する基地局選択方法であって,基地局は,当該基地局と中継サーバ(本願の「データ・ネットワーク・ゲートウェイ」に相当)間の経路コスト(ホップ数や伝搬損失など)を算出し,これを伝送するための基地局選択信号を生成して移動局に伝送し,移動局は前記基地局選択信号を受信し,その中から経路コストを抽出して保持し,前記経路コストを参照して,経路コストが最小となる基地局を選択して,中継サーバと通信接続することが記載されている。 そして,引用文献1に記載の発明において,サービングAPを新たなDAPとするか判定するにあたり,引用文献2または引用文献3に記載の発明のように,APとゲートウェイ間のホップ数等に基づいて決定する構成を採用し,本願の上記請求項に係る発明とすることは当業者が容易になしえたことである。 拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。 引 用 文 献 等 一 覧 1.Airvana et al.,UMB Data Attachment Point Handoff call flow,3GPP2 TSG-A, A40-20070314,2007年 3月,URL,ftp://ftp.3gpp2.org/TSGA/Working/2007/03xx-calls/0314-TSG-A.4/A40-20070314-004r0%20DAP%20HO%20call%20flow%20(AAHNQ).doc 2.特開2005-236767号公報 3.特開2002-345018号公報 2 原査定の理由の判断 (1)引用例記載事項 引用例1(Airvana et al.,UMB Data Attachment Point Handoff call flow,3GPP2 TSG-A, A40-20070314,2007年 3月,URL,ftp://ftp.3gpp2.org/TSGA/Working/2007/03xx-calls/0314-TSG-A.4/A40-20070314-004r0%20DAP%20HO%20call%20flow%20(AAHNQ).doc)には,「UMB Data Attachment Point handoff call flow(当審仮訳:UMBデータ接続ポイントハンドオフ呼のフロー)」(文献タイトル)に関し,以下の事項が記載されている。 「2 Call Flows ・・・ 2.1 Data Attachment Point Handoff This section describes the call flows associated with a data attachment point(DAP) handoff. The Data Attachment Point(DAP) AN is the AN to which the AGW points its FL tunnel to according to the Latest binding that the DAP has performed with the AGW. A DAP handoff can occur when the AT moves between different serving ANs. The main purpose of DAP handoff is to increase routing efficiency in the UMB networks. For example, if the AT becomes stationary, then it is beneficial for the FLSA to become the DAP to remove triangular routing from AGW->DAP->FLSA. Also because of mobility, the FLSA and RLSA of an AT may be far away from the DAP such that the DAP is no longer in the radio Active Set of the AT. In this scenario, the DAP should also be moved to some AN in the Active Set to reduce packet forwarding latency. (当審仮訳: 2 呼のフロー ・・・ 2.1 データ接続ポイントハンドオフ この節はデータ接続ポイント(DAP)に関連した呼のフローを記述する。 データ接続ポイント(DAP)ANは,DAPがAGWに関して実行した最新のバインディングに従い,AGWがそのFLトンネルを向けるANである。DAPハンドオフはATが異なるAN間を移動するときに起こる。DAPハンドオフの主な目的はUMBネットワーク内のルーティング効率を増加することである。例えば,もしもATが静止状態になったなら,FLSAがDAPになりAGW->DAP->FLSAの三角ルーティングを取り除くのが有益である。また,モビリティのために,ATのFLSAとRLSAはDAPから遠くに離れてしまい,DAPがもはやATの無線アクティブセット内ではなくなるかもしれない。このシナリオでも,パケット転送遅延を減少させるために,DAPはアクティブセット内のANに移動されるべきである。)」 上記摘記事項及びこの分野における技術常識を勘案すると,上記引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されていると認める。 「無線アクセスネットワークのためのデータ接続ポイント(DAP)の選択の方法において, ATが異なるサービングAN間を移動するときに,AGW->現在のDAP->FLSAのルートのルーティング効率よりもAGW->FLSAのルートのルーティング効率が大きいことに基づいて,FLSAをDAPとして確立することを含む方法。」 (2)対比 本願発明と引用発明とを対比するに, a 引用発明の「FLSA」が「Foward Link Serving Access Node」の略であって「サービングAN」を意味することは技術常識であるところ,本願発明の「サービングAP」に相当する。 b 引用発明の「AGW」は「Access Gateway」の略であって,本願発明の「データ・ネットワーク・ゲートウェイ」に相当する。 c 本願発明の「前記無線AN中のエンティティーが,前記無線ANの少なくとも二つの無線アクセスポイント(AP)に関する資源コストを確定することと,ここで,前記資源コストは,データ・ネットワーク・ゲートウェイのデータ・インタフェースまでの資源コストに基づく, 前記無線AN中の前記エンティティーが,サービングAPの資源コストを,現在又はデフォルトのDAPの資源コストと比較することと, 前記無線AN中の前記エンティティーが,前記サービングAPの資源コストが,前記現在又はデフォルトのDAPの資源コストより低い場合に」と 引用発明の「ATが異なるサービングAN間を移動するときに,AGW-現在のDAP-FLSAのルートのルーティング効率よりもAGW-FLSAのルートのルーティング効率が大きいことに基づいて」とを対比するに, c1 本願発明の「資源コスト」に関し,本願明細書の「資源コストは,無線ANに関連する様々なサービス品質又はデータ交換の距離に基づくものであっても良い。少なくとも一つの態様において,無線ANの動的な距離(dynamic metric)は,資源コストを含むことができる。資源コスト及び/又は動的な無線ANの測定基準(metrics)の例は,IP GWまでのホップカウント又は重み付けされた位相的な距離(weighted topological distance),利用可能なリンクのバンド幅,現在のデータレート,無線APのレイテンシー若しくはトラフィック・ロード,又は同種のもの,又はそれらの組み合わせを含むことができる。諸APが,AP間でのデータ交換を容易にするAP間リンク(例えば,バックホール・ネットワーク)と接続されることができることはまた,認識されなければならない。」(段落【0073】)の記載によれば,本願発明の「資源コスト」は,「データ交換の距離」または「IP GWまでのホップカウント」等を含む概念であることころ,引用発明の「ルーティング効率」は本願発明の「資源コスト」に含まれる。 c2 引用発明の「AGW->FLSAのルートのルーティング効率」は本願発明の「サービングAPの資源コスト」に含まれる。 c3 引用発明の「AGW->現在のDAP->FLSAのルートのルーティング効率」と本願発明の「現在又はデフォルトのDAPの資源コスト」とは「現在又はデフォルトのDAPに関連する資源コスト」である点で共通する。 c4 上記c1?c3での検討によれば,結局両者は, 「サービングAPの資源コストと現在又はデフォルトのDAPに関連する資源コストに基づいて」の点で共通する。 以上をまとめると,両者は以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「無線アクセスネットワーク(AN)のためのデータ接続ポイント(DAP)の選択の方法において, サービングAPの資源コストと現在又はデフォルトのDAPに関連する資源コストに基づいて,前記DAPとして前記サービングAPを確立することを含む方法。」 (相違点1) 一致点の「サービングAPの資源コストと現在又はデフォルトのDAPに関連する資源コストに基づいて」が, 本願発明では, 「前記無線AN中のエンティティーが,前記無線ANの少なくとも二つの無線アクセスポイント(AP)に関する資源コストを確定することと,ここで,前記資源コストは,データ・ネットワーク・ゲートウェイのデータ・インタフェースまでの資源コストに基づく, 前記無線AN中の前記エンティティーが,サービングAPの資源コストを,現在又はデフォルトのDAPの資源コストと比較することと, 前記無線AN中の前記エンティティーが,前記サービングAPの資源コストが,前記現在又はデフォルトのDAPの資源コストより低い場合に」 であるのに対し, 引用発明では, 「ATが異なるサービングAN間を移動するときに,AGW-現在のDAP-FLSAのルートのルーティング効率よりもAGW-FLSAのルートのルーティング効率が大きいことに基づいて」 である点。 (相違点2) 「方法」を実行する主体が, 本願発明では「無線AN中のエンティティー」であるのに対し, 引用発明では明らかではない点。 (3)判断 上記相違点につき検討する。 (相違点1)について まず,本願発明の「現在又はデフォルトのDAPの資源コスト」に関し, 本願明細書には,「現在又はデフォルトのDAPの資源コスト」が「現在又はデフォルトのDAPからサービングAPまでの資源コスト」を含む旨の記載は無く,また,それにより,平成28年6月2日に提出された意見書で請求人が主張するような「モバイルデバイスが移動し,アクセスポイントが適用され,AGWが判定される状況において,サービングAPをDAPと仮定して,現在のDAPと比較する場合,サービングAP-DAP間のコストを計算せずとも,適切なDAPの選択が可能である」という効果を奏するものである。 したがって,本願発明の「現在又はデフォルトのDAPの資源コスト」とは,「現在又はデフォルトのDAPからデータ・ネットワーク・ゲートウェイまでの資源コスト」である。 これに対し,引用発明の「AGW-現在のDAP-FLSAのルートのルーティング効率」は「現在のDAP-FLSAのルートのルーティング効率」を含んでいる。 加えて,本願発明は「サービングAPの資源コスト」と「現在又はデフォルトのDAPの資源コスト」とを「確定」し,「比較」し,その結果として「前記サービングAPの資源コストが,前記現在又はデフォルトのDAPの資源コストより低い場合」を判定しているのに対し,引用発明では,「AGW->現在のDAP->FLSAのルートのルーティング効率よりもAGW->FLSAのルートのルーティング効率が大きいこと」を前提とし,引用例1に「例えば,もしもATが静止状態になっったなら,FLSAがDAPになりAGW->DAP->FLSAの三角ルーティングを取り除くのが有益である。」とあるように,ATが新しいアクセスノード(AN)に移動してそこで移動しなくなった場合,必ず新しいアクセスノード(FLSA)がDAPとなるものである。 そうすると,引用発明において,「AGW->現在のDAP->FLSAのルートのルーティング効率」と「AGW->FLSAのルートのルーティング効率」とを「確定」したり「比較」したりする必要は無く,ましてや両者の大小関係を判定することによりFLSAをDAPとして確立するよう構成する合理的理由はない。 したがって,引用発明の 「ATが異なるサービングAN間を移動するときに,AGW-現在のDAP-FLSAのルートのルーティング効率よりもAGW-FLSAのルートのルーティング効率が大きいことに基づいて」を,本願発明の 「前記無線AN中のエンティティーが,前記無線ANの少なくとも二つの無線アクセスポイント(AP)に関する資源コストを確定することと,ここで,前記資源コストは,データ・ネットワーク・ゲートウェイのデータ・インタフェースまでの資源コストに基づく, 前記無線AN中の前記エンティティーが,サービングAPの資源コストを,現在又はデフォルトのDAPの資源コストと比較することと, 前記無線AN中の前記エンティティーが,前記サービングAPの資源コストが,前記現在又はデフォルトのDAPの資源コストより低い場合に」 と変更すること(相違点1)は,当業者が容易に想到し得たものではない。 他に,引用例2,3の記載からは上記(相違点1)の克服が容易であったといえる根拠を見いだすことはできない。 したがって,上記(相違点2)について検討するまでもなく,本願発明は,引用例1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)小括 本願発明は,当業者が引用例1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の他の独立請求項である請求項9,17,18,19,20,24,28,29,30についても同様である。 したがって,上記独立請求項を引用する請求項も含め,本願請求項1-30に係る発明は,いずれも当業者が引用例1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由 A(委任省令要件)本件出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 【請求項1】「前記無線AN中の前記エンティティーが,サービングAPの資源コストを,現在又はデフォルトのDAPの資源コストと比較することと, 前記無線AN中の前記エンティティーが,前記サービングAPの資源コストが,前記DAPの資源コストより低い場合に,前記DAPとして前記サービングAPを確立すること」 に関し, 「DAPの資源コスト」とは,「DAP」から「データ・ネットワーク・ゲートウェイのデータ・インタフェース」までのホップカウントであると認められる。 しかしながら,【図2】,【0047】に記載されているように,データ・ネットワーク・ゲートウェイ(アクセスゲートウェイ208)からAT宛てに送られたデータは,DAP206BからサービングAP206Aに転送されるものである。 そうすると,現在又はデフォルトのDAPの選択が効率的なものであるか否かは,「DAP→データ・ネットワーク・ゲートウェイ」のホップカウントではなく,「サービングAP→DAP→データ・ネットワーク・ゲートウェイ」のホップカウントに依存することが明らかであり,したがって,【請求項1】において,「サービングAPの資源コスト」と「DAPの資源コスト」を比較することの技術上の意義が不明瞭である。 その他の請求項についても同様であり,よって,発明の詳細な説明は,請求項1?30に係る発明について,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 B(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.Airvana et al.,UMB Data Attachment Point Handoff call flow,3GPP2 TSG-A, A40-20070314,2007年 3月,URL,ftp://ftp.3gpp2.org/TSGA/Working/2007/03xx-calls/0314-TSG-A.4/A40-20070314-004r0%20DAP%20HO%20call%20flow%20(AAHNQ).doc 2.特開2005-236767号公報 3.特開2002-345018号公報 請求項1?30に係る発明に対して 上記引用文献1?3 引用文献1(特に"2.1 Data Attachment Point Handoff"参照)には,UMBネットワークにおいて,ルーティングの効率向上のためDAPハンドオフが行われること,AGWとDAPとFLSA(Forward-Link Serving AN:本願の「サービングAP」に相当)の三角ルーティングを解消するため,DAPをFLSAに切り替えること,ATのFLSAがDAPとはるかに離れて,DAPがATのアクティブセットにない場合,アクティブセットのANにDAPを移動するべきであることが記載されている。 また,引用文献2(特に,段落【0044】,【0085】-【0122】等参照)には,無線LAN基地局が無線LAN端末に,ゲートウェイへのコストや無線LAN基地局からゲートウェイ間の回線状態などのゲートウェイに関する情報を送信し,無線LAN端末は,前記ゲートウェイに関する情報を利用して,現在接続している回線より低いコストを提供する無線LAN基地局を発見した場合は,新しい無線LAN基地局へハンドオフすること,前記無線LAN基地局は,ゲートウェイが複数ある場合,各ゲートウェイとの間のコストが最小になる経路を選択すること,コストとして,ホップ数,帯域幅や遅延,回線の混雑具合などが考えられること,トポロジーが変更された場合,経路制御部から取得した情報を更新し,自動的に変更することが記載されている。 さらに,引用文献3(特に,段落【0001】,【0046】-【0058】,【0080】-【0096】等参照)には,移動局が接続する最適な基地局を選択する基地局選択方法であって,基地局は,当該基地局と中継サーバ(本願の「データ・ネットワーク・ゲートウェイ」に相当)間の経路コスト(ホップ数や伝搬損失など)を算出し,これを伝送するための基地局選択信号を生成して移動局に伝送し,移動局は前記基地局選択信号を受信し,その中から経路コストを抽出して保持し,前記経路コストを参照して,経路コストが最小となる基地局を選択して,中継サーバと通信接続することが記載されている。 上記引用文献1に記載されたDAPハンドオフでは,「ルーティングの効率向上」のために「AGWとDAPとFLSAの三角ルーティング」を「AGWとFLSA(DAP)のルーティング」に切り替えており,また,「ルーティングの効率」を判断する基準として「ホップカウント」は上記引用文献2,3に記載されているように周知のものである。 ここで,本願請求項1に係る発明の「DAPの資源コスト」を,「サービングAP」から「現在又はデフォルトのDAP」を介し「データ・ネットワーク・ゲートウェイのデータ・インタフェース」に至るまでの「ホップカウント」と解した場合,引用文献1の「AGWとDAPとFLSAの三角ルーティング」の「効率」,「AGWとFLSA(DAP)のルーティング」の「効率」は,それぞれ,本願請求項1に係る発明の「現在又はデフォルトのDAPの資源コスト」,「APの資源コスト」に相当し,本願請求項1に係る発明は,上記引用文献1?3に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 さらに,上記引用文献1?3の記載事項を参酌すれば,本願のその他の請求項に係る発明も同様に当業者が容易に想到し得たものである。 2 当審拒絶理由の判断 2-1 理由Aについて 意見書において請求人が, 『また,明細書[0008]では,「そのような態様の少なくとも一つの例において,サービングAPに対して最も低いコスト距離を与えるAGWが判定される。また,そのようなAGWに関して,該最も低いコスト距離が,データAPのコスト距離と比較される。」と説明しています。 (3) そのように,モバイルデバイスが移動し,アクセスポイントが適用され,AGWが判定される状況において,サービングAPをDAPと仮定して,現在のDAPと比較する場合,サービングAP-DAP間のコストを計算せずとも,適切なDAPの選択が可能であることを,当業者は明細書の記載から理解できると思量致します。』 と主張しているように,コスト距離の小さいDAPを確立しようとする際に,サービングAP-DAP間のコストを計算せずとも適切なDAPの選択が可能である,との作用効果を得られることが明らかになり,当審拒絶理由Aは解消した。 2-2 理由Bについて 上記「第3 原査定の理由について」の「2 原査定の理由の判断」に述べたとおりであるから,当審拒絶理由Bは解消した。 第5 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-07-19 |
出願番号 | 特願2012-181112(P2012-181112) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04Q)
P 1 8・ 536- WY (H04Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石田 紀之、廣川 浩 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
山中 実 新川 圭二 |
発明の名称 | データ接続ポイント選択 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 奥村 元宏 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |