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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1316944
審判番号 不服2015-12391  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-30 
確定日 2016-07-14 
事件の表示 特願2012-521166「空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月29日国際公開,WO2011/161720〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2010年(平成22年)6月23日を国際出願日とする出願であって,平成27年3月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。


第2 平成27年6月30日にされた手続補正の却下の決定

1 結論

平成27年6月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

2 理由

(1) 補正の概要

本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1である
「圧縮機、熱交換器、及び、液溜めが搭載された室外機と、
膨張弁、及び、熱交換器が搭載された室内機と、を有し、
前記圧縮機、前記室外機の熱交換器、前記液溜め、前記膨張弁、前記室内機の熱交換器が冷媒延長配管で接続されて冷媒回路を形成し、
前記液溜めに液冷媒が余剰液冷媒として貯留される運転状態において、
前記室内機の熱交換器の過冷却度を目標値に制御して、前記液溜めに余剰液冷媒を残した状態にし、前記液溜めに残された余剰液冷媒を基準量とし、余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する制御部を備え、
前記制御部は、
前記室内機の運転状態と、前記液溜めにおける余剰液冷媒の有無と、の関係を予め学習し、前記学習で求めた前記液溜めに余剰液冷媒があるとされるときの前記室内機の運転状態に基づいて前記冷媒回路の冷媒漏洩を判定する
空気調和装置。」を,

「圧縮機、熱交換器、及び、液溜めが搭載された室外機と、
膨張弁、及び、熱交換器が搭載された室内機と、を有し、
前記圧縮機、前記室外機の熱交換器、前記液溜め、前記膨張弁、前記室内機の熱交換器が冷媒延長配管で接続されて冷媒回路を形成し、
前記液溜めに液冷媒が余剰液冷媒として貯留される運転状態において、
前記室内機の熱交換器の過冷却度を目標値に制御して、前記液溜めに余剰液冷媒を残した状態にし、前記液溜めに残された余剰液冷媒を基準量とし、余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する制御部を備え、
前記制御部は、
遠隔監視可能かつ遠隔サーバと通信可能に外部に接続されており、
前記室内機の運転状態と、前記液溜めにおける余剰液冷媒の有無と、の関係を予め学習し、前記学習で求めた前記液溜めに余剰液冷媒があるとされるときの前記室内機の運転状態における前記液溜めの余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する
空気調和装置。」とする補正事項を含むものである。

(2) 補正の目的

上記補正は,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「制御部」について「遠隔監視可能かつ遠隔サーバと通信可能に外部に接続されて」いる点の限定を付加し,「冷媒回路の冷媒漏洩を判定する」内容について「前記液溜めの余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」点の限定を付加する補正であって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

(3)引用例

原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-257219号公報(以下「引用例1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における空気調和機の冷媒回路図である。
室内機1は、室内熱交換器2と、この室内熱交換器2に取り付けられた第1温度センサ2aと、室内送風機3と、室内送風機3の運転により取り込まれる室内空気の温度を検出する第2温度センサ4とを備えている。室外機11は、余剰冷媒を貯蔵する受液器12と、圧縮機13と、圧縮機13の吸入管に取り付けられた第3温度センサ14aと、圧縮機13の吐出管に取り付けられた第4温度センサ14bと、室外熱交換器15と、室外熱交換器15に取り付けられた第5温度センサ15aと、室外送風機16と、室外送風機16の運転により取り込まれる外気の温度を検出する第6温度センサ17とを備えている。」(段落【0011】)

イ 「適性冷媒量の場合に室外送風機16と絞り装置19を制御して室外熱交換器15に冷媒を溜め込ませるようにしたときの第4温度センサ14bの検出温度及び第5温度センサ15aの検出温度の差である。吐出スーパーヒートが設定した閾値を超える時点を見つけ出し、その制御値(回転数、絞り開度)を記憶しておく。但し、この値は初期学習運転によって補正をかけている。例えば、実際の据付時の配管長が前記測定時よりも長い場合は、より小さい回転数、より小さい絞り開度で閾値を超えるので、制御値の回転数と絞り開度を小さくしておく補正をかける。冷媒漏れ検知運転では、室外送風機16の回転数と絞り装置19の開度をこの値になるよう制御する。冷媒漏れの判定では、この運転時の吐出スーパーヒートが予め適性冷媒量の場合に測定した吐出スーパーヒートと比較して、大きい場合(多少のマージンは持たせる)は、冷媒漏れであると判定する。」(段落【0012】)

ウ 「製品(室内機1及び室外機11)を据付けた後に初期学習運転を実施すると(S1)、制御装置20は、予め設定された制御パターンに基づいて室内機1及び室外機11をそれぞれ室内制御装置と室外制御装置とを介して運転し、その時の室内送風機3、圧縮機13及び室外送風機16の制御値をそれぞれ入力すると共に、室内機1及び室外機11の各温度センサ2a、14a、14b、15aの検出冷媒温度、第2及び第6温度センサ4、17の検出空気温度をそれぞれ入力し、初期学習データとして記憶部(図示せず)に保存する(S2)。そして、予め室内機1及び室外機11の各機器の個体差及び実据付条件に応じて設定された、冷媒漏れ検知時に用いる冷媒漏れ検知運転データを、前記の初期学習データに基づいて補正する(S3)。この時、実使用下での運転可能になっており(S4)、例えば、リモコンにより暖房運転が選択されたときは、室内制御装置と室外制御装置とにより暖房運転が実行される。」(段落【0014】)

エ 「一方、室内機1内に設けられた冷媒漏れ検知用の起動スイッチがオンされると(S5)、制御装置20は、室内制御装置と室外制御装置を介して実使用下での運転を停止させ、先に補正した冷媒漏れ検知運転データに基づいて、冷媒が室外熱交換器15へ溜め込まれるように、室内機1及び室外機11を運転する(S6)。そして、この運転時に、第4温度センサ14bの検出温度(圧縮機13の吐出側の冷媒温度)及び第5温度センサ15aの検出温度(室外熱交換器15の冷媒温度)をそれぞれ入力して差を求め、かつ、この温度差が予め設定された閾値以上かどうかを判定する(S7)。その温度差が閾値未満のときは、実使用下での運転可能状態となるが(S4)、圧縮機13の吐出側の冷媒温度と室外熱交換器15の冷媒温度との差が大きくなって閾値以上のときは冷媒漏れと判断して、リモコンに設けられたLEDを点滅しその旨を知らせる(S8)。」(段落【0015】)

オ 「実施の形態3.
図4は本発明の実施の形態3における空気調和機の冷媒回路図である。
実施の形態3は、図中に示すように、余剰冷媒を貯蔵する受液器12に設けられた冷媒量計測センサ18と、製品据付時に補正した冷媒漏れ検知運転データに基づいて室内機1及び室外機11が運転されているとき、第2温度センサの検出温度(室内空気温度)、第6温度センサの検出温度(室外外気温度)及び運転状態(冷房運転、暖房運転など)から想定される正常時の冷媒回路内の予定冷媒量を判別し、かつ、冷媒量計測センサ18により計測された余剰冷媒量と比較し、この差が所定量より多いときに冷媒漏れと判断して、リモコンのLEDを点滅する冷媒漏れ判定手段を有する制御装置20とを備えたものである。
なお、本実施の形態3の動作については、例えば、図3に示すS7で前記の判定動作を行い、その他の部分では図3と同じとなる。」(段落【0020】)

カ 【図4】より,圧縮機13,室外熱交換器15,受液器12,絞り装置19,室内熱交換器2が配管で接続されて冷媒回路を形成していることが見てとれる。

キ 【図4】の実施の形態3について部材番号が【図1】の部材番号と共通するものは,実施の形態1と同様の機能を有すると認められるので,上記ア?カに記載の事項を総合すると,引用例1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「圧縮機13,室外熱交換器15,及び受液器12が備えられた室外機11と,
室内熱交換器2が備えられた室内機1と,を有し,
圧縮機,室外熱交換器,受液器,絞り装置19,室内熱交換器が配管で接続されて冷媒回路を形成し,
製品据付時に補正した冷媒漏れ検知運転データに基づいて運転して,正常時の冷媒回路内の予定冷媒量と計測された余剰冷媒量との差が所定量より多いときに冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する制御装置20を備え,
制御装置は,
室内送風機,圧縮機,及び室外送風機の制御値を入力すると共に,検出冷媒温度及び検出空気温度をそれぞれ入力し,初期学習データとして記憶部に保存し,冷媒漏れ検知時に用いる冷媒漏れ検知運転データを,当該初期学習データに基づいて補正し,補正した冷媒漏れ検知運転データに基づいて室内機及び室外機が運転されているときにおける予定冷媒量と計測された受液器の余剰冷媒量との差が所定量より多いときに冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する
空気調和機。」

(4)対比

ア 本願補正発明と引用発明1との対比
本願補正発明と引用発明1を対比すると,引用発明1の「受液器12」はその名称からして液冷媒を貯留することが明らかであるから,本願補正発明の「液溜め」に相当し,「受液器12」が貯蔵する「余剰冷媒」は,本願補正発明の「余剰液冷媒」に相当する。また,引用発明1の「室内機1」に「備えられた」「室内熱交換器2」は,本願補正発明の「室内機」に「搭載された」「熱交換器」に,引用発明1の「室外機11」に「備えられた」「室外熱交換器15」は,本願補正発明の「室外機」に「搭載された」「熱交換器」に,それぞれ相当する。さらに,引用発明1の「絞り装置19」,「配管」,「制御装置20」,「空気調和機」は,本願補正発明の「膨張弁」,「冷媒延長配管」,「制御部」,「空気調和装置」にそれぞれ相当する。
引用発明1において「正常時の冷媒回路内の予定冷媒量と計測された余剰冷媒量との差が所定量より多いときに冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」ことは,冷媒が漏れれば受液器の余剰冷媒量が正常時に比べて減ることを利用して,上記予定冷媒量と余剰冷媒量の差が所定量より多いと冷媒漏れと判定することである。そうすると,引用発明1において冷媒漏れを判定する際は,受液器に余剰冷媒が貯留された状態でなければならないから,引用発明1の「製品据付時に補正した冷媒漏れ検知運転データに基づいて運転し」ている状態は,本願補正発明の「前記液溜めに液冷媒が余剰液冷媒として貯留される運転状態」となっていることが明らかである。そして,引用発明1の「冷媒漏れ検知運転データを,当該初期学習データに基づいて補正し,補正した冷媒漏れ検知運転データに基づいて室内機及び室外機が運転されている」状態は,初期学習の結果が運転状態に反映されていることから学習で求めた運転状態といえるので,本願補正発明の「学習で求めた前記液溜めに余剰液冷媒があるとされるときの前記室内機の運転状態」に相当する。
また,引用発明1の「予定冷媒量と計測された受液器の余剰冷媒量との差が所定量より多いときに冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」ことと,本願補正発明の「前記液溜めの余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」ことは,少なくとも「液溜めの余剰液冷媒の量に基づいて冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」点において共通する。

イ 一致点
したがって,本願補正発明と引用発明1とは,以下の点で一致している。
「圧縮機,熱交換器,及び,液溜めが搭載された室外機と,
熱交換器が搭載された室内機と,を有し,
前記圧縮機,前記室外機の熱交換器,前記液溜め,膨張弁,前記室内機の熱交換器が冷媒延長配管で接続されて冷媒回路を形成し,
前記液溜めに液冷媒が余剰液冷媒として貯留される運転状態において,
前記液溜めに残された余剰液冷媒の量に基づいて前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する制御部を備え,
前記制御部は,
学習で求めた前記液溜めに余剰液冷媒があるとされるときの前記室内機の運転状態における前記液溜めの余剰液冷媒の量に基づいて前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する
空気調和装置。」

ウ 相違点
そして,本願補正発明と引用発明1とは,以下の点で相違している。

(ア)相違点1
本願補正発明は,膨張弁が室内機に搭載されているのに対し,引用発明1はそのような構成を有していない点(以下「相違点1」という。)。

(イ)相違点2
本願補正発明は,制御部が「遠隔監視可能かつ遠隔サーバと通信可能に外部に接続されて」いるのに対し,引用発明1はそのような構成を有していない点(以下「相違点2」という。)。

(ウ)相違点3
本願補正発明は,制御部が「前記室内機の運転状態と、前記液溜めにおける余剰液冷媒の有無と、の関係を予め学習」するのに対し,引用発明1は,「室内送風機,圧縮機,及び室外送風機の制御値を入力すると共に,検出冷媒温度及び検出空気温度をそれぞれ入力し,初期学習データとして記憶部に保存」する点(以下「相違点3」という。)。

(エ)相違点4
本願補正発明は,制御部が「前記室内機の熱交換器の過冷却度を目標値に制御して、前記液溜めに余剰液冷媒を残した状態にし、前記液溜めに残された余剰液冷媒を基準量とし、余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定」し,さらに「前記液溜めの余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」としているのに対し,引用発明1は,「正常時の冷媒回路内の予定冷媒量と余剰冷媒量との差が所定量より多いときに冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定」し,さらに「予定冷媒量と受液器の余剰冷媒量との差が所定量より多いときに冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」としている点(以下「相違点4」という。)。

(5)判断

ア 相違点1についての検討
膨張弁を室内機側に設けることは,原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-249234号公報(以下「周知例1」という)に示される(段落【0064】,図2)ように周知であり,冷媒回路において,膨張弁を室外機側に設けるか,室内機側に設けるかは,設計上の微差にすぎない。よって,引用発明1において膨張弁を室内機側に設けることにより,相違点1における本願補正発明に係る構成となすことは,当業者であれば容易になし得たことである。

イ 相違点2についての検討
空気調和装置において,制御部を遠隔監視可能かつ遠隔サーバと通信可能に外部に接続することは,周知例1(段落【0020】,【0045】),特開2009-64101号公報(段落【0002】等),及び特開2010-33279号公報(段落【0002】等)に示されるように,従来周知の技術であった。よって,引用発明1において制御部を遠隔監視可能かつ遠隔サーバと通信可能に外部に接続し,相違点2における本願補正発明に係る構成となすことは,当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 相違点3についての検討
引用発明1は,初期学習データに基づいて補正した冷媒漏れ検知運転データに基づいて運転した状態で冷媒漏れ検知を行なうものである。そして,当該冷媒漏れ検知は,液溜めに余剰液冷媒があるとされるときの室内機の運転状態において行なわれることから,上記補正された冷媒漏れ検知運転データは,液溜めに余剰液冷媒があるとされるときの室内機の運転状態を実現する運転データであると認められる。そうすると,上記冷媒漏れ検知運転データを補正するための初期学習データは,余剰液冷媒の有無に関する情報を内在するものといえ,また,補正された冷媒漏れ検知運転データによって,液溜めに余剰液冷媒があるとされるときの室内機の運転状態を実現するために,引用発明1の初期学習データの内容として,端的に室内機の運転状態と,液溜めにおける余剰液冷媒の有無との関係を学習しておき,その関係に基づいて冷媒漏れ検知運転データの補正を行なうことは,当業者が通常の創作能力を発揮してなし得ることである。
よって,引用発明1において,室内機の運転状態と液溜めにおける余剰液冷媒の有無の関係を予め学習することとし,相違点3における本願補正発明に係る構成となすことは,当業者であれば容易になし得たことである。

エ 相違点4についての検討
引用発明1において,「正常時の冷媒回路内の予定冷媒量と計測された余剰冷媒量との差が所定量より多いときに冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」とは,前述のとおり,冷媒が漏れれば受液器の余剰冷媒量が正常時に比べて減ることを利用して,上記予定冷媒量と余剰冷媒量の差が所定量より多いと冷媒漏れと判定することである。そして,正常時の冷媒回路内の予定冷媒量が得られているのであるから,正常時の余剰冷媒量を,全冷媒量と上記予定冷媒量との差として求めることも,当業者にとって困難なことではない。
そうすると,引用発明1において,より端的に,計測された余剰冷媒量が正常時の余剰冷媒量に比べて少なくなったときに冷媒が漏洩していると判定することは,当業者が容易に想到し得たことである。その際,正常時の余剰冷媒量が冷媒漏洩の判定基準となるが,空気調和装置の制御において,室内機の熱交換器の過冷却度が目標値になるように制御することが周知の技術事項であった(例えば周知例1の段落【0071】,特開平11-182990号公報の段落【0080】?【0087】参照)ことを踏まえると,正常時の運転状態として,室内機の熱交換器の過冷却度を目標値に制御して,液溜めに余剰液冷媒を残した状態を設定し,そのときの液溜めに残された余剰液冷媒を基準量とすることは,当業者が容易になし得たことである。
よって,引用発明1において,余剰液冷媒が上記基準量よりも少なくなったときに冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定することとして,相違点4における本願補正発明に係る構成となすことは,当業者であれば容易になし得たことである。

オ 本願補正発明の奏する効果について
そして,本願補正発明の全体構成によって奏される作用効果についてみても,引用発明1及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

カ まとめ
したがって,本願補正発明は,引用発明1及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)小括

以上のとおり,本願補正発明は,本願出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願請求項1乃至10に係る発明は,平成26年9月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項によって特定されるとおりのものである。そして,その請求項1に係る発明は,

「圧縮機、熱交換器、及び、液溜めが搭載された室外機と、
膨張弁、及び、熱交換器が搭載された室内機と、を有し、
前記圧縮機、前記室外機の熱交換器、前記液溜め、前記膨張弁、前記室内機の熱交換器が冷媒延長配管で接続されて冷媒回路を形成し、
前記液溜めに液冷媒が余剰液冷媒として貯留される運転状態において、
前記室内機の熱交換器の過冷却度を目標値に制御して、前記液溜めに余剰液冷媒を残した状態にし、前記液溜めに残された余剰液冷媒を基準量とし、余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する制御部を備え、
前記制御部は、
前記室内機の運転状態と、前記液溜めにおける余剰液冷媒の有無と、の関係を予め学習し、前記学習で求めた前記液溜めに余剰液冷媒があるとされるときの前記室内機の運転状態に基づいて前記冷媒回路の冷媒漏洩を判定する
空気調和装置。」(以下「本願発明」という。)
であるものと認める。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1,及びその記載事項は,上記第2 2(3)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,本願補正発明の「制御部」について「遠隔監視可能かつ遠隔サーバと通信可能に外部に接続されて」いる点の限定を省き,また「冷媒回路の冷媒漏洩を判定する」内容について「前記液溜めの余剰液冷媒が前記基準量よりも少なくなったときに前記冷媒回路から冷媒が漏洩していると判定する」点の限定を省くものである。そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2 2(5)に記載したとおり,引用発明1及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,本願出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることはできない。

よって,本願は,その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

したがって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-12 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-05-30 
出願番号 特願2012-521166(P2012-521166)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
P 1 8・ 575- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 浩士横溝 顕範  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 結城 健太郎
山崎 勝司
発明の名称 空気調和装置  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  
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