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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1316947
審判番号 不服2015-16059  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-31 
確定日 2016-07-14 
事件の表示 特願2011- 51793「シリンダブロック」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-188959〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月9日の出願であって、平成26年8月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年10月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年5月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年8月31日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成26年10月24日提出の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「 【請求項1】
複数のシリンダボアを取り囲むように形成されたウォータジャケットを備え、隣接するシリンダボアの間に位置するボア間隔壁内に、同ボア間隔壁の最も薄い部分である中央部分を通さずに前記ウォータジャケット内の冷却水を導く冷却水通路を備えたシリンダブロックであり、
前記冷却水通路が、前記ボア間隔壁の頂面における前記中央部分から離間した位置に開口し、前記頂面から離間するほど前記中央部分に近づくように前記シリンダボアの軸線の延伸方向に対して傾けて形成されたヘッド側ドリル穴と、同ヘッド側ドリル穴の先端部に連通する一方で前記ウォータジャケット内に開口し、前記ヘッド側ドリル穴に連通する部分から開口部に向かって次第に前記頂面に近づくように前記軸線の延伸方向に対して傾けて形成されたジャケット側ドリル穴とによって形成されてなり、
前記ジャケット側ドリル穴は、同ジャケット側ドリル穴を前記ウォータジャケットの外部まで延ばした延長線と、前記ウォータジャケットの外周壁におけるヘッドボルトボスとの間に空隙が確保されるように形成されているシリンダブロック。」

第3 引用文献
(1)引用文献の記載
本願の出願前に頒布され、原査定の理由に引用された刊行物である特表2010-537115号公報(以下、「引用文献」という。)には、「内燃機関に用いられるシリンダブロック」に関して、図面とともに概ね以下のように記載されている。なお、下線は、当審で付した。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に用いられるシリンダブロック(1)であって、該シリンダブロック(1)が、アルミニウム-シリコン合金から成っており、シリンダブロック(1)内に、一体に形成されたライナ複合体(9)が、ダイカスト法で鋳包まれており、該ライナ複合体(9)が、過共晶アルミニウム-シリコン合金から成っていて、一列に配置された、ウェブ(2,3,4)を介して互いに結合された少なくとも2つのシリンダライナ(5,6,7)を有しており、ライナ複合体(9)の、シリンダライナ(5,6,7)の半径方向外側の周壁面(10,11,12)とウェブ(2,3,4)の隣接面とによって形成された側面が、粗面構造を有している形式のものにおいて、ライナ複合体(9)の側面が、シリンダブロック(1)により形成された鋳包み周壁(26)によって取り囲まれており、該鋳包み周壁(26)が、シリンダブロック(1)に成形されたウォータジャケットのための切欠き(25)をシリンダライナ側で仕切っており、ウェブ(2,3,4)に、冷媒の導入および導出のための開口(31,32,34,35)を備えたそれぞれ少なくとも1つの冷媒貫通路(14,15,16,33)が加工されており、少なくとも1つの開口(32,34,35)が、鋳包み周壁(26)を介してウォータジャケットのための切欠き(25)に開口していることを特徴とする、内燃機関に用いられるシリンダブロック。
【請求項2】
冷媒貫通路(33)が、2つの開口(34,35)を有しており、両開口(34,35)が、鋳包み周壁(26)を介してウォータジャケットのための切欠き(25)に開口している、請求項1記載のシリンダブロック。
【請求項3】
冷媒貫通路(14,15,16)が、2つの開口(31,32)を有しており、両開口(31,32)のうち、一方の開口(31)が、各ウェブ(2,3,4)のシリンダヘッド側の端面(30)に開口していて、他方の開口(32)が、鋳包み周壁(26)を介してウォータジャケットのための切欠き(25)に開口している、請求項1記載のシリンダブロック。
【請求項4】
冷媒貫通路(14,15,16)が、それぞれ各ウェブ(2,3,4)のシリンダヘッド側の端面に加工された第1位の盲孔(27)と、ウォータジャケットのための切欠き(25)のシリンダライナ側の仕切り面(28)から鋳包み周壁(26)を介して各ウェブ(2,3,4)に加工された第2の盲孔(29)とから成っており、第1の盲孔(27)の孔端部が、第2の盲孔(29)の孔端部に開口するように、第1の盲孔(27)と第2の盲孔(29)とが配置されている、請求項3記載のシリンダブロック。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項4】)

イ 「【0001】
本発明は、内燃機関に用いられるシリンダブロックであって、該シリンダブロックが、アルミニウム-シリコン合金から成っており、シリンダブロック内に、一体に形成されたライナ複合体が、ダイカスト法で鋳包まれており、該ライナ複合体が、過共晶アルミニウム-シリコン合金から成っていて、一列に配置された、ウェブを介して互いに結合された少なくとも2つのシリンダライナを有しており、ライナ複合体の、シリンダライナの半径方向外側の周壁面とウェブの隣接面とによって形成された側面が、粗面構造を有している形式のものに関する。
【0002】
国際公開第2004/009986号パンフレットに基づき、ダイカスト法で製作された、内燃機関に用いられるシリンダブロックが公知である。この公知のシリンダブロック内には、ライナ複合体が鋳包まれている。このライナ複合体は、一列に配置された、ウェブを介して互いに結合された複数のシリンダライナから成っている。冷却のためには、シリンダライナとウェブとに、互いに接続された冷却通路が加工されている。この冷却通路はウォータジャケットを成している。この場合、1つには、内部に位置する冷却通路を備えたシリンダライナの製作に極めて手間がかかることが不利である。もう1つには、シリンダライナの壁に加工された通路の領域で極めて肉薄のシリンダライナが鋳造の間に損傷しないようにするために、通路がダイカスト法の間に砂または塩で充填される場合にしか、通路を備えたシリンダライナを、ダイカスト法で製作したいシリンダブロック内への鋳包みのために使用することができない。
【0003】
ここから出発して、本発明の課題は、公知先行技術の欠点を回避し、ダイカスト法でシリンダブロック内に鋳包むための熱的にかつ機械的に高負荷可能なライナ複合体を備えた廉価に製作可能なシリンダブロックを提供することである。」(段落【0001】ないし【0003】)

ウ 「【0004】
この課題を解決するために本発明のシリンダブロックでは、ライナ複合体の側面が、シリンダブロックにより形成された鋳包み周壁によって取り囲まれており、該鋳包み周壁が、シリンダブロックに成形されたウォータジャケットのための切欠きをシリンダライナ側で仕切っており、ウェブに、冷媒の導入および導出のための開口を備えたそれぞれ少なくとも1つの冷媒貫通路が加工されており、少なくとも1つの開口が、鋳包み周壁を介してウォータジャケットのための切欠きに開口しているようにした。
【0005】
本発明のシリンダブロックの有利な態様によれば、冷媒貫通路が、2つの開口を有しており、両開口が、鋳包み周壁を介してウォータジャケットのための切欠きに開口している。
【0006】
本発明のシリンダブロックの有利な態様によれば、冷媒貫通路が、2つの開口を有しており、両開口のうち、一方の開口が、各ウェブのシリンダヘッド側の端面に開口していて、他方の開口が、鋳包み周壁を介してウォータジャケットのための切欠きに開口している。
【0007】
本発明のシリンダブロックの有利な態様によれば、冷媒貫通路が、それぞれ各ウェブのシリンダヘッド側の端面に加工された第1位の盲孔と、ウォータジャケットのための切欠きのシリンダライナ側の仕切り面から鋳包み周壁を介して各ウェブに加工された第2の盲孔とから成っており、第1の盲孔の孔端部が、第2の盲孔の孔端部に開口するように、第1の盲孔と第2の盲孔とが配置されている。(段落【0004】ないし【0007】)

エ 「【0016】
図1には、シリンダブロック1が示してある。このシリンダブロック1は、選択された図面において部分的に切り開かれている。この場合、断面は斜線で示してある。シリンダブロック1は、亜共晶アルミニウム-シリコン合金から成っていて、ダイカスト法で製作される。この場合、シリンダブロック1内にシリンダライナ5,6,7が一緒に鋳包まれる。これらのシリンダライナ5,6,7は一列に配置されていて、ウェブ2,3,4を介して互いに結合されており、これによって、ライナ複合体9が得られる。部分的に切り開いて図示したシリンダブロック1内には、3つのシリンダライナ5,6,7を認めることができる。
【0017】
シリンダブロック1は、オイル戻し通路17,18,19,20と、さらに、ねじ締結孔21,22,23,24とを有している。その上、シリンダブロック1には、ウォータジャケットのための切欠き25が成形されている。ウォータジャケットによって、シリンダライナ5,6,7は冷却の目的のために取り囲まれている。このシリンダライナ5,6,7の側方では、切欠き25が鋳包み周壁26によって仕切られる。この鋳包み周壁26によって、シリンダライナ5,6,7と、このシリンダライナ5,6,7の間に配置されたウェブ2,3,4とが取り囲まれており、これによって、図1に示した実施例では、ドライ式のシリンダライナ5,6,7が提供される。
【0018】
シリンダライナ5,6,7の半径方向外側の周壁面10,11,12は、特に図2に良好に認識可能に示したように、アンダカットを有する、0.2mm?1.5mmの間の深さを備えた粗面構造を有している。本実施例では、この粗面構造の深さが平均して0.5mmに寸法設定されている。周壁面10,11,12の粗面構造によって、シリンダライナ5,6,7とシリンダブロック1の鋳包み周壁26との間に形状接続的なかつ摩擦接続的な結合が達成される。
【0019】
シリンダライナ5,6,7によって形成されたライナ複合体9は、低圧鋳造法でまたは重力鋳造法で製作される。このためには、過共晶アルミニウム-シリコン合金が使用される。この過共晶アルミニウム-シリコン合金は、アルミニウムのほかに、15%?21%のシリコンと、1%?5%のマグネシウムと、2%?5%の銅とを含有している。さらに、アルミニウム-シリコン合金は、0.7%?1.5%の鉄と、0.3%?0.7%のマンガンとを含有していてよい。
【0020】
シリンダライナ5,6,7のより良好な冷却のためには、ウェブ2,3,4に冷媒貫通路14,15,16が加工されている。
【0021】
冷媒貫通路16が、図2に拡大して示してあり、残りの冷媒貫通路14,15も同じく、ウェブ4のシリンダヘッド側の端面30に設けられた開口31を備えた、ウェブ4のシリンダヘッド側の端面30に加工された第1の盲孔27と、鋳包み周壁26に設けられた開口32を備えた、切欠き25のシリンダライナ側の仕切り面28から鋳包み周壁26を介してウェブ4に加工された第2の盲孔29とから成っている。この場合、両盲孔27,29は、第2の盲孔29が第1の盲孔27の下側の端部に開口するように方向付けられている。本実施例では、盲孔27,29が2.5mmの直径を有している。この場合、ウェブ2,3,4の幅はそれぞれ7mmに寸法設定されている。
【0022】
冷媒貫通路16を通る冷媒(水)の通流は、本実施例では、矢印31,32の方向に行われる(図2参照)。なぜならば、シリンダヘッド(図示せず)がシリンダブロック1に組み付けられている完全に組み付けられた内燃機関では、切欠き25内に位置する冷却水の圧力が十分に大きく、これによって、冷却水の一部が盲孔29,27を通って押し流され、ひいては、内燃機関の熱的に最も高負荷される領域であるウェブ4の上側の領域が冷却されるからである。
【0023】
図3には、ウェブ2,3,4に成形された冷媒貫通路33が2つの開口34,35を有しているシリンダブロック1の構成が示してある。両開口34,35は鋳包み周壁26を介してウォータジャケットのための切欠き25に開口している。冷媒貫通路14,15,16,33と盲孔27,29とはエロージョン加工によって製作することができる。」(段落【0016】ないし【0023】)

(2)上記(1)及び図面から分かること

カ 上記(1)アないしエ及び図面の記載から、引用文献には、内燃機関に用いられるシリンダブロック1に関する発明が記載されていることが分かる。

キ 上記(1)エ及び図面の記載から、引用文献に記載されたシリンダブロック1は、複数のシリンダライナ5,6,7を取り囲むように形成されたウォータジャケットを備えることが分かる。

ク 上記(1)エ(特に段落【0017】及び【0020】ないし【0022】)及び図面の記載から、引用文献に記載されたシリンダブロック1において、シリンダライナ5,6,7の間に配置されたウェブ2,3,4に冷媒貫通路14,15,16が加工されていることが分かる。また、段落【0022】の「冷媒(水)」という記載から、冷媒として水が使用されていることが分かる。

ケ 上記(1)エ(特に段落【0017】及び【0020】ないし【0022】)及び図面(特に【図2】)の記載から、引用文献に記載されたシリンダブロック1において、冷媒貫通路16は、ウェブ4の頂面における中央部分から離間した位置に開口し(開口31)、頂面から離間するほど中央部分に近づくようにシリンダライナ7の軸線の延伸方向に対して傾けて形成された第1の盲穴27と、第1の盲穴27の先端部に連通する一方でウォータジャケット内に開口し、第1の盲穴27に連通する部分から開口32に向かって次第に頂面に近づくようにシリンダライナ7の軸線の延伸方向に対して傾けて形成された第2の盲穴29とによって形成されてなることが看取できる。

コ 上記(1)エ(特に段落【0022】)の「冷媒貫通路16を通る冷媒(水)の通流は、本実施例では、矢印31,32の方向に行われる(図2参照)。・・・内燃機関の熱的に最も高負荷される領域であるウェブ4の上側の領域が冷却されるからである。」という記載から、引用文献に記載されたシリンダブロック1に設けられた冷媒貫通路16は、内燃機関の最も高温になる領域であるウェブ4の上側の領域が冷却されるように設けられていることが分かる。

(3)引用発明
以上の(1)及び(2)並びに図1ないし4の記載を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「複数のシリンダライナ5,6,7を取り囲むように形成されたウォータジャケットを備え、隣接するシリンダライナ5,6,7の間に位置するウェブ2,3,4内に、ウォータジャケット内の冷媒を導く冷媒貫通路16を備えたシリンダブロック1であり、
冷媒貫通路16が、ウェブ2,3,4の頂面における中央部分から離間した位置に開口し、頂面から離間するほど中央部分に近づくようにシリンダライナ7の軸線の延伸方向に対して傾けて形成された第1の盲穴27と、第1の盲穴27の先端部に連通する一方でウォータジャケット内に開口し、第1の盲穴27に連通する部分から開口32に向かって次第に頂面に近づくように軸線の延伸方向に対して傾けて形成された第2の盲穴29とによって形成されてなる、
シリンダブロック1。」

第4 対比
本願発明と、引用発明とを対比する。
引用発明における「シリンダライナ5,6,7」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「シリンダボア」に相当し、以下同様に、「ウォータジャケット」は「ウォータジャケット」に、「ウェブ2,3,4」は「ボア間隔壁」に、「冷媒貫通路16」は「冷却水通路」に、「第1の盲穴27」は「ヘッド側ドリル穴」に、「開口32」は「開口部」に、「第2の盲穴29」は「ジャケット側ドリル穴」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明における「第1の盲穴27」は、「ヘッド側穴」という限りにおいて、本願発明における「ヘッド側ドリル穴」に相当し、同様に、引用発明における「第2の盲穴29」は、「ジャケット側穴」という限りにおいて、本願発明における「ジャケット側ドリル穴」に相当する。

したがって、本願発明と、引用発明とは、
「複数のシリンダボアを取り囲むように形成されたウォータジャケットを備え、隣接するシリンダボアの間に位置するボア間隔壁内に、ウォータジャケット内の冷却水を導く冷却水通路を備えたシリンダブロックであり、
冷却水通路が、ボア間隔壁の頂面における中央部分から離間した位置に開口し、頂面から離間するほど中央部分に近づくようにシリンダボアの軸線の延伸方向に対して傾けて形成されたヘッド側穴と、ヘッド側穴の先端部に連通する一方でウォータジャケット内に開口し、ヘッド側穴に連通する部分から開口部に向かって次第に頂面に近づくように軸線の延伸方向に対して傾けて形成されたジャケット側穴とによって形成されてなる、
シリンダブロック。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(1)本願発明においては、「冷却水通路」が「ボア間隔壁の最も薄い部分である中央部分を通さずに」冷却水を導くのに対し、引用発明においては、「冷媒貫通路」がそのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)「ヘッド側穴」及び「ジャケット側穴」に関して、本願発明においては、「ヘッド側ドリル穴」及び「ジャケット側ドリル穴」であり、そのうち「ジャケット側ドリル穴」は、「ジャケット側ドリル穴をウォータジャケットの外部まで延ばした延長線と、ウォータジャケットの外周壁におけるヘッドボルトボスとの間に空隙が確保されるように形成されている」のに対し、引用発明においては「第1の盲穴」及び「第2の盲穴」がそのように特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

第5 判断
(1)相違点1について
サイアミーズ型のシリンダブロックの冷却水通路の技術分野において、隣接するシリンダボアの間に位置するボア間隔壁内に、「ボア間隔壁の最も薄い部分である中央部分を通さずに」ウォータジャケット内の冷却水を導く技術は、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、平成26年8月19日付け拒絶理由通知書において引用された特開平9-151784号公報[例えば、段落【0012】ないし【0014】、【0017】ないし【0019】及び図3ないし4を参照。]及び実願昭62-89319号(実開昭63-198449号)のマイクロフィルム[例えば、明細書第4ページ第19行ないし第5ページ第11行及び第7ページ第2行ないし第9ページ第11行並びに第1ないし3図を参照。]並びに実願平1-93362号(実開平3-32153号)のマイクロフィルム[例えば、明細書第4ページ第19行ないし第5ページ第10行及び第7ページ第4行ないし第8ページ第17行並びに第1、2及び4図を参照。]等を参照。)である。
してみれば、引用発明において、周知技術1を適用することにより、相違点1に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
〔補足〕
なお、引用発明において、「内燃機関の熱的に最も高負荷される領域であるウェブ4の上側の領域が冷却される」(上記第4(2)コを参照。)という機能を維持しつつ、周知技術1を適用すると、次の2つの構造が考えられる。
(a)引用文献の【図2】において、第1の盲穴27はそのままにして、第2の盲穴29を図2の右側でなく左側に設ける構成。
(b)引用文献の【図2】において、第2の盲穴29を中央部分より手前で終了し、第1の盲穴27は図2の位置と対象の位置(右側)に設ける構成。
そして、上記(a)及び(b)のいずれの構造としても、相違点1に係る本願発明の発明特定事項を満たすものとなる。

(2)相違点2について
サイアミーズ型のシリンダブロックの冷却水通路の技術分野において、冷却水通路をドリル穴とすることは、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、平成26年8月19日付け拒絶理由通知書において引用された特開平9-151784号公報[例えば、段落【0014】の記載を参照。]のほか、特開2005-256648号公報[例えば、請求項1ないし3及び段落【0025】並びに図1ないし3を参照。]、特開2001-107801号公報[例えば、段落【0005】、【0009】、【0017】及び【0018】並びに図1ないし3を参照。]、及び特開2002-168147号公報[例えば、特許請求の範囲の請求項1ないし4、段落【0015】及び【0016】並びに図1及び2を参照。]等を参照。)である。
そして、周知技術2を採用するにあたって、「ジャケット側ドリル穴をウォータジャケットの外部まで延ばした延長線と、ウォータジャケットの外周壁におけるヘッドボルトボスとの間に空隙が確保される」ようにすることは、当業者が当然考慮すること(以下、「当業者考慮事項」という。例えば、上記特開2001-107801号公報[例えば、段落【0005】、【0009】、【0017】及び【0018】並びに図1ないし3を参照。]を参照。)である。
してみれば、引用発明において、周知技術2及び当業者考慮事項を採用することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。

(3)作用効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、周知技術1及び2並びに当業者考慮事項から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び2並びに当業者考慮事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術1及び2並びに当業者考慮事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-06 
結審通知日 2016-05-10 
審決日 2016-05-30 
出願番号 特願2011-51793(P2011-51793)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 松下 聡
金澤 俊郎
発明の名称 シリンダブロック  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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