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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1316972
審判番号 不服2015-14211  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-29 
確定日 2016-08-02 
事件の表示 特願2012-122700「モニタリングシステムにおける信頼性を向上させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月24日出願公開、特開2013- 17159、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月30日(パリ条約による優先権主張2011年6月30日、欧州特許庁)の出願であって、平成25年8月23日付けで拒絶理由が通知され、平成25年11月27日付けで、意見書及び手続補正書が提出され、平成26年5月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成26年8月12日付けで、意見書が提出され、平成27年3月23日付けで拒絶査定がされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成27年7月29日付けで請求された拒絶査定不服審判である。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成25年11月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のものと認められる。

なお、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)のA?Fについては、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成A」、・・・、「構成F」という。)

「【請求項1】
A モニタリングデータの記憶に失敗する危険性を低下させる方法であって、
B ネットワーク接続を介して、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)からネットワーク接続記憶装置(22)、すなわちNSDにテストメッセージ(202)を定期的に送付するステップと、
C テストメッセージ(202)の送付に続くイベントが、NSD(22)が正しく動作していないことを示す場合、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)内でNSD故障信号を生成するステップと、
D NSD故障信号に応答して、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)のハウジングの外での検出のために、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)から故障メッセージ(207)を送付するステップと
を含み、
E 前記故障メッセージ(207)の送付が、人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発することを含む
F 方法。」

【請求項2】
テストメッセージ(202)が、NSD(22)のアプリケーション層に送られる、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
ネットワーク接続ビデオカメラ(12)からテストメッセージ(212)が送られると、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)内でタイマ(216)をセットするステップをさらに含み、
タイマ(216)が満了し、NSD(22)からレスポンスが受信されていない場合、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)が、NSD(22)を、正しく動作していないように扱い、前記NSD故障信号(218)が生成される、請求項1または2に記載の方法。

【請求項4】
前記ネットワーク接続ビデオカメラ(12)および前記NSD(22)を含むシステムを保守する人に、離れた所から警報を出すことを可能にするために、故障メッセージ(207)の送付にネットワークを介して所定のアドレスに電子メッセージを送付することが含まれる、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。

【請求項5】
人間によって知覚可能な信号が光である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。

【請求項6】
人間によって知覚可能な信号が音である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。

【請求項7】
テストメッセージ(202)が、テスト目的でのみデータを書き込むための書込み命令を含むメッセージ(208)であり、書込み命令が失敗した場合、NSD(22)が、正しく動作していないと見なされる、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。

【請求項8】
テストメッセージ(202)が、状況リクエストを含む状況チェックメッセージである、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。」

第3 原査定の理由の概要

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1.特開2007-036369号公報
刊行物2.特開2006-086654号公報
刊行物3.特開2004-334739号公報
刊行物4.特開2003-243186号公報
刊行物5.米国特許出願公開第2008/0088695号明細書
刊行物6.特開2007-019916号公報

ネットワーク接続装置の異常判定のためのテストメッセージを定期的に送付することは、例えば刊行物2および刊行物3等に記載されている技術であり、当該技術を刊行物1のネットワーク接続ビデオカメラからネットワーク接続記録装置の異常判定を行う手段において採用することは、上記各刊行物がネットワーク接続装置の異常判定なる共通の技術に属することからみて、当業者が容易に想到し得たことと認められる。また、故障表示手段として、人間によって知覚可能な信号(光または音など)を生成しハウジングの外で前記信号を発することは、例えば刊行物4ないし6等に記載されている周知技術にすぎず、当該周知技術を刊行物1の故障メッセージの送付手段において採用することは、上記各刊行物が故障表示なる共通の技術に属することからみて、当業者が適宜なし得たことと認められる。
したがって、請求項1-8に係る発明は、刊行物1-6に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。

第4 当審の判断
1.各刊行物について
(1-1)刊行物1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-036369号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「監視カメラ装置及び監視カメラシステム」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0005】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、ネットワークや記録装置側で故障が発生した場合にそのことを保守員に通知することができ、さらに個人情報保護法を遵守することができる監視カメラ装置及び監視カメラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は下記構成により達成される。
(1) 監視カメラ装置において、ネットワークに接続された外部の記録装置と前記ネットワークを含む伝送路経由で通信を行い、撮影した画像を前記記録装置へ送信する通信手段と、前記記録装置の故障情報又は前記ネットワークの障害情報を収集する故障情報収集手段と、前記記録装置の故障又は前記ネットワークに障害が発生した場合、装置本体に内蔵したメモリで録画をバックアップするバックアップ手段と、前記記録装置の故障又は前記ネットワークに障害が発生した場合、前記メモリにバックアップ録画を行ったことと故障や障害が発生したことを所定の通報先に電子メール又は電話で通報する通報手段と、を備える。
【0007】
この構成により、記録装置の故障やネットワーク障害が発生した場合、画像データのバックアップ録画を行うと共に、故障や障害が発生したことを電子メール又は電話によって保守員に通報するので、故障や障害に対する早期の復旧が可能となる。」

イ.「【0016】
本願発明の監視カメラ装置は、記録装置の故障やネットワーク障害が発生した場合、画像データのバックアップ録画を行うと共に、故障や障害が発生したことを電子メール又は電話によって保守員に通報するので、故障や障害に対する早期の復旧が可能となる。」

ウ.「【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係る監視カメラシステムの概略構成を示すブロック図である。この図において、本実施の形態の監視カメラシステムは、監視カメラ装置10と、記録装置20と、携帯電話(携帯端末)30とを備えて構成される。監視カメラ装置10及び記録装置20は、それぞれインターネット等のネットワーク40に接続できる機能を有している。携帯電話30は、携帯電話網50を介してインターネット40に接続できる機能を有する。
【0022】
監視カメラ装置10は、撮影して得られた画像データをインターネット40を含む伝送路経由で記録装置20へ送信する。また、監視カメラ装置10は、記録装置20本体の故障情報や記録装置20内部の故障情報の他、ネットワークの障害情報を収集し、これらの故障や障害を検出したときに画像データのバックアップを行い、さらに故障又は障害が発生したことをインターネット40と携帯電話網50経由で保守員の所持する携帯電話30に通報する。この通報においては、電子メールで行うか、あるいは直接電話をかけるかする。本実施の形態では、電子メールで行うようにしている。記録装置20は、Webサーバ機能を有し、監視カメラ装置10から送信されてきた画像データを記録する。以下、監視カメラ装置10及び記録装置20を詳細に説明する。」

エ.「【0025】
バックアップメモリ部105は、記録装置20本体の故障、記録装置20内部の故障、ネットワーク障害が発生したときの画像データの保存に用いられる。この際、復旧後、正常に送信された場合は送信完了時に消去されるが、故障や障害が発生して正常に送信されなかった場合は消去されることなく保存される。バックアップメモリ部105は装置本体に対して着脱自在となっており、その抜き差しが記録媒体抜き差し検出部108にて検出される。なお、バックアップメモリ部105には、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ(例えばカード状記録媒体)が用いられる。」

オ.「【0034】
〔画像記録処理及びHTTP通信処理〕
図5の画像記録処理において、画像データを所定の時間間隔でバックアップメモリ部105に記録する(ステップST10、A11)。次いで、HTTP通信処理側に「画像読み出し可能」を通知する(ステップST11、A12)。HTTP通信処理側に「画像読み出し可能」を通知した後、HTTP通信処理側から通知があったかどうか判定し(ステップST12、A13)、“NG”の通知であれば、ステップST10に戻る。一方、HTTP通信処理側からの通知が“OK”の場合は、携帯電話30に電子メールを送信して、保守員に記録装置20本体の故障、記録装置20内部の故障又はネットワーク障害が発生したことを知らせ(ステップST13)、バックアップメモリ部105に記録された画像データを消去し(ステップST14、A14)、ステップST10に戻る。
【0035】
次に、図5のHTTP通信処理において、画像送信要求(HTTPリクエスト)を待ち受けする(ステップST20、A21)。そして、画像送信要求(HTTPリクエスト)を受信すると(ステップST21、A22)、バックアップメモリ部105から画像データを読み出し(ステップST22、A23)、記録装置20に送信する(ステップST23、A24)。記録装置20へ画像データの送信を行った後、その送信が正常に完了したかどうかを判定する(ステップST24、A25)。この場合、監視カメラ装置10と記録装置20はデータの送受信において互い通信を行っており、監視カメラ装置10は、画像データの送信を行った後、記録装置20から画像データを受け取った旨の通知が所定時間内に来ない場合には、送信が正常に行われなかったと判断する。送信が正常に行われなかった場合は、画像記録処理側へ“NG”を通知する(ステップST26、A28)。これに対して、画像データの記録装置20への送信が正常に完了した場合は、記録装置20に異常はないかどうか判定する(ステップST25、A26)。記録装置20に異常があった場合は、ステップST26に進み、画像記録処理側へ“NG”を通知する。これに対して、記録装置20に異常がなかった場合は、画像記録処理側へ“OK”をSNMPポーリングとトラップ,クエリ等により通知する(ステップST27、A27)。」

上記ア.?オ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮し、刊行物1について検討する。

(a)刊行物1には、上記ア.、イ.に記載があるように、故障に対する早期の復旧を可能とするために、記録装置側で故障が発生した場合に、監視カメラ装置本体に内蔵したメモリで録画をバックアップし、故障が発生したことを電子メールによって保守員に通知する監視カメラ装置についての記載がある。

(b)上記オ.の記載から、刊行物1の監視カメラ装置は、画像記録処理及びHTTP通信処理を行うものである。

(c)
(c-1)上記ウ.の記載から、刊行物1の監視カメラ装置は、撮影して得られた画像データをネットワーク経由で記録装置へ送信するものである。

(c-2)上記エ.の記載から、刊行物1の監視カメラ装置のバックアップメモリは、記録装置本体の故障が発生したときの画像データの保存に用いられ、正常に送信された場合は送信完了時に消去されるが、故障が発生して正常に送信されなかった場合は消去されることなく保存されるものである。

(c-3)上記オ.の段落0035の記載から、刊行物1の監視カメラ装置のHTTP通信処理においては、
バックアップメモリ部から画像データを読み出し、
記録装置に送信し、
記録装置へ画像データの送信を行った後、記録装置に異常はないかどうか判定し、
記録装置に異常がなかった場合は、画像記録処理側へ“OK”を通知し、記録装置に異常があった場合は、画像記録処理側へ“NG”を通知するものである。

(c-4)上記オ.の段落0034には、「HTTP通信処理側からの通知が“OK”の場合は、携帯電話30に電子メールを送信して、保守員に記録装置20本体の故障、記録装置20内部の故障又はネットワーク障害が発生したことを知らせ(ステップST13)、バックアップメモリ部105に記録された画像データを消去し」と記載されているが、上記エ.の記載、上記オ.の段落0035の記載からみて、当該記載は、
「HTTP通信処理側からの通知が“NG”の場合は、携帯電話30に電子メールを送信して、保守員に記録装置20本体の故障、記録装置20内部の故障又はネットワーク障害が発生したことを知らせ(ステップST13)、バックアップメモリ部105に記録された画像データを消去することなく保存し」の誤記である。

すなわち、上記エ.、オ.の記載から、刊行物1の監視カメラ装置の画像記録処理においては、
画像データを所定の時間間隔でバックアップメモリ部に記録し、
HTTP通信処理側からの通知が“NG”の場合は、携帯電話に電子メールを送信して、保守員に記録装置本体の故障が発生したことを知らせ、バックアップメモリ部に記録された画像データを消去することなく保存するものである。

(c-5)上記(c-1)ないし(c-4)の記載をまとめると、刊行物1の監視カメラ装置は、
画像記録処理において、撮影して得られた画像データを所定の時間間隔でバックアップメモリ部に記録し、
HTTP通信処理において、バックアップメモリ部から画像データを読み出し、ネットワーク経由で記録装置に送信し、記録装置へ画像データの送信を行った後、記録装置に異常はないかどうか判定し、記録装置に異常があった場合は、画像記録処理側へ“NG”を通知し、
画像記録処理において、HTTP通信処理側からの通知が“NG”の場合は、携帯電話に電子メールを送信して、保守員に記録装置本体の故障が発生したことを知らせ、バックアップメモリ部に記録された画像データを消去することなく保存するものである。

(d)刊行物1の監視カメラ装置は、上記(c-5)の各動作を行うものであり、刊行物1には、各動作のステップを含む方法が開示されているといえる。

したがって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されている。
なお、a?eについては、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成a」、・・・、「構成e」という。)

「a 監視カメラ装置は、画像記録処理及びHTTP通信処理を行うものであり、
b 画像記録処理において、撮影して得られた画像データを所定の時間間隔でバックアップメモリ部に記録するステップ、
c HTTP通信処理において、
c1 バックアップメモリ部から画像データを読み出し、ネットワーク経由で記録装置に送信するステップ、
c2 記録装置へ画像データの送信を行った後、記録装置に異常はないかどうか判定し、記録装置に異常があった場合は、画像記録処理側へ“NG”を通知するステップ、
d 画像記録処理において、HTTP通信処理側からの通知が“NG”の場合は、携帯電話に電子メールを送信して、保守員に記録装置本体の故障が発生したことを知らせ、バックアップメモリ部に記録された画像データを消去することなく保存するステップを含む
e 方法。」

(1-2)刊行物2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-086654号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「撮像装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0003】
このような無線LAN技術の普及に伴い、撮影した画像を無線LANを介してファイルサーバーに保存することで、記録媒体の容量を気にすることなく撮影を可能としようとするデジタルカメラが提案されている(例えば、特許文献1)。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のデジタルカメラでは、撮影前にデジタルカメラとファイルサーバーとの通信が正常に行えるか否かをデジタルカメラで確認することができない。そのため、デジタルカメラとファイルサーバーとの間の通信が正常に行うことができないにもかかわらず、デジタル画像を撮影してしまい、せっかく撮影したデジタル画像をファイルサーバーに正常に保存することができないということが発生する。特に、デジタルカメラとファイルサーバーとの間に無線LANが存在する場合には通信回線が不安定となることが多く、デジタルカメラとファイルサーバーとの通信が正常に行えないことが多い。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、コンピュータネットワーク上のファイルサーバーへ撮影画像を転送する機能を有する撮像装置(デジタルカメラやデジタルビデオカメラなど)において、撮像装置とファイルサーバーとの間の通信が正常に行えるか否かを確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、コンピュータネットワーク上のファイルサーバーへ撮影画像を転送する機能を有する撮像装置において、ファイルサーバーとの通信設定を保持する記憶手段と、通信設定に従ってファイルサーバーと通信を行う通信手段とを有し、通信手段が、ファイルサーバーに対してpingコマンドの送信を行う機能を有することを特徴とする撮像装置によって達成される。」

イ.「【0021】
ONボタン250及びOFFボタン260は、pingモードとするかどうかを設定するためのボタンであり、操作部109の十字ボタンを用いて選択状態とし、選択/実行キーを押下することでON、OFFいずれかを指定する。また、pingコマンドの送信を行った場合には、その結果を示すメッセージ230として、指定されたIPアドレスから応答があったかどうか、またその失敗率がどの程度であったかの表示が行われる。
(中略)
【0023】
例えば、ユーザが、ネットワークインターフェース111による通信機能が使用可能となるように、通信に必要な設定項目を図示しない設定メニューから設定した後、図2のping設定メニュー200で送信先アドレスを入力し、ONボタン250を選択、実行するとpingモードに入る。本実施形態では、pingモードにおいて、操作部109に含まれるシャッターボタンが押下(半押し、全押しのいずれであっても良い)されると、メイン制御部108はping設定メニュー200で設定された送信回数、設定された送信先アドレスへpingコマンドを送信し続ける。メイン制御部108は、pingコマンドの送信中にリアルタイムに送信結果を、又は送信処理を終了してから最終的な結果のみを、ping設定メニュー200にメッセージ230として表示してもよい。
【0024】
ping設定メニュー200でpingコマンドの送信回数が設定されている場合、メイン制御部108は、シャッターボタンの押下に応答して、設定されている回数だけpingコマンドを送信する。その場合はシャッターボタンを押し続けても設定回数分しか送信しない。また、設定回数が無制限を意味するものである場合、シャッターボタンを一回押すとその後中止又はキャンセル指示があるまでpingコマンドを所定時間間隔で送信し続ける。
【0025】
図3は、送信回数の設定内容とシャッターボタンとの関係を示す図である。
例えば、pingコマンドの送信回数が有限回数に設定されている場合(図3では3回に設定されているものとする)には、シャッターボタンがONにされたときにpingコマンドの送信が開始され、シャッターボタンがONである間、所定時間間隔でpingコマンドの送信を行う。本実施形態では、シャッターボタンが半押し状態又は全押し状態になったときにシャッターボタンをONにする。そして、設定回数分のpingコマンドの送信が終了すると(時刻T1)、pingモードを解除し、処理を終了する。一方、送信回数が「無限」に設定された場合には、シャッターボタンがONになるとpingコマンドの送信を開始し、ONである間、所定時間間隔でpingコマンドの送信を行う点は同じだが、その後シャッターボタンが時刻T2でOFFしてもpingコマンドの送信を継続する。そして、再度シャッターボタンがONすると(時刻T3)、それによりpingコマンドの送信を終了し、pingモードを解除する。」

ウ.「【0035】
ping機能による通信環境の結果は送信テストの送受信ができるかどうかで結果が出る。送信するパケットが100%届けば(パケット損失率が0%であれば)通信環境はよく、0%であれば通信できない。その中間の送信成功率もある。ping機能での通信結果が100%でない場合や、予め定めた所定値未満(パケット損失率が0を超える所定値以上)の場合には表示部106に記憶媒体20又は内蔵メモリに保存することを勧める警告を出力することで、撮影画像を安全に処理できるように促せる。また、パケットの損失率が0%でない場合には、ネットワークインターフェース111によるサーバーへのデータ送信と並行して、記憶媒体20や内蔵メモリへの記録を行うようにしても良い。もちろん、どの程度のパケット損失率であれば記録媒体への並行記録を行うかや、並行記録を行う条件であってもユーザの指示によって並行記録を行わずにサーバーへの通信のみを実行可能に構成することもできる。」

上記ア.?ウ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、刊行物2のデジタルビデオカメラは、
デジタルビデオカメラとファイルサーバーとの間の通信が正常に行えるか否かを確認できるようにすることを目的として、
ファイルサーバーに対してpingコマンドを所定時間間隔で送信し続け、
応答があったかどうか、またその失敗率がどの程度であったかの表示を行い、
ping機能での通信結果が100%でない場合には表示部に内蔵メモリに保存することを勧める警告を出力するものである。

(1-3)刊行物3について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-334739号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「データのバックアップ方法及びバックアップデータ復旧方法、並びに、ネットワーク蓄積装置及びネットワーク蓄積プログラム」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ネットワーク上で、原データとその原データのバックアップデータとを分散させて蓄積するデータの蓄積技術に関する。」

イ.「【0036】
[第一の実施の形態]
(ネットワーク蓄積装置〔自律蓄積装置〕)の構成)
図1は、本発明における第一の実施の形態であるネットワーク蓄積装置の構成を示したブロック図である。ネットワーク蓄積装置1Aは、ネットワークNを介して他の複数のネットワーク蓄積装置と協調して、データの分散と多重化(バックアップ)を行うものである。また、ネットワーク蓄積装置1Aは、他のネットワーク蓄積装置が故障等によって、データを消失した場合、他の稼動しているネットワーク蓄積装置と自律協調してデータの復旧を行うものでもある。以下、ネットワーク蓄積装置を自律蓄積装置と呼ぶこととする。ここでは、図1に示すように、自律蓄積装置1Aを蓄積装置2Aとコントローラ3Aとで構成した。」

ウ.「【0048】
コントローラ3Aは、ネットワークNを介して、他の自律蓄積装置(1Am、1An、…)のコントローラ(図示せず)との間で、データの多重化、並びに、障害回復を行う制御を行うものである。ここでは、コントローラ3Aを通信手段30と、データ書き込み手段31と、バックアップデータ転送手段32と、稼動判定手段33と、記憶領域変更手段34と、関連付け情報更新手段35とを備えて構成した。」

エ.「【0057】
稼動判定手段33は、他の自律蓄積装置(1Am、1An、…)が稼動しているかどうかを判定するものである。ここでは、関連付け情報20を参照して、論理記憶区分(2a1、2a2)に関連付けられている自律蓄積装置(1Am、1An)に対して、稼動の判定を行うこととする。
【0058】
この稼動の判定は、定期的に他の自律蓄積装置(1Am、1An)に対して、応答を要求する命令を発行し、その応答の有無によって行う。例えば、TCP/IPのIPレベルで通信を行うことができるかどうかを確認するpingコマンドによって稼動の判定を行うことができる。これによって、稼動判定手段33は、本体の故障、ネットワークケーブルの抜け等による自律蓄積装置(1Am、1An)の障害を検知する。あるいは、他の自律蓄積装置(1Am、1An)に対して、データの書き込みができるか等によっても稼動の判定を行うことができる。
【0059】
ここで、稼動判定手段33が、他の自律蓄積装置(1Am又は1An)に障害が発生したと判断したときは、障害の回復を行う命令(障害回復指示)を記憶領域変更手段34に通知する。また、稼動判定手段33は、他の自律蓄積装置(1Am又は1An)の稼動状態を関連付け情報更新手段35に通知する。例えば、障害が発生した自律蓄積装置の識別子(例えばIPアドレス)を、関連付け情報更新手段35に通知することで稼動状態を通知する。」

上記ア.?エ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、刊行物3の自律蓄積装置は、
ネットワーク上で、原データとその原データのバックアップデータとを分散させて蓄積するものであり、
定期的に他の自律蓄積装置に対して、応答を要求するpingコマンドを発行し、その応答の有無によって、他の自律蓄積装置の稼動の判定を行い、
本体の故障等による他の自律蓄積装置の障害を検知するものである。

(1-4)刊行物4について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-243186号公報(以下、「刊行物4」という。)には、「照明装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、リモコン装置と通信可能な管理装置を設け、管理装置によりリモコン装置や照明器具の動作状態を管理し、管理装置により複数の照明負荷の一括制御などを可能とする構成が提案されている。このような通信技術を用いるときには送信先に確実に伝送されたか否かを確認することが要求される。
【0006】本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、照明器具の制御に適合するように通信技術を用いてデータを確実に伝送することを可能にした照明装置を提供することにある。」

イ.「【0034】マスタコントローラ3は、図4に示す構成を有し、マイクロプロセッサを主構成要素とする制御部30を有し、制御部30は通信部32を通して、リモコン装置2との間では電波によってデータを双方向に伝送し、サーバ4との間では有線のシリアル伝送によってデータを双方向に伝送する。さらに、マスタコントローラ3の通信部32は、照明器具1bとの間では赤外線を伝送媒体として単方向のデータ伝送が可能であり、照明器具1cとの間では電波を伝送媒体として双方向のデータ伝送が可能になっている。マスタコントローラ3にもリモコン装置2と同様にマスタコントローラ3を識別するためのIDと、通信相手として許容されるリモコン装置2およびサーバ4のIDとを格納するための記憶部33が制御部30に接続される。記憶部33には後述する短縮IDも格納される。記憶部33は無給電でも記憶内容を保持できかつ書換可能とするためにEEPROMを用いる。
【0035】マスタコントローラ3には、記憶部33の記憶内容を設定するためにスイッチからなる操作部34と、記憶部33に設定する内容を確認するための表示部35とが設けられる。ここに、マスタコントローラ3は複数の照明器具1a?1cを管理するから操作部34を構成するスイッチの個数を比較的多くなる。操作部34の操作によって、マスタコントローラ3のID、リモコン装置2のIDを記憶部33に格納することが可能になる。この操作部34により記憶部33の内容の登録および消去が可能になる。また、操作部34での設定内容は表示部35に表示される。表示部35は操作部34の設定内容を確認可能なものであればどのようなものでもよいが文字および図形を表示することができる構成が望ましく、たとえば液晶表示器が用いられる。また、液晶表示器で故障のような異常を報知することが可能であるが、異常を報知する手段として発光ダイオードを併用すれば異常を認識させやすくなる。マスタコントローラ3の電源部37は電池を電源としてもよいが、商用電源により給電し電源部37において内部回路の駆動に必要な電力に変換するのが望ましい。」

ウ.「【0065】ところで、上述した例はマスタコントローラ3がリモコン装置2または照明器具1cに対して与えた指示内容が正常に受信された例であるが、マスタコントローラ3から与えた指示内容が送信先に正常に受信されない場合もある。上述した動作ではマスタコントローラ3がリモコン装置2を個別に指定してデータを伝送した後に2秒間の時限動作を行い、時限動作中に信号が返送されたときに指示内容が送信先に正常に受信されたとみなしている。一方、2秒間の時限動作中に信号が返送されなければ、指示内容が送信先に正常に受信されなかったことになるから、この場合にはマスタコントローラ3から送信先に対してデータを再送する。ただし、送信先が複数であるときに、各送信先に個別に信号を伝送している間にいずれかの送信先について指示内容が正常に受信されなかったとしても次の送信先に指示内容を伝送する処理を継続し、すべての送信先に信号を伝送する処理が終了した時点で再送を行う。再送に際してはマスタコントローラ3がサーバ4から最初に指示を受けたときの動作を繰り返す。つまり、一斉同報を行った後に個別に信号を伝送するとともに返信を待ち受ける動作を行う。再送の最大回数は、あらかじめ設定されるかもしくは使用者がマスタコントローラ3の操作部34を操作して適宜に設定する。
【0066】マスタコントローラ3から送信先への信号の伝送について異常が検出されたときには、表示部35によって異常を報知するのが望ましい。また、マスタコントローラ3にブザーのような報知手段を設けておき、異常時に報知音によって報知してもよい。なお、異常の有無は各送信先ごとに個別に検出されるから、異常の生じた送信先を区別できるような形で報知することも可能である。
【0067】上述のようにして再送を行っても指示内容の受信が確認できないときには、マスタコントローラ3は指示内容を正常に受信しなかった送信先(リモコン装置2または照明器具1c)をサーバ4に通知し、サーバ4において表示部45に「「名称」(短縮ID)のリモコン装置の応答がない」旨の表示を行う。」

上記ア.?ウ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、刊行物4の管理装置(マスタコントローラ)は、
リモコン装置や照明器具の動作状態を管理するものであり、
リモコン装置または照明器具にデータを伝送した後、信号が返送されたときに、送信先に正常に受信されたとみなし、信号が返送されなければ、送信先に正常に受信されなかったとみなし、
送信先への信号の伝送について異常が検出された時には、表示部や発光ダイオードやブザーによって異常を報知し、
指示内容を正常に受信しなかったリモコン装置または照明器具をサーバに通知するものである。

(1-5)刊行物5について
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2008/0088695号明細書(以下、「刊行物5」という。)には、「Video Camera Stand With Video Server Function(訳:ビデオサーバ機能を備えたビデオカメラ台)」として、図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、翻訳文は、当審で付したものである。

「[0028](中略)The environment parameter input unit 172 may also a temperature sensor used to sense the temperature change in the surrounding environment of the video camera stand 100(e.g., when a fire accident occurs, the environmental temperature rises)and transfer the result to the network video server module 120.The environment parameter input unit 172 also may be a smoke sensor used to detect the smoke particles change in the surrounding environment of the video camera stand 100 (e.g., when a fire accident occurs, the increasing of the smoke particles in the environment can be detected)and transfer the detected result to the network video server module 120. Therefore, the environment parameter input unit 172 transfers the detected parameters corresponding to the surrounding environment of the video camera stand 100 to the video server module 120, and then transmits to a remote control system via the network line 158, thus, the situation of the surrounding environment of the video camera stand 100 is known by the user.
[0029]The alarm output unit 174 may be a speaker, a buzzer, or a display lamp (e.g., LED), which has the function of outputting an alarm to the surrounding environment of the video camera stand 100 through the network video server module 120.」
(訳:[0028](中略)環境パラメータ入力ユニット172は、ビデオカメラ台100の周囲の環境(例えば、火災事故が発生した時、環境温度は上昇する。)における温度変化を検知し、ネットワークビデオサーバモジュール120にその結果を伝送することに用いられる温度センサでもよい。環境パラメータ入力ユニット172は、ビデオカメラ台100の周囲の環境(例えば、火災事故が発生した時、環境内の煙粒子の増加が検出できる。)における煙粒子の変化を検出し、ネットワークビデオサーバモジュール120にその検出結果を伝送することに用いられる煙センサでもよい。それによって、環境パラメータ入力ユニット172は、ビデオカメラ台100の周囲の環境に対応して検出されたパラメータをビデオサーバモジュール120に伝送し、ネットワーク回線158を介してリモートコントロールシステムに送信し、したがって、ビデオカメラ台100の周囲の環境状況は、ユーザによって知られることとなる。
[0029]アラーム出力ユニット174は、スピーカ、ブザー、表示灯(例えば、LED)であり、ネットワークビデオサーバモジュール120を介して、ビデオカメラ台100の周囲の環境にアラームを出力する機能を有しても良い。)

上記記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、刊行物5のビデオカメラ台は、
温度や煙粒子の変化を検知し、スピーカ、ブザー、表示灯により、アラームを出力するものである。

(1-6)刊行物6について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-19916号公報(以下、「刊行物6」という。)には、「監視カメラシステム」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0008】
本発明によれば、侵入者等によって監視カメラ装置の電源の切断が不慮に行われた場合において監視カメラ装置の電源装置がアラームを発生することで侵入者への威嚇等が可能となり、監視カメラ装置の動作モードや監視状態を電源装置で検知し、これに対応してアラームを発することで通常時と不慮時等の警告音等を切り替えることができる。」

イ.「【0020】
電源が切断された場合には、これらの監視カメラ装置の動作モードを記憶した動作モードフラグ0?3に応じてアラームの発生方法を切り替える。本実施の形態では、昼間監視モードは音声アラーム、夜間監視モードはブザーアラーム、その他はLEDアラームを使用している。」

ウ.「【0024】
304で動作モードフラグがスタンバイモードだった場合は、通常の電源の切断なのでアラームは発しない。305で動作モードフラグが昼間監視モードだった場合は、310で「監視中に電源が切断されました」と音声アラームを発する。306で動作モードフラグが夜間監視モードだった場合は、311で大音量のブザーアラームを起動し電源を切断した者に警告を発する。307でその他のモードだった場合は、312で監視カメラ装置の故障を示すLEDを点滅させる。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態によれば、監視カメラ装置の負荷電流から推定した動作モードを電源装置に記憶しておき、監視カメラ装置の電源が切断された場合には電源切断前の動作モードに応じたアラームを発することができる。」

上記ア.?ウ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、刊行物6の監視カメラ装置の電源装置は、
監視カメラ装置の電源が切断された場合には、昼間監視モードは音声アラーム、夜間監視モードはブザーアラーム、その他はLEDアラームを使用してアラームの発生を行うものである。

2.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(2-1)本願発明の構成Aと、刊行物1発明の構成b、c2、dとの対比
刊行物1発明の構成bの「撮影して得られた画像データ」は、監視カメラ装置によって撮影して得られた画像データであるから、本願発明の構成Aの「モニタリングデータ」に相当する。
刊行物1発明の構成b、c2、dは、「撮影して得られた画像データを所定の時間間隔でバックアップメモリ部に記録」し、「記録装置に異常があった場合は、」「バックアップメモリ部に記録された画像データを消去することなく保存する」ものである。すなわち、刊行物1発明が、「バックアップメモリ部に記録」するのは、『記録装置に異常があった場合に、撮影して得られた画像データを記録装置に記録せずに失ってしまうことを防ぐため』に行うものであるといえる。
そうすると、刊行物1発明の『記録装置に異常があった場合に、撮影して得られた画像データを記録装置に記録せずに失ってしまうことを防ぐため』は、本願発明の「モニタリングデータの記憶に失敗する危険性を低下させる」ことに相当する。
したがって、刊行物1発明は、本願発明の構成Aに相当する構成を有している。

(2-2)本願発明の構成Bと刊行物1発明の構成c1との対比
刊行物1発明の構成c1において、監視カメラ装置はネットワーク経由で記録装置に送信することから、監視カメラ装置と記録装置は、ネットワークに接続されており、刊行物1発明の「監視カメラ装置」、「記録装置」は、それぞれ、本願発明の「ネットワーク接続ビデオカメラ(12)」、「ネットワーク接続記憶装置(22)、すなわちNSD」に相当する。
また、構成c1より、刊行物1発明は、『監視カメラ装置から記録装置に画像データをネットワーク経由で送信している』ものであるといえるから、本願発明の構成Bとは、「ネットワーク接続を介して、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)からネットワーク接続記憶装置(22)、すなわちNSDにメッセージを送付する」点で共通する。
しかし、送付するメッセージに関して、刊行物1発明では、「画像データ」であるのに対し、本願発明は、「テストメッセージ」であり、「定期的に送付する」点で相違する。

(2-3)本願発明の構成Cと刊行物1発明の構成c2との対比
刊行物1発明の構成c2の「画像データの送信を行った後、記録装置に異常はないかどうか判定」することは、上記(2-2)で検討したように、送付するメッセージに関して、刊行物1発明では、「画像データ」であるのに対し、本願発明は、「テストメッセージ」である点で相違するが、「記録装置に異常はないかどうか判定」することは、ある種の事象すなわちイベントであるといえるので、「メッセージの送付に続くイベント」である点で共通する。
また、刊行物1発明の構成c2の「記録装置に異常があった場合」は、本願発明の「NSD(22)が正しく動作していないことを示す場合」に相当する。
そして、刊行物1発明の構成c2において、「記録装置に異常があった場合は、画像記録処理側へ“NG”を通知する」ことは、「記録装置に異常はないかどうか判定する」ことを受けて、監視カメラ装置内(のHTTP通信処理)で“NG”という記録装置が異常であることを示す信号を作成していることから、本願発明の「ネットワーク接続ビデオカメラ(12)内でNSD故障信号を生成する」ことに相当する。

したがって、刊行物1発明の構成c2と本願発明の構成Cは、「メッセージの送付に続くイベントが、NSD(22)が正しく動作していないことを示す場合、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)内でNSD故障信号を生成する」点で共通する。

(2-4)本願発明の構成Dと刊行物1発明の構成dとの対比
刊行物1発明の構成dの「“NG”」は、上記(2-3)で検討したように、記録装置が異常であることを示す信号であるから、本願発明の「NSD故障信号」に相当し、「HTTP通信処理側からの通知が“NG”の場合」は、本願発明の「NSD故障信号に応答」することに相当する。

刊行物1発明の構成dの「携帯電話に電子メールを送信して、保守員に記録装置本体の故障が発生したことを知らせ」ることは、監視カメラ装置の近くにいない保守員に対して、記録装置本体の故障が発生したことを知らせるために、監視カメラ装置から電子メールを送信するものであるから、本願発明の構成Dの「ネットワーク接続ビデオカメラ(12)のハウジングの外での検出のために、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)から故障メッセージ(207)を送付する」ことに相当する。

したがって、刊行物1発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する。

(2-5)本願発明の構成Eと刊行物1発明の構成dとの対比
本願発明の構成Eは、構成Dの「ネットワーク接続ビデオカメラ(12)から故障メッセージ(207)を送付する」の「故障メッセージ(207)を送付する」ことに関して、「前記故障メッセージ(207)の送付が、人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発することを含む」と限定したものである。

上記(2-4)で検討したように、刊行物1発明の構成dの「電子メールを送信」することが、本願発明の「故障メッセージ(207)を送付する」ことに相当するものの、「電子メールを送信」することは、本願発明の「人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発すること」とは相違するものであり、刊行物1発明は、本願発明の構成Eのように限定された構成を有しない点で相違する。

(2-6)本願発明の構成Fについて
刊行物1発明の構成eは、本願発明の構成Fに相当する。

3.一致点・相違点
したがって、刊行物1発明と本願発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「モニタリングデータの記憶に失敗する危険性を低下させる方法であって、
ネットワーク接続を介して、ネットワーク接続ビデオカメラからネットワーク接続記憶装置、すなわちNSDにメッセージを送付するステップと、
メッセージの送付に続くイベントが、NSDが正しく動作していないことを示す場合、ネットワーク接続ビデオカメラ内でNSD故障信号を生成するステップと、
NSD故障信号に応答して、ネットワーク接続ビデオカメラのハウジングの外での検出のために、ネットワーク接続ビデオカメラから故障メッセージを送付するステップとを含む方法。」

[相違点]
(1)送付するメッセージに関して、本願発明は、「テストメッセージ」であり、「定期的に送付する」のに対し、刊行物1発明では、「画像データ」であり、「定期的に送付する」ものではない点。(以下、「相違点1」という。)

(2)故障メッセージの送付に関して、本願発明は、「人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発することを含む」のに対し、刊行物1発明は、そのような限定がない点。(以下、「相違点2」という。)

4.判断
上記相違点について検討する。

(4-1)相違点1について
上記第4 1.(1-2)で検討したように、刊行物2には、デジタルビデオカメラとファイルサーバーとの間の通信が正常に行えるか否かを確認できるようにすることを目的として、ファイルサーバーに対してpingコマンドを所定時間間隔で送信し続ける構成が記載されている。
また、上記第4 1.(1-3)で検討したように、刊行物3には、定期的に他の自律蓄積装置に対して、応答を要求するpingコマンドを発行し、その応答の有無によって、他の自律蓄積装置の障害を検知する構成が記載されている。
すなわち、記憶装置にデータを記憶させる際に、予めpingコマンドのような試験信号を定期的に送信し、記憶装置の障害等の検知を行う技術は、当業者にとって周知の技術である。
そうすると、刊行物1発明において、画像データの送信を行って、記録装置の異常を判断する構成に代えて、このような周知の技術を適用して、テストメッセージを定期的に送付することにより、記録装置の異常を判断する構成にすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(4-2)相違点2について
本願発明は、「NSD故障信号に応答して、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)のハウジングの外での検出のために、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)から故障メッセージ(207)を送付するステップ」において、「前記故障メッセージ(207)の送付が、人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発することを含む」ものである。
そして、「NSD故障信号に応答」するものであるから、NSDが故障しているという内容の、人間によって知覚可能な信号を発するものである。
すなわち、ネットワーク接続ビデオカメラ(12)が、NSDが故障しているという内容の、人間によって知覚可能な信号(発明の詳細な説明では、光や音)を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発するものである。

刊行物1発明は、監視カメラ装置が、電子メールを送信して、保守員に記録装置の故障が発生したことを知らせるものであるが、人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発するものではない。 そして、刊行物1発明の電子メールを送信することは、遠隔地にいる保守員に対して、連絡するために成されるものであり、このような構成から、ネットワーク接続ビデオカメラの近くにいる人に知らせるために、ネットワーク接続ビデオカメラが、光や音などの人間によって知覚可能な信号を発するような構成を想定することは、論理に飛躍があるから、「NSD故障信号に応答して、」「人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発することを含む」ようにすることが、刊行物1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

上記第4 1.(1-4)で検討したように、刊行物4には、リモコン装置や照明器具の動作状態を管理する管理装置において、リモコン装置または照明器具への信号の伝送について異常が検出された時には、表示部や発光ダイオードやブザーによって異常を報知する構成が記載されている。
すなわち、刊行物4に記載された構成は、リモコン装置や照明器具を管理するために設けられている管理装置が、管理する対象(リモコン装置や照明器具)の異常を報知するものである。それに対し、刊行物1発明の監視カメラ装置は、モニタリングデータを記録装置に送るものであり、記録装置を管理するために設けられているのではなく、そのような監視カメラ装置に、管理装置が管理する対象の異常を報知する刊行物4のような構成を組み合わせることにより、監視カメラ装置自体で、記録装置の異常を報知するような構成にすることは、論理に飛躍があるから、「NSD故障信号に応答して、」「人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発することを含む」ようにすることが、刊行物1発明及び刊行物4のような構成に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

また、上記第4 1.(1-5)、(1-6)で検討したように、刊行物5のビデオカメラ台は、温度や煙粒子の変化を検知し、スピーカ、ブザー、表示灯により、アラームを出力する構成であり、刊行物6の監視カメラ装置は、電源が切断された場合には、昼間監視モードは音声アラーム、夜間監視モードはブザーアラーム、その他はLEDアラームを使用してアラームの発生を行う構成である。
しかし、いずれの構成においても、カメラの周囲もしくはカメラ自体の異常を検知して報知するものであり、刊行物1発明の監視カメラ装置に刊行物5や6の構成を適用しても、監視カメラ装置の周囲もしくは監視カメラ自体の異常を検知して報知するものは想定できるものの、「NSD故障信号に応答して、」「人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発することを含む」ようにすることが、刊行物1発明及び刊行物5、6のような構成に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

さらに、刊行物1発明の監視カメラ装置に刊行物2や3の構成を適用しても、「NSD故障信号に応答して、」「人間によって知覚可能な信号を生成し、前記ハウジングの外で前記信号を発することを含む」ようにすることが、容易に発明をすることができたとはいえない。

(4-3)小活
したがって、本願発明は、当業者が、刊行物1発明及び刊行物2ないし6に記載された構成に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2ないし8に係る発明についても、上記相違点2に係る構成を全て有しているものであるので、本願発明と同様に、当業者が、刊行物1発明及び刊行物2ないし6に記載された構成に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし8に係る発明は、当業者が、刊行物1発明及び刊行物2ないし6に記載された構成に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-07-19 
出願番号 特願2012-122700(P2012-122700)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西谷 憲人  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 藤井 浩
渡辺 努
発明の名称 モニタリングシステムにおける信頼性を向上させる方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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