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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09B
管理番号 1316979
審判番号 不服2015-21974  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-11 
確定日 2016-08-02 
事件の表示 特願2012- 38871「携帯端末装置用プログラム、情報提示方法及び携帯端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 5日出願公開、特開2013-174712、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成24年2月24日の出願であって、平成27年3月27日付けで拒絶理由が通知され、同年5月27日付けで意見書および手続補正書が提出され、同年6月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月17日付けで意見書および手続補正書が提出され、同年9月3日付けで、同年8月17日付け手続補正書による補正が却下されるとともに、拒絶の査定がされ、同年12月11日付けで拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年12月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否

1 本件補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、下記(1)を下記(2)へと補正しようとするものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲

「【請求項1】
歌唱されるカラオケ曲の歌唱音声を評価可能な携帯端末装置に含まれるコンピュータに、
カラオケ店舗に設置されたカラオケ装置を利用して歌唱された前記カラオケ曲のうち練習用楽曲として指定された前記カラオケ曲の歌唱音声が、携帯端末装置による評価が制限されている歌唱技能について複数の事項で分析された結果を示す分析情報を、ネットワークを介して取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記分析情報と、歌唱音声を評価するための基準を示す基準情報と、に基づいて、前記歌唱技能についての前記複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を、所定の歌唱区分ごとに提示する練習事項提示ステップと、
を実行させることを特徴とする携帯端末装置用プログラム。
【請求項2】
前記練習事項提示ステップは、所定の歌唱区間ごとに、前記分析情報と前記基準情報とを前記複数の事項それぞれについて比較し、比較の結果、基準を満たす程度が閾値未満である前記事項と前記歌唱区間との組み合わせを練習する箇所として提示することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項3】
前記練習用楽曲を再生させる再生制御ステップと、
前記再生制御ステップにより再生される前記練習用楽曲の進行にあわせて、前記練習用楽曲の歌詞のテロップを表示させる表示制御ステップと、
前記表示制御ステップによる前記カラオケ曲の歌詞のテロップの表示とともに、表示される前記歌詞のテロップに対応する前記練習する箇所の歌唱方法を提示する歌唱方法提示ステップと、
を更に実行させることを特徴とする請求項2に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項4】
前記練習用楽曲を再生させる再生制御ステップと、
前記練習事項提示ステップにより提示された前記練習する箇所の歌唱区間において、前記再生制御ステップによる前記練習用楽曲の再生とともに、前記練習する箇所の歌唱区間に対応する前記基準情報に沿った歌唱音声を出力させる出力制御ステップと、
を更に実行させることを特徴とする請求項2又は3に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項5】
前記出力制御ステップは、前記練習事項提示ステップにおいて提示された前記練習する箇所の歌唱区間において、前記分析情報と前記基準情報との比較により基準を満たす程度が前記閾値以上である他のユーザの歌唱音声を出力させることを特徴とする請求項4に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項6】
前記携帯端末装置は記憶手段を備え、
前記練習事項提示ステップにより提示された前記箇所の練習の履歴を示す履歴情報を前記記憶手段に記憶させる記憶ステップと、
を更に前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項7】
歌唱されるカラオケ曲の歌唱音声を評価可能な携帯端末装置により実行される情報提示用法であって、
カラオケ店舗に設置されたカラオケ装置を利用して歌唱された前記カラオケ曲のうち練習用楽曲として指定された前記カラオケ曲の歌唱音声が、携帯端末装置による評価が制限されている歌唱技能について複数の事項で分析された結果を示す分析情報を、ネットワークを介して取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記分析情報と、歌唱音声を評価するための基準を示す基準情報と、に基づいて、前記歌唱技能についての前記複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を、所定の歌唱区分ごとに提示する練習事項提示ステップと、
を含むことを特徴とする情報提示方法。
【請求項8】
歌唱されるカラオケ曲の歌唱音声を評価可能な携帯端末装置であって、
カラオケ店舗に設置されたカラオケ装置を利用して歌唱された前記カラオケ曲のうち練習用楽曲として指定された前記カラオケ曲の歌唱音声が、携帯端末装置による評価が制限されている歌唱技能について複数の事項で分析された結果を示す分析情報を、ネットワークを介して取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記分析情報と、歌唱音声を分析又は評価するための基準を示す基準情報と、に基づいて、前記歌唱技能についての前記複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を、所定の歌唱区分ごとに提示する練習事項提示手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲

「【請求項1】
歌唱されるカラオケ曲の歌唱音声を評価可能な携帯端末装置に含まれるコンピュータに、
カラオケ店舗に設置されたカラオケ装置を利用して歌唱された前記カラオケ曲のうち練習用楽曲として指定された前記カラオケ曲の歌唱音声が、携帯端末装置による評価が制限されている歌唱技能について複数の事項で分析された結果を示す分析情報を、ネットワークを介して取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記分析情報と、歌唱音声を評価するための基準を示す基準情報と、に基づいて、前記歌唱技能についての前記複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を、所定の歌唱区間ごとに提示し、提示した前記評価情報のうち何れかの選択された歌唱区間及び事項に対応する複数種類の練習内容を提示する練習事項提示ステップと、
を実行させることを特徴とする携帯端末装置用プログラム。
【請求項2】
前記練習事項提示ステップは、所定の歌唱区間ごとに、前記分析情報と前記基準情報とを前記複数の事項それぞれについて比較し、比較の結果、基準を満たす程度が閾値未満である前記事項と前記歌唱区間との組み合わせを練習する箇所として前記評価情報を提示し、練習する箇所として提示した前記評価情報のうち何れかの選択された歌唱区間及び事項に対応する複数種類の練習内容を提示することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項3】
前記練習用楽曲を再生させる再生制御ステップと、
前記再生制御ステップにより再生される前記練習用楽曲の進行にあわせて、前記練習用楽曲の歌詞のテロップを表示させる表示制御ステップと、
前記表示制御ステップによる前記カラオケ曲の歌詞のテロップの表示とともに、表示される前記歌詞のテロップに対応する前記練習する箇所の歌唱方法を提示する歌唱方法提示ステップと、
を更に実行させることを特徴とする請求項2に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項4】
前記練習用楽曲を再生させる再生制御ステップと、
前記練習事項提示ステップにより提示された前記練習する箇所の歌唱区間において、前記再生制御ステップによる前記練習用楽曲の再生とともに、前記練習する箇所の歌唱区間に対応する前記基準情報に沿った歌唱音声を出力させる出力制御ステップと、
を更に実行させることを特徴とする請求項2又は3に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項5】
前記出力制御ステップは、前記練習事項提示ステップにおいて提示された前記練習する箇所の歌唱区間において、前記分析情報と前記基準情報との比較により基準を満たす程度が前記閾値以上である他のユーザの歌唱音声を出力させることを特徴とする請求項4に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項6】
前記携帯端末装置は記憶手段を備え、
前記練習事項提示ステップにより提示された前記箇所の練習の履歴を示す履歴情報を前記記憶手段に記憶させる記憶ステップと、
を更に前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の携帯端末装置用プログラム。
【請求項7】
歌唱されるカラオケ曲の歌唱音声を評価可能な携帯端末装置により実行される情報提示用法であって、
カラオケ店舗に設置されたカラオケ装置を利用して歌唱された前記カラオケ曲のうち練習用楽曲として指定された前記カラオケ曲の歌唱音声が、携帯端末装置による評価が制限されている歌唱技能について複数の事項で分析された結果を示す分析情報を、ネットワークを介して取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記分析情報と、歌唱音声を評価するための基準を示す基準情報と、に基づいて、前記歌唱技能についての前記複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を、所定の歌唱区間ごとに提示し、提示した前記評価情報のうち何れかの選択された歌唱区間及び事項に対応する複数種類の練習内容を提示する練習事項提示ステップと、
を含むことを特徴とする情報提示方法。
【請求項8】
歌唱されるカラオケ曲の歌唱音声を評価可能な携帯端末装置であって、
カラオケ店舗に設置されたカラオケ装置を利用して歌唱された前記カラオケ曲のうち練習用楽曲として指定された前記カラオケ曲の歌唱音声が、携帯端末装置による評価が制限されている歌唱技能について複数の事項で分析された結果を示す分析情報を、ネットワークを介して取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記分析情報と、歌唱音声を分析又は評価するための基準を示す基準情報と、に基づいて、前記歌唱技能についての前記複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を、所定の歌唱区間ごとに提示し、提示した前記評価情報のうち何れかの選択された歌唱区間及び事項に対応する複数種類の練習内容を提示する練習事項提示手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

(下線は補正の内容を明らかにするために、審決で付した。)

2 本件補正の適否

請求項1、7、8の「歌唱区分」を「歌唱区間」とする補正については、補正前の特許請求の範囲の【請求項2】や明細書【0008】、【0016】ないし【0018】、【0029】、【0040】、【0065】、【0068】、【0089】、【0090】に「歌唱区間」の記載がある一方、請求項1、7、8にのみ「歌唱区分」という記載があるから、「歌唱区分」は「歌唱区間」の誤記と認められる。したがって、請求項1、7、8の「歌唱区分」を「歌唱区間」とする補正は、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。
請求項1、7、8の「提示した前記評価情報のうち何れかの選択された歌唱区間及び事項に対応する複数種類の練習内容を提示する」ことを付加する補正は、「練習事項提示ステップ」あるいは「練習事項提示手段」という発明特定事項が提示する練習事項を限定するものであって、補正前の請求項1、7、8に記載された発明と、補正後の請求項1、7、8に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
請求項2の補正は、基準を満たす程度が閾値未満である事項と歌唱区間との組み合わせを練習する箇所として「評価情報」を提示すること、および「練習する箇所として提示した評価情報のうち何れかの選択された歌唱区間及び事項に対応する複数種類の練習内容を提示すること」を付加するものであるが、前者は、補正前の「基準を満たす程度が閾値未満である事項と歌唱区間との組み合わせを練習する箇所として提示すること」という発明特定事項を限定するものであり、後者は「練習事項提示ステップ」という発明特定事項が提示する練習事項を限定するものである。また、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。よって、請求項2の補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正には、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正後の各請求項に係る発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正後の各請求項に係る発明について

本願の本件補正後の請求項1ないし8に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、「1 本件補正の内容」の「(2)本件補正後の特許請求の範囲」に記載したとおりのものである。

(2)引用例

ア 引用例1

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開2006-215408号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。

(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のセンタ装置と、複数のカラオケ装置と、カラオケ演奏機能を有する複数の携帯電話機との間で通信回線を介して相互に情報の通信を行い得る通信カラオケシステムであって、
前記カラオケ装置は、入力される音声情報に応じてカラオケ演奏の評価を行う演奏評価手段を有するものであり、
前記携帯電話機は、該演奏評価手段による評価結果を反映する所定の評価反映映像を表示させる表示手段を有するものである
ことを特徴とする通信カラオケシステム。
【請求項2】
前記携帯電話機は、入力される音声情報に応じてカラオケ演奏の評価を行う演奏評価手段を有するものであり、前記表示手段は、該演奏評価手段による評価結果に基づいて前記表示を行い得るものである請求項1の通信カラオケシステム。
【請求項3】
前記カラオケ装置は、該カラオケ装置又は携帯電話機の前記演奏評価手段による評価結果を反映する所定の評価反映映像を表示させる表示手段を有するものである請求項1又は2の通信カラオケシステム。
【請求項4】
前記センタ装置は、前記演奏評価手段による評価結果を記憶する記憶装置を有するものであり、前記表示手段は、該記憶装置から読み出される評価結果に基づいて前記表示を行うものである請求項1から3の何れかの通信カラオケシステム。
【請求項5】
前記演奏評価手段は、対象となるカラオケ演奏曲における所定のフレーズ毎に前記評価を行うものである請求項1から4の何れかの通信カラオケシステム。
【請求項6】
前記表示手段は、対象となるカラオケ演奏曲における所定のフレーズ毎に前記表示を行うものである請求項5の通信カラオケシステム。
【請求項7】
前記記憶装置は、前記演奏評価手段による評価結果を利用者の識別情報と関連付けて記憶するものである請求項4から6の何れかの通信カラオケシステム。
【請求項8】
前記表示手段は、前記記憶装置から読み出される利用者の識別情報と関連付けられた評価結果に基づいて前記表示を行うものである請求項7の通信カラオケシステム。」

(イ) 「【0009】
このようにすれば、前記カラオケ装置は、入力される音声情報に応じてカラオケ演奏の評価を行う演奏評価手段を有するものであり、前記携帯電話機は、その演奏評価手段による評価結果を反映する所定の評価反映映像を表示させる表示手段を有するものであることから、前記携帯電話機を用いたカラオケ演奏において、前記カラオケ装置を用いてカラオケ演奏を行った際の演奏評価結果を参照しつつ歌唱することができ、効果的な歌唱技能の向上が期待できる。すなわち、利用価値の高い新たな演奏評価機能を備えた通信カラオケシステムを提供することができる。」

(ウ) 「【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例である通信カラオケシステム10を説明する図である。この図1に示すように、本実施例の通信カラオケシステム10において、カラオケボックス、スナック、旅館等の店舗、或いは一般家庭等にそれぞれ設置された複数の通信カラオケ装置12は、公衆電話回線等による通信回線14を介してカラオケサービス提供会社のセンタ装置16に接続されており、そのセンタ装置16と複数の通信カラオケ装置12の相互間で情報の通信が可能とされている。このセンタ装置16は、カラオケ情報、背景映像情報、曲間情報等のデジタルコンテンツ(Digital Content)の保管や入出力管理等を行うサーバであり、上記通信回線14を介して複数の通信カラオケ装置12に定期的にコンテンツの配信を行うものである。また、複数の携帯電話機18は、複数の中継基地局20を介して無線の通信チャンネルに接続され、その複数の中継基地局20に接続された中央演算処理装置22によりそれぞれの接続が制御されるようになっている。この中央演算処理装置22は、プロトコルを翻訳することによりチェックする機能を有するゲートウェイ24を介して上記通信回線14に接続されている。これにより、上記複数の携帯電話機18においても、上記通信回線14を介して上記センタ装置16からカラオケ情報をはじめとするコンテンツの配信を受けられるようになっている。」

(エ) 「【0028】
図4は、前記携帯電話機18の構成を説明するブロック線図である。この図4に示す制御部82は、予めROM84に記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、前記操作部64からの入力に従って文字入力が実行されるように制御したり、前記操作部64から入力された電話番号に従って通信或いは通話チャンネルを成立させると共に相互の通信或いは通話が可能となるように制御したり、メールの作成及び送受信の制御を実行したりする。通話状態においては、アンテナ86を介して送受信部88に受けた通話信号等がモデム部90を介して音声コーディック部92においてデジタルコード信号から音声信号に変換され、アナログフロントエンド94により音声出力器(スピーカ)90が駆動されて音声が出力される。同時に、マイクロフォン98により音声から変換された音声信号が上記アナログフロントエンド94を介して上記音声コーディック部92に送られてそこでデジタル信号に変換され、上記モデム部90、送受信部88、及びアンテナ86を介して送信される。また、通信状態において、上記制御部82は、前記操作部64から入力された信号を通信先へ送信すると同時に、通信先から受信された信号を前記表示部80に表示させる。また、他の通信端末からの着信があったと判定される場合には、予め記憶部(フラッシュROM)100に記憶された呼出音情報に基づいて所定の呼出音を上記スピーカ90から出力させるようにメロディー発生器104を駆動させる。また、上記記憶部100には、前記センタ装置16からダウンロードされたカラオケ情報を記憶するためのカラオケデータベース102が設けられている。」

(オ) 「【0034】
演奏評価手段132、140は、前記演奏手段128、136によるカラオケ演奏曲の出力に伴って入力される音声情報に応じてカラオケ演奏の評価を行う。具体的には、前記通信カラオケ装置12の演奏評価手段132は、カラオケ演奏曲の出力に伴って音声入力装置である前記マイクロフォン36から入力される利用者の音声に応じてその利用者によるカラオケ演奏の内容を評価する。例えば、前記マイクロフォン36により入力されて前記A/Dコンバータ37によりディジタル信号に変換された音声情報と、前記シンセサイザ54により出力される音楽情報とを比較し、メロディなどの基本音程と入力される音声から抽出される音程との相対的なずれやその音声の絶対的な声量などを基準として採点を行う。また、前記携帯電話機18の演奏評価手段140は、カラオケ演奏曲の出力に伴って音声入力装置である前記マイクロフォン98、アナログフロントエンド94、及び音声コーディック部92等を介して入力される利用者の音声に応じて上記と同様にその利用者によるカラオケ演奏の内容を評価する。なお、図6では、前記通信カラオケ装置12、携帯電話機18共に演奏評価手段132、140を備えているが、少なくとも通信カラオケ装置12が演奏評価手段132を備えていればよく、前記携帯電話機18は必ずしも演奏評価手段140を備えていなくともよい。」

(カ) 「【0036】
評価反映映像表示手段134、142は、前記演奏評価手段132、140による評価結果を反映する所定の評価反映映像を表示させる。具体的には、前記通信カラオケ装置12の評価反映英映像表示手段134は、前記センタ装置16の記憶装置122に設けられた演奏評価データベース126におけるカラオケ演奏を行っている利用者に対応する記憶領域から、演奏されているカラオケ演奏曲に対応する評価結果を読み出して前記RAM44に記憶し、その評価結果を随時読み出して、例えば上記演奏評価手段132、140による評価結果が比較的低かった部分を指摘する映像を生成して前記CRTコントローラ50に送り、そのCRTコントローラ50により前記ビデオミキサ30等を介して前記歌詞文字映像と共に前記映像表示装置26に表示させる。また、前記携帯電話機18の評価反映映像表示手段142は、前記センタ装置16の記憶装置122に設けられた演奏評価データベース126におけるカラオケ演奏を行っている利用者に対応する記憶領域から、演奏されているカラオケ演奏曲に対応する評価結果を読み出して前記記憶部100に記憶し、その評価結果を随時読み出して、例えば上記演奏評価手段132、140による評価結果が比較的低かった部分を指摘する映像を生成して前記表示部80に表示させる。なお、図6では、前記通信カラオケ装置12、携帯電話機18共に評価反映映像表示手段134、142を備えているが、少なくとも携帯電話機18が評価反映映像表示手段142を備えていればよく、前記通信カラオケ装置12は必ずしも評価反映映像表示手段134を備えていなくともよい。」

上記(エ)には、「携帯電話機18の・・・制御部82は、予めROM84に記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、前記操作部64からの入力に従って文字入力が実行されるように制御したり、前記操作部64から入力された電話番号に従って通信或いは通話チャンネルを成立させると共に相互の通信或いは通話が可能となるように制御したり、メールの作成及び送受信の制御を実行したりする。」との記載があるとおり、「携帯電話機」にて各種の機能を実現するに際して、「プログラム」を用いることは通常行われている。引用例においても、「携帯電話機」は、「演奏評価手段による評価結果を反映する所定の評価反映映像を表示させる」こと(上記(ア)の【請求項1】)、「該記憶装置から読み出される評価結果に基づいて表示を行う」こと(上記(ア)の【請求項4】)、「対象となるカラオケ演奏曲における所定のフレーズ毎に表示を行う」こと(上記(ア)の【請求項6】)、「記憶装置から読み出される利用者の識別情報と関連付けられた評価結果に基づいて表示を行う」こと(上記(ア)の【請求項8】)等を、「制御部」にそれぞれ実行させる「プログラム」を備えていることは自明である。

以上の(ア)ないし(カ)の記載を総合すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「カラオケ装置と同様に入力される音声情報に応じてカラオケ演奏を評価可能な携帯電話機の制御部に、
カラオケボックス、スナック、旅館等の店舗に設置されたカラオケ装置に入力されるカラオケ演奏曲の音声情報が、シンセサイザにより出力される音楽情報と比較され、メロディなどの基本音程と入力される音声から抽出される音程との相対的なずれやその音声の絶対的な声量などを基準として所定のフレーズ毎に評価された評価結果を、通信回線を介して読み出し、
読み出した評価結果に基づいて、前記カラオケ演奏曲における所定のフレーズ毎に、評価結果を反映して評価結果が比較的低かった部分を指摘する所定の評価反映映像を表示し、効果的な歌唱技能の向上ができるようにすること
を実行させるプログラム」

イ 引用例2

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開2010-85481号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の演奏曲のうちから選択される所定の演奏曲を出力させるカラオケ装置であって、
音声を入力するための音声入力装置と、
選曲された演奏曲と該演奏曲の選曲主体である利用者の携帯電話機を特定するための情報とを関連づけて記憶する記憶装置と、
前記演奏曲の出力に際して、予め定められた関係から前記音声入力装置により入力される音声に関する情報に基づいて演奏の評価を行う演奏評価制御手段と、
該演奏評価制御手段による評価結果を、評価の対象である演奏曲の選曲主体である利用者の携帯電話機に送信する演奏評価結果送信手段と
を、備えたものであることを特徴とするカラオケ装置。
【請求項2】
前記記憶装置は、前記携帯電話機による選曲入力に際して、該選曲入力信号と共に送信される該携帯電話機の識別情報と選曲に係る演奏曲の選曲番号とを関連づけて記憶するものである請求項1に記載のカラオケ装置。
【請求項3】
前記演奏評価制御手段は、前記演奏曲の出力に際して、該演奏曲の音程及び/又はテンポに対する前記音声入力装置により入力される音声の音程及び/又はテンポの相対的なずれを算出するものであり、
前記演奏評価送信手段は、予め定められた関係から、前記演奏評価制御手段により算出される音程及び/又はテンポの相対的なずれに基づいて所定のコメントを、前記評価結果として評価の対象である演奏曲の選曲主体である利用者の携帯電話機に送信するものである請求項1又は2に記載のカラオケ装置。
【請求項4】
前記演奏評価送信手段は、前記演奏評価制御手段による評価結果を電子メールとしてインターネット回線を介して前記携帯電話機に送信するものである請求項1から3の何れか1項に記載のカラオケ装置。」

以上の記載を総合すると、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「多数の演奏曲のうちから選択される所定の演奏曲を出力させるカラオケ装置であって、
音声を入力するための音声入力装置と、
携帯電話機による選曲入力に際して、該選曲入力信号と共に送信される選曲された演奏曲の選曲番号と該演奏曲の選曲主体である利用者の携帯電話機の識別情報とを関連づけて記憶する記憶装置と、
演奏曲の出力に際して、予め定められた関係から音声入力装置により入力される音声に関する情報に基づいて、該演奏曲の音程及びテンポに対する前記音声入力装置により入力される音声の音程及びテンポの相対的なずれを算出して演奏の評価を行う演奏評価制御手段と、
演奏評価制御手段による評価結果を、電子メールとしてインターネット回線を介して、評価の対象である演奏曲の選曲主体である利用者の携帯電話機に送信する演奏評価結果送信手段と
を、備えたカラオケ装置。」

(3)本件補正後の請求項1について

ア 対比

本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明1」という。)と、引用発明1とを以下、対比する。

引用発明1の「音声情報」は、補正発明1の「カラオケ曲の歌唱音声」に相当する。
引用発明1の「携帯電話機」は、補正発明1の「携帯端末装置」に相当する。
引用発明1の「制御部」は、補正発明1の「コンピュータ」に相当する。
引用発明1の「カラオケボックス、スナック、旅館等の店舗」は、補正発明1の「カラオケ店舗」に相当する。
引用発明1の「カラオケ演奏曲」は、「効果的な歌唱技能の向上ができるようにする」ものとして指定されたものであることは自明なので、補正発明1の「歌唱されたカラオケ曲のうち練習用楽曲として指定されたカラオケ曲」に相当する。
引用発明1の「シンセサイザにより出力される音楽情報」は、これと「音声情報」を比較して「評価」を行っているから、補正発明1の「歌唱音声を評価するための基準を示す基準情報」に相当する。
引用発明1の「メロディなどの基本音程と入力される音声から抽出される音程との相対的なずれやその音声の絶対的な声量など」は、「音程」、「声量」の二つの事項を含んでおり、補正発明1の「歌唱技能について複数の事項」に相当する。
引用発明1の「フレーズ」は、補正発明1の「歌唱区間」に相当する。 引用発明1の「評価結果」は、補正発明1の「歌唱技能についての複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報」に相当する。
引用発明1の「通信回線を介して読み出」すことは、補正発明1の「ネットワークを介して取得する取得ステップ」に相当する。
引用発明1において、「演奏評価手段による評価結果を反映して評価結果が比較的低かった部分を指摘する所定の評価反映映像を表示」することは、補正発明1の「歌唱技能についての前記複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報」を「提示」することに相当する。
引用発明1の「対象となるカラオケ演奏曲における所定のフレーズ毎に、演奏評価手段による評価結果を反映して評価結果が比較的低かった部分を指摘する所定の評価反映映像を表示し、効果的な歌唱技能の向上ができるようにすること」は、補正発明1の「歌唱区間及び事項に対応する練習内容」を「提示」する「練習事項提示ステップ」に相当する。
引用発明1の「プログラム」は携帯電話機で使用されるものであるから、補正発明1の「携帯端末装置用プログラム」に相当する。

したがって、補正発明1と引用発明1とは、

「歌唱されるカラオケ曲の歌唱音声を評価可能な携帯端末装置に含まれるコンピュータに、
ネットワークを介して取得する取得ステップと、
カラオケ店舗に設置されたカラオケ装置を利用して歌唱された前記カラオケ曲のうち練習用楽曲として指定されたカラオケ曲の、歌唱技能についての複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を、所定の歌唱区間ごとに提示し、歌唱区間及び事項に対応する練習内容を提示する練習事項提示ステップと、
を実行させる携帯端末用プログラム」
である点で共通し、以下の点で相違している。

[相違点1]
補正発明1では、携帯端末装置による評価が制限されている歌唱技能があるのに対し、引用発明1では、カラオケ装置と携帯端末装置とが同様に歌唱技能の評価を行う点。

[相違点2]
補正発明1では、歌唱技能について複数の事項で分析された結果を示す分析情報を取得し、取得された分析情報と、歌唱音声を評価するための基準を示す基準情報と、に基づいて、歌唱技能についての複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を提示するのに対し、引用発明1では、歌唱技能についての複数の事項それぞれに対する評価を示す評価情報を取得し、取得された評価情報を提示し、また、歌唱技能について複数の事項で分析された結果を示す分析情報については記載がなく、歌唱音声を評価するための基準を示す基準情報は、カラオケ装置が備えている点。

[相違点3]
補正発明1では、提示した評価情報のうちの何れかの選択された歌唱区間及び事項に対応する複数種類の練習内容を提示するのに対し、引用発明1では、歌唱区間および事項を選択して練習内容を提示すること、および歌唱区間および事項に対応する複数種類の練習内容を提示することについて特定されていない点。

イ 判断

相違点1、2についての検討に先立って、相違点3について検討する。

引用発明2は、相違点3に係る補正発明1の「選択された歌唱区間及び事項に対応する複数種類の練習内容を提示する」という発明特定事項を備えていない。
また、原査定の拒絶の理由で引用されたその他の文献にも、当該発明特定事項は記載も示唆もされていない。
当該発明特定事項が設計的事項であるという根拠もない。
したがって、相違点3に係る発明特定事項について、引用発明1に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

よって、相違点1、2について検討するまでもなく、補正発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(4)本件補正後の請求項2ないし8について

本件補正後の請求項2ないし6に係る発明は、補正発明1をさらに限定するものであるから、補正発明1と同様に、引用発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
本件補正後の請求項7、8に係る発明は、補正発明1とカテゴリーは異なるものの、実質的には同じであるので、補正発明1同様に、引用発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(5)小括

上記のとおり、本件補正後の請求項1ないし8に係る発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3 むすび

本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明

本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし8に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、「1 本件補正の内容」の「(2)本件補正後の特許請求の範囲」に記載したとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-07-20 
出願番号 特願2012-38871(P2012-38871)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄中村 和正  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
植田 高盛
発明の名称 携帯端末装置用プログラム、情報提示方法及び携帯端末装置  

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