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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04W
管理番号 1316989
異議申立番号 異議2016-700345  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-21 
確定日 2016-07-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第5801507号発明「携帯端末,情報管理システム,情報管理方法およびプログラム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5801507号の請求項1?9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5801507号の請求項1?9に係る特許についての出願は,平成25年3月22日に出願した特願2013-59370号の一部を平成27年2月25日に新たな特許出願としたものであって,平成27年9月4日にその特許権の設定登録(平成27年10月28日特許掲載公報発行)がなされ,平成28年4月21日に,該請求項1?9に係る特許に対し,特許異議申立人光石雅之により特許異議の申立てがされたものである。


2.本件発明
特許第5801507号の請求項1?9の特許に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」?「本件発明9」のように言う。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。


3.申立理由の概要
特許異議申立人光石雅之は,証拠として特開2003-204384号公報(甲第1号証)を提出し,本件発明1?9は甲第1号証記載の発明から容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから,請求項1?9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。


4.刊行物の記載
甲第1号証の,【0014】,【0027】,【0036】,【0071】,【0078】?【0080】,【0088】,【0097】?【0101】,【0105】?【0111】段落,特に【0078】?【0080】段落にアプリケーションの起動設定について記載されていること,及び,【0111】段落に「コネクタ29」を介してメモリ110に記憶された情報を「外部の情報機器」に保存し,また,逆に「外部の情報機器」からメモリ110に読み込ませることが記載されていることを踏まえれば,甲第1号証には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 携帯端末10と,これに接続された外部の情報機器とからなるシステムであって,前記携帯端末10は,前記外部の情報機器から情報を受信するコネクタ29と,前記携帯端末10の全体の制御を行うCPU101と,現在位置の位置情報を取得するGPS部124と,を備え,
前記コネクタ29は,前記外部の情報機器に保存された,位置情報およびその位置情報に対応してアプリケーションを停止するか否かの情報を受信し,
前記CPU10は,前記位置情報およびその位置情報に対応してアプリケーションを停止するか否かの情報により,前記アプリケーションを停止あるいは継続するように制御し,
前記GPS部124による現在位置の位置情報の取得は,携帯端末10が起動されている間,常時行われ,
前記CPU10は,取得された前記現在位置の位置情報と,前記位置情報およびその位置情報に対応してアプリケーションを停止するか否かの情報に基づいて,設定された範囲に携帯端末10が入ったか否かが判断され,アプリケーションを停止または継続させる,システム。」


5.対比・判断
本件発明1?9が,特許法第29条第2項に違反するものであるのか否かについて検討する。

(1)本件発明1について
引用発明の「システム」は「携帯端末」を有しており,これと本件発明1を対比すると,引用発明の「コネクタ29」は情報の受信に使われるから「受信手段」と言うことができ,また,引用発明の「外部の情報機器」と本件発明1の「情報管理装置」はいずれも携帯端末の外部にあるから,「外部の機器」といえる点で共通する。そして,引用発明の「アプリケーション」は,本件発明1の「情報取得手段」と,特定の機能を有する「機能手段」ということができる点では共通する。
そうすると,引用発明と本件発明1とは以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 外部の機器に接続された携帯端末であって,前記外部の機器から情報を受信する受信手段と,前記携帯端末が備える機能手段の動作を禁止または許可しておく制御手段と,現在位置を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と,を備え,
前記受信手段は,前記機能手段の使用を許可する,又は禁止する領域の位置情報を含み,前記制御手段による前記機能手段の動作を制御する情報,を前記外部の機器から受信し,
前記制御手段は,前記情報に基づいて,前記機能手段を動作または終了させるよう制御し,
前記位置情報取得手段は,現在位置を示す位置情報を取得し,
前記制御手段は,取得した前記位置情報と前記機能手段の動作を制御する情報とに基づいて,特定の領域に入ったことを判定して前記機能手段の動作を許可,又は禁止する,携帯端末。」

(相違点1)
本件発明1では「携帯端末」は「インターネット」を介して「情報管理装置」に接続されているのに対して,引用発明の「携帯端末10」は「外部の情報機器」に接続されるものである点。

(相違点2)
一致点とした「機能手段」に関し,本件発明1においては「情報取得手段」であるのに対して,引用発明では「アプリケーション」である点。

(相違点3)
一致点とした「受信手段」に関して,本件発明1では「インターネットを介して前記情報管理装置から情報を受信する受信手段」であるのに対して,引用発明では「外部の情報機器から情報を受信するコネクタ29」であり,さらに,本件発明1では「前記情報取得手段の使用が許可される許可領域の位置情報を含み前記制御手段による前記情報取得手段の動作の禁止を解除する使用許可情報,または前記情報取得手段の使用が禁止される禁止領域の位置情報を含み前記情報取得手段の動作を禁止する使用不可情報を前記情報管理装置からインターネットを介して受信し」ているのに対して,引用発明では「前記外部の情報機器に保存された,位置情報およびその位置情報に対応してアプリケーションを停止するか否かの情報を受信」している点。

(相違点4)
一致点とした「制御手段」に関して,本件発明1では,
「前記使用許可情報または前記使用不可情報に基づいて」情報取得手段を制御し,「前記間欠的に取得した前記位置情報と前記使用許可情報または前記使用不可情報とに基づいて,前記許可領域から前記禁止領域に前記携帯端末が移動しているか否かを判定し,前記携帯端末が前記許可領域にいると判定されたときは前記情報取得手段の前記動作を許可し,前記携帯端末が前記禁止領域に移動していると判定されたときは前記情報取得手段の前記動作を禁止する」構成である。
これに対して,引用発明では,「制御手段」に対応する「CPU10」は,
「前記情報に基づいて」,前記アプリケーションを制御し,「取得された前記現在位置の位置情報と,前記位置情報およびその位置情報に対応してアプリケーションを停止するか否かの情報に基づいて,設定された範囲に携帯端末10が入ったか否かが判断され,アプリケーションを停止または継続させる」構成である点。

(相違点5)
一致点とした「位置情報取得手段」に関して,位置情報の取得が本件発明1では「前記受信手段が前記使用許可情報または前記使用不可情報を受信したあと」に「間欠的」に取得されているのに対して,引用発明では「携帯端末10が起動されている間,常時行われ」る点。

事案に鑑み,相違点1と3について併せて検討する。
本件発明1では,「携帯端末」は「情報管理装置」に接続され,当該「情報管理装置」から「前記情報取得手段の使用が許可される許可領域の位置情報を含み前記制御手段による前記情報取得手段の動作の禁止を解除する使用許可情報,または前記情報取得手段の使用が禁止される禁止領域の位置情報を含み前記情報取得手段の動作を禁止する使用不可情報」を受信しているのに対して,引用発明の「携帯端末10」は「外部の情報機器」に接続され,当該「外部の情報機器」から「位置情報およびその位置情報に対応してアプリケーションを停止するか否かの情報」を受信するものである。したがって,本件発明1と引用発明とは「携帯端末」の接続先と,受信される情報が異なっている。
この点に関して本件発明1は,本件明細書の【0008】【0009】段落や【0087】段落等を参酌しても明らかなように,情報漏洩の防止を目的として,外部の「情報管理装置」から「携帯端末」の「情報取得手段」の使用を制御しようとするものである。これに対して,引用発明は,甲第1号証の【0111】段落に「・・・例えば,コネクタ29およびプラグ30により,携帯端末10をパーソナルコンピュータなどの外部の情報機器に接続し,メモリ110に記憶された位置情報およびその位置情報に対応する動作モードを,この外部の情報機器に保存するようにできる。外部の情報機器に保存された位置情報およびその位置情報に対応する動作モードは,コネクタ29およびプラグ30を介して携帯端末10に読み込ませメモリ110に記憶させるようにできる。」と記載されていることから,「外部の情報機器」はメモリ110に記憶された位置情報を単に保存するために設けられたものであって,本件発明1のように情報漏洩の防止を目的として,外部から情報取得手段を制御し情報管理するためのものではない。そうしてみると,携帯端末の接続先を,単なる情報の保存を目的とした「外部の情報機器」から,情報漏洩を防止するために情報取得手段を制御する「情報管理装置」に変更することは,甲第1号証に情報漏洩を防止する点について何ら示唆されていないことを踏まえると,当業者が引用発明から容易に想到できたと言うことはできない。
そうすると,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明1は引用発明から容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明4について
本件発明4を引用発明と対比すると,少なくとも,以下の相違点6で相違する。

(相違点6)
本件発明4では,「携帯端末」は,「情報管理装置」に接続され,当該「情報管理装置」が「前記情報取得手段の使用が許可される許可領域の位置情報を含み前記制御手段による前記情報取得手段の動作の禁止を解除させる使用許可情報,または前記情報取得手段の使用が禁止される禁止領域の位置情報を含み前記情報取得手段の動作を禁止する使用不可情報」を送信し,「携帯端末」がこれを受信しているのに対して,引用発明の「携帯端末10」は,「外部の情報機器」に接続され,当該「外部の情報機器」は「位置情報およびその位置情報に対応してアプリケーションを停止するか否かの情報」を送信し「携帯端末10」が受信するものである点。

上記相違点6については,上記「(1)本件発明1について」の項で検討した理由と同様の理由により当業者が引用発明から容易に想到できたと言うことはできない。
そうすると,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明4は引用発明から容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明8について
引用発明はシステム(物)の発明であるが,これを実行する方法とみて本件発明8と対比すると,少なくとも以下の相違点7で相違するものと認められる。

(相違点7)
本件発明8では「携帯端末」は「情報管理装置」に接続されているのに対して,引用発明の「携帯端末10」は,「外部の情報機器」に接続されるものであり,本件発明8では「・・・前記情報管理装置から前記携帯端末に対して・・・,前記情報取得手段の使用が許可される許可領域の位置情報を含む使用許可情報または前記情報取得手段の使用が禁止される禁止領域の位置情報を含む使用不可情報を送信する使用許可情報送信」し,携帯端末で受信しているのに対して,引用発明では外部の情報機器から携帯端末10に対して,「位置情報およびその位置情報に対応するアプリケーションを停止するか否かの情報」を送信し,前記携帯端末10でこれを受信している点。

上記相違点7については,上記「(1)本件発明1について」の項でも検討したのと同様に,本件発明8と引用発明とは「携帯端末」の接続先と,携帯端末に送信され,当該携帯端末で受信される情報が異なっている。
この点に関して,上記「(1)本件発明1について」の項でも検討したように,本件発明8は,情報漏洩の防止を目的として,外部の「情報管理装置」から「携帯端末」の「情報取得手段」の使用を制御しようとするものであるのに対して,引用発明8の「外部の情報機器」はメモリ110に記憶された位置情報を単に保存するために設けられたものであって,本件発明8のように情報漏洩の防止を目的として,外部から情報取得手段を制御し情報管理するためのものではない。そうしてみると,携帯端末の接続先を,単なる情報の保存を目的とした「外部の情報機器」から,情報漏洩を防止するために情報取得手段を制御する「情報管理装置」に変更することは,甲第1号証に情報漏洩を防止する点について何ら示唆されていないことを踏まえると,当業者が引用発明から容易に想到できたと言うことはできない。
そうすると,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明8は引用発明から容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明9について
引用発明はシステムの発明であるが,これを実行させるプログラムとみて本件発明9と対比すると,少なくとも以下の相違点8で相違するものと認められる。

(相違点8)
本件発明9では「携帯端末」は「情報管理装置」に接続されているのに対して,引用発明の「携帯端末10」は「外部の情報機器」に接続されるものであり,また,本件発明9では「携帯端末」の「受信手段」が「情報管理装置」から「前記情報取得手段の使用が許可される許可領域の位置情報を含む使用許可情報または前記情報取得手段の使用が禁止される禁止領域の位置情報を含む使用不可情報を受信」しているのに対して、引用発明では「前記コネクタ29(「受信手段」に相当。)は,前記外部の情報機器」から「位置情報およびその位置情報に対応してアプリケーションを停止するか否かの情報を受信している点。

上記相違点8について検討すると,上記「(1)本件発明1について」において検討したように,引用発明は,「外部の情報機器」はメモリ110に記憶された位置情報を単に保存するために設けられたものであって,本件発明1のように情報漏洩の防止を目的として,外部から情報取得手段を制御し情報管理するためのものではない。そうしてみると,携帯端末の接続先を,単なる情報の保存を目的とした「外部の情報機器」から,情報漏洩を防止するために情報取得手段を制御する「情報管理装置」に変更することは,甲第1号証に情報漏洩を防止する点について何ら示唆されていないことを踏まえると,当業者が引用発明から容易に想到できたと言うことはできない。
そうすると,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明9は引用発明から容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明2,3,5?7について
上記(1)(2)において検討したように,本件発明1及び4は,引用発明から当業者が容易に発明をすることができないものである。
他方,本件発明2,3は請求項1を引用し,本件発明5?7は請求項4を引用し,さらに構成を特定したものであるから,本件発明2,3,5?7も,本件発明1,4と同様の理由により当業者が引用発明から容易に想到できたものと言うことはできない。

以上のとおり,本件発明1?9は,引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。


6.むすび
したがって,特許異議申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?9に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-06-30 
出願番号 特願2015-35659(P2015-35659)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04W)
最終処分 維持  
前審関与審査官 桑江 晃  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 北岡 浩
山本 章裕
登録日 2015-09-04 
登録番号 特許第5801507号(P5801507)
権利者 株式会社 アイキューブドシステムズ
発明の名称 携帯端末、情報管理システム、情報管理方法およびプログラム  
代理人 右田 俊介  
代理人 栗田 由貴子  

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