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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A45D
管理番号 1317012
異議申立番号 異議2016-700259  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-30 
確定日 2016-07-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第5786154号発明「塗布材押出容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5786154号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5786154号についての出願は、平成23年7月20日に特許出願され、平成27年8月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人東原文和(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第5786154号の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.特許異議申立ての理由の概要
申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証?甲第4号証を提出し、請求項1?7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1?7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
・甲第1号証:特開2007-130157号公報
・甲第2号証:特開2003-252387号公報
・甲第3号証:特開昭62-163769号公報
・甲第4号証:特開2007-130438号公報

特に、本件発明1については、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

4.甲号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の発明が記載されている(【0030】?【0031】、【0045】、【0049】、【0067】、【0073】、図1?3、8等参照)。

「本体2と、前記本体2内に設けられた液押圧機構6と、前記本体2の前端側に設けられ弾性材で形成された塗布体10と、を具備し、前記液押圧機構6により塗布液4を押し出して前記塗布体10の吐出口8から吐出させる液体塗布具1であって、
前記塗布体10は、偏平な先細り形状となっているテーパ部21、22を備え、
前記上面のテーパ部21に肩部23が段差形成され、前記肩部23から塗布部分10aが更に延在されており、
前記吐出口8は、前記肩部23に扁平方向に沿う横長の矩形形状に開口して設けられており、
前記塗布部分10aは平面部25として形成され、前記平面部25の一方面には、前記吐出口8の一辺と連続面上に粗面部26が形成され、前記粗面部26には前記吐出口8から吐出した塗布液4を一時保持するようにし、
前記吐出口8よりも外側で前記塗布部分10aの液保持部47を挟む位置に、前記液保持部47よりも上方側に突出するよう設けられた二股爪48を有し、
前記吐出口8は、前記テーパ21に段差形成された前記肩部23に設けられており、
前記二股爪48の頂面は、前記液保持部47よりも上方側に位置している、液体塗布具1。」(以下「甲1発明」という。)

(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている(【0011】?【0012】、図1?3参照)。

「コーキング材充填容器5に冠着されるキャップ体1において、その上部をコーキング材8の吐出口4とヘラ3を設けた構造とし、前記吐出口4の周囲であって前記ヘラ3の立設部分を除く部分に、肉厚状の吐出縁部6を設け、コーキング施工中におけるコーキング材8の横洩れを防止すること。」(以下「甲2事項」という。)

(3)甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている(第2ページ右上欄第4?14行、同ページ左下欄第10?16行、第4図参照)。

「弾性的に開くスリット状開口7を有し、前記スリット状開口7の近辺に、前記スリット状開口7から吐出する塗布液を塗り付けるための塗り付け縁部8を設けた塗布装置において、本体1の周壁部1aを被塗布面Wに当てた状態で前記装置を移動させ、吐出した塗布液を前記塗り付け縁部8によって押し付けながら、被塗布面Wにほぼ一様な厚さの塗膜を形成すること。」(以下「甲3事項」という。)

(4)甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている(【0066】?【0067】、【0073】?【0074】、図1?4参照)。

「充填物押出容器において、本体筒2と操作筒3との繰り出し方向への相対回転により、移動螺子筒5及び/又は移動体6を前進させて、充填物Lを押し出すとともに、前記本体筒2と前記操作筒3との繰り戻し方向の相対回転については、一定回転量のみ許容すること。」(以下「甲4事項」という。)

5.判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも、本件発明1は、両側部が短軸方向一方側に凸となるように湾曲した頂面を有しているのに対して、甲1発明は、両側部たる二股爪48が「湾曲した頂面」を有していない点において、両者は相違する。

そこで、まず、本件発明1が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか否かを検討する。

甲第1号証には、両側部の頂面につき「短軸方向一方側に凸」であり、かつ「湾曲した」構成とすることは、記載も示唆もされていない。

また、甲1発明の二股爪48については、甲第1号証に、吐出口8から更に先端へ延在する液保持部47の両側に二股爪48を形成することにより、該二股爪48の間で塗布液4をその表面張力によって保持する旨記載されている(【0067】)。そして、二股爪48の形状を「湾曲した頂面」を有するように変更することは、その間に保持される塗布液4の表面張力の作用を弱める方向に働くから、二股爪48の頂面を「湾曲した」構成とすることには、阻害要因がある。

さらに、両側部を「短軸方向一方側に凸となるように湾曲した頂面」を有するように構成することが設計事項であることを示す証拠もない。

そして、「短軸方向一方側に凸となるように湾曲した頂面」を有する両側部を有する本件発明1は、「塗布具1の接触感(いわゆる肌当たり)を高めることができる」(本件特許明細書【0069】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

次に、本件発明1が甲1発明及び甲2?4事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるか否かを検討する。

甲2事項の吐出縁部6は、コーキング材充填容器5に冠着されるキャップ体1における、コーキング材8の「吐出口4の周囲」に「肉厚状」に設けられたものであって、「短軸方向一方側に凸」であり、かつ「湾曲した頂面」を有するものではなく、また、「吐出口よりも外側」で「塗布材受け面を挟む位置」に設けられるものでもないから、本件発明1の両側部とは異なるものである。そうすると、甲第2号証には、上記相違点の構成が記載されているとも、示唆されているともいえない。
また、甲第3?4号証にも、上記相違点の構成は記載も示唆もされておらず、上記相違点とすることが設計事項であることを示す証拠でもない。

そして、本件発明1は、上記のとおりの作用効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2?4事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1の全ての発明特定事項を有しているから、本件発明2?7についても、甲1発明及び甲2?4事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-13 
出願番号 特願2011-159103(P2011-159103)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A45D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 青木 良憲  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 平瀬 知明
関谷 一夫
登録日 2015-08-07 
登録番号 特許第5786154号(P5786154)
権利者 株式会社トキワ
発明の名称 塗布材押出容器  
代理人 城戸 博兒  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 荒井 寿王  

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