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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1317026
異議申立番号 異議2016-700376  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-28 
確定日 2016-07-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第5807070号発明「ヒートシール樹脂層を含む多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5807070号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5807070号の請求項1?9に係る特許についての出願は、2012年1月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年1月6日(KR)韓国)を国際出願日として特許出願され、平成27年9月11日に特許権の設定登録がされ、同年11月10日にその特許公報が発行され、その後、平成28年4月28日に特許異議申立人石塚由菜(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第5807070号の請求項1?9に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップ;
前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ;および、
前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含み、前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
前記第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】前記樹脂層がラミネーションされたフィルムの第2冷却ステップは、表面に凹凸構造を有する冷却ロールを利用して前記樹脂層に気流溝を形成させるように遂行する、請求項1に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】前記第2押出成形ステップは、前記ヒートシール樹脂層として、メタロセン樹脂、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する、請求項1または2に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる、請求項3に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。
【請求項5】前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、第1押出成形ステップにおいて使用した原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を使用する、請求項1?4のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項6】前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、帯電防止剤を含む原料を使用する、請求項1?5のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項7】前記第2押出成形ステップは、前記樹脂層として、ナイロン樹脂を含む原料を使用する、請求項1?6のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】前記第1押出成形ステップでは、スキン外層にスリップ剤およびブロッキング防止剤からなる群より選択された一つ以上が含まれるように遂行される、請求項1?7のいずれか1項に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法。
【請求項9】前記スキン外層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記コア層は、ポリプロピレン(PP)からなり、
前記スキン内層は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなり、
前記ヒートシール樹脂層は、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸メチル、エチレンメタクリル酸、または、エチレン/プロピレン/ブタジエンの三元共重合体からなる、請求項1または2に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。
本件発明1?9は、本件優先日前に頒布された以下の甲第1号証(主引用例)に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1?9に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開平3-65325号公報
甲第2号証:特開2002-258752号公報
甲第3号証:特開昭57-181829号公報
(以下、それぞれ「甲1」?「甲3」という。)

4 当審の判断

(1)甲号各証の記載

ア 甲1
(1a)「(1)基材フィルム層と熱融着ポリマ層からなるプリントラミネート用フィルム及び印刷体を、該プリントラミネート用フィルムの熱融着ポリマ層面と該印刷体の印刷面を向い合わせて、融着装置により加圧融着するプリントラミネート方法において、該印刷体を温度40?110℃、線圧20?120Kg/cmで予熱加圧した後、プリントラミネート用フィルムと80?140℃で加圧融着することを特徴とするプリントラミネート方法。」(1頁左下欄、特許請求の範囲の請求項1)
(1b)「〔産業上の利用分野〕
本発明はプリントラミネート方法に関するものである。
〔従来の技術〕
熱融着ポリマ層が積層されたフィルムを熱圧着するプリントラミネート体としては、紙、金属箔、布などとのラミネート・・・、印刷紙とのラミネート・・・などが知られている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記従来のプリントラミネート体は接着力は満足するものの、今一つ艶が出ず、光沢感の悪いものであった。
本発明はかかる問題点を改善し、接着強度、光沢感が共に優れたプリントラミネート体を提供することを目的とする。」(1頁左下欄16行?右下欄13行)
(1c)「〔課題を解決するための手段〕
本発明のプリントラミネート方法は、基材フィルム層と熱融着ポリマ層からなるプリントラミネート用フィルム及び印刷体を、該プリントラミネート用フィルムの熱融着ポリマ層面と該印刷体の印刷面を向い合わせて、融着装置により加圧融着するプリントラミネート方法において、該印刷体を温度40?110℃、線圧20?120Kg/cmで予熱加圧した後、プリントラミネート用フィルムと80?140℃で加圧融着することを特徴とするものである。」(1頁右下欄14行?2頁左上欄4行)
(1d)「本発明における熱融着ポリマとは、熱融着性を有するものであればよく、特に限定するものではないが、ポリエチレン、エチレン共重合体(例えば、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸メチル無水マレイン酸三元共重合体などのエチレンアクリル酸系共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンプロピレン共重合体、エチレンブテン共重合体)、プロピレンブテン共重合体、メタクリル酸メチル共重合体などを例示することができ、さらにこれらの混合物を使用してもよい。また、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン等を添加してもよく、好ましい添加量は5?35重量%である。さらには、特に主になる融点ピークが50?110℃になるような上記共重合体、または混合物が好ましい。
熱融着ポリマ層の厚みは1?30μm、好ましくは4?18μmである。
基材フィルム層とは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどのフィルムをいい、なかでもポリオレフィンが好ましくて、ポリオレフィンフィルムとしてはポリプロピレン、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体などからなるフィルムを例示できる。特にポリプロピレンを主体(プロピレン成分85重量%以上)とした二軸延伸フィルムが好ましい。また該基材フィルム層は2層以上の積層体であってもよく、表層の基材層は内層の基材層より剛性または融点が低いものがよい。
基材フィルム層の厚みは、特に限定しないが、5?100μm、好ましくは10?25μmである。
熱融着ポリマ層、基材フィルム層には、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤(有機、無機)、紫外線防止剤、造核剤等を、接着強度、光沢感を低下させない範囲内(例えば0.01?5重量%)で、添加してもよい。
基材フィルム層に熱融着ポリマ層を積層する方法は、特に限定するものではないが、コーティングする方法、押出ラミネート法、積層後延伸する方法(共押出法、一軸延伸後積層し延伸する方法)などを例示することができ、なかでも積層後延伸する方法が好ましく、次にその一例を示す。
基材フィルム層を構成すべき樹脂としてポリオレフィンを1つの押出機へ、熱融着ポリマを別の押出機へ供給し、1つの口金へ導き同時に押出して冷却ロールに巻き付け積層シートとし、該シートを加熱し、縦方向に3?7倍に延伸し(一軸延伸後積層し延伸する方法では、この時点で熱融着層ポリマを押出ラミネートする)、再び加熱して横方向に5?15倍に延伸し、熱処理、必要に応じて熱弛緩して積層フィルムとする。熱融着ポリマ層、ポリオレフィンフィルム層のいずれの面にもコロナ放電処理するのが好ましい。」(2頁左上欄5行?左下欄19行)
(1e)「印刷体とは、アート紙、コート紙、上質紙、和紙、合成紙、フィルムなどに印刷したものをいい、それは単体、積層体のいずれでもよい。また印刷は特に限定せず、グラビア印刷、オフセット刷、凸版印刷、凹版印刷、フレキソ印刷等、いずれでもよい。」(2頁左下欄20行?右下欄5行)
(1f)「本発明の印刷体を40?110℃、線圧20?120Kg/cmで予熱加圧する方法は、印刷体を加熱されたロール(金属、ゴム、セラミック等)でニップ予熱加圧する方法、赤外線などのヒーターまたは加熱炉などで加熱後ニップロールで加圧する方法などがある。該ニップロールは加温されているのが好ましい。また、これらの予熱工程はプリントラミネート用フィルムと印刷体を加圧融着する直前が好ましく、予熱は片面、両面のいずれでもよいが、印刷体のカール面からは、両面予熱が好ましい。
予熱する温度は印刷体の波打ち、カール、印刷インキの耐熱性等から40?110℃、好ましくは50?110℃である。
線圧は、印刷体の表面凹凸を少なくするには線圧20Kg/cm以上、加圧による印刷体の変形(圧延、伸び)を抑えるには線圧120Kg/cm以下がよく、好ましくは線圧40?100Kg/cmである。」(2頁右下欄6行?3頁左上欄4行)
(1g)「本発明に使用する融着装置とは、基材フィルム層の片面に積層された熱融着ポリマ層と印刷体の印刷面を加圧融着する装置であり、二本のロールを用いて加圧融着、金属エンドレスベルトとロールを用いて加圧融着などの装置がある。金属エンドレスベルトに代えて艶出しフィルムを用いてもよい。ロールは金属(例えばハードクロムメッキ、ステンレス)、セラミック、ゴムなどがよい。二本のロールを用いて加圧融着する場合は、両方とも金属ロール、片方のみ金属ロールまたはセラミック(基材フィルム層側)、他はゴムロールなどがある。
プリントラミネート用フィルムと印刷体を加圧融着する際には、片面または両面から80?140℃、好ましくは90?130℃に加熱し圧着するのが光沢感の優れたものが得られる。
該加圧融着温度は熱融着ポリマ層の融点より10℃以上、好ましくは20℃以上高いのがよく、基材フィルム層の融点より30℃以上低いのが好ましい。加圧は通常、線圧20?120Kg/cmがよい。」(3頁左上欄5行?右上欄5行)
(1h)「第1図は、本発明の方法に使用し得る金属エンドレスベルト方式の融着装置の一例の概略側面図である。金属ベルト3は加熱ロール4とロール6により保持され、両ロールの回転により金属ベルト3は左回りに回動し、加熱ロール4は80?140℃の温度に設定されている。40?100℃の温度に設定された予熱ロール11、12で予熱された印刷体2は、プリントラミネート用フィルム1の熱融着ポリマ層面と印刷体2の印刷面が向い合うように、金属エンドレスベルト3と加圧ロール5の間に供給され、80?140℃の温度で加圧融着され、加圧融着された積層体は基材フィルム層面が金属エンドレスベルト3に接触したまま移動する。金属ベルト3はロール6に至る前に水シャワー7により冷却され、該積層体は位置Aにおいて、20?80℃の温度で金属エンドレスベルト3(融着装置の圧着面)より離脱する。
第2図は、本発明に使用し得る加熱加圧ロール方式の融着装置方式の一例の概略側面図である。印刷体2は40?110℃の温度に設定された予熱ロール11、12間で予熱され、プリントラミネート用フィルム1の熱融着ポリマ層面と印刷体2の印刷面が向い合うように、金属ロール4(80?140℃の温度に設定されている)と加圧ロール5の間に供給され、80?140℃の温度で加圧融着される。」(3頁右上欄9行?左下欄14行)
(1i)「なお、本発明において使用した物性値の測定方法及び評価方法は次のとおりである。
(1)融点
示差走査熱量計(DSC)を用い、20℃/分の昇温速度で280℃まで昇温し5分保持した後、同速で冷却し、再度昇温した時の、いわゆるセカンドランの融解曲線のピーク点を融点とする。ピーク点を2点以上有する時は、基線と曲線から描かれる融解面積の最も大きい所のピークを融点とする。
(2)光沢度
JIS-Z8741により、入射角20度、受光角20度で、印刷紙にプリントラミネートした白地部分を測定した。測定値の高いほど光沢のよいことを示す。
(3)光沢感
熱融着したプリントラミネートの光沢感を次のとおり判定した。
○:平滑で優れた光沢感のあるプリントラミネート体
×:微細なツブツブを有し、光沢感の劣ったプリントラミネート体
(4)接着力
熱融着した積層フィルムを印刷紙を180度方向に剥離し、1cm単位当りで測定したものである。
(5)カール
印刷紙(130g/m^(2) アート紙)に熱融着したプリントラミネート体の端部カール(フィルム側への持上がり)を判定した。
○:カールなく良好
△:端部カールややあり
×:端部カール(持上がり)大
(6)平面性
熱融着したプリントラミネート体の波打ち、凸凹具合を判定した。
○:波打ちデコボコもなく平面性良好
△:波打ちデコボコややあり
×:波打ちデコボコ大きく平面性不良」(3頁左下欄15行?4頁左上欄13行)
(1j)「実施例1
ポリプロピレン(メルトインデックス:2.0)を他の押出機へ供給し、260℃にてシート状に押出し、ドラムに巻き付け冷却したあと、120℃に加熱して長手方向に4.5倍に延伸し冷却し、エチレン酢酸ビニル共重合体(融点85℃)を別の押出機から押出ラミネートし、次いで170℃に加熱したテンターに導き11倍に横方向に延伸し、165℃にて熱処理し、さらに熱融着ポリマ層(エチレン酢酸ビニル共重合体)面にコロナ放電処理し、熱融着ポリマ層厚み6μm、ポリプロピレン層厚み20μmのプリントラミネート用フィルムを得た。次いで、第1図の融着装置を用いて、印刷体を60℃、線圧50Kg/cmで予熱加圧し、該印刷体に前記プリントラミネート用フィルムを加圧融着温度100℃の条件でラミネートし、プリントラミネート体を得た。得られたプリントラミネート体について、接着力、光沢度、光沢感、カール及び平面性を評価した。結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、印刷体の予熱加圧を行わなかった点以外は、実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、印刷体の予熱加圧の線圧を15Kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
実施例2
ポリプロピレン(メルトインデックス:2.0)を260℃にてシート状に押出し120℃で長手方向に4.5倍に延伸して得られた一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、熱融着ポリマとしてエチレンメタクリル酸メチル無水マレイン酸三元重合体(融点:100℃)を押出ラミネートし、170℃のテンターにて横手方向に11倍に延伸し、165℃にて熱処理し、さらに熱融着ポリマ層面にコロナ放電処理し、熱融着ポリマ層厚み6μm、ポリプロピレン層厚み20μmのプリントラミネート用フィルムを得た。次いで、第2図の融着装置を用いて、印刷体を90℃、線圧75Kg/cmで予熱加圧し、該印刷体に前記プリントラミネート用フィルムを加圧融着温度120℃の条件でラミネートし、プリントラミネート体を得た。得られたプリントラミネート体について、接着力、光沢度、光沢感、カール及び平面性を評価した。
結果を第1表に示す。
比較例3
実施例2において、印刷体の予熱加圧の温度を125℃に変更し、加圧融着温度を110℃に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。結果を第1表に示す。
実施例3
二軸延伸ポリエステルフィルム(厚み:15μm)にエチレン酢酸ビニル共重合体(融点:95℃)を220℃で15μmの厚みに押出ラミネートしてプリントラミネート用フィルムを得た。次いで、第1図の融着装置を用いて、印刷体を100℃、線圧65Kg/cmで予熱加圧し、該印刷体に前記プリントラミネート用フィルムを加圧融着温度135℃の条件でラミネートし、プリントラミネート体を得た。得られたプリントラミネート体について、接着力、光沢度、光沢感、カール及び平面性を評価した。結果を第1表に示す。

実施例1、実施例2、実施例3とも接着力、光沢感、カール、平面性ともにすぐれたものであった。
比較例1、比較例2は印刷体を予熱加圧してないためあるいは不足のため、接着力は十分であるが、光沢感に欠け、また印刷体の微細なデコボコが消えずに残った。
比較例3は印刷体の予熱加圧が過ぎるため、カールが大きく、印刷体は熱で変色し光沢感悪く、波打った平面性の悪いものになった。」(4頁左上欄14行?5頁右上欄10行)
(1k)「〔発明の効果〕
本発明は次のごとく優れた効果を奏する。
(1)印刷体を40?110℃に予熱したので、融着ポリマが印刷体に接して冷えることなく、従って、印刷面のくい込み、流れが良くなり、微細な“ブツブツ”のない光沢の優れたプリントラミネート体が得られる。
(2)印刷体を線圧20?120Kg/cmに加圧したので、印刷体の微細なデコボコが残ることもなく、平面性に優れた、光沢感のあるプリントラミネート体が得られる。
(3)加圧融着温度を80?140℃としたので、均一完全融着し、カールのない接着力も十分強いプリントラミネート体が得られる。」(5頁右上欄11行?左下欄4行)
(1L)「



」(5頁右下欄、第1図及び第2図)

イ 甲2
(2a)「【請求項1】熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)、ヒートシール性樹脂層(II)よりなる多層フィルムであって、ヒートシール性樹脂層(II)が、ポリオレフィン系樹脂(a)にポリエーテルエステルアミド(b)を主成分とする永久帯電防止剤、金属塩(d)及び/又はアイオノマー(e)を含有した熱可塑性樹脂組成物よりなるものであることを特徴とするインモールド成形用ラベル。
【請求項2】ヒートシール性樹脂層(II)が、
成分a:ポリオレフィン系樹脂 50?95重量%
成分b:ポリエーテルエステルアミド 5?35重量%
成分c:ポリアミド 0?10重量%
成分d:金属塩 0.01?5重量%
を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項3】ヒートシール性樹脂層(II)が、
成分e:アイオノマー 0.5?10重量%
を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1または2に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項4】成分aのポリオレフィン系樹脂が、結晶化度10?60%、数平均分子量が10,000?40,000、融点が50?130℃のポリエチレンであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項5】ヒートシール性樹脂層(II)が、その表面にエンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項6】熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)が、少なくとも1方向に延伸されているフィルムからなることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項7】熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)が、無機及び/又は有機フィラーを含有する多層フィルムからなることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。」(2頁、特許請求の範囲の請求項1?7)
(2b)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ラベルを予め金型内に該ラベルの印刷が施こされた表面側が金型壁面に接するようにセットし、金型内に溶融した熱可塑性樹脂のパリソンを導き中空成形して、或いは溶融した熱可塑性樹脂を射出成形して、或いは溶融した熱可塑性樹脂シートを真空成形もしくは圧空成形してラベル貼合容器を製造するインモールド成形に用いるラベルに関するものである。
【0002】【従来の技術】従来、ラベル付きの樹脂成形容器を一体成形するには、金型内に予めブランク又はラベルをインサートし、次いで射出成形、中空成形、差圧成形、発泡成形などにより該金型内で容器を成形して、容器に絵付けなどを行なっている・・・。この様なインモールド成形用ラベルとしては、グラビア印刷された樹脂フィルム、オフセット多色印刷された合成紙・・・、或いは、アルミニウム箔の裏面に高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体をラミネートし、その箔の表面にグラビア印刷したアルミニウムラベルなどが知られている。
【0003】しかしながら、上記のインモールド成形用ラベルやブランクを用いて、インモールド成形によりラベルで加飾されたラベル貼合容器を製造する方法においては、自動ラベル供給装置を用いて金型内にラベルを供給する際に、ラベルの帯電防止機能が不十分であると、特に冬期の低湿度の環境においては積み重ねられたラベル間の静電気が除去されずに、ラベルが2枚あるいはそれ以上が同時に金型内に供給され、正規でない位置にラベルが貼合した容器(不良品)が生じたり、ラベルが脱落して有効に利用されないという問題が生じている。また、ラベルの製造工程におけるフィルム、合成紙への印刷加工、特にオフセット印刷時に、これらフィルムの給排紙性が悪化し、何度もラベル製造機の停止、再スタートを強いられるという問題が指摘されている。
【0004】このような問題を解決するために、ラベルのヒートシール性樹脂層であるエチレン系樹脂に、ソルビタンモノオレート、グリセリンモノステアレート等の、移行型の低分子量帯電防止剤を練り込んだインモールド成形用ラベルや、ヒートシール性エチレン系樹脂層の表面に、ポリオキシエチレン誘導体等の低分子量の帯電防止剤を塗布し乾燥させた、帯電防止膜を形成させたインモールド成形用ラベルが提案されている。
【0005】しかし、両者のインモールド成形用ラベルとも、帯電防止機能の長期持続性が短いといった欠点や、さらには、前者のインモールド成形用ラベルにおいてはヒートシール性樹脂層に練り込んだ帯電防止剤成分が表面に移行することにより、該ヒートシール性樹脂の容器への融着性能を著しく阻害し、ラベルが容器に融着しない不良品の容器が形成されたり、或いは、容器に貼着したラベルにブリスターが発生した不良品を形成する問題があった。以上のような問題を解決するために、ヒートシール性樹脂に長期持続型で比粘着性の帯電防止機能を有するポリエーテルエステルアミドを含有させることで、上記問題を解決する方法が提案されている・・・。
【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリエーテルエステルアミドを低分子量の変性ポリエチレンを相溶化剤としてヒートシール性樹脂に練り混んでインモールド成形用ラベルとした場合、それらラベルを印刷加工する工程からインモールド成形されるまでの保存期間において、60℃にて数日間あるいは40℃にて数ヶ月間放置されると、該ラベルの本来の目的であるヒートシール性が著しく低下し、容器にインモールド成形された際にブリスターが発生し、また密着強度も低下することからラベルが剥がれやすいという欠点が判明した。本発明は、ラベル製造時の印刷加工時の加熱、特にUVオフセット印刷や、保管期間、特に夏期の高温時に長期保管されてもヒートシール性の低下がなく容器へ強固に融着し、さらには帯電防止性が良好で、年間を通して印刷、断裁、打ち抜き加工、金型へのインサート性に優れるインモールド成形用ラベルの提供を目的とする。」
(2c)「【0007】【課題を解決するための手段】これらの課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らはヒートシール性樹脂層であるポリオレフィン系樹脂に、金属塩あるいはアイオノマーを含有させたポリエーテルエステルアミドを含有させることで、ラベルの印刷加工時や保管時に高温で長期間おかれてもヒートシール性の低下がなく、かつラベルの印刷加工時の給排紙性や断裁時の紙揃いを良好とし、インモールド成形時におけるラベルの金型への挿入ミスを減少させることによって所期の目的を効果的に達成しうることを見出して、本発明を提供するに至った。
【0008】すなわち、本願の発明は、熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)、ヒートシール性樹脂層(II)よりなる多層フィルムであって、ヒートシール性樹脂層(II)が、ポリオレフィン系樹脂(a)にポリエーテルエステルアミド(b)を主成分とする永久帯電防止剤、金属塩(d)及び/又はアイオノマー(e)を含有した熱可塑性樹脂組成物よりなるものであることを特徴とするインモールド成形用ラベルを提供するものである。」
(2d)「【0009】【発明の実施の形態】本発明のインモールド成形用ラベルについてさらに詳細に説明する。
インモールド成形用ラベルの構造:図1は、中空成形用ラベルの断面図を示したものであり、図中、1はインモールド成形用ラベル、2は印刷、3は熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)、4はヒートシール性樹脂層(II)である。ヒートシール性樹脂層(II)は表面にエンボス加工を施こし、それによりラベル貼合容器のラベルのブリスターの発生を防ぐことができる・・・。
【0010】図2は、熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)として表面層(B)、コア層(A)、裏面層(C)を有するものを用い、ヒートシール性樹脂層にエンボスを施した別の態様のインモールド成形用ラベルの断面の部分拡大図である。図3は、熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)として表面層(B)、コア層(A)を有するものを用い、ヒートシール性樹脂層にエンボスを施した別の態様のインモールド成形用ラベルの断面の部分拡大図である。」
(2e)「【0011】熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)の素材としては、プロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリ4メチルペンテン-1、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレ-ト樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、アイオノマ-樹脂等を挙げることができるが、好ましくはプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレ-ト樹脂等の融点が130?280℃の範囲の熱可塑性樹脂であり、これらの樹脂は2種以上混合して用いることもできる。
【0012】また、主成分の熱可塑性樹脂が、ヒートシール性樹脂層(II)を構成するポリオレフィン系樹脂の融点より15℃以上高い融点を有することが好ましい。これらの樹脂の中でもプロピレン系樹脂が、耐薬品性、コストの面などから好ましい。かかるプロピレン系樹脂としては、アイソタクティックまたはシンジオタクティックな立体規則性を示すプロピレン単独重合体、もしくは、プロピレンを主成分とし、これとエチレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1,4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンとの共重合体が使用される。これら共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
【0013】これらの樹脂に無機微細粉末及び/又は有機フィラーを配合したフィルム、さらには公知の方法で一方向あるいは二方向に延伸したフィルム、表面に無機フィラーを含有したラテックスを塗工したフィルム、アルミニウムを蒸着あるいは貼合したフィルムなどが好適に使用できる。熱可塑性樹脂フィルム基材層に使用する無機微細粉末及び/又は有機フィラーの種類は特に限定されない。無機微細粉末としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、硫酸バリウム、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素などが挙げられる。なかでも、重質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルクが、安価で成形性がよいため好ましい。
【0014】有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイト、ポリ4メチルペンテン-1、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で融点が120℃?300℃、ないしはガラス転移温度が120℃?280℃を有するものなどが挙げられる。上記の無機微細粉末または有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用しても良い。2種以上を組み合わせて使用する場合には、無機微細粉末と有機フィラーを混合して使用しても良い。
【0015】本発明の熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)は、単層であっても、コア層(A)と表面層(B)の2層構造であっても、コア層(A)の表裏面に表面層(B)、裏面層(C)が存在する3層構造であっても、コア層(A)と表裏面層間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造であっても良く、少なくとも1軸方向に延伸されていても良い。また、多層構造が延伸されている場合その延伸軸数は、3層構造では1軸/1軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、2軸/2軸/2軸であっても良く、それ以上の層構造の場合、延伸軸数は任意に組み合わされる。
【0016】これらの中でも、印刷時の寸法安定性、ラベルの金型内への供給性、熱収縮防止性などの面から、熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)としては、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを5?30重量%、高密度ポリエチレン0?20重量%およびプロピレン系樹脂を95?50重量%の割合で含有する樹脂組成物の二軸延伸フィルムコア層(A)の片面に、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを15?65重量%、高密度ポリエチレン0?10重量%およびプロピレン系樹脂を85?25重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムの表面層(B)を、この表面層(B)とは反対のコア層(A)の片面に無機微細粉末及び/又は有機フィラーを15?65重量%、高密度ポリエチレン0?10重量%およびプロピレン系樹脂85?25重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムよりなる裏面層(C)が貼合された多層フィルム(図2参照)、または、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを5?45重量%、高密度ポリエチレン0?20重量%およびプロピレン系樹脂を95?35重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムコア層(A)の片面に、無機微細粉末及び/または有機フィラーを15?65重量%、高密度ポリエチレン0?10重量%およびプロピレン系樹脂を85?25重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムの表面層(B)が貼合された多層フィルム(図3参照)などが好ましい。
【0017】また、容器の色彩をきわだたせるために、ラベルに透明性が要求される場合は、以下のような熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)も好ましい。すなわち無機微細粉末及び/又は有機フィラーを0?5重量%、高密度ポリエチレン0?20重量%およびプロピレン系樹脂を100?75重量%の割合で含有する樹脂組成物の二軸延伸フィルムコア層(A)の片面に、無機微細粉末及び/または有機フィラーを1?30重量%、高密度ポリエチレン0?10重量%およびプロピレン系樹脂を99?60重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムの表面層(B)を、この表面層(B)とは反対のコア層(A)の片面に無機微細粉末及び/または有機フィラーを1?30重量%、高密度ポリエチレン0?10重量%およびプロピレン系樹脂99?60重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムよりなる裏面層(C)が貼合された樹脂延伸フィルム(図2参照)、または、無機微細粉末及び/または有機フィラーを0?5重量%、高密度ポリエチレン0?20重量%およびプロピレン系樹脂を100?75重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムコア層(A)の片面に、無機微細粉末及び/または有機フィラーを1?30重量%、高密度ポリエチレン0?10重量%およびプロピレン系樹脂を99?60重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムの表面層(B)が貼合された樹脂延伸フィルム(図3参照)などが好ましい。
【0018】これら多層フィルムにおいては、印刷は表面層(B)側に設け、ヒートシール性樹脂層(II)はコア層(A)または裏面層(C)側に設けられる。多層フィルムの密度は0.60?1.20g/cm^(3)、好ましくは0.65?1.10g/cm^(3) の範囲であることが好ましい。以上の熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)の肉厚は20?250μm、好ましくは40?200μmの範囲である。その肉厚が20μm未満であるとラベルインサーターによる金型へのラベルの挿入が正規の位置に固定されなかったり、ラベルにシワを生じるといった問題が生じやすい。逆に250μmを越えると、インモ-ルド成形された容器とラベルの境界部分の強度が低下し、容器の耐落下強度が劣る。上記各層の厚みは、(A)層は好ましくは19?170μm、より好ましくは38?130μm、(B)層は好ましくは1?40μm、より好ましくは2?35μm、(C)層は好ましくは0?40μm、より好ましくは0?35μmである。」
(2f)「【0019】ヒートシール性樹脂層(II)
(a)ポリオレフィン系樹脂
ヒートシール性樹脂層(II)を構成するポリオレフィン系樹脂としては、密度が0.890?0.910g/cm^(3) のポリプロピレンランダム共重合体、密度が0.940?0.970g/cm^(3) の高密度ポリエチレン、密度が0.900?0.935g/cm^(3) の低密度ないし中密度の高圧法ポリエチレン、密度が0.880?0.940g/cm^(3) の直鎖線状ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1?8)、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩(Zn、Al、Li、K、Naなど)等の融点が50?130℃のポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0020】より好ましくは、結晶化度(X線法)が10?60%、数平均分子量が10,000?40,000の高圧法ポリエチレン、又は直鎖線状ポリエチレンである。中でも容器への接着性の面からエチレン40?98重量%と、炭素数が3?30のα-オレフィン60?2重量%とを、メタロセン触媒・・・を使用して、共重合体させることにより得られる直鎖線状ポリエチレンが最適である。これらポリオレフィン系樹脂は、単独でも、あるいは二種以上の混合物であってもよい。ヒートシール性樹脂層(II)成分中の熱可塑性樹脂(a)の含有量は、通常50?95重量%、好ましくは60?93重量%である。
【0021】(b)ポリエーテルエステルアミド
ヒートシール性樹脂層(II)を構成するポリエーテルエステルアミドとしては、特開昭58-118838号公報、特開平1-163234号公報等に開示のポリエーテルエステルアミドを挙げることができる。・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
【0026】・・・ヒートシール性樹脂層(II)成分中のポリエーテルエステルアミド(b)の含有量は、通常5?35重量%、好ましくは6?30重量%である。上記成分(b)の量が上記範囲未満であるとヒートシール性樹脂層(II)の帯電防止性が不十分であり、上記範囲を超過するとラベルの容器への融着力が低い。
【0027】(c)ポリアミド樹脂
ヒートシール性樹脂層(II)の構成成分として、帯電防止性能をより安定して発現することを目的に、炭素数6?12またはそれ以上のラクタムの開環重合体、炭素数6?12またはそれ以上のアミノカルボン酸の重縮合体及び炭素数4?20のジカルボン酸と炭素数6?12またはそれ以上のジアミンの重縮合体等のポリアミド樹脂(c)を含有することができる。
【0028】具体的には、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46等を挙げることができる。また、ナイロン6/66、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン6/66/12等の共重合ポリアミド類も使用することができる。更には、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸とメタキシレンジアミン又は、脂肪族ジアミンから得られる芳香族含有ポリアミド類などを挙げることができる。これらの中でも特に好ましいものはナイロン66、ナイロン6、ナイロン12である。ヒートシール性樹脂層(II)成分中のポリアミド樹脂(c)の含有量は、通常0?10重量%、好ましくは0?8重量%である。上記成分(c)の含有量が上記範囲を超過するとラベルの容器への融着力が低い。
【0029】(d)金属塩
本発明における金属塩を構成する金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Alなどが挙げられ、特にNa、Ca、Mg、Zn、Zr、Alが好ましい。一方、上記の金属と塩を形成する基としては、硝酸、硫酸、酢酸、塩素酸、過塩素酸、炭酸、シュウ酸、ケイ酸、リン酸、ホウ酸、シアン酸、ハロゲン、塩素酸、チオシアン酸、水酸、酸素などが挙げられ、これらのうちで、過塩素酸、水酸、リン酸、酢酸、酸素、炭酸、ケイ酸が好ましい。
【0030】・・・なかでも塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸ナトリウムが好ましい。ヒートシール性樹脂層(II)成分中の上記金属塩(d)の含有量は、通常0.01?5重量%、好ましくは0.1?3重量%である。上記成分(d)の含有量が上記範囲未満であるとヒートシール性樹脂層(II)の帯電防止性が不十分であり、上記範囲を超過するとラベルの容器への融着力が低い。
【0031】(e)アイオノマー
本発明で用いられるエチレン系アイオノマー樹脂とは、エチレンとα、β-不飽和カルボン酸誘導体との共重合体に原子価が1?3の金属イオンを付加せしめたイオン性重合体である。ここでα、β-不飽和カルボン酸誘導体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、メタアクリル酸メチル、マレイン酸水素メチルなどが、また原子価1?3の金属イオンの代表例としてはNa^(+) 、K^(+) 、Mg^(++)、Zn^(++)、Al^(+++) などが挙げられる。これらエチレン系アイオノマー樹脂としては一般に“サーリン”、“ハイミラン”、なる商品名で市販されている各種グレードを用いることができる。
【0032】・・・ヒートシール性樹脂層(II)成分中の上記アイオノマー(e)の含有量は、通常0.5?10重量%、好ましくは1?5重量%である。上記成分(e)の含有量が上記範囲未満であるとヒートシール性樹脂層(II)の帯電防止性が不十分であり、上記範囲を超過するとラベルの容器への融着力が低い。ヒートシール性樹脂層(II)は、金属塩(d)とアイオノマー(e)とを同時に含有していても良い。
【0033】任意成分
本発明のヒートシール性樹脂には、目的とするヒートシール性や帯電防止性を阻害しない範囲で公知の他の樹脂用添加剤を任意に添加することができる。該添加剤としては、染料、核剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。ヒートシール性樹脂層(II)の肉厚は0.5?20μm、好ましくは1?10μmの範囲である。この肉厚は中空成形時にヒートシール性樹脂層(II)がパリソンなどの溶融ポリエチレンやポリプロピレンの熱により溶解し、成形品の容器とラベルが強固に融着するために1μm以上必要であり、また、10μmを越えるとラベルがカールし、オフセット印刷が困難となったり、ラベルを金型へ固定することが困難となるので好ましくない。」
(2g)「【0034】前述したようにラベルのヒートシール性樹脂層には、中空成形時のブリスターの発生を防止するために・・・エンボス加工を施こすことができる。そのエンボス模様は、例えば2.54cm当り5?200線のエンボス加工であって、逆グラビア型のパターンが好ましい。これらのインモールド成形用ラベルは必要があればコロナ放電加工等や公知のコーティング等によって熱可塑性樹脂基材層(I)の表面の印刷性を改善しておくことができる。印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷等を施して、バーコード、製造元、販売会社名、キャラクター、商品名、使用方法などを明記することができる。印刷されたラベル(1)は打抜加工により必要な形状寸法のラベルに分離される。このインモールド成形用ラベルは、通常はカップ状容器の側面を取巻くブランクとして、中空成形では瓶状容器の表側及び/又は裏側に貼着されるラベルとして製造される。」
(2h)「【0035】(インモールド成形)このインモールド成形用ラベルは、該ラベルを差圧成形金型の下雌金型の内面にラベルの印刷面が接するように設置した後、吸引により金型内壁に固定され、次いで容器成形材料樹脂シートの溶融物が下雌金型の上方に導かれ、常法により差圧成形され、ラベルが容器外壁に一体に融着されたラベル貼合容器が成形される。」
(2i)「【0036】・・・
〔I〕物性の測定方法と評価方法
実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。
(1)物性の測定:
(a)MFR:JIS-K-7210に準拠
(b)密度:JIS-K-7112に準拠
(c)不透明度:JIS-Z-8722に準拠
(d)表面固有抵抗:
ラベルのヒートシール性樹脂層(II)側の表面固有抵抗を、20℃、相対湿度50%の雰囲気下で測定した。
【0037】(2)インモールド成形:UVオフセット印刷されたラベルを3日後に断裁および打ち抜き加工し、インモールド成形により評価を行った。また比較として常温保管のものおよび夏期における倉庫等での高温保管を想定し、40℃のオーブンにて1ヶ月間加熱処理したものも用いた。
(e)ラベルの容器への融着強度:中空成形により容器に貼着したラベルを15mm幅に切り取り、ラベルと容器との間の接着強度を島津製作所製の引張試験機「オートグラフ AGS-D形」を用い、300mm/分の引張速度で、T字剥離することにより求めた。ラベル使用上の判断基準は次の通りである。
400(g/15mm)以上 :実用上全く問題がない
200?400(g/15mm):やや接着性が弱いが、実用上問題がない
200(g/15mm)以下 :実用上問題である
【0038】(3)オフセット印刷における給紙性:
(f)三菱重工(株)製ダイヤ-II型印刷機を使用し、UVインキを用いて25℃、相対湿度40%の環境下、菊半版(636mm×470mm)の紙サイズで、7000枚/時の速度で1000枚連続印刷した。その際にシート排紙装置でのトラブル(2枚差しや、紙ずれ)により機械が停止した回数を、以下の基準により判断した。
○:1回も機械が停止しない
△:1?3回機械が停止する
×:4回以上機械が停止する」
(2j)「【0039】〔II〕実験例
〔ポリエーテルエステルアミドの製造〕12-アミノドデカン酸55部、数平均分子量が1,000のポリエチレングリコール40部およびアジピン酸15部を、「イルガノックス098」(酸化防止剤)0.2部および三酸化アンチモン触媒0.1部と共にヘリカルリボン撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、窒素置換して260℃で60分間加熱撹拌して透明な均質溶液とした後、260℃、0.5mmHg以下の条件で4時間重合し、粘ちょうで透明なポリマーを得た。ポリマーを冷却ベルト上にガット状に吐出し、ペレタイズすることによって、ペレット状のポリエーテルエステルアミド(b1)を調製した。
【0040】ε-カプロラクタム50部、数平均分子量が1,000のポリエチレングリコール40部およびドデカンジ酸10部を、「イルガノックス1098」0.2部および三酸化アンチモン0.02部と共にb1に用いた反応容器に仕込み、窒素置換して260℃で60分間加熱撹拌して透明な均質溶液とした後、500mmHgに減圧して反応容器気相部の水分を除去し、テトラブチルジルコネート0.08部添加した。次いで260℃、0.5mmHg以下の条件で3時間重合し、粘ちようで透明なポリマーを得た。以降b1と同様な方法でポリエーテルエステルアミド(b2)を調製した。
【0041】〔ラベルの製造例〕
(実施例1)
(1)日本ポリケム(株)製プロピレン単独重合体である“ノバテックPP、MA-8”(商品名、融点164℃)67重量%、日本ポリケム(株)製高密度ポリエチレン“ノバテックHD、HJ580”(商品名、融点134℃、密度0.960g/cm^(3))10重量%および粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム粉末23重量%よりなる樹脂組成物(A)を押出機を用いて溶融混練したのち、ダイより250℃の温度でシート状に押出し、約50℃の温度となるまでこのシートを冷却した。次いで、このシートを約153℃に加熱したのち、ロール群の周速度を利用して縦方向に4倍延伸して、一軸延伸フィルムを得た。
【0042】(2)別に、日本ポリケム(株)製プロピレン単独重合体“ノバテックPP、MA-3”(商品名;融点165℃)51.5重量%、密度0.950g/cm^(3) の高密度ポリエチレン“HJ580”3.5重量%、粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム粉末42重量%、粒径0.8μmの酸化チタン粉末3重量%よりなる組成物(B)を別の押出機を用いて240℃で溶融混練し、これを前記縦延伸フィルムの表面にダイよりフィルム状に押し出し、積層(B/A)して、表面層/コア層の積層体を得た。
【0043】(3)メタロセン触媒を用いてエチレンと1-ヘキセンを共重合させて得たMFRが18g/10分、密度が0.898g/cm^(3)、融点90℃であるエチレン・1-ヘキセン共重合体(1-ヘキセン含量22重量%、結晶化度30、数平均分子量23、000)60重量%と、MFRが4g/10分、密度が0.92g/cm^(3)、融点110℃の高圧法低密度ポリエチレン30重量%の混合物90重量%と、前記製造例にて得られたポリエーテルエステルアミド(b1)9.5重量%および過塩素酸ナトリウム0.5重量%を、タンブラーミキサーで3分間混合した後、230℃の温度に設定されたベント付二軸押出機で混練し、これをダイよりストランド状に押し出しカッティングしてヒートシール性樹脂層用ペレット(II)を得た。
【0044】(4)プロピレン単独重合体“MA-3”51.5重量%、高密度ポリエチレン“HJ580”3.5重量%、粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム粉末42重量%および粒径0.8μmの酸化チタン粉末3重量%よりなる組成物(C)と、ヒートシール性樹脂層用ペレット(II)を、それぞれ別の押出機を用い230℃で溶融混練し、一台の共押出ダイに供給して該ダイ内で230℃にて積層した後フィルム状に押出し、前記表面層/コア層用の積層体(B/A)のA層側に、ヒートシール性樹脂層(II)が外側になるように押出し、これを金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロール(1インチあたり150線、逆グラビア型)に通し、ヒートシール性樹脂層側に0.17mm間隔のパターンをエンボス加工した。
【0045】この4層フィルム(B/A/C/II)をテンターオーブンに導き、155℃まで再加熱した後、横方向に7倍延伸し、引き続き164℃で熱セットした後、55℃まで冷却し耳部をスリットした。更に表面層(B層)側に、70W/m^(2)/分のコロナ放電処理をした。このものの密度は0.79g/cm^(3)、肉厚が100μm(各層厚みB/A/C/II=30/40/25/5μm)の4層構造の多層フィルムを得た。このフィルムのヒートシール層(II)側の表面平均粗さ(Ra)を、表面粗さ計((株)小坂研究所製、サーフコーダーSE-30)にて測定したところ、2.5μmであった。この4層構造の多層フィルムの表面層(B)側に、25℃、相対湿度40%の環境にてUVオフセット印刷を施したところ、静電気の発生が少ない為、印刷の給排紙がスムーズで、途中で停止するようなこともなかった。またこのときの紙面温度は60℃に達していた。
【0046】これを3日後に断裁及び打ち抜き加工して、インモールド成形用ラベル(横70mm、縦90mm)としたものと、比較として印刷を施していない常温保管のラベル、および40℃のオーブンにて1ヶ月間保管したラベルを、自動ラベル供給装置を用いてブロー成形用割型の一方に真空を利用して印刷面側が金型と接するように固定した後、高密度ポリエチレン(融点134℃)のパリソンを200℃で溶融押出し、次いで割型を型締めした後、4.2kg/cm^(2) の圧空をパリソン内に供給し、パリソンを膨張させて型に密着させて容器状とすると共にインモールド用ラベルと融着させ、次いで該型を冷却した後、型開きをしてラベルが貼着した中空容器を取り出した。この際の、ブリスターの発生の有無、ラベルの密着強度を表1に示す。
【0047】(実施例2?5、比較例1?5)実施例1において、ヒートシール性樹脂層(II)の配合組成を表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様にしてインモールド成形用ラベルを得た。このものの評価結果を表1に示す。
【0048】(実施例6)実施例1におけるコア層用樹脂組成物(A)、表面層用樹脂組成物(B)、および表1に記載された配合によるヒートシール性樹脂層用ペレット(II)を、それぞれ250℃、240℃、230℃に設定された別の押出機にて溶融混練した後、ダイ内で、B/A/IIとなるように積層して押出成形し、70℃まで冷却して3層構造のシートを得た。このシートを120℃まで加熱した後、金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロール(1インチあたり200線、逆グラビア型)に通し、ヒートシール性樹脂層側に0.13mm間隔のパターンをエンボス加工した。その後同じ温度にて縦方向に6倍にロール間延伸した。次いで50℃まで冷却した後、耳部をスリットし、更に表面層(B層)側に、50W/m^(2)/分のコロナ放電処理をした。このものの密度は0.91g/cm^(3)、肉厚が90μm(各層厚みB/A/II=5/80/5μm)の3層構造の多層フィルムを得た。このフィルムのヒートシール層(II)側の表面平均粗さ(Ra)は2.4μmであった。このものの評価結果を表1に示す。
【0049】(実施例7)
(1)日本ポリケム(株)製プロピレン単独重合体である“ノバテックPP、MA-8”(商品名、融点164℃)88重量%、日本ポリケム(株)製高密度ポリエチレン“ノバテックHD、HJ580”(商品名、融点134℃、密度0.960g/cm^(3))10重量%および粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム粉末2重量%よりなる樹脂組成物(A)を押出機を用いて溶融混練したのち、ダイより250℃の温度でシート状に押出し、約50℃の温度となるまでこのシートを冷却した。次いで、このシートを約153℃に加熱したのち、ロール群の周速度を利用して縦方向に4倍延伸して、一軸延伸フィルムを得た。
【0050】(2)別に、日本ポリケム(株)製プロピレン単独重合体“ノバテックPP、MA-3”(商品名;融点165℃)85重量%、密度0.950g/cm^(3) の高密度ポリエチレン“HJ580”5重量%、粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム粉末10重量%よりなる組成物(B)を別の押出機を用いて240℃で溶融混練し、これを前記縦延伸フィルムの表面にダイよりフィルム状に押し出し、積層(B/A)して、表面層/コア層の積層体を得た。
【0051】(3)プロピレン単独重合体“MA-3”88重量%、高密度ポリエチレン“HJ580”10重量%、粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム粉末2重量%よりなる組成物(C)、および表1に記載された配合によるヒートシール性樹脂層(II)用ペレットを、それぞれ別の押出機を用い230℃で溶融混練し、一台の共押出ダイに供給して該ダイ内で230℃にて積層した後フィルム状に押出し、前記表面層/コア層用の積層体(B/A)のA層側に、ヒートシール性樹脂層(II)が外側になるように押出し、実施例1と同様の方法でエンボス加工した。
【0052】この4層フィルム(B/A/C/II)をテンターオーブンに導き、160℃まで再加熱した後、横方向に7倍延伸し、引き続き164℃で熱セットした後、55℃まで冷却し耳部をスリットした。更に表面層(B層)側に、70W/m^(2)/分のコロナ放電処理をした。このものの密度は0.90g/cm^(3)、肉厚が80μm(各層厚みB/A/C/II=20/40/15/5μm)の4層構造の多層フィルムを得た。このフィルムのヒートシール層(II)側の表面平均粗さ(Ra)は2.3μm、またJIS-Z-8722による不透明度は15%であった。このものの評価結果を表1に示す。
【0053】(実施例8)実施例7におけるコア層用樹脂組成物(A)、表面層用樹脂組成物(B)、ヒートシール性樹脂層用ペレット(II)を、それぞれ250℃、240℃、230℃に設定された別の押出機にて溶融混練した後、ダイ内で、B/A/IIとなるように積層して押出成形し、70℃まで冷却して3層構造のシートを得た。それ以外は実施例6と同様の方法にて密度は0.90g/cm^(3)、肉厚が80μm(各層厚みB/A/II=5/70/5μm)の3層構造の一軸延伸フィルムを得た。このフィルムのヒートシール層(II)側の表面平均粗さ(Ra)は2.1μm、またJIS-Z-8722による不透明度は8%であった。このものの評価結果を表1に示す。
【0054】


(2k)「【0055】【発明の効果】本発明により、ラベル製造時の印刷加工時の加熱、特にUVオフセット印刷や、保管期間、特に夏期の高温時に長期保管されてもヒートシール性の低下がなく容器へ強固に融着し、さらには帯電防止性が良好で、年間を通して印刷、断裁、打ち抜き加工、金型へのインサート性に優れるインモールド成形用ラベルが提供できた。」
(2L)「





」(11頁、図1?図3)

ウ 甲3
(3a)「1.基材層用ポリオレフィン樹脂シートの一軸延伸物の少なくとも片面に紙状層用ポリオレフィン樹脂シートを溶融積層し、得られる積層シートを上記延伸方向と直角の方向に延伸することからなり、上記基材層用ポリオレフィン樹脂シートが下記の組成物(B)よりなる中間層の一方の面に下記の組成(A)よりなる層を、他方の面に下記の組成物(C)よりなる層を設けるように一台の共押出ダイより溶融押出しして得た複合構造シートであり、上記紙状層用ポリオレフィン樹脂シートが下記の組成物(D)からなるものであることを特徴とする、複合ポリオレフィン樹脂延伸フィルムの製造法。
組成物(A)
無機微細粉末を0?18重量%の割合で含有する熱可塑性樹脂組成物。
組成物(B)
無機微細粉末を20?68重量%の割合で含有するポリオレフィン樹脂組成物。
ただし、このポリオレフィン樹脂のメルトインデックスは0.5?3g/10分である。
組成物(C)
無機微細粉末を0?18重量%の割合で含有する熱可塑性樹脂組成物。
組成物(D)
無機微細粉末を5?50重量%の割合で含有するポリオレフィン樹脂組成物。
ただし、このポリオレフフィン樹脂のメルトインデックスは3?12でありかつ組成物(B)のポリオレフィン樹脂のそれより大きい。
2.組成物(A)および組成物(C)の熱可塑性樹脂が、それぞれポリオレフィン樹脂である、特許請求の範囲第1項記載の方法。
3.組成物(A)および組成物(C)の熱可塑性樹脂の少なくとも一方が、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物および塩化ビニリデン共重合体よりなる群から選ばれた樹脂である、特許請求の範囲第1項記載の方法。
4.組成物(D)が、無水マレイン酸が0.01?5重量%の割合でポリプロピレンに共重合した変性ポリプロピレンを組成物(D)中0.1?15重量%の割合で含有するポリプロピレン樹脂組成物である、特許請求の範囲第1?3項のいずれかに記載の方法。
5.組成物(B)が、下記の組成からなるものである、特許請求の範囲第1?4項のいずれかに記載の方法。
成 分 重 量 %
(a)炭酸カルシウム 20?68
(b)ポリプロピレン 27?79.95
(c)無水マレイン酸が0.01?5
重量%の割合でポリプロ
ピレンにグラフト共重合
した変性ポリプロピレン 0.05?5」(1?2頁、特許請求の範囲の請求項1?5)
(3b)「〔I〕発明の背景
技術分野
本発明は、複合ポリオレフィン樹脂延伸フィルムの製造法に関する。さらに具体的には、本発明は、寸法安定性および外観の良好な複合ポリオレフィン樹脂延伸フィルムを成形性良く製造する方法に関する。
無機微細粉末(以下、充填剤ということがある)を配合した熱可塑性樹脂のフィルムを適当な温度で一軸または二軸に延伸することにより、不透明なフィルムが得られる。このフィルムはその不透明性、白さ、風合および感触の点でパルブ紙に類似しており、このフィルムのみからなる単層構造物としてあるいはこのフィルムを表面層に有する多層構造物として従来のパルプ紙の各種の用途に使用可能であることが知られている。
充填剤配合熱可塑性樹脂の延伸フィルムが不透明および白色であるのは、フィルム延伸時に樹脂と充填剤粒子との界面に剥離が起り、さらに延伸が進むにつれて樹脂/充填剤粒子間に微細な隙間が生じて、延伸終了時には充填剤粒子をその内部に含んだ微細なボイドがフィルム内部に形成されること、ならびにフィルム表面付近では閉鎖されたボイドの形状が保たれないので微小な亀裂が表面に形成されることから、光がフィルム表面および内部で散乱されるためである。そして、この表面亀裂および内部ボイドによつて、フィルムはパルプ紙に類似した性質を持つようになるのである。
しかし、このような不透明フィルムに印刷、折り、製本、製袋等の二次加工を行なう場合には、表面付近のボイドがその閉鎖構造を破壊されて表面亀裂となり、その結果表面に遊離ないし半遊離状態で存在するに到った充填剤粒子が二次加工機のロール、プランケット等に付着し、加工に障害が生じることが多くて二次加工の能率が著るしく低下する(以下、紙粉トラブルということがある)。
従って、このような構造の不透明フィルムでは、印刷ないし筆記が可能であってしかも紙様の不透明度があれば、その表面層は充填剤の含有率が低い方が好ましいということになる。
このような希望を満たすものとして、充填剤含有率の比較的低い層(紙状層)をこれより充填剤含有率の高い層(基材層)の表面に設けてなる積層構造のものが挙げられる・・・。しかし、この公知の積層構造延伸フィルムは紙状層および基材層がともに二軸延伸フィルムであり、紙状層が二軸延伸フィルムであることに相当して表面が真珠様光沢を有するとともに基材層層との間で層間剥離を生じやすいという問題が認められる。また、この紙状層は、グラビア印刷は実用上利用できるとしても、そのオフセット印刷性能は実用にはほど遠いといわざるを得ない。
このような問題点は、紙状層が一軸延伸フィルムで基材層が二軸延伸フィルムである積層構造体によつて解決することができよう。しかし、基材層として充分な機械的強度および延伸展性を持たすべくメルトインデックス(MI)0.5?3のポリオレフィン樹脂を使用し、しかも充分な不透明度を得べく充填剤含量を20?68%としてこのような積層構造体を製造したところ、いくつかの問題点が見出された。すなわち、積層構造は、基材層用のポリオレフィン樹脂の縦方向延伸シートを予めつくり、その少なくとも片面に紙状層用のポリオレフィン樹脂を溶融積層し、得られる積層シートを横方向に延伸することによって製造されるが、基材層が低MIかつ高充填剤含量のポリオレフィン樹脂であることに起因して下記の欠点が認められた。
(1) 基材層用シートを押出すダイのスリット部に焼けて劣化した樹脂が付着して蓄積され、これが押出されるシートの表面に筋状の傷をつける。その結果、延伸が均一に行なわれず、生成複合延伸フィルムを光で透過してみると筋状の不透明度ムラが視認される。
(2) 溶融押出された基材層用シートを冷却すると充填剤粒子を核として収縮が起り、シート表面に多数のくぼみが生じる。その結果、生成複合延伸フィルムには米粒大の未延伸部分(所謂「エクボ」)が多数視認される。
(3) 低MIかつ高充填剤含量のポリオレフィン樹脂シートは延伸が困難であり、上記のくぼみの発生とあいまって、延伸が不均一となり易い。」(2頁右上欄4行?3頁右上欄7行)
(3c)「要旨
本発明は上記の点に解決を与えることを目的とし、基材層用シートとして共押出によって得られた特定の複合構造シートを使用することによってこの目的を達成しようとするものである。
従って、本発明による複合ポリオレフィン樹脂延伸フィルムの製造法は、基材層用ポリオレフィン樹脂シートの一軸延伸物の少なくとも片面に紙状層用ポリオレフィン樹脂シートを溶融積層し、得られる積層シートを上記延伸方向と直角の方向に延伸することからなり、上記基材層ポリオレフィン樹脂シートが下記の組成物(B)よりなる中間層の一方の面に下記の組成(A)よりなる層を、他方の面に下記の組成物(C)よりなる層を設けるように一台の共押出ダイより溶融押出しして得た複合構造シートであり、上記紙状層用ポリオレフィン樹脂シートが下記の組成物(D)からなるものであること、を特徴とするものである。
組成物(A)
無機微細粉末を0?18重量%の割合で含有する熱可塑性樹脂組成物。
組成物(B)
無機微細粉末を20?68重量%の割合で含有するポリオレフィン樹脂組成物。
ただし、このポリオレフィン樹脂のメルトインデックスは0.5?3g/10分である。
組成物(C)
無機微細粉末を0?18重量%の割合で含有する熱可塑性樹脂組成物。
組成物(D)
無機微細粉末を5?50重量%の割合で含有するポリオレフィン樹脂組成物。
ただし、このポリオレフィン樹脂のメルトインデックスは3?12でありかつ組成物(B)のポリオレフィン樹脂のそれより大きい。」(3頁右上欄9行?右下欄4行)
(3d)「効果
本発明では基材層用の低MIかつ高充填剤含量のポリオレフィン樹脂シートを低ないし無充填剤含量の樹脂層で被覆しかつこの複合シートを一台の共押出ダイから溶融押出によってつくることによって、前記の諸問題の解決に成功している。
共押出ダイは単独押出ダイよりは構造複雑であるけれども既に工業的に広く使用されているものであって、共押出技術は単独押出技術と本質的には変らない。従って、本発明によれば前記した諸問題点の解決という効果を完全に享受することができる。」(3頁右下欄5?16行)
(3e)「1.基材層
本発明で使用する基材層用ポリオレフィン樹脂シートは、組成物(A)、(B)および(C)の層からなる複合シートであって共押出によって製造したものであり、しかも一軸延伸されたものである。
1) 組成物(A)および(C)
組成物(A)および(C)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、エチレン-アクリル酸共重合体およびその塩、塩化ビニリデン共重合体たとえば塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、その他、およびこれらの混合物、を例示することができる。
これらのうちでも、安価でありかつ組成物(B)よりなる層および組成物(D)よりなる層との接着性の面から、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂を組成物(A)および(C)の少なくとも一方、望ましくは両方、に使用することが好ましい。なお、ポリオレフィン樹脂を組成物(A)および(C)の両方に使用するときでも、使用オレフィンの種類、MIその他を異ならせることができる。
本発明に従って組成物(B)から形成される基材層は、内部に微細な空孔を多数有していて水蒸気、酸素等のガスの透過度が大きい。従って、本発明による複合延伸フィルムにガスバリヤー性が要求されるときには、組成物(A)および(C)の少なくとも一方の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物および塩化ビニリデン共重合体(たとえば塩化ビニルとの共重合体)から選んだものを使用することが好ましい。
組成物(A)および(C)からなる層は低MIかつ高充填剤含量の組成物(B)からなる中間層の両面を被って一台のダイより共押出する際の焼け樹脂の発生を防ぐために用いるものであるから、組成物(A)および(C)用の樹脂は、先ず組成物(B)用ポリオレフィン樹脂のMIと同等かそれよりもMIが大きいものであるべきである。好ましいMIは、1?3程度である。そして、組成物(A)および(B)は、充填剤を含まないかあるいは充填剤含量18重量%まで、好ましくは15重量%まで、のものであるべきである。もっとも、組成物(A)および(C)からなる層の表面には組成物(D)からなる層が被着されるのであるから、その場合の接着性を考慮すれば組成物(A)および(C)充填剤含量は3重量%以上であることが好ましい。
充填剤の種類に関しては、組成物(B)について後記されているところを参照されたい。
組成物(A)および(C)は熱可塑性樹脂組成物であり、従ってこの種の組成物が含みうる各種の補助資材を含むことができる。詳細は、後記されたところを参照されたい。
2) 組成物(B)
組成物(B)を構成するポリオレフィン樹脂としては、MI値に関する条件を除けば、組成物(A)および(C)について前記したポリオレフィン樹脂と同種または異種のものを使用することができる。組成物(B)からなる層は基材層として製品複合延伸フィルムの機械的性質を主として支配するものであるから、組成物(B)用ポリオレフィン樹脂としては高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよび両者の混合物がフィルム剛性の点から好ましい。
組成物(B)用のポリオレフィン樹脂は、MIが0.5?3、好ましくは1?3、のものであるべきである。MIが0.5未満のものは耐クリープ性に富むとしてもフィルムの押出量が少なくなる故に生産性が向上しないからであり、一方、基材層用ポリプロピレンのMIが3より大きいと基材層が厚肉のときは均一延伸が困難となって延伸むらが生じやすいからである。なお組成物(B)用のポリオレフィン樹脂のMIは、組成物(D)用のポリオレフィン樹脂のそれ(詳細後記)より1以上低いことが横延伸成形性(詳細後記)の面から望ましい。
組成物(B)は、充填剤を20?68重量%、好ましくは25?65重量%、の割合で含有する。20%未満では、生成複合延伸フィルムに紙的風合をもたらすために表面組成物(D)に多量の充填剤を配合することが必要となるので、生成複合延伸フィルムの紙粉トラブル防止、表面強度の低下防止および表面層用フィルム押出ダイに焼け樹脂の付着防止等の効果が期待できない。一方、68重量%を越える多量の充填剤を配合した場合は、押出成形が困難である。
なお、組成物(A)および(または)(C)が熱可塑性樹脂として前記のガス透過性の小さい樹脂を用いたときは、組成物(A)ないし(C)からなる層と組成物(B)からなる層との接着性を向上させるために、組成物(B)は無水マレイン酸変性ポリオレフィン(詳細後記)を樹脂成分中0.05?5重量%の割合で含有することが好ましい。
充填剤として使用される無機微細粉末は、樹脂用充填剤として使用しうる任意のものでありうる。具体的には、たとえば、炭酸カルシウム、焼成クレイ、ケイ藻土、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ等、が例示される。粒径は、0.05?10ミクロン、特に0.1?5ミクロン、が好ましい。組成物(B)用の充填剤としては、安価な炭酸カルシウムが好ましい。
3) 製造
組成物(A)、(B)および(C)を一台の共押出ダイから溶融押出して複層構造シートを製造するには、三種の樹脂の共押出に使用しうる任意の手段によってこれを行なうことができる。具体的には、たとえば、組成物(A)、(B)および(C)をそれぞれ別の押出機(3台)により混練し(組成物(A)と(C)とが同一のときは押出機は2台でよいことはいうまでもない)、導管により溶融物を一台の共押出ダイに導びき、その際組成物(B)が中間層となるようにし、この中間層と組成物(A)および(C)からなる層とを共押出ダイ内で貼合して共押出ダイスリットよりシート状に押出し、これを60℃以下の温度に冷却する。これを延伸適当温度、すなわち組成物(B)を構成するポリオレフィン樹脂の融点より低い温度であってしかも延伸可能な温度、に加熱し、捲取ロール群の周速度差を利用して、縦方向に2.5?10倍、好ましくは4?8倍、に延伸する。
基材層の厚さ構成は、組成物(A)?(C)からなる層(A):(B):(C)の比が(0.005?0.5):1:(0.005?0.5)となる程度が好ましい。
4) 改変その他
組成物(A)、(B)および(C)はいずれも熱可塑性樹脂組成物である。従って、これらは、この種の組成物が含有しうる各種の補助資材、たとえば酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他をそれぞれ0.01?2重量%程度の割合で含有することができる。特に、界面活性剤、紫外線吸収剤等の滲出性の添加剤は、表面層用の組成物(D)(詳細後記)ばかりでなく、基材層用の組成物(B)にも配合することにより、その効果をより長期に保つことができる。」(3頁右下欄18行?5頁左下欄15行)
(3f)「2.表面層
表面層は組成物(D)により形成される。
組成物(D)を構成するポリオレフィフィン樹脂としては、MI値に関する条件を除けば、組成物(A)および(C)について前記したポリオレフィン樹脂と同種または異種のものを使用することができる。組成物(D)からなる層は製品複合延伸フィルムの表面を構成するものであるので、使用するポリオレフィン樹脂は高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよび両者の混合物が剛性の面から好ましい。
組成物(D)用のポリオレフィン樹脂は、MIが3?12、好ましくは4?8、のものであるべきである。このMI値が組成物(B)用ポリオレフィン樹脂のそれと1以上の差があることが望ましいことは前記したところである。
組成物(D)は、製品複合延伸フィルムの表面層を構成するのであるから、筆記性ないし印刷性を実現すべく充填剤を含有している。充填剤含量は前記のような紙粉トラブルが生じないように比較的低レベルであつて、具体的には5?50重量%、好ましくは5?20重量%未満、である。なお、組成物(B)の充填剤含量に対する組成物(D)のそれの割合は、1/2?1/8程度であることが好ましい。この程度の割合では、組成物(D)に無水マレイン酸変性ポリオレフィンを配合しなくても複合延伸フィルムの紙状層に起りがちな紙粉トラブルが抑制されるからである。
充填剤として使用される無機微細粉末としては、組成物(B)用として前記したものと同種または異種のものを使用することができる。
製品複合延伸フィルムの表面層を構成すべき組成物(D)は、紙粉トラブル防止の目的をよりよく達成するために、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン(以下、変性ポリオレフィンという)を含むことが好ましい。変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィン(好ましくは高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの混合物)に無水マレイン酸が0.01?5重量%(対ポリオレフィン)の割合でグラフト共重合したものが好ましく、また組成物(D)はこのような変性ポリオレフィンを組成物中0.1?15重量%の割合で含有することが好ましい。組成物(D)がこのような変性ポリオレフィンを含有することは、組成物(A)および(または)(C)が前記のようなガス透過性の小さい樹脂からなるときにこれらの層との間の接着性を向上させる点からも好ましいことである。
表面層の製造は、複合延伸フィルムの製造と実質的に同じであるということができる。下記を参照されたい。」(5頁左下欄16行?6頁右上欄5行)
(3g)「3.複合延伸フィルムの製造
前記のようにして得られた一軸延伸された基材層用複層シートの少なくとも片面、好ましくは両面、に組成物(D)よりなるシートを溶融押出により積層し、80℃以下の温度に冷却する。これを延伸適当温度、すなわち組成物(B)を構成するポリオレフィン樹脂の融点より低い温度であつてしかも延伸可能な温度、に再加熱し、これを横方向延伸機、たとえばテンター、によつて横方向に2.5?12倍、好ましくは4?10倍延伸し、次いで熱セットおよび冷却を行ない、耳部を切り取れば、複合延伸フィルムが得られる。
好ましい延伸温度は、所与の樹脂成分について適当に決定することができる。具体的には、たとえば、組成物(B)および(D)のポリオレフィン樹脂がホモポリプロピレン(融点164?167℃)のときは150?162℃、高密度ポリエチレン(融点121?124℃)のときは110?120℃である。
また、熱セットの温度は具体的には、たとえば、組成物(B)および(D)のポリオレフィン樹脂がホモポリプロピレンのときは148?160℃、好ましくは152?156℃、高密度ポリエチレンのときは108?116℃、好ましくは114?116℃である。熱セットは、5?30秒間行なわれるのがふつうである。」(6頁右上欄6行?左下欄10行)
(3h)「4.製品複合延伸フィルム
本発明によつて製造される複合延伸フィルムは、基材層中の組成物(B)からの層が高充填剤含量のものであることに起因してその内部に多数の微細な空孔を有していることによって、紙的風合を付与されている。そして、比較的少量の充填剤を含有する表面層は、充填剤粒子を中心とした表面亀裂を有していることによって紙的風合を有すると共に、オフセット印刷インクの吸収性が良好である。なお、表面層もその内部に微細空孔を有することはいうまでもない。」(6頁左下欄17行?右下欄7行)
(3i)「実施例1
組成物(A)および(C)
(1) 三菱油化(株)製ポリプロピレン「三菱ノープレンMA-6」(商品名)(MI=1.2g/10分(230℃測定))
85重量%
(2) 三菱油化(株)製高密度ポリエチレン「ユカロンハードEY-40」(商品名)
5重量%
(3) 金平鉱業製炭酸カルシウム微細粉末「KS-1500」(平均粒径1.2ミクロン)
10重量%
組成物(B)
(1) ポリプロピレン「三菱ノープレンMA-6」 50重量%
(2) 高密度ポリエチレン「ユカロンハードEY-40」 10重量%
(3) 炭酸カルシウム「KS-1500」 40重量%
組成物(D)
(1) 三菱油化製ポリプロピレン「三菱ノープレンMA-3」(商品名)(MI=6g/10分(230℃測定))
80重量%
(2) 高密度ポリエチレン「ユカロンハードEY-40」 5重量%
(3) 炭酸カルシウム 15重量%
上記組成物(A)、(B)および(C)をそれぞれ別々の押出機を用いて溶融混練し、これを1台の共押出ダイに供給して、ダイ内で組成物(B)が中間層に、組成物(A)と(C)がその両面に位置するように溶融積層したのち、約250℃の温度で三層シートを押し出し、約50℃まで冷却した。
次いで、このシートを約140℃に加熱したのち、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸して三層構造の一軸延伸シート(基材層用)を得た。別に、組成物(D)を別々の2台の押出機により溶融混練し、ダイより250℃の温度でシート状に前記基材層の両表面にラミネートし、一旦室温より約30℃高い温度迄冷却してから、約150℃に再加熱し、テンターを用いて約9倍横方向に延伸し、更に、160℃のオーブン中を通過させて熱セット処理を行ない、耳部をスリットして、五層構造の白色不透明な合成紙を得た。
この合成紙の各層の肉厚(ミクロン)は次の通りであった。
(D)/(A)/(B)/(C)/(D)=25/5/50/5/25
実施例2?9、比較例1?3
組成物(A)乃至(D)として表1に示す配合割合のものを用いる他は実施例1と同様にして五層構造の合成紙を得た。
得られた各合成紙について、次の方法および基準で合成紙としての適性を評価した。結果を表1に示す。
(1) スジの有無
合成紙を螢光灯に透かしたとき、スジが見えるか否か判定した。
〇=スジが見えないもの
△=スジがやや判別できるが、実用上問題ないもの
×=スジがはつきり見えて、実用上問題有るもの
(2) 表面強度
ニチバン製粘着テープ「セロテープ」(商品名)(幅12mm、長さ7cm)を5cmの長さの合成紙に貼着し、指先で3回、テープの貼着部分を上から軽く摺擦したのち、テープを引き剥した際の結果を下記に従つて表示した。
〇=合成紙がテープと一緒に剥れないもの
△=部分的に合成紙がテープと一緒に剥れたもの
×=合成紙の表面または層間から合成紙が大きく剥離したもの
(3) くぼみの有無
合成紙に存在する米粒程度のくぼみの数を下記に従つて表示した。
〇=なし
△=10m^(2) 当り1?4個くぼみを有する
×=10m^(2) 当り5個以上有する
(4) 紙的風合
下記に従つて表示した。
〇=印刷紙として白度、不透明度が十分であり、表面がマツト仕上げされているもの
△=印刷紙として不透明度がやや欠け、表面が平滑しすぎるもの
(5) 筆記性
三菱鉛筆製鉛筆HBを用いて文字を筆記した際、合成紙への鉛筆芯ののりを次のように評価した。
〇=筆記ができた
△=鉛筆芯ののりがやや劣った
×=鉛筆芯ののりが実用上問題であった






実施例10
実施例1において、組成物(D)として次の組成物(D’)を用いる他は同様にして5層構造の合成紙を製造した。
組成物(D’)
(1) ポリプロピレン「三菱ノープレンMA-3」 62重量%
(2) 無水マレイン酸がポリプロピレンに0.65重量%の割合でグラフト共重合した変性ポリプロピレン
5重量%
(3) 高密度ポリエチレン「EY-40」 3重量%
(4) 炭酸カルシウム微細粉末「KS-1500」 35重量%
得られた合成紙はスジ、エクボがなく、紙的風合いに優れ、筆記性、オフセット印刷に優れていた。」(7頁右上欄1行?9頁右上欄末行)

(2)甲1に記載された発明
甲1は、プリントラミネート方法について記載した特許文献であり(摘示(1a)?(1c))、請求項1には、該方法において印刷体と加圧融着させるのに用いるプリントラミネート用フィルムが、基材フィルム層と熱融着ポリマ層からなるものであることが記載されている(摘示(1a))。そのプリントラミネート用フィルムの、熱融着ポリマ層について、材質はエチレンアクリル酸系共重合体やエチレン酢酸ビニル共重合体を使用し得ること、融点は50?110℃とすること、厚みは1?30μmとすることが説明され(摘示(1d))、基材フィルム層について、材質はポリオレフィンが好ましいこと、延伸フィルムが好ましいこと、積層体でもよいこと、厚みは5?100μmとすることが説明され(同)、両層に添加できる物質が説明され(同)、基材フィルム層に熱融着ポリマ層を積層する方法が、延伸する場合を含めて、以下のように記載されている(同):
「基材フィルム層に熱融着ポリマ層を積層する方法は、特に限定するものではないが、コーティングする方法、押出ラミネート法、積層後延伸する方法(共押出法、一軸延伸後積層し延伸する方法)などを例示することができ、なかでも積層後延伸する方法が好ましく、次にその一例を示す。
基材フィルム層を構成すべき樹脂としてポリオレフィンを1つの押出機へ、熱融着ポリマを別の押出機へ供給し、1つの口金へ導き同時に押出して冷却ロールに巻き付け積層シートとし、該シートを加熱し、縦方向に3?7倍に延伸し(一軸延伸後積層し延伸する方法では、この時点で熱融着層ポリマを押出ラミネートする)、再び加熱して横方向に5?15倍に延伸し、熱処理、必要に応じて熱弛緩して積層フィルムとする。熱融着ポリマ層、ポリオレフィンフィルム層のいずれの面にもコロナ放電処理するのが好ましい。」
そして、実施例1?3には、プリントラミネート用フィルムを製造したことが記載され、そのうちの実施例1及び2は、以下に示すように、一軸延伸後積層し延伸する方法である(摘示(1j)):
「実施例1 ポリプロピレン(メルトインデックス:2.0)を他の押出機へ供給し、260℃にてシート状に押出し、ドラムに巻き付け冷却したあと、120℃に加熱して長手方向に4.5倍に延伸し冷却し、エチレン酢酸ビニル共重合体(融点85℃)を別の押出機から押出ラミネートし、次いで170℃に加熱したテンターに導き11倍に横方向に延伸し、165℃にて熱処理し、さらに熱融着ポリマ層(エチレン酢酸ビニル共重合体)面にコロナ放電処理し、熱融着ポリマ層厚み6μm、ポリプロピレン層厚み20μmのプリントラミネート用フィルムを得た。」
「実施例2 ポリプロピレン(メルトインデックス:2.0)を260℃にてシート状に押出し120℃で長手方向に4.5倍に延伸して得られた一軸延伸ポリプロピレンフィルムに、熱融着ポリマとしてエチレンメタクリル酸メチル無水マレイン酸三元重合体(融点:100℃)を押出ラミネートし、170℃のテンターにて横手方向に11倍に延伸し、165℃にて熱処理し、さらに熱融着ポリマ層面にコロナ放電処理し、熱融着ポリマ層厚み6μm、ポリプロピレン層厚み20μmのプリントラミネート用フィルムを得た。」
してみると、甲1には、プリントラミネート用フィルムの製造方法についての、実施例1に係る、以下の
「基材フィルム層と熱融着ポリマ層からなるプリントラミネート用フィルムの製造方法であって、
ポリプロピレン(メルトインデックス:2.0)を他の押出機へ供給し、260℃にてシート状に押出し、ドラムに巻き付け冷却したあと、120℃に加熱して長手方向に4.5倍に延伸し冷却し、エチレン酢酸ビニル共重合体(融点85℃)を別の押出機から押出ラミネートし、次いで170℃に加熱したテンターに導き11倍に横方向に延伸し、165℃にて熱処理し、さらに熱融着ポリマ層(エチレン酢酸ビニル共重合体)面にコロナ放電処理し、熱融着ポリマ層厚み6μm、ポリプロピレン層厚み20μmのプリントラミネート用フィルムを得る、上記方法」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているということができる。

(3)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
甲1発明の「基材フィルム層と熱融着ポリマ層からなるプリントラミネート用フィルム」は、2つの層からなり延伸がされているものであるから、本件発明1の「多層ポリオレフィン延伸フィルム」に相当し、
甲1発明の「ポリプロピレン(メルトインデックス:2.0)を他の押出機へ供給し、260℃にてシート状に押出し」の工程は、ポリプロピレンはポリオレフィンの1種であり、この押出成形は全体で2回行われる押出成形の1回目のものであるから、本件発明1の「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ」に相当し、
甲1発明の「ドラムに巻き付け冷却し」の工程は、冷却の1回目のものであるから、本件発明1の「第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ」に相当し、
甲1発明の「120℃に加熱して長手方向に4.5倍に延伸し」の工程は、長手方向とは縦方向であるから、本件発明1の「第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ」に相当し、
甲1発明の「エチレン酢酸ビニル共重合体(融点85℃)を別の押出機から押出ラミネートし」の工程は、ここで押出ラミネートされる層が甲1発明の「熱融着ポリマ層」であり、本件発明1の多層ポリオレフィン延伸フィルムが用途に「ラミネーションコーティング(ラミネートシート)」を含む(本件特許明細書の段落【0003】)ことから、本件発明1の「ヒートシール樹脂層」に相当し、この押出成形は全体で2回行われる押出成形の2回目のものであるから、本件発明1の「縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップ」に相当し、
甲1発明の「170℃に加熱したテンターに導き11倍に横方向に延伸し」の工程は、本件発明1の「フィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;
前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;
前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;
前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップ;および、
前記フィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップ
を含む、多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
本件発明1においては、
ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップが、多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行するステップであって、その多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、
縦方向延伸ステップは、その多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって、
第2押出成形ステップでは、ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行され、
第2押出成形ステップと横方向延伸ステップの間に、ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップを備えている、
のに対し、甲1発明においては、
第1押出成形ステップに相当する工程はポリプロピレンを単層のシート状に押出す工程であり、縦方向延伸ステップ及び第2押出成形ステップに相当する工程は、それぞれ、その単層のシート状物に対し縦方向延伸及び第2の押出成形をする工程であり、
また、第2冷却ステップに相当する工程を備えていることが明示されたものではない点

イ 相違点についての検討
相違点について検討する。

(ア)甲1には、プリントラミネート用フィルムの基材フィルム層について、「2層以上の積層体であってもよく」との記載があるが(摘示(1d))、2層以上の積層体とすることは、材料も、製法も、何ら具体的に記載されていないから、甲1の記載から、甲1発明において相違点に係る構成を備えたものとすることを当業者が容易に想到できたとはいえない。

(イ)甲2は、フィルム基材層とヒートシール性樹脂層を備えたインモールド成形用ラベルについて記載した特許文献である(摘示(2a)?(2c))。インモールド成形用ラベルとは、ラベルの印刷面を金型壁面に接するようにセットし金型内に熱可塑性樹脂を射出成形などしてラベル貼合容器を製造するために用いるものであり、甲2の発明は、従来技術のラベルが静電気の発生に基づく問題を有していたのを解決するために、ラベルのヒートシール樹脂層の配合を特定の樹脂及び添加剤からなるものとする、というものである(摘示(2a)?(2L))。
甲2に記載されたインモールド成形用ラベルは、甲1発明のプリントラミネート用フィルムとは、用途及び接着対象が同一のものであるとはいえないが、フィルム基材層(甲1発明の基材フィルム層に相当する。)及びヒートシール性樹脂層(甲1発明の熱融着ポリマ層に相当する。)を備えたものである点では、共通する。そして、甲2には、フィルム基材層を、単層ばかりでなく、2層構造や、コア層(A)の表裏面に表面層(B)と裏面層(C)が存在する3層構造とし得ることが記載され(摘示(2e)【0015】、摘示(2L)図1?3)、各層(A)(B)(C)の材質についてプロピレン系樹脂(ポリオレフィンの1種である。)が用いられることやフィラー量について記載されている(同【0016】)。また、ヒートシール性樹脂層の50?95重量%を占めるポリオレフィン樹脂として、エチレン・酢酸ビニル共重合体(甲1発明でもエチレン酢酸ビニル共重合体が用いられている。)も例示されている(摘示(2f)【0019】)。そして、具体例として、4層フィルム(B/A/C/II)(IIはヒートシール性樹脂層である。)とした実施例1?5、7及び比較例1?5が記載され、また、3層フィルム(B/A/II)(IIはヒートシール性樹脂層である。)とした実施例6及び8が記載されている(摘示(2j))。
しかし、このような4層フィルムを形成するための方法として、甲2が開示したのは、上記実施例1?5、7及び比較例1?5に記載された、コア層(A)を押出成形後冷却し加熱して縦方向に延伸し、これに表面層(B)を押出して表面層/コア層の積層体(B/A)を得、この積層体のA層側にヒートシール性樹脂層(II)とC層をヒートシール性樹脂層(II)が外側になるように押出して4層フィルム(B/A/C/II)を得、これを加熱して横方向に延伸するというものであり(摘示(2j))、甲2には、それ以外の方法は記載されていない。
したがって、甲1発明に、甲2に記載された発明を組み合わせても、相違点に係る構成を備えたものとすることはできない。

(ウ)また、甲3は、3層構造の基材層用ポリオレフィン樹脂シートの一軸延伸物の少なくとも片面に紙状層用複合ポリオレフィン樹脂シートを溶融積層したものを、先の延伸とは直角方向に延伸する樹脂延伸フィルムの製造方法について記載した特許文献である(摘示(3a)?(3d))。この樹脂延伸フィルムは、従来はパルプ紙が用いられていた用途に使用される不透明フィルムであって、フィルムを構成する樹脂層の材料に充填剤を配合し、延伸することによりボイドを形成させて不透明化したものであり、甲3の発明は、従来技術のこの種の不透明フィルムが印刷性に劣ったり、基材層用シートを押出すダイのスリット部に焼けて劣化した樹脂が付着してシート表面に筋状の傷をつけたり、シート表面に多数のくぼみを生じる問題を有していたのを解決するために、3層の基材層及び表面層の充填材の量と、基材層のうち中央の層と表面層の樹脂のメルトインデックスを特定のものとする、というものである(摘示(3a)?(3i))。
甲3に記載された複合ポリオレフィン樹脂延伸フィルムは、一般には合成紙ともいわれるものであって、甲1発明のプリントラミネート用フィルムとは、用途が異なり、層構成及び材料も、甲1発明は2層構成で熱融着ポリマ層をもつのに対して、甲3では4層構成(表面層が片面に設けられる場合)又は5層構成(表面層が両面に設けられる場合)であって、その表面層は必ず充填材を5?50重量%含むものであり、熱融着ポリマ層ではない。甲3に記載された発明の表面層の材料が、甲1発明の熱融着ポリマ層の材料と類似する熱的性質を有し同様に取り扱えるものである、ともいえない。
そうすると、甲1発明に、その基材フィルム層の層構成を3層構造の積層体として製造するために、甲3に記載された発明を組み合わせる動機付けとなるものがあるとはいえない。

(エ)また、甲1発明に、甲2に記載された発明及び甲3に記載された発明の両者を組み合わせることについて検討すると、甲2及び甲3をみた当業者は、甲2に記載された発明の方法を適用しようと考えるとしても、甲3に記載された発明の方法を適用しようと考えるとはいえないし、甲2に記載された発明を介して甲3に記載された発明を適用する動機付けが生ずるともいえない。

ウ 発明の効果について
本件特許明細書の段落【0012】には、発明の課題として「本発明は、融点が低い機能性樹脂の場合にも、連続工程によりラミネーションされるようにすることができ、製造工程が単純かつ時間の所要も少なく、製品の生産単価を下げることができる多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法を提供しようとするものである」と記載され、段落【0063】には、発明の効果として「本発明によれば、前述したところのように、縦方向延伸後、そのまま直ちに横方向延伸を行わずに、縦方向延伸工程と横方向延伸工程の間に第2押出ステップおよび第2冷却ステップを含み、前記第2押出ステップを通じて樹脂層40がラミネーションされて、融点の低い樹脂の場合にも押出を通じたラミネーションが可能である。かかる連続的な押を通じて樹脂層40を含む多層延伸フィルムが得られる。したがって、製造工程が単調かつ時間の所要が少なく、製品の生産単価を下げることができる。・・・また、前記樹脂層40は、多層フィルムFについて優れた層間接着強度、すなわち、従来のコーティング工程によるものと同等以上の優れた層間接着強度を有する」と記載されている。
この効果は、基材フィルム層を3層構造の積層体として特定の工程の連続によりヒートシール樹脂層を備えた多層ポリオレフィン延伸フィルムを製造することについての開示のない甲1?甲3の記載から、当業者が予測することができないものである。

エ したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 特許異議申立人の主張について

(ア)特許異議申立人は、本件発明1と甲1の発明との相違点として以下の相違点1?相違点3を挙げている。
相違点1:
『特許発明1は、前記基材フィルム層が「(A-1^(*))前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され、」と規定される「多層ポリオレフィンフィルム」であるのに対して、甲第1号証の発明は、前記ポリオレフィンフィルムからなる基材フィルム層が特許発明1で規定する上記要件(A-1^(*))、(A-3^(*))を満たす多層ポリオレフィンフィルムであると明記されていない点』(決定注:(A-1^(*))は本件発明1の「前記第1押出成形ステップは、前記多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含むように遂行され」、(A-3^(*))は本件発明1の「前記縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって」である。)
相違点2:
『特許発明1が、前記要件「(B-2)ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ」を有することを規定しているのに対して、甲第1号証の発明は、前記「(Y1)上記基材フィルム上に、熱融着ポリマ層を押出ラミネートしてラミネーションフィルムを形成する工程」が、押出ラミネート後にラミネーションフィルムを冷却処理するという操作を含む工程であると記載されていない点』
相違点3:
『特許発明1が「(C)多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法」と規定されているのに対して、甲第1号証の発明は「プリントラミネート用フィルムの製造方法」と限定されている点』
そして、相違点1について、概略以下の主張をしている。
甲1には、2頁右上欄3?13行に「該基材フィルム層は2層以上の積層体であってもよく、表層の基材層は内層の基材層より剛性または融点が低いものがよい」と記載されていて基材フィルム層を3層積層構造のものとすることができることは自明であるから、甲1の発明において、前記基材層を3層積層構造の押出ポリオレフィンフィルム層とすることは当業者が必要に応じて容易に採用し得ることである。そして、そのような3層構造の基材フィルムは、両外層(スキン外層)と中間層(コア層)とを有するものとなるから、本件発明1の「(A-1^(*))多層ポリオレフィンフィルムが、スキン外層、コア層およびスキン内層を含む」という要件、及び、「(A-3^(*))縦方向延伸ステップは、前記スキン外層、コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって」という要件を満たすものとなる。
また、甲2に、縦横方向2軸延伸されている熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)と、横方向のみに延伸されているヒートシール性樹脂層(II)からなるインモールド成形用ラベルにおける熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)について、段落0015に「熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)は、・・・、コア層(A)の表裏面に表面層(B)、裏面層(C)が存在する3層構造であっても、・・良く・・・」と記載されているように、甲1記載の「プリントラミネート用フィルム」における「基材フィルム層」を3層積層構造のものとすることができることは容易に想到し得たことである。
それゆえ、相違点1の技術的事項は、甲1の発明においても、当業者が必要に応じて任意に採択しうる事項である。

(イ)しかし、甲1に「該基材フィルム層は2層以上の積層体であってもよく、表層の基材層は内層の基材層より剛性または融点が低いものがよい」と記載されているからといって、上記(A-1^(*))及び(A-3^(*))の構成が容易に想到し得るものでないことは、上記イで述べたとおりである。
また、甲2の記載から、甲1発明の基材フィルム層を3層積層構造のものとすることが想到できたとしても、本件発明1は、特定の工程の連続により多層ポリオレフィン延伸フィルムを製造するものであって、上記(A-3^(*))の工程を含ませることが容易に想到し得るものでないことは、上記イで述べたとおりである。
よって、相違点2及び相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、本件優先日前に頒布された甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(4)本件発明2?9について
本件発明2?9は、本件発明1の発明特定事項を、さらに限定したものであるから、本件発明2?9も、本件発明1と同様に、本件優先日前に頒布された甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1?9は、本件優先日前に頒布された甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当せず、特許異議申立人が申し立てた理由によって取り消されるべきものではない。


5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-15 
出願番号 特願2013-548355(P2013-548355)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大塚 徹  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 加藤 幹
中田 とし子
登録日 2015-09-11 
登録番号 特許第5807070号(P5807070)
権利者 ヨウル チョン ケミカル カンパニー, リミテッド
発明の名称 ヒートシール樹脂層を含む多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法  
代理人 石田 敬  
代理人 高橋 正俊  
代理人 出野 知  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  

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