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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800088 審決 特許
無効2014800135 審決 特許
無効2012800042 審決 特許
無効2011800071 審決 特許
無効2012800032 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A61K
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 一部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A61K
審判 一部無効 特123条1項5号  A61K
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1317274
審判番号 無効2014-800093  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-06-03 
確定日 2016-03-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4804131号発明「内因性エリスロポエチン(EPO)を増加させる方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4804131号(請求項の数は10。以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成14年12月6日(パリ条約による優先権主張 2001年12月6日 2002年1月16日 2002年2月25日 2002年6月5日 いずれも(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2003-554713号の一部を平成17年12月5日に新たな特許出願(外国語書面出願)としたものであって、平成23年8月19日に特許権の設定登録がされたものである。
請求人は、平成26年6月3日(特許庁受領日)に本件特許の請求項1及び5?10に係る発明についての特許の無効を求める審判を請求した。
本件無効審判の手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年6月3日 審判請求書、並びに甲第1?23号証及び甲第1
?4、6、7、9?12、17、18、20?
22号証の訳文
平成26年9月22日 答弁書、並びに乙第1?15号証及び乙第1、
2、4?15号証、甲第1?4、7、10?12
号証の訳文
平成26年12月11日 審理事項通知書(日付は起案日)
平成27年1月26日 口頭審理陳述要領書(請求人)、並びに甲第24
?33号証及び甲第25?33号証の訳文
平成27年1月26日 口頭審理陳述要領書(被請求人)及び乙第16?
19号証
平成27年2月6日 上申書(請求人)及び甲第34号証
平成27年2月9日 口頭審理
平成27年2月13日 上申書(請求人)及び甲第35?38号証
平成27年2月24日 上申書(被請求人)及び甲第9、10、26?
29、31、33号証の訳文
平成27年5月11日 審決の予告(日付は起案日)
平成27年8月11日 訂正請求書及び上申書(被請求人)
平成27年10月9日 弁駁書(請求人)

第2 訂正の適否
1 訂正事項
被請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第4804131号の明細書、特許請求の範囲及び図面を、平成27年8月11日付けで提出された訂正請求書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり一群の請求項ごとに訂正することであり、訂正事項は、
特許請求の範囲の請求項1における、「R^(1)、R^(2)およびR^(3)は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(18))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、または-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)(ここでfは1であり、gは3であり、xは0である)よりなる群から選ばれ;ここでアリール基は、以下のものから選ばれる1?5個の置換基により置換されていてもよい:ハロゲン、シアノ、(C_(2)-C_(16))-アルキル、(C_(1)-C_(16))-アルコキシおよびカルバモイル;
あるいは式中、」を削除する。
である。
2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び独立特許要件
(1) 訂正の目的
本件訂正は、請求項1において、複素環式カルボキサミド化合物を表す式(I)の置換基R^(1)ないしR^(3)の定義から、「R^(1)、R^(2)およびR^(3)は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(18))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、または-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)(ここでfは1であり、gは3であり、xは0である)よりなる群から選ばれ;ここでアリール基は、以下のものから選ばれる1?5個の置換基により置換されていてもよい:ハロゲン、シアノ、(C_(2)-C_(16))-アルキル、(C_(1)-C_(16))-アルコキシおよびカルバモイル;あるいは式中、」との記載を削除し、式(I)で表される化合物の置換基R^(1)ないしR^(3)を、それらを含有するピリジンと一緒になって、式(Ia)又は式(Ib)で表される複素環系を形成する場合に限定するものである。したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項追加の有無
前記(1)で述べた理由から明らかなように、本件訂正は式(I)で表される化合物の置換基の選択肢の一部を削除するものであって、新規事項を追加するものではない。
したがって、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(3) 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
前記(1)で述べた理由から明らかなように、本件訂正は式(I)で表される化合物の置換基の選択肢の一部を削除するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(4) 独立特許要件
本件訂正は、特許請求の範囲の請求項1を訂正するものであるところ、請求項2ないし8及び10は訂正される請求項1の記載を引用する請求項であることから、請求項1ないし8及び10は一群の請求項であり、また、請求項9は、訂正される請求項1の記載を引用する請求項8の記載を引用する請求項であることから、請求項1、8及び9は一群の請求項である。したがって、請求項1ないし10は一群の請求項である。一方、前記1で述べたとおり、本件訂正は、当該一群の請求項ごとに特許請求の範囲の訂正を請求するものである。そして、前記第1のとおり、請求人が無効を求める請求項は請求項1及び5ないし10であることから、特許請求の範囲の請求項2ないし4については、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定する「特許無効審判の請求がされていない請求項」に該当する。
ここで、本件訂正前の請求項2ないし4は、
「【請求項2】 複素環式カルボキサミド化合物が、式Iaで表されるものであり、式中、
R^(13)は、水素、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、または-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)(ここでfは1であり、gは3であり、xは0である)であり;
R^(14)は、水素またはハロゲンである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】 複素環式カルボキサミド化合物が、式Ibで表されるものであり、式中、
R^(3)は、水素またはハロゲンであり;
R^(17)は、水素であり;そして
R^(18)は、水素、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、または-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)(ここでfは1であり、gは3であり、xは0である)である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】 複素環式カルボキサミド化合物が、以下、
[(3-ベンジルオキシ-7-クロロ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(3-ヒドロキシ-6-イソプロポキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(3-ヒドロキシ-6-フェノキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(3-ヒドロキシ-6-トリフルオロメトキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(1-クロロ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(4-ヒドロキシ-7-イソプロポキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(7-ブトキシ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-メトキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、および
[(1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-イソプロポキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の使用。」と記載されており、これらの請求項は、請求項1において式(I)で表される複素環式カルボキサミド化合物の置換基R^(1)ないしR^(3)が、それらを含有するピリジンと一緒になって、式Ia及びIbである場合について、その置換基を特定のものに限定する請求項であるが、本件訂正では式Ia及びIbの置換基については、訂正の前後でその範囲は変化していないことから、本件訂正の前後で、請求項2ないし4の範囲は変化していない。
すなわち、請求項2ないし4については、形式上は訂正が請求されたものと扱われるものの、その発明特定事項は本件訂正の前後で変化していないことから、請求項2ないし4の訂正は、特許請求の範囲の減縮又は誤記若しくは誤訳の訂正には該当しない。
よって、特許請求の範囲の請求項2ないし4について、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する第126条第7項の規定は適用しない。
(5) まとめ
本件訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正でもない。
よって、本件訂正を認める。

第3 本件訂正発明
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、5?10に係る発明は、訂正請求書に添付された明細書(以下、「訂正明細書」という。)、訂正した特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、5?10に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。

【請求項1】 対象における貧血を治療するための薬剤の製造における複素環式カルボキサミド化合物の使用であって、該複素環式カルボキサミド化合物が、HIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制し、式(I)
【化1】

[式中、
Aは、-CH_(2)-であり;
Bは、-CO_(2)HまたはCO_(2)-Gカルボキシル基(ここでGはアルコールG-OHの基であり、Gは(C_(1)-C_(20))-アルキル基または(C_(7)-C_(16))-炭素環式アルアルキル基である)であり;
Xは、Oであり;
Qは、Oであり;
R^(4)は、水素またはベンジルであり;
Yは、CR^(3)であり;
R^(1)とR^(2)、またはR^(2)とR^(3)は、それらを含有するピリジンと一緒になって、式IaおよびIb
【化2】

から選ばれる所望により置換されていてもよい複素環系を形成しており、置換基R^(3)、R^(13)、R^(14)、R^(17)およびR^(18)は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(18))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、または-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)(ここでfは1であり、gは3であり、xは0である)よりなる群から選ばれ;ここでアリール基は、以下のものから選ばれる1?5個の置換基により置換されていてもよい:ハロゲン、シアノ、(C_(2)-C_(16))-アルキル、(C_(1)-C_(16))-アルコキシおよびカルバモイル]
で表される化合物、またはそれから誘導される生理的に活性な塩である、前記使用。
【請求項5】 貧血が、ヘモグロビンまたは赤血球の異常に関連している、請求項1に記載の使用。
【請求項6】 貧血が、糖尿病、癌、潰瘍、腎臓病、免疫抑制性疾患、感染および炎症よりなる群から選ばれる状態に関連している、請求項1に記載の使用。
【請求項7】 貧血が、放射線療法、化学療法、透析および手術よりなる群から選ばれる処置または治療に関連している、請求項1に記載の使用。
【請求項8】 貧血が、失血に関連している、請求項1に記載の使用。
【請求項9】 失血が、出血障害、外傷、損傷または手術に関連している、請求項8に記載の使用。
【請求項10】 貧血が、鉄の輸送、処理または利用における欠陥に関連している、請求項1に記載の使用。
(以下、これらの請求項に係る発明を、それぞれ、「訂正発明1」、「訂正発明5」ないし「訂正発明10」という。)

第4 当事者の主張の概要
1 請求人の主張の概要
審判請求書、口頭審理陳述要領書及び口頭審理調書によれば、請求人が主張する無効理由の概要は、次のとおりである。
(1)無効理由1
訂正発明1及び5?10は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(特許法第123条第1項第1号)
(2)無効理由2
訂正発明1及び5?10は、甲第14?16号証のいずれかに記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(特許法第123条第1項第1号)
(3)無効理由3
本件明細書の発明の詳細な説明には化学構造が極めて類似した僅かな化合物についての実施例しか記載されておらず、どのような構造の化合物であれば、貧血の治療に使用することができるのかを確認することは当業者に過度な実験を強いるものなので、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲に記載された数十億種類を超える複素環式カルボキサミド化合物が貧血の治療の使用できることをサポートする記載は発明の詳細な説明に存在しないので、本件の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。(特許法第123条第1項第4号)
(4)無効理由4
本件の特許請求の範囲に記載された複素環式カルボキサミド化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制することの試験の結果が発明の詳細な説明に記載されていないので、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。(特許法第123条第1項第4号)
(5)無効理由5
平成23年4月11日付け手続補正により、本件の特許請求の範囲に記載した事項は外国語書面に記載した事項の範囲内ではなくなった。(特許法第123条第1項第5号)

<証拠方法>
甲第1号証:2001年12月6日に出願された米国出願番号60/337,082号についての優先権証明書
甲第2号証:2002年1月16日に出願された米国出願番号60/349,659号についての優先権証明書
甲第3号証:2002年2月25日に出願された米国出願番号60/359,683号についての優先権証明書
甲第4号証:2002年6月5日に出願された米国出願番号60/386,488号についての優先権証明書
甲第5号証:特許・実用新案審査基準 第IV部 優先権 第1章 パリ条約による優先権、2004年7月、特許庁
甲第6号証:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2002.10.15, Vol.99, No.21, pp.13459-13464.
甲第7号証:Cell, 1999, Vol.98, pp.281-284.
甲第8号証:分子細胞治療, 2000, Vol.1, No.6, pp.539-545.
甲第9号証:Blood, 2000, Vol.96, No.4, pp.1558-1565.
甲第10号証:Annu. Rev. Cell Dev. Biol, 1999, Vol.15, pp.551-578.
甲第11号証:Cell, 2001.10.05, Vol.107, pp.1-3.
甲第12号証:High Alt. Med. Biol, 2001.10.30(米国議会図書館受入日), Vol.2, No.2, pp.155-163.
甲第13号証:本件特許出願の審判手続において被請求人が提出した平成22年11月11日付け手続補正書(方式)に添付された参考資料2
甲第14号証:特開平7-242635号公報
甲第15号証:特開平9-124606号公報
甲第16号証:特開平11-302257号公報
甲第17号証:Science, 2001.04.20, Vol.292, pp.464-468.
甲第18号証:Science, 2001.04.20, Vol.292, pp.468-472.
甲第19号証:本件特許出願の審判(特許法第162条の規定による審査)手続において審査官が作成した平成23年1月7日付けの応対記録
甲第20号証:アケビア セラピューティクス社のプレスリリースを2010年10月5日に配信するMarketwired社のウエブサイトの打ち出し
甲第21号証:米国特許出願公開第2010/0331303号明細書
甲第22号証:米国特許出願公開第2010/0331374号明細書
甲第23号証:特許・実用新案審査基準 第III部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正 第1節 新規事項、2010年6月、特許庁
甲第24号証:知財高裁 平成18年3月22日判決(平成17年(行ケ)第10296号)
甲第25号証:グレッグ L.セメンザ教授の2015年1月20日付け宣言書
甲第26号証:Semenza, G. L, 'Oxygen-regulated erythropoietin gene expression'. In: Hematopoiesis, A Developmental Approach, Edited by Zon, L. I, Oxford University Press, 2001, pp.288-298.
甲第27号証:Int. J. Mol. Med, 2000, Vol.5, pp.253-259.
甲第28号証:国際公開第00/74725号
甲第29号証:国際公開第02/089809号(2002年11月14日発行)
甲第30号証:Blood, 1972, Vol.40, No.5, pp.671-677.
甲第31号証:Ann. N. Y. Acad. Sci, 1994, Vol.718, pp.50-63.
甲第32号証:Blood, 1995, Vol.85, No.10, pp.2735-2741.
甲第33号証:国際公開第02/088363号(2002年11月7日発行)
甲第34号証:東京高裁 昭和61年11月27日判決(昭和58年(行ケ)第54号)
甲第35号証:甲第26号証の文献情報に関するamazon.com社のウエブサイトの打ち出し
甲第36号証:甲第26号証の文献情報に関するbiblio.com社のウエブサイトの打ち出し
甲第37号証:甲第26号証の文献情報に関する米国著作権局のウエブサイトの打ち出し
甲第38号証:甲第31号証の文献情報に関するPubMedの打ち出し

2 被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張する無効理由1?5はいずれも理由がないと主張し、証拠方法として乙第1号証?乙第19号証を提出するとともに、平成27年8月11日に「特許第4804131号の明細書、特許請求の範囲および図面を本件請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲および図面のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求める」との訂正請求書を提出して、本件訂正は認められるべきであり、請求人の主張する無効理由及び証拠によっては訂正発明1、5ないし10を無効とすることはできない旨を主張する。

<証拠方法>
乙第1号証:Nephrol. Dial. Transplant, 2001, Vol.16, Suppl.5, pp.50-55.
乙第2号証:Nat. Rev. Drug Discov, 2006, Vol.5, pp.267-268.
乙第3号証:アステラス製薬株式会社及びファイブロジェン社による2013年7月31日付けニュースリリース
乙第4号証:Webster's New World Medical Dictionary, 3rd Edition, p.19及びp.226.
乙第5号証:2011年6月24日付けのエリスロポエシス刺激薬に関するFDA drug safety communicationが記載されたウエブサイトPDR.NETの打ち出し
乙第6号証:J. Am. Med. Assoc, 2011, Vol.305, No.18, pp.1908-1909.
乙第7号証:Trends Mol. Med, 2001.08, Vol.7, No.8, pp.345-350.
乙第8号証:Pfluegers Arch.- Eur. J. Physiol, 2002, Vol.443, pp.503-507.
乙第9号証:Nat. Rev. Drug Discov, 2003, Vol.2, pp.1-9.
乙第10号証:Macdougall, I. C, Novel strategies for stimulating erythropoiesis and potential new treatments for anaemia, Lancet, Published Online 2006, DOI:10.1016/S0140-6736(06)69120-4.
乙第11号証:Nephrol. Dial. Transplant, 2001, Vol.16, pp.1745-1749.
乙第12号証:貧血の臨床試験に関するファイブローゲェン社のウエブサイトの打ち出し
乙第13号証:J. Am. Soc. Nephrol, 2010, Vol.21, pp.2151-2156.
乙第14号証:Guenzier, V, 'Prolyl 4-Hydroxylase inhibitor'. In: Prolyl Hydroxylase, Protein Disulfide Isomerase, and Other Structurally Related Proteins, Edited by Guzman, N. A, Marcel Dekker Inc, 1997, pp.66-77.
乙第15号証:Biochem. J, 1986, Vol.239, pp.311-315.
乙第16号証:乙第1号証の文献情報に関するPubMedの打ち出し
乙第17号証:乙第7号証の文献情報に関するPubMedの打ち出し
乙第18号証:乙第8号証の文献情報に関するPubMedの打ち出し
乙第19号証:乙第11号証の文献情報に関するPubMedの打ち出し

第5 証拠の記載事項
本件特許のもとの特許出願の出願日(以下、「原出願日」という。)である平成14年12月6日よりも前に頒布された刊行物である以下の証拠には、それぞれ以下の事項が記載されている。
1 甲第6号証
(1) 表題
「低酸素誘導因子に対して作用する哺乳類プロリルヒドロキシラーゼの生化学的精製及び薬理学的阻害」
(2) 要約部分
ア 「von Hippel-Lindau遺伝子の産物であるpVHLは、酸素存在下で、ヘテロ二量体転写因子である低酸素誘導因子(HIF)のαサブユニットを、ポリユビキチン化の標的とさせる。HIFへのpVHLの結合は、HIFαファミリーメンバー中に存在するペプチドモチーフ内の保存されたプロリン残基の酵素的ヒドロキシル化により支配されている。」(13459頁左欄1?6行)
イ 「我々は、HIFヒドロキシラーゼの潜在的な阻害剤として、プロコラーゲンプロリル4-ヒドロキシラーゼの低分子量阻害剤の構造上多様なコレクションの活性を試験した。このシリーズのモデル化合物は、様々な細胞においてHIFを安定化し、その下流の標的である血管内皮成長因子の産生の増加を導いた。」(13459頁左欄9?14行)
(3) 導入部分
「HIFプロリルヒドロキシラーゼ(HIF PH)は、よく研究されている、コラーゲンを修飾する哺乳類のI型及びII型プロリルヒドロキシラーゼと同じ酵素ではないことをいくつかの証拠は示唆した。第一に、ヒドロキシル化されるHIFの領域は、I型及びII型プロリルヒドロキシラーゼによって認識される(Pro-Pro-Gly)_(n)モチーフと似ていない(10-13)。第二に、I型及びII型プロリルヒドロキシラーゼは、小胞体(ER)に存在するのに対し、HIFは細胞内タンパク質である。第三に、HIF PHの活性が抑制されるのに十分である低酸素状態において、コラーゲンプロリルヒドロキシラーゼの活性は維持される(16)。」(13459頁左欄37?46行)
(4) 「Materials and Methods(材料と方法)」の項
ア 「HIFペプチドのヒドロキシル化アッセイ」
「1μgの合成の、N末端がビオチン化された、HIF1αの556?575残基(DLDLEMLAPYIPMDDDFQLR)に相当するペプチドを、30μlのストレプトアビジン-アガロース(Pierce)上に固定化して、50μlのRRL、様々な量のRRL由来カラム画分、又は組換えEGLN1のいずれかで、2時間、タンブリングしながら室温でインキュベートした。反応総量は、PHAバッファーで200μlに調節し、指示のある場合は以下の補助因子を加えた:FeCl_(2)(100μM)、アスコルベート(2mM)、及び2-オキソグルタレート(5mM)。それから、アガロースをNETN[20mM Tris・HCl(pH8.0)/100mM NaCl/1mM EDTA/0.5% Nonidet P-40]で4回洗浄して、ペプチドのヒドロキシル化を、pVHL結合又はMSにより判定した。前者については、コンプリートプロテアーゼインヒビター混合物(・・・)で補充された、総量500μlのEBC[50mM Tris・HCl(pH8.0)/120mM NaCl/0.5% Nonidet P-40]中に、10μlの^(35)S-標識pVHLを加えて、4℃で1時間インキュベートした。NETNで4回洗浄後、SDSを含むサンプルバッファー中でボイリングすることにより、結合したpVHLを溶出させて、PAGEで分離して、オートラジオグラフィーにより検出した。」(13459頁右欄17?36行)
イ 「プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤」
「プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤(FibroGen)を、10mMのストック濃度でDMSO中に溶解させた。RRL活性の阻害のために、ペプチドのヒドロキシル化アッセイでの使用前に15分間、示された阻害剤でRRLを事前にインキュベートした。ビオチン化HIFペプチド及び補助因子の添加前に、200μlのPHAバッファー中で15分間、示された阻害剤でGST-EGLN1を事前にインキュベートした。」(13461頁左欄下から13?7行)
(5) 「Results(結果)」の項
ア 表1(13462頁)

(審決注:表中のFG-2179の化学構造式は、ピリジン環の2位に結合する置換基中の窒素原子について、当該窒素原子と他の原子との結合の数において誤りがあることは明らかである。ここで、当該化学構造式では窒素原子に結合する原子として水素原子の記述が遺脱しているとした場合、このような化合物の分子式はC_(8)H_(8)N_(2)O_(4)で、分子量は196.16となるが、この数値は表中の分子量(Mr)の値と一致する。したがって、上記FG-2179の化学構造式におけるピリジン環の2位に結合する置換基中の窒素原子は水素原子とも結合しているものと認められる。)
イ 図4a(13462頁)

「図4.小分子によるEGLN1活性の阻害。(a)示された化合物(表1参照)の存在下でRRLと事前にインキュベートされたビオチン化HIFペプチド(556?575)への、^(35)S-標識pVHLの結合。」(13462頁右欄 図4の説明文1?3行)
ウ 「コラーゲンプロリルヒドロキシラーゼの、多くの構造上多様な小分子阻害剤が開発されている(23-27)(表1)。これらの化合物のうちのいくつかは、RRLに存在するHIF PH(図4a)及び組換えEGLN1(図4b及びデータ示さず)を、低いマイクロモル濃度で阻害した。」(13462頁右欄下から10?6行)
(6) 「Discussion(考察)」の項
ア 「HIF PHの阻害を介したHIFの安定化は、急性又は慢性の虚血により特徴付けられる疾患において治療的に有益であり得ることが示唆されている(10、36)。これらの疾患の中には、心筋梗塞、脳卒中、末梢血管の疾患及び糖尿病を含む、先進国での罹患及び死亡の主な原因であるものが存在する。」(13464頁左欄1?6行)
イ 「注目すべきことに、FG-0041は、心筋梗塞のげっ歯類モデルにおいて、左心室機能を保持することが既に示されていた(39)。この効果は、当初は、コラーゲンプロリルヒドロキシラーゼの阻害に起因すると考えられた(39)。しかしながら、FG-0041がHIF PH活性を阻害するという我々の知見は、その試験で見られる有益な効果は梗塞後の一週目の間に既に明白であった(39)という事実と組み合わせて、FG-0041の有益な効果は、線維症の予防よりむしろHIFの安定化が原因であったことを示唆する。」(13464頁右欄5?13行)

2 甲第14号証
(1) 発明の名称
「置換ヘテロ環カルボキサミド、その調製方法および薬剤としてのその使用」
(2) 特許請求の範囲
ア 【請求項1】
「下記式I: 【化1】

〔式中、・・・〕の化合物、および薬理学的に活性なその塩ただし3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸N-(カルボキシメチル)アミドを除くもの。」
イ 【請求項12】
「線維性疾患に対抗する薬剤の製造するための請求項1?8記載の化合物。」
(3) 発明の詳細な説明
ア 「プロリル-4-ヒドロキシラーゼの阻害剤であるN-オキサリルグリシンはJ. Med. Chem. 1992, 35, 2652?2658(Cunliffe等)およびEP-A-0457163号(Baader等)に開示されている。3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸N-(カルボキシメチル)アミドはG. Yolles等によりBull. Soc. Chim. Fr. 1965, 8, 2252?2259号に開示されている。ヒドロキシイソキノリンカルボン酸グリシルアミドおよびヒドロキシキノリンカルボン酸グリシルアミドは、Biochem. Soc. Trans. 1991, 19, 812?815(Franklin等)に開示されている。今回意外にも、アミド官能基に対してオルト位にあるOHまたはSH官能基を有するヘテロ環カルボキサミドがプロリル-4-ヒドロキシラーゼの高度に有効な阻害剤であることが発見された。」(段落【0004】)
イ 「最も好ましい式Iの化合物は、QはOであり、XはOであり、YはCR^(3)であり、mは0であり、Aは-CH_(2)-基であり、BはCO_(2)Hであり、R^(1)は水素、(C_(1)?C_(10))-アルコキシ、(C_(5)?C_(6))-シクロアルキルオキシ、(C_(5)?C_(6))-シクロアルキル-(C_(1)?C_(2))-アルコキシ、-O-〔CH_(2)〕_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、(C_(1)?C_(4))-アルコキシ-(C_(1)?C_(4))-アルコキシ、置換フェノキシまたは置換ベンジルオキシであり、ここでフェニル基はフッ素、塩素、シアノ、トリフルオロメチル、(C_(1)?C_(4))-アルキルまたは(C_(1)?C_(4))-アルコキシよりなる群から選択される基により置換されており、そしてR^(2)、R^(3)およびR^(4)は水素であるような化合物、および生理学的に活性なその塩である。」(段落【0012】)
ウ 「本発明はコラーゲン生合成抑制のための式Iの化合物および生理学的に寛容性を有するその塩の使用に関する。本発明はプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害のための式Iの化合物および生理学的に寛容性を有するその塩の使用に関する。」(段落【0015】)

3 甲第15号証
(1) 発明の名称
「置換キノリン-2-カルボキサミド、それらの製造ならびに薬剤および中間体としてのそれらの使用」
(2) 特許請求の範囲
ア 【請求項1】
「式(I) 【化1】

〔式中、・・・〕の化合物またはその生理学的に活性な塩。」
イ 【請求項25】
「線維症に対する薬剤の製造のための請求項1?19記載の化合物。」
(3) 発明の詳細な説明
ア 「ピリジン-2,4(5)はジカルボキシレートのプロドラッグもまた知られている。これらはEP-A-0590520およびEP-A-0562512に記載されている。プロリル4-ヒドロキシラーゼの阻害剤としてのN-オキサリルグリシンはCunliffeらのJ. Med. Chem. 35, 2652?2658(1992年)およびBaaderらのEP-A-0457163から知られている。3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸N-(カルボキシメチル)-アミドはG. YollesらのBull. Soc. Chim. Fr. 8, 2252?2259(1965年)から知られている。ヒドロキシイソキノリン-およびヒドロキシシンノリン-カルボン酸グリシルアミドはFranklinらのBiochem. Soc. Trans. 19, 812?815(1991年)から知られている。EP-A-0661269は置換された複素環式カルボン酸アミドおよびプロリル4-ヒドロキシラーゼの阻害剤やコラーゲン生合成の阻害剤としてのそれらの使用を開示している。
本発明の目的はプロリルヒドロキシラーゼのより活性な阻害剤およびコラーゲン生合成の他の阻害剤を見い出すことであった。今般、EP-A-0661269に記載の選択された化合物、すなわちアミド官能基に関してオルト位にあるOH官能基を有するキノリン-2-カルボン酸アミドは細胞培養においてプロリル-4-ヒドロキシラーゼの驚くほど高い阻害作用を示すことを見い出した。」(段落【0003】?【0004】)
イ 「とりわけ好ましい式Iの化合物は、mは0であり、Aは-CH_(2)-基であり、Bは-CO_(2)Hであり、R^(1)およびR^(5)は水素であり、そしてR^(2)、R^(3)およびR^(4)は同一または異なって水素、(C_(1)?C_(18))-アルキル、(C_(1)?C_(18))-アルケニル、フェニル、塩素、フッ素、臭素、トリフルオロメチル、(C_(1)?C_(18))-アルキルスルフィニル、(C_(1)?C_(18))-アルキルスルホニル、フェニルスルフィニル、フェニルスルホニル、ナフチルスルフィニル、ナフチルスルホニル、(C_(1)?C_(18))-アルコキシ、(C_(3)?C_(8))-シクロアルコキシ、(C_(1)?C_(8))-アルコキシ-(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、-O-〔CH_(2)〕_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、フェニル-(C_(1)?C_(4))-アルコキシ、フェノキシ、(C_(1)?C_(12))-アルカノイル、フェニル-(C_(1)?C_(4))-アルカノイルまたはベンゾイルであり、ここでフェニルまたはナフチル環を有する置換基において、これは場合によりフッ素、塩素、臭素、ニトリル、トリフルオロメチル、(C_(1)?C_(6))-アルキル、(C_(1)?C_(6))-アルコキシ、-O-〔CH_(2)〕_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、および(C_(1)?C_(6))-アルキルスルホニルからなる群より選択される5個までの同一または異なる置換基を有する化合物またはその生理学的に活性な塩である。」(段落【0019】)
ウ 「本発明はコラーゲン生合成を阻害するための式Iの化合物およびその生理学的に許容される塩の使用に関する。本発明はプロリル4-ヒドロキシラーゼを阻害するための一般式Iの化合物およびその生理学的に許容される塩の使用に関する。本発明はさらに、線維症に対する製剤(薬剤)の製造における式Iの化合物およびその生理学的に許容される塩の使用に関する。」(段落【0029】)

4 甲第16号証
(1) 発明の名称
「置換イソキノリン-3-カルボキサミド、その製法および薬剤としてのその使用」
(2) 特許請求の範囲
ア 【請求項1】
「式I 【化1】

〔式中、・・・〕の化合物およびその生理学的に活性な塩。」
イ 【請求項23】
「線維症疾患の薬剤を製造するための請求項1?17記載の化合物。」
(3) 発明の詳細な説明
ア 「ピリジン-2,4(5)-ジカルボキシレートのプロドラッグもまた知られている。これらはEP-A-0590520およびEP-A-0562512に記載されている。プロリル-4-ヒドロキシラーゼの阻害剤としてのN-オキサリルグリシンはCunliffeらのJ. Med. Chem. 35, 2652?2658(1992年)およびBaaderらのEP-A-0457163から知られている。3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸N-(カルボキシメチル)アミドはG. YollesらのBull. Soc. Chim. Fr. 8, 2252?2259(1965年)から知られている。N-((4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)カルボニル)グリシンおよびN-((7-ブロモ-4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)カルボニル)グリシンはFranklinらのBiochem. Soc. Trans. 19, 812?815(1991年)から知られており、N-((4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)カルボニル)グリシンの場合、コラーゲン生合成における生体内活性はよくない。ヒドロキシキノリンカルボン酸グリシルアミドもまた開示されている。T. J. Franklinの『臓器の線維症の治療法』,J. Biochem. Cell. Biol., 第29巻, 第1号, 79?89(1997年)において、N-((7-ブロモ-4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)カルボニル)グリシンに関してコラーゲン生合成の生体内での阻害の他にラット肝臓における毒性作用(脂肪症)が報告されている。EP-A-0661269は置換された複素環式カルボキサミド、並びにプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害剤およびコラーゲン生合成阻害剤としてのそれらの使用を開示している。
本目的はプロリルヒドロキシラーゼのより活性な阻害剤を見い出すことである。さらに、本目的は脂肪症をひき起こさないプロリルヒドロキシラーゼの活性な阻害剤を見い出すことである。今般、驚くべきことに新規なイソキノリン-3-カルボキサミドは脂肪症をひき起こさない強力なプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害剤であることを見い出した。」(段落【0003】?【0004】)
イ 「特に好ましい式Iの化合物は、R^(1)は水素または塩素であり、R^(2)は(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、塩素またはベンジルオキシであり、そしてR^(3)、R^(4)およびR^(5)は水素である化合物;あるいはR^(1)は水素または塩素であり、R^(2)は水素または塩素であり、R^(3)は(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、塩素またはベンジルオキシであり、そしてR^(4)およびR^(5)は水素である化合物;あるいはR^(1)は水素または塩素であり、R^(2)およびR^(3)は水素または塩素であり、R^(4)は(C_(1)?C_(6))-アルコキシ、塩素またはベンジルオキシであり、そしてR^(5)は水素である化合物である。」(段落【0008】)
ウ 「本発明はコラーゲン生合成の阻害における式Iの化合物およびその生理学的に許容しうる塩の使用に関する。本発明はプロリル-4-ヒドロキシラーゼの阻害における式Iの化合物およびその生理学的に許容しうる塩の使用に関する。さらに、本発明は線維症疾患の薬剤の製造における式Iの化合物およびその生理学的に許容しうる塩の使用に関する。さらに、本発明は肝臓、腎臓、肺および皮膚の線維症疾患の薬剤の製造における式Iの化合物およびその生理学的に許容しうる塩の使用に関する。」(段落【0018】)

5 甲第7号証
(1) 表題
「酸素センシングに関する全体像」
(2) 「Physiological Perspective(生理学的見解)」の項
「酸素利用性の減少に対する普遍的な応答は、赤血球の産生を刺激するエリスロポエチン(EPO)及び血管新生を刺激する血管内皮成長因子をコードする遺伝子の転写活性化因子である低酸素誘導因子1(HIF-1)を含む。」(281頁左欄著者の下22?28行)
(3) 「Medical Perspective(医学的見解)」の項
「低酸素症は全ての生物における基礎的な生理学的応答を代表するのみならず、低酸素症は心筋虚血、卒中、がん及び慢性肺疾患を含む主な死因の発病機序に極めて重要である。こうした事項はここでの議論の範囲外であるが、虚血性組織における低酸素状態に対する適応応答を増幅するため及びがん細胞におけるこうした応答を阻害するために設計された遺伝学的及び薬理学的戦略は、こうした致死的な疾患の新規で効果的な治療法として大きな将来性がある。」(281頁左欄著者の下38?47行)

6 甲第8号証
(1) 表題
「エリスロポエチンの基礎?up to date?」
(2) 要約部分
「エリスロポエチン(EPO)は赤血球産生を調節する糖蛋白ホルモンである。EPOは酸素センサーを介して、正負の転写因子による調節を受けている。とくにHIF-1はEPO遺伝子発現を正に、またGATAは負に制御している。また腎性貧血の際に増加するL-NMMAが、GATA結合活性およびGATA mRNAを増加させることにより、EPOプロモーター活性が低下してEPOが減り貧血となる機序が考えられる。」(539頁1?5行)
(3) 「はじめに」の項
「エリスロポエチン(EPO)は赤血球産生を調節する糖蛋白ホルモンである。EPOは、赤芽球前駆細胞であるBFU-E、CFU-Eにはたらき、これらの細胞が有するEPOレセプター(EPOR)と結合することにより、細胞内シグナル伝達が起こり赤血球への分化が促される。一般的には、高山などの低酸素に暴露される、あるいはコバルトを投与すると赤血球増多症になることが古くから知られているが、これは上記刺激が酸素センサーを稼働し、何らかのメッセージを介して転写因子を動かしEPO遺伝子発現を亢進させるためにEPO蛋白が増加し、その結果赤血球増多症となる機序が考えられている。」(539頁左欄2?12行)
(4) 「4.EPO遺伝子発現は正と負の転写因子によって調節されている」、「2) HIF-1」の項
「通常大気中ではHIF-1α鎖はODDドメインがユビキチンプロテアソームにより分解されるため、構成的に発現しているHIF-1β鎖とヘテロ2量体を形成することができない。しかし、低酸素状態になるとユビキチンプロテアソームによる分解が起きないためにHIF-1α鎖が発現し、HIF-1β鎖とヘテロ2量体を形成する。このHIF-1が核内に移行して、EPO、VEGF、TH、LDHのHIF-1結合部位に結合して各遺伝子発現を誘導していると考えられている^(17))(図2)。」(542頁左欄27?36行)
(5) 図2(543頁)

「図2 酸素センサーとHIF-1のα・β鎖
ODD:oxygen dependent degradation」
(6) 「5.L-NMMAの上昇が腎性貧血を引きおこす」の項
「さらに、L-アルギニンを投与することにより、増加したL-NMMAによるEPO産生抑制を解除できるかについて、Hep3B細胞およびマウスを用いて解析をおこなった。この結果、L-NMMA増加によるNO・cGMP産生低下およびEPO蛋白の産生抑制は、L-アルギニン投与により改善された。よって、L-アルギニン投与は、腎性貧血の新規治療法として試みる価値のあることを証明した^(21))。」(543頁右欄1?8行)

7 甲第9号証
(1) 表題
「エポロン類は、低酸素誘導因子-1αの活性化を介してエリスロポエチン発現を誘導する。」
(2) 要約部分
「低酸素条件下でのエリスロポエチン(Epo)発現の誘導は、ヘテロ二量体の低酸素誘導因子(HIF)-1により仲介される。Epo遺伝子の3’低酸素応答配列(HRE)への結合に続いて、HIF-1はEpo転写を著しく増進する。・・・エポロン類は、ヘパトーマ細胞でEpo発現を誘導することが知られている真菌産物である。我々は、エポロン類(最適濃度4?8μmol/L)が、HIF-1αタンパク質の蓄積及び核移行、並びにHIF-1のDNA結合及びレポーター遺伝子のトランス活性化を強く誘導することを見いだした。」(1558頁左欄1行?中央欄7行)
(3) 「Introduction(序論)」の項
「胎生肝及び成人腎臓により産生される糖タンパク質ホルモンであるエリスロポエチン(Epo)は、赤血球産生の主な促進因子である^(1)。組換えEpoは、貧血を患っている患者を治療するために広く用いられている。しかしながら、組換えEpoは高価であり、そして、静脈内又は皮下に投与しなければならない。したがって、経口で活性のある、内因性Epo産生を誘導する低分子量の化合物は、腎性Epo産生の欠損に起因しない貧血の治療の代替となるであろう。・・・以下、我々は、このEpo発現を誘導することのできる化合物のクラスを『エポロン』とよぶ。エポロンを介したEpo誘導のメカニズム、及び関係するcis調節因子は、しかしながら、依然として同定されていない状態である。」(1558頁左欄1?20行)

8 甲第11号証
(1) 表題
「HIF-1、酸素、及び3つのPHD:動物細胞はどのようにして低酸素状態を核にシグナル伝達するのか」
(2) 「HIF-1」の項
ア 図1(2頁)

「図1.代表的なHIF-1標的遺伝子及び酸素恒常性におけるそれらの役割
HIF-1制御遺伝子は、11の解糖系酵素(アルドラーゼA、アルドラーゼC、エノラーゼ1、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ1、ヘキソキナーゼ2、乳酸デヒドロゲナーゼA、ホスホフルクトキナーゼL、ホスホグリセレートキナーゼ1、ピルビン酸キナーゼM、及びトリオースホスフェートイソメラーゼ)を含む。略称:・・・HO、ヘムオキシゲナーゼ;IGF、インスリン様成長因子;IGFBP、IGF結合タンパク質;NOS、一酸化窒素合成酵素;PAI、プラスミノゲン活性化因子阻害剤;TGF、形質転換成長因子;VEGF、血管内皮成長因子。」
(3) 「VHL」の項
ア 図2(2頁)

「図2.細胞内酸素濃度による、HIF-1α発現の制御
酸素利用性は、HIF-1αがPHD1?PHD3によるプロリルヒドロキシル化の影響を受ける割合を決定する。プロリルヒドロキシル化は、HIF-1αとVHL(エロンギンB及びエロンギンC、カリン2(CUL2)、及びRBX1(R)を動員して機能的なE3ユビキチン-タンパク質リガーゼ複合体を構成する)との相互作用に必要とされる。HIF-1αのユビキチン化は、当該タンパク質を26Sプロテアソームによる分解の標的にさせる。低酸素状態下では、HIF-1βはHIF-1αと二量体化し、プロリルヒドロキシル化、ユビキチン化及び分解を回避する。HIF-1ヘテロ二量体は、コア認識配列5’-RCGTG-3’を含む低酸素応答配列に結合して、コアクチベーター(Coact)分子を動員し、増大した転写開始複合体(TIC)形成およびmRNA合成をもたらし、最終的に、低酸素状態に対する生理学的反応を仲介するタンパク質の産生を導く。低酸素状態に応答して発現される一連のHIF-1標的遺伝子は、細胞種特異的であり、基礎転写率を確立する他の転写因子(TF)の結合により決定される。」
(4) 「Clinical relevance(臨床的関連性)」の項
「低酸素症は虚血性心血管疾患、がん、卒中及び慢性肺疾患の病理生理学において重要な役割を果たす。これらの疾患は米国において最もよく見られる死亡原因である。HIF-1が、がん及び低酸素性肺高血圧症の発病機序に寄与する一方で、虚血及び梗塞に対して保護的であることを示すデータが増えている(Semenza,2000にてレビュー)。HIF-1を(がん及び肺疾患において)阻害するために、又は(虚血性疾患において)誘導するために、標的化することが治療的に有用であるかは、まだ確立されていない。」(3頁右欄7?17行)

9 甲第17号証
(1) 表題
「プロリンヒドロキシル化によりVHL仲介の分解の標的とされるHIFα:酸素センシングに関する示唆」
(2) 要約部分
「HIF(低酸素誘導因子)は、酸素利用性の変化に対する細胞適応において極めて重要な役割を果たす転写因子である。酸素存在下では、HIFは、von Hippel-Lindau腫瘍抑制タンパク質(pVHL)を含むE3ユビキチンリガーゼによる分解の標的とされる。我々は、ヒトpVHLが、短いHIF由来ペプチドに、このペプチドの中心にある保存されたプロリン残基がヒドロキシル化された場合に結合することを見いだした。プロリンヒドロキシル化は、分子酸素及びFe^(2+)を必要とするので、このタンパク質修飾は、哺乳類の酸素センシングにおいて重要な役割を果たし得る。」(464頁著者の下1?8行)
(3) 導入部分
「周囲の酸素の変化を細胞がどのようにして感知するのかは、生物学の中心的な疑問である。哺乳類細胞では、酸素の不足又は低酸素状態は、HIFと呼ばれる配列特異的なDNA結合転写因子の安定化を導き、血管新生及びグルコース代謝のようなプロセスに関連する様々な遺伝子を転写活性化する(1-4)。HIFは、αサブユニット及びβサブユニットからなるヘテロ二量体として、DNAに結合する。
von Hippel-Lindau(VHL)病は、血管内皮成長因子(VEGF)など低酸素誘導性のmRNAを過剰生産する、高度な血管腫瘍の進行により特徴付けられる、遺伝性ガン症候群である(5)。VHL腫瘍抑制遺伝子の産物であるpVHLは、構造上及び機能的にSCF(Skp1/Cdc53又はCullin/F-box)ユビキチンリガーゼに類似する、多重タンパク質複合体の構成要素である(6-11)。酸素存在下では、pVHLは、エロンギンB及びエロンギンCと結合して、HIFαサブユニットに直接結合し、それらをポリユビキチン化及び分解の標的とさせる(7-10)。機能的なpVHLを欠く細胞はHIFを分解することができず、したがって、HIF標的遺伝子によりコードされるmRNAを過剰生産する(12)。」(464頁左欄1行?中央欄2行)
(4) 「Discussion(考察)」の項
ア 「脊椎動物I型及びII型プロリル4-ヒドロキシラーゼは、二つのαサブユニット[それぞれ、α(I)及びα(II)]と二つの共通のβサブユニットからなる四量体である(22)。これらの酵素は、Fe^(2+)、分子酸素、2-オキソグルタル酸及びアスコルビン酸を必要とし、コラーゲンやコラーゲン様配列を含む他のタンパク質に作用する。HIF中のpVHLと結合するペプチドは、現在までに確認された天然又は合成プロリルヒドロキシル化標的ペプチドとは似ていない。さらに、HIFは細胞内タンパク質であるのに対し、プロリンヒドロキシラーゼ活性の大部分は通常のコラーゲン生合成の場である小胞体でみられる。したがって、HIFがI型又はII型プロリル4-ヒドロキシラーゼによって修飾されることはありそうもない。」(467頁中央欄1?17行)
イ 「様々な小分子プロリンヒドロキシラーゼ阻害剤が抗線維症薬剤として開発されており、今では、虚血モデルにおいて試験され得る(22, 32-34)。」(467頁中央欄40?44行)

10 甲第18号証
(1) 表題
「酸素制御のプロリルヒドロキシル化によるvon Hippel-Lindauユビキチン化複合体に対するHIF-1αの標的化」
(2) 要約部分
「低酸素誘導因子(HIF)は、酸素による遺伝子発現の制御において中心的な役割を果たす転写複合体である。酸素を含ませ鉄が充満された細胞では、HIF-αサブユニットは、von Hippel-Lindau腫瘍抑制因子(pVHL)E3リガーゼ複合体によるユビキチン化を含むメカニズムによって急速に分解される。このプロセスは低酸素状態及び鉄のキレート化により抑制され、転写活性化を導く。ここで我々は、ヒトpVHLとHIF-1αサブユニット特異的ドメインとの間の相互作用が、HIF-αプロリルヒドロキシラーゼ(HIF-PH)と我々が命名した酵素によるプロリン残基(HIF-1α P564)のヒドロキシル化を介して制御されることを示す。補助基質としての二酸素及び補助因子としての鉄を絶対的に必要とすることは、HIF-PHが細胞の酸素センサーとして直接機能することを示唆する。」(468頁著者の下1?11行)
(3) 導入部分
「HIFは、低酸素状態に対する応答の重要なレギュレーターであり、幅広い生物において酸素恒常性での中心的な位置を占めている(1)。その転写の標的の中には、血管新生、赤血球産生、エネルギー代謝、血管運動機能及びアポトーシス/増殖性応答において重要な役割を有する遺伝子が存在する。HIFは正常な発達に必須であり(2)、虚血/低酸素状態に対する病態生理学的応答において、及び、腫瘍増殖と血管新生において、重要な役割を果たす(1)。HIF DNA結合複合体は、α及びβサブユニットのヘテロ二量体である(3)。酸素を含む細胞では、αサブユニットは不安定であり、特異的分解ドメインによるプロテアソーム分解の標的とされる(4-7)。このプロセスは、HIF-αのユビキチン依存的タンパク質分解を促進する(11-14)ユビキチンリガーゼの、認識構成要素としての役割を果たす(9、10)、von Hippel-Lindau腫瘍抑制因子(pVHL)に依存する(8)。低酸素の細胞では、HIF-αの分解は抑制され、標的遺伝子の転写活性化を導く。」(468頁左欄1行?中央欄6行)
(4) 「Prolyl hydroxylation of a HIF-1α degradation domain(HIF-1α分解ドメインのプロリンヒドロキシル化)」の項
ア 「我々は次に、PHの拮抗阻害剤として作用する一連の2-オキソグルタレートアナログ(31)について、HIF-PHを阻害するそれらの能力を試験した。修飾活性の完全阻害がN-オキサリルグリシンで観察された。」(471頁左欄7?12行)
イ 「哺乳動物細胞において、最も特性が説明されているプロリル-4-ヒドロキシラーゼは、コラーゲンを修飾するα_(1)及びα_(2)アイソフォームである。これらの酵素は、コラーゲン中の反復配列、(Pro-Pro-Gly)_(n)のプロリン残基に対する厳密な基質特異性を有すると報告されている(28)。組換え(α1又はα2)ヒト プロリル-4-ヒドロキシラーゼに対する基質として試験した場合、HIFは活性を示さなかった(35)。したがって、我々は、HIF-PHが従来知られていないプロリル-4-ヒドロキシラーゼであると仮定する。」(471頁中央欄1?11行)

11 甲第27号証
(1) 表題
「胚発生、がんの進行、及びアポトーシスに関する転写因子としてのHIF-1の役割(レビュー)」
(2) 「Abstract(要約)」の項
「それ(審決注:HIF-1のこと)は、血管新生因子VEGFの発現をレギュレートし、及び、EPOの産生を通じてエリスロポエシス(赤血球産生)を刺激する。HIF-1は正常な胚及び心血管系の発達に必要なタンパク質であるが、がんの進行及びアポトーシスにも関与しているようである。したがって、HIF-1は正常な細胞機能及び組織代謝に中心的な役割を果たすようであるが、それは、病理学的進化にも関与しており、治療標的としての興味を増大させている。このレビューでは、我々はHIF-1の、胚発生の主要な構成コンポーネントとしての、並びに、腫瘍進行の及び無酸素症誘発アポトーシスのエレメントとしての二重の役割を要約する。」(253頁左欄5?16行)
(3) 「6. Conclusion(結論)」の項
「そうすると、HIF-1又はHIF-1の活性化経路は、がん、局所虚血、血栓症及び貧血など種々の疾患における新たな治療標的と思われる。治療アプローチとして、固形腫瘍においてHREエレメントにより制御される自殺遺伝子の導入が挙げられる(40)。また遺伝子治療アプローチを用いてHREの制御下にEPO発現ベクターを用いて、エリスロポエチン送達を制御することもできる(41)。しかしながら、HIF-1の二重の役割、すなわち発達及び低酸素ストレスにおける組織生存に必要な因子としての役割のみならず、腫瘍進行に有利となりうる無酸素状態でのアポトーシス促進タンパク質としての役割をよりよく理解するには、さらなる研究を行う必要がある。」(258頁左欄8?20行)

第6 当審の判断
事案に鑑み、まず無効理由2について検討し、その後、他の無効理由について順に検討する。
1 無効理由2
(1) 訂正発明1について
ア 甲第14号証に記載された発明
甲第14号証の請求項1には、式I(審決注:式Iの化学構造式は前記第5の2(2)アに示したとおりである。以下、この化学構造式の表示は省略する。)で表される化合物が記載されており(前記第5の2(2)ア)、段落【0012】には、「最も好ましい式Iの化合物は、QはOであり、XはOであり、YはCR^(3)であり、mは0であり、Aは-CH_(2)-基であり、BはCO_(2)Hであり、R^(1)は水素、(C_(1)?C_(10))-アルコキシ、・・・-O-〔CH_(2)〕_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、・・・置換フェノキシまたは置換ベンジルオキシであり、ここでフェニル基はフッ素、塩素、シアノ、・・・(C_(1)?C_(4))-アルキルまたは(C_(1)?C_(4))-アルコキシよりなる群から選択される基により置換されており、そしてR^(2)、R^(3)およびR^(4)は水素であるような化合物」であることが記載されている(前記第5の2(3)イ)。また、請求項12には、線維性疾患に対抗する薬剤を製造するための請求項1記載の化合物が記載されており(前記第5の2(2)イ)、上記化合物がプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有することも記載されている(前記第5の2(3)ウ)。そうしてみると、甲第14号証には、線維性疾患に対抗する医薬の製造における式I〔式中、QはOであり、XはOであり、YはCR^(3)であり、mは0であり、Aは-CH_(2)-基であり、BはCO_(2)Hであり、R^(1)は水素、(C_(1)?C_(10))-アルコキシ、-O-〔CH_(2)〕_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、置換フェノキシ又は置換ベンジルオキシであり、ここでフェニル基はフッ素、塩素、シアノ、(C_(1)?C_(4))-アルキルまたは(C_(1)?C_(4))-アルコキシよりなる群から選択される基により置換されており、そしてR^(2)、R^(3)およびR^(4)は水素である。〕で表される化合物の使用であって、当該化合物はプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有する、使用という発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「甲14発明」という場合がある。)
イ 甲第15号証に記載された発明
甲第15号証の請求項1には、式(I)(審決注:式(I)の化学構造式は前記第5の3(2)アに示したとおりである。以下、この化学構造式の表示は省略する。)で表される化合物が記載されており(前記第5の3(2)ア)、段落【0019】には、「とりわけ好ましい式Iの化合物は、mは0であり、Aは-CH_(2)-基であり、Bは-CO_(2)Hであり、R^(1)およびR^(5)は水素であり、そしてR^(2)、R^(3)およびR^(4)は同一または異なって水素、(C_(1)?C_(18))-アルキル、・・・フェニル、塩素、フッ素、臭素、・・・(C_(1)?C_(18))-アルコキシ、・・・-O-〔CH_(2)〕_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、フェニル-(C_(1)?C_(4))-アルコキシ、フェノキシ、・・・であり、ここでフェニル・・・環を有する置換基において、これは場合によりフッ素、塩素、臭素、ニトリル、・・・(C_(1)?C_(6))-アルキル、(C_(1)?C_(6))-アルコキシ、・・・からなる群より選択される5個までの同一または異なる置換基を有する化合物」であることが記載されている(前記第5の3(3)イ)。また、請求項25には、線維症に対する薬剤の製造のための請求項1記載の化合物が記載されており(前記第5の3(2)イ)、上記化合物がプロリル4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有することも記載されている(前記第5の3(3)ウ)。そうしてみると、甲第15号証には、線維症に対する医薬の製造における式(I)〔式中、mは0であり、Aは-CH_(2)-基であり、Bは-CO_(2)Hであり、R^(1)、R^(2)及びR^(5)は水素であり、そしてR^(3)及びR^(4)は同一または異なって水素、(C_(1)?C_(18))-アルキル、フェニル、塩素、フッ素、臭素、(C_(1)?C_(18))-アルコキシ、-O-〔CH_(2)〕_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、フェニル-(C_(1)?C_(4))-アルコキシ又はフェノキシであり、ここでフェニル環を有する置換基において、これは場合によりフッ素、塩素、臭素、ニトリル、(C_(1)?C_(6))-アルキル及び(C_(1)?C_(6))-アルコキシからなる群より選択される5個までの同一または異なる置換基を有する。〕で表される化合物の使用であって、当該化合物はプロリル4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有する、使用という発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「甲15発明」という場合がある。)
ウ 甲第16号証に記載された発明
甲第16号証の請求項1には、式I(審決注:式Iの化学構造式は前記第5の4(2)アに示したとおりである。以下、この化学構造式の表示は省略する。)で表される化合物が記載されており(前記第5の4(2)ア)、段落【0008】には、「特に好ましい式Iの化合物は、R^(1)は水素または塩素であり、R^(2)は(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、塩素またはベンジルオキシであり、そしてR^(3)、R^(4)およびR^(5)は水素である化合物;あるいはR^(1)は水素または塩素であり、R^(2)は水素または塩素であり、R^(3)は(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、塩素またはベンジルオキシであり、そしてR^(4)およびR^(5)は水素である化合物・・・」であることが記載されている(前記第5の4(3)イ)。また、請求項23には、線維症疾患の薬剤を製造するための請求項1記載の化合物が記載されており(前記第5の4(2)イ)、上記化合物がプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有することも記載されている(前記第5の4(3)ウ)。そうしてみると、甲第16号証には、線維症疾患の医薬の製造における式I〔式中、R^(1)は水素又は塩素であり、R^(2)は(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、塩素又はベンジルオキシであり、そしてR^(3)、R^(4)及びR^(5)は水素である;あるいはR^(1)は水素又は塩素であり、R^(2)は水素又は塩素であり、R^(3)は(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、塩素又はベンジルオキシであり、そしてR^(4)及びR^(5)は水素である〕で表される化合物の使用であって、当該化合物はプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有する、使用という発明が記載されているものと認められる。(以下、この発明を「甲16発明」という場合がある。)
エ 対比
(ア) 訂正発明1と甲第14号証に記載された発明の対比
訂正発明1における式(I)では、XはOであり、Aは-CH_(2)-であり、また、Bは-CO_(2)Hを含有することから、訂正発明1における式(I)で特定される複素環式カルボキサミド化合物は、複素環の置換基として「-C(=O)-NH-CH_(2)-CO_(2)H基」を有する化合物を含有する。一方、甲14発明において式Iで表される化合物も、XはOであり、Aは-CH_(2)-基であり、BはCO_(2)Hであることから、ピリジン環に置換基として「-C(=O)-NH-CH_(2)-CO_(2)H基」を有する化合物である。そうしてみると、両者は、
医薬の製造における置換基「-C(=O)-NH-CH_(2)-CO_(2)H基」を有する複素環式化合物の使用において一致し、
上記複素環が、訂正発明1ではキノリン(式(Ia)で表される化合物)又はイソキノリン(式(Ib)で表される化合物)であるのに対し、甲14発明ではピリジンである点において相違し(相違点14-1)、また、
訂正発明1では当該医薬の用途が貧血を治療するためのものであり、上記複素環式化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制するのに対して、甲14発明では、当該医薬の用途が線維性疾患に対抗するものであり、上記複素環式化合物がプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有するものである点において相違する(相違点14-2)。
(イ) 訂正発明1と甲第15号証に記載された発明の対比
訂正発明1と甲15発明を対比すると、両者は、
医薬の製造における一般式15-Ia

〔式中、XはOであり、Aは-CH_(2)-基であり、Bは-CO_(2)Hであり、R^(13)及びR^(14)は同一または異なって水素、(C_(1)-C_(18))-アルキル、フェニル、塩素、フッ素、臭素、(C_(1)-C_(18))-アルコキシ、フェニル-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ又はフェノキシであり、ここでフェニル環を有する置換基において、これは場合によりフッ素、塩素、臭素、ニトリル、(C_(2)-C_(6))-アルキル及び(C_(1)-C_(6))-アルコキシからなる群より選択される5個までの同一または異なる置換基を有する。〕で表される化合物の使用において一致し、
訂正発明1では当該医薬の用途が貧血を治療するためのものであり、一般式15-Iaの化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制するのに対して、甲15発明では、当該医薬の用途が線維性疾患に対抗するものであり、一般式15-Iaの化合物がプロリル4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有するものである点において相違する(相違点15-2)。
(ウ) 訂正発明1と甲第16号証に記載された発明の対比
訂正発明1と甲16発明を対比すると、両者は、
医薬の製造における一般式16-Ib

〔式中、R^(3)は水素又は塩素であり、R^(18)は(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、塩素又はベンジルオキシであり、R^(17)は水素である;あるいは、R^(3)は水素又は塩素であり、R^(18)は水素又は塩素であり、R^(17)は(C_(1)?C_(8))-アルコキシ、塩素又はベンジルオキシである。〕で表される化合物の使用において一致し、
訂正発明1では当該医薬の用途が貧血を治療するためのものであり、一般式16-Ibの化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制するのに対して、甲16発明では、当該医薬の用途が線維性疾患に対抗するものであり、一般式16-Ibの化合物がプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有するものである点において相違する(相違点16-2)。
オ 判断
前記エで述べたように、訂正発明1と甲14、甲15及び甲16発明は、それぞれ、相違点14-2、15-2及び16-2において相違するところ、これらの相違点はいずれも、訂正発明1では医薬の用途が貧血を治療するためのものであり、有効成分がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制するものであるのに対して、甲14ないし甲16発明では、医薬の用途が線維性疾患を治療するためのものであり、有効成分はプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有するものである点において共通しているので、以下に、これら相違点についてまとめて検討する。
甲14ないし甲16発明はコラーゲンの生合成を阻害するもの(前記第5の2(3)ウ、第5の3(3)ウ及び第5の4(3)ウ)なので、甲14ないし甲16発明におけるプロリル-4-ヒドロキシラーゼとは、コラーゲンの生合成や修飾に関与するプロリル-4-ヒドロキシラーゼのことと理解でき、これは、甲第17号証では、「I型又はII型プロリル4-ヒドロキシラーゼ」(前記第5の9(4)ア)と、甲第18号証では、「(α1又はα2)ヒト プロリル-4-ヒドロキシラーゼ」(前記第5の10(4)イ)と記述される酵素のことと認められる。そして、甲第17号証には、「HIF中のpVHLと結合するペプチドは、現在までに確認された天然又は合成プロリルヒドロキシル化標的ペプチドとは似ていない。さらに、HIFは細胞内タンパク質であるのに対し、プロリンヒドロキシラーゼ活性の大部分は通常のコラーゲン生合成の場である小胞体でみられる。したがって、HIFがI型又はII型プロリル4-ヒドロキシラーゼによって修飾されることはありそうもない。」と記載され(前記第5の9(4)ア)、HIF中のプロリン残基は、甲第14ないし甲16号証で述べられたプロリル-4-ヒドロキシラーゼによってヒドロキシル化される可能性に乏しいことが記載されている。また、甲第18号証にも、「組換え(α1又はα2)ヒト プロリル-4-ヒドロキシラーゼに対する基質として試験した場合、HIFは活性を示さなかった(35)。したがって、我々は、HIF-PHが従来知られていないプロリル-4-ヒドロキシラーゼであると仮定する。」と記載されており(前記第5の10(4)イ)、甲第14ないし16号証で述べられたプロリル-4-ヒドロキシラーゼは、HIFをプロリルヒドロキシル化せず、当該プロリル-4-ヒドロキシラーゼとHIF-PHが異なる酵素であると仮定すると述べている。なお、HIFプロリルヒドロキシラーゼと甲第14ないし16号証で述べられたコラーゲンを修飾するI型又はII型プロリル-4-ヒドロキシラーゼが異なる酵素であることは、本件特許の優先権主張の基礎とされた出願の日と原出願日の間に公知となった甲第6号証においても述べられている(前記第5の1(3))。
このように、本件特許の原出願日前において、甲14ないし甲16発明に記載されたプロリル-4-ヒドロキシラーゼと訂正発明1のHIFプロリルヒドロキシラーゼは異なる酵素で、甲14ないし甲16発明に記載されたプロリル-4-ヒドロキシラーゼはHIFに対して活性を示さないと一般に考えられており、甲14ないし甲16発明に記載されたプロリル-4-ヒドロキシラーゼとHIFプロリルヒドロキシラーゼの両者に対して阻害活性を有することが知られていた物質は、甲第6号証に記載された特定の化学構造を有する物質及び甲第18号証に記載されたN-オキサリルグリシンのみであった(前記第5の1(5)イ及びウ並びに第5の10(4)ア)。ここで、甲第18号証に記載されたN-オキサリルグリシンは、甲14ないし甲16発明の有効成分とは異なる物質であり、また、甲第6号証に記載された特定の化学構造を有する物質で甲14ないし甲16発明の有効成分に含まれるものは、甲第6号証に記載された物質では、表1においてFG-2179という番号が付された化合物(以下、この化合物を「FG-2179化合物」という。)で、この化合物は、甲14発明において式Iで表される化合物中、QはOで、XはOで、YはCR^(3)で、mは0で、Aは-CH_(2)-基で、BはCO_(2)Hで、かつ、R^(1)ないしR^(4)は水素である化合物に相当する。
そうしてみると、このような技術水準のもとでは、FG-2179化合物以外の、甲14ないし甲16発明に記載されたプロリル-4-ヒドロキシラーゼ阻害作用を有する物質が、HIFプロリルヒドロキシラーゼに対して阻害作用を有するということを本件特許の原出願日における当業者が想到することはできない。
また、甲14発明において、有効成分が式Iで表される化合物中、QはOで、XはOで、YはCR^(3)で、mは0で、Aは-CH_(2)-基で、BはCO_(2)Hで、かつ、R^(1)ないしR^(4)は水素である場合、すなわち、FG-2179化合物である場合は、前記エ(ア)で述べた相違点14-1において相違するところ、置換基「-C(=O)-NH-CH_(2)-CO_(2)H基」を有する複素環式化合物であって、複素環がキノリン又はイソキノリンである化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼに対して阻害作用を有することは知られていなかったので、上記相違点についても、本件特許の原出願日における当業者が想到することはできない。
そして、訂正明細書の発明の詳細な説明の実施例1、2、7及び8においては、訂正発明1にかかる化合物のエリスロポエチンの発現増強効果及び血中濃度上昇効果が、実施例2ないし4においてはヘマトクリット上昇効果が記載されており、加えて、実施例3には、訂正発明1にかかる化合物が血中ヘモグロビン濃度を上昇させたことも記載されているように、訂正明細書には、訂正発明1にかかる化合物の貧血治療効果が具体的に明記されており、訂正発明1は、甲各号証からは得られない格別顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、訂正発明1が、甲第14ないし16号証に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者において容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。
カ 請求人の主張について
請求人は、甲第6、17及び18号証を示し、コラーゲンについてのプロリルヒドロキシラーゼを抑制する化合物をHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制する化合物の候補として試験することは本件特許の原出願日当時行われていたので、貧血の治療を意図して、HIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制する化合物を得るべく、コラーゲンについてのプロリルヒドロキシラーゼを抑制する化合物を試験することは、当業者が容易になし得たことであると主張する。しかし、主引用例(甲第14ないし16号証)に請求人が指摘する記載の存在する甲第6、17又は18号証を組み合わせ、さらに、HIF-1αのプロリルヒドロキシル化を抑制することによりHIF-1αの分解を抑制し、EPOの産生を導き、赤血球を増加するというという思想が示された甲第11号証を組み合わせることについての合理的な理由はないことから、請求人の主張により、訂正発明1を当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
キ 優先権について
前記オで述べた判断は、本件特許の優先権主張の基礎とされた出願の日と原出願日の間に公知となった証拠を検討しても、訂正発明1が容易に発明をすることができたとはいえないというものであることから、仮に、訂正発明1の優先権主張の効果が認められないとしても、上記の判断に影響を与えるものではない。したがって、無効理由2の判断にあたり、訂正発明1の優先権主張の効果の有無についての判断を行わない。
(2) 訂正発明5ないし10について
訂正発明5ないし10は、訂正発明1において貧血の原因を特定するものであるが、前記(1)のとおり、訂正発明1が、甲第14号証、甲第15号証又は甲第16号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたということができないので、訂正発明5ないし10も、これらの発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

2 無効理由1
(1) 訂正発明1について
ア 甲第6号証に記載された発明
甲第6号証の表1にはFG-2179化合物の化学構造式が記載されている(前記第5の1(5)ア)。また、甲第6号証の図4aで、FG-2179を100μM使用した場合にpVHLのバンドが薄くなっていることから、FG-2179化合物は100μMでHIF PHを阻害するものと認められる(前記第5の1(5)イ及びウ)。さらに、甲第6号証には、「このシリーズのモデル化合物は、様々な細胞においてHIFを安定化し、・・・」、「HIF PHの阻害を介したHIFの安定化は、・・・」とも記載されている(前記第5の1(2)イ及び(6)ア)。ここで、上記PHとは前記第5の1(3)よりプロリルヒドロキシラーゼのことであり、また、HIF PHは、前記第5の1(2)ア及びイより、HIFのαサブユニット中のプロリン残基をヒドロキシル化する酵素と理解できるので、上記「HIF PHの阻害を介したHIFの安定化」における「HIF」は、「HIFのαサブユニット」、すなわち、「HIFα」のことである。
そうしてみると甲第6号証には、HIFプロリルヒドロキシラーゼを阻害し、HIFαを安定化するFG-2179化合物という発明が記載されているものと認められる。
イ 対比・判断
訂正発明1と甲第6号証に記載された発明を対比する。
訂正発明1におけるHIFプロリルヒドロキシラーゼの抑制と、甲第6号証に記載された発明におけるHIFプロリルヒドロキシラーゼの阻害は、ともに、HIFプロリルヒドロキシラーゼという酵素によるHIFαというペプチド中のプロリンがヒドロキシル化されることを妨げるという意味であり、両者は共通する。
そこで、訂正発明1において式(I)で特定される複素環式カルボキサミド化合物と、甲第6号証の表1に記載された化学構造式を有するFG-2179化合物を比較すると、訂正発明1における式(I)では、XはOであり、Aは-CH_(2)-であり、また、Bは-CO_(2)Hを含有することから、訂正発明1における式(I)で特定される複素環式カルボキサミド化合物は、置換基として、「-C(=O)-NH-CH_(2)-CO_(2)H基」を有する化合物を含有するところ、当該置換基は、甲第6号証の表1に記載されたFG-2179化合物のピリジン環の2位に結合する置換基に相当する。
したがって、両者は、
置換基「-C(=O)-NH-CH_(2)-CO_(2)H基」を有する複素環式化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制する点において一致し、
上記複素環が、訂正発明1ではキノリン(式(Ia)で表される化合物)又はイソキノリン(式(Ib)で表される化合物)であるのに対し、甲第6号証に記載された発明ではピリジンである点において相違し(相違点1)、また、
訂正発明1はFG-2179化合物を対象における貧血を治療するための薬剤の製造のために使用するもの、すなわち、訂正発明1はFG-2179化合物が貧血の治療という医薬用途を有するものであるのに対し、甲第6号証に記載された発明では、FG-2179化合物はHIFプロリルヒドロキシラーゼの酵素活性を抑制し、HIFαを安定化するという作用を有するものの、甲第6号証にはFG-2179化合物が貧血の治療に使用できることは記載されていない点において相違する(相違点2)。
そこで、上記相違点1について検討すると、この相違点1は前記(1)無効理由2の項で述べた相違点14-1と同じ相違点であるところ、当該相違点を容易想到ということはできないことは、前記1(1)オで述べたとおりである。
したがって、相違点2や、訂正発明1の優先権主張の効果が認められるか否かを検討するまでもなく、訂正発明1は甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(2) 訂正発明5ないし10について
訂正発明5ないし10は、いずれも訂正発明1において貧血の原因を特定するものである。しかし、前記(1)のとおり、訂正発明1は当業者が容易に発明をすることができたということはできないので、訂正発明5ないし10についても甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

3 無効理由3
請求人は、本件明細書の発明の詳細な説明には化学構造が極めて類似した僅かな化合物についての実施例しか記載されておらず、どのような構造の化合物であれば、貧血の治療に使用することができるのかを確認することは当業者に過度な実験を強いるものなので、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲に記載された数十億種類を超える複素環式カルボキサミド化合物が貧血の治療の使用できることをサポートする記載は発明の詳細な説明に存在しないので、本件の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨を主張する。
請求人の主張は、特許請求の範囲に含まれる式(I)で表される複素環式カルボキサミド化合物の数と比較して、実施例で実際に貧血治療を確認した化合物の数が少ないことを理由に、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号を満たしておらず、また、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号を満たしていないと主張するものである。しかし、このような特許請求の範囲の記載に対する実施例の多寡を理由として、本件特許が特許法第36条の規定する要件を満たしていないということはできない。

4 無効理由4
請求人は、特許請求の範囲に記載された複素環式カルボキサミド化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制することの試験の結果が発明の詳細な説明に記載されていないので、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないと主張するので、以下に検討する。
(1) 訂正発明1について
訂正発明1は、前記第3のとおりの、「対象における貧血を治療するための薬剤の製造における複素環式カルボキサミド化合物の使用であって、該複素環式カルボキサミド化合物が、HIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制し、式(I)(審決注:化学構造式は省略)で表される化合物、またはそれから誘導される生理的に活性な塩である、前記使用。」であるが、これは、式(I)で表される複素環式カルボキサミド化合物が、貧血の治療薬であることとHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制することとの2つの要件を満たす発明を特許請求したものである。そして、訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0017】には、「本発明は特に、対象における貧血を治療、予防または前治療する方法に関する。1つの実施形態においては、該方法は内因性EPOを増加させることを含み、これは、種々の実施形態においては、・・・HIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を抑制することなどを含む。」と記載されているところ、この記載によれば、訂正発明1における上記2つの要件の間の関係は、式(I)で表される複素環式カルボキサミド化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼの酵素活性を抑制することにより内因性EPOを増加させ、その結果、貧血の治療が可能であることと理解できる。そうしてみると、訂正発明1における「HIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制」とは、式(I)で表される複素環式カルボキサミド化合物による貧血治療という具体的な薬理作用の作用機序を述べたものと認められる。
ここで、甲第11号証には、細胞内酸素濃度が低酸素ではない状態では、HIF-1αはプロリルヒドロキシル化を受け、最終的にプロテアソームにより分解されるが、細胞内酸素濃度が低酸素の状態では、HIF-1αがHIF-1βと二量体化し、最終的に低酸素状態に対する生理学的反応を仲介するタンパク質の産生を導くことが記載されており(前記第5の8(3)ア)、同刊行物には、HIF-1の代表的な標的遺伝子としてエリスロポエチン(EPO)も記載されている(前記第5の8(2)ア)ところ、EPOが赤血球産生を刺激し、促進する点は、例えば、甲第7号証(前記第5の5(2))、甲第8号証(前記第5の6(2)及び(3))、甲第9号証(前記第5の7(3))及び甲第27号証(前記第5の11(2))に記載されているように周知の事項であることから、EPOの産生を導き、赤血球を増加させることによって貧血を治療する薬剤の作用機序の1つに、HIF-1αのプロリルヒドロキシル化の抑制によるHIF-1αの分解を抑制という機序を当業者が想定することは、本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物の記載から可能な事項であった。
一方、訂正明細書には実施例として、訂正発明1にかかる複素環式カルボキサミド化合物が、内因性EPOを増加させることが具体的に記載され(実施例1?3、7及び8)、また、貧血が治療されたことも具体的に記載されている(実施例2?4)。以上に述べた、本件特許の優先権主張日における技術水準と訂正明細書の記載を勘案すると、当該複素環式カルボキサミド化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼの酵素活性を抑制するという当該複素環式カルボキサミド化合物による貧血治療の作用機序についても、それが正しいものと合理的に推認することが、本件特許の原出願日において可能である。なお、当該複素環式カルボキサミド化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害作用を有する点は、平成22年11月11日付け手続補正書(方式)に添付された参考資料2(甲第13号証)においても確認することができる。
そうしてみると、訂正明細書の発明の詳細な説明には、訂正発明1にかかる複素環式カルボキサミド化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制することを示す具体的なデータが、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていなくとも、当該複素環式カルボキサミド化合物がHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制することは当業者であれば認識可能な事項であって、請求人の主張する理由によっては、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないということはできない。
(2) 訂正発明5ないし10について
訂正発明1と訂正発明5ないし10は、いずれも、HIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制する式(I)で表される複素環式カルボキサミド化合物の使用についての発明であり、請求人が指摘するHIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制することの試験結果が発明の詳細な説明に記載されていない点については、訂正発明1と訂正発明5ないし10では変わりはない。
そうしてみると、訂正発明1について、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号を満たしていない点は前記(1)で述べたとおりなので、訂正発明5ないし10についても、特許法第36条第4項第1号を満たしていない。

5 無効理由5
請求人は、訂正発明1における「ここでアリール基は、以下のものから選ばれる1?5個の置換基により置換されていてもよい:ハロゲン、シアノ、(C_(2)-C_(16))-アルキル、(C_(1)-C_(16))-アルコキシおよびカルバモイル」は、外国語書面に記載された事項でもなければ、当該書面に記載された事項から自明な事項でもない旨を主張(主張1)し、また、訂正発明1における式(I)で表される化合物は、外国語書面に記載された膨大な数の選択肢の大部分を削除して新たに作出されたものなので、これは外国語書面に記載された事項でもなければ、当該書面に記載された事項から自明な事項でもない旨を主張する(主張2)。
(1) 主張1について
請求人が指摘する記述は、本件訂正前の請求項1では、式(I)で表される化合物のR^(1)ないしR^(3)の選択肢における「アリール」の置換基を特定する場合と、R^(1)とR^(2)、又はR^(2)とR^(3)が、それらを含有するピリジンと一緒になって、式Ia又は式Ibで表される複素環を形成する際のR^(3)、R^(13)、R^(14)、R^(17)及びR^(18)の選択肢における「アリール」の置換基を特定する場合であった。そして、前者の場合については、外国語明細書の12頁50行?13頁32行に、「where an aryl radical may be substituted by 1 to 5 substituents selected from・・・halogen, cyano,・・・ (C_(2)-C_(16))-alkyl,・・・(C_(1)-C_(16))-alkoxy,・・・carbamoyl,」と記載されているので、外国語書面に記載された事項である。また、後者について、R^(1)とR^(2)、又はR^(2)とR^(3)が、それらを含有するピリジンと一緒になって、式Ia又は式Ibで表される複素環を形成してもよいこと、キノリン環を形成する場合の化学構造式はIaで、イソキノリン環を形成する場合の化学構造式はIbであることは、外国語明細書の14頁39?最終行に記載されているところ、外国語明細書の15頁上段のIa及びIbの化学構造式の下1?2行に、「the substituents R^(12) to R^(23) in each case independently of each other have the meaning of R^(1), R^(2) and R^(3)」と記載されおり、R^(3)、R^(13)、R^(14)、R^(17)及びR^(18)の選択肢における「アリール」の置換基は、前者の場合と同じであるということなので、後者の場合についても、外国語書面に記載された事項である。
請求人は、外国語明細書における上記「an aryl radical」がどの「アリール」を指しているのか不明であるとも主張する。しかし、外国語明細書では、10頁33行でYの要素を記述した後、1行間隔を空けて、R^(1)ないしR^(3)についての要素の説明が開始されており、上記「where an aryl radical may be substituted・・・」のフレーズは、このR^(1)ないしR^(3)の説明中のものであることは明らかなので、上記「an aryl radical」は、10頁34行からこのフレーズの直前までの全ての「アリール」のことを指していると理解するのが自然である。したがって、請求人の斯かる主張を採用することはできない。
(2) 主張2について
訂正発明1における式(I)で表される化合物の各置換基の要素について検討する。
ア Aについて
Aの要素「-CH_(2)-」は「(C_(1)-C_(4))-alkylene」(外国語明細書の6頁化学構造式の下2行)と記載されているところ、-CH_(2)-はC_(1)-alkyleneのことであり「(C_(1)-C_(4))-alkylene」に含まれることは明らかである。
イ Bについて
Bの要素「-CO_(2)H」は外国語明細書の6頁下から7行に記載され、また、「CO_(2)-Gカルボキシル基(ここでGはアルコールG-OHの基であり、Gは(C_(1)-C_(20))-アルキル基または(C_(7)-C_(16))-炭素環式アルアルキル基である)」は「B is a CO_(2)-G carboxyl radical, where G is a radical of an alcohol G-OH in which G is selected from (C_(1)-C_(20))-alkyl radical,・・・(C_(7)-C_(16))-carbocyclic aralkyl radical」(外国語明細書の6頁下から1行?7頁6行)と記載されている。
ウ X及びQについて
Xの要素「O」は外国語明細書の9頁24行に、Qの要素「O」は外国語明細書の9頁25行に、それぞれ記載されている。
エ R^(4)について
R^(4)については、外国語明細書の9頁27?31行に、「where, if Q is O・・・, R^(4) is hydrogen,・・・(C_(7)-C_(11))-aralkyl radical,」と記載されているところ、「水素」の場合は「hydrogen」と記載され、「ベンジル」の場合は「(C_(7)-C_(11))-aralkyl radical」と記載されているところ、ベンジルはC_(7)-aralkyl radicalのことであり「(C_(7)-C_(11))-aralkyl radical」に含まれることは明らかである。
オ Yについて
Yの要素「CR^(3)」は外国語明細書の10頁33行に記載されている。
カ R^(1)、R^(2)及びR^(3)について
まず、本件訂正前の請求項1におけるR^(1)、R^(2)及びR^(3)の要素「水素、ハロゲン、シアノ、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(18))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)」は、「R^(1), R^(2) and R^(3) are identical or different and are hydrogen,・・・halogen, cyano,・・・(C_(1)-C_(20))-alkyl,・・・(C_(6)-C_(12))-aryl, (C_(7)-C_(16))-aralkyl,・・・(C_(1)-C_(20))-alkoxy,・・・(C_(6)-C_(12))-aryloxy,・・・(C_(7)-C_(16))-aralkyloxy,・・・-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g),・・・carbamoyl, N-(C_(1)-C_(12))-alkylcarbamoyl,・・・N-((C_(1)-C_(18))-alkoxy-(C_(1)-C_(10))-alkyl)-carbamoyl,」(外国語明細書の10頁34行?11頁32行)と記載されており、また、f、g、xは外国語明細書の15頁式Idの化学構造式の下6?8行に記載されている。そして、R^(1)、R^(2)及びR^(3)の要素における「アリール」(アルアルキルすなわちアリールアルキル、アルアルキルオキシすなわちアリールアルキルオキシにおけるアリールを含む)が有してもよい置換基が外国語書面に記載されている点は、前記(1)のとおりである。
そして、R^(1)とR^(2)、又はR^(2)とR^(3)が、それらを含有するピリジンと一緒になって、式IaおよびIbから選ばれる複素環系を形成してもよいことは、外国語明細書の14頁39?最終行に、「where R^(1) and R^(2), or R^(2) and R^(3), together with the pyridine・・・carrying them, form an optionally substituted heterocyclic ring systems selected from・・・quinoline, isoquinoline,・・・; where quinoline, isoquinoline or・・・preferably satisfy the formulae Ia, Ib・・・:」と記載され、また15頁にIa及びIbの化学構造式が記載されている(審決注:外国語明細書におけるこれら化学構造式は省略)。ここで、外国語明細書の当該化学構造式の下には、「the substituents R^(12) to R^(23) in each case independently of each other have the meaning of R^(1), R^(2) and R^(3)」と記載されているところ、R^(1)ないしR^(3)の要素に水素が含まれることが外国語明細書に記載されていることは上記のとおりなので、訂正発明1の式Iaは、外国語明細書の15頁に示された式IaでR^(12)及びR^(15)が水素の場合であり、また、訂正発明1の式Ibは、外国語明細書の15頁に示された式IbでR^(16)及びR^(19)が水素の場合である。加えて、訂正発明1のR^(1)、R^(2)及びR^(3)の要素と、R^(13)、R^(14)、R^(17)及びR^(18)の要素は同じものであるところ、外国語明細書における上記「the substituents R^(12) to R^(23) in each case independently of each other have the meaning of R^(1), R^(2) and R^(3)」との記載と、上述したR^(1)、R^(2)及びR^(3)の要素が外国語明細書に記載されている点から、訂正発明1のR^(13)、R^(14)、R^(17)及びR^(18)の要素は、外国語明細書に記載されているということができる。
キ このように、訂正発明1における式(I)で表される化合物の各置換基の要素は、いずれのものも外国語書面に記載されたものである。そして、訂正発明1における式(I)で表される化合物は、外国語書面になんらの新たな技術的事項を導入するものではない。そうしてみると、外国語書面にマーカッシュ形式で記載された選択肢のいくつかを削除することにより、訂正発明1における式(I)で表される複素環式カルボキサミド化合物が外国語書面のマーカッシュ形式の記述とは完全に一致しないものになったとしても、そのことをもって、訂正発明1が外国語書面に記載した事項の範囲内にないということはできない。
(3) 小括
以上に述べたように、請求人の主張する理由により、本件の特許請求の範囲に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内ではないということはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張するいずれの無効理由にも理由がない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
内因性エリスロポエチン(EPO)を増加させる方法
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年1月16日付け出願の米国仮出願第60/349,659号、2002年6月5日付け出願の米国仮出願第60/386,488号、2001年12月6日付け出願の米国仮出願第60/337,082号および2002年2月25日付け出願の米国仮出願第60/359,683号の利益を主張するものであり、各出願は参照によってその全ての内容を本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、内因性エリスロポエチンをex vivoおよびin vivoで増加させる方法、ならびに該方法において使用しうる化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
天然に存在するホルモンであるエリスロポエチン(EPO)は、全身に酸素を運搬する赤血球の生成を刺激する。EPOは通常は腎臓により分泌され、内因性EPOは、減少した酸素(低酸素)の条件下で増加する。すべてのタイプの貧血は血液の酸素運搬能の低下により特徴づけられ、したがって、生活の質の低下を招く皮膚および粘膜の蒼白、虚弱、眩暈、易疲労性ならびに眠気を含む類似した徴候および症状に関連している。重度の貧血患者は呼吸困難および心臓異常を示す。貧血は、典型的には、赤血球またはヘモグロビンが不足した血液の状態に関連している。
【0004】
貧血の一般的原因には、鉄、ビタミンB_(12)および葉酸の不足が含まれる。貧血は、慢性疾患に関連して、例えば、骨髄の付随的炎症抑制を伴う障害を含む炎症障害などにおいて生じることもある。貧血は、例えば、事故、手術、またはアスピリンおよびイブプロフェンのような医薬により引き起こされる胃腸出血による失血により引き起こされることもある。過剰な失血は、重い月経期間中の女性、および胃潰瘍、十二指腸潰瘍、痔または胃もしくは大腸の癌などの患者においても見られることがある。
【0005】
種々の状態が赤血球の破壊(溶血)を引き起こして貧血を招きうる。例えば、細菌毒素および種々の化学物質(例えば、スルホンアミドおよびベンゼン)に対するアレルギー型反応が溶血を引き起こしうる。溶血性貧血は、しばしば、化学中毒、寄生虫、感染または鎌状赤血球貧血により引き起こされる。また、身体が自分自身の赤血球に対する抗体を産生して溶血を引き起こすという異常な場合もある。骨髄組織は赤血球産生、すなわち赤血球合成の場であるため、骨髄に対するいずれの疾患または損傷も貧血を引き起こしうる。照射、疾患または種々の化学物質も骨髄の破壊を引き起こして無形成貧血を引き起こしうる。化学療法を受けている癌患者は、しばしば、無形成貧血を示す。貧血は腎機能異常にも関連しており、貧血の重症度は該不全の程度と著しく相関する。透析を受けているほとんどの腎不全患者は慢性貧血に罹患する。
【0006】
エリスロポエチンは、腎臓で産生される以外に、中枢神経系(CNS)のアストロサイトおよびニューロンによっても産生され、EPOおよびEPO受容体は脳-末梢境界の毛細血管において発現される。さらに、全身投与されたEPOは血液脳関門を通過して、脳および脊髄虚血、機械的外傷、てんかん、興奮毒および神経炎症に応答したニューロン細胞の喪失を減少させる(Sakanaka (1998) Proc Natl Acad Sci USA 95:4635-4640;Celikら (2002) Proc Natl Acad Sci USA 99:2258-2263;Brinesら (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:10526-10531;Calapaiら (2000) Eur J Pharmacol 401:349-356;およびSirenら (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:4044-404)。
【0007】
1980年代後半、アムジェン(Amgen)は、慢性腎不全患者における貧血の治療のために、遺伝子操作されたEPOを導入した。輸血の必要性を減少させるために、放射線療法および/または化学療法を受けている癌患者にもEPOが投与される。EPOは、HIV感染またはアジドチミジン(AZT)療法に関連した貧血を治療するために使用される。EPO療法の市場は増大しているが、該製品の高いコストは将来の販売の支障となる。また、組換えEPO療法は12週までの週1?3回のEPOの静脈内投与を要し、そのような治療計画は自己投与を制限し、患者にとって不便である。さらに、ヒト血清EPOは、いずれの組換えヒトEPOにおいても再現されない広範かつ多様なグリコシル化のため、サイズの不均一性を示す。
【0008】
組換えEPOの現在の製造および使用における欠点のため、糖尿病、潰瘍、腎不全、癌、感染、透析、手術および化学療法に関連した貧血を含む貧血のようなエリスロポエチン関連状態の治療において有効な方法および化合物が依然として必要とされている。特に、内因性エリスロポエチンを増加させる方法および化合物が当技術分野において必要とされている。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、全般的には、内因性エリスロポエチンを増加させる方法に関する。1つの態様においては、本発明は、低酸素誘導性因子(hypoxia inducible factor)のαサブユニット(HIFα)を安定化させることを含む、対象における内因性エリスロポエチン(EPO)を増加させる方法を提供する。もう1つの態様においては、本発明は、HIFαのヒドロキシル化を抑制することを含む、対象における内因性EPOを増加させる方法を提供する。さらにもう1つの態様においては、2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性を抑制することを含む、対象における内因性EPOを増加させる方法を提供する。もう1つの態様においては、本発明は、HIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を抑制することを含む、対象における内因性EPOレベルを増加させる方法を提供する。
【0010】
種々の実施形態において、該対象は、動物、哺乳動物、ヒト、細胞、組織、器官などでありうる。
【0011】
1つの態様においては、本発明は、HIFαを安定化させることを含み、該安定化がin vivoで生じることを特徴とする、内因性EPOを増加させる方法を提供する。HIFαを安定化させることを含み、該安定化がin vitroで生じることを特徴とする、内因性EPOを増加させる方法も意図される。
【0012】
内因性HIFαを安定化する方法が意図される本発明の特定の実施形態においては、HIFαは、HIF-1α、HIF-2α、HIF-3αおよびそれらの任意の断片よりなる群から選ばれる。1つの実施形態においては、HIFαは対象にとって内因性である。
【0013】
2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性の抑制に関する本発明の方法においては、2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素が、EGLN1、EGLN2、EGLN3、プロコラーゲン プロリル 4-ヒドロキシラーゼ、プロコラーゲン プロリル 3-ヒドロキシラーゼ、プロコラーゲン リシル ヒドロキシラーゼ、PHD4、FIH-1およびそれらの任意のサブユニットまたは断片よりなる群から選ばれる種々の実施形態を提供する。HIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を抑制することを含む、内因性EPOを増加させる方法に関しては、HIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素が、EGLN1、EGLN2、EGLN3およびそれらの任意のサブユニットまたは断片よりなる群から選ばれる実施形態が意図される。
【0014】
内因性EPOを増加させるための本発明の好ましい方法は、内因性EPOを増加させる化合物を対象に投与することを含む。1つの態様においては、該化合物はHIFαを安定化する。もう1つの態様においては、該化合物はHIFαのヒドロキシル化を抑制する。もう1つの態様においては、該化合物は2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性を抑制する。特定の態様においては、該化合物はHIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を抑制する。
【0015】
ある実施形態においては、本発明は、対象における内因性EPOを増加させる方法であって、複素環式カルボキサミド、フェナントロリン、ヒドロキサマートならびにそれらから誘導された生理的に活性な塩およびプロドラッグよりなる群から選ばれる化合物を該対象に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態においては、該化合物は、ピリジンカルボキサミド、キノリンカルボキサミド、イソキノリンカルボキサミド、シンノリンカルボキサミドおよびβ-カルボリンカルボキサミドよりなる群から選ばれる複素環式カルボキサミドである。好ましい実施形態においては、該化合物を経口製剤の形態で対象に送達する。もう1つの好ましい実施形態においては、該化合物を経皮製剤として送達する。
【0016】
対象におけるEPO関連障害を治療、予防または前治療(pretreating)するための種々の方法を提供する。1つの態様においては、本発明は、内因性EPOを増加させることを含む、EPO関連障害を治療、予防または前治療する方法を提供する。もう1つの態様においては、HIFαを安定化させることを含む、対象におけるEPO関連障害を治療、予防または前治療する方法を提供する。本発明のもう1つの方法においては、対象におけるEPO関連障害を治療、予防または前治療する方法はHIFαのヒドロキシル化を抑制することを含む。さらにもう1つの態様においては、本発明は、2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性を抑制することを含む、対象におけるEPO関連障害を治療、予防または前治療する方法を提供する。本発明の好ましい態様においては、HIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を抑制することを含む、対象におけるEPO関連障害を治療、予防または前治療する方法が意図される。
【0017】
本発明は特に、対象における貧血を治療、予防または前治療する方法に関する。1つの実施形態においては、該方法は内因性EPOを増加させることを含み、これは、種々の実施形態においては、HIFαを安定化させること、2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性を抑制すること、HIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を抑制することなどを含む。
【0018】
1つの態様においては、本発明は、ヘモグロビンまたは赤血球の異常に関連した貧血の治療、予防および前治療/プレコンディショニングの方法を提供する。もう1つの態様においては、該貧血は、糖尿病、癌、潰瘍、腎臓病、免疫抑制性疾患、感染および炎症よりなる群から選ばれる状態に関連している。さらにもう1つの態様においては、該貧血は、放射線療法、化学療法、透析および手術よりなる群から選ばれる処置または治療に関連している。もう1つの態様においては、失血に関連した貧血の治療、予防および前治療/プレコンディショニングの方法を提供する。種々の態様において、失血は、出血障害、外傷、損傷、手術などに関連している。特定の実施形態においては、該貧血は鉄の輸送、処理または利用における欠陥に関連しうると意図される。内因性EPOを増加させることを含み、さらに、例えば鉄サプリメント、ビタミンB_(12)、葉酸、外因性エリスロポエチンおよび顆粒球コロニー刺激因子などよりなる群から選ばれる化合物を対象に投与することを含む、貧血を前治療/プレコンディショニング、予防または治療する方法も意図される。
【0019】
本発明は更に、内因性EPOを増加させることを含む、対象における神経障害を治療、予防または前治療する方法に関する。種々の態様において、該方法は、HIFαを安定化させること、2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性を抑制すること、およびHIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を抑制することを含む。本発明は、ある態様においては、該神経障害が、脳梗塞、外傷、てんかん及び神経変性疾患よりなる群から選ばれる状態に関連していると意図される。
【0020】
1つの実施形態においては、本発明は、内因性EPOを増加させることを含む、対象における酸素消費を増加させる方法を含む。
【0021】
対象における内因性EPOを増加させる化合物を同定する方法も提供する。1つの実施形態においては、本発明は、化合物を対象に投与し、該対象における又は該対象からのサンプルにおけるEPOを測定し、該対象または該サンプルにおけるEPOを標準と比較することを含み、該標準と比較した場合の該対象または該サンプルにおけるEPOの増加が、内因性EPOを増加させる化合物を示すことを特徴とする、内因性EPOを増加させる化合物を同定する方法を含む。
【0022】
本発明の方法は、ex vivo、例えば細胞培養において、またはin vivo、例えば動物において、内因性エリスロポエチンを増加させる。好ましくは、該動物は哺乳動物、例えばネコまたはイヌ、より好ましくは、該動物はヒトである、ある実施形態においては、本発明の方法は、腎臓組織、肝臓組織、造血組織および/または神経組織を含む(これらに限定されるものではない)組織における内因性エリスロポエチンの合成を増加させる。他の実施形態においては、神経障害および貧血含むエリスロポエチン関連状態を予防、前治療または治療するために、本発明の方法を使用する。貧血に関連したエリスロポエチン関連状態には、嚢胞腎、慢性腎不全、糖尿病、癌、潰瘍および免疫抑制状態、例えばエイズが含まれるが、これらに限定されるものではない。他の実施形態においては、放射線療法、化学療法、腎臓透析または手術を含む(これらに限定されるものではない)処置または治療に関連した貧血を治療するために、本発明の方法を使用する。特定の実施形態においては、ジドブジンまたは他の逆転写酵素阻害剤で治療されているHIV感染貧血患者における内因性エリスロポエチンレベルを増加させるために、本発明の方法を使用する。他の実施形態においては、環状シスプラチンまたは非シスプラチンによる化学療法を受けている貧血性癌患者における内因性エリスロポエチンを増加させるために、該方法を使用する。他の実施形態においては、選択的、非心臓、非血管手術を受ける予定の貧血患者における内因性エリスロポエチンレベルを増加させて同種輸血の必要性を軽減するために、または手術前の預血を促進するために、該方法を使用する。1つの特定の実施形態においては、例えば、大動脈クランピングを要する手術(例えば、胸腹部大動脈手術)のような処置の前の対象における内因性エリスロポエチンレベルを増加させるために、該方法を使用する。さらにもう1つの実施形態においては、細胞によりin vitroで産生された内因性エリスロポエチンを増加させるために、該方法を使用する。
【0023】
1つの態様においては、本発明は、内因性エリスロポエチン血漿レベルを増加させる化合物を提供する。1つの実施形態においては、該化合物またはその製薬上許容される塩の治療的に有効な量を、単独で又は製薬上許容される賦形剤と共に、エリスロポエチン関連状態を有する対象に投与する。もう1つの態様においては、該化合物またはその製薬上許容される塩の治療的に有効な量を、単独で又は製薬上許容される賦形剤と共に、貧血を有する患者に投与する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態は、経口および経皮送達メカニズムを用いる方法を含む。そのようなメカニズムは、現在の療法と比べた場合の利点、例えば、投与のし易さの改善、患者による自己投与の改善、コストの削減、来院回数の減少ならびに感染および免疫合併症によるリスクの軽減をもたらして、組換えEPOの投与に応答して幾人かの患者で生じる有害な反応を最小限に抑制しうる。1つの好ましい実施形態においては、本方法は、内因性エリスロポエチンレベルを増加させる化合物の経口投与を含む。したがって、本発明はまた、本発明の化合物を含む経口製剤を提供する。もう1つの好ましい実施形態においては、本方法は、内因性エリスロポエチンレベルを増加させる化合物の経皮投与を含む。したがって、本発明はまた、本発明の化合物を含む経皮パッチまたはパッドを提供する。
【0025】
もう1つの態様においては、本発明は、培養内の細胞により産生される内因性エリスロポエチンを増加させる化合物、およびin vitro細胞培養技術を用いてエリスロポエチンを製造するために該化合物を使用する方法を提供する。1つの実施形態においては、該方法は、該化合物またはその製薬上許容される塩の有効量を、エリスロポエチンの産生に適した条件下、培養内の細胞に加え、それにより産生されたエリスロポエチンを集め精製することを含む。エリスロポエチンをin vitroで産生する細胞の具体例には、肝細胞、例えばHep3B肝細胞癌細胞が含まれる。
【0026】
ある実施形態においては、本発明の方法において使用する化合物は、下記式(I)の化合物ならびにそれから誘導される生理的に活性な塩およびプロドラッグから選ばれる:
【化1】

[式中、
Aは、1,2-アリーリデン、1,3-アリーリデン、1,4-アリーリデンまたは(C_(1)-C_(4))-アルキレンであり、これは、所望により、1または2個の以下のものにより置換されていてもよい:ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(6))-ヒドロキシアルキル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、-O-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))Hal_(g)、(C_(1)-C_(6))-フルオロアルコキシ、(C_(1)-C_(8))-フルオロアルケニルオキシ、(C_(1)-C_(8))-フルオロアルキニルオキシ、-OCF_(2)Cl、-O-CF_(2)-CHFCl;(C_(1)-C_(6))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルホニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アニリノ、N-メチルアニリノ、フェニルメルカプト、フェニルスルホニル、フェニルスルフィニル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルファモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルファモイル;または置換されている(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(11))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル基[これは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、-O-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))Hal_(g)、-OCF_(2)Cl、-O-CF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(6))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルホニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルファモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルファモイルから選ばれる1?5個の同一または異なる置換基を該アリール部分中に含有する];あるいはAは-CR^(5)R^(6)であり、R^(5)およびR^(6)は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(7))-シクロアルキル、アリールから、またはαアミノ酸(ここで、該アミノ酸は天然のLアミノ酸またはそのD異性体である)のα炭素原子の置換基から選ばれる;
Bは、-CO_(2)H、-NH_(2)、-NHSO_(2)CF_(3)、テトラゾリル、イミダゾリル、3-ヒドロキシイソオキサゾリル、-CONHCOR’’’、-CONHSOR’’’、CONHSO_(2)R’’’であり、ここにおいて、R’’’は、アリール、ヘテロアリール、(C_(3)-C_(7))-シクロアルキルまたは(C_(1)-C_(4))-アルキルであり、これらは所望により、(C_(6)-C_(12))-アリール、ヘテロアリール、OH、SH、(C_(1)-C_(4))-アルキル、(C_(1)-C_(4))-アルコキシ、(C_(1)-C_(4))-チオアルキル、(C_(1)-C_(4))-スルフィニル、(C_(1)-C_(4))-スルホニル、CF_(3)、Cl、Br、F、I、NO2、-COOH、(C_(2)-C_(5))-アルコキシカルボニル、NH_(2)、モノ-(C_(1)-C_(4)-アルキル)-アミノ、ジ-(C_(1)-C_(4)-アルキル)-アミノまたは(C_(1)-C_(4))-ペルフルオロアルキルによりモノ置換されていてもよい;あるいはBは、CO_(2)-Gカルボキシル基であり、ここにおいて、GはアルコールG-OHの基であり、ここで、Gは以下のものから選ばれる:(C_(1)-C_(20))-アルキル基、(C_(3)-C_(8))シクロアルキル基、(C_(2)-C_(20))-アルケニル基、(C_(3)-C_(8))-シクロアルケニル基、レチニル基、(C_(2)-C_(20))-アルキニル基、(C_(4)-C_(20))-アルケニニル基(ここで、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルおよびアルケニニル基は1以上の多重結合を含有する);(C_(6)-C_(16))-炭素環式アリール基、(C_(7)-C_(16))-炭素環式アルアルキル基、ヘテロアリール基またはヘテロアルアルキル基(ここで、ヘテロアリール基、またはヘテロアルアルキル基のヘテロアリール部分は5または6個の環原子を含有する);ここにおいて、Gとして定義される基は、1以上の以下のものにより置換されている:ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(5)-C_(8))-シクロアルケニル、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(2)-C_(12))-アルケニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(1)-C_(8))-ヒドロキシアルキル、-O-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))-F_(g)、-OCF_(2)Cl、-OCF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニル、シンナモイル、(C_(2)-C_(12))-アルケニルカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニルカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニル、アシルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))アルアルキルオキシカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N.N-ジ(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-カルバモイル、N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))アルキル)-カルバモイル、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N.N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、アミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルアミノ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルアミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールアミノ、N-(C-C_(11))-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アリールアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルアミノ、(C_(6)-C_(12))アリールカルボニルアミノ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))アルキルアミノ、(C_(7)-C_(11))-アルアルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルキルカルボニルアミノ(C_(1)-C_(8))-アルキル、アミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N-(C_(1)-C_(10))アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N.N-ジ-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(3)-C_(8))シクロアルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルホニル、
(C_(6)-C_(16))-アリールメルカプト、(C_(6)-C_(16))-アリールスルフィニル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルホニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルファモイル、N.N-ジ(C_(1)-C_(10))-アルキルスルファモイル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルスルファモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アルキルスルファモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールスルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルファモイル、(C_(1)-C_(10))-アルキルスルホンアミド、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルホンアミド、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホンアミドまたはN-((C_(1)-C_(10))-アルキル-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホンアミド;ここにおいて、アリールである又はアリール部分を含有する基は、該アリール上で、1?5個の同一または異なる以下のものにより置換されていてもよい:ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1) C_(12))アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(1)-C_(8))-ヒドロキシアルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-カルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))アルアルキルカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルオキシ、シンナモイルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N.N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N.N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、アミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルケニルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルキニルアミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールアミノ、N-(C_(7)-C_(11))-アルアルキルアミノ、N-アルキルアルアルキルアミノ、N-アルキル-アリールアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルアミノ、(C_(7)-C_(16))-アルキルカルボニルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(7)-C_(11))-アルアルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、アミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))アルキル、N.N-ジ-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルホニル、(C_(6)-C_(12))-アリールメルカプト、(C_(6)-C_(12))-アリールスルフィニル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルホニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニルまたは(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル;
XはOまたはSである;
QはO、S、NR’または結合である;
ここで、Qが結合である場合には、R^(4)はハロゲン、ニトリルまたはトリフルオロメチルである;
あるいは、ここで、QがO、SまたはNR’である場合には、R^(4)は水素、(C_(1)-C_(10))-アルキル基、(C_(2)-C_(10))-アルケニル基、(C_(2)-C_(10))-アルキニル基(ここで、アルケニルまたはアルキニル基は1または2個のC-C多重結合を含有する);式-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))-F_(g)の不飽和フルオロアルキル基、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル基、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(1)-C_(4))-アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル基、または下記式Zの基:
-[CH_(2)]_(v)-[O]_(w)-[CH_(2)]_(t)-E (Z)
であり、
ここにおいて、
Eは、ヘテロアリール基、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル基、または下記式Fのフェニル基であり、
【化2】

vは0?6であり、
wは0または1であり、
tは0?3であり、
R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)およびR^(11)は、同一または異なって、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、-O-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))-F_(g)、-OCF_(2)-Cl、-O-CF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(6))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(6))-ヒドロキシアルキル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルホニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(8))-アルキルカルバモイルまたは(C_(7)-C_(11))-アルアルキルカルバモイルであり、これは、所望により、以下のものにより置換されていてもよい:フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニルオキシ、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、NR^(Y)R^(Z)[ここで、R^(y)およびR^(z)は、独立して、水素、(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(10))-シクロアルキル、(C_(3)-C_(12))-アルケニル、(C_(3)-C_(12))-アルキニル、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(7)-C_(12))アルアルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル、(C_(6)-C_(12))アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルから選ばれる;または更に、R^(y)とR^(z)とが一緒になって-[CH2]_(h)を形成しており、ここにおいて、CH_(2)基は、以下のものにより置換されていてもよい:O、S、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルボニルイミノまたはN-(C_(1)-C_(4))-アルコキシカルボニルイミノ];フェニルメルカプト、フェニルスルホニル、フェニルスルフィニル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルスルファモイルまたはN,N-ジ-(C_(1)-C_(8))-アルキルスルファモイル;あるいはR^(7)とR^(8)とが、またはR^(8)とR^(9)とが、またはR^(9)とR^(10)とが、またはR^(10)とR^(11)とが一緒になって、-[CH_(2)]_(n)-または-CH=CH-CH=CH-から選ばれる鎖を形成しており、ここにおいて、該鎖のCH_(2)基は、所望により、O、S、SO、SO_(2)またはNR^(Y)により置換されていてもよく、nは3、4または5である;そしてEがヘテロアリール基である場合には、この基は、R^(7)?R^(11)として定義された置換基から選ばれる1?3個の置換基を含有していてもよく、あるいはEがシクロアルキル基である場合には、この基は、R^(7)?R^(11)として定義された置換基から選ばれる1個の置換基を有していてもよい;
あるいは、ここで、QがNR’である場合には、R^(4)はR’’から選ばれ、ここで、R’およびR’’は、同一または異なって、水素、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル、(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルコキシ(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(10))-アルキルカルボニル、所望により置換されていてもよい(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルまたは所望により置換されていてもよい(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルであるか、またはR’とR’’とが一緒になって-[CH_(2)]_(h)を形成しており、ここにおいて、CH_(2)基は、O、S、N-アシルイミノまたはN-(C_(1)-C_(10))-アルコキシカルボニルイミノにより置換されていてもよく、hは3?7である;
YはNまたはCR^(3)である;
R^(1)、R^(2)およびR^(3)は、同一または異なって、以下のものである:水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(3)-C_(8))シクロアルキル-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(8))-アルキル-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルケニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキニル、(C_(2)-C_(20))-アルケニル、(C_(2)-C_(20))-アルキニル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(2)-C_(20))-アルケニルオキシ、(C_(2)-C_(20))-アルキニルオキシ、レチニルオキシ、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(1)-C_(16))-ヒドロキシアルキル、(C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(2)-C_(20))-アルケニルオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(2)-C_(20))-アルキニルオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、レチニルオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、-O-[CH_(2)]_(x)CfH_((2f+1-g))F_(g)、-OCF_(2)Cl、-OCF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(20))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニル、シンナモイル、(C_(2)-C_(20))-アルケニルカルボニル、(C_(2)-C_(20))-アルキニルカルボニル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(20))-アルケニルオキシカルボニル、レチニルオキシカルボニル、(C_(2)-C_(20))-アルキニルオキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルオキシ、シンナモイルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N,N-ジシクロ-(C_(3)-C_(8))-アルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N-((C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(6))-アルキル-N-((C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルキル)-カルバモイル、N-(+)-デヒドロアビエチルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(6))-アルキル-N-(+)-デヒドロアビエチルカルバモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(18))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル;CON(CH_(2))_(h)[ここで、CH_(2)基は、O、S、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(4))-アルキルイミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールイミノ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルイミノ、N-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキルイミノにより置換されていてもよく、hは3?7である];下記式Rのカルバモイル基、
【化3】

ここにおいて、
R^(x)およびR^(v)はそれぞれ独立して、水素、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(7))-シクロアルキル、アリール、またはLおよびDアミノ酸が属するαアミノ酸のα炭素の置換基であり、
sは1?5であり、
TはOHまたはNR^(*)R^(**)であり、R^(*)、R^(**)およびR^(***)は、同一または異なって、以下のものから選ばれる:水素、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル、(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(+)-デヒドロアビエチル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(10))-アルカノイル、所望により置換されていてもよい(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイル、所望により置換されていてもよい(C_(6)-C_(12))-アロイル;あるいはR^(*)とR^(**)とが一緒になって-[CH_(2)]_(h)を形成しており、ここにおいて、CH_(2)基は、O、S、SO、SO_(2)、N-アシルアミノ、N-(C_(1)-C_(10))-アルコキシカルボニルイミノ、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(4))-アルキルイミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールイミノ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルイミノ、N-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキルイミノにより置換されていてもよく、hは3?7である;
カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N,N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルケニルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルキニルアミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールアミノ、N-(C_(7)-C_(11))-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アリールアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アロイルアミノ、(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アロイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(7)-C_(11))-アルアルカノイルN-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アロイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、アミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N,N-ジ(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(20))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(20))-アルキルスルホニル、(C_(6)-C_(12))-アリールメルカプト、(C_(6)-C_(12))-アリールスルフィニル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルホニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルメルカプト-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルフィニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルホニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールメルカプト-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルフィニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルホニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルファモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルファモイル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルスルファモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アリールスルファモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールスルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルファモイル、(C_(1)-C_(10))-アルキルスルホンアミド、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルホンアミド、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホンアミドおよびN-((C_(1)-C_(10))-アルキル-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホンアミド;ここにおいて、アリール基は、以下のものから選ばれる1?5個の置換基により置換されていてもよい:ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、(C_(2)-C_(16))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(8))-アルキル-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(2)-C_(16))-アルケニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニル、(C_(1)-C_(16))-アルコキシ、(C_(1)-C_(16))-アルケニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(1)-C_(8))-ヒドロキシアルキル、(C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、-OCF_(2)Cl、-OCF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルオキシ、シンナモイルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N,N-ジシクロ-(C_(3)-C_(8))-アルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N-((C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルキル)カルバモイル、N-(C_(1)-C_(6))-アルキル-N-((C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルキル)カルバモイル、N-(+)-デヒドロアビエチルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(6))-アルキル-N-(+)-デヒドロアビエチルカルバモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(16))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-((C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、CON(CH_(2))_(h)[ここにおいて、CH_(2)基は、O、S、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(4))-アルキルイミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールイミノ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルイミノ、N-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキルイミノにより置換されていてもよく、hは3?7である];カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N,N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、アミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルケニルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルキニルアミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールアミノ、N-(C_(7)-C_(11))-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アリールアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アロイルアミノ、(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アロイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(7)-C_(11))-アルアルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アロイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、アミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルホニル、(C_(6)-C_(16))-アリールメルカプト、(C_(6)-C_(16))-アリールスルフィニル、(C_(6)-C_(16))-アリールスルホニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニルまたは(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル;
あるいは、ここで、R^(1)とR^(2)とは、またはR^(2)とR^(3)とは鎖[CH_(2)]_(o)を形成しており、この鎖は飽和鎖またはC=C二重結合による不飽和鎖であり、ここにおいて、1個または2個のCH_(2)基が、所望により、O、S、SO、SO_(2)またはNR’により置換されていてもよく、R’は、水素、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(10))-アルカノイル、所望により置換されていてもよい(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイル、または所望により置換されていてもよい(C_(6)-C_(12))-アロイルである;oは3、4または5である;
あるいは、ここで、基R^(1)とR^(2)とは、またはR^(2)とR^(3)とは、それらを含有するピリジンまたはピリダジンと一緒になって、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン環、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン環または5,6,7,8-テトラヒドロシンノリン環を形成している;
あるいは、ここで、R^(1)とR^(2)とは、またはR^(2)とR^(3)とは、炭素環式または複素環式5または6員芳香族環を形成している;
あるいは、ここで、R^(1)とR^(2)とは、またはR^(2)とR^(3)とは、それらを含有するピリジンまたはピリダジンと一緒になって、チエノピリジン、フラノピリジン、ピリドピリジン、ピリミジノピリジン、イミダゾピリジン、チアゾロピリジン、オキサゾロピリジン、キノリン、イソキノリンおよびシンノリンから選ばれる所望により置換されていてもよい複素環系を形成しており、ここにおいて、キノリン、イソキノリンまたはシンノリンは、好ましくは、下記式Ia、IbおよびIcを満足する;
【化4】

各場合の置換基R^(12)?R^(23)は、互いに独立して、R^(1)、R^(2)およびR^(3)と同意義を有する:
あるいは、ここで、基R^(1)とR^(2)とは、それらを含有するピリジンと一緒になって、下記式Idの化合物を形成しており:
【化5】

ここにおいて、VはS、OまたはNR^(k)であり、R^(k)は、水素、(C_(1)-C_(6))-アルキル、アリールまたはベンジルから選ばれる;ここにおいて、アリール基は、所望により、前記で定義された1?5個の置換基により置換されていてもよい;
各場合のR^(24)、R^(25)、R^(26)およびR^(27)は、互いに独立して、R^(1)、R^(2)およびR^(3)と同意義を有する:
fは1?8である;
gは0または1?(2f+1)である;
xは0?3である;および
hは3?7である]。
【0027】
いくつかの実施形態においては、前記の式(I)の化合物には以下の化合物が含まれるが、それらに限定されるものではない:N-((6-(1-ブチルオキシ)-3-ヒドロキシキノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((6-クロロ-3-ヒドロキシキノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((3-ヒドロキシ-6-(2-プロピルオキシ)-キノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、およびN-((7-クロロ-3-ヒドロキシキノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、[(3-メトキシ-ピリジン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキサデシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド塩酸塩、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((2-ノニルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド ラセミ化合物、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘプチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-((ベンジルオキシカルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-ラウリルオキシ)-プロピル)アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ベンジルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキサデシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド塩酸塩、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((2-ノニルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド ラセミ化合物、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘプチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-((ベンジルオキシカルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミドおよび5-(((3-ラウリルオキシ)-プロピル)アミノ)-カルボニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ベンジルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド。他の実施形態においては、前記の式(Ia)の化合物には以下の化合物が含まれるが、それらに限定されるものではない:N-((6-(1-ブチルオキシ)-3-ヒドロキシキノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((6-クロロ-3-ヒドロキシキノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((3-ヒドロキシ-6-(2-プロピルオキシ)-キノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((7-クロロ-3-ヒドロキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、[(3-ベンジルオキシ-7-クロロ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、[(3-ヒドロキシ-6-イソプロポキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、[(3-ヒドロキシ-6-フェノキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、および[(3-ヒドロキシ-6-トリフルオロメトキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸。さらに他の実施形態においては、前記の式(Ib)の化合物には以下の化合物が含まれるが、それらに限定されるものではない:N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-(2-プロピルオキシ)イソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((7-ブロモ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ)-酢酸、N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-6-(2-プロピルオキシ)イソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-メトキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-6-メトキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、[(7-ブトキシ-1-クロロ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、N-((7-ベンジルオキシ-1-クロロ-4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((6-ベンジルオキシ-1-クロロ-4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、[(1-クロロ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、N-((8-クロロ-4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、および[(7-ブトキシ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸。
【0028】
1つの態様においては、本発明の化合物は、腎臓組織、肝臓組織、造血組織および/または神経組織のような組織におけるエリスロポエチンの合成をin vivoまたはex vivoで増加させることにより内因性エリスロポエチン血漿レベルを増加させる。1つの実施形態においては、該化合物は、低酸素誘導性因子のαサブユニット(HIFα)のヒドロキシル化を抑制して細胞内のHIFを安定化することにより、エリスロポエチン合成を増加させる。1つの特定の実施形態においては、該物質はHIF-1αのP_(564)残基または別のHIFαイソ型の相同プロリンのヒドロキシル化を抑制する。もう1つの特定の実施形態においては、該物質はHIF-1αのP_(402)残基または別のHIFαイソ型の相同プロリンのヒドロキシル化を抑制する。さらにもう1つの実施形態においては、該化合物は更に、HIFαのアスパラギン残基のヒドロキシル化を抑制しうる。1つの特定の実施形態においては、該物質はHIF-1αのN_(803)残基または別のHIFαイソ型の相同アスパラギン残基のヒドロキシル化を抑制する。
【0029】
本発明はまた、目的とする化合物を例えば動物または培養細胞に投与し、例えばそれぞれ血液またはコンディショニング培地内のエリスロポエチンを測定することを含む、内因性エリスロポエチン血漿レベルを増加させる化合物を同定する方法を提供する。未処理対照と比較した場合の処理動物または細胞におけるEPOの増加は、内因性EPOを増加させる化合物を示すものである。あるいは、該方法は、細胞内のHIFαを安定化することによりエリスロポエチンの合成を間接的に増加させる化合物を同定する。
【0030】
本発明の方法および化合物は、種々の他の治療アプローチと組合せて適用することが可能である。1つの実施形態においては、該化合物は、鉄サプリメント、例えば硫酸第一鉄、ビタミンB_(12)および/または葉酸と共に投与する。もう1つの実施形態においては、該化合物は、外因性エリスロポエチン、例えば組換えヒトエリスロポエチンおよび/または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、例えば組換えG-CSFの投与と組合せて投与する。
【0031】
本発明の上記および他の実施形態については、当業者であれば本明細書における開示内容を考慮して容易に理解され、そのような実施形態はいずれも具体的に想到される。
【0032】
発明の説明
本発明の組成物および方法を説明する前に、本発明は、説明されている様々に変更可能な特定の方法論、プロトコール、細胞系、アッセイおよび試薬に限定されるものではないと理解されるべきである。また、本明細書中で用いる用語は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図したものであり、添付の特許請求の範囲に記載のとおりの本発明の範囲を何ら限定するものではないと理解されるべきである。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる単数表現は、文脈と明らかに矛盾しない限り、複数物に対する言及をも含むことに注目すべきである。したがって、例えば、「断片」に対する言及は、複数のそのような断片を含み、「抗体」に対する言及は、1以上の抗体および当業者に公知のその等価体を指すなどである。
【0034】
特に示さない限り、本明細書中で用いるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているのと同じ意義を有する。本発明の実施または試験においては、本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を使用することが可能であるが、以下においては、好ましい方法、装置および材料(物質)を記載する。本明細書中に引用されているすべての刊行物の全体を、該刊行物に報告されており本発明において使用しうる方法、試薬および手段を記載し開示する目的で、参照により本明細書に組み入れることとする。本明細書に記載のいずれの刊行物も、本発明が先行発明としてそのような開示に先行するものではないと認めることを示すものではない。
【0035】
本発明の実施においては、特に示さない限り、当分野の技術の範囲内の、化学、生化学、分子生物学、遺伝学、免疫学、遺伝学および薬理学の通常の方法を用いる。そのような技術は文献に十分に説明されている。例えば、Gennaro,A.R.編,(1990) Remington’s Pharmaceutical Sciences,18^(th) ed.,Mack Publishing Co.;ColowickらMethods In Enzymology,Academic Press,Inc.;Handbook of Experimental Immunology,Vols.I-IV (D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,(1986) Blackwell Scientific Publications);Maniatisら (1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2^(nd) edition,Vols.I-III,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら (1999) Short Protocols in Molecular Biology,4^(th) edition,John Wiley & Sons;Reamら編,(1998) Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course,Academic Press);PCR(Introduction to Biotechniques Series),2nd ed.(Newton & Graham編,(1997),Springer Verlag)を参照されたい。
【0036】
定義
本明細書中で用いる「貧血」という用語は、血中酸素レベルの低下を招く、ヘモグロビンまたは赤血球の任意の異常を意味する。貧血は、赤血球および/またはヘモグロビンの異常な産生、プロセシングまたは機能発現に関連している可能性がある。貧血という用語は、正常な血液レベルと比較した場合の血中の赤血球数および/またはヘモグロビンレベルの任意の減少を意味する。
【0037】
貧血は、種々の病態、例えば急性または慢性の腎臓病、感染、炎症、癌、照射、毒素、糖尿病および手術により生じうる。感染は、例えばウィルス、細菌および/または寄生虫などによるものでありうる。炎症は、感染、自己免疫障害、例えば慢性関節リウマチなどによるものでありうる。また、貧血は、例えば胃潰瘍、十二指腸潰瘍、痔、胃または大腸の癌、外傷、損傷、手術などによる失血に関連している可能性もある。貧血は更に、放射線療法、化学療法および腎臓透析に関連している。貧血は、アジドチミジン(ジドブジン)または他の逆転写酵素阻害剤で治療されているHIV感染貧血患者にも関連しており、例えば環状シスプラチンまたは非シスプラチン含有化学療法剤での化学療法を受けている癌患者においても生じうる。無形成貧血および骨髄形成異常症候群は、赤血球産生の減少を引き起こす骨髄不全に関連した疾患である。さらに、貧血は、例えば小赤血球性貧血、低色素性貧血などを含む障害における、ヘモグロビンまたは赤血球の欠陥または異常から生じうる。貧血は、鉄の輸送、処理および利用における障害から生じうる。例えば、鉄血症性貧血などを参照されたい。
【0038】
「障害(disorder)」および「疾患(disease)」および「病態(condition)」という用語は包括的に用いられており、正常から逸脱した任意の状態を意味する。
【0039】
「貧血状態」および「貧血障害」という用語は、貧血に関連した任意の状態、疾患または障害を意味する。そのような障害には、前記の障害が含まれるが、これらに限定されるものではない。貧血障害には更に、無形成貧血、自己免疫性溶血性貧血、骨髄移植、チャーグ・シュトラウス症候群、ダイアモンド・ブラックファン貧血、ファンコニ貧血、フェルティー症候群、移植片対宿主病、造血幹細胞移植、溶血性尿毒症性症候群、骨髄形成異常症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症、骨髄線維症、汎血球減少症、真性赤血球系無形成症、シェンライン・ヘノッホ紫斑病、鉄芽球性貧血、過剰な芽細胞を伴う不応性貧血、慢性関節リウマチ、シュバックマン症候群、鎌状赤血球病、タラセミアマヨル、タラセミアミノル、血小板減少性紫斑病などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
「エリスロポエチン関連状態」という用語は包括的に用いられており、エリスロポエチンの正常未満、異常または不適当なモジュレーションに関連した任意の状態を意味する。エリスロポエチン関連状態には、EPOレベルの増加が治療利益をもたらす任意の状態が含まれる。そのような状態に関連したエリスロポエチンのレベルは、当業者により認められ利用されている任意の手段により測定することができる。エリスロポエチン関連状態には、前記のような貧血状態が含まれる。
【0041】
エリスロポエチン関連状態には更に、エリスロポエチンが神経保護効果をもたらしうる神経障害および/または損傷、例えば脳梗塞、外傷、てんかん、神経変性疾患などのケースが含まれる。本発明により意図される神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などが含まれる。
【0042】
「エリスロポエチン」という用語は、任意の組換えエリスロポエチンまたは天然に存在するエリスロポエチンを意味し、例えば、ヒトエリスロポエチン(GenBank Accession No. AAA52400;Linら (1985) Proc Natl Acad Sci USA 82:7580-7584)、EPOETINヒト組換えエリスロポエチン (Amgen,Inc.,Thousand Oaks CA)、ARANESPヒト組換えエリスロポエチン(Amgen)、PROCRITヒト組換えエリスロポエチン (Ortho Biotech Products,L.P.,Raritan NJ) などを含む。
【0043】
「HIFα」という用語は低酸素誘導性因子タンパク質のαサブユニットを意味する。HIFαは、任意のヒトまたは他の哺乳類タンパク質、その断片、例えばヒトHIF-1α(GenBank Accession No. Q16665)、HIF-2α (GenBank Accession No. AAB41495)およびHIF-3α (GenBank Accession No. AAD22668);マウスHIF-1α (GenBank Accession No. Q61221)、HIF-2α (GenBank Accession No. BAA20130およびAAB41496)およびHIF-3α (GenBank Accession No. AAC72734);ラットHIF-1α(GenBank Accession No. CAA70701)、HIF-2α (GenBank Accession No. CAB96612) およびHIF-3α (GenBank Accession No. CAB96611);ウシHIF-1α (GenBank Accession No. BAA78675) でありうる。HIFαはまた、任意の非哺乳類タンパク質またはその断片、例えばアフリカツメガエル(Xenopus laevis) HIF-1α (GenBank Accession No. CAB96628)、キイロショウジョウバエ (Drosophila melanogaster) HIF-1α (GenBank Accession No. JC4851)およびニワトリHIF-1α (GenBank Accession No. BAA34234)でありうる。HIFα遺伝子配列は、例えば、別の種におけるHIFα遺伝子の配列を回収し決定するためにプローブとして前記のHIFα遺伝子配列の全部または一部を使用することによる通常のクローニング技術によっても得ることが可能である。
【0044】
HIFαの断片には、HIFαの機能的または構造的特徴の少なくとも1つを保有する任意の断片が含まれる。HIFαの断片は、例えば、ヒトHIF-1αのアミノ酸401-603 (Huangら,前掲)、アミノ酸531-575 (Jiangら (1997) J Biol Chem 272:19253-19260)、アミノ酸556-575 (Tanimotoら,前掲)、アミノ酸557-571 (Srinivasら (1999) Biochem Biophys Res Commun 260:557-561) およびアミノ酸556-575 (IvanおよびKaelin (2001) Science 292:464-468) により決定される領域を含む。さらに、HIFα断片には、例えばヒトHIF-1α天然配列のL_(397)TLLAPおよびL_(559)EMLAPにおいて見出されるモチーフLXXLAPの出現の少なくとも1つを含有する任意の断片が含まれる。例えば、実施例9のスクリーニングアッセイにおいて使用するHIFペプチドは、[メトキシクマリン]--DLDLEALAPYIPADDDFQL-アミド(配列番号5)を含みうる。
【0045】
本明細書中で用いる「アミノ酸配列」または「ポリペプチド」という用語は、例えばHIFαおよびその断片を意味し、オリゴペプチド、ペプチドもしくはタンパク質配列またはこれらのいずれかの断片、および天然に存在する分子または合成分子を含む。「断片」は、該タンパク質の構造的または機能的特徴の少なくとも1つを保有する配列の任意の部分を意味しうる。免疫原性断片または抗原断片は、少なくとも1つの生物学的または免疫学的活性を保有するポリペプチド断片、好ましくは約5?15アミノ酸長の断片である。「アミノ酸配列」が、天然に存在するタンパク質分子のポリペプチド配列を意味するものとして用いられている場合、「アミノ酸配列」および類似の用語は、該アミノ酸配列を、挙げられているタンパク質分子に関連した完全な天然配列に限定するものではない。
【0046】
本明細書中で用いる「関連タンパク質」という用語は、例えば、HIFαプロリルヒドロキシラーゼに関連したタンパク質を意味し、他の2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素、特に、ヒドロキシラーゼ活性を維持するのに同様にFe^(2+)、2-オキソグルタル酸および酸素を必要とするファミリーメンバーを含む。そのような酵素には、例えば、プロコラーゲンリシルヒドロキシラーゼ、プロコラーゲン プロリル 4-ヒドロキシラーゼ、およびHIF抑制因子 (FIH) (HIFαのトランス活性化の調節をもたらすアスパラギニルヒドロキシラーゼ)が含まれるが、これらに限定されるものではない(GenBank Accession No. AAL27308;Mahonら (2001) Genes Dev 15:2675-2686;Landoら (2002) Science 295:858-861;およびLandoら (2002) Genes Dev 16:1466-1471;また、Elkinsら (2002) J Biol Chem C200644200なども参照されたい)。
【0047】
「HIFプロリルヒドロキシラーゼ」および「HIF PH」という用語は、HIFタンパク質中のプロリン残基をヒドロキシル化しうる任意の酵素を意味する。好ましくは、HIF PHによりヒドロキシル化されるプロリン残基には、例えば、ヒトHIF-1α天然配列のL_(397)TLLAPおよびL_(559)EMLAPに存在する、モチーフLXXLAP内で見出されるプロリンが含まれる。HIF PHには、Taylor (2001,Gene 275:125-132)により記載されておりAravindおよびKoonin (2001,Genome Biol 2:RESEARCH0007)、Epsteinら (2001,Cell 107:43-54) ならびにBruickおよびMcKnight (2001,Science 294:1337-1340) により特徴づけられているEgl-Nine (EGLN) 遺伝子ファミリーのメンバーが含まれる。HIF PH酵素の具体例には、ヒトSM-20 (EGLN1) (GenBank Accession No. AAG33965;Dupuyら (2000) Genomics 69:348-54)、EGLN2イソ型1 (GenBank Accession No. CAC42510;Taylor,前掲)、EGLN2イソ型2(GenBank Accession No. NP_060025)およびEGLN3(GenBank Accession No. CAC42511;Taylor,前掲);マウスEGLN1(GenBank Accession No. CAC42515)、EGLN2(GenBank Accession No. CAC42511)およびEGLN3 (SM-20) (GenBank Accession No. CAC42517);ならびにラットSM-20 (GenBank Accession No. AAA19321) が含まれる。また、HIF PHには、セノルハブディチス・エレガンス (Caenorhabditis elegans) EGL-9 (GenBank Accession No. AAD56365) およびキイロショウジョウバエ (Drosophila melanogaster) CG1114遺伝子産物 (GenBank Accession No. AAF52050) が含まれうる。HIF PHにはまた、少なくとも1つの構造的または機能的特徴を保有する、前記の完全長タンパク質の任意の断片が含まれる。
【0048】
「アゴニスト」という用語は、特定の分子の効果の持続時間を増加または延長させる分子を意味する。アゴニストには、標的分子の効果を増強するタンパク質、核酸、炭水化物または他の任意の分子が含まれうる。
【0049】
「アンタゴニスト」という用語は、特定の分子の生物学的または免疫学的活性の効果の度合または持続時間を減少させる分子を意味する。アンタゴニストには、標的分子の効果を減少させるタンパク質、核酸、炭水化物、抗体または他の任意の分子が含まれうる。
【0050】
「マイクロアレイ」という用語は、核酸、アミノ酸、抗体などの、基体上の任意の配置を意味する。該基体は、任意の適当な支持体、例えばビーズ、ガラス、紙、ニトロセルロース、ナイロンまたは任意の適当な膜などでありうる。基体は、任意の硬質または半硬質支持体、例えば膜、フィルター、ウェハー、チップ、スライド、繊維、ビーズ、例えば磁性ビーズまたは非磁性ビーズ、ゲル、チュービング、プレート、高分子、微粒子、毛管など(これらに限定されるものではない)でありうる。該基体は、コーティングのための表面となることが可能であり、および/または、核酸、アミノ酸などが結合しうるウェル、ピン、トレンチ、チャンネルおよび孔のような種々の表面形態を有することが可能である。
【0051】
本明細書中で用いる「賦形剤」という用語は、医薬製品または他の錠剤の製造に使用される不活性物質を意味し、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、圧縮/カプセル化補助剤、クリーム剤またはローション剤、滑沢剤、非経口剤(parenteral)、甘味剤または香味剤、懸濁化/ゲル化剤あるいは湿式顆粒化剤として使用される任意の物質を含むが、これらに限定されるものではない。結合剤には、例えばカーボポール、ポビドン、キサンタンガムなどが含まれる。コーティング剤には、例えばセルロース アセタート フタラート、エチルセルロース、ゲランガム、マルトデキストリンなどが含まれる。圧縮/カプセル化補助剤には、例えば炭酸カルシウム、デキストロース、フルクトースdc、ハチミツdc、ラクトース(無水物または一水和物;場合によってはアスパルテーム、セルロースまたは微晶質セルロースと組合されうる)、デンプンdc、スクロースなどが含まれる。崩壊剤には、例えばクロスカルメロースナトリウム、ゲランガム、ナトリウム デンプン グリコラートなどが含まれる。クリーム剤およびローション剤には、例えばマルトデキストリン、カラギーナンなどが含まれる。滑沢剤には、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ナトリウム ステアリル フマラートなどが含まれる。咀嚼錠用の物質には、例えばデキストロース、フルクトースdc、ラクトース(無水物;場合によってはアスパルテームまたはセルロースと組合されうる)などが含まれる。非経口剤には、例えばマンニトール、ポビドンなどが含まれる。可塑剤には、例えばジブチルセバカート、ポリビニルアセタート フタラートなどが含まれる。懸濁化/ゲル化剤には、例えばカラギーナン、ナトリウム デンプン グリコラート、キサンタンガムなどが含まれる。甘味剤には、例えばアスパルテーム、デキストロース、フルクトースdc、ソルビトール、スクロースdcなどが含まれる。湿式顆粒化剤には、例えば炭酸カルシウム、モルトデキストリン、微晶質セルロースなどが含まれる。
【0052】
本明細書中で用いる「負荷量」という用語は、所望の薬理学的レベルを迅速に達成するために最初に投与される1回量または複数回量を意味する。例えば、本発明の方法に関する負荷量は、例えば本発明の化合物の血漿中濃度を薬学的に活性なレベルにまで迅速に増加させる初期用量を意味する。
【0053】
本明細書中で用いる「誘導量」という用語は、所望の生理的応答を迅速に達成するために最初に投与される反復用量強度を意味する。例えば、本発明の方法に関する誘導量は、ヘマトクリットまたはヘモグロビンレベルを目標範囲(これは正常ヘマトクリット/ヘモグロビンレベル以下でありうる)内まで迅速に増加させるための初期用量を意味する。
【0054】
本明細書中で用いる「維持量」という用語は、所望の生理的応答を維持するために負荷量または誘導量の投与後に投与される用量レベルを意味する。例えば、本発明の方法に関する維持量は、ヘマトクリットおよび/またはヘモグロビンを所望の目標範囲(これは正常ヘマトクリット/ヘモグロビンレベル以下でありうる)内に維持する用量を意味する。
【0055】
「サンプル」という用語は、本明細書においてはその最も広い意義で用いられている。サンプルは、任意の起源、例えば体液、分泌物、組織、細胞または培養内の細胞、例えば唾液、血液、尿、血清、血漿、硝子体液、滑液、脳脊髄液、羊水および器官組織(例えば、生検組織)(それらに限定されるものではない);染色体、オルガネラ、または細胞から単離された他の膜;ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNAなど;ならびに清澄化細胞もしくは組織、またはそのような細胞もしくは組織由来のブロットもしくはインプラントに由来しうる。サンプルは、任意の起源、例えばヒト対象、非ヒト哺乳類対象などに由来しうる。また、疾患の任意の動物モデルに由来するサンプルも意図される。サンプルは溶解していることが可能であり、あるいは例えば基体に固定されている又は結合していることが可能である。サンプルは、エリスロポエチンもしくはHIFαまたはそれらの断片の存在に関する試験に適した或いはエリスロポエチンもしくはHIFαまたはそれらの断片の内因性レベルを増加させる分子に関するスクリーニングに適した任意の物質を意味しうる。そのようなサンプルの入手方法は当技術分野の技術水準の範囲内である。
【0056】
「対象(subject)」という用語は、本明細書においてはその最も広い意義で用いられている。対象には、単離された細胞(原核細胞または真核細胞)、または培養内で培養された組織が含まれうる。ある実施形態においては、対象は、動物、特に、ラット、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス、ウマおよび霊長類、特にヒトを含む哺乳類種から選ばれる動物である。
【0057】
本発明
本発明は、内因性エリスロポエチン(EPO)を増加させる方法を提供する。これらの方法は、in vivo、例えば血漿において、またはin vitro、例えば細胞培養コンディショニング培地において適用することが可能である。本発明は更に、例えば貧血および神経障害に関連した状態を含むEPO関連状態を予防、前処理または治療するために内因性EPOレベルを増加させる方法を提供する。貧血に関連した状態には、急性または慢性腎臓病、糖尿病、癌、潰瘍、ウィルス、例えばHIV、細菌または寄生虫による感染、炎症などのような障害が含まれる。貧血状態には更に、例えば放射線療法、化学療法、透析および手術を含む処置または治療に関連したものが含まれうる。貧血に関連した障害には更に、小赤血球性貧血、低色素性貧血、無形成貧血などのような障害で見られる、ヘモグロビンおよび/または赤血球の異常が含まれる。
【0058】
本発明は、特定の治療または処置を予防的または同時に受けている対象、例えば、アジドチミジン(ジドブジン)または他の逆転写酵素阻害剤で治療されているHIV感染貧血患者、環状シスプラチンまたは非シスプラチン含有化学療法剤の投与を受けている貧血性癌患者、あるいは手術を受ける予定の貧血または非貧血患者において内因性EPOを増加させるために使用することができる。内因性EPOを増加させる方法は、脳梗塞、外傷、てんかん、脊髄損傷および神経変性傷害を含む(これらに限定されるものではない)神経損傷または神経組織変性に関連したEPO関連状態を予防、前処理または治療するためにも使用することができる。
【0059】
また、該方法は、手術を受ける予定の貧血または非貧血患者における内因性EPOレベルを増加させて同種輸血の必要性を軽減するために、または手術前の預血を促進するために使用することができる。典型的に手術前自己献血の後で見られるヘマトクリットの僅かな減少は、内因性EPOにおける又は補償的赤血球産生における増強を刺激しない。しかし、内因性EPOの手術前刺激は、より高いヘマトクリットレベルを維持しながら赤血球量および自己献血容量を有効に増加させるであろう。したがって、そのような方法が本発明において特に意図される。いくつかの被手術者集団、特に、手術において2リットルを超える失血を被る個体においては、同種血液曝露(allogeneic blood exposure)を減少させるために本発明の方法を提供することが可能であろう (Crosby (2002) Amer J Therap 9:371-376)。
【0060】
また、運動機能を向上させ、運動能力を改善し、有酸素コンディショニングを促進または増強するために、本発明の方法を使用することが可能である。そのような方法は、例えば、運動選手がトレーニングを促進するために、また、軍人が例えば持久力および耐久性を改善するために使用することが可能である。
【0061】
本発明の方法は、in vitroで処理された培養細胞からの培地における及びin vivoで処理された動物からの血漿における内因性エリスロポエチンレベルを増加させることが示されている。腎臓は体内のエリスロポエチンの主要供給源であるが、脳、肝臓および骨髄を含む他の器官も、適当な刺激の後にエリスロポエチンを合成する能力を有し、実際にそれを合成する。本発明の方法を使用して、脳、腎臓および肝臓を含む種々の身体器官における内因性エリスロポエチンの発現を増強することが可能である。実際に、本発明の方法は、両側腎摘除を受けた動物においても内因性エリスロポエチンレベルを増加させる。
【0062】
腎機能が損なわれている場合でさえエリスロポエチンレベルを増加させることが可能であることを、本発明の方法は示している。本発明は、エリスロポエチンが産生されるメカニズムによって限定されるものではないが、典型的には腎不全中に見られるエリスロポエチン分泌の減少は、通過/再潅流の増加による腎臓組織における高酸素状態によるものでありうる (Priyadarshiら (2002) Kidney Int 61:542-546)。
【0063】
さらに、本発明の方法は、in vivoで処理された動物におけるヘマトクリットおよび血中ヘモグロビンレベルを増加させる。本発明の方法において使用する化合物に応答した血漿EPO、ヘマトクリットおよび血中ヘモグロビンの増加は用量感受性であるが、本発明の化合物に対する一定の制御された応答レベルを与える用量計画を確立することが可能である。さらに、本発明の化合物による治療は、例えば、化学療法剤シスプラチンのような毒性化合物により誘発された又は失血(例えば、外傷、損傷、寄生虫または手術)による貧血を治療しうる。
【0064】
本発明の化合物で処理された動物におけるヘマトクリットおよび血中ヘモグロビンの増加は、血中循環未熟赤血球(網状赤血球)の割合が増加した後に生じる。本質的には、本発明は、例えばPelhamおよびJackson (1976,Eur J Biochem 67:247-256)により記載されている、無細胞網状赤血球ライセート産生のための動物血液中の網状赤血球レベルを増加させる方法における本発明の化合物の使用を意図する。本発明の化合物の単体またはそれと別の化合物(例えば、アセチルフェニルヒドラジンなど)との組合せ体での処理により、動物、例えばウサギなどにおける循環網状赤血球レベルを増加させる。その血液を集め、網状赤血球を遠心分離によりペレット化し、蒸留水で細胞溶解する。当業者に公知の任意の適当な方法を用いて(例えば、JacksonおよびHunt (1983) Methods Enzymol 96:50-74を参照されたい)、抽出物を更に処理する。
【0065】
本発明はまた、本発明の方法を使用して鉄の輸送、処理および利用を増強することを意図するものである(例えば、同時付け出願の共有同時係属米国特許出願第____号(発明の名称“低酸素誘導性因子(HIF)-αの安定化”)(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)。特に、本発明の方法は、鉄の取り込み、輸送および処理に関与する酵素およびタンパク質を増加させうる。そのような酵素およびタンパク質には、トランスフェリンおよびトランスフェリン受容体(それらは一緒になって、例えば赤芽球組織への鉄の輸送および赤芽球組織による鉄の取り込みを促進する)、ならびに第一鉄を第二鉄に酸化するのに必要なフェロオキシダーゼであるセルロプラスミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。トランスフェリンは第二鉄にのみ結合し第二鉄のみを輸送しうるため、セルロプラスミンは組織への鉄の供給に重要である。本発明の方法は、内因性エリスロポエチンと鉄の輸送および利用との両方を単一の治療過程で増強しうるため、慢性関節リウマチ、鉄芽球性貧血など(これらに限定されるものではない)を含む貧血障害の治療において、現在の貧血治療方法(例えば、組換えエリスロポエチンの投与)によっては検討されていない利益が得られる。
【0066】
本発明は、内因性エリスロポエチンが誘導される方法によっては限定されないが、該化合物が内因性エリスロポエチンの合成を増強する1つの特に意図されるメカニズムとして、低酸素誘導性因子のαサブユニット(HIFα)のヒドロキシル化を抑制することによるものが挙げられる。より詳しくは、該化合物は、HIFαのプロリン残基、例えばHIF-1αのP_(564)残基または別のHIFαイソ型の相同プロリン、あるいはHIF-1αのP_(402)残基または別のHIFαイソ型の相同プロリンのヒドロキシル化を抑制する。また、該化合物は、HIFαのアスパラギン残基、例えばHIF-1αのN_(803)残基または別のHIFαイソ型の相同アスパラギン残基のヒドロキシル化を抑制するためにも使用することが可能である。
【0067】
HIFαは、酸素とFe2^(+)とを要する反応であるヒドロキシル化により修飾されるため、本発明の1つの態様においては、HIFαのヒドロキシル化を引き起こす酵素は2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼファミリーのメンバーであると意図される。そのような酵素には、プロコラーゲンリシルヒドロキシラーゼ、プロコラーゲンプロリル3-ヒドロキシラーゼ、プロコラーゲンプロリル4-ヒドロキシラーゼα(I)およびα(II)、チミン7-ヒドロキシラーゼ、アスパルチル (アスパラギニル) β-ヒドロキシラーゼ、ε-N-トリメチルリシンヒドロキシラーゼ、γ-ブチロベタインヒドロキシラーゼなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの酵素は、そのヒドロキシラーゼ活性の発現のためには酸素、Fe2^(+)、2-オキソグルタル酸およびアスコルビン酸を要する(例えば、Majamaaら (1985) Biochem J 229:127-133;MyllyharjuおよびKivirikko (1997) EMBO J 16:1173-1180;Thornburgら (1993) 32:14023-14033;ならびにJiaら (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:7227-7231を参照されたい)。
【0068】
プロリル4-ヒドロキシラーゼの小分子インヒビターのいくつかが同定されている(例えば、Majamaaら,前掲;KivirikkoおよびMyllyharju (1998) Matrix Biol 16:357-368;Bickelら (1998) Hepatology 28:404-411;Friedmanら (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:4736-4741;ならびにFranklinら (2001) Biochem J 353:333-338を参照されたい;それらのすべての全体を参照により本明細書に組み入れることとする)。本発明は、本明細書に記載の方法におけるこれらの化合物の使用を意図するものである。
【0069】
本発明の方法において使用しうる化合物には、例えば、2-オキソグルタル酸の構造模擬体が含まれる。そのような化合物は、2-オキソグルタル酸に関しては競合的に、また、鉄に関しては非競合的に、標的2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼファミリーメンバーを抑制しうる(Majamaaら (1984) Eur J Biochem 138:239-45;およびMajamaaら,前掲)。
【0070】
ある実施形態においては、本発明の方法において使用する化合物は、下記式(I)の化合物ならびにそれから誘導される生理的に活性な塩およびプロドラッグから選ばれる:
【化6】

[式中、
Aは、1,2-アリーリデン、1,3-アリーリデン、1,4-アリーリデンまたは(C_(1)-C_(4))-アルキレンであり、これは、所望により、1または2個の以下のものにより置換されていてもよい:ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(6))-ヒドロキシアルキル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、-O-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))Hal_(g)、(C_(1)-C_(6))-フルオロアルコキシ、(C_(1)-C_(8))-フルオロアルケニルオキシ、(C_(1)-C_(8))-フルオロアルキニルオキシ、-OCF_(2)Cl、-O-CF_(2)-CHFCl;(C_(1)-C_(6))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルホニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アニリノ、N-メチルアニリノ、フェニルメルカプト、フェニルスルホニル、フェニルスルフィニル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルファモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルファモイル;または置換されている(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(11))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル基[これは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、-O-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))Hal_(g)、-OCF_(2)Cl、-O-CF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(6))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルホニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルファモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルファモイルから選ばれる1?5個の同一または異なる置換基を該アリール部分中に含有する];あるいはAは-CR^(5)R^(6)であり、R^(5)およびR^(6)は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(7))-シクロアルキル、アリールから、またはαアミノ酸(ここで、該アミノ酸は天然のLアミノ酸またはそのD異性体である)のα炭素原子の置換基から選ばれる;
Bは、-CO_(2)H、-NH_(2)、-NHSO_(2)CF_(3)、テトラゾリル、イミダゾリル、3-ヒドロキシイソオキサゾリル、-CONHCOR’’’、-CONHSOR’’’、CONHSO_(2)R’’’であり、ここにおいて、R’’’は、アリール、ヘテロアリール、(C_(3)-C_(7))-シクロアルキルまたは(C_(1)-C_(4))-アルキルであり、これらは所望により、(C_(6)-C_(12))-アリール、ヘテロアリール、OH、SH、(C_(1)-C_(4))-アルキル、(C_(1)-C_(4))-アルコキシ、(C_(1)-C_(4))-チオアルキル、(C_(1)-C_(4))-スルフィニル、(C_(1)-C_(4))-スルホニル、CF_(3)、Cl、Br、F、I、NO2、-COOH、(C_(2)-C_(5))-アルコキシカルボニル、NH_(2)、モノ-(C_(1)-C_(4)-アルキル)-アミノ、ジ-(C_(1)-C_(4)-アルキル)-アミノまたは(C_(1)-C_(4))-ペルフルオロアルキルによりモノ置換されていてもよい;あるいはBは、CO_(2)-Gカルボキシル基であり、ここにおいて、GはアルコールG-OHの基であり、ここで、Gは以下のものから選ばれる:(C_(1)-C_(20))-アルキル基、(C_(3)-C_(8))シクロアルキル基、(C_(2)-C_(20))-アルケニル基、(C_(3)-C_(8))-シクロアルケニル基、レチニル基、(C_(2)-C_(20))-アルキニル基、(C_(4)-C_(20))-アルケニニル基(ここで、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルおよびアルケニニル基は1以上の多重結合を含有する);(C_(6)-C_(16))-炭素環式アリール基、(C_(7)-C_(16))-炭素環式アルアルキル基、ヘテロアリール基またはヘテロアルアルキル基(ここで、ヘテロアリール基、またはヘテロアルアルキル基のヘテロアリール部分は5または6個の環原子を含有する);ここにおいて、Gとして定義される基は、1以上の以下のものにより置換されている:ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(5)-C_(8))-シクロアルケニル、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(2)-C_(12))-アルケニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(1)-C_(8))-ヒドロキシアルキル、-O-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))-F_(g)、-OCF_(2)Cl、-OCF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニル、シンナモイル、(C_(2)-C_(12))-アルケニルカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニルカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニル、アシルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))アルアルキルオキシカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N.N-ジ(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-カルバモイル、N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))アルキル)-カルバモイル、N-((C_(7)-_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N.N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、アミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルアミノ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルアミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールアミノ、N-(C-C_(11))-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アリールアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルアミノ、(C_(6)-C_(12))アリールカルボニルアミノ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))アルキルアミノ、(C_(7)-C_(11))-アルアルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルキルカルボニルアミノ(C_(1)-C_(8))-アルキル、アミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N-(C_(1)-C_(10))アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N.N-ジ-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(3)-C_(8))シクロアルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルホニル、
(C_(6)-C_(16))-アリールメルカプト、(C_(6)-C_(16))-アリールスルフィニル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルホニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルファモイル、N.N-ジ(C_(1)-C_(10))-アルキルスルファモイル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルスルファモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アルキルスルファモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールスルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルファモイル、(C_(1)-C_(10))-アルキルスルホンアミド、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルホンアミド、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホンアミドまたはN-((C_(1)-C_(10))-アルキル-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホンアミド;ここにおいて、アリールである又はアリール部分を含有する基は、該アリール上で、1?5個の同一または異なる以下のものにより置換されていてもよい:ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1) C_(12))アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(1)-C_(8))-ヒドロキシアルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-カルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))アルアルキルカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルオキシ、シンナモイルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N.N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N.N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、アミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルケニルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルキニルアミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールアミノ、N-(C_(7)-C_(11))-アルアルキルアミノ、N-アルキルアルアルキルアミノ、N-アルキル-アリールアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルアミノ、(C_(7)-C_(16))-アルキルカルボニルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(7)-C_(11))-アルアルキルカルボニル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、アミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))アルキル、N.N-ジ-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルホニル、(C_(6)-C_(12))-アリールメルカプト、(C_(6)-C_(12))-アリールスルフィニル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルホニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニルまたは(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル;
XはOまたはSである;
QはO、S、NR’または結合である;
ここで、Qが結合である場合には、R^(4)はハロゲン、ニトリルまたはトリフルオロメチルである;
あるいは、ここで、QがO、SまたはNR’である場合には、R^(4)は水素、(C_(1)-C_(10))-アルキル基、(C_(2)-C_(10))-アルケニル基、(C_(2)-C_(10))-アルキニル基(ここで、アルケニルまたはアルキニル基は1または2個のC-C多重結合を含有する);式-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))-F_(g)の不飽和フルオロアルキル基、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル基、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(1)-C_(4))-アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル基、または下記式Zの基であり、
-[CH_(2)]_(v)-[O]_(w)-[CH_(2)]_(t)-E (Z)
ここにおいて、
Eは、ヘテロアリール基、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル基、または下記式Fのフェニル基であり、
【化7】

vは0?6であり、
wは0または1であり、
tは0?3であり、
R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)およびR^(11)は、同一または異なって、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、-O-[CH_(2)]_(x)-C_(f)H_((2f+1-g))-F_(g)、-OCF_(2)-Cl、-O-CF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(6))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(6))-ヒドロキシアルキル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルスルホニル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(8))-アルキルカルバモイルまたは(C_(7)-C_(11))-アルアルキルカルバモイルであり、これは、所望により、以下のものにより置換されていてもよい:フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、(C_(1)-C_(6))-アルキルカルボニルオキシ、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、NR^(Y)R^(Z)[ここで、R^(y)およびR^(z)は、独立して、水素、(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(10))-シクロアルキル、(C_(3)-C_(12))-アルケニル、(C_(3)-C_(12))-アルキニル、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(7)-C_(12))アルアルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル、(C_(6)-C_(12))アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルから選ばれる;または更に、R^(y)とR^(z)とが一緒になって-[CH2]_(h)を形成しており、ここにおいて、CH_(2)基は、以下のものにより置換されていてもよい:O、S、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルボニルイミノまたはN-(C_(1)-C_(4))-アルコキシカルボニルイミノ];フェニルメルカプト、フェニルスルホニル、フェニルスルフィニル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルスルファモイルまたはN,N-ジ-(C_(1)-C_(8))-アルキルスルファモイル;あるいはR^(7)とR^(8)とが、またはR^(8)とR^(9)とが、またはR^(9)とR^(10)とが、またはR^(10)とR^(11)とが一緒になって、-[CH_(2)]_(n)-または-CH=CH-CH=CH-から選ばれる鎖を形成しており、ここにおいて、該鎖のCH_(2)基は、所望により、O、S、SO、SO_(2)またはNR^(Y)により置換されていてもよく、nは3、4または5である;そしてEがヘテロアリール基である場合には、この基は、R^(7)?R^(11)として定義された置換基から選ばれる1?3個の置換基を含有していてもよく、あるいはEがシクロアルキル基である場合には、この基は、R^(7)?R^(11)として定義された置換基から選ばれる1個の置換基を有していてもよい;
あるいは、ここで、QがNR’である場合には、R^(4)はR’’から選ばれ、ここで、R’およびR’’は、同一または異なって、水素、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル、(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルコキシ(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(10))-アルキルカルボニル、所望により置換されていてもよい(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルまたは所望により置換されていてもよい(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルであるか、またはR’とR’’とが一緒になって-[CH_(2)]_(h)を形成しており、ここにおいて、CH_(2)基は、O、S、N-アシルイミノまたはN-(C_(1)-C_(10))-アルコキシカルボニルイミノにより置換されていてもよく、hは3?7である;
YはNまたはCR^(3)である;
R^(1)、R^(2)およびR^(3)は、同一または異なって、以下のものである:水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(3)-C_(8))シクロアルキル-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(8))-アルキル-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルケニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキニル、(C_(2)-C_(20))-アルケニル、(C_(2)-C_(20))-アルキニル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(2)-C_(20))-アルケニルオキシ、(C_(2)-C_(20))-アルキニルオキシ、レチニルオキシ、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(1)-C_(16))-ヒドロキシアルキル、(C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(2)-C_(20))-アルケニルオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(2)-C_(20))-アルキニルオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、レチニルオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、-O-[CH_(2)]_(x)CfH_((2f+1-g))F_(g)、-OCF_(2)Cl、-OCF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(20))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニル、シンナモイル、(C_(2)-C_(20))-アルケニルカルボニル、(C_(2)-C_(20))-アルキニルカルボニル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(20))-アルケニルオキシカルボニル、レチニルオキシカルボニル、(C_(2)-C_(20))-アルキニルオキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルオキシ、シンナモイルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N,N-ジシクロ-(C_(3)-C_(8))-アルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N-((C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(6))-アルキル-N-((C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルキル)-カルバモイル、N-(+)-デヒドロアビエチルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(6))-アルキル-N-(+)-デヒドロアビエチルカルバモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(18))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル;CON(CH_(2))_(h)[ここで、CH_(2)基は、O、S、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(4))-アルキルイミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールイミノ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルイミノ、N-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキルイミノにより置換されていてもよく、hは3?7である];下記式Rのカルバモイル基、
【化8】

ここにおいて、
R^(x)およびR^(v)はそれぞれ独立して、水素、(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(7))-シクロアルキル、アリール、またはLおよびDアミノ酸が属するαアミノ酸のα炭素の置換基であり、
sは1?5であり、
TはOHまたはNR^(*)R^(**)であり、R^(*)、R^(**)およびR^(***)は、同一または異なって、以下のものから選ばれる:水素、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(11))-アルアルキル、(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(+)-デヒドロアビエチル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(10))-アルカノイル、所望により置換されていてもよい(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイル、所望により置換されていてもよい(C_(6)-C_(12))-アロイル;あるいはR^(*)とR^(**)とが一緒になって-[CH_(2)]_(h)を形成しており、ここにおいて、CH_(2)基は、O、S、SO、SO_(2)、N-アシルアミノ、N-(C_(1)-C_(10))-アルコキシカルボニルイミノ、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(4))-アルキルイミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールイミノ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルイミノ、N-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキルイミノにより置換されていてもよく、hは3?7である;
カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N,N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイルオキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルケニルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルキニルアミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールアミノ、N-(C_(7)-C_(11))-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アリールアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アロイルアミノ、(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アロイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(7)-C_(11))-アルアルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アロイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、アミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N,N-ジ(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(20))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(20))-アルキルスルホニル、(C_(6)-C_(12))-アリールメルカプト、(C_(6)-C_(12))-アリールスルフィニル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルホニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルメルカプト-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルフィニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルホニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールメルカプト-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルフィニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールスルホニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル-(C_(1)-C_(6))-アルキル、スルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルファモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルファモイル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルスルファモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アリールスルファモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールスルファモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルファモイル、(C_(1)-C_(10))-アルキルスルホンアミド、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)-(C_(1)-C_(10))-アルキルスルホンアミド、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホンアミドおよびN-((C_(1)-C_(10))-アルキル-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホンアミド;ここにおいて、アリール基は、以下のものから選ばれる1?5個の置換基により置換されていてもよい:ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、カルボキシル、(C_(2)-C_(16))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(8))-アルキル-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(2)-C_(16))-アルケニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニル、(C_(1)-C_(16))-アルコキシ、(C_(1)-C_(16))-アルケニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、(C_(1)-C_(8))-ヒドロキシアルキル、(C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキル、-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)、-OCF_(2)Cl、-OCF_(2)-CHFCl、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニル、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルボニルオキシ、シンナモイルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-(C_(1)-C_(12))-アルコキシカルボニルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシカルボニルオキシ、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシカルボニルオキシ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルコキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルケニルオキシカルボニルオキシ、(C_(2)-C_(12))-アルキニルオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N,N-ジシクロ-(C_(3)-C_(8))-アルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイル、N-((C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルキル)カルバモイル、N-(C_(1)-C_(6))-アルキル-N-((C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(6))-アルキル)カルバモイル、N-(+)-デヒドロアビエチルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(6))-アルキル-N-(+)-デヒドロアビエチルカルバモイル、N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイル、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(16))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-((C_(6)-C_(16))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、CON(CH_(2))_(h)[ここにおいて、CH_(2)基は、O、S、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルイミノ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキル-(C_(1)-C_(4))-アルキルイミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールイミノ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルイミノ、N-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(1)-C_(6))-アルキルイミノにより置換されていてもよく、hは3?7である];カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N,N-ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(6)-C_(16))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(6)-C_(12))-アリールカルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-(C_(7)-C_(16))-アルアルキルカルバモイルオキシ、N-((C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(1)-C_(10))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、N-(C_(1)-C_(10))-アルキル-N-((C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)カルバモイルオキシ、アミノ、(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(12))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルケニルアミノ、(C_(3)-C_(12))-アルキニルアミノ、N-(C_(6)-C_(12))-アリールアミノ、N-(C_(7)-C_(11))-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アルアルキルアミノ、N-アルキル-アリールアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルコキシ-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アロイルアミノ、(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(6)-C_(12))-アロイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(7)-C_(11))-アルアルカノイル-N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(12))-アルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アロイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、アミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(10))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(3)-C_(8))-シクロアルキルアミノ-(C_(1)-C_(10))-アルキル、(C_(1)-C_(12))-アルキルメルカプト、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(12))-アルキルスルホニル、(C_(6)-C_(16))-アリールメルカプト、(C_(6)-C_(16))-アリールスルフィニル、(C_(6)-C_(16))-アリールスルホニル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルメルカプト、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルフィニルまたは(C_(7)-C_(16))-アルアルキルスルホニル;
あるいは、ここで、R^(1)とR^(2)とは、またはR^(2)とR^(3)とは鎖[CH_(2)]_(o)を形成しており、この鎖は飽和鎖またはC=C二重結合による不飽和鎖であり、ここにおいて、1個または2個のCH_(2)基が、所望により、O、S、SO、SO_(2)またはNR’により置換されていてもよく、R’は、水素、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(8))-アルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(7)-C_(12))-アルアルコキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ-(C_(1)-C_(8))-アルキル、(C_(1)-C_(10))-アルカノイル、所望により置換されていてもよい(C_(7)-C_(16))-アルアルカノイル、または所望により置換されていてもよい(C_(6)-C_(12))-アロイルである;oは3、4または5である;
あるいは、ここで、基R^(1)とR^(2)とは、またはR^(2)とR^(3)とは、それらを含有するピリジンまたはピリダジンと一緒になって、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン環、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン環または5,6,7,8-テトラヒドロシンノリン環を形成している;
あるいは、ここで、R^(1)とR^(2)とは、またはR^(2)とR^(3)とは、炭素環式または複素環式5または6員芳香族環を形成している;
あるいは、ここで、R^(1)とR^(2)とは、またはR^(2)とR^(3)とは、それらを含有するピリジンまたはピリダジンと一緒になって、チエノピリジン、フラノピリジン、ピリドピリジン、ピリミジノピリジン、イミダゾピリジン、チアゾロピリジン、オキサゾロピリジン、キノリン、イソキノリンおよびシンノリンから選ばれる所望により置換されていてもよい複素環系を形成しており、ここにおいて、キノリン、イソキノリンまたはシンノリンは、好ましくは、下記式Ia、IbおよびIcを満足する;
【化9】

各場合の置換基R^(12)?R^(23)は、互いに独立して、R^(1)、R^(2)およびR^(3)と同意義を有する:
あるいは、ここで、基R^(1)とR^(2)とは、それらを含有するピリジンと一緒になって、下記式Idの化合物を形成しており、
【化10】

ここにおいて、VはS、OまたはNR^(k)であり、R^(k)は、水素、(C_(1)-C_(6))-アルキル、アリールまたはベンジルから選ばれる;ここにおいて、アリール基は、所望により、前記で定義された1?5個の置換基により置換されていてもよい;
各場合のR^(24)、R^(25)、R^(26)およびR^(27)は、互いに独立して、R^(1)、R^(2)およびR^(3)と同意義を有する:
fは1?8である;
gは0または1?(2f+1)である;
xは0?3である;および
hは3?7である]。
【0071】
式(I)で表される代表的化合物は欧州特許番号EP0650960およびEP0650961に記載されている。EP0650960およびEP0650961に記載のすべての化合物、特に、化合物の特許請求の範囲に記載の化合物および実施例の最終生成物を、参照により本明細書に組み入れることとする。それに含まれる代表的化合物として、[(3-メトキシ-ピリジン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸が挙げられる。
【0072】
また、式(I)で表される代表的化合物は米国特許第5,658,933号に記載されている。米国特許第5,658,933号に記載のすべての化合物、特に、化合物の特許請求の範囲に記載の化合物および実施例の最終生成物を、参照により本明細書に組み入れることとする。式(I)の代表的化合物には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキサデシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド 塩酸塩、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((2-ノニルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド ラセミ化合物、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘプチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-((ベンジルオキシカルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、および5-(((3-ラウリルオキシ)-プロピル)アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ベンジルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド。
【0073】
式(I)で表される更なる化合物としては、米国特許第5,620,995号に記載の置換複素環式カルボキシアミド、米国特許第6,020,350号に記載の3-ヒドロキシピリジン-2-カルボキサミドエステル、米国特許第5,607,954号に記載のスルホンアミドカルボニルピリジン-2-カルボキサミド、ならびに米国特許第5,610,172号および第5,620,996号に記載のスルホンアミドカルボニル-ピリジン-2-カルボキサミドおよびスルホンアミドカルボニル-ピリジン-2-カルボキシエステルアミドが挙げられる。これらの特許に記載のすべての化合物、特に、化合物の特許請求の範囲に記載の化合物および実施例の最終生成物を、参照により本明細書に組み入れることとする。式(I)の代表的化合物には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキサデシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド 塩酸塩、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((2-ノニルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド ラセミ化合物、3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘプチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-((ベンジルオキシカルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、および5-(((3-ラウリルオキシ)-プロピル)アミノ)-カルボニル)-3-メトキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ベンジルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド。
【0074】
また、式(I)の代表的化合物には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキサデシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド 塩酸塩、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘキシルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((2-ノニルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド ラセミ化合物、3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ヘプチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((オクチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、3-ベンジルオキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-((ベンジルオキシカルボニル)-メチル)-アミド、5-(((3-(1-ブチルオキシ)-プロピル)-アミノ)-カルボニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((1-ブチルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド、および5-(((3-ラウリルオキシ)-プロピル)アミノ)-カルボニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸 N-(((ベンジルオキシ)-カルボニル)-メチル)-アミド。
【0075】
式(Ia)で表される代表的化合物は米国特許第5,719,164号および第5,726,305号に記載されている。該特許に記載のすべての化合物、特に、化合物の特許請求の範囲に記載の化合物および実施例の最終生成物を、参照により本明細書に組み入れることとする。式(Ia)の代表的化合物には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:N-((6-(1-ブチルオキシ)-3-ヒドロキシキノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((6-クロロ-3-ヒドロキシキノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((3-ヒドロキシ-6-(2-プロピルオキシ)-キノリン-2-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((7-クロロ-3-ヒドロキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、[(3-ベンジルオキシ-7-クロロ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸(化合物D)、[(3-ヒドロキシ-6-イソプロポキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸(化合物E)、[(3-ヒドロキシ-6-フェノキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸(化合物F)、および[(3-ヒドロキシ-6-トリフルオロメトキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸(化合物G)。
【0076】
式(Ib)で表される代表的化合物は米国特許第6,093,730号に記載されている。米国特許第6,093,730号に記載のすべての化合物、特に、化合物の特許請求の範囲に記載の化合物および実施例の最終生成物を、参照により本明細書に組み入れることとする。式(Ib)の代表的化合物には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-(2-プロピルオキシ)イソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((7-ブロモ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ)-酢酸、N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-6-(2-プロピルオキシ)イソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-メトキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン(化合物J)、N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-6-メトキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、[(7-ブトキシ-1-クロロ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、N-((7-ベンジルオキシ-1-クロロ-4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、N-((6-ベンジルオキシ-1-クロロ-4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、[(1-クロロ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸(化合物C)、N-((8-クロロ-4-ヒドロキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、[(4-ヒドロキシ-7-イソプロポキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸(化合物H)、[(7-ブトキシ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸(化合物I)、および[(1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-イソプロポキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸(化合物K)。
【0077】
また、本発明の方法において使用する化合物としては、Majamaaら (1984,Eur J Biochem 138:239-245;および1985,Biochem J 229:127-133)、KivirikkoおよびMyllyharju (1998,Matrix Biol 16:357-368)、Bickelら (1998,Hepatology 28:404-411)、Friedmanら(2000,Proc Natl Acad Sci USA 97:4736-4741)ならびにFranklinら (2001,Biochem J 353:333-338)(それらのすべての全体を参照により本明細書に組み入れることとする)により記載されている化合物が挙げられる。さらに、本発明は、例えばA位およびB位が一緒になって例えばヘキサン酸、シアノメチル、2-アミノエチル、安息香酸、1H-ベンゾイミダゾール-2-イルメチルなどでありうる更なる代表的化合物を提供する。
【0078】
他の実施形態においては、本発明の方法において使用する化合物は、下記式(II)の化合物ならびにそれから誘導される製薬上許容される塩およびプロドラッグから選ばれる:
【化11】

[式中、
R^(28)は、水素、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロゲン、(C_(1)-C_(4))-アルキル、カルボキシまたは代謝的に不安定なそのエステル誘導体、(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(4))-アルカノイル、ヒドロキシ-(C_(1)-C_(4))-アルキル、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、(C_(1)-C_(4))-アルキルチオ、(C_(1)-C_(4))-アルキルスルフィニル、(C_(1)-C_(4))-アルキルスルホニル、フェニルチオ、フェニルスルフィニル、フェニルスルホニルであり、該フェニルまたはフェニル基は、所望により、1?4個の同一または異なる以下のものにより置換されていてもよい:(C_(1)-C_(4))-アルキルオキシ、(C_(1)-C_(4))-アルキル、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、フルオロ-(C_(1)-C_(4))-アルキルチオ、フルオロ-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルフィニル、フルオロ-(C_(1)-C_(4))-アルキルスルホニル、(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(2)-C_(4))-アルコキシカルボニル、N,N-ジ-[(C_(1)-C_(4))-アルキル]カルバモイル-(C_(1)-C_(4))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ-(C_(2)-C_(4))-アルコキシカルボニル、ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ-(C_(2)-C_(4))-アルコキシカルボニル、(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(2)-C_(4))-アルコキシ-(C_(2)-C_(4))-アルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(4))-アルカノイルオキシ-C_(1)-C_(4))-アルキルまたはN-[アミノ-(C_(2)-C_(8))-アルキル]-カルバモイル;
R^(29)は、水素、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ハロゲン、(C_(1)-C_(4))-アルキル、カルボキシまたは代謝的に不安定なそのエステル誘導体、(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ、(C_(1)-C_(6))-アルコキシカルボニル、(C_(2)-C_(4))-アルカノイル、(C_(1)-C_(4))-アルコキシ、カルボキシ-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ、(C_(1)-C_(4))-アルコキシカルボニル-(C_(1)-C_(4))-アルコキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(8))-アルキルカルバモイル、N,N-ジ-(C_(1)-C_(8))-アルキルカルバモイル、N-[アミノ-(C_(2)-C_(8))-アルキル)-カルバモイル、N-[(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル]-カルバモイル、N-[ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ-(C_(1)-C_(8))-アルキル)]-カルバモイル、N-シクロヘキシルカルバモイル、N-[シクロペンチル]-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルシクロヘキシルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキルシクロペンチルカルバモイル、N-フェニルカルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキル-N-フェニルカルバモイル、N,N-ジフェニルカルバモイル、N-[フェニル-(C_(1)-C_(4))-アルキル]-カルバモイル、N-(C_(1)-C_(4))-アルキル-N-[フェニル-(C_(1)-C_(4))-アルキル]-カルバモイルまたはN,N-ジ-[フェニル-(C_(1)-C_(4))-アルキル]-カルバモイルであり、該フェニルまたはフェニル基は、所望により、1?4個の同一または異なるハロゲン、(C_(1)-C_(4))-アルキルオキシ、(C_(1)-C_(4))-アルキル、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、N-[(C_(2)-C_(4))-アルカノイル]-カルバモイル、N-[(C_(1)-C_(4))-アルコキシカルボニル]-カルバモイル、N-[フルオロ-(C_(2)-C_(6))-アルキル]-カルバモイル、N,N-[フルオロ-(C_(2)-C_(6))-アルキル]-N-(C_(1)-C_(4))-アルキルカルバモイル、N,N-[ジ-フルオロ-(C_(2)-C_(6))-アルキル]カルバモイル、ピロリジン-1-イルカルボニル、ピペリジノカルボニル、ピペラジン-1-イルカルボニル、モルホリノカルボニルにより置換されていてもよく、ここにおいて、該複素環基は、所望により、1?4個の(C_(1)-C_(4))-アルキル、ベンジル、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-2-イルカルボニル、N,N-[ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキル]-チオカルバモイル、N-(C_(2)-C_(4))-アルカノイルアミノまたはN-[(C_(1)-C_(4))-アルコキシカルボニル]-アミノにより置換されていてもよい;
R^(30)は、水素、(C_(1)-C_(4))-アルキル、(C_(2)-C_(4))-アルコキシ、ハロ、ニトロ、ヒドロキシ、フルオロ-(1-4C)アルキルまたはピリジニルである;
R^(31)は、水素、(C_(1)-C_(4))-アルキル、(C_(2)-C_(4))-アルコキシ、ハロ、ニトロ、ヒドロキシ、フルオロ-(C_(1)-C_(4))-アルキル、ピリジニルまたはメトキシである;
R^(32)は、水素、ヒドロキシ、アミノ、(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ、ジ-(C_(1)-C_(4))-アルキルアミノ、ハロ、(C_(1)-C_(4))-アルコキシ-(C_(2)-C_(4))-アルコキシ、フルオロ-(C_(1)-C_(6))-アルコキシ、ピロリジン-1-イル、ピペリジノ、ピペラジン-1-イルまたはモルホリノであり、ここにおいて、該複素環基は、所望により、1?4個の同一または異なる(C_(1)-C_(4))-アルキルまたはベンジルにより置換されていてもよい;
R^(33)およびR^(34)は、独立して、水素、(C_(1)-C_(4))-アルキルおよび(C_(1)-C_(4))-アルコキシから選ばれる]。
【0079】
式(II)の代表的化合物は米国特許第5,916,898号および第6,200,974号ならびに国際公開番号WO 99/21860に記載されている。前記特許および公開に記載のすべての化合物、特に、化合物の特許請求の範囲に記載の化合物および実施例の最終生成物を、参照により本明細書に組み入れることとする。それに含まれる代表的化合物としては以下のものが挙げられる:3-カルボキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-1,10-フェナントロリン(例えば、Sekiら (1974) Chem Abstracts 81:424,No. 21を参照されたい)、3-カルボキシ-5-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-1,10-フェナントロリン、3-カルボキシ-5-メトキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-1,10-フェナントロリン (化合物A)、および3-カルボキシ-8-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-1,10-フェナントロリン。
【0080】
他の実施形態においては、本発明の方法において使用する化合物は、下記式(III)の化合物またはその製薬上許容される塩から選ばれる:
【化12】

[式中、
aは1?4の整数である;
bは0?4の整数である;
cは0?4の整数である;
Zは、(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、独立して1以上のY^(1)により置換されている(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、3?10員ヘテロシクロアルキル、および独立して1以上のY^(1)により置換されている3?10員ヘテロシクロアルキル、(C_(5)-C_(20))アリール、独立して1以上のY^(1)により置換されている(C_(5)-C_(20))アリール、5?20員ヘテロアリール、および独立して1以上のY^(1)により置換されている5?20員ヘテロアリールよりなる群から選ばれる;
Ar^(1)は、(C_(5)-C_(20))アリール、独立して1以上のY^(2)により置換されている(C_(5)-C_(20))アリール、5?20員ヘテロアリール、および独立して1以上のY^(2)により置換されている5?20員ヘテロアリールよりなる群から選ばれる;
各Y^(1)は、独立して、親油性官能基、(C_(5)-C_(20))アリール、(C_(6)-C_(26))アルカリール、5?20員ヘテロアリールおよび6?26員アルク(alk)-ヘテロアリールよりなる群から選ばれる;
各Y^(2)は、独立して、-R’、-OR’、-OR”、-SR’、-SR”、-NR’R’、-NO_(2)、-CN、-ハロゲン、-トリハロメチル、トリハロメトキシ、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(O)NR’OR’、-C(NR’R’)=NOR’、-NR’-C(O)R’、-SO_(2)R’、-SO_(2)R”、-NR’-SO_(2)-R’、-NR’-C(O)-NR’R’、テトラゾール-5-イル、-NR’-C(O)-OR’、-C(NR’R’)=NR’、-S(O)-R’、-S(O)-R”および-NR’-C(S)-NR’R’よりなる群から選ばれる:
各R’は、独立して、-H、(C_(1)-C_(8))アルキル、(C_(2)-C_(8))アルケニルおよび(C_(2)-C_(8))アルキニルよりなる群から選ばれる;
各R”は、独立して、(C_(5)-C_(20))アリール、および独立して1以上の-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO_(2)、-CN、ハロゲンまたはトリハロメチル基により置換されている(C_(5)-C_(20))アリールよりなる群から選ばれる];
あるいは、ここで、cが0であり、Ar^(1)がN’置換尿素-アリールである場合には、該化合物は、下記構造式(IIIa)を有するか、またはその製薬上許容される塩である:
【化13】

[式中
a、bおよびZは前記と同意義を有する;
R^(35)およびR^(36)は、それぞれ独立して、(C_(1)-C_(8))アルキル、(C_(2)-C_(8))アルケニル、(C_(2)-C_(8))アルキニル、(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、(C_(5)-C_(20))アリール、(C_(5)-C_(20))置換アリール、(C_(6)-C_(26))アルカリール、(C_(6)-C_(26))置換アルカリール、5?20員ヘテロアリール、5?20員置換ヘテロアリール、6?26員アルク(alk)-ヘテロアリールおよび6?26員置換アルク(alk)-ヘテロアリールよりなる群から選ばれる;
R^(37)は、独立して、水素、(C_(1)-C_(8))アルキル、(C_(2)-C_(8))アルケニルおよび(C_(2)-C_(8))アルキニルよりなる群から選ばれる]。
【0081】
式(III)の代表的化合物は国際公開番号WO 00/50390に記載されている。該公開に記載のすべての化合物、特に、化合物の特許請求の範囲に記載の化合物および実施例の最終生成物を、参照により本明細書に組み入れることとする。式(III)の代表的化合物には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:3-{[4-(3,3-ジベンジル-ウレイド)-ベンゼンスルホニル]-[2-(4-メトキシ-フェニル)-エチル]-アミノ}-N-ヒドロキシ-プロピオンアミド(化合物B)、3-{{4-[3-(4-クロロ-フェニル)-ウレイド]-ベンゼンスルホニル}-[2-(4-メトキシ-フェニル)-エチル]-アミノ}-N-ヒドロキシ-プロピオンアミド、および3-{{4-[3-(1,2-ジフェニル-エチル)-ウレイド]-ベンゼンスルホニル}-[2-(4-メトキシ-フェニル)-エチル]-アミノ}-N-ヒドロキシ-プロピオンアミド。
【0082】
したがって、本発明は、エリスロポエチン関連状態、例えば貧血および神経学的病態を治療、予防または前治療する方法を提供する。本明細書に記載の化合物を使用する方法が特に意図される。さらに、本発明は、特定の治療過程(例えば、化学療法、透析など)に関連した貧血の患者を治療する方法を提供する。特定の実施形態においては、これらの方法は、本明細書に記載されているような化合物の使用を含む。また、本発明は、in vitro細胞培養技術を用いた内因性エリスロポエチンの製造方法を提供する。本発明はまた、in vitroメッセンジャーRNA翻訳のための無細胞網状赤血球ライセートを製造するために動物における循環網状赤血球数を増加させる方法を含む。
【0083】
本発明の化合物の使用方法
本発明は、内因性エリスロポエチンを増加させて赤血球産生を増強する方法を提供する。該方法は、エリスロポエチン関連状態、例えば貧血、神経障害などに関連した状態および障害を予防、前治療または治療するために使用することができる。そのような状態および障害には、本明細書中に前記したものが挙げられる。
【0084】
本発明はまた、脳梗塞、外傷、てんかん及び脊髄損傷のような急性障害ならびに神経変性疾患のような慢性障害を含む(これらに限定されるものではない)エリスロポエチン関連神経障害を予防、前治療または治療するために内因性エリスロポエチンを増加させる方法を提供する。該方法は、胸腹部大動脈手術のような手術を含む(これらに限定されるものではない)処置に関連した神経障害を治療するために使用することができる。
【0085】
本発明は、前記の方法において使用しうる化合物を提供する。例えば、該化合物またはその製薬上許容される塩の治療的に有効な量を、単独で又は製薬上許容される賦形剤と共に、例えば貧血のようなエリスロポエチン関連障害を有する又はその発生のリスクがある患者に投与することができる。該貧血は、急性または慢性の腎臓病、糖尿病、癌、潰瘍;ウィルス、細菌または寄生虫による感染;炎症などを含む(これらに限定されるものではない)状態または障害によるものでありうる。あるいは、該貧血は、例えば放射線療法、化学療法、腎臓透析、手術などを含む医学的処置または治療に関連したものでありうる。
【0086】
例えば、該化合物またはその製薬上許容される塩の治療的に有効な量を、単独で又は製薬上許容される賦形剤と共に、ジドブジンまたは他の逆転写酵素阻害剤で治療されているHIV感染患者に投与することができる。もう1つの例においては、該化合物またはその製薬上許容される塩の治療的に有効な量を、単独で又は製薬上許容される賦形剤と共に、環状シスプラチンまたは非シスプラチンによる化学療法を受けている貧血性癌患者に投与することができる。さらにもう1つの例においては、化合物またはその製薬上許容される塩の治療的に有効な量を、単独で又は製薬上許容される賦形剤と共に、同種輸血の必要性を軽減するために、手術を予定されている貧血または非貧血患者に投与することができる。
【0087】
好ましい投与経路には、経口および経皮送達メカニズムが含まれる。そのようなメカニズムは、例えば投与のし易さ、患者による自己投与、コストの削減、来院回数の減少ならびに感染および免疫合併症によるリスクの軽減をもたらすことにより、現在のEPO置換療法と比べた場合の利点をもたらして、組換えEPOの投与に応答して幾人かの患者で生じる有害な反応を最小限に抑制する。
【0088】
1つの態様においては、本発明の化合物は1以上の2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ酵素を抑制する。1つの実施形態においては、該化合物は少なくとも2つの2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼファミリーメンバー、例えばHIFプロリルヒドロキシラーゼおよびHIFアスパラギン-ヒドロキシラーゼ(FIH-1)などを、同じ特異性または異なる特異性で抑制する。もう1つの実施形態においては、該化合物は1つの2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ、例えばHIFプロリルヒドロキシラーゼに特異的であり、他のファミリーメンバーに対しては特異性をほとんど又は全く示さない。
【0089】
本発明の化合物は、種々の他の治療アプローチと組合せて投与することができる。1つの実施形態においては、該化合物を別の2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼインヒビターと共に投与し、この場合、それらの2つの化合物は、個々の2-オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼファミリーメンバーに対する異なる特異性を有する。それらの2つの化合物は、一方の化合物に対する他方の化合物の或る比率で、同時に投与することができる。与えられた治療経過または個々の患者に適した比率の決定は当分野の通常の技術水準の範囲内である。あるいは、それらの2つの化合物は、治療の時間経過において(例えば、心筋梗塞の後に)連続的に投与することができる。特定の実施形態においては、一方の化合物はHIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を特異的に抑制し、もう一方の化合物はプロコラーゲンプロリル4-ヒドロキシラーゼ酵素活性を特異的に抑制する。もう1つの特定の実施形態においては、一方の化合物はHIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素活性を特異的に抑制し、もう一方の化合物はHIFアスパラギニル-ヒドロキシラーゼ酵素活性を特異的に抑制する。また、該化合物は、鉄サプリメント、例えば硫酸第一鉄、ビタミンB_(12)および/または葉酸などのような別の物質と共に投与することができる。該化合物はまた、外因性エリスロポエチン、例えばEPOGENもしくはARANESP組換えヒトエリスロポエチン(Amgen,Inc.,Thousand Oaks CA)および/または顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、例えばNEUPOGENもしくはNEULASTA組換えG-CSF(Amgen)と共に投与することができる。
【0090】
医薬製剤および投与経路
本発明の組成物は、直接的に、または当技術分野でよく知られた適当な担体もしくは賦形剤と共に医薬組成物として送達することができる。本治療方法は、例えば慢性腎不全、糖尿病、癌、エイズ、放射線療法、化学療法、腎臓透析または手術による貧血またはそのリスクを有する対象に本発明の化合物の有効量を投与することを含みうる。好ましい実施形態においては、該対象は哺乳類対象であり、最も好ましい実施形態においては、該対象はヒト対象である。
【0091】
そのような物質の有効量は、最も有効かつ簡便な投与経路および最も適当な製剤と同様に、通常の実験により容易に決定することができる。種々の製剤および薬物送達系が当技術分野で利用可能である(例えば、Gennaro,A.R.編,(1995) Remington’s Pharmaceutical Sciences,(前掲)を参照されたい)。
【0092】
適当な投与経路には、例えば経口、直腸内、経粘膜、鼻腔内または腸内投与、ならびに非経口送達、例えば筋肉内、皮下、髄内注射、および鞘内、直接的な心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼内注射が含まれうる。該物質またはその組成物は、全身的のみならず局所的に投与することも可能である。例えば、適当な物質を注射により、または標的化ドラッグデリバリーシステム、例えばデポー剤もしくは徐放剤により送達することができる。
【0093】
本発明の医薬組成物は、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣形成、研和、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥プロセスのような、当技術分野でよく知られた任意の方法により製造することができる。前記のとおり、本発明の組成物は、医薬用製剤への活性分子の処理を促進する1以上の生理的に許容される担体、例えば賦形剤および補助剤を含みうる。
【0094】
適当な製剤化は、選択する投与経路に左右される。注射の場合には、例えば、該組成物は、水溶液、好ましくは、生理的に許容されるバッファー、例えばハンクス液、リンガー液または生理食塩水中に製剤化することができる。経粘膜または鼻腔内投与の場合には、透過する関門(バリアー)に適した浸透剤を該製剤中で使用する。そのような浸透剤は当技術分野で一般に公知である。本発明の好ましい実施形態においては、本化合物を、経口投与を意図した製剤に製剤化する。経口投与の場合には、当技術分野でよく知られた製薬上許容される担体と該活性化合物とを一緒にすることにより、該化合物を容易に製剤化することができる。そのような担体は、本発明の化合物が対象により経口摂取されるよう錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などに製剤化されるのを可能にする。該化合物は、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドのような通常の坐剤基剤を含有する、坐剤または貯留性浣腸のような直腸用組成物に製剤化することも可能である。
【0095】
所望により、得られた混合物を粉砕し、必要に応じて適当な補助剤を加えた後、顆粒混合物を混合して錠剤または糖衣コアを得ることにより、経口用医薬製剤を固体賦形剤として得ることができる。適当な賦形剤としては、特に、充填剤、例えば糖(ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む);セルロース調製物、例えばトウモロコシデンブン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、ガムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウム カルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)のような崩壊剤を加えることが可能である。また、ドデシル硫酸ナトリウムのような湿潤剤を加えることも可能である。
【0096】
糖衣コアには適当なコーティングを施す。この目的には、濃い糖溶液を使用することが可能であり、この溶液は、所望により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含有することが可能である。識別のために、または活性化合物用量の異なる組合せを特徴づけるために、染料または色素を錠剤または糖衣コーティングに加えることが可能である。
【0097】
経口投与用医薬製剤には、ゼラチンから構成されたプッシュ・フィット(push-fit)カプセル、およびゼラチンと可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)とから構成された密封ソフトカプセルが含まれる。プッシュ・フィットカプセルは、ラクトースのような充填剤、デンプンのような結合剤および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、場合によっては安定剤と混合された該有効成分を含有しうる。ソフトカプセルにおいては、該活性化合物を適当な液体(例えば、脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコール)に溶解または懸濁させることが可能である。また、安定剤を加えることが可能である。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適した剤形であるべきである。
【0098】
1つの実施形態においては、本発明の化合物を、皮膚パッチを介して経皮的に又は局所的に投与することができる。1つの態様においては、本発明の経皮または局所製剤は更に、1以上の浸透促進剤または他の作用因子(送達化合物の遊走を増強する物質を含む)を含みうる。例えば、部位特異的送達が望ましい場合には、経皮または局所投与が好ましいであろう。
【0099】
吸入による投与の場合には、本発明で使用する化合物は、適当な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の任意の適当なガス)を使用して加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレー形態で簡便に送達される。加圧エアゾール剤の場合には、一定量を送達するためにバルブを設けることにより、適当な投与単位を定めることが可能である。吸入器または通気器において使用する例えばゼラチンのカプセル剤およびカートリッジを製剤化することができる。これらは、典型的には、該化合物と適当な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)との粉末混合物を含有する。
【0100】
注射(例えば、ボラス注射または連続注入)による非経口投与用に製剤化された組成物は、添加された保存剤を含有する単位剤形、例えばアンプルまたは多用量容器として提供されうる。該組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、水剤または懸濁剤のような形態をとることが可能であり、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤のような製剤化剤を含有することが可能である。非経口投与用製剤には、水溶液、または水溶性形態の他の組成物が含まれる。
【0101】
該活性化合物の懸濁剤は、適当な油性注射用懸濁剤として製剤化することができる。適当な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油、例えばゴマ油、および合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。水性注射用懸濁剤は、懸濁剤の粘度を増加させる物質、例えばナトリウム カルボキシメチル セルロース、ソルビトールまたはデキストランを含有しうる。所望により、該懸濁剤はまた、適当な安定剤、または高濃縮溶液の製造を可能にする該化合物の溶解度を増加させる物質を含有しうる。あるいは、該有効成分は、使用前に適当なビヒクル(例えば、発熱物質を含有しない無菌水)で再生される粉末形態でありうる。
【0102】
前記のとおり、本発明の組成物は、デポー剤としても製剤化することが可能である。そのような長期作用型製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与することができる。したがって、例えば、本化合物は、適当な高分子もしくは疎水性物質(例えば、許容される油中の懸濁剤として)またはイオン交換樹脂により、あるいはやや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩として製剤化することが可能である。
【0103】
本発明の疎水性分子のための適当な担体は当技術分野でよく知られており、それらには、例えばベンジルアルコール、無極性界面活性剤、水混和性有機高分子および水相を含む共溶媒系が含まれる。該共溶媒系はVPD共溶媒系でありうる。VPDは、3% w/vのベンジルアルコール、8% w/vの無極性界面活性剤ポリソルベート80および65% w/vのポリエチレングリコール300の溶液(調整量の無水アルコールを使用)である。VPD共溶媒系(VPD:5W)は、水溶液中の5%デキストロースで1:1に希釈されたVPDよりなる。この共溶媒系は、疎水性化合物を溶解するのに有効であり、全身投与の際に低毒性である。もちろん、共溶媒系の比率は、その溶解度および毒性特性を損なわない範囲で大きく変化させることが可能である。さらに、共溶媒成分の種類も様々となりうる。例えば、ポリソルベート80の代わりに他の低毒性無極性界面活性剤を使用することが可能であり、ポリエチレングリコールの比率を変化させることが可能であり、ポリエチレングリコールの代わりに他の生体適合性高分子、例えばポリビニルピロリドンを使用することが可能であり、デキストロースの代わりに他の糖または多糖を使用することが可能である。
【0104】
あるいは、疎水性分子のための他の送達系を使用することが可能である。リポソームおよびエマルションは、疎水性薬物用の送達ビヒクルまたは担体のよく知られた例である。リポソーム送達系は、遺伝子送達系に関連して前記で説明されている。ある有機溶媒(例えばジメチルスルホキシド)を使用することも可能であるが、それは通常、より大きな毒性を有するという欠点を伴う。また、該化合物は、投与する組成物の有効量を含有する固体疎水性高分子の半浸透性マトリックスのような徐放系を使用して送達することが可能である。種々の徐放性材料が確立されており、当業者に入手可能である。徐放カプセルは、その化学的性質に応じて、数週間?100日以上にわたり該化合物を放出しうる。治療剤の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質の安定化のための更なる方法を用いることが可能である。
【0105】
本治療方法において使用するいずれの組成物においても、治療的に有効な量は、まず、当技術分野でよく知られた種々の技術を用いて推定することが可能である。例えば、細胞培養アッセイにおいては、細胞培養において決定されたIC_(50)を含む循環濃度範囲を得るために、用量を動物モデルにおいて系統化(formulate)する。ヒト対象に適した投与量範囲は、例えば、細胞培養アッセイおよび他の動物研究から得たデータを用いて決定することができる。
【0106】
物質の治療的に有効な量は、対象における症状の改善または生存の延長をもたらす該物質の量を意味する。そのような分子の毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物において、標準的な薬学的方法により、例えば、LD_(50)(集団の50%に致死的な用量)およびED_(50)(集団の50%において治療的に有効な用量)を求めることにより判定することができる。治療効果に対する毒性効果の用量比は治療係数であり、これはLD_(50)/ED_(50)比として表される。高い治療係数が好ましい。
【0107】
投与量は、好ましくは、毒性をほとんど又は全く伴わないED_(50)を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、使用する剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内で様々となりうる。厳密な製剤、投与経路および投与量は、対象の状態の詳細を考慮して、当技術分野で公知の方法に従い選択すべきである。
【0108】
投与の量および間隔は、必要に応じて内因性エリスロポエチン血漿レベルをモジュレーションするのに十分な該活性部分の血漿レベル(すなわち、最小有効濃度(MEC))が得られるよう個々に調節することが可能である。MECは各化合物ごとに様々となるが、例えばin vitroデータから推定することが可能である。MECを得るのに必要な投与量は個々の特性および投与経路に左右される。物質またはその組成物は、治療の持続期間の約10?90%、好ましくは、治療の持続期間の約30?90%、最も好ましくは、50?90%にわたりMECより高い血漿レベルを維持する治療計画を用いて投与すべきである。局所投与または選択的取り込みの場合には、該薬物の有効局所濃度は血漿濃度に関連していないかもしれない。あるいは、内因性エリスロポエチンの刺激は、1)負荷量を投与し、ついで維持量を投与すること、2)目標範囲内のエリスロポエチンレベルを迅速に得るために誘導量を投与し、ついで所望の目的範囲内にヘマトクリットを維持するために、より低い維持量を投与すること、または3)繰り返し断続的に投与することにより達成することが可能である。
【0109】
もちろん、投与する物質または組成物の量は、治療対象の性別、年齢および体重、疾患の重症度、投与様式ならびに処方医の判断を含む種々の因子に左右される。
【0110】
所望により、本組成物は、該有効成分を含有する1以上の単位投与系を含有するパックまたはディスペンサー装置として提供されうる。そのようなパックまたは装置は、例えば、金属またはプラスチックフォイル、例えばブリスタパックを含みうる。該パックまたはディスペンサー装置には投与のための説明書が付属しうる。また、許容しうる医薬担体中に製剤化された本発明の化合物を含む組成物を製造し、適当な容器内に配置し、適応状態の治療に関するラベルを添付することが可能である。該ラベルに示された適当な状態は、貧血が主要適応である状態、障害または疾患の治療を含みうる。
【0111】
化合物のスクリーニングおよび同定
本発明は、内因性エリスロポエチンを増加させる更なる化合物のスクリーニング方法および同定方法を提供する。特定の実施形態においては、内因性EPO血漿レベルを増加させる化合物の同定方法を提供する。内因性エリスロポエチンのレベルを増加させる小さな分子を同定するためには、種々のアッセイおよびスクリーニング技術(後記のものを含む)を用いることが可能である。特に有用である1つのアッセイは、目的とする化合物で動物を処理し、血漿中のエリスロポエチンレベルを測定することを含む(実施例2を参照されたい)。アッセイは、典型的には、反応基質の消費または反応産物の産生に関連した検出可能なシグナルを与える。検出は、例えば、発蛍光団、放射性同位体、酵素コンジュゲート、および当技術分野でよく知られた他の検出可能な標識を使用するものでありうる。その結果は定性的または定量的でありうる。反応産物の単離は、沈殿またはアフィニティークロマトグラフィーによる他の反応成分からの精製を可能にするビオチンまたはヒスチジンタグのような標識により促進されうる。
【0112】
内因性エリスロポエチンの発現の増強が細胞内のHIFαの安定化を伴う好ましい実施形態においては、HIFαのレベルまたは活性をモジュレーション(例えば、増強または減弱)する小さな分子を同定するために用いるアッセイが意図される。HIFαのヒドロキシル化に関するアッセイは、HIFαまたはその断片中のヒドロキシル化プロリンまたはアスパラギン残基を測定すること、または酵素とHIFαまたはその断片との存在下での2-オキソグルタル酸からのコハク酸の形成を測定することを含みうる(例えば、Palmeriniら (1985) J Chromatogr 339:285-292;Cunliffeら (1986) Biochem J 240:617-619を参照されたい)。HIFαのヒドロキシル化を測定する代表的な方法は、例えばIvanら(前掲)および実施例9に記載されている。2-オキソグルタル酸からのコハク酸の産生を測定する代表的な方法は、KauleおよびGunzler (1990,Anal Biochem 184:291-297) により記載されている。基質分子には、HIFαまたはその断片、例えばHIF(556-575)が含まれうる。例えば、実施例7に記載のアッセイにおいて使用する代表的な基質として、[メトキシクマリン]-DLDLEALAPYIPADDDFQL-アミド(配列番号5)が挙げられる。酵素には、例えば、任意の入手源から入手されたHIFαプロリルヒドロキシラーゼ(例えば、GenBank Accession No. AAG33965などを参照されたい)が含まれうる。酵素は粗細胞ライセートまたは部分精製形態中にも存在しうる。該化合物の非存在下および存在下で酵素活性を測定し比較することにより、HIFαのヒドロキシル化を抑制する化合物が同定される。
【0113】
さらに、前記方法と組合せて、当技術分野で公知の種々のいずれかのスクリーニング技術によっても本発明の化合物を同定することが可能である。そのようなスクリーニング方法は、標的ポリペプチドまたは該化合物が溶液中で遊離し、固体支持体に固定され、細胞表面上に担持され、細胞内に位置することなどを可能にしうる。例えば、当技術分野で現在利用可能であるアレイ法(例えば、Shalonら (1995) 国際公開番号WO 95/35505;Baldeschweilerら (1995) 国際公開番号WO 95/251116;Brennanら (1995) 米国特許第5,474,796号;およびHellerら (1997) 米国特許第5,605,662号を参照されたい)と同様にして、試験化合物を表面上に並べ、活性に関して分析することができる。
【0114】
内因性エリスロポエチンのin vitroでの製造
本発明は、in vitro細胞培養技術を用いる内因性エリスロポエチンの製造方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明の化合物により刺激された場合にエリスロポエチンを発現しうる、動物組織、好ましくはヒト組織から誘導された細胞を、内因性タンパク質のin vitro製造のために、当業者に利用可能な種々の技術のいずれかを用いて培養する。そのような方法に使用することが意図される細胞には、肝臓組織、造血組織、腎臓組織および神経組織などから誘導された細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の内因性エリスロポエチンの製造のための代表的な細胞系は、肝臓組織から誘導されたHep3Bである。
【0115】
細胞培養技術は当技術分野で概ね利用可能であり、細胞の生存性を維持し内因性タンパク質の発現を促進する任意の方法を含む。典型的には、細胞の増殖、生存性およびタンパク質産生に関して最適化された増殖培地内で細胞を培養する。細胞は懸濁しているか又は基体に付着していることが可能であり、バッチフィードまたは連続的フロスルー法により培地を供給することが可能である。本発明の化合物を、細胞の生存性を損なうことなくエリスロポエチンの産生を刺激するレベルで該培地に加える。該細胞により産生されたエリスロポエチンは該培地内に分泌される。ついで該培地を集め、当業者に公知の方法(例えば、Laiら (1987) 米国特許第4,667,016号;およびEgrie (1985) 米国特許第4,558,006号を参照されたい)によりエリスロポエチンを精製する。
【0116】
本発明のこれらの及び他の実施形態は、本明細書の開示を考慮して当業者に容易に理解され、特に意図されるものである。
【実施例】
【0117】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、さらに詳しく理解される。これらの実施例は本発明の単なる例示に過ぎないと意図される。本発明の範囲は、本発明の個々の態様の例示にすぎないと意図される例示されている実施形態により限定されるものではなく、機能的に同等な任意の方法も本発明の範囲内である。本明細書に記載のものに加えて本発明の種々の修飾が、本明細書の説明および添付図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような修飾も、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【0118】
実施例1:in vitroでの内因性エリスロポエチンレベルの増加
肝細胞性癌(Hep3B)組織から誘導されたヒト細胞(例えば、American Type Culture Collection,Manassas VAを参照されたい)を35mm培養ディッシュに播き、最少必須培地(MEM)、アール(Earle)の平衡塩溶液(Mediatech Inc.,Herndon VA)、2mM L-グルタミン、0.1mM 非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウムおよび10% FBS中、37℃、20% O_(2)、5% CO_(2)で増殖させた。細胞層がコンフルエントになったら、該培地をOPTI-MEM培地(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad CA)と交換し、細胞層を20% O_(2)、5% CO_(2)、37℃で約24時間インキュベートした。ついで本発明の化合物(化合物A?Iのうちの1つ)または1% DMSO(陰性対照)を既存培地に加え、インキュベーションをオーバーナイトで継続した。
【0119】
インキュベーション後、前記コンディショニング培地を細胞培養から集め、QUANTIKINEイムノアッセイ(R&D Systems,Inc.,Minneapolis MN)を該製造業者の説明に従って使用してエリスロポエチン発現に関して分析した。図1に示されているとおり、肝臓由来細胞(Hep3B)は、本発明の化合物で処理された場合には、エリスロポエチンの発現における有意な増強を示した。したがって、本発明の化合物は、動物においてエリスロポエチンを通常に産生する組織から誘導された細胞においてin vitroでエリスロポエチン発現を増強する。
【0120】
実施例2:in vivoでの内因性エリスロポエチンレベルの増加
実験I
12匹のSwiss Webster雄マウス(30?32g)をSimonsen,Inc.(Gilroy CA)から入手し、体積4ml/kgの0.5% カルボキシメチルセルロース(CMC;Sigma-Aldrich,St.Louis MO)(0mg/kg/日)または2.5%化合物C(0.5% CMC中、25mg/ml)(200mg/kg/日)で経口強制摂取により毎日2回、2.5日間(5用量)処理した。最終投与の4時間後、動物をイソフランで麻酔し、2つの血液サンプルを腹部静脈から集めた。1つの血液サンプルをMICROTAINER血清分離管(Becton-Dickinson,Franklin Lakes NJ)中に集め、室温で30分間インキュベートし、4℃、8,000rpmで10分間遠心分離した。ついで該血清画分を処理し、QUANTIKINEイムノアッセイ(R&D Systems)を該製造業者の説明に従って使用してエリスロポエチン(EPO)発現に関して分析した。ヘマトクリットの分析のために、第2血液サンプルをMICROTAINER EDTA-2K管(Becton-Dickinson)中に集めた。75mm×内径1.1?1.2mmの毛細管(Chase Scientific Glass,Inc.,Rockwood TN)中に約3/4の長さまで入れることにより、EDTA-血液をヘマトクリットを測定した。該管の一方の末端をCRITOSEAL密封剤(Sherwood Medical Company)で密封し、該管をJ-503M MICROHEMATOCRIT遠心機(Jorgensen Laboratories,Inc.,Loveland CO)中、12,000rpmで5分間遠心分離した。ヘマトクリットを読取りカードで読取った。ついで該マウスを屠殺し、約150mgの肝臓および各腎臓を単離し、RNALATER溶液(Ambion)中、-20℃で保存した。以下のプロトコールを用いて、RNAの単離を行った。組織薄片を小さな断片に切断した。1.75mlのRLT細胞溶解バッファー(RNEASYキット;Qiagen Inc.,Valencia CA)を加え、ローター-ステーターPOLYTRONホモジナイザー(Kinematica,Inc.,Cincinnati OH)を使用して該断片を約20秒間ホモジナイズした。体積350μlのホモジネートを3分間にわたりミクロ遠心分離して不溶性物質をペレット化し、上清を新たな管に移し、RNEASYキット(Qiagen)を該製造業者の説明に従って使用してRNAを単離した。該RNAを80μLの水中に溶出し、RIBOGREEN試薬(Molecular Probes,Eugene OR)で定量した。ついで、DNA-FREEキット(Ambion Inc.,Austin TX)を該製造業者の説明に従って使用して、該RNAからゲノムDNAを除去した。RNAの純度および濃度を測定するために、260および280nmの吸光度を測定した。
【0121】
1μM ランダムヘキサマープライマー、1μgの全RNAおよびOMNISCRIPT逆転写酵素(Qiagen)を該製造業者の説明に従って使用して、cDNA合成を行った。得られたcDNAを水で5倍希釈して100μLの最終体積とした。定性的PCRにより、エリスロポエチン遺伝子発現の相対レベルの分析を行った。サンプルを94℃で6分間加熱し、ついで95℃で15秒間、60℃で5秒間および72℃で10秒間の合計42サイクルに付した。エリスロポエチン特異的プライマーは以下のとおりであった:

【0122】
18SリボソームRNA遺伝子発現の相対レベルを対照として測定した。LIGHTCYCLER系(Roche)を該製造業者の説明に従って使用して、QUANTITECT SYBR GREEN PCRキット(Qiagen)および遺伝子特異的プライマーを使用する定量的PCRを行った。サンプルを95℃で15分間加熱し、ついで94℃で15秒間、60℃で20秒間、72℃で10秒間の合計42サイクルに付した。リボソームRNA特異的プライマーは以下のとおりであった:

【0123】
各PCRの実施は標準曲線および水ブランクを含むものであった。また、該増幅の特異性を評価するために、各PCRの実施の完了後、融解曲線を作成した。エリスロポエチン遺伝子発現を、そのサンプルの18SリボソームRNAの発現レベルに対して正規化した。
【0124】
図2Aに示すとおり、腎臓および肝臓の両方で、未処理対照と比較して処理動物においてエリスロポエチン遺伝子発現が誘導された。未処理の肝臓および腎臓と比較して、EPO転写産物レベルにおいて、バックグラウンドに対して、肝臓は約32倍の増加を示し、腎臓は約580倍の増加を示した(y軸の単位は任意単位である)。図2Bに示すとおり、それらと同じ動物は、処理群においては未処理対照と比較してエリスロポエチン血漿レベルにおける有意な増加を示した。さらに、図2Cに示すとおり、本発明の化合物により誘導された内因性エリスロポエチンの増加は、処理動物においては未処理対照と比較してヘマトクリットを有意に増加させた。
【0125】
実験II
雄Swiss Websterマウス(29?34g)をSimonsen,Inc.から入手し、経口強制摂取により毎日1回、2.5日間(5用量)、体積4ml/kgの0.5% カルボキシメチルセルロース(CMC;Sigma-Aldrich,St. Louis MO)(0mg/kg/日)または化合物EもしくはKのうちの1つ(100mg/kg/日)(3日間)で処理した。血液サンプルを集め、実験I(前記)と同様にして組織を処理した。あるいは、マウスを0.5% CMCまたは化合物FもしくはJのうちの1つで60mg/kg/日で5日間処理した。最終処理の48時間後、血液サンプルを集め、マウスを屠殺し、前記のとおりに組織を回収した。
【0126】
図3Aに示すとおり、本発明の化合物での2日間の処理の後、血漿エリスロポエチンレベルは、対照と比較して増加した。また、図3Bに示すとおり、2日後および7日後に、ヘマトクリットは、化合物で処理された動物においては未処理対照の場合より高いことが判明した。
【0127】
実施例3:in vivoにおける用量反応
12匹のSprague Dawley雄ラット(約260g)をCharles River Laboratories,Inc.から入手し、経口強制摂取により以下のとおりに処理した:(1)4匹のラットに、第1日から第7日までは毎日、0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC;Sigma-Aldrich,St. Louis MO)(0mg/kg)を投与し、第8日から第14日までは何の処理も行わず、ついで第15日から第19日までは毎日、0.5% CMC(0mg/kg)を投与した;(2)4匹の動物に、第0日から第3日までは、合計7ml/kg/日の5.0%化合物C(0.5% CMC中、50mg/ml)(350mg/kg)で処理し、第8日から第14日までは何の処理も行わず、ついで第15日から第19日までは毎日、3%化合物C(0.5% CMC中、30mg/ml)(60mg/kg/日)を投与し;および(3)4匹の動物に、第1日から第7日までは毎日、合計体積4ml/kg/日の2.5%化合物C(0.5% CMC中、25mg/ml)(100mg/kg)で処理し、第8日から第14日までは何の処理も行わず、ついで第15日から第19日までは毎日、3%化合物C(60mg/kg/日)を投与した。したがって、群(2)および(3)には、合計700mg/kg体重の化合物を最初の7日間にわたり投与し、第8日から第14日までは何の処理も行わず、ついで次の5日間は60mg/kg/日での投与を行った。体重の変化および毒性の徴候に関して、動物をモニターした。以下のとおり、第1、3、7、10、17および21日に血液サンプル(2×0.5ml)を集めた。動物をイソフランで麻酔し、0.5mlの血液を各動物の尾静脈から2つのMICROTAINER EDTA-2K管(Becton-Dickinson)のそれぞれの中に集めた。前記のとおり、エリスロポエチンレベル、ヘモグロビンおよびヘマトクリット用に血液サンプルを処理した。
【0128】
図4Aに示すとおり、該化合物は、処理後1日以内で血清エリスロポエチンレベルを有意に増加させた。図4Bに示すとおり、血清EPOの増加は、それに続く未熟血液細胞(網状赤血球)の増加を招き、このことは、該化合物が、新たな赤血球の形成を刺激することを示している。また、図4Cおよび4Dに示すとおり、該化合物は、それぞれ血中ヘモグロビンレベルおよびヘマトクリットを増加させた。さらに、ヘモグロビンおよびヘマトクリットの増加は、より低い用量の該化合物で長期にわたり維持された。本発明の化合物は、制御された様態で赤血球の増加をもたらし、該動物は長期にわたり該化合物に応答性のままであることを、これらの結果は示している。
【0129】
実施例4:シスプラチンにより誘発された貧血の治療
虚血後急性腎不全に関連した貧血を本発明の化合物が治療する能力を、Vaziriら (1994,Am J Physiol 266(3 Pt 2):F360-6) が記載している方法を用いてアッセイした。15匹のSprague Dawley雄ラット(280?300g)をCharles River Laboratoriesから入手した。第0日に、8ml/kgの1回量の食塩水(対照;n=3)または7mg/kg(7ml/kg;n=6)もしくは10mg/kg(10ml/kg;n=6)のシスプラチン(CP;Bedford Laboratories,Bedford OH)の腹腔内注射によりラットを処理した。以下のとおり、第5、9および16日に血液サンプル(0.2ml)を集めた。動物をイソフランで麻酔し、0.2mlの血液を尾静脈からMICROTAINER EDTA-2K管(Becton-Dickinson)中に集めた。各動物において生じた貧血の度合を判定するために、前記のとおり、ヘマトクリット用に血液サンプルを処理した。
【0130】
第19日から、各シスプラチン処理群(n=3×2)の半分および該対照群のすべてを、経口強制摂取により1日1回、5日間連続して体積2ml/kgの0.5% CMC(Sigma-Aldrich)で処理し始めた。各シスプラチン処理群(n=3×2)の残りの半分を、経口強制摂取により1日1回、4日間連続して体積2ml/kgの2.5% 化合物C(0.5% CMC中、25mg/ml)で処理した。治療の直前および治療開始の4日後に、前記のとおりに血液サンプル(0.5ml)を集めた。前記のとおり、血液サンプルをCBCおよび網状赤血球数に関して分析した。経口治療の開始の9日後、血液サンプル(0.1ml)を集め、前記のとおりヘマトクリット用に処理した。
【0131】
図5Aは、本発明の方法での処理の前の7および10mg/kg CPに対する曝露が、第19日までにヘマトクリットを対照に対してそれぞれ14および22%減少させたことを示している。しかし、本発明の化合物は、CP処理動物において、化合物での治療の開始の4日後にヘマトクリットを増加させ、ヘマトクリットは、処理の9日後までには未処理対応体より有意に高かった。図5Aにおいて認められうるとおり、7mg/kg CPに最初に曝露され次いで本発明の化合物で処理された動物におけるヘマトクリットレベルは、第9日までには正常対照値以上となった。図5Bは、該化合物で処理された動物においては循環網状赤血球数が増加したため、ヘマトクリットの増加が、新たな赤血球の形成によるものであったことを示している。
【0132】
実施例5:溶血性貧血の治療
溶血性貧血は、毒素に対する曝露、血液透析などを含む(これらに限定されるものではない)多数の要因により引き起こされうる。本発明の化合物が溶血性貧血を治療する能力を、Rencriccaら (1970,Blood 36:764-71) が記載している方法によりアッセイする。簡潔に説明すると、マウスを経口強制摂取により1日2回で5日間、体積2ml/kgの0.5% CMC(Sigma-Aldrich)(A群)または本発明の化合物で処理する。第3日から、マウスを、食塩水または60mg/kg フェニルヒドラジン(PHZ)の毎日の3連続皮下投与で処理する。第8日に、該実験動物のそれぞれから心臓穿刺により採血し、ヘマトクリットを測定する。PHZのみの投与を受けたマウスは、最初のPHZ投与の4日後に最低ヘマトクリットレベル(対照の約50%)を示すはずである。ヘマトクリットレベルは約8日のうちに正常に戻る。本発明の化合物での処理は、ビヒクル処理対照と比較してマウスにおいてヘマトクリットレベルの低下を最小限に抑えるはずである。
【0133】
あるいは、Criswellら(2000,J Appl Toxicol 20:25-34)が記載している方法により、ラットを処理する。該方法は、マウスに関して前記したのと実質的には同じである。ただし、この場合には、皮下投与ではなく腹腔内注射によりラットに50mg/kg PHZを投与する。PHZ処理動物において第3日に赤血球数の最大減少(68%)が得られると予想される。
【0134】
実施例6:腎不全に関連した貧血の治療
虚血後急性腎不全に関連した貧血を本発明の化合物が治療する能力を、Tanら (1996,Kidney Int 50:1958-64) が記載している方法によりアッセイする。簡潔に説明すると、ラットを左腎動脈の片側クランピングに1時間付す。ついで該動脈クランプを除去し、切開創を閉じる。ラットを経口強制摂取により1日2回、体積2ml/kgの0.5% CMC(Sigma-Aldrich)(A群)または5% 本発明化合物で処理する。動脈クランプの除去の2時間後、24時間後および1週間後、ヘマトクリットの測定のために採血する。ビヒクルで処理されたラットのヘマトクリット値はそれらの時点でシャム対照ラットのそれぞれ約85%、91%および93%になると予想される。
【0135】
また、虚血急性腎不全に関連した貧血を本発明の化合物が治療する能力を、Nemotoら (2001,Kidney Int 59:246-51) が記載している方法によりアッセイする。簡潔に説明すると、ラットを経口強制摂取により1日2回、体積2ml/kgの0.5% CMC(Sigma-Aldrich)(A群)または5% 本発明化合物で処理する。ラットを血管クリップでの右腎臓のクランピングに付し、同時に左腎臓の腎摘除に付す。各閉塞の後、30(中等度)分または45(重度)分の時点で該クリップを除去する。再潅流が観察される。
【0136】
実施例7:in vivoでのエリスロポエチン発現
25匹の雄Swiss Websterマウス(35?38g)をSimonson,Inc.から入手し、経口強制摂取により1日1回、2.5日間(5用量)、体積4ml/kgの0.5% カルボキシメチルセルロース(CMC;Sigma-Aldrich,St. Louis MO)(0mg/kg/日)、化合物C(30または100mg/kg/日)(4日間)で処理し、あるいは前記のとおりに血液を動物から毎日集めて貧血を誘発させた。血液サンプルを集め、腎臓、肝臓、脳、肺、心臓および骨格筋組織を集め、実施例2、実験I(前記)のとおりに処理した。
【0137】
以下のプロトコールを用いて、RNAの単離を行った。各器官の50mgの切片を、さいの目に切り、875μlのRLTバッファー(RNEASYキット;Qiagen Inc.,Valencia CA)を加え、ローター-ステーターPOLYTRONホモジナイザー(Kinematica,Inc.,Cincinnati OH)を使用して該断片を約20秒間ホモジナイズした。該ホモジネートを3分間にわたりミクロ遠心分離して不溶性物質をペレット化し、上清を新たな管に移し、RNEASYキット(Qiagen)を該製造業者の説明に従って使用してRNAを単離した。該RNAを80μLの水中に溶出し、RIBOGREEN試薬(Molecular Probes,Eugene OR)で定量した。ついで、DNA-FREEキット(Ambion Inc.,Austin TX)を該製造業者の説明に従って使用して、該RNAからゲノムDNAを除去した。RNAの純度および濃度を測定するために、260および280nmの吸光度を測定した。
【0138】
RNAを0.3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)、50ng/ml グリコーゲンおよび2.5体積のエタノール中、-20℃で1時間沈殿させた。サンプルを遠心分離し、ペレットを冷80% エタノールで洗浄し、乾燥し、水に再懸濁させた。T7-(dT)24第1鎖プライマー(Affymetrix,Inc.,Santa Clara CA)およびSUPERSCRIPT CHOICE系(Invitrogen)を該製造業者の説明に従って使用して、二本鎖cDNAを合成した。PHASE LOCK GELインサート(Brinkman,Inc.,Westbury NY)を使用して、最終cDNAを等体積の25:24:1 フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールで抽出した。該水相を集め、0.5体積の7.5M 酢酸アンモニウムおよび2.5体積のエタノールを使用してcDNAを沈殿させた。あるいは、GENECHIPサンプル・クリーンアップ・モジュール(Affymetrix)を該製造業者の説明に従って使用して、cDNAを精製した。
【0139】
BIOARRAY HighYield RNA転写産物標識キット(Enzo Diagnostics,Inc.,Farmingdale NY)を該製造業者の説明に従って使用するin vitro翻訳(IVT)反応において、該cDNAからビオチン標識cRNAを合成した。最終標識産物を精製し、断片化した(GENECHIPサンプル・クリーンアップ・モジュール(Affymetrix)を該製造業者の説明に従って使用して行った)。
【0140】
5μgのプローブを1×ハイブリダイゼーションバッファー(100mM MES,1M[Na^(+)],20mM EDTA,0.01% Tween 20)、100μg/ml ニシン精子DNA、500μg/ml アセチル化BSA、0.03nM 対照オリゴB2(Affymetrix)および1×GENECHIP真核生物ハイブリダイゼーション対照(Affymetrix)中の100μlと一緒にすることにより、ハイブリダイゼーション混液を調製した。該混液を順次、99℃で5分間および45℃で5分間インキュベートし、ついで5分間遠心分離した。マウスゲノムU74AV2アレイ(MG-U74Av2;Affymetrix)を室温にし、ついで、回転させながら1×ハイブリダイゼーションバッファーで45℃で10分間プレハイブリダイズさせた。ついで該バッファーを80μlのハイブリダイゼーション混液と交換し、該アレイをカウンターバランス(counter balance)で45℃、60rpmで16時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、アレイを6×SSPE、0.1% Tween 20で1回洗浄し、ついでR-フィコエリトリン結合ストレプトアビジン(Molecular Probes,Eugene OR)、ヤギ抗ストレプトアビジン抗体(Vector Laboratories,Burlingame CA)およびGENECHIP Fluidics Station 400装置(Affymetrix)を該製造業者のmicro_1v1プロトコール(Affymetrix)に従い使用して洗浄し染色した。GENEARRAYスキャナー(Affymetrix)およびMicroarray Suiteソフトウェア(Affymetrix)を使用して、アレイを分析した。
【0141】
マウスゲノムU74AV2アレイ(Affymetrix)は、機能的に特徴づけられたMouse UniGeneデータベースビルド(database build)74(National Center for Biotechnology Information,Bethesda MD)中のすべての配列(?6,000)、および約6,000の注釈付けされていないEST(Expressed sequence tag)クラスターを表す。
【0142】
図6A、6Bおよび6Cにおいて認められうるとおり、エリスロポエチン転写産物の用量依存的増加がそれぞれ脳、腎臓および肝臓組織において見られた。発現のレベルは、同じ組織において出血誘発性貧血で見られた転写のレベルと同等か又はそれを上回った。したがって、本発明の方法において使用した化合物は、動物においてエリスロポエチンを通常に産生する器官において浸透性であり内因性エリスロポエチン産生を誘導しうる。
【0143】
実施例8:両側腎摘除後のエリスロポエチン産生
本発明の化合物が機能性腎臓の非存在下で内因性エリスロポエチン産生を誘導する能力を、Jacobsonら(1957,Nature 179:633-634)により記載されている方法を用いてアッセイした。簡潔に説明すると、ラットをイソフラン下で麻酔し、無菌条件下で正中腹部切開を行った。腎臓被膜(kidney capsules)を剥ぎ取り、茎部(pedicle)を結紮し、両方の腎臓を摘出した。ついで腹部を閉じ、該動物を回復させた。
【0144】
動物を、手術の2時間後および20時間後、経口強制摂取により0.5% カルボイシメチルセルロース(CMC;Sigma-Aldrich,St. Louis MO)または化合物C(100または150mg/kg)で処理する。動物をイソフランで麻酔し、血液を尾静脈からMICROTAINER EDTA-2K管(Becton-Dickinson)中に集めた。実施例2に記載のとおりに、エリスロポエチンレベルおよびヘマトクリット用に血液サンプルを処理した。血中ヘモグロビンレベル、網状赤血球数およびヘマトクリットを含む全血球計算(CBC)分析がIDEXX獣医サービス(veterinary service)(W. Sacramento,CA)により行われた。
【0145】
図7において認められうるとおり、該化合物はシャム手術動物における血清エリスロポエチンレベルを有意に増加させた。さらに、該化合物で処理された両側腎摘除動物においても、未処理BNおよびシャム対照と比較して、血清エリスロポエチンレベルが顕著に増加した(図7)。
【0146】
実施例9:スクリーニングアッセイ
実施例1に記載の方法を用いて、内因性エリスロポエチンレベルを増加させる化合物を同定することが可能である。HIF特異的プロリルヒドロキシラーゼ活性を抑制しHIFαを安定化して内因性エリスロポエチンを増加させる更なる化合物を、以下のアッセイにより同定し特徴づけることが可能である。4mg/ml BSA、0.1M Tris HCl(pH7.2)、2mM アスコルビン酸、80μM 硫酸第一鉄、0.2mM 2-オキソグルタル酸、600単位/ml カタラーゼを100μM HIFαペプチドの存在下または非存在下に含有する反応混合物の50μlアリコートを50μlのHeLa細胞抽出物または精製HIFプロリルヒドロキシラーゼと混合し、37℃で1.5時間インキュベートする。インキュベーション後、50μlのストレプトアビジンビーズを加え、該混合物を、4℃で撹拌しながら1時間インキュベートする。該混合物を管に移し、低速で遠心分離して該ビーズをペレット化する。該ビーズを0.5?1mlの20mM Tris HCl(pH7.2)で3回洗浄した。ついで該ペプチドを20mM Tris HCl(pH7.2)中の5μlの2mM ビオチンで該ビーズから1時間溶出する。該管を遠心分離して該樹脂をペレット化し、40?50μlの上清を除去し、等体積のアセトニトリルを加える。あるいは、pH不感受性発蛍光団であるメトキシクマリンに該ペプチドを結合させる。該発蛍光団は、粗細胞ライセートで行うアッセイにおける検出を向上させる感度および特異性を与えうる。スクリーニングアッセイにおいて使用する代表的なHIFペプチドは[メトキシクマリン]-DLDLEALAPYIPADDDFQL-アミド(配列番号5)を含みうる。ついで該非ヒドロキシル化およびヒドロキシル化ペプチドを、214nmでUV検出しながらC18カラム上の逆相HPLCにより分離する。
【0147】
本明細書に示され記載されているものに加えて、本発明の種々の改変が、以上の説明から当業者に明らかとなろう。そのような改変は添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0148】
本明細書に引用したすべての参考文献の全体を、参照により本明細書に組み入れることとする。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、本発明の化合物に応答したin vitroでのエリスロポエチンの誘導を示す。培養内の細胞を、示されている濃度の化合物で処理した。この図に示されている細胞型は、肝細胞癌(Hep3B)から誘導されたヒト肝臓細胞である。
【図2】図2A、2Bおよび2Cは、本発明の化合物で処理された動物におけるエリスロポエチンの誘導およびそれに続くヘマトクリットの増加を示す。図2Aは、ビヒクル対照(化合物0mg/kg体重/日)または本発明の化合物で3日間処理された動物の肝臓および腎臓におけるエリスロポエチン転写産物の発現を示す。図2Bは血漿中のエリスロポエチンレベルを示し、図2Cは、図2Aに示されている同じ動物から最終処理の4時間後に集められた血液サンプル中の血液ヘマトクリットを示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、本発明の化合物で処理された動物における血漿エリスロポエチンの増加およびそれによるヘマトクリットの増加を示す。図3Aは、化合物での処理の2日後の血漿エリスロポエチンの増加を示す。図3Bは、本発明の種々の化合物での処理の2および7日後のヘマトクリットの増加を示す。
【図4A-B】図4Aおよび4Bは、本発明の化合物の種々の投与計画で処理された動物におけるそれぞれ血清エリスロポエチンおよび循環血網状赤血球の変化を示す。
【図4C-D】図4Cおよび4Dは、本発明の化合物の種々の投与計画で処理された動物におけるそれぞれ血中ヘモグロビンレベルおよびヘマトクリットの変化を示す。
【図5】図5Aおよび5Bは、1回量のシスプラチンに曝露され次いで本発明の化合物で処理された動物におけるヘマトクリットおよび循環血網状赤血球の変化を示す。
【図6】図6A、6Bおよび6Cは、本発明の化合物で処理された動物におけるそれぞれ脳、肝臓および腎臓におけるエリスロポエチン転写産物の発現を示す。
【図7】図7は、未処置シャムおよびBN対照と比較した場合の、シャム手術および両側腎摘除された動物における内因性エリスロポエチンレベルの増加を示す。
【配列表】


(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における貧血を治療するための薬剤の製造における複素環式カルボキサミド化合物の使用であって、該複素環式カルボキサミド化合物が、HIFプロリルヒドロキシラーゼを抑制し、式(I)
【化1】

[式中、
Aは、-CH_(2)-であり;
Bは、-CO_(2)HまたはCO_(2)-Gカルボキシル基(ここでGはアルコールG-OHの基であり、Gは(C_(1)-C_(20))-アルキル基または(C_(7)-C_(16))-炭素環式アルアルキル基である)であり;
Xは、Oであり;
Qは、Oであり;
R^(4)は、水素またはベンジルであり;
Yは、CR^(3)であり;
R^(1)とR^(2)、またはR^(2)とR^(3)は、それらを含有するピリジンと一緒になって、式IaおよびIb
【化2】

から選ばれる所望により置換されていてもよい複素環系を形成しており、置換基R^(3)、R^(13)、R^(14)、R^(17)およびR^(18)は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリール、(C_(7)-C_(16))-アルアルキル、(C_(7)-C_(16))-アルアルキルオキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、カルバモイル、N-(C_(1)-C_(12))-アルキルカルバモイル、N-((C_(1)-C_(18))-アルコキシ-(C_(1)-C_(10))-アルキル)-カルバモイル、または-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)(ここでfは1であり、gは3であり、xは0である)よりなる群から選ばれ;ここでアリール基は、以下のものから選ばれる1?5個の置換基により置換されていてもよい:ハロゲン、シアノ、(C_(2)-C_(16))-アルキル、(C_(1)-C_(16))-アルコキシおよびカルバモイル]
で表される化合物、またはそれから誘導される生理的に活性な塩である、前記使用。
【請求項2】
複素環式カルボキサミド化合物が、式Iaで表されるものであり、式中、
R^(13)は、水素、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、または-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)(ここでfは1であり、gは3であり、xは0である)であり;
R^(14)は、水素またはハロゲンである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
複素環式カルボキサミド化合物が、式Ibで表されるものであり、式中、
R^(3)は、水素またはハロゲンであり;
R^(17)は、水素であり;そして
R^(18)は、水素、(C_(1)-C_(20))-アルキル、(C_(1)-C_(20))-アルコキシ、(C_(6)-C_(12))-アリールオキシ、または-O-[CH_(2)]_(x)C_(f)H_((2f+1-g))F_(g)(ここでfは1であり、gは3であり、xは0である)である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
複素環式カルボキサミド化合物が、以下、
[(3-ベンジルオキシ-7-クロロ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(3-ヒドロキシ-6-イソプロポキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(3-ヒドロキシ-6-フェノキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(3-ヒドロキシ-6-トリフルオロメトキシ-キノリン-2-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(1-クロロ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(4-ヒドロキシ-7-イソプロポキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
[(7-ブトキシ-4-ヒドロキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、
N-((1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-メトキシイソキノリン-3-イル)-カルボニル)-グリシン、および
[(1-クロロ-4-ヒドロキシ-7-イソプロポキシ-イソキノリン-3-カルボニル)-アミノ]-酢酸、よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
貧血が、ヘモグロビンまたは赤血球の異常に関連している、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
貧血が、糖尿病、癌、潰瘍、腎臓病、免疫抑制性疾患、感染および炎症よりなる群から選ばれる状態に関連している、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
貧血が、放射線療法、化学療法、透析および手術よりなる群から選ばれる処置または治療に関連している、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
貧血が、失血に関連している、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
失血が、出血障害、外傷、損傷または手術に関連している、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
貧血が、鉄の輸送、処理または利用における欠陥に関連している、請求項1に記載の使用。
【図面】








 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-10-30 
結審通知日 2015-11-06 
審決日 2015-11-18 
出願番号 特願2005-351153(P2005-351153)
審決分類 P 1 123・ 832- YAA (A61K)
P 1 123・ 536- YAA (A61K)
P 1 123・ 537- YAA (A61K)
P 1 123・ 54- YAA (A61K)
P 1 123・ 121- YAA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬下 浩一松浦 安紀子  
特許庁審判長 田村 明照
特許庁審判官 大宅 郁治
齋藤 恵
登録日 2011-08-19 
登録番号 特許第4804131号(P4804131)
発明の名称 内因性エリスロポエチン(EPO)を増加させる方法  
代理人 藤田 節  
代理人 平木 祐輔  
代理人 江島 孝毅  
代理人 東崎 賢治  
代理人 田中 夏夫  
代理人 菊田 尚子  
代理人 平木 祐輔  
代理人 小原 淳史  
代理人 藤田 節  
代理人 野村 和歌子  
代理人 三村 量一  
代理人 原 秀貢人  
代理人 江島 孝毅  
代理人 南条 雅裕  
代理人 田中 夏夫  
代理人 野村 和歌子  
代理人 瀬田 あや子  
代理人 小原 淳史  
代理人 菊田 尚子  

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