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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1317331 |
審判番号 | 不服2015-10794 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-08 |
確定日 | 2016-07-22 |
事件の表示 | 特願2011- 48601「車両用充電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月27日出願公開、特開2012-186925〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判に係る特許出願は、平成23年3月7日を出願日とする出願であって、平成27年3月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年6月8日に審判請求がなされると共に、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成27年6月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年6月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正後の本願補正発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のように補正された。 ア.本件補正前 「【請求項1】 電気車両に供給する電流値を測定する電流センサを備えた充電ユニットと、 前記電気車両に搭載されたバッテリへの充電電流を制御する車両充電制御部と、を備え、 前記車両充電制御部は、最大充電量に対する現在の充電量の割合を示すように充電電流の電流値の割合を変化させ、 前記充電ユニットは、前記車両充電制御部での制御に基づき変化する電流値を前記電流センサにより測定することで前記現在の充電量を把握することを特徴とする車両用充電システム。」 イ.本件補正後 「【請求項1】 電気車両に供給する電流値を測定する電流センサを備えた充電ユニットと、 前記電気車両に搭載されたバッテリへの充電電流を制御する車両充電制御部と、を備え、 前記車両充電制御部は、最大充電量に対する現在の充電量の割合を示すように充電電流の電流値の割合を変化させ、 前記充電ユニットは、前記車両充電制御部での制御に基づき変化する電流値を前記電流センサにより測定することで、当該電流値の割合を前記最大充電量に対する前記現在の充電量を示すものとして把握することを特徴とする車両用充電システム。」(下線は、補正箇所を示すために当審で付したものである。) 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「変化する電流値」について、「電流値の割合」が「前記最大充電量に対する前記現在の充電量を示すもの 」という限定事項を付加したものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用発明 ア.原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された特開2010-110101号公報(以下、「引用例」という。)には、「バッテリ残量モニタシステム」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審で付加したものである。) 。 ・「【0001】 本発明は、バッテリ残量のモニタする技術に係り、特にプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)などの車両バッテリの残量モニタの技術に関する。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0007】 態様のひとつである車両に搭載されたバッテリの残量を監視するバッテリ残量モニタシステムは、充電コントローラ、電流モニタ装置、充電用電力線から構成される。 充電コントローラは、前記バッテリの残量を検出して前記残量に対応するバッテリ充電状態情報を算出して、系統電流を制御する。電流モニタ装置は、電流センサにより前記系統電流を監視し、前記系統電流から前記バッテリ充電状態情報を検出して前記バッテリの残量を算出し、前記バッテリの残量を表示する。充電用電力線は、前記充電コントローラと前記電流モニタ装置とを接続する。 【0008】 また、前記充電コントローラは、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出部と、前記バッテリ充電状態情報に対応して系統電流を制御する制御部と、前記制御部からの指示により前記系統電流の遮断と導通の切り替えを行う電流開閉部と、前記バッテリを充電するための整流部に設けられ、前記制御部からの指示によりバッテリ充電電流量を可変するインピーダンス可変部と、を備える。 【0009】 また、前記電流モニタ装置は、前記系統電流から前記バッテリ充電状態情報を検出する前記電流センサと、前記バッテリ充電状態情報に対応する前記バッテリの残量を算出するバッテリ残量計算部と、前記バッテリ残量計算部が算出した前記バッテリの残量を表示するバッテリ残量表示部と、を備える。」 ・「【0012】 以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。 図1は、PHV車両1に充電を行なう場合の構成を示した図である。PHV車両1は、バッテリ2、充電コントローラ3を備えている。 【0013】 バッテリ2への充電は、電線5(例えば、送電線)から家4に配置された分電盤6を介し、屋内配線7を経由してコンセント8に電力が供給され、このコンセント8に挿入されたプラグ9、充電プラグ10を介して充電コントローラ3により行なわれる。 【0014】 バッテリ残量のモニタは、電流センサ12、バッテリ残量計算部13、バッテリ残量表示部14により行なわれる。充電コントローラ3により生成された後述するバッテリ充電状態情報に従い充電ケーブル11に流れる電流を制御する。その電流を電流センサ12により監視し、その監視結果からバッテリ充電状態情報を解析してバッテリ残量を算出する。その後、その算出結果をバッテリ残量表示部14に通知する。 【0015】 なお、バッテリ残量計算部13で算出したバッテリ充電状態情報を、電力線通信(PLC)もしくは無線通信などの手段により家4の中に送信し、家4の中でバッテリ充電状態をモニタできるようにしてもよい。また、上記充電電流は直流でもよいし交流でもよい。 【0016】 なお、車両側であって、AC/DC変換(整流・平滑)後の直流電流を充電電流という。また、家側から車へ充電ケーブルにて供給する商用AC電流(AC100V、AC200Vなど)を系統電流という。 【0017】 図2は、充電コントローラ3と電流モニタ装置26の構成を示すブロック図である。 充電コントローラ3は、制御部21、バッテリ残量検出部22、整流部23、電流開閉部24を備えている。 【0018】 制御部21は、CPUやプログラマブルデバイスとメモリで構成され、充電コントローラ3の各部を制御するとともに、充電開始指令により電流開閉部24、インピーダンス可変部25の制御を開始する。また制御部21は、メモリに記憶されているバッテリ残量に対応した電流制御表に基づいてインピーダンス可変部25に指令を出して一定周期ごとに充電電流を制御する。 【0019】 バッテリ残量検出部22は、バッテリ2の電圧などからバッテリ残量を算出する。なお、バッテリ残量検出部22の機能は制御部21に設けてもよい。 電流モニタ装置26は、バッテリ残量計算部13、バッテリ残量表示部14を備えている。 【0020】 バッテリ残量計算部13は、例えば、電流/電圧変換器(I/V変換器)とアナログ/ディジタル変換器(A/D変換器)と、時間を算出するCPUと、メモリを備え、電流センサ12で検出した電流値をアナログ/ディジタル変換器で変換する。その後、変換した電流値に基づいて、メモリに記憶されている制御部21に記憶されているものと同じ電流制限表により上記CPUがバッテリ残量を算出する。 【0021】 バッテリ残量表示部14は、バッテリ残量計算部13から出力されたディジタルデータをバッテリ残量として表示する。」 ・「(電流低減量可変方式) 電流低減量可変方式について説明する。 【0040】 図6に電流低減量可変を行なうときに用いる電流低減量可変テーブルを示す。電流低減量可変テーブルは、制御部21およびバッテリ残量計算部13のメモリに格納されている。電流低減時間可変テーブルは、「バッテリ残量」「低減率」(バッテリ充電状態情報)のデータを有している。例えば、「バッテリ残量」にはバッテリ2の満充電時を100%とし、残量がないときを0%として、10段階でバッテリの残量を示している。「低減率」には、インピーダンス可変部25を制御するための「バッテリ残量」の10段階に対応する充電電流の低減割合(充電電流の最大値に対する充電電流の低減率)が格納されている。図6の例では「バッテリ残量」が「0」%であれば「低減率」は「5」%、「バッテリ残量割合」が「10」%であれば「低減率」は「10」%・・・「バッテリ残量」が「100」%であれば「低減率」は「55」%になっている。 【0041】 充電時の動作について説明する。 まず、充電ケーブル11により車両1と電流モニタ装置26を接続する。 次に、車側で充電開始指令が制御部21に伝えられると、制御部21は電流開閉部24を充電可能な状態にする。例えば、遮断器を導通状態にする。 【0042】 次に、制御部21は、バッテリ残量検出部22からバッテリ残量を得て充電電流を低減する量(率)(バッテリ充電状態情報)を決め、一定周期Tごとにインピーダンス可変部25を制御する。 【0043】 家側の電流モニタ装置は充電電流を電流センサによりモニタしているバッテリ残量計算部13は、充電電流が低減した量(率)(バッテリ充電状態情報)を測定し、予め決められた図6に示す電流低減量可変テーブルから残量を計算してバッテリ残量表示部14に通知する。 【0044】 図8の方式4に電流低減量可変を行う場合の例を示し説明する。バッテリ残量が80%のときは、充電コントローラ3により充電電流をΔtの間、45%低減させる。 バッテリ残量計算部13は、Δtの間充電電流が45%低減している箇所を検出して、45%低減に対応するバッテリ残量を電流低減量可変テーブルから選択する。同様にバッテリ残量が20%のときはΔtの間、充電電流15%に対応するバッテリ残量を電流低減量可変テーブルから選択する。」 上述した事項をふまえると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。 「プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)などの車両1に接続される充電ケーブル11に流れる系統電流を監視する電流センサ12を備えた電流モニタ装置26と、 前記車両1に搭載されたバッテリ2への充電電流量を可変する充電コントローラ3と、を備え、 前記充電コントローラ3は、満充電時を100%とし、残量がないときを0%として示すバッテリ残量に対応する低減率で充電電流を低減させ、 前記電流モニタ装置26は、前記充電コントローラ3が充電電流を低減した量を、前記電流センサ12により検出し、バッテリ残量を計算するバッテリ残量モニタシステム。」 (3)対比・判断 ア.本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)などの車両1」及び「車両1に搭載されたバッテリ2」は、本願補正発明の「電気車両」及び「電気車両に搭載されたバッテリ」に相当する。 (イ)引用発明の「充電ケーブル11に流れる系統電流」は、本願補正発明の「電気車両に供給する電流」に相当する。 また、引用発明において、「系統電流を監視する」ことは、系統電流の電流値の変化を測定するものといえ、引用発明の「車両1に接続される充電ケーブル11に流れる系統電流を監視する電流センサ12」は、本願補正発明の「電気車両に供給する電流値を測定する電流センサ」に相当する。 (ウ)引用発明の「前記車両1に搭載されたバッテリ2への充電電流量を可変する充電コントローラ3」は、充電に関する電流量を制御する車両1に搭載された制御部といえ、本願補正発明の「電気車両に搭載されたバッテリへの充電電流を制御する車両充電制御部」に相当する。 (エ)引用発明の「満充電時」とは最大充電量まで充電された時を意味するものである。 そうすると、引用発明の「満充電時を100%とし、残量がないときを0%として示すバッテリ残量」は、実質的に最大充電量に対する現在の残量を%で示すものといえ、%で示す値は割合と同義であるから、本願補正発明の「最大充電量に対する現在の充電量の割合を示す」ことに相当する。 (オ)引用発明の「充電電流を低減」する「低減率」は、充電電流が低減するように変化する量を率で示すものであり、低減される前の充電電流値と低減された充電電流値との割合を示す値といえる。 そうすると、引用発明の「満充電時を100%とし、残量がないときを0%として示すバッテリ残量に対応する低減率で充電電流を低減させ」ることは、充電電流を低減させる率を、%で示される現在のバッテリ残量に対応させることといえ、共に割合で示される値を対応させるものであるから、本願補正発明の「最大充電量に対する現在の充電量の割合を示すように充電電流の電流値の割合を変化させ」ることに相当する。 (カ)引用発明の「電流モニタ装置26」と、本願補正発明の「充電ユニット」とは、「電気車両に電流を供給する装置」である点において共通する。 引用発明において、「電流モニタ装置26」が、「前記充電コントローラ3が充電電流を低減した量を、前記電流センサ12により検出し、バッテリ残量を計算する」ことは、充電電流が低減された「低減率」に対応したバッテリ残量を示す%の値を計算することである。 また、バッテリ残量を計算することは、現在の充電量を把握することと同義といえ、引用発明の「前記電流モニタ装置26は、前記充電コントローラ3が充電電流を低減した量を、前記電流センサ12により検出し、バッテリ残量を計算する」ことと、本願補正発明の「前記充電ユニットは、前記車両充電制御部での制御に基づき変化する電流値を前記電流センサにより測定することで、当該電流値の割合を前記最大充電量に対する前記現在の充電量を示すものとして把握する」こととは、「電気車両に電流を供給する装置は、前記車両充電制御部での制御に基づき変化する電流値を前記電流センサにより測定することで、当該電流値の割合を前記最大充電量に対する前記現在の充電量を示すものとして把握する」ことで共通する。 (キ)引用発明の「バッテリ残量モニタシステム」は、充電電流の供給を行なうことでバッテリ残量モニタを行うシステムである点において、本願補正発明の「車両用充電システム」に相当する。 (ク)そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 電気車両に供給する電流値を測定する電流センサを備えた電気車両に電流を供給する装置と、 前記電気車両に搭載されたバッテリへの充電電流を制御する車両充電制御部と、を備え、 前記車両充電制御部は、最大充電量に対する現在の充電量の割合を示すように充電電流の電流値の割合を変化させ、 前記電気車両に電流を供給する装置は、前記車両充電制御部での制御に基づき変化する電流値を前記電流センサにより測定することで、当該電流値の割合を前記最大充電量に対する前記現在の充電量を示すものとして把握する車両用充電システム。 <相違点> 本願補正発明では、「電気車両に電流を供給する装置」が、「充電ユニット」であり、「充電」に関する「ユニット」として電気車両に電流を供給するのに対し、引用発明の「電流モニタ装置26」は、電流を供給しながら充電状態を専ら「モニタ」する装置である点。 イ.相違点について検討する。 電気車両に電流を供給する装置を、電流の供給の制御等、充電に関する構成を有する「充電装置」として構成することは周知の技術であり(例えば、原査定の拒絶の理由に引用文献2として示された特開2007-236173号公報(【0034】、【0035】、図1)や、特開2010-104209号公報(【0027】、【0028】、図1)を参照。)、また、1つの装置単位を「ユニット」と称することも常套されることである。 したがって、電気車両に電流を供給する装置として構成された引用発明の「電流モニタ装置26」を、モニタのみならず充電に関する構成をも有する「充電ユニット」とすることは、当業者にとって通常の創作能力を発揮してなし得たことである。 しかも、本願補正発明の発明特定事項によって、引用発明及び上記周知の技術的事項からみて格別な効果がもたらされるということもできない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (4)小括 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成27年6月8日付けの手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本件に係る出願の各請求項に係る発明は、平成27年1月13日付け手続補正書に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1は、「2.(1)ア.」に記載したとおりである(以下、この請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 (2)引用発明 引用文献及びその記載事項並びに引用発明は、「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、「2.(3)ア.」での検討を踏まえれば、両者の相違は、上記相違点と同様である。 そして、本願補正発明と引用発明との相違点についての「2.(3)イ.」での検討を踏まえれば、本願発明も、それと同様の理由により、引用発明及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということができる。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-17 |
結審通知日 | 2016-05-24 |
審決日 | 2016-06-08 |
出願番号 | 特願2011-48601(P2011-48601) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤穂 嘉紀 |
特許庁審判長 |
新海 岳 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 矢島 伸一 |
発明の名称 | 車両用充電システム |
代理人 | 福田 充広 |