ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N |
---|---|
管理番号 | 1317333 |
審判番号 | 不服2015-11559 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-18 |
確定日 | 2016-08-09 |
事件の表示 | 特願2013-168823「デジタルスライド画像を表示する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月 9日出願公開、特開2014- 2166、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年9月19日を国際出願日とする外国語特許出願の一部を平成25年8月15日(パリ条約による優先権主張:平成19年9月21日 米国)に新たな特許出願としたものであって、平成26年5月22日付けで拒絶理由が通知され、同年9月29日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされたが、平成27年2月18日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、同査定の謄本は、同月24日に請求人に送達された。 これに対し、同年6月18日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に手続補正書の提出がされ、その後、当審において平成28年3月14日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年6月15日に意見書及び手続補正書の提出がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成28年6月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 病理学情報を解釈するデジタル環境においてデジタルスライド画像を表示する方法であって、 組織試料のデジタルスライド画像の少なくとも一部を識別するナビゲーション命令を受け取るステップと、 第1分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示するステップと、 前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の前記第1分解能の画像が表示された後、所定の時間の閾値の間、表示されたか否かを判定するステップと、 前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の前記第1分解能の画像が表示された後、所定の時間の閾値の間、表示されたと判定された場合、前記第1分解能よりも分解能が高い第2分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示するステップと、 を備えることにより、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示している限り、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の最大分解能の画像が表示されるまで、各々の所定の時間の経過後に、より高い分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部をプログレッシブレンダリングし、 更に、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の最大分解能の画像が表示され、所定の時間の経過後においてなお最大分解能の前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を表示している場合には、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を強調するために前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を処理し、前記デジタルスライド画像の強調処理された識別された少なくとも一部を表示するステップと、 を含むことを特徴とする方法。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 <理由1> この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・引用文献1:特表2005-530138号公報 ・引用文献2:特開平10-274741号公報 引用文献1には、「組織標本の重要な構造を自動的に補足するコンピュータを利用する装置およびその方法」(段落【0001】)に関する発明が記載されており、染色された組織標本について、まず第1の解像度で前記組織標本の顕微鏡画像(第1のピクセルデータセット)を補足し、前記第1のデータセットにユーザの指定した重要な構造(組織)に合致する領域が含まれない場合には、より分解能の高い第2の分解能で画像(第2のピクセルデータセット)を補足する処理を行うことが記載されている(段落【0156】-【0169】、第3図参照)。 引用文献2には、病理検体の顕微鏡撮像画像を通信網を介して病理医師の端末に伝送し、病理医師がで前記伝送された被検体の撮像画像を見ることで病理検査を行える被検体遠隔観測システムに関し、撮像条件の変更操作に応じてその撮像画像を応答性よく表示できるようにし、しかも高精細の画像を表示することで高精度の検査を可能とすることを目的として(段落【0011】)、「静止画伝送モードにおける画像伝送方式としてプログレッシブ画像表示方式を適用し・・・最初は低精細の静止画データを高速度に伝送して表示させ、以後複数段階にわたって徐々に精細度を高めた静止画データを順次伝送して表示させる」(段落【0057】、第4図)ことが記載されている。また、現在の表示倍率を画面上(インジケータ)に表示させることも記載されている(第8図参照)。 文献1において、文献2に記載のように分解能の高い画像を徐々に(すなわち、時間経過とともに)取得するようにすることに、格別の技術的困難性は見出せない。 また、病理組織の染色画像を必要に応じて強調処理等を行うことは例示するまでもなく周知の手法であり、どのような画像処理を行うかは当業者が適宜設定しうる事項に過ぎない。 2 原査定の理由の判断 (1)引用文献の記載事項 ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明1について (ア)「【0001】 本発明は組織標本の重要な構造の画像を自動的に捕捉するコンピュータを利用する装置及び方法に関する。」 (イ)「【0156】 ・・・ 図3は、本発明の実施形態に従って、組織標本の重要な構造の画像を自動的に捕捉するコンピュータを利用した方法の論理フロー200を描いている図である。組織標本は、通常、論理フロー200を開始する前には染色されていない。組織標本はヘマトキシリン、DNA/RNAを含む構造のための強い親和力を備える紫-青基本染料などの細胞核を視覚化するための核コントラスト染色で染色される。組織標本は、ベクタラボラトリーズ(Vector Laboratories)のベクタ(Vector)Rレッド(VR)などの「高速赤色」染色として一般的に知られている赤のアルカリホスファターゼ基板で染色される場合もある。高速赤色染色は、重要な蛋白質がどこで表されるのかを視覚化するために既知の抗体の近くで沈殿する。組織内のこのような領域は、「ベクタレッドポジ」または「高速レッドポジ」領域と呼ばれることもある。ある位置での高速赤色信号強度は、その位置でのプローブ結合の量を示している。組織標本は多くの場合重要な構造の存在を決定する以外の組織標本の使用のために高速赤色で染色され、高速赤色シグナチャは、通常本発明の構造-識別アルゴリズムで抑制される。」 (ウ)「【0157】 開始ブロックSの後、論理フローはブロック205に移動し、第1の解像度での組織標本26の顕微鏡画像が捕捉される。また、ブロック205では、組織標本の捕捉されたカラー画像を表す第1のピクセルデータセットが生成される。さらに、ブロック205は第1の解像度で第1のピクセルデータセットを捕捉するために画像捕捉装置を調整することを含んでよい。 【0158】 論理フローはブロック210に移動し、第1のピクセルデータセット及び組織標本の組織タイプの識別が計算機100のメモリ104などの計算機のメモリの中に受け入れられる。次に論理フローは、重要な構造のユーザ指定が受け取られるブロック215に移動する。例えば、ユーザが結腸組織の上皮細胞組織構成要素に関心がある場合がある。ブロック215で、論理フローは、上皮細胞が重要な構造であるというユーザの指定を受け取るであろう。 【0159】 次に、論理フローはブロック220に移動し、組織タイプに対応する少なくとも1つの構造-識別アルゴリズムが計算機内の複数の記憶されている構造-識別アルゴリズムから選択される。複数のアルゴリズムの構造-識別アルゴリズムの少なくとも2つが、異なる組織タイプに対応し、各構造-識別アルゴリズムは、指定された組織タイプの中の少なくとも1つの細胞パターンを、指定された組織タイプの重要な構造の存在と関連付ける。構造-識別アルゴリズムは、図2のフィルタクラス180などのデータをフィルタリングするためのコンピュータシステムで実行できる任意のタイプのアルゴリズムであってよい。」 (ウ)「【0160】 次に、論理フローはブロック225に移動し、選択された少なくとも1つの構造-識別アルゴリズムが画像を表す第1のピクセルデータセットに適用される。組織タイプが結腸組織である過去の例を使用して、適用された構造-識別アルゴリズムはFilterColonZoneである。表3及び表5は、第1のピクセルデータセットを3つのクラスの領域、つまり核、細胞形質、及びホワイトスペースに分割するとしてこのフィルタの態様を説明する。分割結果に基づき、それぞれのクラスに「密度マップ」が計算される。密度マップを使用して、アルゴリズムは「ターゲットゾーン」、つまり重要な細胞構成要素、つまり上皮細胞、胃の筋肉、粘膜下組織、及び筋性粘膜の潜在的な位置を検出する。それぞれの潜在的なターゲットゾーンは、次に、局所的な統計、及びその位置及び境界のより正確な推定を得るために実行される形態的な演算のためのツールを使用して分析される。中間マスク内の領域は、4つの細胞構成要素について以下のグレイレベルで標識化される。つまり、上皮細胞??50、平滑筋??100、粘膜下組織??150、及び筋性粘膜??200である。 【0161】 上皮細胞領域を得るために、Otsu閾値技法が核密度マップに適用される。核密度がOtsu閾値を越える領域は潜在的な上皮細胞として分類される。潜在的な上皮細胞領域の中で、指定された大きさの範囲について、及び「空の」近隣の特定の範囲内で隔離されたブロブを削除する「隔離ブロブ削除」プロセスが適用される。次のステップは、それらの形状の固有軸に基づいて「細長」すぎるブロブを削除する形状フィルタを呼び出すことである。次に、形態的な器官拡張が残りのブロブの端縁を滑らかにする。この演算のシーケンスの結果は、上皮細胞領域とさらに密接に相互に関連付けるピクセルの集合である。 粘膜下組織領域を検出するために、最初に元の画像のグレイスケールコピーの分散マップが作成される。Otsu閾値が次に変動マップに適用される。それは、分散がOtsu閾値を超える分散マップの部分を保持することにより潜在的な粘膜下組織領域及び上皮細胞領域を分割する。粘膜下組織領域は上皮細胞とはバラバラにされているため、後者は削除することが可能で、潜在的な粘膜下組織マップはこのようにして作成される。大きさをベースにしたフィルタは、次に特定の範囲を下回る、または特定の範囲を超えるブロブを削除するために適用される。粘膜下組織領域と密接に相互に関連付けるピクセルの集合はこのようにして得られる。 【0162】 潜在的な筋肉領域を検出するために、Otsu閾値は細胞形質密度マップに適用される。密度値が閾値を超えるマップの領域は、潜在的な筋肉領域のための初期推定値として標識化される。潜在的な筋肉領域から上皮細胞領域及び粘膜下組織領域を除外した後、隔離ブロブリムーバが使用され、大きすぎるあるいは小さすぎる、及び十分に「空の」近隣領域を備えるブロブを取り除く。この演算のシーケンスは、最終筋肉マップと密接に相互に関連するピクセルの集合を生じさせる。 【0163】 バイナリ構造マスクは、第1のピクセルデータセットに適用される構造-識別アルゴリズム(複数の場合がある)によって生成されるフィルタ中間マスクから計算される。バイナリ構造マスクは、ピクセルが重要な構造の範囲内にある場合ピクセル値はゼロより大きく、それ以外の場合ゼロであるバイナリ画像である。フィルタ中間マスクがユーザ指定の重要な構造のマップを含む場合、バイナリ構造マスクはフィルタ中間マスクから直接的に生成されてよい。フィルタ中間マスクが、重要な構造、つまり細胞構成要素の存在を決定するために相互関連を必要とする細胞構成要素を含む場合、併置演算子が中間マスクに適用され、中間マスクの細胞構成要素の間に、合致、交差、近接等があるかどうかを突き止める。追加の例によって、結腸組織標本のための指定された重要な構造が表1に一覧表示されている4つすべての組織構成意要素を含んでいた場合には、バイナリ構造マスクは重要な構造を構成する4つの構成要素の少なくとも1つの細胞パターンの位置の交差または合致により重要な構造の存在を説明、決定するであろう。 【0164】 バイナリ構造マスクは、通常、細胞パターンが合致または交差する第1のデータセット内のそれらのピクセルについて「1」を、他のピクセルについて「0」を含む。バイナリ構造マスク内の最小数のピクセルが「1」を含むとき、重要な構造は存在すると判断される。交差または合致の領域がない場合には、重要な構造は存在せず、論理フローは終了ブロックEに移動する。それ以外の場合、論理フローは、重要な構造を有する少なくとも1つの重要な領域(ROI)が第2の解像度画像の捕捉のために選択されているブロック230に移動する。」 (エ)「【0165】 表2、表4、及び表7に説明されているFilterROISelectorなどのフィルタは、重要な領域を決定するために、重要な構造を備える細胞構成要素の位置をマーキングするブロック225で生成されるバイナリ構造マスクを使用する。重要な領域は、重要な構造の第2の解像度画像を捕捉するための組織標本内の場所である。重要な領域マスクを作成する方法は、重要な候補領域を定めるために、バイナリ構造マスク画像を、重要な領域の所定数より数が多い、多くのほぼ等しい大きさの断面に分割することを含む。次に、重要なそれぞれの候補領域のための中心の最適位置が選択される。次に、それぞれの重要な候補領域は、マスクが正の値を有する重要な領域内のピクセルの端数を計算することによりスコアが計算され、どの程度まで所望される構造が存在するのかを示す。次に、重要な候補領域は重複制約でスコアごとに並べ替えられる。それから、重要な上位スコアの候補領域が重要な領域として選択される。 【0166】 ブロック230で重要な領域を選択することは、前記表3及び/表7に説明された性能指数のプロセスに応えて第2のピクセルデータセットの捕捉のために、重要な核領域内の最適位置を選択することも含んでよい。性能指数に対応して最適位置を選択する方法は、複数の小区分の中に重要な各領域を分割することを含む。次に「最善の」小区分は、小区分ごとに性能指数を計算することにより選択される。性能指数は、平均化ウィンドウ内の正のマスクピクセルの割合に応じて、0から1の範囲の値を有する結果として生じる性能指数画像について重要な領域に一致する大きさの平均化ウィンドウを使用してバイナリ構造マスクをフィルタリングし、小区分内のすべてのピクセル上で性能指数画像を平均化することにより指定された小区分の性能指数を得て計算され、高い方の数が低い方の数より優れている。最後に、小区分がピクセルサイズになるまで分割ステップ及び選択ステップを繰り返す。」 (オ)「【0167】 次に論理フローはブロック235に移動し、画像捕捉装置が、第2の解像度で第2のピクセルデータセットを捕捉するために調整される。画像捕捉装置は図1のロボット顕微鏡21であってよい。調整ステップは、画像捕捉装置を基準にして組織標本を移動し、第2のピクセルデータセットを捕捉するために位置合わせさせることを含んでよい。調整ステップは、第2の解像度を提供するために画像捕捉装置のレンズ倍率を変化させることを含ん でよい。調整ステップはさらに第2の解像度を提供するために画像捕捉装置のピクセル密度を変更することも含んでよい。 【0168】 論理フローはブロック240に移動し、画像捕捉装置は第2の解像度での色で第2のピクセルデータセットを捕捉する。複数の重要な領域が選択されると、論理フローはブロック235と240を繰り返し、画像捕捉装置を調整し、重要な領域ごとに設定されている第2のピクセルデータを捕捉する。論理フローは、第2のピクセルデータセットが、コンピュータメモリまたはハードディスクドライブ内などの記憶装置に保存されるブロック245に進む。代わりに、第2のピクセルデータセットは、紙に印刷する、または写真フィルムに露光するなどの目に見える視覚媒体に保存されてよい。 【0169】 論理フロー200は、第2のピクセルデータセットが顕微鏡スライド上の組織標本ごとに捕捉されるまで繰り返されてよい。第2のピクセルデータセットの捕捉後、論理フローは終了ブロックEに戻る。 」 (カ)「【0170】 代替実施形態、論理フロー200は、組織タイプに対応する構造-識別アルゴリズムが第1の解像度で重要な構造の存在を決定できないが、重要な構造が位置している可能性がある領域の存在を決定できる状況について第2のピクセルデータセットを捕捉するための反復プロセスを含む。この代替実施形態では、ブロック220、225、及び230で、選択されたアルゴリズムが第1のピクセルデータセットに適用され、重要な構造が位置している可能性がある重要な領域が選択される。画像捕捉装置は、第1の解像度より高い解像度で中間ピクセルデータセットを捕捉するためにブロック235で調整される。プロセスは、中間ピクセルデータセットがメモリ内に受け取られるブロック210に戻り、選択されたアルゴリズムはブロック225で重要な構造の存在を決定するために中間ピクセルデータセットに適用される。この反復プロセスは、重要な構造の第2の解像度画像を捕捉するために、必要に応じて繰り返されてよい。この代替実施形態の反復プロセスは、多くの場合、第1の解像度画像の捕捉のために通常使用される5X倍率では認識できないライディヒ細胞またはハッサル小体を検出する際に使用されてよい。中間ピクセルデータセットは、20X倍率で捕捉されてよく、追加ピクセルデータセットは、重要な構造が存在するかどうかの判断のために40X倍率で捕捉されてよい (キ)図3 (ク)上記(ア)ないし(カ)の記載事項及び(キ)図3を総合すると、引用文献1には、つぎの発明が記載されているものと認められる。 「組織標本の重要な構造の画像を自動的に捕捉するコンピュータを利用する方法であって、 第1の解像度での組織標本26の顕微鏡画像が捕捉され、 組織標本の捕捉されたカラー画像を表す第1のピクセルデータセットが生成され、 第1のピクセルデータセット及び組織標本の組織タイプの識別がコンピュータのメモリの中に受け入れられ、 重要な構造についてのユーザの指定を受け取り、 組織タイプに対応する少なくとも1つの構造-識別アルゴリズムが計算機内の複数の記憶されている構造-識別アルゴリズムから選択され、 選択された少なくとも1つの構造-識別アルゴリズムが画像を表す第1のピクセルデータセットに適用され、 重要な構造が位置している可能性がある重要な領域が選択され 画像捕捉装置は、第1の解像度より高い解像度で中間ピクセルデータセットを捕捉するためにブロック235で調整され この反復プロセスは、重要な構造の第2の解像度画像を捕捉するために、必要に応じて繰り返され 重要な構造を有する少なくとも1つの重要な領域(ROI)が第2の解像度画像の捕捉のために選択され、 画像捕捉装置が、第2の解像度で第2のピクセルデータセットを捕捉するために調整され、 画像捕捉装置は第2の解像度での色で第2のピクセルデータセットを捕捉する方法」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 イ 引用文献2の記載事項及び引用文献2に記載された技術について (ア)「【0010】 【発明が解決しようとする課題】上述したように従来から提唱されている遠隔観測システムは、一般医師側から病理医師側に対し、病理検体の静止画像を圧縮したのちISDN回線により伝送するようにしているが、静止画データがデータ量が多いため伝送時間だけで数十秒もかかってしまう。このため、病理医師がハンドル操作を行って病理検体13の位置や顕微鏡の倍率、フォーカス調整を行ってから、その調整後の静止画像が観測装置10から遠隔装置30に伝送されて表示装置33に表示されるまで、病理医師は数十秒も待たされることになり、効率のよい検査を行うことができない。 【0011】この発明は上記事情に着目してなされたもので、その主たる目的は、撮像条件の変更操作に応じてその撮像画像を応答性良く観測装置から遠隔装置へ伝送し表示できるようにし、しかも高精細の画像を表示することで高精度の検査を可能とした被検体遠隔観測システムを提供することにある。」 (イ)「【0054】なお、以上の説明では、検体移動ハンドル305を操作した場合に動画伝送モードとなって観測装置100から遠隔装置へ病理検体103の符号化動画データが送られ、検体移動ハンドル305の操作を停止すると静止画伝送モードに移行して高精細の静止画データが伝送される場合について述べた。しかし、それに限らず、焦点合わせハンドル306や倍率切り替えハンドル307を操作した場合にも、同様の制御を実行しても良い。 【0055】すなわち、検体移動ハンドル305、焦点合わせハンドル306および倍率切り替えハンドル307のうちのいずれのハンドルであっても、それを操作している期間には動画伝送モードとして符号化動画データを伝送し、上記3つのハンドルのいずれも操作していない期間には静止画伝送モードに移行して高精細の符号化静止画データを伝送するようにする。 【0056】また、上記説明では、静止画伝送モードにおいて、1画面分の撮像画像を9つの同じ大きさの領域に分割し、これらの領域の静止画データを順次伝送するようにしたが、図3に示すように1画面分の撮像画像を同心楕円状に複数の領域に分割し、これらの領域の静止画データを中心から周辺に向かって順次伝送するようにしても良い。 【0057】また、静止画伝送モードにおける画像伝送方式としてプログレッシブ画像表示方式を適用してもよい。例えば、図4(a)?(c)に示すごとく最初は低精細の静止画データを高速度に伝送して表示させ、以後複数段階にわたって徐々に精細度を高めた静止画データを順次伝送して表示させるようにしてもよい。 」 (ウ)上記の記載によれば、引用文献2には、「撮像条件の変更操作に応じてその撮像画像を応答性良く観測装置から遠隔装置へ伝送し表示できるようにし、しかも高精細の画像を表示することで高精度の検査を可能とした被検体遠隔観測システムを提供する」ことを目的として、「病理検体の画像を、検体移動ハンドル305、焦点合わせハンドル306および倍率切り替えハンドル307のうちのいずれかのハンドルを操作している期間は、動画伝送モードとして符号化動画データを伝送して表示し、いずれも操作していない期間には、静止画伝送モードに移行して、最初は低精細の静止がデータを高速度に伝送して表示させ、以後複数段階にわたって徐々に精細度を高めた静止画データを順次伝送して表示させるようにする」技術が記載されているものと認められる。 (2)対比 引用発明1において、捕捉された第1のピクセルデータセット及び第2のピクセルデータセットが表示されるものであることは明らかである。 してみると、本願発明と引用発明1とを対比すれば、両者はつぎの一致点で一致し、各相違点で相違する。 <一致点> 「病理学情報を解釈するデジタル環境においてデジタルスライド画像を表示する方法であって、 第1分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示するステップと、 前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の前記第1分解能の画像が表示された後、前記第1分解能よりも分解能が高い第2分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示するステップと を備えることにより、必要に応じてより高い分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部をプログレッシブレンダリングすることを特徴とする方法。」 <相違点1> 「デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の前記第1分解能の画像が表示された後、前記第1分解能よりも分解能が高い第2分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示するステップ」に関して、本願発明は、「第1分解能の画像」が、「所定の時間の閾値の間、表示されたか否かを判定」し、「所定の時間の閾値の間、表示されたと判定された場合」に、「第1分解能よりも分解能が高い第2分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示する」のに対して、引用発明1は、そのように特定されない点 <相違点2> 本願発明が「デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示している限り、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の最大分解能の画像が表示されるまで、各々の所定の時間の経過後に、より高い分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部をプログレッシブレンダリング」するものであるのに対して、引用発明1は、「重要な構造の第2の解像度画像を捕捉するために、画像捕捉装置は必要に応じてより高い分解能で第2の解像度での色で第2のピクセルデータセットを捕捉する」ものである点 <相違点3> 本願発明が「前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の最大分解能の画像が表示され、所定の時間の経過後においてなお最大分解能の前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を表示している場合には、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を強調するために前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を処理し、前記デジタルスライド画像の強調処理された識別された少なくとも一部を表示するステップ」を備えるのに対して、引用発明1は、そのように特定されない点 (3)判断 上記各相違点について検討する。 ア 相違点1について 相違点1について検討するに、引用文献2には、「病理検体の画像」を、3つのハンドルを操作している期間は、動画伝送モードとして「符号化動画データを伝送して表示し」、「いずれも操作していない期間」には「静止画伝送モード」として「最初は低精細の静止画データを高速度に伝送して表示させ、以後複数段階にわたって徐々に精細度を高めた静止画データを順次伝送して表示させるように」する技術が記載されている。 引用発明1において、「第1の解像度」より高い「第2の解像度画像」は、画像捕捉装置の解像度を調整して「捕捉」するものである点で、引用文献2の技術のプログレッシブレンダリングとは異なる技術であるから、引用発明1の「第2の解像度画像」を「捕捉」するにあたって引用文献2の技術を適用することは技術的に困難であると言わざるを得ない。 なお、原査定の理由とは異なる論理付けとなるが、引用発明1において、引用文献2の記載の技術を適用するにあたっては、引用発明1の「第1の解像度」、「第2の解像度画像」とは関係なく、画像捕捉手段で捕捉した画像を転送表示する際に適用するものとして検討した場合においても、引用文献2に記載の技術は、3つのハンドルのいずれも操作していない期間に、静止画像が表示されており、3つのハンドルのいずれかを操作している期間には、符号化動画を表示しているものであること、そして、いずれの操作もしていない期間に、静止画を複数段階にわたって徐々に精細度を高めた静止画データを順次伝送して表示させるようにするものであるから、静止画データが表示されている時間が長ければそれに応じて順次高分解能の画像が表示されるものであるとはいえるものの、引用文献2において表示される「静止画」は、各精度の静止画データが、順次伝送される時間の経過後に表示されるものであって、本願発明のように、「所定の時間の閾値間、表示されたか否かを判定する」ことがされるものではない。 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、上記相違点1を容易に想到し得るということはできない。 イ 相違点2について 相違点2について検討するに、引用発明1の「第2の解像度画像」を「捕捉」するにあたって引用文献2の技術を適用することは技術的に困難であると言わざるを得ないことは上記アにおいて検討したとおり。 なお、原査定の理由とは異なる論理付けとなるが、引用発明1において、引用文献2の記載の技術を適用するにあたっては、引用発明1の「第1の解像度」、「第2の解像度画像」とは関係なく、画像捕捉手段で捕捉した画像を転送表示する際に適用するものとして検討した場合においては、引用文献2の技術は、上記アで検討したように「静止画データが表示されている時間が長ければそれに応じて順次高分解能の画像が表示される」ものといえるから、本願発明の「デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を取得して表示している限り、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の最大分解能の画像が表示されるまで、各々の所定の時間の経過後に、より高い分解能で前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部をプログレッシブレンダリング」するものに相当するものといえる。 そうすると、このように検討した場合には、上記相違点2は、当業者が容易に想到し得るものと言い得るものである。 ウ 相違点3について 上記相違点3に係る構成については、引用文献2には開示も示唆もされていない。 なお、原査定で指摘するように、病理組織の染色画像を必要に応じて強調処理等することが周知の手法であったとしても、本願発明の上記相違点3に係る構成である「前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の最大分解能の画像が表示され、所定の時間の経過後においてなお最大分解能の前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を表示している場合」に、「前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を強調するために前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を処理し、前記デジタルスライド画像の強調処理された識別された少なくとも一部を表示する」ことが容易に想到し得るものということはできず、また、このことが周知であるということもできない。 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、上記相違点3を容易に想到し得るものということはできない。 (4)小括 上記で検討したとおり、本願発明は、当業者が引用発明1及び引用文献2に記載の技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項2-17に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 「 第1 特許法第29条第2項 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 請求項1,7?20/引用例1,3/ 本願の優先権主張の日前に頒布された特開2000-78576号公報(以下、「引用例3」という。)の【0055】-【0056】には、「医療画像を表示する方法において、オペレータがプログレッシブ再生される医療画像を観察し、読影に十分と思われる解像度に達したら、中断ボタンをオンとすることにより、プログレッシブ転送を停止させる方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 一方、本願の優先権主張の日前に頒布された特表2005-530138号公報(以下、「引用例1」という。)の【0012】-【0014】,【0164】,【0170】の記載から見て、段階的な解像度が要求される医療画像の例として、病理学用の顕微鏡スライドのデジタル画像における重要な領域(ROI)があることは、周知技術である。 してみれば、引用発明において、引用例1を挙げて示した上記周知技術を踏まえて、病理学用の顕微鏡スライドのデジタル画像(デジタルスライド画像)を対象とすることは、当業者が容易に想到しうるものである。 よって、請求項1,7?20に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第2 特許法第36条第6項第2号 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 記 1 請求項2 (1) 多数記載された「少なくとも一部」と「識別」との関係の有無が明確でない(例えば「少なくとも一部」を「識別された少なくとも一部」と補正されたい)。 (2) 「ユーザが閲覧している限り」の意味が明確でない(この条件は文言上、画像が表示され続けているにもかかわらずユーザが離席等して画像を見なくなったときに成立しなくなるため、発明の詳細な説明の開示と明らかに整合しない。例えば「取得して表示している限り」と補正されたい)。 (3) 「第1分解能で…取得して表示するステップ」から「前記デジタルスライド画像の少なくとも一部の前記第1分解能の画像が表示された後、所定の時間の閾値の間…取得して表示するステップ」までと、「前記デジタルスライド画像の少なくとも一部をユーザが閲覧している限り…プログレッシブレンダリングし…強調処理された少なくとも一部を表示するステップ」における「プログレッシブレンダリングし」との関係が明確でない(文言上、両者は異なるステップを構成しているが、「プログレッシブレンダリング」の技術的意義からすれば、前者は後者に包含されるべきものである)。 (4) 「時間の経過」の「時間」の定義が(「所定の時間」との関連で)明確でない。 2 請求項3?6 上記「1 請求項2」の(1)と同様。 3 まとめ よって、請求項2?6に係る発明は明確でない。 」 2 当審拒絶理由の「第1 特許法第29条第2項」についての判断 (1)引用例の記載事項 ア 引用例3(特開2000-78576号公報)に記載の事項及び引用発明3について (ア)「【0055】次いで、第1の実施形態の動作について説明する。図3は第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。まず、ステップS1においてオペレータが表示出力端末3の入力手段5から所望とする画像データSの転送指示を入力すると、その指示がネットワーク2を介して画像サーバ1に入力される。画像サーバ1は転送指示の入力を受けると、上述したように圧縮された画像データSを低解像度側の階層データから順次表示出力端末3にプログレッシブ転送する(ステップS2)。表示出力端末3は順次プログレッシブ転送された階層データを解凍しつつ画像として再構成し、低解像度側のデータから順にモニタ6に表示する(ステップS3)。これによりモニタ6には画像がプログレッシブ再生されることとなる。 【0056】ここで、医療画像においては最高解像度の画像でなくとも、これよりも低解像度の画像にて十分に読影、診断を行うことが可能な場合がある。したがって、オペレータはモニタ6にプログレッシブ再生される画像を観察し、読影に十分と思われる解像度に達したら入力手段5に設けられた中断ボタンをオンとすることにより、プログレッシブ転送を停止させる。これを実施するため、まずステップS4において全ての解像度の階層データが転送されたか否かが判断される。ステップS4が肯定された場合は中断ボタンがオンとされることなく全解像度の階層データが転送されたこととなるため、処理を終了する。ステップS4が否定された場合はステップS5において中断ボタンがオンされたか否かが判断される。ステップS5が否定された場合はステップS2に戻ってさらに未転送の階層データの転送が続けられ、ステップS2からステップS5の処理が繰り返される。中断ボタンがオンとされた場合はステップS5が肯定され、その指示が画像サーバ1に転送される。画像サーバ1はこの中断命令を受けてプログレッシブ転送を停止する(ステップS6)とともに、タイマー7を起動する(ステップS7)。 【0057】この状態において、オペレータはモニタ6に表示されている画像が読影に十分な解像度である場合は読影を行うが、より高解像度の詳細な画像が必要であると判断した場合には、所定時間内に入力手段5より継続命令を指示する。これを実行するため、画像サーバ1においてはステップS8においてタイマー7が起動してから所定時間経過したか否かが判断され、所定時間経過しても表示出力端末3からの継続命令がない場合はこれ以上の階層データの転送の必要はないと判断し、プログレッシブ転送を完全に中止して処理を終了する。一方、ステップS8が否定された場合、ステップS9において継続命令があったか否かが判断され、継続命令がない場合はステップS8に戻り、ステップS8およびステップS9の処理が繰り返される。一方、継続命令があった場合はステップS2に戻り、未転送の階層データの転送を再開する。そして、ステップS2からステップS9の処理が繰り返され、全解像度の階層データが転送された、あるいは中断ボタンがオンとされた後所定時間経過しても継続命令がなかった場合に処理を終了する。 【0058】このように、本実施形態においては、プログレッシブ転送される階層データをモニタ6にプログレッシブ再生し、読影に十分な解像度の階層データが転送された時点において、プログレッシブ転送を中断するようにしたため、中断された以降の階層データを転送する必要がなくなる。したがって、中断された以降の階層データを転送するために必要な時間を短縮することができ、これにより、診断を効率よく行うことができる。また、中断した解像度の画像よりもより高解像度の画像が必要である場合には転送を再開することができるため、オペレータの任意の要望に応えることができる。さらに、転送中断後所定時間経過しても転送継続の指示がない場合には、プログレッシブ転送を完全に中止するようにしたため、プログレッシブ転送を中止したい場合にオペレータがその旨を入力する必要がなくなり、これにより、オペレータの作業を省略して負担を軽減することができる。」 (イ) 図3 (ウ)上記(ア)の記載及び(イ)の図3によれば、引用例3には、 「 医療画像を表示する方法において、 画像サーバ1は転送指示の入力を受けると、上述したように圧縮された画像データSを低解像度側の階層データから順次表示出力端末3にプログレッシブ転送するものであって、 表示出力端末3は順次プログレッシブ転送された階層データを解凍しつつ画像として再構成し、低解像度側のデータから順にモニタ6に表示し、 全ての解像度の階層データが転送されたか否かが判断され、 全ての解像度の階層データが転送されていない場合であって、中断ボタンがオンとされた場合にサーバ1はこの中断命令を受けてプログレッシブ転送を停止するとともに、タイマーを起動し、 画像サーバにおいてタイマーが起動してから所定時間経過したか否かが判断され、所定時間経過しても表示出力端末からの継続命令がない場合はこれ以上の階層データの転送の必要はないと判断し、プログレッシブ転送を完全に中止して処理を終了し、 所定時間経過前に表示出力端末からの継続命令があった場合は、未転送の階層データの転送を再開するようにしたことにより、オペレータがモニタにプログレッシブ再生される画像を観察し、読影に十分と思われる解像度に達したら入力手段に設けられた中断ボタンをオンとすることにより、プログレッシブ転送を停止させる方法。」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。 イ 引用例1(特表2005-530138号公報)に記載の事項 引用例1には、上記第3の2(1)アにおいて説示した事項に加えて、つぎの事項が記載されている。 (ク)「【0012】 図1Aから図1Dは、本発明の実施形態に従って、組織マイクロアレイの組織標本の画像を表す第1の解像度での第1のピクセルデータセットを捕捉し、第1のピクセルデータセットを計算機100に提供する画像捕捉システム20を描いている。図1Aは、顕微鏡スライド28の上に取り付けられる組織マイクロアレイ24の組織標本部分26にレンズ22の焦点が合わせられているロボット病理学顕微鏡21を描いている。ロボット顕微鏡21はロボット顕微鏡を操作するコンピュータ(図示せず)も含んでいる。顕微鏡スライド28には、市販されているバーコードラベルなどのスライドの識別のためにラベルがそれ(図示せず)に付けられている。便宜上ここではバーコードラベルと呼ばれるラベルは、スライド上の組織標本にデータベースを対応させるために使用される。 【0013】 組織標本26などの組織標本は、顕微鏡スライド28上に任意の方法により取り付けることができる。組織は、未処理または組織及び組織抗原を保つために、及び培検劣化を回避するために固定液の中に浸すことができる。例えば、未処理で凍結されたまたは固定液に浸されてから凍結された組織はクライオスタットまたはスライド式ミクロトーム上で切断し、顕微鏡スライドに載せることができる。固定液に浸されていた組織は、ビブラトーム上で切断し、顕微鏡スライドに載せることができる。固定液に浸され、パラフィン、プラスチック、エポキシ樹脂またはセロイジン等の物質に包埋されていた組織は、マイクロトームで切断し、顕微鏡スライドに載せることができる。 【0014】 典型的な顕微鏡スライドは約1250mm^(2)という組織表面積を有する。その面積をカバーするために必要とされるデジタル画像の概数は20×対象物を用いて12,500であり、約50ギガバイトのデータ記憶空間を必要とするであろう。組織スライドの分析に自動化をもたらし、経済的に実現可能とするためには、決定を下すために必要とされる画像数を削減することが必要になる。」 (2)対比 本願発明と引用発明3とを対比すると、両者は、次の一致点で一致し、各相違点において相違する。 <一致点> 「医用画像を表示する方法であって、 第1分解能で前記医用画像の少なくとも一部を取得して表示するステップと、 前記医用画像の少なくとも一部の前記第1分解能の画像が表示された後、所定の時間の閾値の間、表示されたか否かを判定するステップと、 前記医用画像の少なくとも一部の前記第1分解能の画像が表示された後、所定の時間の閾値の間、表示されたと判定された場合、前記第1分解能よりも分解能が高い第2分解能で前記医用画像の少なくとも一部を取得して表示するステップと、 を備えることにより、前記医用画像の少なくとも一部を取得して表示している限り、前記医用画像の少なくとも一部の最大分解能の画像が表示されるまで、各々の所定の時間の経過後に、より高い分解能で前記医用画像の少なくとも一部をプログレッシブレンダリングする方法」 <相違点A> 本願発明が「病理学情報を解釈するデジタル環境においてデジタルスライド画像を表示する方法であって、組織試料のデジタルスライド画像の少なくとも一部を識別するナビゲーション命令を受け取るステップ」を備えるのに対して、引用発明3は、医用画像を表示する方法である点 <相違点B> 本願発明が「前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部の最大分解能の画像が表示され、所定の時間の経過後においてなお最大分解能の前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を表示している場合には、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を強調するために前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を処理し、前記デジタルスライド画像の強調処理された識別された少なくとも一部を表示するステップ」を備えるのに対して、引用発明1は、そのように特定されない点 (3)判断 ア 相違点Aについて 上記相違点Aについて検討するに、例えば引用例1に「段階的な解像度が要求される医療画像の例として、病理学用の顕微鏡スライドのデジタル画像」について記載されており、「当該デジタル画像において、注目される構造が存在する重要な領域(ROI)」を「観察する」ことは、周知の技術であるところ、引用発明3の技術を、引用例1に記載されているような周知の「顕微鏡スライドのデジタル画像」の「ROI領域」の観察に適用することにより、本願発明の相違点Aに係る構成のようにすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。 イ 相違点Bについて 引用例3及び1には、「最大分解能の画像が表示され、所定の時間の経過後においてなお最大分解能の前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を表示している場合には、前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を強調するために前記デジタルスライド画像の識別された少なくとも一部を処理し、前記デジタルスライド画像の強調処理された識別された少なくとも一部を表示するステップ」については記載されていない。 なお、特開平11-132937号公報(審査官が前置報告において引用した引用文献4)に記載されているような「細胞粒子の輪郭を明確にするエッジ補正」や「粒子の色彩を調節する」、いわゆる「画像強調処理」が周知であったとしても、本願発明のように、最大分解能の画像が表示されてから、所定の時間経過後において、強調処理を行うような表示方法までが周知のものであったとはいえず、さらに、そのような表示方法が当業者が容易に想到し得るものということもできない。 (4)小括 したがって、本願発明は、当業者が引用発明3及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。 本願の請求項2-17に係る発明についても、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明3及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。 そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由の「第1 特許法第29条第2項」の理由によって本願を拒絶することはできない。 3 当審拒絶理由の「第2 特許法第36条第6項第2号」についての判断 平成28年6月15日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により、拒絶の理由に係る本件補正前の請求項2は、本件補正により、本願発明として上記第2において摘示した請求項1のとおりに補正された。 このことにより、請求項1に係る発明は明確となった。 また、本件補正前の請求項3ないし6に対応する本件補正後の請求項2ないし5に係る発明も明確となった。 よって、当審拒絶理由の「第2 特許法第36条第6項第2号」の理由は解消した。 4 当審拒絶理由についてのまとめ 上記2及び3で検討したとおり、当審拒絶理由通知の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、原査定及び当審拒絶理由通知の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-07-25 |
出願番号 | 特願2013-168823(P2013-168823) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G01N)
P 1 8・ 121- WY (G01N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 南 宏輔、高橋 亨 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 尾崎 淳史 |
発明の名称 | デジタルスライド画像を表示する方法 |
代理人 | 藤田 和子 |