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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1317356
審判番号 不服2015-11152  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-12 
確定日 2016-07-21 
事件の表示 特願2010- 34686「磁界プローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日出願公開、特開2011-169793〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年2月19日に出願したものであって、平成25年9月13日付けの拒絶理由通知に対して平成25年11月21日付けで手続補正がなされ、平成26年6月20日付けの最後の拒絶理由通知に対して平成26年8月22日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月9日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年6月12日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成27年6月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年6月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に、
「【請求項1】
絶縁材料からなる基板と、磁界を検出するために該基板に設けられた導電性ループからなる検出部と、前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部と、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループと該接続部との間を接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブにおいて、
前記伝送線路部の導体パターンは、前記導電性ループに接続され長さ方向に延びる幅寸法の狭い狭幅部と、前記接続部に接続され長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなり前記検出信号の反射が生じるテーパ部とによって構成したことを特徴とする磁界プローブ。」
とあったところを、

「【請求項1】
絶縁材料からなる基板と、磁界を検出するために該基板に設けられた導電性ループからなる検出部と、前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部と、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループと該接続部との間を接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブにおいて、
前記伝送線路部の導体パターンは、前記導電性ループに接続され長さ方向に延びる幅寸法の狭い狭幅部と、前記接続部に接続され長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなり前記検出信号の反射が生じるテーパ部とによって構成し、
所望の周波数帯域よりも低周波側で前記検出信号の利得が低下し、前記所望の周波数帯域で前記検出信号の利得が向上する構成としたことを特徴とする磁界プローブ。」
とすることを含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。

本件補正について検討する。

本件補正は、本件補正前の請求項1の特定事項である「伝送線路部とを備えた磁界プローブ」について、「所望の周波数帯域よりも低周波側で前記検出信号の利得が低下し、前記所望の周波数帯域で前記検出信号の利得が向上する構成とし」たと限定するものである。

よって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。


2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-207531号公報(平成15年7月25日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、近傍磁界プローブに関し、特に、マイクロ波領域までの広帯域まで安定して測定できる近傍磁界プローブに関する。」

b「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の近傍磁界プローブは、誘電体と、該誘電体に形成され、導電性薄膜により構成されてなるループコイル部と、該ループコイル部により検出された誘起起電力を伝送する伝送回路部により構成されてなる近傍磁界プローブにおいて、該伝送回路部のインピーダンスが伝送方向に漸次変化してなることを特徴とする。」

c「【0019】
【発明の実施の形態】本発明の近傍磁界プローブの一形態について、図1の概略斜視図をもとに詳細に説明する。
【0020】本発明の近傍磁界プローブAは、図1に示すように、誘電体1上に形成され、高周波電流等による磁界を検知するループコイル部3と、このループコイル部3に誘起された起電力を伝送する伝送回路部5と、測定系(図示せず)に接続された同軸ケーブル(図示せず)を電気的に接続するための接続部7とから構成され、伝送回路部5のインピーダンスが伝送方向に漸次変化するように形成されていることを特徴とする。
【0021】伝送回路部5は、ループコイル部3や伝送回路部5の導体を基板に容易に形成できること、および測定系の同軸ケーブルともバラン(変換冶具)等を介することなく接続ができるという理由から、図1に示すようなコプレーナ型が好適に用いられる。」

d「【0028】本発明の近傍磁界プローブAでは、誘電体1として低誘電率、高強度という理由からガラスエポキシ基板が好適に用いられ、ガラスエポキシ基板上に形成された銅箔をエッチングを用いて加工することにより、上記のループコイル部3、伝送回路部5および接続部7を高寸法精度で形成できる。」

e「【0032】次に、本発明の近傍磁界プローブAでは、上記のコプレーナ型の伝送回路部5の他に、図2(a)、(b)に示すようなマイクロストリップ型の構造を有する伝送回路部21を使用することができる。
【0033】図2(a)に示したマイクロストリップ型の伝送回路部21では、誘電体23の一方主面上に形成された信号導体25とこの信号導体25の対向する主面に形成された平面導体27が形成されており、信号導体25と平面導体27とは誘電体23に形成されたバイア導体24により接続されている。
【0034】また、図2(b)に示したように、マイクロストリップ型の伝送回路部21では、伝送回路部21の信号導体25の幅が漸次変化するように形成されている。また、信号導体25の幅w2に加えて、信号導体25と平面導体27に挟まれた誘電体23の厚みt1を変更することにより、マイクロストリップ型の伝送回路部21のインピーダンスを漸次変化させることもできる。」

f 図2には、信号導体25が細長いパターンであること及び細長いパターンはその幅が漸次変化するテーパー状となっていることが示されている。

ア 上記bの「【0009】‥‥‥本発明の近傍磁界プローブは、誘電体と、該誘電体に形成され、導電性薄膜により構成されてなるループコイル部と、該ループコイル部により検出された誘起起電力を伝送する伝送回路部により構成されてなる近傍磁界プローブ‥‥‥」との記載において、上記cの「【0020】‥‥‥高周波電流等による磁界を検知するループコイル部3‥‥‥」との記載から、「ループコイル部」は、「磁界を検知するループコイル部」であるということができ、また、上記dの「【0028】本発明の近傍磁界プローブAでは、誘電体1として‥‥‥ガラスエポキシ基板が好適に用いられ、」との記載から、「誘電体」は、「誘電体基板」ということができる。
したがって、引用例1には「誘電体基板と、該誘電体基板に形成され、導電性薄膜により構成されてなる、磁界を検知するループコイル部と、該ループコイル部により検出された誘起起電力を伝送する伝送回路部により構成されてなる近傍磁界プローブにおいて、該伝送回路部のインピーダンスが伝送方向に漸次変化してなるものである」ことが記載されているということができる。

イ 次に、上記eの段落【0032】の記載から、伝送回路部について、マイクロストリップ型の構造を有する伝送回路部21に着目する。
上記eの段落【0033】ないし段落【0034】の記載、及び上記fの記載から、「信号導体25」は、細長いパターンであること及び細長いパターンはその幅が「漸次変化するテーパー状」となっていることから、引用例1には、「近傍磁界プローブ」について、「マイクロストリップ型の伝送回路部21では、誘電体基板23の一方主面上に形成された細長いパターンの信号導体25とこの信号導体25の対向する主面に形成された平面導体27が形成されており、マイクロストリップ型の伝送回路部21では、伝送回路部21の信号導体25の幅が漸次変化するテーパー状に形成されている」ことが記載されているということができる。

したがって、上記引用例1に記載された事項、及び上記アないしイをまとめると、引用例1には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。

「誘電体基板と、該誘電体基板に形成され、導電性薄膜により構成されてなる、磁界を検知するループコイル部と、該ループコイル部により検出された誘起起電力を伝送する伝送回路部により構成されてなる近傍磁界プローブにおいて、該伝送回路部のインピーダンスが伝送方向に漸次変化してなるものであって、
マイクロストリップ型の伝送回路部21では、誘電体基板23の一方主面上に形成された細長いパターンの信号導体25とこの信号導体25の対向する主面に形成された平面導体27が形成されており、
マイクロストリップ型の伝送回路部21では、伝送回路部21の信号導体25の幅が漸次変化するテーパー状に形成されている、
近傍磁界プローブ。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭49-141370号(実開昭51-67659号)のマイクロフィルム(昭和51年5月28日公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a 「本考案はストリップライン9について、後述のように入出力側インピーダンスを選定することが、特徴であってそのストリップライン9は例えば第4図の斜視図に示す構造である。即ち誘電体基板6に対し接地導体8と上部導体11とをそれぞれ上下面に配し、‥‥‥上部導体の幅については一方端のW_(1)はトランジスタ1の出力インピーダンスZ_(1)に等しい値のインピーダンスを有する幅とする。また他方端のW_(2)については‥‥‥√(Z_(1)Z_(2))+X」という値の特性インピーダンスを有するように選定する。(第3頁第16行ないし第4頁第10行、なお、「√(Z_(1)Z_(2))」は、Z_(1)Z_(2)の平方根を表す。)

b 図4には、「長さ方向に延びる幅寸法の狭い狭幅部と、長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部」が示されている。

上記の記載から、引用例2には、次の事項が記載されているということができる。

「ストリップラインにおいて、インピーダンス整合を行うために、長さ方向に延びる幅寸法の狭い狭幅部と、長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部を設けること」


3 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「誘電体基板」は、本願補正発明の「絶縁材料からなる基板」に相当する。

(2)引用発明の「該誘電体基板に形成され、導電性薄膜により構成されてなる、磁界を検知するループコイル部」は、磁界の検出部ということができるから、本願補正発明の「磁界を検出するために該基板に設けられた導電性ループからなる検出部」に相当する。

(3)上記(2)を踏まえると、引用発明の「該ループコイル部」における「該ループコイル」は、本願補正発明の「前記検出部の導電性ループ」に相当する。
また、引用発明の「該ループコイル部により検出された誘起起電力を伝送する伝送回路部」は、「マイクロストリップ型の伝送回路部21では、誘電体基板23の一方主面上に形成された細長いパターンの信号導体25とこの信号導体25の対向する主面に形成された平面導体27が形成され」るものであるから、「伝送回路部21」は「細長いパターンの信号導体25」を有するものということができ、本願補正発明の「細長い導体パターンを有する伝送線路部」に相当する。
したがって、引用発明の「該ループコイル部により検出された誘起起電力を伝送する伝送回路部により構成されてなる近傍磁界プローブ」と、本願補正発明の「前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部と、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループと該接続部との間を接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブ」とは、「前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループに接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブ」である点で共通する。

(4)引用発明の「伝送回路部21」は「細長いパターンの信号導体25」を有するものであって、本願補正発明の「細長い導体パターンを有する伝送線路部」に相当し(上記(3))、また、引用発明の「伝送回路部21の信号導体25の幅が漸次変化するテーパー状に形成されて」いることは、「漸次変化するテーパー部を有する」点で、本願補正発明の「テーパー部」と共通する。
したがって、引用発明の「マイクロストリップ型の伝送回路部21では、伝送回路部21の信号導体25の幅が漸次変化するテーパー状に形成されている、近傍磁界プローブ」と、本願補正発明の「前記伝送線路部の導体パターンは、前記導電性ループに接続され長さ方向に延びる幅寸法の狭い狭幅部と、前記接続部に接続され長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなり前記検出信号の反射が生じるテーパ部とによって構成としたことを特徴とする磁界プローブ」とは、「前記伝送線路部の導体パターンは、漸次変化するテーパー部を有する磁界プローブ」である点で共通する。


すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「絶縁材料からなる基板と、磁界を検出するために該基板に設けられた導電性ループからなる検出部と、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループに接続する細長い導体パターンを有する伝送線路部とを備えた磁界プローブにおいて、
前記伝送線路部の導体パターンは、漸次変化するテーパー部を有する
磁界プローブ。」

<相違点>ア
本願補正発明は、「前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部」を有し、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループ「と該接続部との間を」接続する細長い導体パターンを有するのに対し、引用発明はこのような特定がない点。

<相違点>イ
伝送線路部の導体パターンは、漸次変化するテーパー部を含んで構成することついて、本願補正発明は、「前記導電性ループに接続され長さ方向に延びる幅寸法の狭い狭幅部と、前記接続部に接続され長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなり前記検出信号の反射が生じるテーパ部」であるのに対し、引用発明は、伝送回路部21の信号導体25(本願補正発明の「伝送線路部の導体パターン」に相当。)の幅が漸次変化するテーパー部を有するように形成されている点。

<相違点>ウ
本願補正発明が、「所望の周波数帯域よりも低周波側で前記検出信号の利得が低下し、前記所望の周波数帯域で前記検出信号の利得が向上する構成とし」たものであるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。

4 判断

<相違点>アについて
引用発明は、伝送回路部をコプレーナ型からマイクロストリップ型の構造に代えて伝送回路部21としたものである(上記2(1)e)。
ここで、コプレーナ型の近傍磁界プローブAについて、上記2(1)cの「【0020】本発明の近傍磁界プローブAは、図1に示すように、誘電体1上に形成され、高周波電流等による磁界を検知するループコイル部3と、このループコイル部3に誘起された起電力を伝送する伝送回路部5と、測定系(図示せず)に接続された同軸ケーブル(図示せず)を電気的に接続するための接続部7とから構成され、‥‥‥」との記載から、接続部7は誘電体7の表面上に形成されているということができるから、コプレーナ型の近傍磁界プローブAは、「このループコイル部3に誘起された起電力を伝送する伝送回路部5と、測定系(図示せず)に接続された同軸ケーブル(図示せず)を電気的に接続するための接続部7を誘電体7の表面上に形成する」ことが記載されているということができる。
したがって、近傍磁界プローブにおいて、伝送回路部をコプレーナ型からマイクロストリップ型の構造に代えて伝送回路部21とした引用発明においても、「誘電体基板23」に、測定系(図示せず)に接続された同軸ケーブル(図示せず)を電気的に接続するための接続部を形成することに格別の困難性を有しない。
そして、測定系(図示せず)に接続された接続部は、本願補正発明の「外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部」に相当し、また、「接続部」は、「マイクロストリップ型の伝送回路部21」と接続されることになるから、伝送回路部21から見れば、「ループコイル部」と「接続部」との間に、「伝送回路部21」を形成する「細長いパターンの信号導体25」を有するものということができる。
よって、引用発明において、「誘電体基板23」に「接続部」を形成して、本願補正発明のように「前記基板に設けられ外部に接続されて該検出部による検出信号を出力する接続部」を有し、前記基板に設けられ前記検出部の導電性ループ「と該接続部との間を」接続する細長い導体パターンを有するようにすることに格別の困難性を有しない。

<相違点>イについて
一般に、ストリップラインにおいて、インピーダンス整合を行うために、長さ方向に延びる幅寸法の狭い狭幅部と、長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部と、前記狭幅部と広幅部との間に設けられ前記狭幅部から広幅部に向けて幅寸法が漸次大きくなるテーパ部を設けることは、周知技術である(引用例2(上記2(2)))。
そして、テーパー部において反射が生じ、これが周波数特性に影響を与えることは明らかであるから、所望の周波数帯域特性を得るために、どのようなテーパー形状のストリップラインを用いて、どの程度の反射を許容して周波数をずらすようにするかについては、当業者が必要とする周波数特性に基づいて適宜決定し得る事項である。
したがって、引用発明において、インピーダンス整合を行うために採用するストリップラインの形状を決定するにあたり、幅狭部と幅広部との間にテーパー部を有する前記周知なストリップラインを用いて、所望の周波数特性を得るようにすることは当業者が適宜なし得る事項である。
また、前記周知技術を用いることにより、「長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部」が「接続部に接続され」ることになるから、本願補正発明のように「前記接続部に接続され長さ方向に延びる幅寸法の広い広幅部」とすることに困難性を有しない。

よって、本願補正発明の<相違点>イに係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>ウについて
一般に、マイクロストリップの形状を変化させることにより、その周波数特性が変化することはよく知られた事項であり、これを所望の周波数特性となるようにすることは当業者が適宜なし得る事項であるから、引用発明に前記周知技術を用いて、「所望の周波数帯域で前記検出信号の利得が向上する構成とする」ことに格別の困難性を有しない。
一方、所望の周波数帯域以外の周波数帯域での利得は、向上しなくてもよいことは明らかであるから、本願補正発明のように、「所望の周波数帯域よりも低周波側で前記検出信号の利得が低下」した磁界プローブとすることも当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願補正発明の<相違点>ウに係る構成のようにすることは格別なことではない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


5 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1 本件補正」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。

2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2 引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、本願補正発明から、上記「第2[理由]1 本件補正」で検討した本件補正に係る限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2[理由]4 判断」に示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-12 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-06-03 
出願番号 特願2010-34686(P2010-34686)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 誠  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 酒井 伸芳
関根 洋之
発明の名称 磁界プローブ  
代理人 広瀬 和彦  

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