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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1317360
審判番号 不服2015-14470  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-31 
確定日 2016-07-21 
事件の表示 特願2011- 62921「電気泳動素子、表示装置および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-198417〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成23年3月22日の出願であって、平成26年11月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月5日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲の補正がなされ、平成27年5月15日付けで拒絶査定がなされ、同年7月31日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の請求項に係る発明は、平成26年12月5日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。

「泳動粒子と、
その泳動粒子とは光学的反射特性が異なる非泳動粒子を含む繊維状構造体により形成された多孔質層と、
その多孔質層を介して配置された一対の電極と
を含み、
前記多孔質層は前記一対の電極のうちの少なくとも一方に隣接しており、
前記多孔質層中に占める前記非泳動粒子の割合は2体積%以上10体積%以下である、
電気泳動素子。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-139803号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は当審が付した)。

ア 「【0001】
本発明は、表示媒体、表示装置および表示方法に関するものである。」

イ 「【0116】
一方、電気泳動粒子保持体として、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体を用いる場合、これらの部材は、一対の基板間に充填したり、少なくともいずれか一方の基板表面に熱融着などを利用して固定した状態で配置することができる。
なお、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径としては、電界が印加された際に、全種類の電気泳動粒子がこれら部材中を移動することができるサイズであれば特に限定されないが、具体的には、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径は、最も平均粒径の大きい種類の電気泳動粒子の平均粒径や繊維の集合体の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることが好ましい。多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径が、全種類の電気泳動粒子の平均粒径の10倍未満では、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の孔中を電気泳動粒子が通過できなくなるため、表示状態の切り替えが困難となる場合がある。なお、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径の上限は特に限定されないが、大きすぎる場合には単位体積中の多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の表面積が小さくなりすぎて中間調の表示が困難となる可能性や、電気泳動粒子の保持機能が低下する可能性があるため、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径は100μm以下であることが好ましい。
多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径は、これら部材断面のSEM観察により求めた。平均孔径は、これら部材断面に観察される孔の任意の100点について孔径を測定し、各点における孔径の平均値として求めた。
【0117】
また、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体として構成した電気泳動粒子保持体の空隙率としては20%以上60%以下であることが表示に必要な数の泳動粒子を含有させ、所望の保持力を維持し、かつ保持体の発色特性も十全に発揮させるとの理由から好ましく、30%以上50%以下であることがより好ましい。」

ウ 「【0123】
電気泳動粒子保持体として、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体を用いる場合には、繊維の集合体の密度、空隙率、平均開口径、及び電気的特性等を調整することで、電気泳動粒子の保持力を調整することができる。
【0124】
電気泳動粒子保持体の色は、電気泳動粒子の色と異なるものであれば特に限定されないが、通常は着色していることが好ましい。
なお、電気泳動粒子保持体は、透明であってもよいが、この場合は、例えば、電気泳動粒子保持粒子と、電気泳動粒子保持体としての機能を有さない着色した粒子状の部材と混合して用いたりする必要がある。これは、電気泳動粒子保持体が透明である場合、この部材によって光を遮蔽し、一対の基板の透明でない方の基板側に偏在する電気泳動粒子を、透明基板側からみた場合に隠蔽する機能(隠蔽機能)が欠落するため、第3の表示工程を実施しても中間調の表示を行うことができなくなるからである。それゆえ、透明な電気泳動粒子保持体を用いる場合は、隠蔽機能を有する他の部材と併用する必要がある。
なお、電気泳動粒子保持体は白色であることが最も好ましい。この場合、第2の表示工程を実施し終えた状態で、白色を表示することができる。」

エ 「【0172】
図8に示す表示媒体100は、一方の面が表示面202を構成し、他方の面に透明電極210が設けられた透明基板200と、この透明基板200の透明電極210が設けられた面に対向して配置され、透明基板200が配置された側の面に背面電極220が設けられた背面基板204と、透明基板200と背面基板204との間隙の端部に配置され当該間隙部分を封止するように配置された隔壁206と、透明基板200と背面基板204との間隙に封入された電気泳動粒子300を含む分散媒302と、一対の透明基板200、204間に配置された電気泳動粒子保持体401と、を含むものである。」

オ 「【0178】
図9に示す表示媒体110は、基本的には、図8に示す表示媒体100と同様の構成を有するものであるが、電気泳動粒子保持体として、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410を用いた点において表示媒体100と異なるものである。この多孔質体や網目構造体や繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410は、調光層中を移動できないように一対の基板間200、204間に充填配置されている。この表示媒体110についても、図8に示す表示媒体100と同様の表示を行うことが可能である。」

カ 「【0185】
電気泳動粒子保持体410Bの色を白色とするには、電気泳動粒子保持体410Bを構成する繊維や部材の表面に白色材を固定すればよい。この白色材としては、二酸化チタンや、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の白色顔料を用いることができるが、白色材として粒子状の白色粒子を用いても良い。」

キ 図8及び図9は、以下のとおりである。




上記エには、図8に示される表示媒体100の記載があり、上記オには、「(基本的には、図8に示す表示媒体100と同様の構成を有する)表示媒体110」について記載され、電気泳動粒子保持体に「繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410」を用いることの記載があり、また、この「繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体」は、「一対の基板間200、204間に充填配置されている」と記載されている。
また、上記ウには、「電気泳動粒子保持体は白色であることが最も好ましい」と記載され、上記カには、白色の電気泳動粒子保持体について、電気泳動粒子保持体を構成する繊維の表面に白色材を固定すればよく、白色材として粒子状の白色粒子が用いられても良いと記載されている。
してみると、引用例には、
「一方の面が表示面202を構成し、他方の面に透明電極210が設けられた透明基板200と、この透明基板200の透明電極210が設けられた面に対向して配置され、透明基板200が配置された側の面に背面電極220が設けられた背面基板204と、透明基板200と背面基板204との間隙の端部に配置され当該間隙部分を封止するように配置された隔壁206と、透明基板200と背面基板204との間隙に封入された電気泳動粒子300を含む分散媒302と、一対の透明基板200、204間に配置された電気泳動粒子保持体410と、を含む表示媒体110であって、
前記電気泳動粒子保持体410は、繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410であり、一対の基板間200、204間に充填配置されており、繊維の表面に白色粒子の白色材が固定されている表示媒体110。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「電気泳動粒子300」は、本願発明の「泳動粒子」に相当する。
(2)引用発明の「白色粒子」は、「繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410」の繊維の表面に固定されているから、本願発明の「非泳動粒子」に相当する。
また、引用例の上記2.ウ【0124】に記載されるように、「電気泳動粒子保持体の色は、電気泳動粒子の色と異なる」から、引用発明の「白色粒子」の光学的反射特性が「電気泳動粒子300」と異なっていることは当業者に明らかである。
また、引用発明の「繊維」が本願発明の「繊維状構造体」に相当するところであり、上記2.イ【0116】の「多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径としては、電界が印加された際に、全種類の電気泳動粒子がこれら部材中を移動することができるサイズであれば特に限定されないが、具体的には、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径は、最も平均粒径の大きい種類の電気泳動粒子の平均粒径や繊維の集合体の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることが好ましい。・・・多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径の上限は特に限定されないが、大きすぎる場合には単位体積中の多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の表面積が小さくなりすぎて中間調の表示が困難となる可能性や、電気泳動粒子の保持機能が低下する可能性があるため、多孔質体や網目構造体や繊維の集合体の平均孔径は100μm以下であることが好ましい。」との記載から、引用発明における「繊維の集合体」は複数の細孔を有した多孔質であることが明らかである。さらに、引用発明の「繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410」は、一対の基板間200、204間に充填配置されていることから、「層」の形態をなしていることが明らかである。
以上のことから、引用発明の「電気泳動粒子保持体410」は、本願発明の「その泳動粒子とは光学的反射特性が異なる非泳動粒子を含む繊維状構造体により形成された多孔質層」に相当する。
(3)引用発明の「電気泳動粒子保持体410」は、「一対の基板間200、204間に充填配置されており」、「透明基板200」及び「背面基板204」には、「透明電極210」及び「背面電極220」がそれぞれ設けられているから、引用発明の「透明電極210」と「背面電極220」は、本願発明の「その多孔質層を介して配置された一対の電極」に相当する。
(4)引用発明の「電気泳動粒子保持体410」は、上記のとおり「一対の基板間200、204間に充填配置されており」、前記「透明電極210」は、「(一方の面が表示面202を構成する)透明基板200」の「他方の面」に設けられており、また、「背面電極220」は、「背面基板204」の「透明基板200が配置された側の面」に設けられているから、引用発明は、本願発明と同様に「前記多孔質層は前記一対の電極のうちの少なくとも一方に隣接して」いるものといえる。
(5)引用発明の「表示媒体110」は、「電気泳動粒子300を含む」ものであるから、本願発明と同様に「電気泳動素子」といえる。
(6)以上のことから,両者は、
「泳動粒子と、
その泳動粒子とは光学的反射特性が異なる非泳動粒子を含む繊維状構造体により形成された多孔質層と、
その多孔質層を介して配置された一対の電極と
を含み、
前記多孔質層は前記一対の電極のうちの少なくとも一方に隣接している、
電気泳動素子。」の点で一致する。
(7)一方、両者は、次の点で相違する。
本願発明では、「前記多孔質層中に占める前記非泳動粒子の割合は2体積%以上10体積%以下である」とされているのに対し、引用発明において、「繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410」中に占める「白色粒子」の割合がこのようなものであるか不明な点。(以下「相違点」という。)

4.判断
上記相違点について検討する。
引用発明において、「白色粒子」は、「電気泳動粒子保持体410」を構成する繊維の表面に固定することにより、「電気泳動粒子保持体410」の色を白色とするためのものである(上記2.カ参照)。この「白色粒子」の量が少なすぎれば、「電気泳動粒子保持体410」を白色にするという目的を達成できないことが当業者に明らかである。
一方、引用発明において、「白色粒子」は繊維の表面に固定されるものであること、及び、繊維に白色粒子が固定された場合であっても、「繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410」は、電界が印加された際に電気泳動粒子がその中を移動することができるサイズの平均孔径を有していることが必要であることから(上記2.イ参照)、「電気泳動粒子保持体410」中の「白色粒子」の量を無制限に多くすることはできず、前記量には好ましい範囲としての上限があることも当業者に明らかである。
してみると、引用発明において、「繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体410」中に占める「白色粒子」の割合をどの程度にするかは、上記の観点から当業者が適宜決定する設計事項にすぎないのであって、本願発明が規定する範囲内のものとすることに格別の困難性は認められない。したがって、本願発明は、引用発明及び引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、請求人は、審判請求書において、「引用発明では、非泳動粒子を含む繊維状構造体により多孔質層が形成されている場合において、その多孔質層中に占める非泳動粒子の割合をどのように設定すればコントラストがより向上するかという技術的観点には着眼(着想)していないため、その着想がない限り、引用発明から本願発明に容易に想到できるとは到底考えられない。」旨の主張をするが、引用発明において、「繊維の集合体から構成される電気泳動粒子保持体」中に占める「白色粒子」の割合を大きくすれば、電気泳動粒子を遮蔽する機能が向上し、表示のコントラストが向上することは、当業者に明らかな事項であって、請求人の上記主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、引用発明及び引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-23 
結審通知日 2016-05-24 
審決日 2016-06-07 
出願番号 特願2011-62921(P2011-62921)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 洋允  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 河原 英雄
小松 徹三
発明の名称 電気泳動素子、表示装置および電子機器  
代理人 藤島 洋一郎  
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