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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1317436
審判番号 不服2015-12384  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-30 
確定日 2016-08-16 
事件の表示 特願2014-227342「プログラム、情報処理装置、及び情報処理装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日出願公開、特開2015- 44045、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成25年7月31日に出願された特願2013-158651号の一部を、平成26年11月7日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願としたもので、原審において平成27年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年4月28日付けで手続補正がされ、同年5月21日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、これと同時に手続補正がされ、その後、当審において平成28年5月27日付けで拒絶理由が通知され、同年6月14日付けで手続補正がされたものである。

第2 本件出願の発明
本件出願の請求項1ないし11に係る発明は、平成28年6月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものと認められ、当該請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
ターン制で進行する対戦ゲームを実行する情報処理装置に、
対戦に用いられる複数のコマンドにそれぞれ設定される第1の閾値を記憶するステップと、
ユーザ操作に基づいて前記対戦を行う画面を表示させるステップと、
前記画面上に、前記複数のコマンドのうち少なくとも一部のコマンドを選択可能に表示させるステップと、
ユーザ操作に基づいてコマンドが選択されると、該コマンドについて経過ターン数のカウントを開始するステップと、
選択された前記コマンドをユーザが選択できないように制御するステップと、
前記経過ターン数と、選択された前記コマンドに設定された第1の閾値と、の比較に基いて、前記画面上の前記コマンドに対応させて前記コマンドを再度選択可能となるまでに必要なターン数を表示させるステップと、
前記経過ターン数が前記第1の閾値と等しくなれば、選択された前記コマンドをユーザが再度選択可能となるように制御するステップと、
を実行させる、プログラム。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願の各請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(下記の引用例1ないし3に係る発明)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例
引用例1:特開2005-6993号公報
引用例2:特開2010-154931号公報
引用例3:【パズドラ徹底攻略】第23回 : 必要ターン数を減らそう!スキルのレベルアップ!【初心者必見】,[online],アップロード日2013年5月7日,[2015年2月14日検索],インターネット
<URL,http://octoba.net/archives/20130507-android-feature-pad23.html>

なお、前置報告では、下記の引用例4が引用された。
引用例4:セイレーンのスキルレベルマックスを目指す為に必要なモンスターと出現するダンジョン,"パズドラ日記と攻略覚え書き",[online],アップロード日2013年7月21日 ,[2013年8月20日検索],インターネット
<URL,http://puzzdra.hayakuyuke.jp/archives/708>

引用例1の【0056】、【0058】、【0059】、【0078】の記載からみて、引用例1には、
「ターン制で進行する対戦ゲームを実行する情報処理装置に、
対戦に用いられる複数のコマンドにそれぞれ設定される所定の復帰ターン数を記憶するステップと、
ユーザ操作に基づいて前記対戦を行う画面を表示させるステップと、
前記画面上に、前記複数のコマンドのうち少なくとも一部のコマンドを選択可能に表示させるステップと、
ユーザ操作に基づいてコマンドが選択されると、該コマンドについて経過ターン数のカウントを開始するステップと、
選択された前記コマンドをユーザが選択できないように制御するステップと、
前記経過ターン数が前記復帰ターン数と等しい場合、選択された前記コマンドをユーザが再度選択可能となるように制御するステップと、
を実行させる、プログラム」の発明が記載されているものと認められる。

請求項1に係る発明と引用例1に記載の発明を対比すると、後者の「復帰ターン数」は、前者の「第1の閾値」に相当するから、前者が、前記経過ターン数及び選択された前記コマンドに設定された復帰ターン数に基づいて、前記画面上の前記コマンドに対応させて前記コマンドを再度選択可能となるまでに必要なターン数を表示させるステップを具備するのに対して、後者が当該ステップを具備しない点で、両者は相違するものの、その余の点では一致する。

そこで検討するに、引用例2には、残りターン数を表示する点について記載されており(図12)、すなわち、引用例2には、ターン数についてカウントダウン表示を行う点について記載されているところ、ターンに関する表示を一定程度行う引用例1に記載の発明において、情報を豊富にしてユーザの興趣を高めるべく、引用例2に記載のターン数のカウントダウンについても表示の対象に追加することは容易である。
なお、「それぞれ設定される所定の復帰ターン数を記憶するステップ」を、本願実施例の第1コマンド、第2コマンドといったように固定値としてのターン数を、(半ば)恒久的に記憶しているものであると理解した場合であっても、そのような例は、引用例3にみられるように、本願出願前に既に公然実施された発明である。すなわち、引用例3に示される公然実施発明は、モンスター毎に必要ターン数(本願の「第1の閾値」に相当)が、異なった値として設定されるという構成を具備するものである。当該構成を、引用例1に記載の発明に適用することは容易である。
したがって、請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載の発明ないし技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。また、仮に、「複数のコマンドにそれぞれ設定される第1の閾値」を複数のコマンドに対して予め設定されている(固定値である)第1の閾値」であるというように限定的に理解した場合であっても、請求項1に係る発明は、引用例1-3に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
情報処理装置、情報処理装置の制御方法として特定された請求項10-11に係る発明も同様である。

2.原査定の理由の判断
(1)引用例の記載事項
ア.<引用例1>
引用例1には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【請求項1】
プレイヤによって操作可能な操作手段と、既存の又は別途設けた表示装置の画面上に味方キャラクタ及び敵キャラクタを含む複数のキャラクタを表示し、前記操作手段からの操作入力に応じて前記複数のキャラクタのいずれかに対する行動形態を決定し前記画面上でゲームを進行するコンピュータにより実行されるゲームプログラムであって、
前記複数のキャラクタの全てにおける行動の実行順序を算出する実行順序算出手段、前記実行順序算出手段によって算出された実行順序を前記画面上に表示する順序表示制御手段として前記コンピュータを機能させることを特徴とするゲームプログラム。」
「【0030】
[メインゲーム処理]
装置本体1が電源ONの状態において、・・・DVD-ROM31が装着されると、ディスプレイ16には・・・ゲームの開始を告げる演出表示である・・・「オープニングデモ」を所定時間表示した後、後述の・・・「メインゲーム処理」を開始する。」
「【0032】
図4に示す「メインゲーム処理」では、・・・図3(2)に示す「ワールドマップ」を表示する(ST4)。」
「【0036】
・・・「ワールドマップ」上に表示される選択項目のいずれかが選択されたときは(ST5で”YES”)、選択に応じた「サブマップ」の開始画面が表示され、味方キャラクタのパーティは当該「サブマップ」上で行動を開始する(ST6)。」
「【0037】
その後、「サブマップ」上で行動を開始した味方キャラクタのパーティが敵キャラクタに遭遇すると(ST7で”YES”)、「バトル処理」を開始する(ST8)。「バトル処理」が開始されると、味方キャラクタのパーティと敵キャラクタとの間で戦いを行う「戦闘シーン」へと移る。」
「【0040】
[バトル処理]
上述した「バトル処理」について図5を用いて説明する。
【0041】
最初に、図5に示すように、キャラクタに関するパラメータをセットし、ターン間隔値を算出し、セットする処理を実行する(ST30)。・・・」
「【0051】
そして、CPU21は、・・・この処理が終了した場合には、ST31に処理を移す。」
「【0052】
ST31では、図6に示すような「戦闘シーン」の開始画面を表示する(ST31)。この開始画面では、手前に味方キャラクタのパーティ(”味方キャラクタA”111、”味方キャラクタB”112、”味方キャラクタC”113及び”味方キャラクタD”114)が表示される。」
「【0056】
ST32では、味方キャラクタ及び敵キャラクタをも含めた、攻撃等の行動が行える順番を管理するために、「ターン順序処理」を行う。この処理においては、CPU21は、各キャラクタに関する能力等から算出されるターン間隔値に基づいて、コマンド選択を有効とするキャラクタのターン順序が管理される。また、CPU21は、このようなターン順序を示す画像をディスプレイ16上に表示する。」
「【0058】
ST33では、「ターン順序処理」でコマンド選択が有効となった(後述するターンが回ってきた)キャラクタが敵キャラクタかどうか判定し、”YES”のときは、敵キャラクタが味方キャラクタに対して攻撃を実行するように、ゲームプログラムに従って自動処理を行う(ST34)。
【0059】
一方、ST33の判定で、コマンド選択が有効となったキャラクタが味方キャラクタであると判定したときは、続いて、プレイヤの操作によるコマンド選択を受け付ける「コマンド処理」を行う(ST35)。この処理においては、コントローラ4からの操作入力に応じてコマンドを選択し、選択されたコマンドに基づく行動形態を決定することとなる。つまり、コントローラ4からの操作入力に応じて複数のキャラクタのいずれかに対する行動形態を決定することとなる。」
「【0060】
CPU21は、ディスプレイ16上において、図16に示すように、”味方キャラクタD”114の行動形態を決定するためのコマンドが選択項目として示されたコマンドメニュー44を表示する。そして、・・・コントローラ4の・・・○ボタン12が操作されたときに選択カーソル45が左位置に表示されているコマンドが選択され、”味方キャラクタD”114の行動形態が決定される。この図16におけるコマンドメニュー44には、「攻撃」、「魔法」、「アイテム」、「防御」及び「逃げる」の5つのコマンドが表示されている。」

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「プレイヤによって操作可能な操作手段と、既存の又は別途設けた表示装置の画面上に味方キャラクタ及び敵キャラクタを含む複数のキャラクタを表示し、前記操作手段からの操作入力に応じて前記複数のキャラクタのいずれかに対する行動形態を決定し前記画面上でゲームを進行するコンピュータにより実行されるゲームプログラムであって、
戦闘シーンの開始画面を表示するステップ(ST31)と、
味方キャラクタ及び敵キャラクタをも含めた、攻撃等の行動が行える順番を管理するために、ターン順序処理を行うステップ(ST32)と、
ターン順序処理でコマンド選択が有効となった(ターンが回ってきた)キャラクタが敵キャラクタか味方キャラクタであるかを判定するステップ(ST33)と、
コマンド選択が有効となったキャラクタが味方キャラクタであると判定したとき、プレイヤの操作によるコマンド選択を受け付けるコマンド処理を行うステップであって、ディスプレイ16上において、”味方キャラクタD”114の行動形態を決定するためのコマンドが選択項目として示されたコマンドメニュー44を表示するコマンド処理ステップ(ST35)と、を実行させるゲームプログラム。」

イ.<引用例2>
引用例2には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0005】
(1)本発明は、操作部からの操作情報に基づいてゲーム区分の進行状況を演算するゲーム演算部、前記ゲーム区分の終了条件が満たされたか否かを判定する判定部、ゲームをプレイするプレーヤ及びプレーヤが操作するキャラクタの少なくとも一方に関する個別情報を記憶する個別情報記憶部、前記ゲーム区分に関するゲーム区分情報、及び前記個別情報に基づいて、前記ゲーム区分の終了条件が満たされるまでにかかる予測時間を演算する予測時間演算部、前記予測時間をプレーヤに報知する予測時間報知部、を有することを特徴とするゲームシステムに関係する。また、本発明は、上記各部としてコンピュータを機能させるプログラムに関係する。・・・
【0006】
本発明によれば、プレーヤあるいはキャラクタの状況によってゲーム区分終了までの時間が変化するようなゲームにおいて、ゲーム区分の終了条件が満たされるまでの予測時間をプレーヤに報知することができる。これにより、プレーヤは予測時間に基づいて計画的にゲームをプレイすることができる。また、計画的にゲームをプレイできるのでゲームをプレイすることを躊躇せずに済み、プレイの機会を増やすことができる。」
「【0067】
2-3.対戦シミュレーションゲームに適用した例
図12、図13を用いて、本実施形態のゲームシステムを対戦シミュレーションゲームに適用した例について説明する。
【0068】
本実施形態の対戦シミュレーションゲームは、プレーヤとCPUがそれぞれ複数のキャラクタによって編成される軍を操作して、相手の軍を撃破することを目的とするゲームである。図12は、本実施形態のゲーム画面の一例を示す図である。図12に示すように、複数のプレーヤキャラクタPCと敵キャラクタECがゲームフィールド上に配置され、プレーヤはプレーヤキャラクタPCに、CPUは敵キャラクタECにそれぞれ命令を出して移動、行動を行わせる。
【0069】
本実施形態のシミュレーションゲームではターン制が採用されている。すなわち、プレーヤがプレーヤキャラクタPCを操作することのできるプレーヤターンと、CPUが敵キャラクタを操作するエネミーターンが交互に実行される。・・・そして、所定のターン数が経過したときに対戦終了となる。本実施形態ではこの所定ターン数が一つのゲーム区分となっている。」
「【0072】
図13は、本実施形態の予測時間演算処理の一例を示すフローチャートである。ゲームシステムはまず、ターン切り替えがあったか否かを判定する(ステップS1300)。
【0073】
ターン切り替えがあったと判定した場合(ステップS1300:Y)、ゲームシステムは対戦終了までの残りターン数Lを取得する(ステップS1302)。・・・
【0074】
次に、ゲームシステムは個別情報記憶部162に記憶された、プレーヤが過去の対戦ゲームでプレーヤキャラクタPC一体を操作するのにかかった平均思考時間T5を取得する(ステップS1304)。・・・
【0075】
また、ゲームシステムはCPUが敵キャラクタEC一体を操作するのにかかる平均思考時間T6を取得する(ステップS1306)。・・・
【0076】
そして、ゲームシステムは、式(3)によって、対戦終了までにかかる予測時間TE3を求める(ステップS1308)。
【0077】
TE3=L×(T5×プレーヤキャラクタPCの総数+T6×敵キャラクタECの総数) (3)
そして、ゲームシステムはTE3及びLを表示部110に表示する(ステップS1310)。このような処理によって、本実施形態では図12に示すように、ターン切り替え時に画面右上に対戦終了までの予測時間と残りターン数が表示される。」

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「プレーヤあるいはキャラクタの状況によってゲーム区分終了までの時間が変化するようなゲームにおいて、ゲーム区分の終了条件が満たされるまでの予測時間をプレーヤに報知することができるプログラムであって、
プレーヤがプレーヤキャラクタPCを操作することのできるプレーヤターンと、CPUが敵キャラクタを操作するエネミーターンが交互に実行されるターン制が採用されているシミュレーションゲームにおいて、
ターン切り替えがあったと判定した場合に、対戦終了までの残りターン数Lを取得するステップ(S1302)と、
対戦終了までの予測時間TE3を求めるステップ(S1308)と、
対戦終了までの予測時間TE3及び対戦終了までの残りターン数Lを表示部110に表示するステップ(ステップS1310)と、を実行させるプログラム。」

ウ.<引用例3>
引用例3には、次の事項が記載されている。
「【パズドラ徹底攻略】第23回 : 必要ターン数を減らそう!スキルのレベルアップ!【初心者必見】」
「モンスターの持っているスキルに注目すると、チーム編成も変わってきますね。
上手にスキルを組み合わせると、とても強力なチームができることも。
でも、スキルは毎ターン使えるわけではないので、ここぞという場面で使用しましょう。
そうでないと、いざという時に「スキル準備中」なんていうことになります。」

上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「ゲームにおいて、ゲームに登場するキャラクタ(モンスター)の持っているスキルに必要ターン数を設定して、スキルを毎ターン使えるものとはしないゲームの進行方法。」


エ.<引用例4>
引用例4には、次の事項が記載されている。
「セイレーンのスキルレベルマックスを目指す為に必要なモンスターと出現するダンジョン」
「使い勝手の良さから重宝される防御態勢のスキルを持ったセイレーン。」
「スキルレベルを上げる意味
スキルレベルを上げるとスキル発動までのターン数が短くなります。一度使ったスキルが少しのターンでまた使えるのは言うまでもなく有利です。
セイレーンのスキルレベル1の時の必要ターン数は11。
これがレベルが1アップするごとに1ターン減っていき、最大(Lv.7)で5ターンまで短縮することができます。」

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
後者において、「味方キャラクタ及び敵キャラクタをも含めた、攻撃等の行動が行える順番を管理するために、ターン順序処理を行うステップ(ST32)」が実行されるところから、後者も前者と同様に、「ターン制で進行する対戦ゲームを実行する情報処理装置」を用いるといえ、後者の「戦闘シーンの開始画面を表示するステップ(ST31)」は、前者の「ユーザ操作に基づいて前記対戦を行う画面を表示させるステップ」に相当し、同様に、「ディスプレイ16上において、”味方キャラクタD”114の行動形態を決定するためのコマンドが選択項目として示されたコマンドメニュー44を表示するコマンド処理ステップ(ST35)」は、「前記画面上に、前記複数のコマンドのうち少なくとも一部のコマンドを選択可能に表示させるステップ」に相当する。
したがって、両者は、
「ターン制で進行する対戦ゲームを実行する情報処理装置に、
ユーザ操作に基づいて前記対戦を行う画面を表示させるステップと、
前記画面上に、前記複数のコマンドのうち少なくとも一部のコマンドを選択可能に表示させるステップと、
を実行させる、プログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
本願発明では、「対戦に用いられる複数のコマンドにそれぞれ設定される第1の閾値を記憶するステップ」と、「ユーザ操作に基づいてコマンドが選択されると、該コマンドについて経過ターン数のカウントを開始するステップ」と、「選択された前記コマンドをユーザが選択できないように制御するステップ」と、「前記経過ターン数と、選択された前記コマンドに設定された第1の閾値と、の比較に基いて、前記画面上の前記コマンドに対応させて前記コマンドを再度選択可能となるまでに必要なターン数を表示させるステップ」と、「前記経過ターン数が前記第1の閾値と等しくなれば、選択された前記コマンドをユーザが再度選択可能となるように制御するステップ」とが実行されるのに対し、引用発明1はこれらのステップが実行されるものではない点。

(3)判断
上記の相違点について検討する。
引用例1には、「コマンドメニュー44には、「攻撃」、「魔法」、「アイテム」、「防御」及び「逃げる」の5つのコマンドが表示されている。」(段落【0060】)という記載があり、引用例4には、「防御態勢のスキルを持ったセイレーン」、「スキル発動までのターン数」、「一度使ったスキルが少しのターンでまた使える」という記載がある。これらの記載を踏まえると、一般に「スキル」とは、ゲームに登場するキャラクタが持つ、攻撃や防御等に関する技術や能力を意味し、それぞれのスキルに対応する「コマンド」に基づいて発動するものである。
してみると、引用発明3における「必要ターン数」とは、一度使ったスキルが再度使えるようになるまでに必要なターン数をいうものといえるから、引用発明3における「必要ターン数」は、本願発明の「対戦に用いられる複数のコマンドにそれぞれ設定される第1の閾値」に相当するものといえる。
また、「必要ターン数」を設定する以上は、それを記憶したり算出する制御に加えて、一度使ったスキルは所定のターン数が経過するまで使用不可とし、必要ターン数が経過すればこれを解除するといった制御が必要であることは明らかである。
したがって、引用発明3は、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のうちの「対戦に用いられる複数のコマンドにそれぞれ設定される第1の閾値を記憶するステップ」と、「ユーザ操作に基づいてコマンドが選択されると、該コマンドについて経過ターン数のカウントを開始するステップ」と、「選択された前記コマンドをユーザが選択できないように制御するステップ」と、「前記経過ターン数が前記第1の閾値と等しくなれば、選択された前記コマンドをユーザが再度選択可能となるように制御するステップ」とを示唆するものといえる。
しかしながら、引用発明3は、上記相違点に係る本願発明の「前記経過ターン数と、選択された前記コマンドに設定された第1の閾値と、の比較に基いて、前記画面上の前記コマンドに対応させて前記コマンドを再度選択可能となるまでに必要なターン数を表示させるステップ」との発明特定事項については、開示や示唆がない。
なお、この点は引用例4についても同様である。
また、引用発明2についてみると、「対戦終了までの残りターン数Lを表示部110に表示するステップ」を実行させるが、この「対戦終了までの残りターン数」の表示と、本願発明の「コマンドを再度選択可能となるまでに必要なターン数」の表示とは、明らかにそれぞれの「表示」する対象が相違しているから、引用発明2には、上記相違点に係る本願発明の「前記経過ターン数と、選択された前記コマンドに設定された第1の閾値と、の比較に基いて、前記画面上の前記コマンドに対応させて前記コマンドを再度選択可能となるまでに必要なターン数を表示させるステップ」との発明特定事項が示されているとはいえない。
したがって、上記相違点に係る本願発明の「前記経過ターン数と、選択された前記コマンドに設定された第1の閾値と、の比較に基いて、前記画面上の前記コマンドに対応させて前記コマンドを再度選択可能となるまでに必要なターン数を表示させるステップ」との発明特定事項は、引用発明1ないし3には開示がないし、また示唆するものもない。

(4)小括
よって、本願発明は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願の請求項2ないし9に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるし、「情報処理装置」、「情報処理装置の制御方法」としてそれぞれ特定された請求項10、11に係る発明は、実質的に本願発明と同様の発明特定事項を備えるものであるので、請求項2ないし11に係る発明も本願発明と同様に、当業者が引用発明1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審で指摘した拒絶理由について
1.当審で指摘した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項1、10、11には、「前記経過ターン数が前記第1の閾値と等しい場合、選択された前記コマンドをユーザが再度選択可能となるように制御する」という記載がある。
上記の記載によれば、経過ターン数が第1の閾値を上まわった場合には、コマンドを選択することが不可能となるように制御するとも解しうる余地があり、この点において、上記の記載は明確とはいえない。

2.当審で指摘した拒絶理由についての判断
平成28年6月14日付け手続補正書によって、本願の請求項1、10、11に係る上記の指摘個所は「前記経過ターン数が前記第1の閾値と等しくなれば、選択された前記コマンドをユーザが再度選択可能となるように制御する」と補正された。これにより、請求項1、10、11に係る発明は明確となった。
よって、当審で指摘した拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-07-25 
出願番号 特願2014-227342(P2014-227342)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 植田 高盛
黒瀬 雅一
発明の名称 プログラム、情報処理装置、及び情報処理装置の制御方法  
代理人 甲原 秀俊  
代理人 杉村 憲司  
代理人 岡野 大和  

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