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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F16H
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 F16H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1317529
審判番号 不服2015-18141  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-05 
確定日 2016-08-19 
事件の表示 特願2013-511651「ボールねじ」拒絶査定不服審判事件〔2011年12月1日国際公開、WO2011/147824、平成25年7月8日国内公表、特表2013-528269、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年5月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年5月25日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月24日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日付けで手続補正がされ、平成27年6月4日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成28年3月11日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年6月13日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年6月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1及び8に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明8」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
ボールねじ(10)であって、
軸受(13、20)を介してハウジング(14、32)内に取り付けられたナット部(21)を備え、
少なくとも1つのバネ要素(24)が、軸受(13、20、30)とハウジング(14)との間の軸受(13、20、30)の各端面に配置されており、
前記バネ要素(24)の予張行程及び予張力は、その後に特性曲線が急峻に増大する推移領域の近傍に存在していて、前記バネ要素(24)は、前記特性曲線の累進領域内で作動される
ことを特徴とするボールねじ(10)。」

「【請求項8】
ボールねじ(10)であって、
軸受(30)を介してハウジング(32)内に取り付けられたナット部(21)を備え、
少なくとも1つのバネ要素(24)が、ナット部(21)上に、転がり軸受(30)のインナーリング(33)に当接して設けられており、
前記バネ要素(24)の予張行程及び予張力は、その後に特性曲線が急峻に増大する推移領域の近傍に存在していて、前記バネ要素(24)は、前記特性曲線の累進領域内で作動される
ことを特徴とするボールねじ(10)。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
平成26年12月24日付けで手続補正された請求項1ないし9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開2003-2220号公報
刊行物2:実公昭44-22004号公報
刊行物3:特開2005-96622号公報

刊行物1には、電動パワーステアリング装置に関し、ボールねじハウジングに、ボールナットが軸受を介して回転自在に保持されている点(段落0011)、軸受の両端面に弾性ブッシュを配置する点(図3-5)、が記載されている。
刊行物2には、軸受装置に関し、従来の軸受では、板バネが一段構造であるため、衝撃力が板バネの復元力以上になればバネの緩衝作用はなくなり、衝撃が軸受に直接作用するが、軸受と軸受枠との間に介在された板バネに、複数個の高さの異なった波を形成することにより、回転機が通常運転で衝撃力が微小である場合には、大きな山谷のみの弾性で受け、何らかの原因によって衝撃力が増大すれば、小さな山谷の接触も加わり、バネの復元力も増大する点(第1ページ第1欄第37行-同ページ第2欄第31行)、が記載されており、上記板バネも、小さな山谷の接触が加わると、全体の剛性が高くなる方に変化し(急峻に増大し)、剛性に関する線が非線形となることは明らかである。
そして、「その後に特性曲線が急峻に増大する推移領域」の近傍に、予張行程及び予張力を存在させるか否かは、当業者が必要に応じて適宜決定し得た設計的事項である。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された特開2003-2220号公報(以下「刊行物1」という。)には、「電動パワーステアリング装置」に関して、図面(特に、図3ないし図5参照)とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0012】ラックシャフト23には雄ねじ溝51が形成される一方、ボールナット41には雌ねじ溝53が形成され、雄ねじ溝51と雌ねじ溝53との間には循環ボールたる多数個の鋼球55が介装されている。また、ボールナット41には、鋼球55を循環させるための循環こま(図示せず)が装着されている。
【0013】第1実施形態では、図3に示したように、ボールナット41と軸受43との間に合成ゴム等の弾性体からなる弾性ブッシュ61が介装されている。弾性ブッシュ61は、軸受43の内輪43aが外嵌する円筒部63と、円筒部63の両端に形成されたフランジ部65とからなっている。両フランジ部65の内端面には内輪43aの端面が当接すると共に、一方のフランジ部65の外端面がボールナット41の段部71に当接し、他方のフランジ部65の外端面が止輪73に係止されている。」

(イ)「【0015】本実施形態では、ボールナット41が弾性ブッシュ61を介して軸受43に保持されているため、各部品の工作精度や組立精度の不足によりボールナット41とラックシャフト23との間に多少のミスアライメントが生じても、ボールナット41が変位してこのミスアライメントが吸収され、駆動力の損失や各部の異常摩耗が抑制される。また、ボールナット41が弾性ブッシュ61によって電動モータ35側に付勢されるように設定しておくことにより、ドライブギヤ37とドリブンギヤ39との間にバックラッシュが生じても、これが解消されて作動時の異音等が防止される。
【0016】図4は第2実施形態に係るステアリングギヤの要部拡大断面図であり、図5は第3実施形態に係るステアリングギヤの要部拡大断面図である。第2,第3実施形態は上述した第1実施形態と略同様の全体構成を採っており、その作用および効果も第1実施形態と同様であるが、弾性ブッシュの形状や配置が異なっている。すなわち、第2実施形態は、一対の弾性ブッシュ61を軸受43の内輪43aの両端とボールナット41との間にそれぞれ介装させたもので、組立作業性の向上等が図られている。また、第3実施形態は、ボールねじハウジング33と軸受43の外輪43bとの間に一対の弾性ブッシュ61を介装したもので、ボールナット41と軸受43とはボールねじハウジング33に対して一体的に変位する。」

(ウ)上記(ア)の「ラックシャフト23には雄ねじ溝51が形成される一方、ボールナット41には雌ねじ溝53が形成され、雄ねじ溝51と雌ねじ溝53との間には循環ボールたる多数個の鋼球55が介装されている。また、ボールナット41には、鋼球55を循環させるための循環こま(図示せず)が装着されている」との記載からみて、雄ねじ溝51、雌ねじ溝53、多数個の鋼球55及びボールナット41は、ボールねじを構成しているといえる。

(エ)図5には、一対の弾性ブッシュ61が、軸受43とボールねじハウジング33との間の軸受43の外輪43bの両端面に配置されることが図示されている。

上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、第3実施形態に関し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「ボールねじであって、
軸受43を介してボールねじハウジング33内に取り付けられたボールナット41を備え、
一対の弾性ブッシュ61が、軸受43とボールねじハウジング33との間の軸受43の外輪43bの両端面に配置されるボールねじ。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された実公昭44-22004号公報(以下「刊行物2」という。)には、「軸受装置」に関して、図面(特に、第1図ないし第3図参照)とともに、次の事項が記載されている。

(ア)1欄17行?2欄31行
「本案は軸受に係り、特に転り軸受の推力方向に作用する衝撃力を緩和するように改良した軸受装置に関する。
以下図面に従い本案軸受の構造を説明する。第1図に於いて1は回転子軸、2はこの軸を支承する転り軸受、3はこれらを収容し、且つ前記軸受を支持する軸受枠である。而して前記軸受2と軸受枠3の対向する間隙にバネ鋼板等の圧縮率の優れたリング状の波形板バネ4を介在し、これにより前記軸受の推力方向に作用する衝撃力を吸収緩和する。この波形板バネ4の波は第2図、及び第3図に示す如く高さの異なつた山(或いは谷)が夫々交互に組み合わされたものであり、大きな谷A_(1),A_(1)’,A_(1)”と山A_(2),A_(2)’,A_(2)”の中間部に更に前記大きな山、谷よりも小さい山谷が形成されている。即ち大きな谷A_(1)、小さな山B_(2)、谷B_(1)、大きな山A_(2)・・・小さな山B_(2)”、谷B_(1)”、大きな山A_(2)”となつている。
次に上記形状の板バネを有する本案軸受に第1図矢印方向の衝撃力が作用についてその詳細を説明する。前記衝撃力が基準値即ち第3図に於いて大きな山(或は谷)と小さな山(或いは谷)の高さの差h以内にある状態では、その衝撃を前記大きな山A_(2),A_(2)’,A_(2)”、谷A_(1),A_(1)’,A_(1)”の接触で吸収緩和する。而して何らかの原因によって前記衝撃力が基準値以上になつたとすれば前記大きな山(或いは谷)は、前記小さな山(或いは谷)と同位置、或いはそれ以下まで圧縮される。これは換言すれば小さな山B_(2),B_(2)’,B_(2)”、谷B_(1),B_(1)’,B_(1)”も前記大きな山谷と共に接触することでありバネの復元力が増大されるものである。即ち、回転機が通常に運転され、前記衝撃力が微小である場合には、大きな山谷のみの弾性で受け何らかの原因によつて前記衝撃力が増大すれば小さな山、谷の接触も加わり、バネの復元力も増大するものである。
これに対して従来の此種の軸受にあつては上記板バネが一段構造であつた為、衝撃力が前記板バネの復元力以内であれば問題ないが、それ以上になればバネの緩衝作用はなくなり衝撃が軸受に直接作用し軸受の寿命低下、或いは破損を来たす恐れがあつた。又、前記バネの復元力を増して大きな衝撃に対して耐え得るようにすれば、今度は可撓性にとぼしくなり小さな衝撃に対しての緩衝作用がなくなり軸受にとつて好ましくない。
以上の如く本案軸受に使用した板バネは回転機が通常に運転している場合に作用する微小な衝撃に対しても、又、事故等により起る強い衝撃に対しても緩衝作用を有するから軸受の破損等の事故は解消され軸受の寿命が延長される。」

(イ)第1図には、衝撃力(第1図矢印)が軸方向に加わることが示されている。

ウ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された特開2005-96622号公報(以下「刊行物3」という。)には、「電気式動力舵取装置」に関して、図面(特に、図1、図2参照)とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0019】
アンギュラボール軸受63の内輪63bは、ロータ61に軸線方向に摺動可能に嵌合され、内輪63bの両側にはばね部材70,80が夫々配置されている。ばね部材70は、第1及び第2ばね体71a,71bで構成され、第1ばね体71aは環状円板部72a、環状円板部72aの内周側縁部から右方に環状に突設されて内輪63bの左端面に当接する鍔部73a、環状円板部72aの外周側縁部から左方に突設された隙間形成部74aから構成されている。第2ばね体71bは環状円板部72aと対向する環状円板部72b、環状円板部72bの内周側縁部から左方に環状に突設されてロータ61の左端部に螺着されたナット75と当接する鍔部73b、環状円板部72bの外周側縁部から右方に突設され隙間形成部74aと当接して環状円板部72a,72b間に所定隙間を形成する隙間形成部74bから構成されている。
【0020】
ばね部材80は、第1及び第2ばね体81a,81bで構成され、第1ばね体81aは環状円板部82a、環状円板部82aの内周側縁部から左方に環状に突設されて内輪63bの右端面に当接する鍔部83a、環状円板部82aの外周側縁部から右方に突設された隙間形成部84aから構成されている。第2ばね体81bは環状円板部82aと対向する環状円板部82b、環状円板部82bの内周側縁部から右方に環状に突設されてロータ61の肩部85と当接する鍔部83b、環状円板部82bの外周側縁部から左方に突設され隙間形成部84aと当接して環状円板部82a,82b間に所定隙間を形成する隙間形成部84bから構成されている。
【0021】
このように、アンギュラボール軸受63の内輪63bがロータ61に軸線方向に相対移動可能に嵌合され、軸受63の両側に夫々配置された各ばね部材70,80の一方の鍔部73a,83aが内輪63bの両端面に夫々当接され、他方の鍔部73b,83bがロータ61に設けられた段部である肩部85及びナット75間に挟持されている。ナット75はロータ61の左端部にねじ込まれてばね部材70,80を圧縮することによりアンギュラボール軸受63にプリロードが付与されている。」

(イ)「【0023】
操向車輪から衝撃力がラックシャフト40に逆入力されると、該衝撃力はラックシャフト40からボールねじ機構50を介して軸線方向の衝撃力としてロータ61に伝達される。軸線方向の衝撃力がロータ61に伝達されると、衝撃力の方向に応じてばね部材70,80が圧縮変形され、ロータ61がアンギュラボール軸受63の内輪63bに対して軸線方向に相対的に移動して衝撃力を緩衝する。このように、逆入力が発生した場合にばね部材70,80が変形して衝撃力を吸収するので、ラック歯41とピニオンとの間などで発生する打音を防止することができる。ロータ61は鋼材製であるので、アンギュラボール軸受63の内輪63bに対して耐磨耗性が高く円滑に相対移動することができる。アンギュラボール軸受63に衝撃力が作用しないため軸受自体の寿命を伸ばすことができる。
【0024】
上記実施形態では、アンギュラボール軸受の内輪をロータに軸線方向に摺動可能に嵌合し、内輪の両端面にばね部材を夫々配置しているが、アンギュラボール軸受の外輪をハウジングの軸受穴に軸線方向に摺動可能に嵌合し、外輪の両端面にばね部材の外周側縁部に突設された鍔部を当接させ、内周側縁部に突設された鍔部をハウジングに設けられた段部間に挟持するようにしてもよい。この場合、ハウジングを鋳物製にすると、外輪に対する軸受穴の耐磨耗性をよくすることができる。」

(2)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「ボールねじ」は前者の「ボールねじ(10)」に相当し、以下同様に、「軸受43」は「軸受(13、20)」に、「ボールねじハウジング33」は「ハウジング(14、32)」に、「ボールナット41」は「ナット部(21)」に、「一対の弾性ブッシュ61」は「少なくとも1つのバネ要素(24)」に、「軸受43の外輪43bの両端面」は「軸受(13、20、30)の各端面」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「ボールねじであって、
軸受を介してハウジング内に取り付けられたナット部を備え、
少なくとも1つのバネ要素が、軸受とハウジングとの間の軸受の各端面に配置されるボールねじ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明1は、「前記バネ要素(24)の予張行程及び予張力は、その後に特性曲線が急峻に増大する推移領域の近傍に存在していて、前記バネ要素(24)は、前記特性曲線の累進領域内で作動される」のに対し、
引用発明は、かかる構成を備えていない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
刊行物3の「ナット75はロータ61の左端部にねじ込まれてばね部材70,80を圧縮することによりアンギュラボール軸受63にプリロードが付与されている」(段落【0021】)との記載、及び「軸線方向の衝撃力がロータ61に伝達されると、衝撃力の方向に応じてばね部材70,80が圧縮変形され、ロータ61がアンギュラボール軸受63の内輪63bに対して軸線方向に相対的に移動して衝撃力を緩衝する」(段落【0023】)との記載に照らせば、引用発明の弾性ブッシュ61において、プリロードを付与し、また、軸線方向の衝撃力を緩衝するとの課題が理解できる。

また、刊行物2には、軸受2と軸受枠3の対向する間隙に圧縮率の優れたリング状の波形板バネ4を介在させ、回転機が通常に運転され、軸方向の衝撃力が微小である場合には、大きな山谷のみの弾性で受け、何らかの原因によって前記衝撃力が増大すれば小さな山、谷の接触も加わり、バネの復元力を増大させ、回転機が通常に運転している場合に作用する微小な衝撃に対しても、又、事故等により起る強い衝撃に対しても緩衝作用を有するから軸受の破損等の事故は解消され軸受の寿命が延長されることが記載されている。

この記載によれば、大きな山谷のみの弾性で受ける態様は、小さな山谷の接触も加えてバネの復元力を増大させる態様と同様、衝撃に対して緩衝するものである。また、刊行物2の軸受2は、軸受2を軸受枠3を保持するにあたって、刊行物3に記載されるように、予圧が付与されるものといえる。

しかしながら、上記大きな山谷のみの弾性で受ける態様及び小さな山、谷の接触も加えてバネの復元力を増大させる態様は、衝撃に対して緩衝するものであるから、上記予圧との関係は不明である。

そうすると、引用発明において、刊行物2,3に記載された事項から、相違点に係る本願発明1の「バネ要素(24)の予張行程及び予張力は、その後に特性曲線が急峻に増大する推移領域の近傍に存在」するとの事項を導き出すことはできない。

(4)小括
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明及び刊行物2,3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明8は、本願発明1の上記相違点に係る「バネ要素(24)の予張行程及び予張力は、その後に特性曲線が急峻に増大する推移領域の近傍に存在」するとの事項を備えるものであるから、本願発明1と同様に、当業者が引用発明及び刊行物2,3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2ないし7及び請求項9に係る発明は、本願発明1又は本願発明8をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明及び刊行物2,3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
本願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1の「非線形」の定義が不明瞭である。非線形には、どのような曲線が含まれるのか明確でない。

(2)請求項1の「累進」の定義が不明瞭である。

(3)発明の詳細な説明には、バネ要素となる「波形バネ」、「ディスクバネ」、「エラストマー製のディスク」によって、特性曲線をどのようにして実現できるのか、当業者が実施することができる程度に記載されていない。

2 当審拒絶理由の判断
(1)平成28年6月13日付けの手続補正により請求項1,2,8に記載されていた「非線形」という文言が削除された。このことにより、請求項1,2,8に係る発明は明確となった。
よって、当審拒絶理由(1)は解消した。

(2)平成28年6月13日付けの意見書によれば、本願における「累進」とは、比率が階段状に増大する場合を含む概念ではないことが理解でき、「累進」の定義が明確となった。
よって、当審拒絶理由(2)は解消した。

(3)発明の詳細な説明には、段落【0007】において、バネ要素を並列及び/または直列にして、具体的に特性曲線を設計するように取り付け得ることが記載され、段落【0008】において、バネ要素は好ましくは波形バネ及び/またはディスクバネであり、さらに、エラストマー製のディスクによっても実現され得ることが記載されており、これらの記載からみて、発明の詳細な説明は当業者が特性曲線を実現できる程度に記載されているといえる。
よって、当審拒絶理由(3)は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-09 
出願番号 特願2013-511651(P2013-511651)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (F16H)
P 1 8・ 536- WY (F16H)
P 1 8・ 121- WY (F16H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀬川 裕  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 中川 隆司
冨岡 和人
発明の名称 ボールねじ  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 堀田 幸裕  

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