• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1317550
審判番号 不服2015-14431  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-31 
確定日 2016-07-29 
事件の表示 特願2012-516915「間欠受信を実現する移動ネットワークにおいて通信するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月29日国際公開、WO2010/150152、平成24年12月10日国内公表、特表2012-531786〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年6月17日(パリ条約に基づく優先権主張2009年6月26日、欧州特許庁)の出願であって、平成27年3月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年7月31日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
複数のセカンダリ局と通信するプライマリ局を含むネットワークを動作させる方法であって、
前記プライマリ局が、間欠モードでセカンダリ局と通信し、
前記セカンダリ局が、前記セカンダリ局の現在のステータスに基づく制御メッセージを前記プライマリ局に送信し、
前記プライマリ局が、前記制御メッセージに基づいて前記間欠モードのパラメータを変更し、
前記制御メッセージが、前記セカンダリ局のステータスの指標を含み、
前記ステータスの指標が、前記セカンダリ局の現在のエネルギー・ステータス及び所望のサービス品質に関する情報を伝達する情報要素の形式をとる、方法。

3.引用文献

引用文献1.欧州特許出願公開第1973355号明細書(原査定の引用文献1)
引用文献2.米国特許出願公開第2007/0057767号明細書(原査定の引用文献2)

3-1.引用文献1の記載
引用文献1には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(ア)第0001段落
[0001] The invention relates to a method and an apparatus for configuring mode timers to control a probability that a user equipment device UE, such as a mobile station is in a power saving mode to adapt the user equipment UE to characteristics of a shared channel and packet service.
〈訳〉
[0001] この発明は、モードタイマーの設定のための方法及び装置に関し、該モードタイマーは、移動局のようなユーザ装置デバイスUEが、シェアードチャネル及びパケットサービスの特性に順応させるように省電力モードに入る可能性を制御するものである。

(イ)第0025段落
[0025] As can be seen from figure 1, the user equipment UE which is in a possible embodiment a mobile device, such as a mobile computer or a mobile phone is connected via a radio link to a network end node of a wireless access network, such as 3GPP long term evolution (LTE) network or a WiMax network.
〈訳〉
[0025] 図1からわかるように、ユーザ装置UEは、想定される実施形態ではモバイルコンピュータ又は携帯電話のような移動デバイスであり、無線リンクを経由して、3GPPロングタームエボリューション(LTE)ネットワーク又はWiMaxネットワークのような無線アクセスネットワークのネットワークエンドノードに接続されている。

(ウ)第0027段落
[0027] With the method according to the present invention, the adjustment of mode timers which control the probability that the user equipment UE is in a power saving mode to save battery power is performed by determining a class of the user equipment UE and then the mode times are adjusted according to the determined class of the user equipment UE. The determination of a class of a user equipment UE is performed by a network end node, e. g. a base station BS of a wireless access network, which compares at least one data traffic requirement value and a power condition value of the respective user equipment UE with corresponding predetermined threshold values. Then, the mode timers of the respective user equipment UE are adjusted according to the determined class of the user equipment UE depending on the data traffic requirement values and depending on the power condition value of the respective user equipment UE.
〈訳〉
[0027] 本発明に従う方法によれば、ユーザ装置UEが電池残量を節約するために省電力モードに入る可能性を制御する複数のモードタイマーを調整することは、ユーザ装置UEのクラスを決定することによって実行され、そして、複数のモードタイマーは、決定されたユーザ装置UEのクラスに従って調整される。ユーザ装置UEのクラスの決定は、ネットワークエンドノード、例えば、無線アクセスネットワークの基地局BS、によって実行され、ネットワークエンドノードは、それぞれのユーザ装置UEの少なくとも1つのデータトラフィック要件値及び電池残量状態値と、それらに対応する所定のしきい値とを比較する。そして、それぞれのユーザ装置UEの複数のモードタイマーは、それぞれのユーザ装置UEのデータトラフィック要件値及び電池残量状態値に基づいて決定されたそれぞれのユーザ装置UEのクラスに従って調整される。

(エ)第0029第段落
[0029] In a possible embodiment of the method according to the present invention, the configured mode timers of the user equipment UE are formed by an inactivity timer T_(I) and by a sleeping mode timer T_(SM).
〈訳〉
本発明に従う方法に関する想定される実施形態では、ユーザ装置UEの設定された複数のモードタイマーは、休眠タイマーT_(I)及びスリープモードタイマーT_(SM)により構成される。

(オ)第0030段落
[0030] Figure 2 shows a state diagram of protocol states as defined in 3GPP-LTE standard for illustrating a possible embodiment of the method according to the present invention. There are two MAC level sub-states defined for the active state of the LTE device (LTE active state), namely an active substate and a dormant substate. The transitions between these sub-states are shown in figure 2. The configuration of the inactivity timer T_(I) controls how quick the user equipment UE enters the power saving mode. Due to the absence of a dedicated channel, the inactivity timer T_(1) is irrespective to channel utilization. The function of the inactivity timer T_(I) is to avoid frequent transitions between active and dormant sub-states. A further function of the inactivity timer T_(I) is to reduce a delay and a possible signalling overhead because of the inter-arrival time of small data packets or in case of latency sensitive data traffic. The sleeping time mode T_(SM) indicates the length of a sleep period which is in one embodiment variable and in another embodiment constant. The sleep period of the user equipment UE is followed by a wake-up phase of the user equipment UE. During the wake-up phase, the user equipment UE turns on its integrated receiver to listen whether a data packet of the user equipment UE has arrived at the network end node, i. e. base station BS, during its previous sleep phase. Figure 2 shows the transitions of triggering factors in the LTE active state.
上記(オ)において一部のinactivity timerの記号が「T_(1)」となっているが、引用文献1の他の箇所を参照すると「T_(I)」の誤記であると理解できる。
〈訳〉
[0030] 図2は3GPP-LTE規格に定義されたプロトコル状態の状態遷移図を示しており、本発明に従う方法に関する想定される実施形態を説明している。LTEデバイスのアクティブ状態(LTEアクティブステート)に対して定義された2つのMACレベル副状態すなわちアクティブ副状態及びドーマント副状態が存在する。これらの副状態の間の遷移が図2に示される。休眠タイマーT_(I)の設定は、ユーザ装置UEがいかに早くパワーセービングモードに入るかを制御する。デディケイテッドチャネルが存在しないことにより、休眠タイマーT_(I) はチャネル利用とは無関係である。休眠タイマーT_(I) の機能は、アクティブ及びドーマント副状態の間の遷移が頻発しないようにすることである。休眠タイマーT_(I)の別の機能は、小さなデータパケットが相互に到着することによる、又は、レイテンシに対して不安定なデータトラフィックの場合の、遅延及び想定されるシグナリングオーバーヘッドを減ずることである。スリープモードタイマーT_(SM)は、スリープ期間の長さを示すものであり、一実施形態では変数であり、他の実施形態では定数である。ユーザ装置UEのスリープ期間は、ユーザ装置UEのウェイクアップフェイズに続く。ウェイクアップフェイズの間、ユーザ装置UEは自身の統合受信機をオンし、直前のスリープフェイズの間にユーザ装置UE宛てのデータパケットがネットワークエンドノードすなわち基地局BSに到着していたかをリッスンする。図2はLTEアクティブステートのトリガ要因の遷移を示す。

(カ)第4頁第53行から第54行
Then, at t_(5), the inactivity timer T_(I) of the user equipment UE expires and there is a state transition of the UE device from the active sub-state (power active mode) to the dormant substate (DRX mode) as shown in the diagram of figure 2.
〈訳〉
そして、t_(5)において、ユーザ装置UEの休眠タイマーT_(I)が満了し、図2の状態遷移図に示されるようにUEデバイスの状態遷移がアクティブ副状態(パワーアクティブモード)からドーマント副状態(DRXモード)へと生じる。

(キ)第0068第段落
[0068] If the user equipment UE detects that its power condition has changed significantly or that the data traffic requirement has changed significantly so that the class has to be changed, the user equipment UE triggers an update and informs the network end node about the respective change.
〈訳〉
[0068] ユーザ装置UEが、自身の電池残量が有意に変化したこと、又は、データトラフィック要件が有意に変化したことを検出し、それによってクラスが変化する場合、ユーザ装置UEは、ネットワークエンドノード対して各自の変化をトリガし、更新し、通知する。

(ク)第0069段落
[0069] In response to this message, the network end node updates the index of the class of the user equipment UE and recalculates and timer values which are caused by the change of the user equipment's energy or traffic profile.
〈訳〉
[0069] このメッセージに応答して、ネットワークエンドノードは、ユーザ装置UEのクラス指標を更新し、ユーザ装置のエネルギー又はトラフィックプロファイルの変化に起因する複数のタイマー値を再計算する。

(ケ)第0070段落
[0070] The method according to the present invention considers data traffic requirements of the user equipment devices UE and the power consumption jointly. Accordingly, the scenarios are classified such that a state transition can guarantee these requirements better. Based on features of a shared data channel and packet based traffic, the mode timers such as the inactivity timer T_(i) and the sleep mode timer T_(SM) are jointly optimized by the method according to the present invention for different scenarios.
上記(ケ)においてinactivity timerの記号が「T_(i)」となっているが、引用文献1の他の箇所を参照すると「T_(I)」の誤記であると理解できる。
〈訳〉
[0070] この発明に従う方法は、ユーザ装置デバイスUEのデータトラフィック要件と電池残量消費とを共同で考慮する。しがたって、いくつかのシナリオは、状態遷移がこれらの要件をより良い形で補償することができるように、分類される。シェアードデータチャネル及びパケットベーストラフィックの特徴に基づいて、休眠モードタイマー T_(I) 及びスリープモードタイマーT_(SM)のようなモードタイマーは、様々なシナリオに対して本発明に従う方法により共同で最適化される。

以上の引用文献1の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明1〉
モードタイマーの設定のための方法であって、
ユーザ装置UEは、携帯電話のような移動デバイスであり、無線リンクを経由して、3GPPロングタームエボリューション(LTE)ネットワーク又はWiMaxネットワークのような無線アクセスネットワークのネットワークエンドノードに接続されており、
それぞれのユーザ装置UEの複数のモードタイマーは、それぞれのユーザ装置UEのデータトラフィック要件値及び電池残量状態値に基づいて決定されたそれぞれのユーザ装置UEのクラスに従って調整され、
ユーザ装置UEの設定された複数のモードタイマーは、休眠タイマーT_(I)及びスリープモードタイマーT_(SM)により構成され、
LTEデバイスのアクティブ状態(LTEアクティブステート)に対して定義された2つのMACレベル副状態すなわちアクティブ副状態及びドーマント副状態が存在し、休眠タイマーT_(I)の設定は、ユーザ装置UEがいかに早くパワーセービングモードに入るかを制御し、スリープモードタイマーT_(SM)は、スリープ期間の長さを示すものであり、
ユーザ装置UEのスリープ期間は、ユーザ装置UEのウェイクアップフェイズに続き、ウェイクアップフェイズの間、ユーザ装置UEは自身の統合受信機をオンし、直前のスリープフェイズの間にユーザ装置UE宛てのデータパケットがネットワークエンドノードすなわち基地局BSに到着していたかをリッスンし、
ユーザ装置UEの休眠タイマーT_(I)が満了すると、UEデバイスの状態遷移がアクティブ副状態(パワーアクティブモード)からドーマント副状態(DRXモード)へと生じ、
ユーザ装置UEが、自身の電池残量が有意に変化したこと、又は、データトラフィック要件が有意に変化したことを検出し、それによってクラスが変化する場合、ユーザ装置UEは、ネットワークエンドノード対して各自の変化をトリガし、更新し、通知し、
このメッセージに応答して、ネットワークエンドノードは、ユーザ装置UEのクラス指標を更新し、ユーザ装置のエネルギー又はトラフィックプロファイルの変化に起因する複数のタイマー値を再計算する、
モードタイマーの設定のための方法。

3-2.引用文献2の記載
引用文献2には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(コ)第0024段落
[0024] Alternatively, a signaling design can be modified and/or improved to reduce battery power consumption. For a signaling design to conserve battery power in a wireless communication system, an AT can send a notification message to an AN to report its battery status. The battery status information includes amount of leftover battery life at the AT. The notification message can further include AT's preferred power saving mode as well as a required power saving mode The preferred power saving mode relates to a paging cycle for receiving paging signals from the AN during idle state or connected state discontinued transmission (DTX) mode or discontinued reception (DRX) mode.
上記(コ)において、「a required power saving mode The preferred power saving mode」となっている箇所は、前後の文脈から判断して、「a required power saving mode. The preferred power saving mode」の誤記であると理解される。
〈訳〉
[0024] あるいは、シグナリングデザインは変更及び/又は改善することができ、それによって電池残量の消費が低減する。無線通信システムにおいて電池残量を節約ためのシグナリングデザインとして、ATは、自身の電池状態を報告するための通知メッセージをANに送信できる。電池状態情報は、ATにおける電池寿命の残量を含む。通知メッセージは、ATが望む省電力モード及び必要とする省電力モードを、さらに含み得る。ATが望む省電力モードは、ページング周期に関するものであり、ページング周期は、アイドルステート又はコネクテッドステートでの不連続送信(DTX)モード又は不連続受信(DRX)モード中に、ANからのページング信号を受信するためのものである。

(サ)第0030段落
[0030] By reporting types of information such as the battery status and/or preferred power saving mode to the AN, the AN and the AT can cooperatively make intelligent decisions to facilitate the AT's power consumption and usage management. For example, in a connected state, different modes of discontinuous transmission/reception and enhanced silence can be applied to each AT based on characteristics of traffic and the information provided by the AT. Here, the enhanced silence mode refers to an agreement upon a pattern between the AT and the AN in which the AN only sends AT packets on certain interlaces, such that for the rest of the interlaces, the AT does not need to listen to the traffic channel.
〈訳〉
[0030] 電池状態及び/又はATが望む省電力モードのような情報形態をANに報告することにより、AN及びATは、協調して、ATの電池消耗及び電池使用の管理を促進するような合理的判断を下すことができる。例えば、コネクテッドステートにおいて、トラフィック特性及びATから提供された情報に基づいて、不連続送信/受信及びエンハンストサイレンスのような別々のモードが各ATに適用され得る。ここで、エンハンストサイレンスモードは、ANがAT宛てのパケットをある間隔で送信のみをする際のATとANとの間のパターンに関する合意を参照し、その間隔の他の部分において、ATはトラフィックチャネルをリッスンする必要が無い。

4.対比
本願発明と引用発明1とを以下で対比する。
引用発明1の「ユーザ装置UE」及び「ネットワークエンドノード」は、それぞれ本願発明の「セカンダリ局」及び「プライマリ局」に相当する。
引用発明1の「3GPPロングタームエボリューション(LTE)ネットワーク又はWiMaxネットワークのような無線アクセスネットワーク」は、本願発明の「ネットワーク」に相当する。
引用発明1のユーザ装置UEは、無線リンクを介してLTEネットワークのネットワークエンドノードと接続されている。LTEネットワークが複数のUEを基地局を介して接続する携帯電話網であることは、技術常識であるから、引用発明1のユーザ装置UEは当然複数存在する。加えて、引用発明1は、モードタイマーの設定のための方法であり、モードタイマーはLTEネットワークでのDRXモード(不連続受信モード)に用いられるものである。以上に鑑みると、引用発明1と本願発明とは、「複数のセカンダリ局と通信するプライマリ局を含むネットワークを動作させる方法であって、前記プライマリ局が、間欠モードでセカンダリ局と通信」する点で一致する。
引用発明1の「電池残量値」及び「データトラフィック要件値」は、それぞれ本願発明の「エネルギー・ステータス」及び「所望のサービス品質」に相当し、引用発明1の「電池残量値」及び「データトラフィック要件値」は、いずれも本願発明の「ステータスの指標」に相当する。
引用発明1は、「ユーザ装置UEが、自身の電池残量が有意に変化したこと、又は、データトラフィック要件が有意に変化したことを検出し、それによってクラスが変化する場合、ユーザ装置UEは、ネットワークエンドノード対して各自の変化をトリガし、更新し、通知」するものであり、その通知は「メッセージ」によってなされるのであるから、引用発明1と本願発明とは、「前記セカンダリ局が、前記セカンダリ局の現在のステータスに基づく制御メッセージを前記プライマリ局に送信し」、「前記制御メッセージが、前記セカンダリ局のステータスの指標を含み」、「前記ステータスの指標が、前記セカンダリ局の現在のエネルギー・ステータス又は所望のサービス品質に関する情報を伝達するものである」点で一致する。
引用発明1では、「それぞれのユーザ装置UEの複数のモードタイマーは、休眠タイマーT_(I)及びスリープモードタイマーT_(SM)により構成され」ている。ここで、「休眠タイマーT_(I)の設定は、ユーザ装置UEがいかに早くパワーセービングモードに入るかを制御し」、「ユーザ装置UEの休眠タイマーT_(I)が満了すると、UEデバイスの状態遷移がアクティブ副状態(パワーアクティブモード)からドーマント副状態(DRXモード)へと生じ」るものであるから、休眠タイマーT_(I)はDRXモードへの移行時間を定めるものであって、間欠受信モードのパラメータの一種であると理解できる。加えて、「スリープモードタイマーT_(SM)は、スリープ期間の長さを示すものであり」、「ユーザ装置UEのスリープ期間は、ユーザ装置UEのウェイクアップフェイズに続」くものであって、ウェイクアップフェイズは、「ユーザ装置UEは自身の統合受信機をオンし、直前のスリープフェイズの間にユーザ装置UE宛てのデータパケットがネットワークエンドノードすなわち基地局BSに到着していたかをリッスン」するための期間であるのだから、スリープモードタイマーT_(SM)は、間欠受信モードの受信停止期間を定めるパラメータであると理解できる。よって、引用発明の「モードタイマー」は、本願発明の「間欠モードのパラメータ」に相当する。
引用発明1では、「それぞれのユーザ装置UEの複数のモードタイマーは、それぞれのユーザ装置UEのデータトラフィック要件値及び電池残量状態値に基づいて決定されたそれぞれのユーザ装置UEのクラスに従って調整され」るのであり、かつ、「ネットワークエンドノードは、ユーザ装置UEのクラス指標を更新し、ユーザ装置のエネルギー又はトラフィックプロファイルの変化に起因する複数のタイマー値を再計算する」のであるから、引用発明1と本願発明とは「前記プライマリ局が、前記制御メッセージに基づいて前記間欠モードのパラメータを変更」する点で一致する。

すると、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉
「複数のセカンダリ局と通信するプライマリ局を含むネットワークを動作させる方法であって、
前記プライマリ局が、間欠モードでセカンダリ局と通信し、
前記セカンダリ局が、前記セカンダリ局の現在のステータスに基づく制御メッセージを前記プライマリ局に送信し、
前記プライマリ局が、前記制御メッセージに基づいて前記間欠モードのパラメータを変更し、
前記制御メッセージが、前記セカンダリ局のステータスの指標を含み、
前記ステータスの指標が、前記セカンダリ局の現在のエネルギー・ステータス又は所望のサービス品質に関する情報を伝達するものである、方法。」である点。

〈相違点1〉
本願発明の制御メッセージは、ステータスの指標として、エネルギー・ステータス及び所望のサービス品質の双方を含むものであるのに対し、引用発明1のメッセージは、電池残量値及びデータトラフィック要件値の双方を必ずしも含むとは限らない点。

〈相違点2〉
本願発明のステータスの指標は、情報要素の形式を取っているのに対し、引用発明1の電池残量値及びデータトラフィック要件値は、情報要素の形式を取っているのか否かが不明である点。

5.判断

5-1.相違点1について
複数の情報を一度に送信するか、それとも、情報毎に分割して送信するかは、通信プロトコルの複雑さ、予想される通信量、期待される通信速度、通信機器の性能、通信内容の性質等の諸条件に基づいて適宜設計すべき事項に過ぎない。実際、引用文献2には、「トラフィック特性及びATから提供された情報に基づいて、不連続送信/受信及びエンハンストサイレンスのような別々のモードが各ATに適用され」るようなシステム(摘記事項(サ)を参照)において、ATの電池状態を報告するための通知メッセージに、さらに、ATが望む省電力モード等の別の情報を一緒に含めること(摘記事項(コ)を参照)が記載されている。
ここで、引用発明1においては、「ユーザ装置デバイスUEのデータトラフィック要件と電池残量消費とを共同で考慮する」(摘記事項(ケ)を参照)とされていることに鑑みれば、ネットワークエンドノードがユーザ装置UEからの更新通知を受け取った時に、データトラフィック要件及び電池残量を共同で考慮できるよう、それらが常に最新のデータであることを保証するため、ユーザ装置UEからのメッセージにデータトラフィック要件及び電池残量の双方を含めるよう構成する動機は十分にある。
したがって、引用発明1において、ユーザ装置UEからのメッセージに、データトラフィック要件値及び電池残量値の双方を含めるよう構成することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、格別のことではない。

5-2.相違点2について
複数の情報を伝送する際に、複数の情報要素の形式を取ることは、技術常識である。
したがって、引用発明1の電池残量値及びデータトラフィック要件値をそれぞれ情報要素とするような形式にすることは、当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。

5-3.効果について
また、本願発明の構成によって生じる効果も、引用発明1、引用文献2に記載されたような周知技術及び技術常識から当業者が予測し得る範囲内のもので格別顕著であるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用文献2に記載されたような周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-25 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-18 
出願番号 特願2012-516915(P2012-516915)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 紀之阿部 圭子  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 丸山 高政
久松 和之
発明の名称 間欠受信を実現する移動ネットワークにおいて通信するための方法  
代理人 矢ヶ部 喜行  
代理人 津軽 進  
代理人 津軽 進  
代理人 矢ヶ部 喜行  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 笛田 秀仙  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ