• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1317551
審判番号 不服2015-18453  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-09 
確定日 2016-07-29 
事件の表示 特願2011-113807「耐火性配線ボックス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月10日出願公開、特開2012-244816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成23年5月20日の出願であって、平成27年2月10日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日付けで手続補正がなされたが、同年7月17日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年10月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成27年4月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
底壁と、該底壁の周縁から立設された側壁とからなる周壁により前面に開口を有する有底箱状に形成されるとともに壁裏に設置され、壁を構築する造営材に固定される合成樹脂製の配線ボックスと、
前記配線ボックスの周壁の外面全体を覆うように貼着され、前記配線ボックスを前記造営材に固定する固定部材又はケーブルが貫通可能な厚さで形成された金属からなるシート材とからなり、
前記配線ボックスの側壁の外面には、壁裏での設置状態で前記造営材の側面に当接する当接部が設けられるとともに、前記当接部には前記造営材に食い込む突起が設けられ、
前記シート材は、前記突起に対応して変形して前記シート材の表面に前記突起が現れ得る柔軟性を有する厚さで形成されており、
壁裏での設置状態で、前記シート材の表面に現れた前記突起が前記シート材を介して前記造営材の側面に食い込むことを特徴とする耐火性配線ボックス。」


3.引用発明

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-209321号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(下線は、当審において付加した。)

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、埋込型ボックスの防耐火構造に関するものである。」(2頁1欄)

イ.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、例えば、上記の間仕切壁にコンセントや、照明スイッチなどを取り付けるためにはその部分を繰り抜いて埋込まなければならない。
【0006】これら埋込部に関しては、火災が発生した際にその部分より火炎が進入し防耐火性能が低下するという問題が発生する。
【0007】このため、準耐火建築物のコンセント部に関しては、100平方cm未満の開口部には鋼製のコンセントボックスを使い、100?200平方cmの開口部には鋼製のコンセントボックスを不燃材の断熱材(例えば厚さ30mm以上のロックウール(密度40kg/立方cm)で被覆したり、200平方cm以上の開口部には防火被覆が必要とされてきた。
【0008】しかしながら、これらの被覆方法は煩雑であり施工に手間がかかるという問題や、繰り抜いた部分を通して音が伝達しやすくなるため、遮音性能が低下するという問題があった。
【0009】また、電源用のブレーカーボックスや、防火ベルなども埋込型にした場合は、特にその埋込部分の面積が拡大するため、防耐火上非常に問題となる可能性がある。このため、上記のように、埋込型ボックスを防耐火被覆するためにロックウールで被覆したり、ケイカル板で被覆する方法があるが、これらの材料は施工性に劣る上に被覆厚みが厚いという欠点があった。
【0010】そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解消し、十分な耐火性能を有し、施工性が良く、被覆厚みが薄く、しかも、必要な遮音性能も確保することができる埋込型ボックスの防耐火構造を提供することにある。」(2頁1?2欄)

ウ.「【0024】
【発明の実施の形態1】以下、本発明の具体的な実施の形態1について、図示例と共に説明する。
【0025】図1?図4は、この発明の実施の形態1を示すものである。
【0026】まず、構成を説明すると、図1の建築物の壁面1、例えば、耐火性を有する間仕切壁2は、15mmのガラス繊維入りの強化石膏ボード3を2枚張りしたものを鋼製スタッド4に両面張りして構成されている。
【0027】そして、この間仕切壁2に、電気・ガスなどのコンセント5や照明などのスイッチやブレーカーやアンテナ線や電話線や通信線などの設備機器6を設ける場合、間仕切壁2に開口部7が形成され、開口部7の壁裏側に埋込型ボックス8が取付けられる。例えば、照明などのスイッチ9の場合、図2、図3に示すように、埋込型ボックス8(照明スイッチボックス10)に対し、表側からスイッチ9を取付ける取付枠11がネジ止めされ、その上から意匠面となるプレート12がネジ止めやはめ込みなどによって取付けられる。
【0028】埋込型ボックス8としては、鋼製、樹脂製、FRP等の複合材料製、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、スレート板などの無機系の不燃材料や準不燃材料、有機材料と無機系の材料の複合材料などが用いられる。
【0029】この実施の形態1では、開口部7の壁裏側に取付けられた埋込型ボックス8に対し、埋込型ボックス8の裏面および側面を覆い且つ開口部7を塞ぐように、加熱によって膨張可能な熱膨張性耐火材15を取付ける。
【0030】具体的には、図4に示すように、開口部7の壁裏側に埋込型ボックス8を取付けた後、埋込型ボックス8の裏面および側面を覆うように熱膨張性耐火材15を貼付け、且つ、この熱膨張性耐火材15の縁部を開口部7の壁裏側の周縁部に取付け(貼付け)るようにする。
【0031】この熱膨張性耐火材15には、50kW/平方mの加熱条件下で30分加熱した後の体積膨張倍率が3?100倍となって耐火断熱層を形成し得る、厚み0.1?5mmの材料であることなが好ましい。
【0032】具体的には、熱膨張性耐火材15は、熱可塑性樹脂とゴム物質の少なくとも一方、または、エポキシ樹脂100重量部に対し、無機充填剤を50?500重量部含有し、そのうち少なくとも加熱時に膨張する層状無機物を10?350重量部含有するものとする。
【0033】埋込型ボックス8と熱膨張性耐火材15との取付方法は、特に限定されないが、熱膨張性耐火材15が粘着性を有する場合は、その粘着力を利用して積層固定してもよい。熱膨張性耐火材15が熱可塑性樹脂やゴム物質の少なくとも一方からなる材料を含有する場合は可撓性に優れているので、埋込型ボックス8の形状に合わせて被覆することができるので特に好適に用いられる。また、これらの材料を用いて被覆した場合、埋込部分の遮音性能の低下を防止することができるので特に好適に用いられる。
【0034】熱膨張性耐火材15に粘着力がない場合は、接着剤を使用して接着することができる。特に樹脂成分が後述するエポキシ樹脂の場合は、エポキシ樹脂の硬化前に積層すれば硬化時に接着することができる。
【0035】この熱膨張性耐火材15は、少なくとも片面に、金属板、金属箔、並びに、断熱材の少なくとも一つの補助層16を積層したものとするのが好ましい。
【0036】金属板もしくは、金属箔としては、例えば、鉄板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板等の金属板やとアルミ箔、アルミガラスクロス、アルミクラフト,銅箔、金箔等の金属箔が挙げられる。金属板の厚みは、0.1?5mmが好ましく0.1mm以下の金属箔も用いることができる。中でも、アルミ箔と、ガラスクロス、ガラスマット、炭素繊維などを積層した材料はアルミの熱反射性に優れる点から耐火上有利であり、ガラスクロス、ガラスマット、炭素繊維の耐熱性により、熱膨張性耐火材15の保護を行うことができ、特に好適に用いることができる。上記アルミガラスクロスのアルミ箔の厚みは、取扱いを考慮すると5μm以上が好ましい。また、ガラスクロス、ガラスマット、炭素繊維などは単位面積当たりの重量が5g/平方mが好ましく、5g/平方mをきると熱膨張性耐火材15の保護という点で劣る。上記アルミ箔と、ガラスクロス、ガラスマット、炭素繊維はポリエチレンなどで熱ラミネートするか、不燃性のアクリル系接着剤等の接着剤を用いて積層される。」(3頁3欄?4頁5欄)

エ.「【0083】次に、この実施の形態1の作用について説明する。
【0084】熱膨張性耐火材15は火災時に膨張するため、埋込型ボックス8に貫通している電線部分の隙間や火災により電線が焼失した場合でも、膨張した熱膨張性耐火材15が隙間部分を充填することとなるので、火炎の貫通が起こらず、十分な耐火性能を得ることができる。
【0085】また、埋込型ボックス8の裏面などを熱膨張性耐火材15で覆うように取付けるだけの構造なので、施工性が良く、被覆厚みが薄くなり、しかも、必要な遮音性能も確保することができる。
【0086】実施の形態1の場合には、開口部7の壁裏側に埋込型ボックス8を取付けた後に熱膨張性耐火材15を貼付けるだけなので、良好な施工性を得ることができる。
【0087】更に、熱膨張性耐火材15の少なくとも片面に、金属板、金属箔、並びに、断熱材の少なくとも一つを積層することにより、防耐火性能をより一層向上することができる。
【0088】電気・ガスなどのコンセント5や、照明などのスイッチ9や、ブレーカーや、アンテナ線や電話線や通信線などの設備機器6の埋込型ボックス8に対して適用することが可能である。
【0089】熱膨張性耐火材15の厚さは、0.1?5mmが好ましい。厚みが0.1mmより薄くなると耐火性能が低下し、5mmより厚くなると施工性が低下する。」(7頁11?12欄)

オ.「【0090】
【発明の実施の形態2】図5は、この発明の実施の形態2を示すものである。なお、実施の形態1と同一ないし均等な部分については、同一の符号を付して説明する。
【0091】この実施の形態2のものでは、予め熱膨張性耐火材15などで埋込型ボックス8の裏面および側面を被覆し、この埋込型ボックス8の先端部を熱膨張性耐火材15ごと開口部7へ差込むようにして取付けている。
【0092】この実施の形態2によれば、予め熱膨張性耐火材15を被覆した埋込型ボックス8を開口部7の壁裏側に取付けるだけなので、良好な施工性を得ることができる。
【0093】上記以外の部分については、実施の形態1と同様の構成を備えており、同様の作用・効果を得ることができる。」(7頁12欄)

上記引用例1の記載を総合すると、引用例1の図5に示される実施の形態2は、図1?図4に示される実施の形態1において、予め熱膨張性耐火材15、補助層16などで埋込型ボックス8の裏面および側面を被覆し、この埋込型ボックス8の先端部を熱膨張性耐火材15ごと開口部7へ差込むようにして取付けたものであり、それ以外の「埋込型ボックス8」、「熱膨張性耐火材15」、及び「補助層16」の構成は、実施の形態1と同一の構成を有するものと認められる。そして、この分野の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

a.上記ア.、及び上記イ.の段落【0010】の記載によれば、上記実施の形態2に係る埋込型ボックス8も、防耐火構造を有する埋込型ボックスである。

b.上記ウ.の段落【0028】の記載によれば、上記「埋込型ボックス8」は樹脂製であってもよいものであり、図2?5を参照すると、それは、底壁と、該底壁の周縁から立設された側壁とからなる周壁により前面に開口を有する有底箱状に形成されているものと認められる。
さらに、段落【0027】の記載によれば、上記「埋込型ボックス8」は、電気・ガスなどのコンセント5や照明などのスイッチやブレーカーやアンテナ線や電話線や通信線などの設備機器6を取り付けるために、間仕切壁2に形成された開口部7の壁裏側に取付けられるものである。
したがって、引用例1には、電気・ガスなどのコンセント5や照明などのスイッチやブレーカーやアンテナ線や電話線や通信線などの設備機器6を取り付けるために、間仕切壁2に形成された開口部7の壁裏側に取付けられる、底壁と、該底壁の周縁から立設された側壁とからなる周壁により前面に開口を有する有底箱状に形成される樹脂製の埋込型ボックス8が記載されているといえる。

c.上記オ.の段落【0091】の記載によれば、上記「埋込型ボックス8」は、「熱膨張性耐火材15」によって裏面および側面が予め被覆されるものであり、また、上記ウ.の段落【0031】によれば、上記「熱膨張性耐火材15」は、50kW/平方mの加熱条件下で30分加熱した後の体積膨張倍率が3?100倍となって耐火断熱層を形成し得る、厚み0.1mmの熱膨張性耐火材であってもよいものである。さらに、段落【0033】によれば、上記「熱膨張性耐火材15」は、熱可塑性樹脂やゴム物質の少なくとも一方からなる材料を含有し、可撓性に優れ、埋込型ボックス8の形状に合わせて被覆することができるものであってもよいものである。
したがって、引用例1には、熱可塑性樹脂やゴム物質の少なくとも一方からなる材料を含有し可撓性に優れ、予め上記埋込型ボックス8の形状に合わせて裏面および側面を被覆し、50kW/平方mの加熱条件下で30分加熱した後の体積膨張倍率が3?100倍となって耐火断熱層を形成し得る、厚み0.1mmの熱膨張性耐火材15も記載されているといえる。

d.上記ウの段落【0035】、上記オ.の段落【0091】、及び図5の記載によれば、引用例1には、上記熱膨張性耐火材15に積層される「補助層16」も記載されており、さらに、段落【0036】の記載によれば、上記「補助層16」は、金属箔として、厚みが、0.1mであってもよいものである。
したがって、引用例1には、上記熱膨張性耐火材15に積層される、金属箔からなり、厚みが0.1mmの補助層16、も記載されているといえる。

e.上記エ.の段落【0083】、及び【0087】の記載によれば、上記熱膨張性耐火材15は火災時に膨張するため、埋込型ボックス8に貫通している電線部分の隙間や火災により電線が焼失した場合でも、膨張した熱膨張性耐火材15が隙間部分を充填することとなるので、火炎の貫通が起こらず、十分な耐火性能を得ることができ、さらに、金属箔の上記補助層16が積層されることで防耐火性能をより一層向上する、ことができるものである。


以上のことを総合勘案すると、引用例1には、結局、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。

「電気・ガスなどのコンセント5や照明などのスイッチやブレーカーやアンテナ線や電話線や通信線などの設備機器6を取り付けるために、間仕切壁2に形成された開口部7の壁裏側に取付けられる、底壁と、該底壁の周縁から立設された側壁とからなる周壁により前面に開口を有する有底箱状に形成される樹脂製の埋込型ボックス8と、
熱可塑性樹脂やゴム物質の少なくとも一方からなる材料を含有し可撓性に優れ、予め前記埋込型ボックス8の形状に合わせて裏面および側面を被覆し、50kW/平方mの加熱条件下で30分加熱した後の体積膨張倍率が3?100倍となって耐火断熱層を形成し得る、厚み0.1mmの熱膨張性耐火材15と、
前記熱膨張性耐火材15に積層される、金属箔からなり、厚みが0.1mmの補助層16からなり、
前記熱膨張性耐火材15は火災時に膨張するため、前記埋込型ボックス8に貫通している電線部分の隙間や火災により電線が焼失した場合でも、膨張した前記熱膨張性耐火材15が隙間部分を充填することとなるので、火炎の貫通が起こらず、十分な耐火性能を得ることができ、さらに、金属箔の前記補助層16が積層されることで防耐火性能をより一層向上する、
防耐火構造を有する埋込型ボックス。」


(2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2010-119219号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、壁裏に設置されるとともに壁を構築する壁材に穿設された円形又は楕円形の透孔により前面が壁表に臨まされる配線ボックス、及び該配線ボックスと電動穿孔具とからなる配線ボックス装置に関する。」(2頁44?48行)

イ.「【0016】
図1に示すように、配線ボックス11は、前面(一面)に開口Kを有する有底四角箱状に形成されたボックス本体Bを備えている。ボックス本体Bは、矩形板状をなす底壁12と、底壁12の周縁から立設された側壁としての、上側壁13、下側壁14、左側壁15、及び右側壁16とから形成されるとともに、開口Kは上側壁13、下側壁14、左側壁15、及び右側壁16によって囲み形成されている。」(4頁40?45行)

ウ「【0019】
図1(a)に示すように、左側壁15には、配線ボックス11を造営材としての木柱T(図3参照)の側面に当接させて固定するための第1固定部17が設けられている。第1固定部17は、左側壁15の外面から外側方へ膨出した複数の第1台座17aを備える。この第1台座17aの左端面(先端面)によって、第1固定部17を木柱Tの側面に当接させる第1当接面17cが形成されている。また、第1固定部17には、左側壁15の内面から各第1台座17aを貫通して第1当接面17cに開口する第1固定孔17bが形成されている。さらに、第1台座17aには、第1台座17aを木柱Tの側面に当接させた際、木柱Tの側面に食い込む爪17dが突設されている。」(5頁11?19行)

エ.「【0030】
さて、上記構成の配線ボックス11を壁Wに設置し、配線ボックス11を用いて配線器具としてのコンセント40を壁Wに設置するには、まず、予め設定された木柱Tの側面に対する配線ボックス11の固定位置に、第1固定部17の第1当接面17c、及びリブ18の外側面を当接させる。このとき、木柱Tにおける固定位置の中央部に、左側壁15の補強壁18aに設けられた表示部18bを一致させ、配線ボックス11をその固定位置に位置合わせしながら第1当接面17cを木柱Tの側面に当接させる。このとき、爪17dを木柱Tの側面に食い込ませることにより、木柱Tの側面に沿った配線ボックス11の移動が抑制される。」(6頁44行?7頁2行)

上記引用例2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、結局、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。

「壁を構築する造営材に固定される配線ボックスであって、該配線ボックスの側壁の外面には、壁裏での設置状態で前記造営材の側面に当接する当接部が設けられるとともに、前記当接部には前記造営材に食い込む突起が設けられる配線ボックス。」


4.対 比

本願発明と引用発明1とを対比する。

a.引用発明1の「埋込型ボックス8」は、「電気・ガスなどのコンセント5や照明などのスイッチやブレーカーやアンテナ線や電話線や通信線などの設備機器6を取り付けるために」「壁裏側に取付けられ」るものであり、「配線ボックス」ともいい得るものであるから、引用発明1の「埋込型ボックス8」と、本願発明の「配線ボックス」は、「底壁と、該底壁の周縁から立設された側壁とからなる周壁により前面に開口を有する有底箱状に形成されるとともに壁裏に設置され、建築物に固定される合成樹脂製の配線ボックス」の点で共通する。

b.引用発明1の「補助層16」は、予め埋込型ボックス8の形状に合わせて裏面および側面を被覆する「熱膨張性耐火材15」に積層されるものであるから、「熱膨張性耐火材15」を介して「埋込型ボックス8」を被覆するものと認められる。
また、引用発明1において、「補助層16」は「金属箔」であり、その厚みは「0.1mm」と極めて薄いものであるから、「埋込型ボックス8に貫通している電線部分」や、固定部材が使用される場合にはその固定部材が貫通可能な厚さと認められ、さらに、通常、金属箔は貼ることで積層されるものであるから、引用発明1においても、「補助層16」は、「熱膨張性耐火材15」に貼着して積層されているものと認められる。
したがって、引用発明1の、「補助層16」は、本願発明の「前記配線ボックスの周壁の外面全体を覆うように貼着され、前記配線ボックスを前記造営材に固定する固定部材又はケーブルが貫通可能な厚さで形成された金属からなるシート材」と、「前記配線ボックスの周壁の外面を覆うように貼着され、前記配線ボックスを前記造営材に固定する固定部材又はケーブルが貫通可能な厚さで形成された金属からなるシート材」である点で共通する。

c.引用発明の「防耐火構造を有する埋込型ボックス」は、「熱膨張性耐火材15」と「補助層16」の各々によって耐火性能を向上させたものであるから、本願発明の「耐火性配線ボックス」に含まれる。

そうすると、本願発明と引用発明1とは次の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「底壁と、該底壁の周縁から立設された側壁とからなる周壁により前面に開口を有する有底箱状に形成されるとともに壁裏に設置され、建築物に固定される合成樹脂製の配線ボックスと、
前記配線ボックスの周壁の外面を覆うように貼着され、前記配線ボックスを前記造営材に固定する固定部材又はケーブルが貫通可能な厚さで形成された金属からなるシート材とからなる、
耐火性配線ボックス。」

(相違点1)
本願発明の「金属からなるシート材」は、配線ボックスの周壁の「全体」を覆うように貼着されるものであるのに対し、引用発明1の「金属からなるシート材」は、配線ボックスの周壁の「全体」を覆うとまでは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明では、「配線ボックス」は、「壁を構築する造営材に固定される」ものであり、「前記配線ボックスの側壁の外面には、壁裏での設置状態で前記造営材の側面に当接する当接部が設けられるとともに、前記当接部には前記造営材に食い込む突起が設けられ」ており、さらに、「シート材」が「前記突起に対応して変形して前記シート材の表面に前記突起が現れ得る柔軟性を有する厚さで形成されて」おり、「壁裏での設置状態で、前記シート材の表面に現れた前記突起が前記シート材を介して前記造営材の側面に食い込む」のに対して、
引用発明1では、「埋込型ボックス8」(本願発明の「配線ボックス」に相当。)は、造営材に固定されるものとは特定されておらず、そのため、造営材に食い込む突起を有するかは特定されておらず、さらに、「補助層16」の厚さと突起の関係も特定されておらず、壁裏での設置状態での「埋込型ボックス8」と造営材との関係も特定されていない点。


5.検討
(1)相違点1について
引用例1には、「金属からなるシート材」(補助層16)が、配線ボックス(埋込型ボックス8)の周壁の全体を覆うように貼着されるものであることの明示的記載はないが、周壁の一部のみを覆うようにすべきことを示す記載はないし、引用発明1の「金属からなるシート材」(補助層16)を、配線ボックス(埋込型ボックス8)の周壁の一部のみを覆うものとすべき理由は考えられない。
以上のことと、引用例1の段落【0085】に記載されるように、引用発明1は遮音性能の向上や耐火性能の向上を意図したものであることを考慮すると、引用発明1の「金属からなるシート材」(補助層16)は、配線ボックス(埋込型ボックス8)の周壁の全体を覆うものとするのが自然である。
以上のことは、引用発明1において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味する。

(2)相違点2について
上記引用例2には、壁を構築する造営材に固定される配線ボックスであって、該配線ボックスの側壁の外面には、壁裏での設置状態で前記造営材の側面に当接する当接部が設けられるとともに、前記当接部には前記造営材に食い込む突起が設けられる配線ボックス(引用発明2)、が記載されている。
一方、引用発明1における「埋込型ボックス8」は、引用例1の段落【0088】に記載されるように、壁裏に設けられる様々なタイプの「埋込型ボックス」として具現化できるものであり、壁を構築する造営材に固定されるタイプの「配線ボックス」としても具現化し得るものであることは明らかである。
してみれば、引用発明1における「埋込型ボックス8」を、引用発明2のような壁を構築する造営材に固定されるタイプの「配線ボックス」として具現化することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用発明1において、「熱膨張性耐火材15」は、「可撓性に優れ、予め埋込型ボックス8の形状に合わせて」被覆できるものであり、「補助層16」も金属箔であり可撓性に優れているものと認められ、さらに、「熱膨張性耐火材15」、及び「補助層16」の厚みは各々0.1mmであり、両者を合わせても0.2mmと極薄いものであるから、「埋込型ボックス8」として引用発明2のような突起を有する「配線ボックス」を採用すると、「熱膨張性耐火材15」、及び「補助層16」は、「突起に対応して変形し」、「補助層16」の「表面に前記突起が現れ得る」ものであり、その状態で、「埋込型ボックス8」を造営材に固定すれば、「補助層16」の表面に現れた前記突起が、「熱膨張性耐火材15」、及び「補助層16」を介して前記造営材の側面に食い込むものと認められる。
以上のことは、引用発明1において上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味する。

(3)本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用発明1、2から想到される構成から当業者が予想できる範囲のものである。


6.むすび

以上のとおりであって、本願発明は、上記引用例1、及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-27 
結審通知日 2016-05-31 
審決日 2016-06-13 
出願番号 特願2011-113807(P2011-113807)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 千葉 輝久
山澤 宏
発明の名称 耐火性配線ボックス  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ