• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
管理番号 1317559
審判番号 不服2014-20568  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-10 
確定日 2016-07-27 
事件の表示 特願2008-286058「RFIDタグの空間-時間内の推定位置を決定するための方法、コンピュータ・プログラム及びデータ処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月18日出願公開、特開2009-133849〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
この審判事件に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、平成20年11月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年(平成19年)11月29日、アメリカ合衆国)の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
平成25年 3月26日付け:拒絶理由の通知(同年4月2日発送)
平成25年10月 2日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年 6月 3日付け:拒絶査定(同年同月10日送達)
平成26年10月10日 :審判請求書の提出
平成27年 6月18日付け:拒絶理由の通知(同年同月23日発送)
平成27年11月20日 :意見書、手続補正書の提出

2 特許請求の範囲の記載
平成27年11月20日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(以下、この請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)。

「 ストレージ装置と、プロセッサと、それぞれの位置が予め知られている複数のRFID送受信機とを備えるデータ処理システムを使用してRFIDタグの位置を推定するための方法であって、
前記RFIDタグからの複数の無線信号を前記複数のRFID送受信機が受信するステップであって、ある時点において前記無線信号を受信するRFID送受信機の数が3未満である、ステップと、
複数の対応するデータセットを格納するステップであって、前記複数の対応するデータセットのそれぞれは、前記複数の無線信号内の無線信号のそれぞれに対応し、各対応するデータセットは、前記RFIDタグ用の1セットのデータセットを形成するように、前記RFIDタグ用の対応する識別子と、対応する一の無線信号を受信した少なくとも1つの対応するRFID送受信機の対応する識別子と、前記対応する無線信号が受信された対応する一の時間を識別する対応するタイム・スタンプとを含む、ステップと、
前記1セットのデータセット内のデータを使用して、前記プロセッサが前記RFIDタグ用の時間相関化移動パターンを計算するステップと、
前記時間相関移動パターンを使用して、前記プロセッサが所与の時点における前記RFIDタグの位置を推定するステップであって、推定位置が決定されるステップと、
前記推定位置をストレージ装置へ格納するステップと、を含む方法。」

3 拒絶の理由
(1)当審において、平成27年6月18日付けで通知した拒絶の理由の一つは、以下のとおりである(以下、「当審拒絶理由」という。)。

「2 本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



本願の請求項1に係る発明は、推定位置の決定のために「確率モデル」を構築し、また、使用している。上記1において指摘したように、「確率モデル」が何を意味するかは明確でないが、少なくとも、本願の請求項1に係る発明は、推定位置の決定のために確率を利用していると考えられる。

一方、発明の詳細な説明では、推定位置の決定のために、位置マップ(図9や図11)と速度マップ(図10や図12)とを結合した確率のグラフ、すなわち、「確率マップ」(図13や図14)を用いる旨が記載されている。
例えば、本願明細書の段落0066には、「図13は、実施形態に従った、統計的な位置マップと結合されたときの、RFIDタグが空間内で所与の速度を有する確率のグラフである。具体的には、図13のグラフは、図10に示す第1の時間の速度マップからのデータを、図9に示す第1の時間の位置マップと結合したものである。この情報を結合することにより、図13に示すように、RFIDタグが所与の速度を有する確率を、相当に狭めることができる。軸1300は、確率を示し、軸1302は、「X」方向に沿った速度を示し、軸1304は、「Y」方向に沿った速度を示し、バー1306は、確率分布を示す。」との記載がある。
同様に、段落0067には、「図14は、実施形態に従った、統計的な位置マップと結合されたときの、RFIDタグが空間内で所与の速度を有する確率のグラフである。具体的には、図14のグラフは、図12に示す第2の時間の速度マップからのデータを、図11に示す第2の時間の位置マップと結合したものである。この情報を結合することにより、図14に示すように、RFIDタグが所与の速度を有する確率は、相当に狭めることができる。軸1400は、確率を示し、軸1402は、「X」方向に沿った速度を示し、軸1404は、「Y」方向に沿った速度を示し、バー1406は、確率分布を示す。」との記載がある。
また、段落0087には「次に、プロセッサは、第1のグリッド及び第1の新しい位置グリッドを結合して、第3のグリッドを作成する(ステップ1814)。同様に、プロセッサは、第2の新しい位置グリッド及び第2のグリッドを結合して、第4のグリッドを作成する(ステップ1816)。実施形態では、図10のグラフを図9のグラフと結合して、第1の結合グリッドを作成する。この第1の結合グリッドは、図13のグラフとすることができる。前述のように、図13は、図8のフル信号804が受信される時間におけるRFIDタグの位置用の確率マップを示す。次に、プロセッサは、第1の結合グリッドに基づき、RFIDタグ用の最良の位置及び確率を決定する(ステップ1818)。図13における最も高い確率は、位置(15、18)にある。同様に、図12のグラフを図11のグラフと結合して、第2の結合グリッドを作成する。この第2の結合グリッドは、図14のグラフとすることができる。前述のように、図14は、図8の過去の信号814が受信された時間におけるRFIDタグの位置用の確率マップを示す。また、プロセッサは、第2の結合グリッドに基づき、RFIDタグ用の最良の位置及び確率を決定する(ステップ1820)。図14における最も高い確率は、位置(7、22)にある。」との記載がある。

ところが、これら記載によっても、「結合」とはどのようなものかが不明である。つまり、図9や図11の位置マップと、図10や図12の速度マップとから、どのようにして図13や図14の「確率マップ」が得られるのかが把握できない。

また、段落0066,0067の記載からは、図13や図14が、速度に関する確率のグラフであることが把握される。
ところが、段落0087には「図13における最も高い確率は、位置(15、18)にある。」、「図14における最も高い確率は、位置(7、22)にある。」との記載があり、さらに、段落0089には「実施形態では、前記信号が生成された対応する時間に、2つの予測された位置(15、18)及び(7、22)に向けられたカメラによって生成された、ビデオ・イメージを検索することができる。」との記載がある。これら記載では、図13における「位置(15、18)」や図14における「位置(7、22)」を、速度ではなく位置の座標として扱っている。
このため、結合によって得た「確率マップ」が何を表すものであるのかが不明である。

以上のように、発明の詳細な説明の記載では、推定位置の決定のために必要な「確率マップ」が何を表すもので、それをどのように得るのかを把握できない。結果として、確率をどのように用いれば推定位置を決定し得るのかが把握されない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1、及び、それを引用する請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

(2)平成25年3月26日付けで通知された拒絶の理由の一つは、以下のとおりである(以下、「審査時拒絶理由」という。)。

「《理由3》
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(中略)
[4]請求項1に、「前記1セットのデータセット内のデータを使用して、前記RFIDタグ用の時間相関化移動パターンを計算する・・・前記時間相関化移動パターンを使用して、所与の時点における前記RFIDタグの推定位置を決定する」と記載されているところ、「RFIDタグ用の時間相関化移動パターン」とは、何を意味するものか、明らかでなく、また、その「RFIDタグ用の時間相関化移動パターン」の計算に「1セットのデータセット内のデータ」をどう使用するか、「RFIDタグ用の時間相関化移動パターン」と「1セットのデータセット内のデータ」との関係が、明らかでなく、さらに、「RFIDタグ用の時間相関化移動パターン」と「所与の時点」における「RFIDタグの推定位置」との関係も、明らかでないから、請求項1及びこれを引用する請求項2?4に係る発明は、明確でない。」

4 請求人の対応
(1)補正による特許請求の範囲の変遷
審査時拒絶理由の通知に対し、請求人(出願人)は、平成25年10月2日に提出された手続補正書により、特許請求の範囲において「時間相関化移動パターン」なる記載を含まないように補正した。
さらに、当審拒絶理由の通知に対し、請求人は、本件補正により、上記「2」に記載したように、特許請求の範囲において「時間相関化移動パターン」なる記載を再び含むようにした。

(2)請求人の主張
審査時拒絶理由に対し、請求人(出願人)は、平成25年10月2日に提出された意見書、審判請求書、平成27年11月20日に提出された意見書のいずれにおいても、「時間相関化移動パターン」なる記載の意味が明確である旨を主張していない。
また、当審拒絶理由に対し、請求人は、平成27年11月20日に提出された意見書において、本件補正後の発明の詳細な説明が、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである旨を主張していない。

5 当審の判断
(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件について
当審拒絶理由で指摘した特許法第36条第4項第1号に規定する要件について、以下検討する。

ア 本願発明
本件補正後の請求項1には、「前記1セットのデータセット内のデータを使用して、前記プロセッサが前記RFIDタグ用の時間相関化移動パターンを計算するステップ」及び「前記時間相関移動パターンを使用して、前記プロセッサが所与の時点における前記RFIDタグの位置を推定するステップであって、推定位置が決定されるステップ」との記載がある。なお、後者の記載において「前記時間相関移動パターン」とあるのは、「前記時間相関化移動パターン」の誤記であると認める。
このことから、本願発明は、推定位置の決定のために「時間相関化移動パターン」を計算し、また、使用することが分かる。

イ 発明の詳細な説明の記載
次に、発明の詳細な説明の記載について検討する。なお、本件補正では、発明の詳細な説明は補正されていない。
本願明細書の発明の詳細な説明には、「時間相関化移動パターン」という言葉自体は記載されているものの(段落0006,0009,0077,0080)、その意味内容は定義されておらず、具体的な説明もない。そのため、推定位置の決定のために「時間相関化移動パターン」をどのように計算し、また、使用するのかは理解することができない。
さらに「時間相関化移動パターン」の意味内容が本願出願時における技術常識であるとも認められない。

ところで、段落0080には、「時間相関化移動パターン」を計算する際に、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」内でデータを使用することを含む旨、及び、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の一例を図8に関して説明した旨の記載がある。
そこで、念のため、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」に関する記載を確認する。「確率的な予測/回帰アルゴリズム」について、明細書及び図面は、以下の記載(a)及び(b)において触れている。

(a)段落0046?0060及び図8には、部分情報を使用して、RFIDタグを空間-時間内で位置決めするシステムについて記載されており、このシステムは「確率的な予測/回帰アルゴリズム」を含んでいる。
(b)段落0081?0091及び図18には「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の動作を示すフローチャートについて記載されている。

記載(a)では、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」について、以下のように記述が見られる(下線は当審が付した。)。
・何れにしても、RFIDキャプチャ装置816は、RFID送受信機802及び808によって送信されたデータを保存し、このデータを確率的な予測/回帰アルゴリズム820に報告する。(段落0051)

・後述するように、確率的な予測/回帰アルゴリズム820は、ストレージ装置822内のデータを使用する。(段落0052)

・確率的な予測/回帰アルゴリズム820は、RFID送受信機から受信された新しい信号の各々を、ストレージ装置822内に保持されたデータに対してマップする、ハードウェア又はソフトウェア形式の何れかで実装されるアルゴリズムである。例えば、確率的な予測/回帰アルゴリズム820は、受信した過去の信号814に関する情報を、受信した現在の信号804に関する情報と比較するであろう。確率的な予測/回帰アルゴリズム820は、数学的な回帰技法を使用して、RFID送受信機802?810から受信されたデータの履歴に基づき、RFIDタグ800が、現在、過去及び未来において、空間内の特定の点に存在する確率を決定する。これらのRFID送受信機から追加のデータが受信されると、確率的な予測/回帰アルゴリズム820は、RFIDタグ800が、特定時間において空間内の所与の点に、存在する、存在した又は存在するであろう確率をさらに洗練化する。(段落0053)

・さらに、ユーザは、データ処理システム828を使用して、確率的な予測/回帰アルゴリズム820又はビデオ・キャプチャ・システム830の振る舞いを制御することができる。(段落0054)

・実施形態では、確率的な予測/回帰アルゴリズム820は、特定のカメラに対応する特定のイメージ、特定のタイム・スタンプ、1つ以上のカメラによってモニタされる特定の位置、又はそれらの組み合わせを提供するために、ビデオ・キャプチャ・システム830からのデータを要求する。ビデオ・キャプチャ・システム830は、この要求に応答して、要求された検索基準と一致する全てのイメージを求めて、ストレージ装置838を検索する。これらのイメージは、確率的な予測/回帰アルゴリズム820に送信される。(段落0058)

・確率的な予測/回帰アルゴリズム820は、追加のデータとしてビデオ・キャプチャ・システム830からのイメージを取り、当該データをRFIDキャプチャ装置816によって収集された履歴データと比較するとともに、前記追加のデータを使用して、過去、現在又は未来の何れであろうとも、RFIDタグ800が空間-時間内の所与の点に存在する確率をさらに洗練化することができる。例えば、確率的な予測/回帰アルゴリズム820は、RFIDタグ番号、RFID送受信機808からの距離、過去の信号814の時間、RFIDタグ番号、RFID送受信機802からの距離、現在の信号804、及び1つ以上の時間におけるRFIDタグ800に関連するオブジェクトの1つ以上のビデオ・イメージを受信し、このデータの全てを比較し、特定時間においてRFIDタグ800が存在する空間内の点の確率を決定する。同じ情報を使用して、RFIDタグ800が過去に存在していた点を推定することができる。また、同じ情報を使用して、RFIDタグ800が未来に存在するであろう点を推定することができる。確率的な予測/回帰アルゴリズム818の動作は、図18に示されている。(段落0060)

しかし、これらは、いずれも「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の役割や機能について抽象的に述べるにとどまり、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の意味内容を明らかにするものではない。例えば、段落0053の記載によると、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」は、受信した過去の信号814に関する情報を、受信した現在の信号804に関する情報と比較し、数学的な回帰技法を使用して、RFIDタグ800が、現在、過去及び未来において、空間内の特定の点に存在する確率を決定するものであるが、その確率の決定の内容についてはおよそ具体性がない。

次に、記載(b)では、段落0081に「図18は、実施形態に従った、確率的な予測/回帰アルゴリズムの動作を示すフローチャートである。」及び「図18のプロセスは、図8に示す確率的な予測/回帰アルゴリズム818の典型的な実装である。」とある以外には、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」についての直截的な記述がない。一方、図9?14を参照しつつ「確率」については触れているものの、その図9?14のグラフがどのようにして得られるのかは、記載(b)のほか、関係する段落0061?0067の記載を参照しても合理的な説明がなく(この点、上記当審拒絶理由を参照。)、理解することができない。

以上のように、記載(a)及び(b)には、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の意味内容を定義する記載はなく、それを具体的に説明する記載もない。
さらに、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の意味が本願出願時における技術常識であるとも認められない。
このように、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の意味内容を理解することはできない。よって、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の意味内容を介して、推定位置の決定のために「時間相関化移動パターン」をどのように計算し、また、使用するのかを理解することはできない。

ウ 小括
以上のように、発明の詳細な説明は本件補正において補正されておらず、技術常識を考慮したとしても、その記載からは、やはり、推定位置の決定のために必要な「時間相関化移動パターン」をどのように計算し、また、使用するのかを理解することができない。
してみると、発明の詳細な説明は、依然として、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)特許法第36条第6項第2号に規定する要件について
当審拒絶理由の通知に対し、請求項1に、「時間相関化移動パターン」に関する構成が含まれることとなったが、この「時間相関化移動パターン」については、明確でないとして、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由を審査時に通知している(上記「3」「(2)」の「審査時拒絶理由」参照。)。
そこで、特許法第36条第6項第2号に規定する要件について、以下検討する。

ア 請求項の記載について
上記「(1)」「ア」で検討したように、本件補正後の請求項1には、「時間相関化移動パターン」という記載がある。
ここで、「時間相関化移動パターン」なる語は一般的な技術用語とは認められず、その意味内容はおのずから明らかであるとはいえない。
よって、本件補正後の請求項1における「時間相関化移動パターン」なる記載は、それ自体で不明確である。

イ 明細書及び図面の記載の参酌
次に、明細書又は図面の記載を出願時の技術常識をもって考慮することによって「時間相関化移動パターン」の意味内容が明確といえるか否かについて検討する。
上記「(1)」「イ」で指摘したように、本願明細書の発明の詳細な説明には、「時間相関化移動パターン」の意味内容は定義されておらず、具体的な説明もない。さらに「時間相関化移動パターン」の意味内容が本願出願時における技術常識であるとも認められない。また、「確率的な予測/回帰アルゴリズム」の意味内容を介して「時間相関化移動パターン」を解釈することもできない。
してみると、「時間相関化移動パターン」の意味内容は、明細書又は図面の記載を出願時の技術常識をもって考慮したとしても、明確とはいえない。

ウ 小括
このように、本件補正後の請求項1における「時間相関化移動パターン」なる記載は、それ自体で不明確であるのみならず、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮したとしても、その意味内容を理解することができない。
しかも、上記「4」「(2)」で指摘したように、請求人(出願人)は、平成25年10月2日に提出された意見書、審判請求書のほか、平成27年11月20日に提出された意見書においてさえも、「時間相関化移動パターン」なる記載の意味が明確である旨を主張していない。
してみると、特許を受けようとする本願発明は不明確というほかない。
したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

6 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-29 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-14 
出願番号 特願2008-286058(P2008-286058)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G01S)
P 1 8・ 536- WZ (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 関根 洋之
堀 圭史
発明の名称 RFIDタグの空間-時間内の推定位置を決定するための方法、コンピュータ・プログラム及びデータ処理システム  
代理人 太佐 種一  
代理人 上野 剛史  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ