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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F27B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F27B
管理番号 1317563
審判番号 不服2014-24299  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-28 
確定日 2016-07-27 
事件の表示 特願2013-517422「浮遊溶解炉および精鉱バーナ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月 5日国際公開、WO2012/001238、平成25年10月31日国内公表、特表2013-540251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2011年6月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2010年6月29日 フィンランド国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月28日に手続補正書が提出され、平成26年3月17日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月1日に意見書が提出され、同年7月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正書が提出されたものである。

2.平成26年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成26年11月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

(1)理由1
(1-1)補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のとおりに補正する補正を含むものである。
(補正前)
「【請求項1】
反応シャフト、アップテイクシャフトおよび下部炉に加えて、反応ガスおよび微粒固形物を前記反応シャフトに供給する精鉱バーナを含み、該精鉱バーナは、
自身の壁部によって半径方向が制限された微粒固形物放出路と、
該微粉固形物放出路にある微粉固形物散布装置と、
前記微粒固形物放出路を囲繞し、自身の壁部によって半径方向が制限された環状反応ガス路と、
該環状反応ガス路を囲繞する冷却ブロックとを含む浮遊溶解炉において、
前記冷却ブロックは連続鋳造法を用いて製造された部材であり、
該冷却ブロックは、前記反応シャフトのアーチ部および前記環状反応ガス路の前記壁部に取り付けられて、前記冷却ブロックおよび前記環状反応ガス路の壁部で接続形成された構造体と前記微粒固形物放出路の壁部との間に前記環状反応ガス路の放出口が形成されていることを特徴とする浮遊溶解炉。」

(補正後)
「【請求項1】
反応シャフト、アップテイクシャフトおよび下部炉に加えて、反応ガスおよび微粒固形物を前記反応シャフトに供給する精鉱バーナを含み、該精鉱バーナは、
自身の壁部によって半径方向が制限された微粒固形物放出路と、
該微粉固形物放出路にある微粉固形物散布装置と、
前記微粒固形物放出路を囲繞し、自身の壁部によって半径方向が制限された環状反応ガス路と、
該環状反応ガス路を囲繞する冷却ブロックとを含む浮遊溶解炉において、
前記冷却ブロックは連続鋳造法を用いて製造された部材であり、
該冷却ブロックは、前記反応シャフトのアーチ部および前記環状反応ガス路の前記壁部に取り付けられて、前記冷却ブロックおよび前記環状反応ガス路の壁部で接続形成された構造体と前記微粒固形物放出路の壁部との間で前記環状反応ガス路の放出口が形成されており、
該環状反応ガス路の放出口は、半径の外側方向が前記構造体によって制限され、半径の内側方向が前記微粒固物放出路の壁部によって制限されていることを特徴とする浮遊溶解炉。」(審決注:下線部が補正箇所である。なお、「前記微粒固物放出路」とあるのは、「前記微粒固形物放出路」の誤記と認める。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載された「環状反応ガス路の放出口」について、上記下線部のとおりに限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

(1-2)引用刊行物の記載事項および引用発明
新たに引用するものであって、本願の優先日前に頒布された特開2003-160821号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】精鉱バーナーは中心の精鉱ノズルとその外側に中心を同じく配置した送風空気管で構成されており、バーナーの形式によっては送風空気管は二重管で構成されている。・・・」
(なお、下線は、当審において付した。以下、同様。)

(イ)「【0008】
【発明の実施の形態】・・・図2は、銅製錬炉の一例であるオートクンプ式自溶炉の側面図であり、図1は、前記のような自溶炉の精鉱バーナーが設置されている反応塔天井部の内面に配置されている送風空気の流路となる、送風空気管の内壁と送風空気管の内側に中心を同じく配置されている精鉱ノズルの外壁との円周方向での間隙の測定方法の一実施例を示す断面図及び平面図である。自溶炉は頂部中心に精鉱バーナ(5)を設置した反応塔(1)と、セットラ(2)、およびアップテイク(3)の3つの部位で構成される。いずれの炉においても、精鉱バーナーは反応塔天井部に設置され、その精鉱バーナーの先端は反応塔天井部内面に下向きに配置されている。・・・」

(ウ)「






【図1】によれば、精鉱バーナ5は、精鉱ノズル6の外壁によって半径方向が制限された、精鉱を放出するための通路(以下、「精鉱放出路」という。)を有し、精鉱放出路内には、上下方向に伸び、下端部が拡がった形状の部材がある。
なお、該部材が、精鉱を散布する装置であることは技術的に明らかである(例えば、後記する、特表2001-501294号公報の図2における精鉱分配器19および成形体21参照)。
そして、精鉱バーナー外筒水冷ジャケット11は、水冷ジャケットおよび精鉱バーナー外筒が接続形成されて一体となったもの(以下、「構造体」という。)と認められ、精鉱バーナー外筒水冷ジャケット11及び内筒9は、二重管をなす送風空気管を構成し(上記記載事項(ア))、該送風空気管は、送風空気を反応塔1に供給するものであり、精鉱バーナー外筒水冷ジャケット11と精鉱ノズル6の外壁とによって、環状をなす送風空気を送るための通路(以下、「環状送風空気路」という。)が形成されている。該環状送風空気路は、精鉱放出路を囲繞し、精鉱バーナー外筒によって半径方向が制限されている。また、水冷ジャケットは、反応塔の天井部および精鉱バーナー外筒に取り付けられている。
なお、前記環状送風空気路は二重管構造ではあるが、二重管構造という構造上の特徴を差し引いてみると、環状送風空気路を形成していることに他ならず、環状送風空気路の放出口といえる部位は、精鉱バーナー外筒と精鉱ノズル6の外壁との間で形成されており、半径の外側方向が構造体によって制限され、半径の内側方向が精鉱ノズル6の外壁によって制限されているといえる。

そうすると、上記検討事項ならびに上記記載事項(ア)?(ウ)によれば、引用刊行物1には、
「反応塔、アップテイクおよびセットラに加えて、送風空気および精鉱を前記反応塔に供給する精鉱バーナーを含み、該精鉱バーナーは、
精鉱ノズルの外壁によって半径方向が制限された精鉱放出路と、
該精鉱放出路にある精鉱散布装置と、
前記精鉱放出路を囲繞し、精鉱バーナー外筒によって半径方向が制限された環状送風空気路と、
該環状送風空気路を囲繞する水冷ジャケットとを含む自溶炉において、
該水冷ジャケットは、前記反応塔の天井部および前記精鉱バーナー外筒に取り付けられて、前記水冷ジャケットおよび前記精鉱バーナー外筒が接続形成されて一体となった構造体と前記精鉱ノズルの外壁との間で前記環状送風空気路の放出口が形成されており、
該環状送風空気路の放出口は、半径の外側方向が前記構造体によって制限され、半径の内側方向が前記精鉱ノズルの外壁によって制限されている自溶炉。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

(1-3)本願補正発明と引用発明1との対比
引用発明1における「反応塔」、「アップテイク」、「セットラ」は、それぞれ、本願補正発明における「反応シャフト」、「アップテイクシャフト」、「下部炉」に相当する。
また、引用発明1における「送風空気」、「精鉱」は、それぞれ、本願補正発明における「反応ガス」、「微粒固形物」に相当し、同様に、「精鉱バーナー」、「精鉱ノズルの外壁によって半径方向が制限された精鉱放出路」、「精鉱散布装置」、「精鉱バーナー外筒によって半径方向が制限された環状送風空気路」、「水冷ジャケット」、「該水冷ジャケットは、前記反応塔の天井部および前記精鉱バーナー外筒に取り付けられて」、「前記水冷ジャケットおよび前記精鉱バーナー外筒が接続形成されて一体となった構造体と前記精鉱ノズルの外壁との間で前記環状送風空気路の放出口が形成」、「半径の内側方向が前記精鉱ノズルの外壁によって制限」は、それぞれ、「精鉱バーナ」、「自身の壁部によって半径方向が制限された微粒固形物放出路」、「微粉固形物散布装置」、「自身の壁部によって半径方向が制限された環状反応ガス路」、「冷却ブロック」、「該冷却ブロックは、前記反応シャフトのアーチ部および前記環状反応ガス路の前記壁部に取り付けられて」、「前記冷却ブロックおよび前記環状反応ガス路の壁部で接続形成された構造体と前記微粒固形物放出路の壁部との間で前記環状反応ガス路の放出口が形成」、「半径の内側方向が前記微粒固形物放出路の壁部によって制限」に相当する。
そして、「自溶炉」とは、精鉱を反応塔内に散布させて溶解するものであるところ、本願補正発明の「浮遊溶解炉」とは、反応ガスと微粒固形物(精鉱)を反応シャフト(反応塔)に投入し、浮遊状態を作って溶解させるものであるから(【0001】-【0003】)、引用発明1における「自溶炉」は、本願補正発明の「浮遊溶解炉」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「反応シャフト、アップテイクシャフトおよび下部炉に加えて、反応ガスおよび微粒固形物を前記反応シャフトに供給する精鉱バーナを含み、該精鉱バーナは、
自身の壁部によって半径方向が制限された微粒固形物放出路と、
該微粉固形物放出路にある微粉固形物散布装置と、
前記微粒固形物放出路を囲繞し、自身の壁部によって半径方向が制限された環状反応ガス路と、
該環状反応ガス路を囲繞する冷却ブロックとを含む浮遊溶解炉において、
該冷却ブロックは、前記反応シャフトのアーチ部および前記環状反応ガス路の前記壁部に取り付けられて、前記冷却ブロックおよび前記環状反応ガス路の壁部で接続形成された構造体と前記微粒固形物放出路の壁部との間に前記環状反応ガス路の放出口が形成されており、
該環状反応ガス路の放出口は、半径の外側方向が前記構造体によって制限され、半径の内側方向が前記微粒固物放出路の壁部によって制限されている浮遊溶解炉。」

<相違点>
本願補正発明の冷却ブロックが、「連続鋳造法を用いて製造された部材」であるのに対して、引用発明1の水冷ジャケットは、どのように製造された部材であるのか不明である点。

(1-4)相違点についての判断
一般に、種々の炉において冷却要素となるものを、連続鋳造法により製造することは周知の技術である。例えば、特表2002-533649号公報(【0002】、【0006】)には、反応炉用の冷却要素に関するが、連続鋳造により製造されたものは、その稠密な鋳造構造、良好な表面特性により熱伝達が良くなることが記載されている。また、特表2002-532673号公報(【0011】)には、製鉄炉あるいは製鋼炉用の冷却板に関するもの、さらに、特表2010-505082号公報(【0015】)には、自溶炉などの冷却エレメントに関するものについて記載されている。
そうであれば、引用発明1に係る浮遊溶解炉の水冷ジャケットを、熱伝達効率等の観点から、上記周知の技術に倣って、連続鋳造法によって製造するようにすることは格別困難とはいえない。

そして、本願補正発明によって奏される効果も、引用発明1及び周知の技術から予測し得る範囲のものであって格別のものとはいえない。
そうすると、本願補正発明は、引用発明1及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)理由2
(2-1)補正の適否
「2.(1)(1-1)補正の適否」に同じ

(2-2)引用刊行物の記載事項および引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本出願の優先日前に頒布された特表2001-501294号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「第1図は浮遊溶鉱炉1を示し、炉内には粉状固体(精鉱)および燃料が本発明に係る多重調整可能バーナーである精鉱バーナー2を通じて供給される。精鉱はタンク3からコンベア4を用いて精鉱放出チャネル5の頂部に移され、かくして原料は連続的な流れとなって前記チャネル5を経由し浮遊溶鉱炉1の反応路6の頂部7へと落下する。反応ガス8は前記チャネル5の周囲から実質的には平行方向になって反応路の頂部7へと導入される。
第2図において、反応ガス(酸素もしくは空気などの高酸素ガス)はバーナーに導入されて主として反応路の中心軸9の方向へ流れるよう転向される。反応路内へのガス8の放出方向は精鉱チャネル5を取り囲む調整要素10、およびアーチ11上に位置する冷却ブロック12の設定によって調整される。放出速度は、調整要素10および冷却ブロック12の間に位置する反応ガスチャネル13の底部断面積を変えることにより、調整される。ガスの最終方向および速度はアーチの底辺において環状放出口14内で決定される。」(第14頁第1-13行)

(イ)「



















【図1】における浮遊溶鉱炉は、本願補正発明の用語に則して、反応シャフト、アップテイクおよび下部炉とを含むものといえる(上記「理由(1)(1-2)(イ)」参照)。また、この浮遊溶鉱炉は、同様に浮遊溶解炉と言い換えることができる。精鉱バーナーは、精鉱バーナといえる。

(ウ)【図2】によれば、精鉱チャネルは、その壁部によって、精鉱を放出するための通路(以下「精鉱放出路」という。)を形成し、精鉱放出路は、自身の壁部によって半径方向が制限されたものとなる。精鉱放出路内には、精鉱を散布する散布ノズル(以下「精鉱散布装置」という。)が存在する。

(エ)【図2】によれば、反応ガスチャネルは、反応ガスを反応シャフトに供給するものであり、その外側壁部と冷却ブロックとが接続形成されて一体となったもの(以下「構造体」という。)と認められ、その壁部と精鉱チャネルの壁部とによって、反応ガスを送るための環状の通路(以下「環状反応ガス路」という。)を形成している。そして、環状反応ガス路は、精鉱放出路を囲繞し、自身の壁部によって半径方向が制限されている。また、冷却ブロックは、反応シャフトのアーチないしはアーチ部および環状反応ガス路の壁部に取り付けられており、環状送風空気路を囲繞している。さらに、環状反応ガス路内の精鉱放出路の壁部に接して調整要素が存在している。

(オ)【図2】によれば、環状反応ガス路の放出口といえる部位については、構造体と精鉱放出路の外壁ないしは壁部との間で形成されており、半径の外側方向が構造体によって制限されているが、半径の内側方向が精鉱放出路の外壁ないしは壁部によって制限されているとはいえない。

そうすると、引用刊行物2には、
「反応シャフト、アップテイクおよび下部炉に加えて、反応ガスおよび精鉱を前記反応シャフトに供給する精鉱バーナを含み、該精鉱バーナは、
自身の壁部によって半径方向が制限された精鉱放出路と、
該精鉱放出路にある精鉱散布装置と、
前記精鉱放出路を囲繞し、自身の壁部によって半径方向が制限された環状反応ガス路と、
該環状反応ガス路を囲繞する冷却ブロックと、
該環状反応ガス路内の前記精鉱放出路の壁部に接する調整要素を含む浮遊溶解炉において、
該冷却ブロックは、前記反応シャフトのアーチ部および前記環状反応ガス路の前記壁部に取り付けられて、前記冷却ブロックおよび前記環状反応ガス路の壁部で接続形成された構造体と前記精鉱放出路の壁部との間で前記環状反応ガス路の放出口が形成されている浮遊溶解炉。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

(2-3)本願補正発明と引用発明2との対比
両発明を対比すると、以下のことが明らかである。
引用発明における「精鉱」は、本願補正発明における「微粒固形物」に相当するので、引用発明における「精鉱放出路」、「精鉱散布装置」は、それぞれ、本願補正発明における「微粒(粉)固形物放出路」、「微粉固形物散布装置」に相当する。

すると、両発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「反応シャフト、アップテイクシャフトおよび下部炉に加えて、反応ガスおよび微粒固形物を前記反応シャフトに供給する精鉱バーナを含み、該精鉱バーナは、
自身の壁部によって半径方向が制限された微粒固形物放出路と、
該微粉固形物放出路にある微粉固形物散布装置と、
前記微粒固形物放出路を囲繞し、自身の壁部によって半径方向が制限された環状反応ガス路と、
該環状反応ガス路を囲繞する冷却ブロックとを含む浮遊溶解炉において、
該冷却ブロックは、前記反応シャフトのアーチ部および前記環状反応ガス路の前記壁部に取り付けられて、前記冷却ブロックおよび前記環状反応ガス路の壁部で接続形成された構造体と前記微粒固形物放出路の壁部との間に前記環状反応ガス路の放出口が形成されている浮遊溶解炉。」

<相違点>
(ア)本願補正発明の冷却ブロックが、「連続鋳造法を用いて製造された部材」であるのに対して、引用発明2の冷却ブロックは、どのように製造された部材であるのか不明である点。
(イ)本願補正発明が「該環状反応ガス路の放出口は、半径の外側方向が前記構造体によって制限され、半径の内側方向が前記精鉱放出路の壁部によって制限されている」のに対して、引用発明2は、環状反応ガス路内の精鉱放出路の壁部に接して調整要素が存在することから、環状反応ガス路の放出口について、半径の外側方向は構造体によって制限されているが、半径の内側方向は、精鉱放出路の壁部によって制限されているとはいえない点。

(2-4)相違点についての判断
・相違点(ア)について
一般に、種々の炉において冷却要素となるものを、連続鋳造法により製造することは、上記「(1)理由1(1-4)」に記載のとおり、周知の技術である。
そうであれば、引用発明2に係る浮遊溶解炉の冷却ブロックを、熱伝達効率等の観点から、上記周知の技術に倣って、連続鋳造法によって製造するようにすることは格別困難とはいえない。

・ 相違点(イ)について
引用発明2においては、環状反応ガス路内の精鉱放出路の壁部に接して調整要素が存在する。これは、反応ガスの流れを調整するものであるが、反応ガスの流れ調整をするにしても、調整要素は、このようなものに限られず、各種手段による調整が可能である。実際、先に挙げた引用刊行物1には、流れを調整する手段が存在しない。さらに、特開2003-160822号公報等を参照すれば、その【図2】のものには調整手段としての風速調整器9が存在するが、【図3】のものにはそのような調整手段が存在しない。
そうであれば、引用発明2において、このような調整要素を排し、或いはその上で別途調整手段を配するなどとすることは困難といえない。

そして、本願補正発明によって奏される効果も、引用発明2及び周知の技術から予測し得る範囲のものであって格別のものとはいえない。
そうすると、本願補正発明は、引用発明2及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成24年12月28日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1は以下のとおりである。

「【請求項1】
反応シャフト、アップテイクシャフトおよび下部炉に加えて、反応ガスおよび微粒固形物を前記反応シャフトに供給する精鉱バーナを含み、該精鉱バーナは、
自身の壁部によって半径方向が制限された微粒固形物放出路と、
該微粉固形物放出路にある微粉固形物散布装置と、
前記微粒固形物放出路を囲繞し、自身の壁部によって半径方向が制限された環状反応ガス路と、
該環状反応ガス路を囲繞する冷却ブロックとを含む浮遊溶解炉において、
前記冷却ブロックは連続鋳造法を用いて製造された部材であり、
該冷却ブロックは、前記反応シャフトのアーチ部および前記環状反応ガス路の前記壁部に取り付けられて、前記冷却ブロックおよび前記環状反応ガス路の壁部で接続形成された構造体と前記微粒固形物放出路の壁部との間に前記環状反応ガス路の放出口が形成されていることを特徴とする浮遊溶解炉。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物2及びその記載事項は、前記「2.(2)(2-2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「2.(1)(1-1)」で検討した本願補正発明から、「該環状反応ガス路の放出口は、半径の外側方向が前記構造体によって制限され、半径の内側方向が前記微粒固物放出路の壁部によって制限されて」との限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明に係る発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(2)(2-4)」に記載したとおり、引用発明2及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-24 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-14 
出願番号 特願2013-517422(P2013-517422)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F27B)
P 1 8・ 121- Z (F27B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 真一  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 河野 一夫
鈴木 正紀
発明の名称 浮遊溶解炉および精鉱バーナ  
代理人 香取 孝雄  

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