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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1317569
審判番号 不服2015-947  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-16 
確定日 2016-07-27 
事件の表示 特願2010-533099「早産の合併症の治療」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月14日国際公開、WO2009/061447、平成23年 1月27日国内公表、特表2011-503064〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2008年11月 7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年11月 7日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年11月 7日付けで手続補正書が提出され、平成25年 7月23日付け拒絶理由通知に対して平成26年 1月29日付けで意見書及び手続補正書が提出された後、平成26年 9月 8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年 1月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

2 平成27年 1月16日提出の手続補正書による補正の適否
本件補正は、拒絶査定不服審判の請求と同時になされたものであるところ、特許法第17条の2第5項において、同条第1項第4号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正は、同条第5項第1号乃至第4号に掲げる事項(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明)を目的とするものに限るとされているところ、本件補正はその補正前の請求項2?13を削除するものであるから、同条第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し、適法にされたものである。

3 本件発明
本件発明は、平成27年 1月16日提出の手続補正書による補正後の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
臍帯血および胎盤幹細胞を含む、未熟児の障害または状態を治療するための医薬組成物であって、前記障害または状態が早産によって引き起こされるまたは早産に伴うものであり、前記胎盤幹細胞はCD34^(-)またはCD200^(+)である細胞を含み、かつ、前記障害または状態が呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態である、医薬組成物。」

4 原査定の拒絶の理由
本件発明に対する原査定の拒絶の理由は、
(1)発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
というものである。

5 発明の詳細な説明の記載事項
発明の詳細な説明には、以下の(ア)?(シ)の記載がある。
(ア)
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
未熟児に伴う障害および状態を治療するための種々の治療の選択肢が利用可能であるが、成功の程度は様々である。例えば、貧血を有する未熟児を、輸血および/または鉄の補充を用いて治療することができ、界面活性剤の投与が、早産に伴う呼吸促迫症候群を治療するために使用される。しかし、不完全な臓器の発達に対する治療の選択肢は存在しない。進歩にもかかわらず、未熟児に伴う障害および状態のための治療の開発が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う、未熟児の障害および状態を治療する方法を提供する。」(段落0009?段落0011)

(イ)
「【0015】
本発明に従って治療すべき障害または状態は、早産によって引き起こされるまたは早産に伴うことが当技術分野で知られている任意の障害または状態であってよい。特定の実施形態では、障害または状態は、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)である。特定の実施形態では、障害または状態は、貧血である。特定の実施形態では、障害または状態は、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧または高ビリルビン血症である。特定の実施形態では、障害または状態は、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓等の臓器の不完全な発達によって引き起こされる。」(段落0015)

(ウ)
「【0016】
本発明において使用する臍帯血は、当技術分野で知られている任意の技法によって収集することができる。特定の実施形態では、臍帯血を、臍帯血バンクから得る。特定の実施形態では、臍帯血を、分娩後の哺乳動物の胎盤から収集する。一部の実施形態では、臍帯血を、正期産分娩後の哺乳動物の胎盤から得る。その他の実施形態では、臍帯血を、早産分娩後の哺乳動物の胎盤から得る。臍帯血は、単独で投与する場合には、治療すべき未熟児にとって同種異系であってもよく、あるいは胎盤幹細胞または血液添加剤と共に投与する場合には、同種異系もしくは自己由来、または両方の組合せであってもよい。
【0017】
本発明において使用する胎盤幹細胞は、当技術分野で知られている任意の方法によって単離し、処理することができる。特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、正期産の胎盤から得る。特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、早産の胎盤から得る。本発明の方法において有用な胎盤幹細胞は、治療すべき未熟児にとって同種異系もしくは自己由来、または両方の組合せであってよい。
【0018】
特定の実施形態では、胎盤幹細胞を、放血させ、灌流して、残余の血液細胞を除去した状態にした胎盤から得る。次いで、放血させた胎盤を、胎盤に由来する内因性幹細胞の産生を可能にする適切な条件下で約2?約24時間以上培養することができる。
【0019】
胎盤幹細胞を、培養した胎盤から得たら、これに限定されないが、特定の細胞表面マーカーを同定するための免疫化学を含めた、いくつかの方法によって特徴付けることができる。本発明に従って使用すべき好ましい幹細胞を、以下の細胞表面マーカーの存在によって同定することができる:CD34^(-),OCT-4^(+)、CD73^(+)、CD105^(+)、CD200^(+)および/またはHLA-G^(+)。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD34^(+)細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD34^(-)細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、OCT-4^(+)細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD73^(+)、CD105^(+)およびCD200^(+)である細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD200^(+)またはOCT-4^(+)である細胞を含む。特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD200^(+)およびOCT-4^(+)である細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞には、CD73^(+)およびCD105^(+)である細胞であって、前記細胞を含む胎盤細胞集団を、胚様体様の物体(embryoid-like body)の形成を可能にする条件下で培養する場合、前記集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する細胞が含まれる。特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD73^(+)、CD105^(+)およびCD200^(+)である細胞を含む。特定の実施形態では、胎盤幹細胞には、OCT-4^(+)である細胞であって、当該幹細胞を含む胎盤細胞集団を、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、前記集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する細胞が含まれる。」(段落0016?段落0019)

(エ)
「【0022】
1 未熟児の治療
本発明は、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う、未熟児の障害および状態を治療する方法を提供する。この方法は、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを未熟児に投与するステップを含む。臍帯血を単独でまたは血液添加剤と共に投与する実施形態では、臍帯血は、治療すべき未熟児にとって同種異系である。臍帯血を胎盤幹細胞および/または血液添加剤と共に投与する実施形態では、臍帯血は、レシピエントの未熟児にとって自己由来または同種異系であってよい。」(段落0022)

(オ)
「【0024】
本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」および「治療(treatment)」という用語は、この場合、早産によって引き起こされるまたは早産に関係する障害または状態を癒す、修正する、あるいはそのような障害もしくは状態またはそのような障害もしくは状態の任意のパラメータもしくは症状の進行、重症度および/または持続期間を低下または寛解させることを指す。
【0025】
未熟児の、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを用いる治療は、未熟児が生存する場合、または早産によって引き起こされるもしくは早産に伴う障害もしくは状態が、治療の結果として何らかの形で測定可能に改善される場合に、効能を示すとみなすことができる。そのような改善は、例えば、1つまたは複数の測定可能な指標によって示すことができ、それらとして、例えば、特定の疾患、障害または状態に伴う(これらに限定されないが、血圧、心拍数、呼吸数、種々の血液細胞型の数、特定のタンパク質、炭水化物、脂質もしくはサイトカインの血中レベル、または疾患、障害もしくは状態に伴う遺伝子マーカーの発現の調節を含めた)生理的な状態または一連の生理的な状態の検出可能な変化が挙げられる。
【0026】
そのような指標のうちの任意の1つが、例えば、正期産児についての正常値の範囲内の値、またはそのような(1つもしくは複数の)指標が、臍帯血および/もしくは胎盤幹細胞の投与がない場合に示すと予想されるよりも正常値に近い値に変化することによって、そのような治療に対して応答しているように見える場合に、未熟児の、臍帯血と場合により胎盤幹細胞とを用いる治療は有効とみなされる。正常値は、指標について当技術分野で知られている正常値または正常値範囲であってよい。例えば、未熟児が示す、1つまたは複数の代謝に関するまたは生化学的な指標を、(1つまたは複数の)指標の正常範囲と比較することができ、治療の結果、1つまたは複数の代謝に関するまたは生化学的な指標が、正常な正期産児についての参照範囲により密接に近づく、またはその範囲内に入る場合に、治療は有効とみなされる。そのような指標として、これらに限定されないが、17ヒドロキシプロゲステロン、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)、アセト酢酸、酸性度(pH)、アルブミン、アンモニア、アミラーゼ、アスコルビン酸、炭酸水素、ビリルビン、血液量、カルシウム、炭素、二酸化炭素分圧、一酸化炭素、CD4細胞数、セルロプラスミン、塩素イオン、銅、クレアチンキナーゼ(CKまたはCPK)、クレアチニンキナーゼのアイソザイム、クレアチニン、赤血球沈降速度(ESRまたはSed-Rate)、グロブリン、グルコース、ヘマトクリット、ヘモグロビン、鉄、鉄結合能、乳酸塩(乳酸)(動脈)、乳酸デヒドロゲナーゼ、リパーゼ、マグネシウム、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、平均赤血球容積(MCV)、浸透圧、酸素分圧、酸素飽和度(動脈)、ホスファターゼ、リン、血小板数、カリウム、タンパク質(総)、プロトロンビン(PTT)、ピルビン酸、赤血球数(RBC)、ナトリウム、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、トランスアミナーゼ(アラニンまたはアスパラギン酸)、尿素窒素(BUN)およびBUN/クレアチニンの比、尿酸、ビタミンA、WBC(白血球数(leukocyte count)および白血球数(white blood cell count))、亜鉛等のレベルまたは値が挙げられる。
【0027】
臍帯血の投与または臍帯血と胎盤幹細胞との投与の有効性を、行動試験によって判定することができる。例えば、出生後の最初の2?3年以内に、例えば、Neonatal Neurobehavioral Examination、Alberta Infant Motor ScaleまたはBayley Scale of infant Development(第3版)等の1つまたは複数の試験によって、そのような試験についての未熟児によるスコアを、正常児および異なる在胎期間の未熟児についてのスコアまたはスコアの範囲と比較し、スコアが未熟児の在胎期間において予想されるスコアよりも高い場合には改善が生じていると決定することにより、未熟児の神経の発達の改善を判定することができる。特定の実施形態では、臍帯血、または臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを投与された未熟児は、そのスコアが、従来の治療のみを用いて治療した同じ在胎期間の未熟児のスコアまたはスコアの平均よりも高い場合に、改善を示しているとみなされる。
【0028】
1つの実施形態では、早産児(preterm infant)を、出生後間もなく(例えば、第1週以内に)、Neonatal Neurobehavioral Examination(NNE)によって判定し、最大スコアは81として、行動形質、原始反射、ならびに身体の調子および運動のパターンの発達を示すスコアを得る。乳児を、出生後2年以内に、好ましくは、約18?約22月において1または複数回再判定する。この期間におけるNNEスコアの顕著な改善が、効能の証となる。種々の実施形態では、臍帯血、または臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを用いずに治療した未熟児と比較して、スコアが、例えば、未熟児が37?42週の在胎期間で出生した場合には37?42週の在胎期間の早産児の平均スコア(66.5)から改善した場合、未熟児が34?36週の在胎期間で出生した場合には34?36週の早産児の平均スコア(60.7)から改善した場合、または未熟児が34週以下の在胎期間で出生した場合には34週以下の在胎期間で出生した乳児の平均スコア(51.1)から改善した場合に、臍帯血と場合により胎盤幹細胞との投与は有効である。Morgan、「Neonatal Neurobehavioral Examination.A New Instrument For Quantitative Analysis of Neonatal Neurological Status」、Phys.Titer.68(9):1352-1358(1988)を参照されたい。」(段落0024?段落0028)

(カ)
「【0029】
1.1 早産によって引き起こされるまたは早産に伴う障害または状態
本発明を用いて治療すべき障害または状態は、当技術分野で知られている、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う任意の障害または状態であってよい。特定の実施形態では、障害または状態は、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)である。特定の実施形態では、障害または状態は、貧血である。特定の実施形態では、障害または状態は、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧または高ビリルビン血症である。特定の実施形態では、障害または状態は、これらに限定されないが、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓を含めた、臓器の不完全な発達によって引き起こされる。」(段落0029)

(キ)
「【0074】
本発明の灌流し、単離した胎盤は、CD34^(+)幹細胞、例えば、CD34^(+)CD38^(-)幹細胞、およびCD34^(-)幹細胞、例えば、CD34^(-)CD38^(+)幹細胞が豊富な、大量の幹細胞の供給源となる。胎盤から最初に収集した血液は、臍帯血と呼ばれ、これは、CD34^(+)CD38^(+)造血前駆細胞を圧倒的に含有する。分娩後の灌流の最初の24時間以内に、胎盤から、CD34^(+)CD38^(-)造血前駆細胞を、CD34^(-)CD38^(+)細胞と共に単離することができる。約24時間灌流すると、胎盤から、CD34^(-)CD38^(-)細胞を、前述の細胞と共に単離することができる。24時間以上灌流してから単離した胎盤は、CD34^(-)CD38^(-)幹細胞が豊富な、大量の幹細胞の供給源となる。」(段落0074)

(ク)
「【0078】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、未熟児を治療する方法を提供し、この方法は、未熟児臍帯血および胎盤幹細胞を投与するステップを含む。特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD200^(+)またはHLA-G^(+)である。特定の実施形態ではまた、幹細胞は、CD200^(+)およびHLA-G^(+)でもある。いくつかの特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD73^(+)およびCD105^(+)でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34^(-)、CD38^(-)またはCD45^(-)でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34^(-)、CD38^(-)およびCD45^(-)でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34^(-)、CD38^(-)、CD45^(-)、CD73^(+)およびCD105^(+)でもある。別の特定の実施形態では、前記CD200^(+)またはHLA-G^(+)である幹細胞は、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で、当該幹細胞を含む胎盤由来細胞集団中における胚様体様の物体の形成を促進する。
【0079】
別の特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD73^(+)、CD105^(+)およびCD200^(+)である。より特定の実施形態では、前記幹細胞はまたHLA-G^(+)でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34^(-)、CD38^(-)またはCD45^(-)でもある。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34^(-)、CD38^(-)およびCD45^(-)でもある。より特定の実施形態では、前記幹細胞はまた、CD34^(-)、CD38^(-)、CD45^(-)およびHLA-G^(+)でもある。別のより特定の実施形態は、CD73^(+)、CD105^(+)およびCD200^(+)である幹細胞は、当該幹細胞を含む胎盤由来細胞集団を、胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、当該細胞集団中における1つまたは複数の胚様体様の物体の形成を促進する。
【0080】
別の特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD200^(+)およびOCT-4^(+)である。より特定の実施形態では、幹細胞はまた、CD73^(+)およびCD105^(+)でもある。別のより特定の実施形態では、前記細胞はまた、HLA-G^(+)でもある。別の特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34^(-)、CD38^(-)またはCD45^(-)である。別の特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34^(-)、CD38^(-)およびCD45^(-)である。より特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34^(-)、CD38^(-)、CD45^(-)、CD73^(+)、CD105^(+)およびHLA-G^(+)である。別の特定の実施形態では、こうした胎盤幹細胞は、当該幹細胞を含む胎盤由来細胞集団を胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、当該集団による1つまたは複数の胚様体様の物体の産生を促進する。
【0081】
別の特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、CD73^(+)、CD105^(+)およびHLA-G^(+)である。より特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34^(-)、CD38^(-)またはCD45^(-)である。より特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34^(-)、CD38^(-)およびCD45^(-)である。別のより特定の実施形態では、前記CD73^(+)、CD105^(+)およびHLA-G^(+)である幹細胞は、OCT-4^(+)である。別のより特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD200^(+)である。より特定の実施形態では、前記幹細胞は、CD34^(-)、CD38^(-)、CD45^(-)、OCT-4^(+)およびCD200^(+)である。別のより特定の実施形態では、前記胎盤幹細胞は、前記幹細胞を含む胎盤細胞集団を胚様体様の物体の形成を可能にする条件下で培養する場合、当該集団中における胚様体様の物体の形成を促進する。
【0082】
別の特定の実施形態では、胎盤幹細胞は、SSEA3^(-)、SSEA4^(-)、OCT-4^(+)およびABC-p^(+)のうちの1つまたは複数であってよい。別の実施形態では、胎盤幹細胞は、OCT-4^(+)およびABC-p^(+)である。1つの実施形態では、ヒト胎盤幹細胞は、MHCクラスII抗原を発現しない。その他の実施形態では、胎盤幹細胞は、CD10^(+)、CD38^(-)、CD29^(+)、CD34^(-)、CD44^(+)、CD45^(-)、CD54^(+)、CD90^(+)、SH2^(+)、SH3^(+)、SH4^(+)、SSEA3^(-)、SSEA4^(-)、OCT-4^(+)および/またはABC-p^(+)のうちの1つまたは複数である。」(段落0078?段落0082)

(ケ)
「【0124】
5.1 医薬組成物
本発明はまた、臍帯血および胎盤幹細胞、ならびに薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物も包含する。
【0125】
この実施形態によれば、本発明の臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを、注射用組成物として製剤化することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO96/39101)。別の実施形態では、本発明の臍帯血と胎盤幹細胞との組合せを、例えば、米国特許第5,709,854号;第5,516,532号;第5,654,381号に記載されているように、重合可能なまたは架橋結合性のヒドロゲルを使用して製剤化することができる。
【0126】
別の実施形態では、本発明は、組み合わせる臍帯血および胎盤幹細胞のうちのそれぞれの幹細胞集団を、順次にかまたは合わせて投与して、組み合わせた幹細胞の集団をin vivoにおいて生み出すための別個の医薬組成物として、個人に投与するまで維持することを提供する。それぞれの構成成分を、別個の容器、例えば、単一の袋(例えば、Baxter、Becton-Dickinson、Medcep、National Hospital Products、Terumo等製の血液保存袋)、または別個のシリンジの中に保管し、かつ/またはその中において使用することができ、こうした別個の容器は、単一の型の細胞または細胞集団を含有する。特定の実施形態では、臍帯血、または臍帯血由来の有核細胞もしくは幹細胞を、1つの袋中に含有させ、胎盤灌流液または胎盤灌流液由来の胎盤幹細胞を、第2の袋中に含有させる。」(段落0124?段落0126)

(コ)
「【実施例1】
【0131】
臍帯血および胎盤幹細胞の収集
この実施例は、臍帯血および胎盤幹細胞の収集を例示する。
【0132】
1 臍帯血の収集
臍帯血を、臍帯血収集キット、例として、全内容が参照により組み込まれている米国特許出願公開第2006/0060494号、標題「Cord Blood Collection Kit and Methods of Use Therefor」を使用して収集する。
【0133】
標準的なチャック、無菌のガーゼパッド、ポピドンヨードスワブ、無菌のアルコールパッド、プラスチック製臍帯血用クランプ、スライドクリップまたは止血用クランプ、および漏れ防止型ジッパー付き袋または小型の缶を含有する収集キットを使用する。
【0134】
胎盤の分娩前(子宮内での収集)、胎盤の分娩後(子宮外での収集)、または胎盤の分娩に先立つ帝王切開の間に収集を行うことができる。
【0135】
手短にいうと、臍帯上の遠位における静脈穿刺部位を滅菌する。大型の収集袋から伸びる収集チューブをクランプし、針からキャップを外し、針を先端面取り部を下に向けて、臍帯静脈に向かって用いて、臍帯静脈にカニューレ挿入する。クランプを外して、血液を流れさせ、収集袋をカニューレ挿入部位より下まで下げ、血液が収集袋を重力によって満たすのを可能にする。
【0136】
血液の流れが止まったら、静脈穿刺部位をクランプし、臍帯静脈から針を引き抜く。収集袋にラベルを付け、断熱された発送容器中に入れる。
【0137】
臍帯血がクランプされた状態の胎盤を、漏れ防止型ジッパー付き袋中に置き、次いで、袋を適切に閉じ、ラベルを付ける。
【0138】
収集後、臍帯血細胞の生存率を、トリパンブルー染色後に血球計数器によって決定する。
【0139】
2 胎盤幹細胞の単離
臍帯および胎盤の放血に続いて、胎盤を、室温の、無菌の断熱された容器中に入れ、実験室に出産後4時間以内に届けた。胎盤に、臓器の分裂または臍帯血管の裂離等の物理的な損傷の証拠が視診で認められる場合には、胎盤を廃棄した。胎盤を、無菌の容器中、2?20時間、室温(23±2℃)で維持するかまたは冷蔵した(4℃)。定期的に、胎盤を25±3℃の無菌の食塩水中で浸漬および洗浄し、いずれの眼に見える表面の血液またはデブリも除去した。臍帯を、臍帯の胎盤内への挿入部からおよそ5cm横切し、胎盤の双方向性の灌流および溶出液の回収を可能にする無菌の流路に接続しているTEFLON(登録商標)ポリマー製またはポリプロピレン製のカテーテルを用いて、臍帯血管にカニューレ処理した。本発明において利用するシステムによって、制御された周囲大気条件下で実施すべき馴化、灌流および溶出収集の全ての態様、さらに血管内の圧力および流速、コアおよび灌流液の温度、ならびに回収した溶出体積のリアルタイムのモニタリングが可能であった。様々な馴化プロトコールを、分娩後の24時間の期間にわたり評価し、溶出液の細胞組成を、フローサイトメトリー、光学顕微鏡法およびコロニー形成単位アッセイによって解析した。
【0140】
胎盤の馴化:胎盤を、残余の細胞の増殖および動員のための生理学的に適合性の環境を模し、持続させようとして、様々な条件下で維持した。カニューレを、2単位/mlヘパリン(EJkins-Sinn、NJ)を含有するIMDM無血清培地(GibcoBRL、NY)を用いて洗い流した。胎盤の灌流を、およそ150mLの灌流液を収集するまで、1分当たり50mLの速度で続けた。この体積の灌流液には、「早期の画分」とラベルを付けた。胎盤の灌流を同じ速度で続けて、およそ150mLの第2の画分を収集し、これには「後期の画分」とラベルを付けた。手順を進める間、胎盤を穏やかにマッサージして、灌流プロセスを助け、細胞材料の回収を援助した。溶出液を、灌流回路から、重力による流し出しおよび動脈カニューレを通した吸引の両方によって収集した。
【0141】
書面による親の同意を得てから、胎盤を臍帯血と共に、分娩室から得、分娩後12?24時間以内に室温で処理した。処理する前に、膜を除去し、母体側を洗浄し、残余の血液を除いた。血液試料を収集するために使用する20ゲージの翼状針で作製されたカテーテルを用いて、臍帯血管にカニューレ挿入した。次いで、胎盤を、ヘパリン処置(2単位/mL)ダルベッコ変法イーグル培地(H.DMEM)を用いて、15mL/分の速度で、10分間灌流し、灌流液を、母体側から1時間以内に収集し、有核細胞を数えた。灌流および収集の手順は、回収した有核細胞がl00個/mL未満になるまで、1または2回繰り返した。灌流液をプールし、軽く遠心分離して、血小板、デブリおよび脱核細胞膜を除去した。次いで、有核細胞を、Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離によって単離し、洗浄後、H.DMEM中に再懸濁させた。接着性細胞を単離するために、5?10×10^(6)個の細胞の一定分量を、いくつかのT-75フラスコのそれぞれの中に入れ、BioWhittakerから入手した市販の間葉系幹細胞増殖倍地(MSCGM)を用いて培養し、組織培養インキュベーター(37℃、5%CO2)中に置いた。10?15日後、非付着性細胞を、PBSを用いて洗浄することによって除去し、次いで、このPBSを、MSCGMで置き換えた。フラスコを、種々の付着性の細胞型の存在、特に、線維芽細胞様細胞のクラスターの同定および拡大について毎日調べた。
【0142】
細胞の回収および単離:細胞を、灌流液から、約100×g、室温で約15分間遠心分離することによって回収した。この手順によって、汚染デブリおよび血小板から細胞を分離した。細胞ペレットを、2単位/mlヘパリンおよび2mM EDTAを含有するIMDM無血清培地(GibcoBRL、NY)中に再懸濁させた。総単核細胞画分を、LYMPHOPREP(商標)(Nycomed Pharma、Oslo、ノルウェー)を使用して、製造元の推奨手順に従って単離し、この単核細胞画分を再懸濁させた。細胞を、血球計数器を使用して数えた。生存率を、トリパンブルー色素排除によって評価した。間葉系細胞の単離を、示差的トリプシン処理によって、0.2%EDTAを有する0.05%トリプシン溶液(Sigma)を使用して達成した。胎盤幹細胞を含めて、線維芽細胞様細胞は、プラスチック表面から約5分以内に脱離し、一方、その他の接着性の集団は、インキュベーションを20?30分超必要とすることから、示差的トリプシン処理が可能となった。トリプシン処理、およびTrypsin Neutralizing Solution(TNS、BioWhitaker)を使用するトリプシンの中和に続いて、脱離した線維芽細胞様細胞を収穫した。細胞を、H.DMEM中で洗浄し、MSCGM中に再懸濁させた。フローサイトメトリーを、Becton-Dickinson FACSCalibur機器を使用して実施した。CD10、CD34、CD44、CD45、CD54、CD90、SSEA3およびSSEA4に対する抗体を含めた、FITCおよびPEで標識したモノクローナル抗体を、Becton-Dickinson and Caltag laboratories(S.San Francisco、CA.)、またはその他の供給元から購入し、SH2抗体、SH3抗体およびSH4抗体を産生するハイブリドーマを、American Type Culture Collectionから入手し、モノクローナル抗体の、それらの培養上清中における反応性を、FITCまたはPEで標識したF(ab)’2ヤギ抗マウス抗体によって検出した。系列分化を、市販の誘導培地および維持培地(BioWhittaker)を使用し、製造元の指示にしたがって使用して実施した。
【0143】
胎盤幹細胞の単離:培養フラスコ中の接着性細胞を顕微鏡により調べると、紡錘状の細胞、大きな核および多数の核周囲の小さな空胞を有する丸い細胞、ならびにいくつかの突起を有する星型の細胞を含めて、形態学的に異なる細胞型が明らかになり、こうした突起のうちの1つを介して、細胞はフラスコに付着していた。類似の非幹細胞を、骨髄、臍帯血および末梢血の培養物中に観察した。したがって、これらの細胞を、非幹細胞性であるとみなした。線維芽細胞様細胞は大部分、クラスターとして出現し、間葉系様幹細胞となる候補であり、これらを、示差的トリプシン処理によって単離し、第2のフラスコ中で継代培養した。トリプシン処理後、丸くなった細胞の位相差顕微鏡法によって、これらの細胞は、高度な顆粒化を示し、実験室で産生されたまたは商業的な供給元から購入した骨髄由来MSCに類似することが明らかになった。胎盤幹細胞は、継代培養すると、早期の場合とは対照的に、数時間以内に付着し、特徴的な線維芽細胞様細胞の形状を示し、参照の骨髄由来MSCと同一の増殖パターンを形成した。さらに、継代培養および栄養補充の間に、ゆるく結合していた単核細胞は洗い流され、培養物は、均一かついずれの非線維芽細胞様細胞の汚染物質も目視では認められない状態を保った。
【0144】
フローサイトメトリー:CD10、CD29、CD34、CD38、CD44、CD45、CD54、CD90、SSEA3およびSSEA4を含めた、胎盤幹細胞の表面マーカーの発現を、フローサイトメトリーによって判定した。OCT-4およびABC-pの発現を、RT-PCRにより、これらのマーカーについての既知のプライマーを使用して判定した。」(段落0130?段落0144)

(サ)
「【実施例2】
【0145】
未熟児の臍帯血および胎盤幹細胞を用いた治療
23週?36週の間の在胎期間で出生し、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓の不完全な発達を示す6人の未熟児を、臍帯血および胎盤幹細胞を用いて治療する。
【0146】
臍帯血を、実施例1の記載に従って収集し、胎盤幹細胞を、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2006年12月26日出願の米国特許出願公開第2007/0275362号の記載に従って、灌流または酵素による消化によって得る。臍帯血および胎盤幹細胞を、1:1の比で組み合わせる。臍帯血および胎盤幹細胞を、FACS解析によって特徴付ける。臍帯細胞および胎盤幹細胞を未熟児に、未熟児の体重1キログラム当たり約1×10^(5)?l×10^(6)個のCD34^(+)細胞の投与量で、分娩1週間後および分娩2週間後に静脈内から注射する。
【0147】
臍帯血および胎盤幹細胞の投与の前および後に、未熟児の血圧、心拍数、呼吸数および種々の血液細胞型の数を測定する。」(段落0144?段落0147)

(シ)
「【実施例3】
【0148】
臍帯血および胎盤灌流液に由来する細胞の特徴付け
以下の実験を実施して、正期産胎盤から単離した細胞と比較して、早産胎盤からHPPとUCBとの組合せを産生することの実現可能性を実証し、組み合わせた産物の細胞組成を決定した。
【0149】
全体的な結果から、(1)早産胎盤からHPPおよびUCBを収集することは実現可能であり;(2)早産胎盤から単離した総核細胞は、正期産胎盤から単離したものに匹敵し;(3)早産胎盤から単離したHPP/UCBのTNC含有量は、類似の体重に対して正規化した場合、正期産胎盤中に示されるものよりも顕著に高く;(4)早産胎盤から単離した臍帯血細胞の細胞組成は、正期産胎盤からのものとは異なり;CD38^(+)CD45^(+)細胞は、正期産胎盤中では、早産胎盤と比較して統計学的に有意に高く(p値、0.0146)、一方、CD38^(-)CD45^(-)細胞は、早産胎盤中では、統計学的に有意に高く(p値、0.0335);(5)早産胎盤から単離したHPPの細胞組成は、正期産胎盤と顕著に異なることはないことが示されている。
【0150】
早産胎盤からHPPおよびUCB幹細胞を大量に得ることは実現可能であり、これは、UCB幹細胞を単離するための従来の方法を実質的に上回る。組み合わせた細胞産物は、早産に伴う合併症を治療するために有用であるはずである。これは、それが、低酸素により内因性細胞が死滅するのを保護するための栄養能およびin vivoにおいて血液、血管新生細胞および神経細胞を形成する分化能を有するいくつかの前駆細胞の豊富な供給源となり得るからである。
【0151】
1 方法:
対象:帝王切開を予定して待機している女性を、出生前診療所において募集し、自然分娩した女性を、分娩室において募集した。
【0152】
臍帯血および胎盤の収集:胎盤を収集し、臍帯を切断し、クランプした。可能な限りの臍帯血を、臍帯から流し出した。次いで、臍帯を再度クランプして、さらなる失血を防止し、胎盤および臍帯血を、実験室に直ちに届けた。
【0153】
実験室における処理:胎盤が届いたら、到着後10?15分以内に)、胎盤の重量を測定し、胎盤膜を除去した。胎盤およびコアを判定して、それらが灌流のために適切であるかどうか、例えば、臍帯が胎盤に完全につながっており、裂傷の徴候がなく、また、胎盤の中に深い裂傷もないことを確かめた。次いで、胎盤を、保存溶液を用いて覆う。次いで、胎盤を、冷蔵庫中に48時間置く。臍帯血を、Cell-DynおよびFACS解析について直ちに検査した。
【0154】
胎盤の灌流:胎盤を灌流し、灌流液を凍結保存した。圧力を制御した灌流を、Masterflex L/S7523プログラム可能蠕動ポンプを使用して達成した。臍帯用カテーテルを、胎盤の臍帯静脈のそれぞれの中に挿入し、三方活栓に接続した。次いで、このアセンブリを、Utah medical製のDPT100使い捨て圧力変換器に、次いで、これを、Masterflex L/S16蠕動ポンプチューブに接続した。このポンプを、さらに、注射用等級の食塩水の袋に接続した。血液収集袋からのチューブを、臍帯静脈中に挿入し、胎盤の血液を収集した。Labviewソフトウエアによって、灌流の圧力をモニターし、Masterflexポンプを、所望の圧力に手作業で加減した。灌流を、3時間に限定し、体積およびNOCの試験を、灌流が1時間終わる毎に完了した。
【0155】
胎盤灌流液細胞の生存率試験:ヒト胎盤灌流液(HPP)を含有する袋を、十分に混合し、少しの一定分量のHPPを、袋から取り出した。次いで、試料を、酢酸を用いて処置することによって、汚染赤血球を溶解させた。赤血球の溶解が完了した後、それぞれの試料に対して、トリパンブルー染色またはCell Dyne3200による計数のいずれかを行った。生存細胞のパーセントを決定するために、トリパンブルーを取り込まない、顕微鏡視野中の完全なままの細胞の数を、三つ組みで決定した。生存細胞の数を、総細胞数で割り、100をかけた。
【0156】
フローサイトメトリー:フローサイトメトリー研究を、HPPもしくはUCB、または細胞の組合せを使用し、以下の抗体を使用して実施した。
【0157】
【表1】


【0158】
細胞を、緩衝液を用いて洗浄し、次いで、緩衝液中に、設定した濃度範囲(すなわち、100μL当たり1×10^(6)個の生存細胞)で再懸濁させた。次いで、細胞を、蛍光標識抗体を用いて染色、インキュベートし、次いで、緩衝液を用いて洗浄して、過剰な抗体を除去した。染色した細胞を、フローサイトメーター上で試験して、対象とするマーカーの発現の陽性または陰性を決定した。
【0159】
2 結果
早産の胎盤と正期産の胎盤とは、重量が有意に異なることを見い出した(それぞれ、平均345gおよび731g;p=0.0001)。細胞の生存率については、早産の胎盤と正期産の胎盤とで、有意には異ならないことを見い出した(それぞれ、93.13%および90.84%の生存率;p=0.0724)。しかし、早産から得られる総有核臍帯血細胞は、有意に異なった(p=0.0001)。平均5.277×10^(7)個の細胞が、早産の胎盤から得られ、平均1.9498×10^(8)個の細胞が、正期産の胎盤から得られた。同様に、早産から得られる総有核灌流液細胞も、有意に異なった(p=0.0016)。平均1.28×10^(7)個の細胞が、早産の胎盤から得られ、平均3.76×10^(7)個の細胞が、正期産の胎盤から得られた。したがって、胎盤組織1グラム当たりから得られる有核細胞の数は、早産胎盤の場合、正期産の胎盤よりも有意に多かった(p=0.0001)。早産胎盤から得ることができる灌流液有核細胞と臍帯血有核細胞との総数は、1.79×10^(8)個である。これは、正期産の胎盤の場合の5.71×10^(8)個と比較して極めて有意に異なる(p=0.0001)。胎盤組織1グラム当たりの組み合わせた総有核細胞の数は、有意には異ならないことを見い出した。
【0160】
3 フローサイトメトリー
CD34^(+)細胞、CD38^(-)CD45^(+)細胞またはCD38^(+)CD45^(-)細胞のパーセントについては、早産の臍帯血と正期産の胎盤との間では、統計学的に有意な差は見いだされなかった。正期産の胎盤において、有意により高い数のCD38^(+)CD45^(+)細胞が見い出され(16.68%TNCに対して、早産における2.0%TNC)、早産胎盤において、有意により高い数のCD38^(-)CD45^(-)細胞が見い出された(56.52%に対して、正期産の胎盤の場合の24.58%)。灌流液由来のCD38^(-)CD45^(+)細胞、CD38^(+)CD45^(-)細胞、CD38^(+)CD45^(+)細胞またはCD38^(-)CD45^(-)細胞のパーセントについては、早産の臍帯血と正期産の胎盤との間では、統計学的に有意な差は見い出されなかった。」(段落0147?段落0160)

6 当審の判断
(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)の検討
特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、当該発明に係る物の生産、使用等をいうものであるから、実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る物を生産し、使用することができる程度のものでなければならない。
そして、医薬の用途発明においては、一般に、物質名、化学構造等が示されることのみによっては、当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効量を予測することは困難であり、当該医薬を用途に使用することができないから、医薬用途発明においては実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明は、その医薬を製造することができるだけでなく、出願時の技術常識に照らして、医薬としての有用性を当業者が理解できるように記載される必要がある。
これを本件について検討すると、本件発明の発明特定事項から、本件発明は「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことをその用途とする、医薬用途発明であるといえる。
そして、発明の詳細な説明には、本件発明が、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う、未熟児の障害および状態を治療するものであることが記載される(記載事項(ア)及び記載事項(エ))とともに、本件発明によって治療すべき障害または状態として、本件医薬用途発明の治療対象とされる障害または状態のうち「神経学的な欠損」を除くものが列挙されている(記載事項(イ)及び記載事項(カ))。一方、「神経学的な欠損」についての記載は発明の詳細な説明にない。
また、発明の詳細な説明には、臍帯血および胎盤幹細胞の取得方法について記載され(記載事項(ウ))、臍帯血および胎盤幹細胞の表面マーカー(CD34^(-)、CD200^(+)など)について記載され(記載事項(キ)及び記載事項(ク))、医薬組成物について記載され(記載事項(ケ))、治療の有効性確認方法について記載される(記載事項(オ))とともに、実施例1として「臍帯血及び胎盤幹細胞の収集」の手法が記載され(記載事項(コ))、実施例2として「未熟児の臍帯血および胎盤幹細胞を用いた治療」の手法が記載され(記載事項(サ))、実施例3として「臍帯血および胎盤灌流液に由来する細胞の特徴づけ」について記載されている(記載事項(シ))。
しかし、記載事項(ア)?記載事項(シ)のいずれからも、臍帯血および胎盤幹細胞を含む医薬組成物であって、当該胎盤幹細胞がCD34^(-)またはCD200^(+)である細胞を含むものによって、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことが可能となることの根拠となる記載は見出せない。
また、発明の詳細な説明における他の記載を検討しても、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことに本件発明が有用であると当業者が理解できるとする根拠となる記載は見出せない。
さらに、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことに本件発明が有用であることは出願時の技術常識から明らかであるとする根拠も見出せない。

ここで審判請求書の請求の理由「3.本願発明が特許されるべき理由」における
「(2)理由2及び3について
本願発明の効果については本願明細書の実施例2において実験例として記載され、段落[0150]にも記載されています。
また、本願発明の医薬組成物が実際に治療効果を有することは参考資料1の実施例でも確認されています。
以上から、本願発明は、発明の詳細な説明において当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載され、かつ、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものですので、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定の要件を満たします。」
との請求人の主張について検討する。
請求人のいう「本願明細書の実施例2において実験例として記載され」たものは、上記記載事項(サ)に示したとおりのものであって、本件医薬用途発明の治療対象とされる障害または状態のうち「神経学的な欠損」については記載されていない。また、本件医薬用途発明の治療対象とされる障害または状態のうち「神経学的な欠損」以外のものについても、「23週?36週の間の在胎期間で出生し、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓の不完全な発達を示す6人の未熟児を、臍帯血および胎盤幹細胞を用いて治療する。」、「臍帯細胞および胎盤幹細胞を未熟児に、未熟児の体重1キログラム当たり約1×10^(5)?l×10^(6)個のCD34^(+)細胞の投与量で、分娩1週間後および分娩2週間後に静脈内から注射する。」及び「臍帯血および胎盤幹細胞の投与の前および後に、未熟児の血圧、心拍数、呼吸数および種々の血液細胞型の数を測定する。」と記載されているものの、上記記載事項(オ)に示された治療の有効性確認方法などに基づいた治療の有効性を示す記載はなく、本件医薬用途発明の有用性の根拠はなんら示されていない。
また、請求人のいう「段落[0150]」の記載は、上記記載事項(シ)に示したとおり「早産胎盤からHPPおよびUCB幹細胞を大量に得ることは実現可能であり、これは、UCB幹細胞を単離するための従来の方法を実質的に上回る。組み合わせた細胞産物は、早産に伴う合併症を治療するために有用であるはずである。これは、それが、低酸素により内因性細胞が死滅するのを保護するための栄養能およびin vivoにおいて血液、血管新生細胞および神経細胞を形成する分化能を有するいくつかの前駆細胞の豊富な供給源となり得るからである。」というものであって、「低酸素により内因性細胞が死滅するのを保護するための栄養能およびin vivoにおいて血液、血管新生細胞および神経細胞を形成する分化能を有するいくつかの前駆細胞の豊富な供給源となり得る」ということと「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことの関係が示されておらず、臍帯血および胎盤幹細胞を含む医薬組成物であって、当該胎盤幹細胞がCD34^(-)またはCD200^(+)である細胞を含むものによって、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことが可能となることの根拠となるものではない。
また、請求人のいう「参考資料1」は平成26年 1月29日付け意見書に添付された米国特許出願公開第2010/0047351号(US,A1)であるところ、その公開日は本件の国際出願日の1年以上後の2010年 2月25日であって、その記載内容が本件出願時の技術水準を示すものとは認められない。しかも、その実施例1として示された中大脳動脈(MCA)局所的虚血(MCA focal ischemia)のラットモデルに対する、CD34^(-)、CD10^(+)、CD105^(+)、CD200^(+)胎盤幹細胞の治療効果は、たとえ、そのMCA局所的虚血のラットモデルが新生児脳損傷のモデル動物であるとしても、「中大脳動脈(MCA)局所的虚血(MCA focal ischemia)」の治療と「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」こととの関係が示されておらず、その関係が本件出願時の技術常識から当業者に明らかであるといえる根拠も見出せない。したがって、請求人のいう「参考資料1」である米国特許出願公開第2010/0047351号(US,A1)の記載は、臍帯血および胎盤幹細胞を含む医薬組成物であって、当該胎盤幹細胞がCD34^(-)またはCD200^(+)である細胞を含むものによって、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことが可能となることの根拠となるものではない。

したがって、本件出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明は、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことをその用途とする、本件発明の医薬としての有用性を当業者が理解できるように記載されていない。

(2)特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)の検討
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきといえる。

これを本件について検討すると、本件補正後の請求項1に記載された事項ならびに発明の詳細な説明における記載事項(ア)、記載事項(イ)、記載事項(ウ)、記載事項(エ)、記載事項(カ)及び記載事項(ケ)から、本件発明の課題は
「臍帯血および胎盤幹細胞を含む、未熟児の障害または状態を治療するための医薬組成物であって、前記障害または状態が早産によって引き起こされるまたは早産に伴うものであり、前記胎盤幹細胞はCD34^(-)またはCD200^(+)である細胞を含み、かつ、前記障害または状態が呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態である、医薬組成物。」を得ることであると認められる。
そして、発明の詳細な説明には、本件発明が、早産によって引き起こされるまたは早産に伴う、未熟児の障害および状態を治療するものであることが記載される(記載事項(ア)及び記載事項(エ))とともに、本件発明によって治療すべき障害または状態として、本件医薬用途発明の治療対象とされる障害または状態のうち「神経学的な欠損」を除くものが列挙されている(記載事項(イ)及び記載事項(カ))。一方、「神経学的な欠損」についての記載は発明の詳細な説明にない。
また、発明の詳細な説明には、臍帯血および胎盤幹細胞の取得方法について記載され(記載事項(ウ))、臍帯血および胎盤幹細胞の表面マーカー(CD34^(-)、CD200^(+)など)について記載され(記載事項(キ)及び記載事項(ク))、医薬組成物について記載され(記載事項(ケ))、治療の有効性確認方法について記載される(記載事項(オ))とともに、実施例1として「臍帯血及び胎盤幹細胞の収集」の手法が記載され(記載事項(コ))、実施例2として「未熟児の臍帯血および胎盤幹細胞を用いた治療」の手法が記載され(記載事項(サ))、実施例3として「臍帯血および胎盤灌流液に由来する細胞の特徴づけ」について記載されている(記載事項(シ))。
しかし、発明の詳細な説明には、臍帯血および胎盤幹細胞を含む医薬組成物であって、当該胎盤幹細胞がCD34^(-)またはCD200^(+)である細胞を含むものによって、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことができることを確認できる実施例は記載されていない。

そして、記載事項(ア)?記載事項(シ)のいずれにも、臍帯血および胎盤幹細胞を含む医薬組成物であって、当該胎盤幹細胞がCD34^(-)またはCD200^(+)である細胞を含むものが、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」効果を奏するものであることを当業者が認識できるとする根拠となる記載は見出せない。
したがって、記載事項(ア)?記載事項(シ)からは、臍帯血および胎盤幹細胞を含む医薬組成物であって、当該胎盤幹細胞がCD34^(-)またはCD200^(+)である細胞を含むものが、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」効果を奏するものであることを当業者が認識できるとすることはできない。
また、発明の詳細な説明における他の記載を検討しても、本件発明が、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」効果を奏するものであることを当業者が認識できるとする根拠となる記載は見出せない。
さらに、本件発明が、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」効果を奏するものであることは出願時の技術常識から明らかであるとする根拠も見出せない。

ここで審判請求書の請求の理由「3.本願発明が特許されるべき理由」における
「(2)理由2及び3について
本願発明の効果については本願明細書の実施例2において実験例として記載され、段落[0150]にも記載されています。
また、本願発明の医薬組成物が実際に治療効果を有することは参考資料1の実施例でも確認されています。
以上から、本願発明は、発明の詳細な説明において当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載され、かつ、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものですので、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定の要件を満たします。」
との請求人の主張について検討する。
請求人のいう「本願明細書の実施例2において実験例として記載され」たものは、上記記載事項(サ)に示したとおりのものであって、本件医薬用途発明の治療対象とされる障害または状態のうち「神経学的な欠損」については記載されていない。また、本件医薬用途発明の治療対象とされる障害または状態のうち「神経学的な欠損」以外のものについても、「23週?36週の間の在胎期間で出生し、呼吸促迫症候群(RDS)または急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症、肺、眼、免疫系、脳、心臓、肝臓または腎臓の不完全な発達を示す6人の未熟児を、臍帯血および胎盤幹細胞を用いて治療する。」、「臍帯細胞および胎盤幹細胞を未熟児に、未熟児の体重1キログラム当たり約1×10^(5)?l×10^(6)個のCD34^(+)細胞の投与量で、分娩1週間後および分娩2週間後に静脈内から注射する。」及び「臍帯血および胎盤幹細胞の投与の前および後に、未熟児の血圧、心拍数、呼吸数および種々の血液細胞型の数を測定する。」と記載されているものの、上記記載事項(オ)に示された治療の有効性確認方法などに基づいた治療の有効性を示す記載はなく、請求人のいう「本願明細書の実施例2において実験例として記載され」たものから、本件発明が、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」効果を奏するものであることを当業者が認識できるとすることはできない。
また、請求人のいう「段落[0150]」の記載は、上記記載事項(シ)に示したとおり「早産胎盤からHPPおよびUCB幹細胞を大量に得ることは実現可能であり、これは、UCB幹細胞を単離するための従来の方法を実質的に上回る。組み合わせた細胞産物は、早産に伴う合併症を治療するために有用であるはずである。これは、それが、低酸素により内因性細胞が死滅するのを保護するための栄養能およびin vivoにおいて血液、血管新生細胞および神経細胞を形成する分化能を有するいくつかの前駆細胞の豊富な供給源となり得るからである。」というものであって、「低酸素により内因性細胞が死滅するのを保護するための栄養能およびin vivoにおいて血液、血管新生細胞および神経細胞を形成する分化能を有するいくつかの前駆細胞の豊富な供給源となり得る」ということと「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」ことの関係が示されておらず、請求人のいう「段落[0150]」の記載から、本件発明が、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」効果を奏するものであることを当業者が認識できるとすることはできない。
また、請求人のいう「参考資料1」は平成26年 1月29日付け意見書に添付された米国特許出願公開第2010/0047351号(US,A1)であるところ、その公開日は本件の国際出願日の1年以上後の2010年 2月25日であって、その記載内容が本件出願時の技術水準を示すものとは認められない。しかも、その実施例1として示された中大脳動脈(MCA)局所的虚血(MCA focal ischemia)のラットモデルに対する、CD34^(-)、CD10^(+)、CD105^(+)、CD200^(+)胎盤幹細胞の治療効果は、たとえ、そのMCA局所的虚血のラットモデルが新生児脳損傷のモデル動物であるとしても、「中大脳動脈(MCA)局所的虚血(MCA focal ischemia)」の治療と「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」こととの関係が示されておらず、その関係が本件出願時の技術常識から当業者に明らかであるといえる根拠も見出せない。したがって、請求人のいう「参考資料1」である米国特許出願公開第2010/0047351号(US,A1)の記載から、本件発明が、「早産によって引き起こされるまたは早産に伴う未熟児の障害または状態であって、呼吸促迫症候群(RDS)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、貧血、神経学的な欠損、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、慢性肺疾患(気管支肺異形成症)、感染症、動脈管開存、無呼吸、低血圧、高ビリルビン血症または臓器の不完全な発達によって引き起こされる障害もしくは状態を治療する」効果を奏するものであることを当業者が認識できるとすることはできない。

したがって、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、当業者が出願時の技術常識に照らして本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。

(3)検討の結果
上記(1)の検討の結果、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
上記(2)の検討の結果、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許請求の範囲の記載は特許法第36項第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

7 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-29 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-14 
出願番号 特願2010-533099(P2010-533099)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A61K)
P 1 8・ 536- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 公祐  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 村上 騎見高
安川 聡
発明の名称 早産の合併症の治療  
代理人 丸山 智裕  
代理人 今里 崇之  
代理人 小林 浩  
代理人 大森 規雄  
代理人 日野 真美  
代理人 鈴木 康仁  
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