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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1317604 |
審判番号 | 不服2015-10254 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-02 |
確定日 | 2016-07-28 |
事件の表示 | 特願2011- 51031「ナノインプリント方法およびそれに用いられるナノインプリント装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-190877〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成23年3月9日の出願であって、平成26年7月17日付けで拒絶理由が通知され、同年9月18日に意見書が提出されたが、平成27年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月2日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成27年6月2日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「微細な凹凸パターンを表面に有するモールドおよび硬化性樹脂塗布面を有する被加工基板であって、前記凹凸パターンもしくは前記硬化性樹脂塗布面が形成されたメサ部を前記モールドおよび前記被加工基板の少なくとも一方が有するものを用い、 前記凹凸パターンと前記硬化性樹脂塗布面上に塗布された硬化性樹脂とを接着せしめて、前記モールド、前記硬化性樹脂および前記被加工基板から構成されるアセンブリを形成し、 表面全体が直接雰囲気に暴露可能な状態にある前記アセンブリを、雰囲気による流体圧力が実質的に前記アセンブリの表面全体に作用するように、圧力容器内において支持部材で支持しながら、該圧力容器内に気体を導入し、 該気体の流体圧力によって、前記モールドと前記被加工基板とを互いに押し付け、その後前記モールドと前記被加工基板とを剥離することを特徴とするナノインプリント方法。」 3 先願明細書の記載、先願発明及び周知技術 (1)先願明細書の記載 原審における拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願2009-222290号(以下、「先願」という。特開2011-71399号公報参照。)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ナノインプリント技術を用いたパターン形成方法に関し、さらに詳しくは、凹状のパターンを有するモールドを用いて、基材上に形成した樹脂層に前記凹状のパターンに対応した凸状のパターンを形成するナノインプリントパターン形成方法に関するものである。」 イ 「【発明を実施するための形態】 【0026】 以下、本発明に係るナノインプリントパターン形成方法について、図面を参照して説明する。 【0027】 [基材、樹脂層、モールドの準備] 図1は、本発明のパターン形成方法の一例を示す工程図である。 図1(a)に示すように、まず、圧力により変形可能な樹脂層2を形成した基材1と、凹状のパターン4を有するモールド3とを準備する。・・・ 【0031】 樹脂層2を形成する樹脂は、圧力が加えられると変形する性質をもつ樹脂であって、ナノインプリントに適用可能なものであれば用いることができる。熱によって可塑化し、その可塑化した状態で圧力をかけることにより変形可能な樹脂も適用可能である。 本発明においては、紫外線の照射によって架橋反応を起こして硬化する紫外線硬化樹脂であることが、高温過熱などの処理を必要としない点から、好ましい。・・・ 【0040】 [接触工程] 次に、図1(b)に示すように、モールド3の凹状のパターン4が設けられた面を、基材1上の樹脂層2に接触させる。この工程により、モールド3の凹状のパターン4は樹脂層2で密閉されることになる。 【0041】 この接触工程では、基材1を固定した状態でモールド3を動かして接触させても良いし、逆にモールド3を固定した状態で基材1を動かして接触させても良く、また、基材1とモールド3の双方を動かして接触させても良い。 【0042】 また、本発明においては、この接触工程の前に、基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲を減圧し、接触工程で樹脂層3により密閉される凹状のパターン4の空間を低圧にしておいても良い。この減圧工程を行うことによって、気泡混入によるパターン欠陥を防止でき、また、次の加圧工程の加圧をより小さい圧力にすることができる。この場合の凹状のパターン4の気圧の範囲は、例えば1Pa?1×10^(-7)Paである。 【0043】 基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲を減圧する方法としては、例えば、樹脂層2を形成した基材1とモールド3を、接触工程用の駆動機構を備えた耐圧チャンバーに搭載し、減圧ポンプ等で前記耐圧チャンバー内を減圧する方法がある。 【0044】 [加圧工程] 次に、図1(c)に示すように、基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲の気体の圧力5を上げることにより、樹脂層2の一部を凹状のパターン4内に充填する。 【0045】 本発明においては、図2(c)に示す樹脂層2の上下方向のモールド押圧力8ではなく、図1(c)に示すように、樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との差圧を利用することにより、樹脂層2を凹状のパターン4内に充填する。 そして、樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との圧力差は、モールド3の中央付近、または淵のいずれの部位においても同じである。そのため、本発明においては、上述のエッジ効果の影響を受けずに、アスペクト比の高い樹脂パターンを得ることができる。 【0046】 ここで、樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との差圧を生み出す方法は、基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲の気体の圧力5を、大気圧雰囲気からより高い気圧雰囲気に加圧することで生み出す方法のほかに、上述の接触工程の前に、基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲を減圧し、接触工程で樹脂層3により密閉される凹状のパターン4の空間を低圧にしておいて、その後の加圧工程で、基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲の気体の圧力5を、大気圧雰囲気に戻すことで生み出す方法であっても良い。 後者の方法の場合、生み出せる差圧は最大で大気圧と同じ1×10^(5)Pa程度となり、前者の方法の場合よりも生み出せる差圧の最大値は小さくなるが、加圧機構および高圧に耐えるチャンバー等を必要としないため、経済性や安全性の点からは有益である。 【0047】 また、従来の樹脂層2の上下方向のモールド押圧による方法では、基材1とモールド3との隙間からの樹脂の漏出を防止することは困難であったが、本発明においては、樹脂層2は、基材1とモールド3との隙間の水平方向からも上下方向と同じ大きさの圧力5を受けるため、基材1とモールド4との隙間からの樹脂の漏出も抑制することができる。・・・ 【0051】 基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲の気体を加圧する方法としては、例えば、樹脂層2を形成した基材1とモールド3を、接触した状態で耐圧チャンバーに搭載し、高圧ガスボンベ等を用いて前記耐圧チャンバー内を加圧する方法がある。 【0052】 [樹脂硬化工程] 次に、図1(d)に示すように、樹脂層2の一部を凹状のパターン4内に充填させた状態で、樹脂層2を硬化させて形状を固定する。 【0053】 樹脂層2を硬化させる方法は、使用する樹脂に応じて、紫外線等の電磁波の照射や、加熱、冷却、若しくは電磁波照射と加熱または冷却を併用する方法を用いることができる。 樹脂層2に紫外線硬化樹脂を用いた場合は、例えば、紫外線透過性を有するモールド3を通して樹脂層2に紫外線6を所定量照射することで樹脂層2を硬化させることができる。 【0054】 [離型工程] 最後に、図1(e)に示すように、モールド3を基材1上の樹脂層2から剥離し、樹脂層2に凹状のパターン4に対応した凸状のパターン7を得る。 【0055】 この離型工程では、基材1を固定した状態でモールド3を動かして離型させても良いし、逆にモールド3を固定した状態で基材1を動かして離型させても良く、また、基材1とモールド3の双方を動かして離型させても良い。」 ウ 図1は次のものである。 【図1】 (2)先願発明 上記(1)の記載によれば、先願明細書には次の発明が記載されているものと認められる(以下、「先願発明」という。)。 「まず、圧力により変形可能な樹脂層2を形成した基材1と、凹状のパターン4を有するモールド3とを準備し、 前記樹脂層2を形成する樹脂は、圧力が加えられると変形する性質をもつ樹脂であって、ナノインプリントに適用可能なもので、紫外線の照射によって架橋反応を起こして硬化する紫外線硬化樹脂であり、 次に、モールド3の凹状のパターン4が設けられた面を、基材1上の樹脂層2に接触させ、 前記樹脂層2を形成した基材1とモールド3を、接触工程用の駆動機構を備えた耐圧チャンバーに搭載し、減圧ポンプ等で前記耐圧チャンバー内を減圧し、 次に、基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲の気体の圧力5を上げ、樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との差圧を利用することにより、樹脂層2を凹状のパターン4内に充填し、その際、樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との圧力差は、モールド3の中央付近、または淵のいずれの部位においても同じであり、 次に、前記樹脂層2の一部を凹状のパターン4内に充填させた状態で、樹脂層2を硬化させて形状を固定し、 最後に、モールド3を基材1上の樹脂層2から剥離し、樹脂層2に凹状のパターン4に対応した凸状のパターン7を得る、 ナノインプリントパターン形成方法。」 4 対比・判断 (1)本願発明と先願発明とを対比する。 ア 先願発明の「紫外線硬化樹脂である樹脂層2」、「樹脂層2を形成した基材1」、「ナノインプリントパターンの凹状のパターン4を有するモールド3」、「耐圧チャンバー」、「気体」、「気体の圧力5」及び「ナノインプリントパターン形成方法」は、本願発明の「硬化性樹脂塗布面」、「硬化性樹脂塗布面を有する被加工基板」、「微細な凹凸パターンを表面に有するモールド」、「圧力容器」、「気体」、「気体の流体圧力」及び「ナノインプリント方法」にそれぞれ相当する。 イ 先願発明の「モールド3の凹状のパターン4が設けられた面を、基材1上の樹脂層2に接触させ」たものは、本願発明の「前記モールド、前記硬化性樹脂および前記被加工基板から構成されるアセンブリ」に相当するから、先願発明の「モールド3の凹状のパターン4が設けられた面を、基材1上の樹脂層2に接触させ」る工程は、本願発明の「前記凹凸パターンと前記硬化性樹脂塗布面上に塗布された硬化性樹脂とを接着せしめて、前記モールド、前記硬化性樹脂および前記被加工基板から構成されるアセンブリを形成」する工程に相当する。 ウ 先願発明の「前記樹脂層2を形成した基材1とモールド3を、接触工程用の駆動機構を備えた耐圧チャンバーに搭載し、減圧ポンプ等で前記耐圧チャンバー内を減圧し、次に、基材1、樹脂層2、およびモールド3の周囲の気体の圧力5を上げ、樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との差圧を利用することにより、樹脂層2を凹状のパターン4内に充填し、その際、樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との圧力差は、モールド3の中央付近、または淵のいずれの部位においても同じであ」る工程と、本願発明の「表面全体が直接雰囲気に暴露可能な状態にある前記アセンブリを、雰囲気による流体圧力が実質的に前記アセンブリの表面全体に作用するように、圧力容器内において支持部材で支持しながら、該圧力容器内に気体を導入し、該気体の流体圧力によって、前記モールドと前記被加工基板とを互いに押し付け」る工程とは、「前記アセンブリを、雰囲気による流体圧力が実質的に前記アセンブリの表面全体に作用するように、圧力容器内において支持部材で支持しながら、該圧力容器内に気体を導入し、該気体の流体圧力によって、前記モールドと前記被加工基板とを互いに押し付け」る工程の点で一致する。 エ 先願発明の「モールド3を基材1上の樹脂層2から剥離」する工程は、本願発明の「前記モールドと前記被加工基板とを剥離する」工程に相当する。 オ 以上アないしエの検討によれば、本願発明と先願発明とは、 「微細な凹凸パターンを表面に有するモールドおよび硬化性樹脂塗布面を有する被加工基板であって、 前記凹凸パターンと前記硬化性樹脂塗布面上に塗布された硬化性樹脂とを接着せしめて、前記モールド、前記硬化性樹脂および前記被加工基板から構成されるアセンブリを形成し、 前記アセンブリを、雰囲気による流体圧力が実質的に前記アセンブリの表面全体に作用するように、圧力容器内において支持部材で支持しながら、 該圧力容器内に気体を導入し、該気体の流体圧力によって、前記モールドと前記被加工基板とを互いに押し付け、 その後前記モールドと前記被加工基板とを剥離する ナノインプリント方法。」 である点で一致し、下記(ア)及び(イ)の点で一応相違するものと認められる。 (ア)本願発明では、「前記凹凸パターンもしくは前記硬化性樹脂塗布面が形成されたメサ部を前記モールドおよび前記被加工基板の少なくとも一方が有するものを用い」るのに対して、先願発明では、「モールド3」または「基材1」として、メサ部を有するものを用いるとは特定されない点(以下「相違点1」という。)。 (イ)本願発明の「アセンブリ」は、「表面全体が直接雰囲気に暴露可能な状態にある」のに対して、先願発明の「モールド3の凹状のパターン4が設けられた面を、基材1上の樹脂層2に接触させ」たものは、「表面全体が直接雰囲気に暴露可能な状態にある」とは特定されない点(以下「相違点2」という。) (2)判断 ア 相違点1について検討する。 ナノインプリントに適用するモールドとして、非メサ型のものもメサ型のものも従来周知である。 また、先願発明においてメサ型のモールドを用いることを妨げる格別の事由はない。 したがって、先願発明においてモールドとして、非メサ型のものに変えてメサ型のものを用いることは、周知技術の転換であって、新たな効果を奏するものではないから、相違点1は実質的な相違点ではない。 イ 相違点2について検討する。 先願発明では、「樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との差圧を利用することにより、樹脂層2を凹状のパターン4内に充填」するものであり、「その際、樹脂層2が周囲の全方向から受ける圧力5と密閉された低圧空間である凹状のパターン4内の気圧との圧力差は、モールド3の中央付近、または淵のいずれの部位においても同じであ」るためには、「モールド3の凹状のパターン4が設けられた面を、基材1上の樹脂層2に接触させ」たものの全面が「周囲の気体」に暴露されることがよいことは自明であるから、本願発明がそのような構成を含むことは当業者には自明である。 そうすると、先願発明において、「モールド3の凹状のパターン4が設けられた面を、基材1上の樹脂層2に接触させ」たものは、「耐圧チャンバー内」で「周囲の気体」に暴露される状態にあると認められる。 したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。 (3)請求人は、平成27年6月2日付けでの審判請求書において、概略下記のように主張する。 「メサ型のモールドを用いたナノインプリントにおいて、例えば本願の出願当初の図面の図12A?図12B及び図13で示されるように、メサ型モールド1は、凹凸パターン13が形成された転写領域の表面(メサ部12の表面)から所定の高さD2の段差を設けて非転写領域の表面(フランジ部15の表面)が形成されたメサ構造を有しているので、メサ部12の表面を光硬化性樹脂6の塗布面に押し当てたときに、フランジ部15の表面と光硬化性樹脂6の塗布面は接触せずにフランジ部15の表面と光硬化性樹脂6の塗布面の間には空間が存在することになります。そしてメサ型モールド1、光硬化性樹脂6が塗布された被加工基板7を入れた封止カバー9を流体圧力に曝すと、フランジ部15は、上側及び左または右の端部側からの流体圧力やフランジの自重によって、その空間で下方に向けて撓んでしまい、メサ型モールド1の両端のフランジ部15が撓んでしまうとメサ型モールド1が湾曲してメサ型モールド1の中央部すなわちメサ部12の中央部が浮いた状態となってしまうので、均一な残膜厚が得られない、つまり残膜ムラが生じてしまうという問題が生じます。 先願1に記載されたモールドや、例えば本願の出願当初の図面の図11で示されるようなメサ構造を有さない従来のモールド5は、凹凸パターンが形成された転写領域の表面を光硬化性樹脂6の塗布面に押し当てたときに、転写領域の表面と光硬化性樹脂6との間には空間が存在しないため、従来のモールド5、光硬化性樹脂6が塗布された被加工基板7を入れた封止カバー9を流体圧力に曝しても従来のモールド5はメサ型モールド1にように湾曲してしまうことはありません。すなわち、メサ型モールド1が湾曲することにより残膜ムラが生じるという問題は、凹凸パターンが形成された転写領域の表面と非転写領域の表面とが、所定の段差を有して形成されたメサ構造を有するメサ型モールド特有の問題であります。 本願発明は、このメサ型モールド特有の、メサ型モールドが湾曲することにより残膜ムラが生じるという問題を解決するための発明であり、メサ型モールド、硬化性樹脂6が塗布された被加工基板7から構成されるアセンブリの表面全体に流体圧力が実質的に作用するように、つまり例えば本願の出願当初の図面の図4に示すように、フランジ部15の下側にも流体圧力が作用するように、圧力容器内においてアセンブリを支持部材で支持しています。本願発明は、このようにアセンブリを支持することにより、フランジ部15の下面を含めたアセンブリの表面全体に均等な流体圧力をかけることができるので、モールドが湾曲することを防止することができ、硬化性樹脂塗布面に対する均等な圧力による押し付けが実現できて、残膜ムラの発生を抑制することができるという優れた効果を得ることができます。なおモールド1ではなく被加工基板7にフランジ部が形成されている場合であっても、圧力容器内においてアセンブリを支持部材で支持することにより、被加工基板のフランジ部の表面にも全体に均等な流体圧力をかけることができるので、被加工基板が湾曲することを防止することができます。 かかる本願発明に対して、先願1には、メサ構造に関する記載は一切ありませんので、モールドや被加工基板が湾曲するという本願発明における上記メサ型特有の問題が生じることはありません。つまり本願発明のようにモールドや被加工基板が湾曲することを防止することができるという効果を得ることはできません。」(審判請求書 4.本願発明と引用文献との対比の第2?5段落) 上記請求人の主張によれば、「メサ型モールド特有の、メサ型モールドが湾曲することにより残膜ムラが生じるという問題」は、「封止カバー9」を用いるに際して生じる「封止カバー9」特有の問題であると認められる。 しかしながら、先願発明は「封止カバー9」を用いるものではなく、本願発明も「封止カバー9」を用いると特定するものではない(むしろ、「封止カバー9」を用いないものと解される。)。 また、「封止カバー9」を用いない先願発明及び本願発明では、その作用から見て、メサ型でも非メサ型でも同様の効果を奏し得ることは、当業者には明らかである。 したがって、請求人の主張する「封止カバー9」を用いるに際して生じる「メサ型モールド特有の、メサ型モールドが湾曲することにより残膜ムラが生じるという問題」は、上記(2)アでの、「周知技術の転換であって、新たな効果を奏するものではないから、相違点1は実質的な相違点ではない」との判断を左右するものではない。 (4)小括 以上の検討によれば、本願発明は、先願発明と実質的に同一の発明というべきである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願に係る上記発明をした者と同一の者ではなく、また、本願の出願の時にその出願人が先願の出願人と同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-30 |
結審通知日 | 2016-05-31 |
審決日 | 2016-06-13 |
出願番号 | 特願2011-51031(P2011-51031) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関口 英樹 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 井口 猶二 |
発明の名称 | ナノインプリント方法およびそれに用いられるナノインプリント装置 |
代理人 | 柳田 征史 |
代理人 | 佐久間 剛 |