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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1317608
審判番号 不服2015-14339  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-30 
確定日 2016-07-28 
事件の表示 特願2013-214880「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日出願公開、特開2015- 77188〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月15日の出願であって、平成27年2月10日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年4月6日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成27年5月1日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成27年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。

第2 平成27年7月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年7月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
遊技の進行又は演出の実行に用いられる動力を発生する動力発生手段と、
前記動力発生手段に電力を供給するための電力線と接続され、当該電力線に電力を供給して当該動力発生手段の動作を制御する制御基板と、
前記動力発生手段に接続されたアース線とを備え、
前記制御基板は、遊技者の利益に関する処理を実行する制御基板である、遊技機。」
から、
「【請求項1】
遊技の進行に用いられる動力を発生する動力発生手段と、
前記動力発生手段に電力を供給するための電力線と接続され、当該電力線に電力を供給して当該動力発生手段の動作を制御する制御基板と、
前記動力発生手段に接続され、電気抵抗手段を有するアース線とを備え、
前記制御基板は、遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定処理を実行する制御基板である、遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

2 補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「動力発生手段」に関して「遊技の進行又は演出の実行に用いられる」を「遊技の進行に用いられる」と限定し、「アース線」に関して「電気抵抗手段を有する」点を限定し、「制御基板」に関して「遊技者の利益に関する処理を実行する」を「遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定処理を実行する」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2010-81976号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

「【0053】
(制御手段の内部構成)
図10に遊技機1の制御手段の内部構成を示すが、ここに示すように制御手段200は、主に主制御基板201、副制御基板202、賞球制御基板203、及びランプ制御基板206の複数の制御基板から構成されている。
【0054】
主制御基板201は、台に電源が入れられている状態にあっては、遊技機1の遊技に関する基本動作を制御し、ROM201bに記憶されたプログラムに基づき、遊技内容の進行に伴う基本処理を実行するCPU201aや、CPU201aの演算処理時におけるデータのワークエリアとして機能するRAM201c等を備える。主制御基板201は、第1始動口105、もしくは第2始動口120への遊技球の入球を契機として、大当たり抽選を行うと共に、その抽選結果に基づいてROM201bに記憶されている演出に係わるコマンドの選択を行う。
【0055】
主制御基板201の入力側には、第1始動口105に遊技球が入球したことを検出する第1始動口検出部221と、第2始動口120に遊技球が入球したことを検出する第2始動口検出部225と、入賞ゲート106を遊技球が通過したことを検出するゲート検出部222と、普通入賞口107に入球した遊技球を検出する普通入賞口検出部223と、大入賞口装置9に入球した遊技球を検出する大入賞口検出部224と、が接続されている。
【0056】
主制御基板201の出力側には、役物作動装置231が接続されている。本実施形態においては、上記役物作動装置231を、回転部材91を回転させる駆動モータ92aと、第2始動口120を開閉させる第2始動口開閉ソレノイド120bとによって構成している(図11参照)。
【0057】
役物作動装置231は、主制御基板201によって制御され、大当たり遊技(長当たり遊技、短当たり遊技)時に駆動モータ92aに通電して回転部材91を回転させて大入賞口93を開放させ、また、上記普通図柄の当選によって第2始動口開閉ソレノイド120bに通電して第2始動口120を開閉する。」

上記の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。
「回転部材91を回転させて大入賞口93を開放させる駆動モータ92aと、
駆動モータ92aと第2始動口開閉ソレノイド120bとによって構成する役物作動装置231と接続され、大当たり遊技時に駆動モータ92aに通電して回転部材91を回転させて役物作動装置231を制御する主制御基板201とを備え、
主制御基板201は、大当たり抽選を行う遊技機1。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明において、「大入賞口93」は遊技の進行に用いられるものであり、「駆動モータ92a」は動力を発生させるものであるから、刊行物1発明の「回転部材91を回転させて大入賞口93を開放させる駆動モータ92a」は、本願補正発明の「遊技の進行に用いられる動力を発生する動力発生手段」に相当する。

イ 刊行物1発明において、「駆動モータ92a」は、主制御基板201と接続され、大当たり遊技時に通電して制御されるものであるから、駆動モータ92aが電力を供給するための電力線と接続されるとともに、主制御基板201が電力線に電力を供給することは自明な事項である。
よって、刊行物1発明の「駆動モータ92aと第2始動口開閉ソレノイド120bとによって構成する役物作動装置231と接続され、大当たり遊技時に駆動モータ92aに通電して回転部材91を回転させて役物作動装置231を制御する主制御基板201」は、本願補正発明の「動力発生手段に電力を供給するための電力線と接続され、当該電力線に電力を供給して当該動力発生手段の動作を制御する制御基板」に相当する。

ウ 刊行物1発明において、「大当たり抽選」は、遊技者に所定の利益を付与する特別遊技(大当たり)を行うか否かの判定処理といえるから、刊行物1発明の「主制御基板201は、大当たり抽選を行う」点は、本願補正発明の「前記制御基板は、遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定処理を実行する制御基板である」点に相当する。

エ したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「遊技の進行に用いられる動力を発生する動力発生手段と、
前記動力発生手段に電力を供給するための電力線と接続され、当該電力線に電力を供給して当該動力発生手段の動作を制御する制御基板と、
前記制御基板は、遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定処理を実行する制御基板である、遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、動力発生手段に接続され、電気抵抗手段を有するアース線を備えるのに対し、刊行物1発明は、そのような発明特定事項を備えていない点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
遊技機の技術分野において、モータ等の動力発生手段にアース線を接続して静電気を外部に放電する点は、本願出願前において周知技術である(例えば、特開2002-166024号公報の段落【0002】?【0004】、【0010】における変動入賞装置44の開閉体44aを駆動する電磁ソレノイド70にアース線80を結線した点、特開2002-45540号公報の段落【0003】、【0004】、【0015】の揺動モータ7の各端子36がフレームグランド(金属フレーム37)に接地(アース)されている点、及び特開2003-260179号公報の段落【0002】、【0030】のホッパ86のモータ22で発生した電気的ノイズがアース線を介して放電される点を参照のこと。以下、周知技術Aという。)。
さらに、遊技機の技術分野において、静電気を外部に放電するアース線に電気抵抗手段を設けることも、本願出願前において周知技術である(例えば、特開2003-260251号公報の段落【0027】、【0028】の接地線G1に抵抗器である電荷消費手段300を接続する点、特開2004-33408号公報の【請求項1】、【0043】?【0047】の接地対象部材から延在するアース線を抵抗を介して接地する点、及び特開2002-219262号公報の段落【0009】、【0013】の電磁ソレノイド70のヨーク71?73にアース線を抵抗器を介して接続した点を参照のこと。以下、周知技術Bという。)。
よって、刊行物1発明に、周知技術A、Bを適用し、駆動モータ92aに電気的抵抗を有するアース線を接続し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

請求人は、審判請求書において、本発明は、遊技者の利益に影響しない演出に関する処理を行う制御基板(演出制御基板)ではなく、特別遊技(大当り遊技)を実行するか否かを決定する非常に重要な処理(遊技者の利益に直結する大当り抽選処理)を行う制御基板(メイン制御基板)が電力を供給する動力発生手段をアースする(以下、本発明の特徴1という)と共に、このアースを行うためのアース線に電気抵抗素子を設置します(以下、本発明の特徴2という)であり、引用文献1?9には本発明の特徴1および2が開示されていない旨主張する(第2頁第22行?第4頁第17行)。
確かに、引用文献1?9のそれぞれの文献は、特別遊技を実行するか否かを決定する処理を行う制御基板が電力を供給する動力発生手段をアースするという特徴1をすべて開示するものではない。
しかしながら、少なくとも引用文献3(特開2003-260251号公報)は、アース線に電気抵抗素子を設置するという特徴2を開示するものである。
そして、特徴1及び特徴2を有する本願補正発明は、上記のとおり、刊行物1発明に周知技術A、Bを適用することにより当業者が容易になし得たものである。
よって、請求人の主張は採用できない。

ウ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明及び周知技術A、Bから予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明及び周知技術A、Bに基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成27年4月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
遊技の進行又は演出の実行に用いられる動力を発生する動力発生手段と、
前記動力発生手段に電力を供給するための電力線と接続され、当該電力線に電力を供給して当該動力発生手段の動作を制御する制御基板と、
前記動力発生手段に接続されたアース線とを備え、
前記制御基板は、遊技者の利益に関する処理を実行する制御基板である、遊技機。」

2 刊行物
刊行物1及びその記載事項並びに刊行物1発明は、上記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
(1)対比
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から「動力発生手段」に関して「遊技の進行に用いられる」を「遊技の進行又は演出の実行に用いられる」とし、「アース線」に関して「電気抵抗手段を有する」との限定を省き、「制御基板」に関して「遊技者に所定の利益を付与する特別遊技を行うか否かの特別遊技判定処理を実行する」との限定を省いて「遊技者の利益に関する処理を実行する」とするものである。

本願発明と刊行物1発明とを対比する。
ア 刊行物1発明の「回転部材91を回転させて大入賞口93を開放させる駆動モータ92a」は、本願発明の「遊技の進行又は演出の実行に用いられる動力を発生する動力発生手段」に相当する。

イ 刊行物1発明において、大当たり抽選は遊技者の利益に関する処理といえるから、刊行物1発明の「主制御基板201は、大当たり抽選を行う」点は、本願発明の「遊技者の利益に関する処理を実行する」点に相当する。

そして、上記「第2 3(2)」における検討を踏まえると、本願発明と刊行物1発明とは、
「遊技の進行又は演出の実行に用いられる動力を発生する動力発生手段と、
前記動力発生手段に電力を供給するための電力線と接続され、当該電力線に電力を供給して当該動力発生手段の動作を制御する制御基板と、
前記制御基板は、遊技者の利益に関する処理を実行する制御基板である、遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1’]
本願発明は、動力発生手段に接続されたアース線を備えるのに対し、刊行物1発明は、そのような発明特定事項を備えていない点。

(2)判断
上記相違点1’について検討すると、上記「第2 3(3)」で述べたとおり、遊技機の技術分野において、モータ等の動力発生手段にアース線を接続して静電気を外部に放電する点は、本願出願前において周知技術(周知技術A)である。
よって、刊行物1発明に周知技術Aを適用し、上記相違点1’に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-27 
結審通知日 2016-05-31 
審決日 2016-06-13 
出願番号 特願2013-214880(P2013-214880)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 清藤 弘晃
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

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