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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1317623
審判番号 不服2014-11567  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-18 
確定日 2016-08-05 
事件の表示 特願2008-254205「アルカリでゲル化させるコンニャク利用食品用の糊化物、それから得られたコンニャク利用食品およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月15日出願公開、特開2010- 81867〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年9月30日の出願であって、平成26年3月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月18日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。
その後、当審において平成28年3月11日付けで拒絶の理由を通知したところ、同年5月11日付けで審判請求人から意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成28年5月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌し、それらが糊化物となるとなるまでの混合直後から数分間の間に食品原料素材を添加し、コンニャク精粉の糊化反応を進ませて均一な糊化物として、アルカリ処理によりゲル化させるコンニャク利用食品に用いるための糊化物を製造する方法であって、
前記の食品原料素材は、
穀粉、でんぷん類、食物タンパク類、多糖類、水溶性または難溶性繊維類、果実、野菜、魚肉および畜肉からなる群から選ばれた1種または2種以上からなる、その性状が固体状、スラリー状または液状である吸水させた状態であり、かつ、
前記の得られた糊化物が、コンニャク粉と水との重量比が、水100重量部に対し、コンニャク粉1.0から4重量部の範囲であって、食品原料素材の含有量が5.1から32.6重量%の範囲になるように、
添加されることを特徴とする方法。」

第3 引用文献
1.当審の拒絶の理由に引用された特開昭62-220166号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。)

(a)「2.特許請求の範囲
1.こんにゃく粉と澱粉又は小麦粉等の澱粉含有物とを水に加え、混合攪拌し、のり状となった時水酸化カルシウム又は炭酸ソーダ溶液を添加した後、細線状に成形凝固させることを特徴とするこんにゃく食品の製造法。」(1頁左欄3行?8行)

(b)「〔産業上の利用分野〕
本発明はこんにゃくの弾力性食感を備え、麺様の歯応え、舌触りを有する新規こんにゃく食品の製造法に関するものである。」(1頁左欄10行?13行)

(c)「〔従来の技術〕
こんにゃくは我が国特有の食品であり、弾力性の歯応えと、特異の風味が好まれ広く愛好されている食品である。
現在我々が親しんでいるこんにゃく食品としては、板こんにゃく、糸こんにゃく等がある。
これらのこんにゃく食品の製法は、容器中の所要量の温湯に、湯の2?3%位のこんにゃく粉を徐々に入れ、攪拌してから放置し、こんにゃく粉に充分水を吸収させる。これを捏ねて、のり状となりコロイド化した時、石灰乳又は炭酸ソーダ溶液を加え、よく掻き混ぜて型箱に入れ凝固させ所定の大きさに切り、温湯に入れ加熱して板こんにゃくとする。また、糸こんにゃくは、板こんにゃくの方法と同様にして石灰乳を加えた後、多数の細孔から押出し凝固させて糸状のこんにゃくを製造している。」(1頁左欄14行?右欄10行)

(d)「〔問題点を解決するための手段〕
本発明はこんにゃく粉と澱粉又は小麦粉等の澱粉含有物とを水に加え、混合攪拌し、のり状となった時水酸化カルシウム又は炭酸ソーダ溶液を添加した後、細線状に成形凝固させることを特徴とするこんにゃく食品の製造法である。
本発明に使用するこんにゃく粉は、一般のこんにゃく食品の原料とするこんにゃく粉であり、これは、こんにゃく芋を粉砕し、精製したものである。
澱粉又は小麦粉等の澱粉含有物も一般の食品の原料として用いられる澱粉、小麦等を粉砕し、精製したものである。
こんにゃく粉と澱粉又は小麦粉等を水に加える場合は水に対しこんにゃく粉は約3重量部、澱粉又は小麦粉等はこんにゃく粉1重量部に対し約0.1?3重量部になるように加える。
添加の仕方は、操作条件により適宜の方法が採用される。例えば、こんにゃく粉を水に溶いて、水を入れた容器に入れた後、澱粉又は小麦粉等を水に溶いて加える添加方法、こんにゃく粉と澱粉、小麦粉等を同一の水に溶いて加える添加方法、こんにゃく粉と澱粉又は小麦粉等をそのまま所定量容器中の水に加える添加方法などが採用される。
しかし、こんにゃく粉と澱粉又は小麦粉等を別々に水に溶いて、別々に加える方法が好適である。」(2頁左上欄8行?右上欄13行)

(e)「〔実施例〕
24lの水を入れた容器に、こんにゃく粉700gを水に溶いた液を混合しつつ加えた後直ちに澱粉1000gを水に溶いた液を加え、10分ぐらい混合しのり状にする。これを、常温で1時間半ぐらい放置する。その後、これに水酸化カルシウム水溶液を混合し、スネークポンプで押し出す。目皿で細線状とし、70?80℃の湯に通して製品とする。」(2頁左下欄14行?右下欄1行)

(f)「〔発明の効果〕
本発明により得られたこんにゃく食品はこんにゃく特有の風味とその弾力性が適度に可塑化され、舌触り、歯応えが麺様となった線状の独特の食品であり、そのまま喫食することができるものである。更にまた、こんにゃくの有する離水性が減少し、本製品を容器に収納しその上にたれ、調味料等を置いて販売し、インスタント食品として一般の需要に応ずることができ、我々の食生活を豊かにする利点がある。」(2頁右下欄2行?11行)

上記(a)に記載されたこんにゃく食品の製造法についての具体的な手順が上記(e)に記載されているところ、該記載(e)の「のり状にする」までの手順により、のり状の物が製造されていることは明らかである。そうすると、引用文献には、該のり状の物を製造する方法について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「こんにゃく粉と澱粉とを水に加え、混合攪拌し、のり状となった時水酸化カルシウムを添加した後、細線状に成形凝固させるこんにゃく食品の製造法において、
24lの水を入れた容器に、こんにゃく粉700gを水に溶いた液を混合しつつ加えた後直ちに澱粉1000gを水に溶いた液を加え、10分ぐらい混合しのり状にする、
のり状の物を製造する方法。」

第4 対比
引用発明の「のり状の物」は、「のり状となった時水酸化カルシウムを添加した後、細線状に成形凝固させるこんにゃく食品の製造法」に使用される物であることから、本願発明の「アルカリ処理によりゲル化させるコンニャク利用食品に用いるための糊化物」に相当する。
引用発明の「こんにゃく粉」は、本願発明の「コンニャク精粉」に相当し、引用発明の「24lの水を入れた容器に、こんにゃく粉700gを水に溶いた液を混合しつつ加え」は、本願発明の「コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌し」に相当する。
引用発明の「澱粉1000gを水に溶いた液」は、本願発明の「穀粉、でんぷん類、食物タンパク類、多糖類、水溶性または難溶性繊維類、果実、野菜、魚肉および畜肉からなる群から選ばれた1種または2種以上からなる、その性状が固体状、スラリー状または液状である吸水させた状態」である「食品原料素材」に相当する。
引用発明において、「澱粉1000gを水に溶いた液を加え」ることは、本願発明の「食品原料素材を添加し」に相当し、そのタイミングについて、引用発明の「24lの水を入れた容器に、こんにゃく粉700gを水に溶いた液を混合しつつ加えた後直ちに」は、本願発明の「コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌し、それらが糊化物となるとなるまでの混合直後から数分間の間に」に相当する。
引用発明の「10分ぐらい混合しのり状にする」は、本願発明の「コンニャク精粉の糊化反応を進ませて均一な糊化物とし」に相当する。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「コンニャク精粉を水または温湯と混合撹拌し、それらが糊化物となるとなるまでの混合直後から数分間の間に食品原料素材を添加し、コンニャク精粉の糊化反応を進ませて均一な糊化物として、アルカリ処理によりゲル化させるコンニャク利用食品に用いるための糊化物を製造する方法であって、
前記の食品原料素材は、
穀粉、でんぷん類、食物タンパク類、多糖類、水溶性または難溶性繊維類、果実、野菜、魚肉および畜肉からなる群から選ばれた1種または2種以上からなる、その性状が固体状、スラリー状または液状である吸水させた状態である方法。」

[相違点]
本願発明は、食品原料素材が「得られた糊化物が、コンニャク粉と水との重量比が、水100重量部に対し、コンニャク粉1.0から4重量部の範囲であって、食品原料素材の含有量が5.1から32.6重量%の範囲になるように、添加される」のに対し、引用発明は、24lの水を入れた容器に、こんにゃく粉700gを水に溶いた液を加え、澱粉1000gを水に溶いた液を加える点。

第5 判断
引用文献には、記載(d)に、こんにゃく粉と澱粉を水に加える場合の配合割合として、水に対しこんにゃく粉は3重量部、澱粉はこんにゃく粉1重量部に対し0.1?3重量部になるように加えることが記載されている。なお、ここで、水の重量部が明記されていないが、記載(c)に湯の2?3%位のこんにゃく粉を入れることが記載されていることや、記載(e)の水24lにこんにゃく粉700gを水に溶いた液を混合している実施例では、水100重量部に対しこんにゃく粉は2.9重量部程度よりも小さくなること、を踏まえると、上記記載(d)における水の重量部について、水100重量部に対しこんにゃく粉3重量部を加えるとの趣旨であることが明らかである。
そうすると、引用文献には、水100重量部に対し、こんにゃく粉は3重量部、澱粉は0.3?9重量部になるように加えることが記載されている。
この場合、澱粉の含有量は、0.29%?8.04%となる。
そして、上記記載(e)の〔実施例〕は、具体的な実施例の一つを示したものであって、水、こんにゃく粉、澱粉の配合割合が、ここに記載されたとおりでなければならないというものではないから、引用発明において、水、こんにゃく粉、澱粉の配合割合を、上記記載(d)に開示された範囲で適宜に調節することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、澱粉の含有量は最大で8.04%であるから、このとき、得られた糊化物は、「コンニャク粉と水との重量比が、水100重量部に対し、コンニャク粉1.0から4重量部の範囲であって、食品原料素材(澱粉)の含有量が5.1から32.6重量%の範囲」となる。
よって、相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

また本願発明が、引用発明及び引用文献に記載された事項から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-07 
結審通知日 2016-06-08 
審決日 2016-06-22 
出願番号 特願2008-254205(P2008-254205)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 弘樹上條 肇滝口 尚良  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 山崎 勝司
紀本 孝
発明の名称 アルカリでゲル化させるコンニャク利用食品用の糊化物、それから得られたコンニャク利用食品およびその製造方法  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 須藤 阿佐子  

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