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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1317686
審判番号 不服2014-21588  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-24 
確定日 2016-08-03 
事件の表示 特願2011-534377「エチレンとα-オレフィンの弾性共重合体製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月14日国際公開,WO2010/053264,平成24年 3月29日国内公表,特表2012-507589〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年10月19日(パリ条約による優先権主張:2008年11月 5日及び2009年 9月 2日,ともに大韓民国)を国際出願日とする特許出願であって,平成25年12月19日付けで拒絶理由の通知がなされ,平成26年 3月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年 6月26日付けで拒絶査定がなされ,同査定の謄本は同年 7月 1日に請求人に送達された。これに対して,同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正書が提出され,同年12月26日付けで特許法第164条第3項の報告がなされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年10月24日付け手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成26年10月24日付け手続補正書による手続補正(以下,「本願補正」という。)は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の一部を補正しようとするものである。このうち,本願補正の前後の請求項1は以下のとおりである。

(本願補正前)
「 単一反応器または直列若しくは並列式の二段反応用連続反応器内において、下記化学式1の遷移金属化合物触媒を含む触媒組成物の存在下に、80?140℃の反応温度でエチレンとC3-C18のα-オレフィン共単量体とを溶媒中で共重合させて、共重合体中のC3‐C18のα‐オレフィンの含量が10重量%?45重量%、分子量分布(Mw/Mn)が1.5?3.0、密度が0.850?0.900g/ccであるエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する方法。
[化学式1]

前記式で、Mは周期律表上4族の遷移金属であり;
Cpは中心金属Mとη^(5)-結合することができるシクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環であり、前記シクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環は(C1-C20)アルキル、(C6-C30)アリール、(C2-C20)アルケニル及び(C6-C30)アリール(C1-C20)アルキルから選択される一つ以上にさらに置換されることができ;
R^(1)からR^(4)は互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたはニトロであるか、或いは前記R^(1)からR^(4)は融合環を含む若しくは含まない(C3-C12)アルキレンまたは(C3-C12)アルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて脂環族環又は単一環若しくは多環の芳香族環を形成することができ;
Ar^(1)は(C6-C30)アリールまたはN、O及びSから選択された一つ以上を含む(C3-C30)ヘテロアリールであり;
X^(1)はハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたは
【化1】

であり;
X^(2)は

であり;
R^(11)からR^(15)は互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたはニトロであるか、或いは前記R^(11)からR^(15)は融合環を含む若しくは含まない(C3-C12)アルキレンまたは(C3-C12)アルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて脂環族環又は単一環若しくは多環の芳香族環を形成することができ;
前記R^(1)からR^(4)、R^(11)からR^(15)及びX^(1)のアルキル、アリール、シクロアルキル、アルアルキル、アルコキシ、アルキルシロキシ、アリールシロキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルチオ若しくはアリールチオ;R^(1)からR^(4)またはR^(11)からR^(15)のそれぞれがアルキレンまたはアルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて形成された環;、又は、前記Ar^(1)とAr^(11)のアリールまたはヘテロアリールは、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオ、ニトロ及びヒドロキシから選択される一つ以上にさらに置換されることができる。」

(本願補正後)
「 単一反応器または直列若しくは並列式の二段反応用連続反応器内において、前記反応器の温度を80?140℃とした後、下記化学式1の遷移金属化合物触媒と、アルミノキサン化合物、アルキルアルミニウム化合物、ホウ素化合物及びこれらの混合物から選択される助触媒とを、遷移金属M:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比基準で1:0.5?50:1?1,000の割合で含む触媒組成物の存在下に、エチレンとC3-C18のα-オレフィン共単量体とを溶媒中で共重合させて、共重合体中のC3-C18のα-オレフィンの含量が10重量%?45重量%、分子量分布(Mw/Mn)が1.5?3.0、密度が0.850?0.900g/ccであるエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する方法。
([化学式1]以下は不変のため略。)

2.新規事項の追加の有無及び補正の目的
前記補正のうち,「前記反応器の温度を80?140℃とした後、」の事項は,補正前の請求項1に記載された「80?140℃の反応温度」を具体的に特定するものであり,また,「アルミノキサン化合物、アルキルアルミニウム化合物、ホウ素化合物及びこれらの混合物から選択される助触媒とを、遷移金属M:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比基準で1:0.5?50:1?1,000の割合で(含む)」の事項は,補正前の請求項1に,補正前の請求項5及び同請求項6の記載を追加して特定するものであって,いずれも本願の当初明細書に記載された事項の範囲内であり,かつ,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題も同一である。
よって,本願補正は,新規事項を追加するものではなく,かつ,特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものを含むものである。

3.独立特許要件
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について,以下検討する。

(1)本願補正発明
「 単一反応器または直列若しくは並列式の二段反応用連続反応器内において、前記反応器の温度を80?140℃とした後、下記化学式1の遷移金属化合物触媒と、アルミノキサン化合物、アルキルアルミニウム化合物、ホウ素化合物及びこれらの混合物から選択される助触媒とを、遷移金属M:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比基準で1:0.5?50:1?1,000の割合で含む触媒組成物の存在下に、エチレンとC3-C18のα-オレフィン共単量体とを溶媒中で共重合させて、共重合体中のC3-C18のα-オレフィンの含量が10重量%?45重量%、分子量分布(Mw/Mn)が1.5?3.0、密度が0.850?0.900g/ccであるエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する方法。
[化学式1]

前記式で、Mは周期律表上4族の遷移金属であり;
Cpは中心金属Mとη^(5)-結合することができるシクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環であり、前記シクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環は(C1-C20)アルキル、(C6-C30)アリール、(C2-C20)アルケニル及び(C6-C30)アリール(C1-C20)アルキルから選択される一つ以上にさらに置換されることができ;
R^(1)からR^(4)は互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたはニトロであるか、或いは前記R^(1)からR^(4)は融合環を含む若しくは含まない(C3-C12)アルキレンまたは(C3-C12)アルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて脂環族環又は単一環若しくは多環の芳香族環を形成することができ;
Ar^(1)は(C6-C30)アリールまたはN、O及びSから選択された一つ以上を含む(C3-C30)ヘテロアリールであり;
X^(1)はハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたは
【化1】

であり;
X^(2)は

であり;
R^(11)からR^(15)は互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたはニトロであるか、或いは前記R^(11)からR^(15)は融合環を含む若しくは含まない(C3-C12)アルキレンまたは(C3-C12)アルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて脂環族環又は単一環若しくは多環の芳香族環を形成することができ;
前記R^(1)からR^(4)、R^(11)からR^(15)及びX^(1)のアルキル、アリール、シクロアルキル、アルアルキル、アルコキシ、アルキルシロキシ、アリールシロキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルチオ若しくはアリールチオ;R^(1)からR^(4)またはR^(11)からR^(15)のそれぞれがアルキレンまたはアルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて形成された環;、又は、前記Ar^(1)とAr^(11)のアリールまたはヘテロアリールは、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオ、ニトロ及びヒドロキシから選択される一つ以上にさらに置換されることができる。」

(2)刊行物及びその記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である,国際公開第2007/123362号(原査定の引用文献1。以下,「引用文献」という。)には,以下の事項が記載されている(外国語で記載されているので,翻訳文に相当する特表2009-534517号公報の記載を用いることとする。下線の一部は当審による。)。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属周囲のシクロペンタジエン誘導体、およびオルト位がアリール誘導体で置換された二つのアリールオキシドリガンドを含み、且つ該リガンドが互いに架橋されていない、式1で表されるビス-アリールアリールオキシ遷移金属触媒。
[式1]
【化1】

(式中、Mは周期律表の第4族の遷移金属であり;Cpは中心金属とη^(5) -結合を形成可能なシクロペンタジエニルまたはその誘導体であり;アリールフェノキシドリガンド上のR^(1) 、R^(2) 、R^(3) 、R^(4) 、R^(5 )、R^(6 )、R^(7) 、R^(8) およびR^(9 )はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20の線状または非線状アルキル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20の線状または非線状アルキル基を含むシリル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数6ないし30のアリール基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数7ないし30のアリールアルキル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素原子数3ないし20のアルキル基でまたは炭素原子数6ないし20のアリール基で置換されたシロキシ基、炭素原子数1ないし20の炭化水素基を有するアミド基またはホスフィド基、または炭素原子数1ないし20のアルキル基で置換されたメルカプト基またはニトロ基であり、そしてこれらの置換基は互いに所望により結合して環を形成することもでき;そしてXはハロゲン原子、Cp誘導体以外の炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数7ないし30のアリールアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素原子数3ないし20のアルキル基で置換されたシロキシ基、および炭素原子数1ないし20の炭化水素基を有するアミド基よりなる群から選ばれる。)
【請求項6】
遷移金属周囲のシクロペンタジエン誘導体、およびオルト位がアリール誘導体で置換された二つのアリールオキシドリガンドを含み、且つ該リガンドが互いに架橋されていない、式1で表されるビス-アリールアリールオキシ遷移金属触媒、およびアルミノキサン助触媒またはホウ素化合物助触媒を含んでなる、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造するためのビス-アリールアリールオキシ触媒系。
[式1]
【化2】

(式中、Mは周期律表の第4族の遷移金属であり;Cpは中心金属とη^(5) -結合を形成可能なシクロペンタジエニルまたはその誘導体であり;アリールフェノキシドリガンド上のR^(1) 、R^(2) 、R^(3) 、R^(4) 、R^(5 )、R^(6 )、R^(7) 、R^(8) およびR^(9 )はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20の線状または非線状アルキル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20の線状または非線状アルキル基を含むシリル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数6ないし30のアリール基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数7ないし30のアリールアルキル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素原子数3ないし20のアルキル基でまたは炭素原子数6ないし20のアリール基で置換されたシロキシ基、炭素原子数1ないし20の炭化水素基を有するアミド基またはホスフィド基、または炭素原子数1ないし20のアルキル基で置換されたメルカプト基またはニトロ基であり、そしてこれらの置換基は互いに所望により結合して環を形成することもでき;そしてXはハロゲン原子、Cp誘導体以外の炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数7ないし30のアリールアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素原子数3ないし20のアルキル基で置換されたシロキシ基、および炭素原子数1ないし20の炭化水素基を有するアミド基よりなる群から選ばれる。)
【請求項9】
前記ホウ素化合物助触媒は、中心金属:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比が1:0.5?5:25?500となるようにアルミノキサンまたは有機アルキルアルミニウムとの混合物中で使用される、請求項6に記載のビス-アリールアリールオキシ触媒系。
【請求項11】
請求項6のビス-アリールアリールオキシ触媒系を使用してエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する方法であって、
エチレンとの重合用のコモノマーα-オレフィンは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、そしてエチレン/α-オレフィン共重合体中のエチレン含量は60質量%を越える方法。
【請求項12】
請求項1のビス-アリールアリールオキシ遷移金属触媒を使用してエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する方法であって、
リアクター内のエチレンモノマーの圧力が10?150気圧であり、そしてエチレンモノマーの重合が80?250℃で行なわれる方法。」

イ.「【0014】
本発明の他の側面として、前記遷移金属触媒系を使用するエチレン重合体の製造方法は、適切な有機溶剤の存在下に前記遷移金属触媒、前記助触媒、およびエチレンモノマーまたは必要に応じてビニルコモノマーを互いに接触させることにより行われる。この際、遷移金属触媒と助触媒成分は別々に反応器内に添加してもよい。あるいは、予め製造したそれらの混合物を反応器に添加してもよい。この場合、添加順序、温度または濃度などの混合条件は特に限定されない。
前記製造方法において使用することができる好ましい有機溶剤は、炭素原子数3ないし20の炭化水素であり、その具体例は、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを含む。
とりわけ、エチレン単独重合体として高密度ポリエチレン(HDPE)の製造の際には、モノマーとしてエチレンを単独で使用し、本発明に適するエチレンの圧力は好ましくは1?1000気圧であり、さらに好ましくは10?150気圧である。また、エチレンの重合反応は、温度60℃?300、好ましくは80℃?250℃で行なわれる。
エチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する場合には、3個?18個の炭素原子を有するα-オレフィンをエチレンと共にコモノマーとして使用することができ、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、および1-オクタデセンよりなる群から選択することができる。より好ましくはエチレンを1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、または1-デセンと共重合させることができる。この場合、エチレンの好ましい圧力および重合温度は、高密度ポリエチレン(HDPE)の製造について上で述べたものと同一であり、本発明の方法によって製造されたエチレン共重合体は、通常、60質量%を越える、好ましくは75質量%のエチレン含有率を有する。上記のコモノマーとしてC4?C10α-オレフィンを使用して製造された線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、0.910g/cc?0.940g/ccの範囲の密度を有し、そして本発明の方法は0.910g/cc未満の密度を有する非常な低密度または超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)の製造のために用いることもできる。また、本発明のエチレン単独重合体または共重合体の製造の際に、水素を、重合体の分子量調節剤として使用することができ、そして重合体は、通常、50000?500000g/mol の重量平均分子量(Mw)を有する。
本発明において提案された触媒系は、反応器内で均一形態で存在するため、当該重合体の溶融点以上の温度で行う溶液重合方法に好ましく使用される。しかしながら、米国特許第4,752,597号明細書に開示されているように、多孔性金属酸化物支持体に前記遷移金属触媒および助触媒を支持させることにより形成された不均一触媒系も、スラリー重合または気相重合方法に使用することができる。」

ウ.「【0030】
実施例8
エチレンと1-オクテンとの共重合を、高温において連続重合装置を使用して行った。触媒、反応溶剤およびモノマーを含む全ての反応出発物質は、計量ポンプにより反応器に連続的に供給し、重合された反応生成物からの未反応のモノマーの除去および重合体の回収も連続的に行った。重合溶剤としては、シクロヘキサンを使用し、出発物質を下記の流量条件:総溶液流量5.0kg/時間、エチレン流量0.4kg/時間、および1-オクテン流量0.08kg/時間、の下で反応器に供給した。また、反応器は、圧力110kg/cm^(2) および温度150℃に維持した。触媒として、製造例5において合成したビス(2-フェニルフェノキシ)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン(IV)クロリド(0.7mMトルエン溶液)を30mmoLTi/時間流量で供給し、助触媒として、3.2mMトリフェニルメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(99%、ボウルダーサイエンティフィック社製)トルエン溶液を、流量60mmoL/時間で供給した。反応器内の不純物を除去するためおよび触媒をアルキル化するための試薬として、31.5mM変性メチルアルミノキサン-7(アクゾノーベル社製、変性MAO-7、7質量%、Alイソパー溶液)トルエン溶液を、触媒と接触させた後、流量0.45mmoL/時間で反応器に供給した。反応器からの反応物溶出液に、流量5.2mmoL/時間でペラルゴン酸を加えて触媒を非活性化し、未反応モノマーと溶剤を除去して重合体を得た。ガスクロマトグラフィーにより測定した重合体へのエチレンの転換率は95%であり、触媒活性は12.7kg-PE/mmoL-Tiであった。重合体の分析結果は、重合体はメルトインデックス2.5g/10分、融点108℃、および密度0.909を有することを示した。図3および図4に示されるように、重合体は1-オクテン含量12.9質量%を有し、ゲルクロマトグラフィーを使用して分析したとき、重合体は重量平均分子量(Mw)94000g/moLおよび分子量分布(Mw/Mn)2.3を有していた。」

(3)引用発明
前記(2)ア.の摘示から,引用文献には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 遷移金属周囲のシクロペンタジエン誘導体、およびオルト位がアリール誘導体で置換された二つのアリールオキシドリガンドを含み、且つ該リガンドが互いに架橋されていない、式1で表されるビス-アリールアリールオキシ遷移金属触媒、およびアルミノキサン助触媒またはホウ素化合物助触媒を、中心金属:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比が1:0.5?5:25?500となるように含んでなる、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造するためのビス-アリールアリールオキシ触媒系を使用してエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する方法であって、
エチレンとの重合用のコモノマーα-オレフィンは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、エチレン/α-オレフィン共重合体中のエチレン含量は60質量%を越えるものであり、
リアクター内の圧力が10?150気圧であり、重合が80?250℃で行なわれる方法。
[式1]

(式中、Mは周期律表の第4族の遷移金属であり;Cpは中心金属とη^(5) -結合を形成可能なシクロペンタジエニルまたはその誘導体であり;アリールフェノキシドリガンド上のR^(1) 、R^(2) 、R^(3) 、R^(4) 、R^(5 )、R^(6 )、R^(7) 、R^(8) およびR^(9 )はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20の線状または非線状アルキル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20の線状または非線状アルキル基を含むシリル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数6ないし30のアリール基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数7ないし30のアリールアルキル基、少なくとも一つのハロゲン原子で所望により置換された炭素原子数1ないし20のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素原子数3ないし20のアルキル基でまたは炭素原子数6ないし20のアリール基で置換されたシロキシ基、炭素原子数1ないし20の炭化水素基を有するアミド基またはホスフィド基、または炭素原子数1ないし20のアルキル基で置換されたメルカプト基またはニトロ基であり、そしてこれらの置換基は互いに所望により結合して環を形成することもでき;そしてXはハロゲン原子、Cp誘導体以外の炭素原子数1ないし20のアルキル基、炭素原子数7ないし30のアリールアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素原子数3ないし20のアルキル基で置換されたシロキシ基、および炭素原子数1ないし20の炭化水素基を有するアミド基よりなる群から選ばれる。)」

(4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
まず,触媒成分についてみると,引用発明の「式1で表されるビス-アリールアリールオキシ遷移金属触媒」は,二つのアリールオキシリガンドを含むものであるから,本願補正発明の「化学式1の遷移金属化合物触媒」に相当する。
次に,助触媒成分についてみると,引用発明の「アルミノキサン」,「ホウ素化合物」及び「中心金属:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比が1:0.5?5:25?500となるように含んでなる」は,各々,本願補正発明の「アルミノキサン化合物、アルキルアルミニウム化合物」,「ホウ素化合物」及び「遷移金属M:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比基準で1:0.5?50:1?1,000の割合で含む」に相当する。
また,製造される共重合体の組成についてみると,引用発明の「エチレン含量は60質量%を越える」は,対応するα-オレフィンの含量が40質量%未満であることを意味するから,本願補正発明の「α-オレフィンの含量が10重量%?45重量%」と重複一致している。
さらに,引用文献には,引用発明に係る実施例の一例として,エチレンと1-オクテンとの共重合を,単一の反応器で行うことが示されており(前記(2)ウ.),引用発明に係るエチレンとα-オレフィンとの共重合体が,少なくとも単一反応器内において製造されることは明らかである。
そうすると,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「 単一反応器内において、下記化学式1の遷移金属化合物触媒と、アルミノキサン化合物、アルキルアルミニウム化合物、ホウ素化合物及びこれらの混合物から選択される助触媒とを、遷移金属M:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比基準で1:0.5?50:1?1,000の割合で含む触媒組成物の存在下に、エチレンとC3-C18のα-オレフィン共単量体とを溶媒中で共重合させて、共重合体中のC3-C18のα-オレフィンの含量が10重量%?45重量%であるエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する方法。
[化学式1]

前記式で、Mは周期律表上4族の遷移金属であり;
Cpは中心金属Mとη^(5)-結合することができるシクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環であり;
R^(1)からR^(4)は互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C7-C30)アリールアルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシまたはニトロであり;
Ar^(1)は(C6-C30)アリールまたはN、O及びSから選択された一つ以上を含む(C3-C30)ヘテロアリールであり;
X^(1)はハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C7-C30)アリールアルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシまたは(C6-C30)アリールシロキシであり;
X^(2)は

であり;
R^(11)からR^(14)は、前記R^(1)からR^(4)と同じであり;
R^(15)は、前記Ar^(1)と同じである。」

<相違点1>
本願補正発明は「反応器の温度を80?140℃」としているのに対し,引用発明は「重合が80?250℃で行われる」としている点。
<相違点2>
製造された共重合体の密度について,本願補正発明は「密度が0.850?0.900g/cc」であるのに対し,引用発明はそのような特定を有しない点。
<相違点3>
製造された共重合体の分子量分布について,本願補正発明は「分子量分布(Mw/Mn)が1.5?3.0」であるのに対し,引用発明はそのような特定を有しない点。

(5)相違点に対する判断
ア.相違点1について
引用発明の重合温度は80?250℃であるから,引用発明には,該温度範囲に含まれる80?140℃での重合も含まれるところ,反応器の温度を重合温度に制御しておくことは当然のことであるから,引用発明において,重合温度に応じて,反応器の温度を予め80?140℃にすることは,共重合体製造の技術分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易になし得たことであるといえる。
そして,本願明細書の記載をみても,反応器の温度を予め80?140℃としたことにより顕著な効果があるものとも認められない。

イ.相違点2について
引用文献には,「上記のコモノマーとしてC4?C10α-オレフィンを使用して製造された線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、0.910g/cc?0.940g/ccの範囲の密度を有し」,かつ,「0.910g/cc未満の密度を有する非常な低密度または超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)の製造のために用いることもできる」旨が記載されている(前記(2)イ.)。
ここで,非常な低密度または超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)が,α-オレフィンの含量が10重量%以上のエチレン共重合体であって,かつ,密度が0.900g/ccより小さいものであることは,本願優先日前に周知である(要すれば,「小松 公栄 ほか2名著,メタロセン触媒でつくる新ポリマー,工業調査会発行,1999年 4月20日初版」(以下,「周知技術文献」という。):第65?68頁「第3章 ポリエチレン,3.1 ポリエチレンの概要,(1)ポリエチレンの種類」の欄を参照。)。
したがって,引用発明において,共重合体の密度が0.850?0.900g/ccであることは,共重合体中のC3-C18のα-オレフィンの含量が10重量%以上であることにより,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
そして,本願明細書の記載をみても,密度を前記特定の範囲とすることにより顕著な効果を奏するものとも認められない。

ウ.相違点3について
エチレンとα-オレフィンとの共重合体において,超低密度ポリエチレン(ULDPE)の一種であるプラストマーが,分子量分布が狭く,均一な組成分布をもっていることは,本願優先日前に周知のことである(周知技術文献:第96?98頁「3.4 プラストマーの性質,(1)分子特性」の欄を参照。)
そして,引用文献には,引用発明に係る実施例の一例として,エチレンと1-オクテンとの共重合体であって,分子量分布(Mw/Mn)2.3のものも示されている(前記(2)ウ.)ことも踏まえると,引用発明において,共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.5?3.0であることは,当業者が容易に想到し得たことである。
さらに,本願明細書の記載をみても,分子量分布を特定の範囲とすることにより顕著な効果を奏するものとも認められない。

エ.まとめ
したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(6)小括
以上のとおり,本願補正発明は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであって,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから,前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
平成26年10月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,平成26年 3月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「 単一反応器または直列若しくは並列式の二段反応用連続反応器内において、下記化学式1の遷移金属化合物触媒を含む触媒組成物の存在下に、80?140℃の反応温度でエチレンとC3-C18のα-オレフィン共単量体とを溶媒中で共重合させて、共重合体中のC3‐C18のα‐オレフィンの含量が10重量%?45重量%、分子量分布(Mw/Mn)が1.5?3.0、密度が0.850?0.900g/ccであるエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造する方法。
[化学式1]

前記式で、Mは周期律表上4族の遷移金属であり;
Cpは中心金属Mとη^(5)-結合することができるシクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環であり、前記シクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環は(C1-C20)アルキル、(C6-C30)アリール、(C2-C20)アルケニル及び(C6-C30)アリール(C1-C20)アルキルから選択される一つ以上にさらに置換されることができ;
R^(1)からR^(4)は互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたはニトロであるか、或いは前記R^(1)からR^(4)は融合環を含む若しくは含まない(C3-C12)アルキレンまたは(C3-C12)アルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて脂環族環又は単一環若しくは多環の芳香族環を形成することができ;
Ar^(1)は(C6-C30)アリールまたはN、O及びSから選択された一つ以上を含む(C3-C30)ヘテロアリールであり;
X^(1)はハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたは
【化1】

であり;
X^(2)は

であり;
R^(11)からR^(15)は互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオまたはニトロであるか、或いは前記R^(11)からR^(15)は融合環を含む若しくは含まない(C3-C12)アルキレンまたは(C3-C12)アルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて脂環族環又は単一環若しくは多環の芳香族環を形成することができ;
前記R^(1)からR^(4)、R^(11)からR^(15)及びX^(1)のアルキル、アリール、シクロアルキル、アルアルキル、アルコキシ、アルキルシロキシ、アリールシロキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルチオ若しくはアリールチオ;R^(1)からR^(4)またはR^(11)からR^(15)のそれぞれがアルキレンまたはアルケニレンを介して隣接した置換体と連結されて形成された環;、又は、前記Ar^(1)とAr^(11)のアリールまたはヘテロアリールは、ハロゲン原子、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリール(C1-C10)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C3-C20)アルキルシロキシ、(C6-C30)アリールシロキシ、(C1-C20)アルキルアミノ、(C6-C30)アリールアミノ、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオ、ニトロ及びヒドロキシから選択される一つ以上にさらに置換されることができる。」

第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,本願発明は,引用文献に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。

第5 当審の判断
1.刊行物,刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明
引用文献の記載事項は,前記第2[理由]3.(2)に示したとおりであり,引用発明は,前記第2[理由]3.(3)に示したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は,前記第2で検討した本願補正発明において,「前記反応器の温度を80?140℃とした後」,及び,「アルミノキサン化合物、アルキルアルミノキサン化合物、ホウ素化合物及びこれらの混合物から選択される除触媒とを、遷移金属M,:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比基準で1:0.5?50:1?1,000の割合で(含む)」の限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2[理由]3.(4),(5)に示したとおり,引用発明に基いて容易に発明できたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基いて容易に発明できたものである。

3.むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-03 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-24 
出願番号 特願2011-534377(P2011-534377)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08F)
P 1 8・ 575- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 道弘  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 柴田 昌弘
平塚 政宏
発明の名称 エチレンとα-オレフィンの弾性共重合体製造方法  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  

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