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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1317708
審判番号 不服2015-11703  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-22 
確定日 2016-08-03 
事件の表示 特願2013-221114「統合開発環境を利用したUI実現方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 9日出願公開、特開2014-106966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2012年11月29日(以下,「優先日」という。)の大韓民国における出願を基礎とするパリ条約による優先権主張を伴った,平成25年10月24日を出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年10月24日 :出願審査請求書の提出
平成26年11月 6日付け :拒絶理由の通知
平成27年 2月 4日 :意見書,手続補正書の提出
平成27年 2月19日付け :拒絶査定(同年2月24日謄本送達)
平成27年 6月22日 :審判請求書の提出

2.本願発明
本願の請求項に係る発明は,平成27年2月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されるものであるところ,
その請求項5に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,請求項5に記載された以下のとおりのものと認める。

「ユーザインターフェース部を通じてアプリケーション実行命令を受信する段階と,
送受信部が複数の実行環境で駆動可能な統合コンポーネントを生成するための単一のプログラミング言語で構成されたUI画面制御及び画面構成スクリプトソースを受信する段階と,
コンポーネント生成部が前記スクリプトソースと予めインストールされるか,ダウンロードした現在の実行環境によるエレメントソースを用いて,前記実行環境に独立した統合コンポーネントを生成する段階と
を含む統合開発環境を利用したUI実現方法。」

3.引用文献

(1)引用文献に記載されている技術的事項および引用発明

本願優先日前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である上記平成26年11月6日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2003-216427号公報(平成15年7月31日出願公開,以下,「引用文献」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A.「【0034】本発明の情報処理装置およびイメージ処理装置において,電子文書は,種々の形式を採ることが可能であるが,一例として,XMLで記述された文書(以下,XML文書と呼ぶ)とすることが好ましい。XML文書とは,いわゆるタグを含む,マークアップ言語で記述された文書である。タグは任意に設定可能である。従って,XMLを用いることにより,電子文書に要求される種々のコマンドを,タグの形式で比較的容易に規定することが可能となる。」

B.「【0040】Webサーバ10は,情報処理装置100からのリクエストに応じて,画面定義12,フロー定義14と呼ばれる電子文書を送信する。画面定義12とは,表示画面の内容を規定する電子文書である。フロー定義14とは,画面の遷移など処理の流れを規定する電子文書である。これらの電子文書の内容については,後述する。これらの電子文書は種々の形式を選択可能であるが,本実施例ではXMLで記述されるものとした。」

C.「【0043】情報処理装置100に備えられている各機能ブロックの構成について説明する。情報処理装置100には,所定のオペレーティングシステム上で稼働し,HTML等のマークアップ言語で記述されたファイルを閲覧するためのソフトウェア,Webブラウザ102がインストールされている。各機能ブロックは,このWebブラウザ102上で稼働するように構成されている。本実施例では,JAVA(登録商標)を用いることにより,かかる構成を実現した。Webブラウザ102上で稼働可能としたのは,プラットフォーム非依存のソフトウェア構成が可能であるという利点があるからである。Webブラウザ102と無関係に稼働するよう構成しても構わない。
【0044】ベースアプレット104は,Webブラウザ102の上で稼働し,情報処理装置100の各機能ブロック,実行エンジン120,アプリケーションブラウザ130,メッセージバス140などを稼働するためのプラットフォームを提供する。ベースアプレット104およびこれらの各機能ブロックによって情報処理を実現する全体の機構を,本明細書では,XMLアプリケーションプログラムと称するものとする。本実施例では,これらの機構は,名称の通り,XMLをベースとして構築されているが,XMLアプリケーションプログラムは,広義には,以下で説明する機構の概念を示すものであり,必ずしもXMLベースで構築されているものには限られない。
【0045】ベースアプレット104は,JAVAのアプレットとして構成されている。ベースアプレット104は,その上に構築される各機能ブロックの起動,終了を行う機能,およびコンピュータのキーボード,マウスなどの操作結果(以下,「キーイベント」と称する)を,XMLアプリケーションプログラムの各機能ブロックに受け渡す機能を奏する。」

D.「【0047】アプリケーションブラウザ130は,実行エンジン120によって起動され,画面定義12に従って,画面を表示し,また,この表示画面を通じた操作を実現する。アプリケーションブラウザ130は,Webブラウザとは別のプログラムである。アプリケーションブラウザ130には,GUI部品131a,ロジック部品131bと呼ばれる基本的な機能を実現するソフトウェアが用意されている。GUI部品131aとは,ボタン,線など表示画面を構成する表示要素を生成するためのソフトウェアであり,表示要素の種類に応じて複数用意されている。ロジック部品131bとは,四則演算,入力チェックなど,画面内でのデータに関する処理を実現するためのソフトウェアであり,処理内容に応じて複数用意されている。アプリケーションブラウザ130は,画面定義12に従って,これらの部品を起動させ,表示画面に関する種々の処理を実現する。」

E.「【0063】A-3.画面定義:図4は画面定義の概要を示す説明図である。画面定義12とは,アプリケーションブラウザ130の動作を規定する電子文書であり,本実施例では,XMLで記述される。
【0064】画面定義12の本文は,種々のタグによって,画面の構成や画面で行われる操作内容を規定している。タグは,画面情報,部品情報の2種類に大別される。画面情報とは,画面定義12によって定義される画面に対し,画面IDを与えるタグである。画面定義12は,情報処理装置100で用いられる画面ごとに用意されている。画面IDは,それらの画面を識別するための情報である。
【0065】部品情報は,GUI部品131a,ロジック部品131bを起動するために必要な種々の情報を定義する。GUI部品131aには,文字列表示,文字列入力,画像表示,ボタンなど画面の表示要素を構成する種々のソフトウェアが含まれる。ロジック部品131bには,四則演算,入力条件チェックなど,画面上の操作に関する種々のソフトウェアが含まれる。以下の説明では,混同を回避するため,特に断らない限り,GUI部品131a,ロジック部品131bとして用意されたソフトウェアパッケージを「部品」と称し,これらによって生成された個別の表示要素その他のオブジェクトを,「部品オブジェクト」と称するものとする。
・・・(中略)・・・
【0067】アプリケーションブラウザ130は,画面定義を先頭から順に読み込み,それぞれのタグに従って,処理を実行する。部品ID,部品の位置,大きさなどを指定するそれぞれのタグが見いだされると,アプリケーションブラウザ130は,このタグに従って,各部品を起動するための処理を実行する。この処理によって,画面には,それぞれの部品オブジェクトが表示され,画面上での操作が実現される。なお,図4に示した,タグ,GUI部品131a,ロジック部品131bは,例示に過ぎず,その数および種類は,これらに限定されるものではない。」

F.「【0084】画面生成部134は,画面定義の内容に基づいて表示画面を構成する部品オブジェクトを生成する機能を奏する。画面表示部135は,メイン制御133からの指示に応じて,生成された部品オブジェクトを順次,表示させ,画面を構成する機能を奏する。・・・(後略)・・・」

G.「【0095】A-10.起動処理:以下では,XMLアプリケーションプログラムを起動して,フロー定義等に応じた処理を実行するまでの各段階での手順を説明する。
【0096】図10は起動処理のフローチャートである。この処理は,情報処理装置100においてブラウザが起動している状態で,オペレータがXMLアプリケーションプログラムベースページのURLを入力することにより,開始される。XMLアプリケーションプログラムベースページとは,ベースアプレット104を提供するWebページであり,本実施例ではXMLで記述される。このURLは,情報処理装置100の内部であってもよいし,外部のWebサーバ10であってもよい。
【0097】このURLが入力されると,情報処理装置100は,ブラウザによってXMLアプリケーションプログラムベースページを読み込み(ステップS10),そこで提供されるベースアプレットを起動させる(ステップS11)。ベースアプレットは,図1で説明した通り,XMLアプリケーションプログラムが稼働するためのプラットフォームを提供するソフトウェアである。
【0098】ベースアプレットの機能により,情報処理装置100は,アプリケーションブラウザ130を生成する(ステップS12)。ここで生成されるアプリケーションブラウザ130は,XMLアプリケーションプログラムが起動するためのプラットフォームとしてのブラウザに相当する。アプリケーションブラウザ130は,ベースアプレットで予め指定された初期の画面定義を読み込む(ステップS13)。この初期の画面定義に基づいて生成される画面を「ベース画面」と称する。アプリケーションブラウザ130は,このベース画面上で,実行エンジン120を起動させる(ステップS14)。これにより,XMLアプリケーションプログラムが稼働可能な状態が整ったことになる。」

ここで,上記引用文献に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Cの段落【0045】の「ベースアプレット104は,その上に構築される各機能ブロックの起動,終了を行う機能,およびコンピュータのキーボード,マウスなどの操作結果(以下,「キーイベント」と称する)を,XMLアプリケーションプログラムの各機能ブロックに受け渡す機能を奏する。」との記載,及び,上記Gの段落【0095】の「以下では,XMLアプリケーションプログラムを起動して,フロー定義等に応じた処理を実行するまでの各段階での手順を説明する。」,段落【0096】の「この処理は,情報処理装置100においてブラウザが起動している状態で,オペレータがXMLアプリケーションプログラムベースページのURLを入力することにより,開始される。」との記載からすると,
「情報処理装置」は,「キーボード,マウス」を備えており,XMLアプリケーションプログラムベースページのURLを入力することにより,XMLアプリケーションプログラムの起動処理を開始することが読み取れることから,
引用文献には“キーボード,マウスを通じて,XMLアプリケーションプログラムを起動するためのURLを入力すること”が記載されていると認められる。

(イ)上記Bの「Webサーバ10は,情報処理装置100からのリクエストに応じて,画面定義12,フロー定義14と呼ばれる電子文書を送信する。画面定義12とは,表示画面の内容を規定する電子文書である。」との記載,及び,上記Eの段落【0064】の「画面定義12の本文は,種々のタグによって,画面の構成や画面で行われる操作内容を規定している。」との記載からすると,
前記「情報処理装置」は,画面の構成や操作内容を規定する「画面定義」をWebサーバから受信することが読み取れる。

上記Gの段落【0098】の「アプリケーションブラウザ130は,ベースアプレットで予め指定された初期の画面定義を読み込む(ステップS13)。この初期の画面定義に基づいて生成される画面を「ベース画面」と称する。」との記載からすると,
前記「画面定義」に基づいて画面を生成することが読み取れる。

上記Aの「本発明の情報処理装置およびイメージ処理装置において,電子文書は,種々の形式を採ることが可能であるが,一例として,XMLで記述された文書(以下,XML文書と呼ぶ)とすることが好ましい。XML文書とは,いわゆるタグを含む,マークアップ言語で記述された文書である。タグは任意に設定可能である。従って,XMLを用いることにより,電子文書に要求される種々のコマンドを,タグの形式で比較的容易に規定することが可能となる。」との記載,及び,上記Bの「これらの電子文書は種々の形式を選択可能であるが,本実施例ではXMLで記述されるものとした。」との記載からすると,
前記「画面定義」は,マークアップ言語であるXMLで記述されることが読み取れる。

上記Eの段落【0067】の「アプリケーションブラウザ130は,画面定義を先頭から順に読み込み,それぞれのタグに従って,処理を実行する。」との記載からすると,
前記「画面定義」は,実行可能であることが読み取れる。

したがって,引用文献には“画面を生成するための,実行可能なマークアップ言語であるXMLで記述され,画面の構成や操作内容を規定する,画面定義を受信すること”が記載されていると認められる。

(ウ)上記Eの段落【0064】の「画面定義12の本文は,種々のタグによって,画面の構成や画面で行われる操作内容を規定している。タグは,画面情報,部品情報の2種類に大別される。」,段落【0065】の「部品情報は,GUI部品131a,ロジック部品131bを起動するために必要な種々の情報を定義する。GUI部品131aには,文字列表示,文字列入力,画像表示,ボタンなど画面の表示要素を構成する種々のソフトウェアが含まれる。ロジック部品131bには,四則演算,入力条件チェックなど,画面上の操作に関する種々のソフトウェアが含まれる。」との記載,上記Dの「アプリケーションブラウザ130は,画面定義12に従って,これらの部品を起動させ,表示画面に関する種々の処理を実現する。」との記載からすると,
画面定義は,画面の表示要素を構成するソフトウェアを含むGUI部品と,四則演算や入力条件チェックなどの画面上の操作に関するソフトウェアを含むロジック部品を起動するタグを含むことが読み取れる。

また,上記Gの段落【0098】の「アプリケーションブラウザ130は,ベースアプレットで予め指定された初期の画面定義を読み込む(ステップS13)。この初期の画面定義に基づいて生成される画面を「ベース画面」と称する。」との記載,及び,上記Eの段落【0065】の「GUI部品131a,ロジック部品131bとして用意されたソフトウェアパッケージを「部品」と称し,これらによって生成された個別の表示要素その他のオブジェクトを,「部品オブジェクト」と称するものとする。」,上記Fの「画面生成部134は,画面定義の内容に基づいて表示画面を構成する部品オブジェクトを生成する機能を奏する。」との記載からすると,
「画面生成部」が,前記「画面定義」と,用意されたソフトウェアパッケージである「GUI部品」と「ロジック部品」によって,表示画面を構成する「部品オブジェクト」を生成することが読み取れる。

さらに,上記Cの段落【0043】の「各機能ブロックは,このWebブラウザ102上で稼働するように構成されている。本実施例では,JAVA(登録商標)を用いることにより,かかる構成を実現した。Webブラウザ102上で稼働可能としたのは,プラットフォーム非依存のソフトウェア構成が可能であるという利点があるからである。Webブラウザ102と無関係に稼働するよう構成しても構わない。」,段落【0044】の「ベースアプレット104は,Webブラウザ102の上で稼働し,情報処理装置100の各機能ブロック,実行エンジン120,アプリケーションブラウザ130,メッセージバス140などを稼働するためのプラットフォームを提供する。」,段落【0045】の「ベースアプレット104は,JAVAのアプレットとして構成されている。」との記載からすると,
前記「画面定義」に係る各処理は,プラットフォームやWebブラウザの有無に非依存で実行可能であることが読み取れる。

したがって,引用文献には,
“画面生成部が,前記画面定義と,用意されたソフトウェアパッケージである,画面の表示要素を構成するソフトウェアを含むGUI部品と,四則演算や入力条件チェックなどの画面上の操作に関するソフトウェアを含むロジック部品とによって,プラットフォームやWebブラウザの有無に非依存で実行可能な表示画面を構成する部品オブジェクトを生成する”ことが記載されていると認められる。

(エ)上記Eの段落【0067】の「この処理によって,画面には,それぞれの部品オブジェクトが表示され,画面上での操作が実現される。」との記載,及び,上記Fの「画面表示部135は,メイン制御133からの指示に応じて,生成された部品オブジェクトを順次,表示させ,画面を構成する機能を奏する。」との記載からすると,
引用文献には,“生成された部品オブジェクトを表示して画面を構成する”ことが記載されていると認められる。

(オ)以上,(ア)乃至(エ)で検討した事項を踏まえると,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「キーボード,マウスを通じて,XMLアプリケーションプログラムを起動するためのURLを入力することと,
画面を生成するための,実行可能なマークアップ言語であるXMLで記述され,画面の構成や操作内容を規定する,画面定義を受信することと,
画面生成部が,前記画面定義と,用意されたソフトウェアパッケージである,画面の表示要素を構成するソフトウェアを含むGUI部品と,四則演算や入力条件チェックなどの画面上の操作に関するソフトウェアを含むロジック部品とによって,プラットフォームやWebブラウザの有無に非依存で実行可能な表示画面を構成する部品オブジェクトを生成することと,
生成された前記部品オブジェクトを表示して画面を構成することを含む方法。」

4.参考文献

(1)本願優先日前に頒布され,原審の拒絶査定において引用された,特表2005-515552号公報(平成17年5月26日公表,以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H.「【0001】・・・(中略)・・・
[発明の背景]
XML(Extensible Markup Language)はワールドワイドウェブ(以降「ウェブ」)上の情報リソースの配信及び制作のための完全なプラットフォーム及びシステムに依存しない環境として最初は設計された。XMLは,ウェブ上のコンテンツの普及した制作及び参照方法であるHTML(Hypertext Markup Language)を補強及び場合によっては置き換えを意図したものであった。」

(2)本願優先日前に頒布された,特開2010-277602号公報(平成22年12月9日出願公開,以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

I.「【0017】
すなわち,JavaScript(登録商標)のオブジェクト記法であるJSON(JavaScript ObjectNotation)で記述された処理ロジックをモデル,画面部品をビュー,その他のロジックをコントローラというようにJavaScript(登録商標)にMVCモデルを導入する。」

(3)本願優先日前に頒布された,特開2008-269575号公報(平成20年11月6日出願公開,以下,「参考文献3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

J.「【請求項1】
コンピュータに実行させるプログラムのソースコード及びユーザインタフェース部品を表示画面に表示するためのGUI表示データを生成するソースコード生成装置であって,
前記コンピュータの実行環境にそれぞれ対応し,位置,サイズ,属性などの部品要素情報が異なる前記ユーザインタフェース部品を編集する第1の手段と,編集結果の部品要素情報に基づき指定された実行環境に対応したユーザインタフェース部品のGUI表示データ及び当該GUI表示データを用いてユーザインタフェース部品を表示するためのソースコードを生成して出力する第2の手段を備えることを特徴とするソースコード生成装置。
【請求項2】
GUI表示データによりユーザインタフェース部品を編集画面にプレビューする手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のソースコード生成装置。
【請求項3】
前記実行環境の切り替え操作を受付け,切り替え指定された実行環境におけるユーザインタフェース部品を編集画面に切り替え表示する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のソースコード生成装置。」

(4)本願優先日前に頒布された,特開2010-108370号公報(平成22年5月13日出願公開,以下,「参考文献4」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

K.「【0056】
GUI部品123は,クライアントアプリケーション120の画面上に配置されるテキストボックス,リスト,ボタン,表などの要素である。HTML言語やDojo等のGUIフレームワークにより構成される。」

L.「【0065】
CPU105は,データ取得コード122の実行に基づき,GUI部品123内の設定データを取得するように,当該GUI部品123のGUI部品IDを引数としたデータ取得命令により,フレームワーク110内のデータ取得部112を呼び出して実行する(ST4)。このとき,引数のGUI部品IDは,データ取得対象が複数のGUI部品123ならばGUI部品ID群となる。また,引数のGUI部品IDがGUI部品ID群の場合,以下のステップST5?ST11は,GUI部品IDの個数だけ繰り返し実行される。また,データ取得コード122には,取得対象のGUI部品123の属するGUIフレームワーク(Dojo,Yahoo!UI(User Interface)等)に依存するコードや,GUI部品種別(テキストボックス,コンボボックス等)に依存するコードが存在しない。このため,利用するGUI部品123を変更しても,データ取得コード122の変更は不要である。」

M.「【0089】
上述したように本実施形態によれば,クライアントアプリケーション120を実行中のCPU105から各GUIフレームワークに依存しない各種命令及びGUI部品IDが入力されると,GUI判定部115の実行により,GUI部品IDからGUI部品種別情報及びGUIフレームワーク特定情報を得た後,データ設定方法定義部113又はデータ取得方法定義部114を参照して,得られた設定方法情報又は取得方法情報に基づいて,GUI部品IDにより特定されたGUI部品123にデータ設定又はデータ取得を行う。
【0090】
従って,各GUIフレームワーク間で機能的に同一のGUI部品を用いたクライアントアプリケーション120を開発する際に,GUI部品に対するデータ設定やデータ取得のプログラムの記述については,各GUIフレームワークに依存しない命令を記述すればよいので,GUIフレームワーク固有の変更を解消することができる。
【0091】
補足すると,本実施形態においては,従来とは異なり,利用するGUIフレームワークごとにGUI部品123のデータ入出力方法を変更する必要がないクライアントアプリケーション120を作成することができる。
【0092】
その結果,実現したいアプリケーションの要件に合わせて複数種類の中からGUIフレームワークの選択又はGUIフレームワークのバージョンアップ等が発生しても,アプリケーション120を変更する必要がなく,ユーザの利便性ならびに生産性の向上に寄与することができる。
【0093】
また,本実施形態は,複数のGUIフレームワークを切り替えることができる。
【0094】
(第2の実施形態)
次に,本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態は,Webブラウザで動作するアプリケーション以外にも適用した形態となっている。例えば,Java(登録商標)言語によりGUI画面を作成する場合,利用可能なGUIフレームワークとしては,AWT(Abstract Windowing Toolkit),SwingなどJavaが標準で備えるGUIフレームワークに加えて,第三者が開発したGUIフレームワークが存在する。」

5.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「キーボード,マウス」は,ユーザからの入力を受信するものであるから,本願発明の「ユーザインターフェース部」に相当し,
引用発明の「XMLアプリケーションプログラム」は,アプリケーションの一態様であり,引用発明の「XMLアプリケーションプログラムを起動するためのURL」は,ユーザが,アプリケーションの起動,すなわち,実行を命令するものであるから,本願発明の「アプリケーション実行命令」に相当するから,
引用発明の「キーボード,マウスを通じて,XMLアプリケーションプログラムを起動するためのURLを入力すること」は,本願発明の「ユーザインターフェース部を通じてアプリケーション実行命令を受信する段階」に相当する。

(2)引用発明の「画面を生成するための,実行可能なマークアップ言語であるXMLで記述され,画面の構成や操作内容を規定する,画面定義を受信すること」及び「画面生成部が,前記画面定義と,用意されたソフトウェアパッケージである,画面の表示要素を構成するソフトウェアを含むGUI部と,四則演算や入力条件チェックなどの画面上の操作に関するソフトウェアを含むロジック部品とによって,プラットフォームやWebブラウザの有無に非依存で実行可能な表示画面を構成する部品オブジェクトを生成することと」と,本願発明の「送受信部が複数の実行環境で駆動可能な統合コンポーネントを生成するための単一のプログラミング言語で構成されたUI画面制御及び画面構成スクリプトソースを受信する段階」との両者を対比する。

引用発明の「プラットフォームやWebブラウザの有無に非依存で実行可能な表示画面を構成する部品オブジェクト」は,プラットフォームやWebブラウザの有無がアプリケーションを実行するための環境の一態様といえるから,本願発明の「複数の実行環境で駆動可能な統合コンポーネント」に相当するといえ,そうすると,引用発明の「部品オブジェクトを生成する」ことは,本願発明の「統合コンポーネントを生成する」ことに相当する。
引用発明に特有の「実行可能なマークアップ言語であるXML」は,本願発明の「単一のプログラミング言語」と,単一の実行可能言語であるという点で一致する。
単一の実行可能言語で記述された「画面定義」は,実行可能言語で記述された処理列であり,実行可能スクリプトといえるから,引用発明の「画面の構成や操作内容を規定する,画面定義」は,本願発明の「UI画面制御及び画面構成スクリプトソース」に相当する。

そうすると,前記両者は,後記する点で相違するものの,
“複数の実行環境で駆動可能な統合コンポーネントを生成するための単一の実行可能言語で構成されたUI画面制御及び画面構成スクリプトソースを受信する段階”である点で共通しているといえる。

(3)引用発明の「画面生成部が,前記画面定義と,用意されたソフトウェアパッケージである,画面の表示要素を構成するソフトウェアを含むGUI部品と,四則演算や入力条件チェックなどの画面上の操作に関するソフトウェアを含むロジック部品とによって,プラットフォームやWebブラウザの有無に非依存で実行可能な表示画面を構成する部品オブジェクトを生成すること」と,本願発明の「コンポーネント生成部が前記スクリプトソースと予めインストールされるか,ダウンロードした現在の実行環境によるエレメントソースを用いて,前記実行環境に独立した統合コンポーネントを生成する段階」との両者を対比する。

上記(2)で検討したように,引用発明の前記「部品オブジェクト」,「画面定義」は,それぞれ本願発明の「複数の実行環境で駆動可能な統合コンポーネント」,「UI画面制御及び画面構成スクリプトソース」に相当する。
引用発明の「用意されたソフトウェアパッケージである,画面の表示要素を構成するソフトウェアを含むGUI部品と,四則演算や入力条件チェックなどの画面上の操作に関するソフトウェアを含むロジック部品」は,ソフトウェアパッケージを用意するためには,現在の実行環境へのインストールやダウンロードが必要なことは明らかであるから,本願発明の「予めインストールされるか,ダウンロードした現在の実行環境によるエレメントソース」に相当する。

以上から,引用発明の「画面生成部」は,前記画面定義(UI画面制御及び画面構成スクリプトソース)と,前記GUI部品及び,前記ロジック部品(エレメントソース)とによって,前記部品オブジェクト(統合コンポーネント)を生成するから,本願発明の「コンポーネント生成部」に相当する。

そうすると,前記両者は,一致するといえる。

(4)引用発明の「生成された前記部品オブジェクトを表示して画面を構成すること」は,ユーザインターフェースである画面を構成すること,すなわち,実現することといえるから,本願発明の「UI実現方法」に相当する。

以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)

「ユーザインターフェース部を通じてアプリケーション実行命令を受信する段階と,
複数の実行環境で駆動可能な統合コンポーネントを生成するための単一の実行可能言語で構成されたUI画面制御及び画面構成スクリプトソースを受信する段階と,
コンポーネント生成部が前記スクリプトソースと予めインストールされるか,ダウンロードした現在の実行環境によるエレメントソースを用いて,前記実行環境に独立した統合コンポーネントを生成する段階と
を含むUI実現方法。」

(相違点1)
UI画面制御及び画面構成スクリプトソースを受信する段階に関し,
本願発明では,「送受信部」が受信するのに対して,
引用発明では,「送受信部」が明示されていない点。

(相違点2)
単一の実行可能言語で構成されたUI画面制御及び画面構成スクリプトソースに関し,
本願発明では,スクリプトソースが「プログラミング言語」で記述されているのに対して,
引用発明では,画面定義は,実行可能なマークアップ言語であるXMLで記述されているものの,「プログラミング言語」で構成されたスクリプトとしては記述されていない点。

(相違点3)
UI実現方法に関し,
本願発明では,統合開発環境を利用するのに対して,
引用発明では,「統合開発環境」について特定されていない点。

6.当審の判断

上記相違点1乃至相違点3について検討する。

(1)相違点1について
引用発明では,UI画面制御及び画面構成スクリプトソースを受信するところ,
データを受信するために送受信部を設けることは,情報処理の技術分野において,引用文献等を示すまでもなく,必要に応じて普通に採用される常とう手段であった。
引用発明においても,送受信部が前記スクリプトソースを受信するように構成すること,すなわち,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用発明の「画面定義」は,実行可能なマークアップ言語であるXMLで記述されているところ,
XMLがプラットフォームに依存しないことは,例えば,参考文献1(上記H参照)に記載されているように,本願の優先日前には,情報処理の技術分野において周知の事項であった。
また,画面をJavaScriptのような言語で記述することも,例えば,参考文献2(上記I参照)に記載されているように,本願の優先日前には,情報処理の技術分野において普通に採用される周知技術であった。
そして,実行可能なXMLも,JavaScriptも,その実行エンジンさえ実装されていれば実行環境に依存しない言語であり,引用発明の「画面定義」を記述するためにどのような言語を採用するかは,当業者が適宜選択し得た設計的事項である。
してみると,引用発明に前記周知技術を適用して,「画面定義」をJavaScriptのようなプログラミング言語で記述するように構成すること,すなわち,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
引用発明では,生成された部品オブジェクトを表示して画面を構成するところ,
複数の実行環境に対応して画面データを生成する装置で画面を開発する技術は,例えば,参考文献3(上記J参照)に記載されているように,本願の優先日前には,情報処理の技術分野において普通に採用される周知技術であった。
してみると,引用発明に前記周知技術を適用して,複数の実行環境に統合的に対応する装置で,換言すれば,統合開発環境で,開発した画面を用いる構成すること,すなわち,上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(4)小括

上記で検討したごとく,相違点1乃至相違点3は格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び前記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

7.請求人の主張について

(1)なお,請求人は,審判請求書第3頁第3段落において「本願発明において記載されている「複数の実行環境」は,本願明細書段落0028,0044および本願図面5に開示されているように,Runtime,Web,flush(flashの誤記と認める),Silverlight等のアプリケーションの実行環境を意味するものであり,実行環境を実現するためのプラットフォーム及びシステムを意味するものではありません。」と主張している。

しかるに,本願発明における「実行環境」なる用語の文言上の意味は,アプリケーションやプログラムを実行するための環境である。
また,本願明細書を参酌しても,段落【0028】には「また,多様な実行環境は,アプリケーションが実行される環境を意味する。前記実行環境は例えば,RIA(Rich Internet Application)とHTML基盤のウェブアプリケーションを含み,これに限定されるものではない。」と記載され,段落【0044】には「ランタイム(Runtime),ウェブ(Web),フラッシュ(Flash),シルバーライト(Silverlight)のような実行環境」と記載されており,
Runtime,Web,flash,Silverlightは,「実行環境」なる技術的事項に含まれる単なる例示であり,「実行環境」の技術的範囲は「アプリケーションが実行される環境」としか定義されていない。
そして,情報処理装置のプラットフォーム上でアプリケーションが実行できることは技術常識であるから,「プラットフォーム」自体が「アプリケーションが実行される環境」の一態様といえる。
よって,請求人の主張は失当である。

(2)仮に,「実行環境」が,「プラットフォーム」でないとしても,
上記「3.引用文献」の「(1)引用文献に記載されている技術的事項および引用発明」の上記Cの段落【0043】の「各機能ブロックは,このWebブラウザ102上で稼働するように構成されている。本実施例では,JAVA(登録商標)を用いることにより,かかる構成を実現した。Webブラウザ102上で稼働可能としたのは,プラットフォーム非依存のソフトウェア構成が可能であるという利点があるからである。Webブラウザ102と無関係に稼働するよう構成しても構わない。」との記載からすると,
引用発明は,少なくとも,「Web」実行環境か,それ以外の実行環境かに依存せずに部品オブジェクトを生成できる。
よって,請求人の主張は,引用文献の記載に即したものでもなく,失当である。

(3)さらに,もし,本願発明の「実行環境」が,引用発明の「プラットフォームやWebブラウザの有無」と異なると仮定したとしても,
参考文献4(上記K,L,M参照)には,GUI部品を用いて,複数のGUIフレームワーク(HTML,Dojo,Yahoo!UI,AWT,Swing等)を切り替え可能なアプリケーションを開発する点が記載されている。
引用発明と,参考文献4に記載の発明とは,いずれも,GUI部品を用いて,環境に依存せずに画面を表示する共通の機能を備えるものであるから
引用発明に参考文献4に記載の発明を適用して,様々な実行環境に対応したUIを実現することは,当業者が容易に想到し得たことである。

8.むすび

以上のとおり,本願の請求項5に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-04 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-23 
出願番号 特願2013-221114(P2013-221114)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚田 肇  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 戸島 弘詩
須田 勝巳
発明の名称 統合開発環境を利用したUI実現方法  
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人  

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