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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05H
管理番号 1317724
審判番号 不服2015-19344  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-28 
確定日 2016-08-22 
事件の表示 特願2014-147032「粒子線治療設備」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月25日出願公開、特開2014-241284、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月9日に出願した特願2010-52126号の一部を平成24年2月15日に新たな特許出願とした特願2012-30256号の一部をさらに平成26年7月17日に新たな特許出願としたものであって、平成26年8月1日に手続補正がされ、平成27年4月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月1日に手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年7月16日付けで拒絶査定(謄本送達日 同年同月28日)がされ、これに対し、同年10月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年7月1日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「患者に対して加速粒子を照射する照射装置を有する粒子線治療設備であって、
前記加速粒子を生成する粒子加速器と、
前記粒子加速器で生成された前記加速粒子を前記照射装置まで誘導する誘導ラインと、
複数階の階層構造からなる建屋と、を備え、
前記建屋は、
放射線遮蔽壁によって囲まれ、前記粒子加速器が設置される粒子加速器室と、
放射線遮蔽壁によって囲まれ、前記照射装置が設置される照射装置室と、を有し、
前記照射装置室は、前記粒子加速器室よりも上階に設けられ、
前記照射装置は、
前記粒子加速器の真上に設けられ、
水平方向に沿った第1方向から見た場合及び水平方向に沿うと共に前記第1方向と直交する第2方向から見た場合の双方において、少なくともその一部分が、前記粒子加速器から鉛直方向へ延伸する直線上に位置し、
前記誘導ラインは、前記照射装置に接続される水平方向へ延伸する水平部分が前記照射室内に設けられる
ことを特徴とする粒子線治療設備。」

第3 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献:米国特許第5161546号明細書
周知文献:特開2009-217938号公報

引用文献において、粒子加速器(マイクロトロン10が相当)のほぼ真上に配置された照射装置(ガントリ34が相当)を含む建屋で構成された粒子線治療設備の発明が記載され、そして、照射室内において、加速粒子の誘導ライン(ビーム32が相当)が水平方向に延伸することも図示されている(全文、全図、特に、第6欄第10-65行、及び第1図を参照)。
また、粒子線治療設備において、構成部品を垂直に配置することは、敷地専有面積を減らすと言う周知の課題を解決するための周知な手段である(周知文献 段落「0001」、「0007」?「0010」、「0014」、「0027」、「0031」?「0035」図1、4参照)。
よって、引用文献及び周知文献の記載に基づいて、本願請求項1及び2に係る発明とすることは当業者にとって容易である。

第4 当審の判断
1 引用文献及び周知文献の記載事項
(1)引用文献には、下記の事項が記載されている(訳は当審が作成した。下線も当審が付した。)。
ア 「This invention is generally related to radio therapy systems of the type which include intraoperative radiotherapy (IORT) facilities. 」(1欄8ないし10行)
(この発明は、一般的に、術中放射線療法(IORT)設備を含む様式の放射線治療システムに関する。)

イ 「As shown in FIG. 1, a conventional 22 MeV microtron 10 is disposed on the lowest or basement level 12 of a multi-story building 14. One or more conventional photon/electron therapy units 16 is typically also provided near the microtron 10 in one or more rooms which are heavily shielded (e.g., with thick concrete/steel/lead enclosures 18). This much of the system is conventional.
In addition, in accordance with this invention, the output electron beam 20 from microtron 10 may be selectively routed along path 22 via an extended beam transport system 24 which includes conventional beam deflectors 26 (e.g., 90°) and conventional beam focusing and steering units 28 suitably distributed along the extended beam transport system so as to maintain the beam properly focused and located within the center of an evacuated piping system 30 as will be apparent to those in the art. The electron beam 32 exiting from the distal end of the beam transport system is directed coincidentally along the isocenter rotational axis of the gantry of a IORT treatment unit 34 (e.g., located on an upper floor in an operating suite of building 14). Only relatively minimal shielding (e.g., lead shield 36 located in the floor under the exit port of the IORT treatment unit 34 and minimal concrete shielding between the room and hall wall) need be provided in the operating suite itself in addition to rather minimal shielding requirements along the beam transport system itself (e.g., an 80 mm thick lead sheath) and within the gantry 34 such as will be appreciated by those in the art.」(6欄10ないし39行)
(図1に示すように、公知の22MeVマイクロトロン10は、多層の建物の一番低い階か地下室階12に配置される。
一般にはマイクロトロン10の近くの、(例えば、厚いコンクリート/鉄/鉛の囲い18で)厚く遮蔽された1以上の部屋に、1以上の公知の光子/電子治療ユニット16が備えられる。この多くのシステムは従来型である。
加えて、本発明に従うと、マイクロトロン10からの出力電子線20は、公知のビーム偏向器26(例えば90°)と、これらの技術において明らかなように、当該ビームが適切に引き渡しパイプシステム30の中心に集束及び位置しつづけるよう、延長ビーム輸送システムに沿って適切に分配された、公知の集束及び方向付けユニット28を含む、延長ビーム輸送システム24を介して、通路22のルートに沿って、選択的にルーティングされる。ビーム輸送システムの遠位末端から出力された電子ビーム32は、(例えば、建物14の上階に位置する手術室に配置された)IORT(術中放射線療法)治療ユニット34のガントリーのアイソセンター回転軸に一致するよう導かれる。これらの技術から理解されるように、ビーム輸送システム自体に沿って及びガントリー34内に必要とされる、より最小限の遮蔽(例えば、80mm厚の鉛の鞘(さや))に加えて、比較的最小限の遮蔽のみ(例えば、前記IORT治療ユニット34の出力ポートの下の床に配置される鉛遮蔽36、及び、部屋と廊下の壁との間の最小限のコンクリート遮蔽)手術室自体に備えられる必要がある。)

ウ FIG-1は次のものである。


(2)上記(1)によれば、引用文献には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「マイクロトロン10は、多層の建物の一番低い階か地下室階に配置され、
前記マイクロトロン10は、厚いコンクリート/鉄/鉛の囲いで厚く遮蔽された部屋に備えられ、
前記マイクロトロン10からの出力電子線は、延長ビーム輸送システム24を介して、通路のルートに沿って、ルーティングされ、
前記ビーム輸送システムの遠位末端から出力された電子ビームは、建物の上階に位置する手術室に配置された、IORT(術中放射線療法)治療ユニット34のガントリーのアイソセンター回転軸に一致するよう導かれ、
前記IORT治療ユニット34の出力ポートの下の床に配置される鉛遮蔽、及び、部屋と廊下の壁との間の最小限のコンクリート遮蔽が手術室自体に備えられる、
放射線治療システム。」

(3)周知文献には、下記の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、陽子や炭素等のイオンビームを加速する加速器システム及びその加速器システムによって加速したイオンビームを、患者の患部に照射して治療する粒子線治療システムに関する。」

イ 「【0007】
粒子線治療システムを既存の病院施設へ併設する際の課題として、治療システムを併設する際の敷地面積の制限が挙げられる。先に示したとおり、粒子線治療システムは、照射するためのビームを発生・加速するための加速器システムと、患者に照射治療する照射装置から構成されており、特に照射装置に関しては、患者の患部に対して任意の角度から照射が可能な回転ガントリーの適用が求められている。また、加速器システムで加速した高エネルギーのイオンビームを患者に照射するため、粒子線治療システムを設置する建物の遮蔽壁(特に加速器および照射室のそれぞれを囲む壁)を1?2m程度と厚くする必要があるため、敷地面積に対して機器の配置に利用可能な実効的な面積が制限される。
【0008】
敷地面積が制限される一方で、経営的視点から、一つの加速器に対して複数の照射室を設けることで、治療スループットを上げることが求められている。粒子線治療を実施するにあたって、患者へのビーム照射前に照射装置に対する患部の位置決め作業が必要である。この位置決め作業に15分?20分程度の時間が掛かるため、一つの照射室で照射治療を実施している間に他の照射室で位置決め作業を進めることで、効率的なビーム利用を実現する。
【0009】
高い治療スループットを実現する方策として、複数の照射室を設ける他に、加速器システムから照射装置に供給するビーム強度を高める必要がある。シンクロトロンを用いた粒子線治療システムの場合、まずは、イオン源で発生したビームを前段加速器に入射する。前段加速器は、シンクロトロンが受け入れられる入射エネルギーまでビームを加速する。一般に前段加速器には線形加速器が適用される。前段加速器からシンクロトロンに入射されるビームのエネルギーは2?7MeVであり、空間電荷効果によるビーム損失が生じやすいエネルギー領域である。そのため、ビーム強度を高めるためには、シンクロトロンに入射するビームエネルギーを可能な限り高めておき、空間電荷効果によるビーム損失を抑制する手段を講じるのがよい。
【0010】
既存の病院施設と併設して粒子線治療システムを設置する場合や、狭い敷地面積に粒子線治療システムを設置する場合、加速器システムと回転ガントリーを含む照射装置の配置を敷地面積に対して効率的に利用する必要がある。」

ウ 「【0014】
しかし、非特許文献1に示されて粒子線治療システムには、三つの課題が挙げられる。まず、線形加速器から供給されるビームのエネルギーが2MeVと低いため、シンクロトロンでの加速制御時に生ずる空間電荷効果によりビーム損失が生じやすく、シンクロトロンから照射装置に供給可能な値までビーム強度を高めることが困難である点にある。次に、加速器システムの専有面積を狭くするために線形加速器をシンクロトロンの上面に配置したことで、シンクロトロンに対してビームを垂直方向からシングルターン入射制御を適用している点にある。つまり、非特許文献1の粒子線治療システムでは、シンクロトロンに対して水平方向から複数回に分けてビームを入射し、シンクロトロン内の蓄積電荷量を高めることが可能なマルチターン入射制御ができないため、シンクロトロンへの入射ビーム量が一般のシンクロトロンに対して相対的に低くなる。また、線形加速器をシンクロトロンの上面に配置しているため、メンテナンス性の課題がある。」

エ 「【0027】
本実施例では、加速器システム10のうち、シンクロトロン12は主加速器室41aに設置される。また、前段加速器11は、シンクロトロン12の階下に位置する前段加速器室41bに設置される。第1ビーム輸送手段20aは主加速器室41a内に設置され、ビーム輸送手段20cは前段加速器室41c内に設置される。第2ビーム輸送手段20bは、主加速器室41a及び前段加速器室41bと照射室42を分ける遮蔽壁40に沿って設置されている。つまり、第2ビーム輸送手段20bは、開口部43を通るように遮蔽壁40に沿って固定され、一方が第1ビーム輸送手段20aに接続され、他方が第3ビーム輸送手段20cに接続される。照射室42には、照射装置31が搭載された回転ガントリー30と、治療ベッド32が設置されている。図1(b)に示したように、階を隔ててシンクロトロン12と前段加速器11を配置することで、敷地面積に対して投影される加速器室41の面積はシンクロトロン12が配置可能な面積があれば良く、加速器室を空間的に利用することで、敷地面積に制限がある既存病院への併設が可能となる。」

オ 「【0031】
本実施例では、図4に示すように、上下2つに分割して構成されるL字型の架台を用いる。上部に位置する架台22aには、プロファイルモニタ15を固定する固定板23aが設けられる。固定板23aは、架台22aの各側面に対して垂直に配置され、固定板23aの上面にプロファイルモニタ15を固定する。下部に位置する架台22bには、四極電磁石14を固定する固定板23b及び23cが設けられる。固定板23b及び23cは、架台22bの各側面に対して垂直に配置され、固定板23b及び23cの上に四極電磁石14を固定する。固定板23a,23b及び23cにはそれぞれ貫通穴が設けられ、その貫通穴を通すようにビームダクトが設置される。図2及び図3に示すように、架台22a及び22bから伸びるアームを用いて第2ビーム輸送手段20bを固定してもよい。また、固定板23a,23b及び23cの強度を確保するために補強材を設置しても良い。機器を設置する際には、機器に対して架台の各面からアームを伸ばして固定する方法(図示せず)や、架台の二つの面に棚状の固定板23を設け、ビームダクトが通過する部分および設置する機器が干渉する部分を切り欠き、架台をたてた場合に固定板23が平坦に固定する方法を採用することで、機器のアライメント調整を容易にし、経年変化による機器の位置ずれを抑制することができる。
【0032】
上部の架台22aと下部の架台22bの接合部は、位置合わせ部材(ピンやキー等)24a及び24bを設置可能な構成を有する。遮蔽壁40に沿って架台22a及び22bを配置・固定する場合、まず、下部の架台22bを開口部43から挿入して遮蔽壁40の側面に沿って設置し、位置合わせを行う。その後、上部の架台22aを開口部43から挿入して下部の架台22bの上に設置する。上部の架台22aと下部の架台22bの接合部に位置合わせ部材24a及び24bを挿入して、架台の位置合わせをし、固定する。
【0033】
前段加速器11からシンクロトロン12までのビーム輸送手段20のうち、垂直にビームを輸送する第2ビーム輸送手段20bの長さは、主加速器室41aの床厚や前段加速器11の設置クリアランスから4?5m程度となる。4?5mの架台を分割せずに一体型で垂直に設置する場合、設置時の取り回し領域が大きくなるため、垂直に設置された第2ビーム輸送手段20bを設置する主加速器室41aの開口部43を広くする必要があり、建物の強度に影響を及ぼしかねない。本実施例では、上下に分割された2つの架台22a及び22bをそれぞれ開口部43から遮蔽壁40に沿って設置し、架台22a及び22bを組み合わせることで第2ビーム輸送手段20bを設置するため、主加速器室41aの開口部43を狭く維持でき、建物の強度への影響を低く抑えることができる。
【0034】
本実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
【0035】
本実施例を適用しない従来の粒子線治療システムを図5に示す。本実施例の図1(a)と比較すると、前段加速器11とシンクロトロン12を同一階に設置する際には、ビーム輸送効率を維持するための機器配置のため、前段加速器11とシンクロトロン12を接続するビーム輸送手段20の長さがある程度必要になり、結果として敷地面積に対する加速器室41cの投影面積が広くなってしまう。また、図5では、粒子線治療システムを模式的に示しているが、実際の前段加速器はさらに長い構成となる。一方、本実施例では、加速器システム10の前段加速器11とシンクロトロン12を二階に分けて配置することで、加速器室の敷地面積に対する割合を下げることが可能となり、狭い敷地面積にも粒子線治療システムを設置することが可能となる。また、本実施例では、第2ビーム輸送手段20bを床に対してほぼ垂直に、遮蔽壁40に備え付ける構成としたため、従来よりも第2ビーム輸送手段20bの分だけ、敷地面積を小さくすることができる。」

カ 図1及び4は次のものである。


2 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「マイクロトロン10」、「(多層の)建物」、「(マイクロトロン10が備えられる厚いコンクリート/鉄/鉛の囲いで厚く遮蔽された)部屋」、「(マイクロトロン10からの出力電子線を、通路のルートに沿って、ルーティングし、IORT(術中放射線療法)治療ユニット34に導く)延長ビーム輸送システム24」、「電子ビーム」、「(IORT治療ユニット34の出力ポートの下の床に配置される鉛遮蔽、及び、部屋と廊下の壁との間の最小限のコンクリート遮蔽が備えられる)手術室」及び「放射線治療システム」は、本願発明の「粒子加速器」、「(複数階の階層構造からなる)建屋」、「(放射線遮蔽壁によって囲まれ、前記粒子加速器が設置される)粒子加速器室」、「(粒子加速器で生成された前記加速粒子を前記照射装置まで誘導する)誘導ライン」、「加速粒子」、「(放射線遮蔽壁によって囲まれ、前記照射装置が設置される)照射装置室」及び「粒子線治療設備」にそれぞれ相当するから、
本願発明と引用発明は、
「患者に対して加速粒子を照射する照射装置を有する粒子線治療設備であって、
前記加速粒子を生成する粒子加速器と、
前記粒子加速器で生成された前記加速粒子を前記照射装置まで誘導する誘導ラインと、
複数階の階層構造からなる建屋と、を備え、
前記建屋は、
放射線遮蔽壁によって囲まれ、前記粒子加速器が設置される粒子加速器室と、
放射線遮蔽壁によって囲まれ、前記照射装置が設置される照射装置室と、を有し、
前記照射装置室は、前記粒子加速器室よりも上階に設けられる、
粒子線治療設備。」
の点で一致している。
他方、本願発明と引用発明は、下記各点で相違する。

(1)本願発明の「照射装置」は、「粒子加速器の真上に設けられ、水平方向に沿った第1方向から見た場合及び水平方向に沿うと共に前記第1方向と直交する第2方向から見た場合の双方において、少なくともその一部分が、前記粒子加速器から鉛直方向へ延伸する直線上に位置」するのに対し、引用発明の「IORT(術中放射線療法)治療ユニット34」は、「建物の上階に位置する手術室に配置された」と特定されるにとどまる点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明の「誘導ライン」は、「照射装置に接続される水平方向へ延伸する水平部分が前記照射室内に設けられる」のに対し、引用発明の「延長ビーム輸送システム24」は、手術室での構成が特定されない点(以下、「相違点2」という。)。

3 判断
(1)まず、上記相違点1について検討する。
引用発明に関して、引用文献には、「IORT(術中放射線療法)治療ユニット34」を「マイクロトロン10」の真上に設けるとの記載はない。
さらに、「IORT(術中放射線療法)治療ユニット34」を、水平方向に沿った第1方向から見た場合及び水平方向に沿うと共に前記第1方向と直交する第2方向から見た場合の双方において、少なくともその一部分が、「マイクロトロン10」から鉛直方向へ延伸する直線上に位置するものとするとの記載はない。
また、周知文献には、「本実施例では、加速器システム10の前段加速器11とシンクロトロン12を二階に分けて配置することで、加速器室の敷地面積に対する割合を下げることが可能となり、狭い敷地面積にも粒子線治療システムを設置することが可能となる。」との記載はあるが、患者に照射して治療する「照射装置」を「加速器システム10」の真上に設けるとの記載はない。
さらに、「照射装置」を、水平方向に沿った第1方向から見た場合及び水平方向に沿うと共に前記第1方向と直交する第2方向から見た場合の双方において、少なくともその一部分が、「加速器システム10」から鉛直方向へ延伸する直線上に位置するものとするとの記載はない。
そして、本願発明は、上記相違点1に係る構成を備えることによって、本願明細書の段落【0037】に記載された、「特にサイクロトロン2の真上に回転ガントリ3を設置しているので、敷地面積に応じて敷地占有面積を極力減らすことが可能になり、その結果として、所定の敷地にサイクロトロン2と回転ガントリ3とを効率良く設置し易くなる。」という顕著な効果を奏するものであるから、本願発明は、引用発明及び周知文献に記載された事項に基づいて容易に想到し得るものということはできない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及び2に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-01 
出願番号 特願2014-147032(P2014-147032)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 靖  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 松川 直樹
井口 猶二
発明の名称 粒子線治療設備  
代理人 小島 誠  

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