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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1317740
審判番号 不服2015-15104  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-12 
確定日 2016-08-25 
事件の表示 特願2011-183303「撮像素子、撮像装置及び生体撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 4日出願公開、特開2013- 45917、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年8月25日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年8月12日 審査請求
平成27年4月27日 拒絶理由通知
平成27年6月19日 意見書・手続補正
平成27年7月 2日 拒絶査定(以下,「原査定」という)
平成27年8月12日 審判請求・手続補正
平成28年5月 9日 補正却下決定・拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という)
平成28年6年29日 意見書・手続補正

第2 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明は,平成28年6月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されるものと認められるところ,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「第1のフォトダイオードと,
第2のフォトダイオードと,
前記第1のフォトダイオードの上方に配置される第1のカラーフィルタと,
前記第2のフォトダイオードの上方であって前記第1のカラーフィルタとは異なる平面位置に配置される第2のカラーフィルタと,
前記第1のカラーフィルタの上方に配置される第1のオンチップレンズと,
前記第2のカラーフィルタの上方に配置される第2のオンチップレンズと
を含む画素単位を備え,
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタは,前記画素単位に対応する光の波長を波長帯域に含む異なる分光特性を有し,
前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードから出力される電気信号は,所定の分光特性に基づいて個別に設定されたゲインでそれぞれ増幅され,加算される
撮像素子。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献2 特開2006-270364号公報
引用文献2に記載された発明における,前記第1のカラーフィルタは,画素単位に含まれる,光センサ26および光センサ28の一方に対応する光の波長を波長帯域に含んでおり,また,前記第2のカラーフィルタは,画素単位に含まれる,光センサ26および光センサ28の他方に対応する光の波長を波長帯域に含んでいるのであるから,引用文献2に記載された発明における,前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタは,「前記画素単位に対応する光の波長を波長帯域に含」んでいると言える。
2 原査定の理由の判断
(1)引用文献2の記載事項
ア 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-270364号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,各画素にカラーフィルタを配置した固体撮像素子および固体撮像装置,ならびにその駆動方法に関するものである。」
(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に添付図面を参照して本発明による固体撮像素子の実施例を詳細に説明する。
【0015】
実施例の固体撮像素子10は,図1に示すように,複数の画素12が,それぞれ,原色フィルタを備えた主感光部14および補色フィルタを備えた副感光部16を含んで構成され,これらの感光部のそれぞれから主画像信号および副画像信号を出力することにより解像度および色再現性の高い画像を生成するものである。
・・・
【0017】
この画素12は,入射光を受光してフォトダイオードなどの光センサで光電変換することにより画像信号を生成するもので,図1に示すように,原色フィルタ20を備えた主感光部14,および補色フィルタ24を備えた副感光部16を含んで構成される。
【0018】
本実施例の主感光部14および副感光部16は,同じサイズのマイクロレンズおよび光センサを有する場合,図2に示すように,入射光量に対する信号量が得られる。ここでは,主感光部14における信号量を線102で示し,また,副感光部16における信号量を線104で示す。また,主感光部14および副感光部16は,同じサイズの光センサを有するので,同一の飽和信号量を得られるものとする。
・・・
【0020】
また,図1および図3に示すように,主感光部14は,マイクロレンズ(MicroLens:ML)18,原色フィルタ20および光センサ26を備えて構成され,また副感光部16は,ML 22,補色フィルタ24および光センサ28を備えて構成される。本実施例では,副感光部16のML 22は,主感光部14のML 18よりも小さいものを用いる。また,本実施例では,主感光部14の光センサ26と,副感光部16の光センサ28とは,同一の開口サイズで構成され,同一の飽和信号量が得られるようにする。また,図1および図3では,ML 18および22,ならびに光センサ26および28は,それぞれ,等間隔で配置されているが,各画素位置に対する入射光の入射角度などを考慮して配置してもよい。」
(ウ)「【0042】
本実施例の信号処理部68は,図6に示すように構成されて,入力のディジタル画像信号144のうち,主感光部14からの出力に基づく主画像信号150,および副感光部16からの出力に基づく副画像信号152にディジタル信号処理を施すものである。
【0043】
ここで,信号処理部68では,主画像信号150に対して,オフセット補正部80で基準電圧レベルからのずれを補正し,ホワイトバランス(WB)ゲイン補正部82でWB補正処理し,さらにガンマ(γ)補正部84でγ補正して,その結果の画像信号154を画素加算処理部94に供給する。
【0044】
同様に,信号処理部68では,副画像信号152をオフセット補正部86,WBゲイン補正部90およびγ補正部92で処理して,その結果の画像信号156を画素加算処理部94に供給するが,本実施例では特に,副画像信号152をオフセット補正した結果の副画像信号158をRGB変換部88で処理して,その結果の画像信号160をWBゲイン補正部90に供給している。
【0045】
本実施例のRGB変換部88は,オフセット補正部86からの副画像信号158に基づいて原色で画像を示す画像信号160に変換して生成し,WBゲイン補正部90に出力するものである。
【0046】
また,この画素加算処理部94は,入力の画像信号154および156を画素ごとに加算した画像信号162を生成し,さらに,その画像信号162を同時化処理部96で同時化処理し,また各種補正処理部98で白黒補正などの他の補正処理を実行する。」
(エ)図1には,主感光部14の原色フィルタ20とは異なる平面位置に副感光部16の補色フィルタ24が配置されることが記載されている。
(オ)図3には,主感光部14の光センサ26の上方に原色フィルタ20が配置され,原色フィルタ20上にマイクロレンズ18が配置され,副感光部16の光センサ28の上方に補色フィルタ24が配置され,補色フィルタ24上にマイクロレンズ22が配置された,固体撮像素子の断面図が記載されている。
イ 引用発明2
前記アより,引用文献2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「固体撮像素子は,入射光を受光してフォトダイオードで光電変換する画素を複数含み,各画素は,原色フィルタを備えた主感光部及び補色フィルタを備えた副感光部を含んで構成され,主感光部及び副感光部はフォトダイオードを有し,主感光部の原色フィルタ上にマイクロレンズが配置され,副感光部の補色フィルタ上にマイクロレンズが配置され,主感光部からの出力及び副感光部からの出力に対して,それぞれWBゲイン補正部で補正し,加算した固体撮像素子」
(2)対比
引用発明2の「原色フィルタ」及び「補色フィルタ」は,下記相違点1を除いて,それぞれ本願発明の「第1のカラーフィルタ」及び「第2のカラーフィルタ」に相当すると認められる。
また,引用発明2の「主感光部の原色フィルタ上に配置されたマイクロレンズ」及び「副感光部の補色フィルタ上に配置されたマイクロレンズ」は,それぞれ本願発明の「第1のオンチップレンズ」及び「第2のオンチップレンズ」に相当すると認められる。
そして,本願発明と引用発明2とを対比すると,下記アの点で一致しているが,下記イの点で相違すると認められる。
ア 一致点
「第1のフォトダイオードと,
第2のフォトダイオードと,
前記第1のフォトダイオードの上方に配置される第1のカラーフィルタと,
前記第2のフォトダイオードの上方であって前記第1のカラーフィルタとは異なる平面位置に配置される第2のカラーフィルタと,
前記第1のカラーフィルタの上方に配置される第1のオンチップレンズと,
前記第2のカラーフィルタの上方に配置される第2のオンチップレンズと
を含む画素単位を備える
撮像素子。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明の前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタは,前記画素単位に対応する光の波長を波長帯域に含む異なる分光特性を有するのに対し,引用発明2の原色フィルタと補色フィルタのうち補色フィルタはその波長帯域については原色に対する補色の関係になっているから画素単位に対応する光の波長を波長帯域に含まない点。
(イ)相違点2
本願発明の前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードから出力される電気信号は,所定の分光特性に基づいて個別に設定されたゲインでそれぞれ増幅され,加算されるのに対し,引用発明2の主感光部からの出力及び副感光部からの出力に対しては,それぞれWBゲイン補正部で補正し,加算されるものである点。
(3)判断
相違点1,2についてまとめて検討する。画素単位に対応する光の波長を波長帯域に含む異なる分光特性を有するカラーフィルタを用いて得た電気信号を,所定の分光特性に基づいて個別に設定されたゲインでそれぞれ増幅され,加算されることは,引用文献2に記載も示唆もない。本願発明は,前記相違点1,2に係る構成を有することで,最適な分光特性を創出するという課題を解決するもの(本願明細書段落0004,0005)であるが,引用文献2には前記課題について記載も示唆もない。
(4)小括
したがって,本願発明は,当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。また,本願発明は,引用発明2であるとすることもできない。
本願の請求項2-10に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるので,本願発明と同様に,当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。また,本願の請求項2-10に係る発明は,引用発明2であるとすることもできない。
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2010-252089号公報
引用文献2 特開2006-270364号公報
引用文献3 特開2011-129638号公報
引用文献4 特開2008-147818号公報
引用文献5 特開2004-228662号公報
引用文献6 特開2008-270316号公報
「個別に設定されたゲインで増幅される」点は,引用文献2(段落0042-0046)に記載されているので,引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載の上記技術を適用することは,当業者が容易になし得たものである。
2 当審拒絶理由の判断
(1)引用文献1の記載事項
ア 引用文献1
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2010-252089号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,高感度又は高色分解での撮像や画像処理の切り替え可能な撮像装置及び画像処理プログラムに関する。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0013】
≪一の実施形態≫
図1は,本発明の一の実施形態に係るデジタルカメラ100の構成図である。
【0014】
デジタルカメラ100は,撮像レンズ1,光学ローパスフィルタ(OLPF)2,撮像素子3,A/D変換部4,CPU5,バッファメモリ6,カードインタフェース(カードI/F)7,操作部材9,記憶部10及び表示部11から構成される。CPU5,バッファメモリ6,カードI/F7,操作部材9,記憶部10及び表示部11は,バス12を介して情報伝達可能に接続されている。なお,図1はデジタルカメラ100の主要部分のみを示す。例えば,図1において,CPU5の指令に従って,撮像素子3及びA/D変換部4に撮影指示のタイミングパルスを発するタイミングジェネレータや撮像素子3の受光面の前面に設けられるカラーフィルタアレイ等は省略されている。
・・・
【0017】
撮像素子3は,CCDやCMOSの半導体イメージセンサ等を適宜選択して用いる。ただし,本実施形態において,図2に示すように,撮像素子3の受光面の前面に設けられるカラーフィルタアレイを構成する各カラーフィルタR(赤),G(緑)及びB(青)は,2画素×2画素を1画素とした場合においてベイヤ配列型となるように配置されている。さらに,本実施形態では,各カラーフィルタR,G及びBは,例えば,図3に示すカラーフィルタRの場合のように,カラーフィルタRの有する分光特性のスペクトルを,4つの相異なる分光特性のピークを有するカラーフィルタR1?R4に分割される。他のカラーフィルタG及びBについても同様である。これにより,撮像素子3は,12色のカラーフィルタを有したカラーフィルタアレイに相当し,高色分解性を図ることできる。また,カラーフィルタR1?R4,カラーフィルタG1?G4及びカラーフィルタB1?B4のそれぞれを加算することにより,各カラーフィルタR,G及びBが有する分光特性のピークを有するスペクトルを再現することができ,高感度性も図ることができる。
【0018】
なお,図3に示すように,4つのカラーフィルタR1?R4のピーク及びスペクトル幅は互いに異なっているが,ピーク位置を除いて,全て同じピーク値及びスペクトル幅を持っていても良い。また,図2は,撮像素子3の画素配列の一部を示し,各画素の先頭の記号R,G及びBは,基準となるカラーフィルタを示し,それに続く番号は,図3に示すような,基準となるカラーフィルタを分割した時のものであるかを示す。さらに,それら続く2桁の番号は画素の位置を示し,左上を基準にしている。
【0019】
この撮像素子3は,CPU5の指令を受けてタイミングジェネレータ(不図示)が発するタイミングパルスに基づいて動作し,前方に設けられた撮像レンズ1によって結像される被写体像を取得する。撮像素子3から出力された画像信号は,A/D変換部4にてデジタル信号に変換される。デジタルの画像信号は,フレームメモリ(不図示)に一時的に記録された後,バッファメモリ6に記録される。なお,本実施形態における撮像素子3は,後述するように,全ての画素からの画像信号,即ちカラーフィルタR1?R4,カラーフィルタG1?G4及びカラーフィルタB1?B4の画素値を出力する高色分解モードと,カラーフィルタR1?R4,カラーフィルタG1?G4及びカラーフィルタB1?B4の2画素×2画素を1画素として加算して画像信号を出力する高感度モードとの2つのモードがある。また,バッファメモリ6には,半導体メモリのうち,任意の不揮発性メモリを適宜選択して用いることができる。」
(ウ)「【0025】
次に,本実施形態に係るデジタルカメラ100の撮像動作について,図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0026】
ユーザにより操作部材9の電源釦が押されると,CPU5は,デジタルカメラ100の記憶部10に記憶されている制御プログラム及び画像処理プログラムを読み込み,デジタルカメラ100を初期化して,ステップS10からの処理を行う。なお,以下の説明では,図2に示す,画素R1_33,R2_34,R3_43及びR4_44に対する画素値の処理を例にしながら説明する。そして,他の画素についても同様の処理が行われる。
・・・
【0036】
ステップS18:CPU5は,ユーザからの被写体像の撮像指示が出されるまで待機する。ユーザによって操作部材9のレリーズ釦が押されると,CPU5は,撮像指示が出されたと判断して,タイミングジェネレータ(不図示)に対して,撮像素子3に高感度モードでの撮像指令のタイミングパルスを発して,撮像素子3に撮像レンズ1によって結像された被写体像を取得させる。撮像素子3は,タイミングジェネレータ(不図示)が発するタイミングパルスに基づいて,例えば,画素R1_33,R2_34,R3_43及びR4_44からなる2画素×2画素の領域の画素値を,次式(4)を用いて1画素の画素値として加算した画像信号を出力し,A/D変換部4を介して,バッファメモリ6に記録する。なお,CPU5は,バッファメモリ6に記録されるRAWデータである画像データを,後述する本発明の他の実施形態におけるコンピュータ200において,本実施形態と同様の画像処理を行うために,撮像日時,露光時間やISO感度等の撮像情報とともに,高感度モードをヘッダ情報として付加したRAW画像ファイルを,カードメモリ8や記憶部10に記録しても良い。
R33=R1_33+R2_34+R3_43+R4_44 (4)
なお,R33は,画素R1_33,R2_34,R3_43及びR4_44からなる2画素×2画素の領域の加算した基準となるカラーフィルタRの画素値を表し,その領域の位置を表すためにその領域のうち左上にある画素の位置の2桁の番号を用いて表している。
・・・
【0039】
このように,本実施形態では,基準となる分光特性を有するカラーフィルタR,G及びBの各々を,4つの異なる分光特性のピークを有するカラーフィルタR1?R4,カラーフィルタG1?G4及びカラーフィルタB1?B4に分割し,それらを2画素×2画素の領域を形成し,ベイヤ型配列で配列されたカラーフィルタアレイを有する撮像素子3で撮像された画像を,逆に2画素×2画素を1画素として扱い処理することで,SN比を悪くすることなく,高感度を維持するとともに,高色分解性の向上を図ることができる。」
(エ)「【0056】
・・・
≪実施形態の補足事項≫
一の実施形態及び他の実施形態では,基準となる分光特性を有するカラーフィルタR,G及びBの各々を,4つの異なる分光特性のピークを有するカラーフィルタR1?R4,カラーフィルタG1?G4及びカラーフィルタB1?B4に分割したが,本発明はこれに限定されず,2,9又は16等の任意の数のカラーフィルタに分割しても良い。それに伴い,2画素,3画素×3画素又は4画素×4画素等を1画素として扱うことが好ましい。・・・」
(オ)図2には,平面上にR1?R4が2×2の配列に配置されることが記載されている。
(カ)図3には,Rの波長帯域内の波長を波長帯域に含む異なる分光特性R1,R2,R3及びR4が記載されている。
イ 引用発明1
前記アより,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「撮像素子の受光面の前面に設けられるカラーフィルタアレイが,例えばカラーフィルタR(赤)の場合,カラーフィルタRの有する分光特性のスペクトルを,4つの相異なる分光特性のピークを有するカラーフィルタR1?R4に分割され,カラーフィルタR1?R4の2画素×2画素を1画素として加算される撮像素子。」
(2)引用文献2の記載事項
引用文献2には前記第3の2(1)アのとおりの記載があり,前記第3の2(1)イのとおりの引用発明2が記載されていると認められる。
(3)本願発明と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「カラーフィルタR1?R4の2画素×2画素を1画素として加算される」との構成より,カラーフィルターR1?R4の2画素×2画素に対応してそれぞれ受光部を備えることは自明であり,引用発明1の「撮像素子の受光面の前面に設けられるカラーフィルタアレイ」との構成を備えていることから,引用発明1は,「カラーフィルターR1?R4の2画素×2画素に対応して設けられた複数の受光部の前面に設けられるカラーフィルタアレイ」との構成を備えることは明らかである。そうすると,本願発明の「第1のフォトダイオードと,第2のフォトダイオードと,前記第1のフォトダイオードの上方に配置される第1のカラーフィルタと,前記第2のフォトダイオードの上方であって前記第1のカラーフィルタとは異なる平面位置に配置される第2のカラーフィルタ」と引用発明1の前記構成とは,「複数の受光部の上方にカラーフィルタアレイ」を備える点で共通するといえる。
イ 引用発明1の「カラーフィルタR1?R4の2画素×2画素」からなる「1画素」は,本願発明の「画素単位」に相当すると認められる。
ウ 引用発明1の「カラーフィルタRの有する分光特性のスペクトルを,4つの相異なる分光特性のピークを有するカラーフィルタR1?R4に分割」は,それぞれのカラーフィルタが「画素単位に対応する光の波長を波長帯域に含む異なる分光特性を有する」ことを意味すると認められる。
エ してみると,本願発明と引用発明1とは,下記オの点で一致し,下記カの点で相違する。
オ 一致点
「複数の受光部の上方にカラーフィルタアレイ
を含む画素単位を備え,
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタは,前記画素単位に対応する光の波長を波長帯域に含む異なる分光特性を有する
撮像素子。」
カ 相違点
(ア)相違点1
一致点における「受光部」について,本願発明は「フォトダイオード」であるのに対し引用発明1はその構成が特定されていない点。
(イ)相違点2
本願発明は,「前記第1のカラーフィルタの上方に配置される第1のオンチップレンズと,前記第2のカラーフィルタの上方に配置される第2のオンチップレンズ」を備えるのに対し,引用発明1においては「オンチップレンズ」が明示されていない点。
(ウ)相違点3
本願発明の前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードから出力される電気信号は,所定の分光特性に基づいて個別に設定されたゲインでそれぞれ増幅され,加算されるのに対し,引用発明1のカラーフィルタR1?R4の2画素×2画素は,1画素として加算される点。
(4)判断
相違点3について検討すると,第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードから出力される電気信号は,所定の分光特性に基づいて個別に設定されたゲインでそれぞれ増幅され,加算されることは,引用文献1又は2いずれにも記載されていないし示唆もされていない。本願発明は,前記相違点3に係る構成を有することで,最適な分光特性を創出するという課題を解決するもの(本願明細書段落0004,0005)であるが,引用文献1又は2いずれにも前記課題について記載も示唆もない。引用発明1においては,カラーフィルタR1?R4の2画素×2画素の電気信号が加算されているが,これは高感度化するためのもの(前記(1)ア(イ))であって,最適な分光特性を創出すべく所定の分光特性に基づいて個別に設定されたゲインでそれぞれ増幅されることは示唆されない。
また,引用文献3ないし6にも,当該事項は記載も示唆もされていない。
(5)小括
したがって,本願発明は,当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
本願の請求項2-10に係る発明についても,本願発明をさらに限定したものであるので,本願発明と同様に,当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
そうすると,もはや,当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-15 
出願番号 特願2011-183303(P2011-183303)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 羽鳥 友哉安田 雅彦  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 柴山 将隆
深沢 正志
発明の名称 撮像素子、撮像装置及び生体撮像装置  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

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