ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
---|---|
管理番号 | 1317791 |
審判番号 | 不服2015-17175 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-18 |
確定日 | 2016-08-04 |
事件の表示 | 特願2012-536244「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月 5日国際公開、WO2012/042962〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年5月11日(優先権主張2010年9月30日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成26年12月24日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年3月4日に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたが、同年6月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたものである。 第2 平成27年9月18日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年9月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、本件補正前の請求項10である 「同一系統の色を発光し、複数の行方向および列方向に配置される複数の発光素子と、 前記複数の発光素子が配置された基板と、 前記基板上に形成され、前記複数の発光素子と電気的に接続された正極の配線部および負極の配線部と、 前記正極の配線部および前記負極の配線部を介して前記複数の発光素子に電圧を印加する正極および負極と、を備え、 前記複数の発光素子は、同数個ずつ直列接続されるとともに、各直列接続の端部となる発光素子が列方向に配置されて前記正極の配線部および前記負極の配線部とそれぞれ電気的に接続されることで並列接続されており、 前記複数の発光素子は、第1発光素子と、前記第1発光素子よりも小さい出力を有する第2発光素子と、からなり、 前記第1発光素子および前記第2発光素子は、前記各行方向に交互に配置され、 少なくとも1つの前記行は、前記発光素子の順方向電圧の平均値が他の行と異なるように配置されたことを特徴とする発光装置。」を 補正後の請求項9である 「同一系統の色を発光し、複数の行方向および列方向に配置される複数の発光素子と、 前記複数の発光素子が配置された平板状の基板と、 前記基板上に形成され、前記複数の発光素子と電気的に接続された正極の配線部および負極の配線部と、 前記正極の配線部および前記負極の配線部を介して前記複数の発光素子に電圧を印加する正極および負極と、を備え、 前記複数の発光素子は、同数個ずつ直列接続されるとともに、各直列接続の端部となる発光素子が列方向に配置されて前記正極の配線部および前記負極の配線部とそれぞれ電気的に接続されることで並列接続されており、 前記複数の発光素子は、第1発光素子と、前記第1発光素子よりも小さい出力を有する第2発光素子と、からなり、 前記第1発光素子および前記第2発光素子は、前記各行方向に交互に配置され、 少なくとも1つの前記行は、前記発光素子の順方向電圧の平均値が他の行と異なるように配置されたことを特徴とする発光装置。」 に補正することを含む。 上記補正は、補正前の請求項10における「基板」を補正後の請求項9における「平板状の基板」に限定するものであり、補正前の請求項10に係る発明と補正後の請求項9に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。したがって、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするに該当する。 そこで、本件補正後の請求項9に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)、以下に検討する。 2.引用例 (1)引用例1 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平2-78102号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は、当審による。)。 ア 「以下、本発明の発光ダイオード照明具を図面に基づいて説明する。 第1図は本発明実施例の一部断面図であり、第2図は、第1図の絶縁金属基板の上面図である。 第3図は、絶縁金属基板上に設けられた窪み部の他の実施例の断面図であり、第4図は、第3図の上面図である。第5図は、絶縁金属基板上に設けられた窪み部の他の実施例の断面図であり、第6図は、第5図の上面図である。第7図は、さらに他の実施例の一部断面図である。第8図は、絶縁金属基板上に設けられた窪み部の断面図形状および寸法例の説明図である。第9図は各実施例の電気回路図例である。」(第2頁右下欄第7?19行) イ 「絶縁金属基板1は、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ニッケルなどの金属からなる金属基板層12、エポキシ樹脂、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、などの電気絶縁性材料からなる電気絶縁層13、およびアルミニウム、銅、金、ニッケルなどの導電性金属からなる電極パターン15、リード部パターン16とからなっており、かつ前記した多数の窪み11を有する。 第1図および第2図に示す実施例においては、電極パターン15は、窪み11の側壁面14並びに底部とを覆い、隣接する窪み11の底部上に設置された発光ダイオード2の表面電極21とボンディングワイヤ5によって電気的に接続されている。」(第3頁左上欄第19行?右上欄第14行) ウ 「第9図において、多数の発光ダイオード2と1個の抵抗6とが直列接続されたものの多数列が互いにリード部パターン16によって並列接続されている。発光ダイオード2の発光輝度は、それを駆動する電源電圧の変動によって変動するが、抵抗6が電源電圧の変動に対して緩和作用をなし、発光ダイオード2の発光輝度を安定化させる。 発光ダイオード2としては市販品でよく、その発光色にも別に特定はなくて、たとえば自動車のストップランプに使用する場合は赤色、ターンシグナルランプの場合は黄色、緑色の信号燈では緑色など、用途に応じて所望の発光色のものを選択すればよい。」(第5頁左下欄第5?17行) エ 第2図及び第9図は以下のものである。 「 」、 「 」 オ 上記ウの記載を参照しつつ上記エの第2図を見ると,第2図には、上記ウの「多数の発光ダイオード2と1個の抵抗6とが直列接続されたものの多数列が互いにリード部パターン16によって並列接続されている」様子が図示されていることが理解され、この第2図によれば、多数の発光ダイオード2は、行方向(第2図における横方向)及び列方向(第2図における縦方向)に配置されており、これらの発光ダイオード2は、同数個ずつ直列接続されるとともに、各直列接続の端部となる発光素子は、列方向に配置されて一方のリード部パターン16及び他方のリード部パターン16とそれぞれ電気的に接続されているものと認められる。 上記によれば、引用例1には、 「用途に応じて所望の発光色のものが選択された複数の発光ダイオード2がリード部パターン16及び多数の窪み11を有する絶縁金属基板1上に設置された発光ダイオード照明具であって、 複数の発光ダイオード2と1個の抵抗6とが直列接続されたものの複数列が互いにリード部パターン16によって並列接続されており、 複数の発光ダイオード2は、行方向及び列方向に配置され、同数個ずつ直列接続されており、各直列接続の端部となる発光素子は、列方向に配置されて一方のリード部パターン16及び他方のリード部パターン16とそれぞれ電気的に接続されている発光ダイオード照明具。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (2)引用例2 同じく、原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-180842号公報(以下「引用例2」という。)には、次の記載がある(下線は、当審による。)。 「【0007】 しかしながら、上述した画像読取装置にあって、個々のLEDは、その製造上の理由に起因してその光度が所定範囲内においてばらついているから、LEDを単純にアレイ状に並べて配置しただけでは、照明装置として均一な照度分布が得られないこととなる。また、このように個々の照明装置で均一な照度分布が得られない状態では、複数の照明装置間でも照度のバラツキが発生することとなる。 【0008】 本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、光源を主走査方向に列設した構成した照明装置において、照明装置の照度分布を均一とでき、かつ異なる照明装置間での照度が不均一となることを防止できる照明装置、画像読取装置、及び、画像形成装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 請求項1の発明は、複数個の発光素子を列設して形成された光照射体を備えた照明装置において、前記光照射体は、光度の基準値に基づいて異なるレベルに分別された発光素子を予め定めた所定の規則に基づいて配置して構成されることを特徴とする照明装置である。 【0010】 請求項2の発明は、照明装置において、前記光照射体は、所定の光度の基準値より光度の高い発光素子と、光度の低い発光素子とを交互に配置して構成したことを特徴とする請求項1記載のである。」 3.対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「複数の発光ダイオード2」は、「用途に応じて所望の発光色のものが選択された」ものであるから、「同一系統の色を発光」するものであると認められ、また、「行方向及び列方向に配置されて」いるから、本願補正発明の「同一系統の色を発光し、複数の行方向および列方向に配置される複数の発光素子」に相当する。 (2)引用発明の「絶縁金属基板1」と本願補正発明の「基板」は、「前記複数の発光素子が配置された基板」の点で一致する。 (3)引用例1には、本願補正発明でいう「正極および負極」についての明記はないが、引用発明は、一方のリード部パターン16及び他方のリード部パターン16により、各直列接続された発光ダイオード2に電源電圧を印加するものであるから、外部の電源と電気的に接続するための部分(引用例1の第9図の回路図において、左側の小さな丸で示されるものに相当する部分)を備えていることは当業者に自明であって、引用発明も本願補正発明と同様に「前記正極の配線部および前記負極の配線部を介して前記複数の発光素子に電圧を印加する正極および負極」を備えるものであることは明らかである。そして、引用発明の「一方のリード部パターン16及び他方のリード部パターン16」は、本願補正発明の「前記基板上に形成され、前記複数の発光素子と電気的に接続された正極の配線部および負極の配線部」に相当する。 (4)引用発明において、「複数の発光ダイオード2は、行方向及び列方向に配置され、同数個ずつ直列接続されており、各直列接続の端部となる発光素子は、列方向に配置されて一方のリード部パターン16及び他方のリード部パターン16とそれぞれ電気的に接続されている」から、引用発明は、本願補正発明と同じく「前記複数の発光素子は、同数個ずつ直列接続されるとともに、各直列接続の端部となる発光素子が列方向に配置されて前記正極の配線部および前記負極の配線部とそれぞれ電気的に接続されることで並列接続されて」いるものといえる。 (5)引用発明の「発光ダイオード照明具」が「発光装置」であることは明らかである。 (6)以上のことから、本願補正発明と引用発明は、 「同一系統の色を発光し、複数の行方向および列方向に配置される複数の発光素子と、 前記複数の発光素子が配置された基板と、 前記基板上に形成され、前記複数の発光素子と電気的に接続された正極の配線部および負極の配線部と、 前記正極の配線部および前記負極の配線部を介して前記複数の発光素子に電圧を印加する正極および負極と、を備え、 前記複数の発光素子は、同数個ずつ直列接続されるとともに、各直列接続の端部となる発光素子が列方向に配置されて前記正極の配線部および前記負極の配線部とそれぞれ電気的に接続されることで並列接続されている発光装置。」の点で一致する。 (8)一方、両者は、次の点で相違する。 a.本願補正発明は、基板が「平板状の基板」であるのに対し、引用発明の基板は、「多数の窪み11を有する絶縁金属基板」であって「平板状」でない点。 b.本願補正発明では、「前記複数の発光素子は、第1発光素子と、前記第1発光素子よりも小さい出力を有する第2発光素子と、からなり、 前記第1発光素子および前記第2発光素子は、前記各行方向に交互に配置され、 少なくとも1つの前記行は、前記発光素子の順方向電圧の平均値が他の行と異なるように配置され」ているのに対し、引用発明は、このようなものとされていない点。 4.判断 (1)上記相違点aについて検討するに、複数の発光ダイオードを搭載する基板として平板状のものは、例えば、特開2003-124528号公報(図4の放熱基板1、図12の多層配線基板51等参照。)、特開2008-227412公報(図2の絶縁基板3等参照。)、特開2009-164157号公報(図1の基板101等参照。)にみられるように周知の技術事項であり、特に、前記特開2003-124528号公報には、【0018】?【0019】において、引用例1に記載されるようなLEDベアチップを実装する凹部を設けた基板についての問題点が記載されていることに鑑みれば、引用発明における基板として本願補正発明のごとく「平板状の基板」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)上記相違点bについて検討する。 引用例2には、上記2.(2)から、「個々のLEDは、その製造上の理由に起因してその光度が所定範囲内においてばらついているから、LEDを単純にアレイ状に並べて配置しただけでは、照明装置として均一な照度分布が得られないこととなり、また、複数の照明装置間でも照度のバラツキが発生することとなるので、照明装置の照度分布を均一とでき、また、異なる照明装置間での照度が不均一となることを防止できるように、複数個の発光素子を列設して形成された光照射体を備えた照明装置において、前記光照射体は、所定の光度の基準値より光度の高い発光素子と、光度の低い発光素子とを交互に配置して構成すること」という技術事項が記載されているといえる。 引用発明は、複数の発光ダイオード2を行方向及び列方向に配置するものであるところ、引用例1に、発光ダイオード2の個々の特性のばらつきについての記載はないが、発光ダイオード2の特性がばらつくことは、例えば引用例2に記載されており周知の技術事項である。そして、引用発明において、そのような発光ダイオード2の個々の特性のばらつきがあったとしても、照明装置の照度分布を均一とでき、また、異なる照明装置間での照度が不均一となることを防止できるのが望ましいことは明らかであるから、そのようにするために引用例2に記載されるごとく、基準値より光度の高い発光素子と、光度の低い発光素子とを交互に配置して、上記相違点bに係る「前記複数の発光素子は、第1発光素子と、前記第1発光素子よりも小さい出力を有する第2発光素子と、からなり、前記第1発光素子および前記第2発光素子は、前記各行方向に交互に配置され」との発明特定事項とすることに格別の困難性は認められない。 発光ダイオード2の個々の特性のばらつきとして、引用例2には光度のばらつきしか記載されていないが、発光素子の順方向電圧についても個々の発光ダイオード毎にばらつきが生じることは当業者に自明であるから、これに起因して、発光素子の順方向電圧の平均値についても、各行毎にばらつきが生じるものと認められるところであり、上記のように「第1発光素子と、前記第1発光素子よりも小さい出力を有する第2発光素子を各行方向に交互に配置」したものにおいて、各行の順方向電圧の平均値が全て等しくなるとは認められず、「少なくとも1つの前記行は、前記発光素子の順方向電圧の平均値が他の行と異なるように配置され」たものとなると認められる。 したがって、結局、上記相違点bに係る本願補正発明の発明特定事項は、照明装置の照度分布を均一とでき、また、異なる照明装置間での照度が不均一となることを防止できるように、引用例2に記載されるごとく、基準値より光度の高い発光素子と、光度の低い発光素子とを交互に配置するような構成とすることにより、当業者が容易に採用し得たものであって、その効果についても、当業者が予測可能なものであって、格別のものとはいえない。 5.小括 したがって、本願補正発明は、引用発明に引用例2に記載された技術事項及び周知の技術事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年3月4日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載される事項によって特定されるものであるところ、その請求項10に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1.に本件補正前の請求項10として記載した事項によって特定されるとおりのものである。 2.判断 本願発明は、本願補正発明における「平板状の基板」を「基板」としたものであるから、上記第2[理由]2.ないし4.の検討からみて、引用発明に引用例2に記載された技術事項及び周知の技術事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-03 |
結審通知日 | 2016-06-07 |
審決日 | 2016-06-21 |
出願番号 | 特願2012-536244(P2012-536244) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
河原 英雄 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 小松 徹三 |
発明の名称 | 発光装置 |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |
代理人 | 磯野 道造 |
復代理人 | 多田 悦夫 |