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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G08B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B |
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管理番号 | 1317819 |
審判番号 | 不服2016-666 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-15 |
確定日 | 2016-08-31 |
事件の表示 | 特願2011-164924「防災警報連携システム、防災警報連携方法及び警報器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日出願公開、特開2013- 29945、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成23年7月28日の出願であって、平成27年3月2日付けで拒絶理由が通知され、同年4月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月14日(発送日:同年10月21日)に拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成28年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がされ、その後、当審において同年6月17日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月30日に意見書及び手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年6月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりものである。 「【請求項1】 放送設備から送信された緊急情報信号の受信を検知した場合に、当該緊急情報信号に基づく緊急情報連携信号を送信する緊急警報装置と、 監視領域の異状を検知した場合に警報を音声出力すると共に、前記緊急警報装置から前記緊急情報連携信号の受信を検知した場合に、当該緊急情報連携信号に対応する防災情報を音声出力する警報器と、 を備えた防災警報連携システムに於いて、 前記緊急警報装置は、前記放送設備から送信された試験信号の受信を検知した場合に、当該試験信号に基づく試験連携信号を前記警報器へ送信し、 前記警報器は、前記試験連携信号の受信を検知した場合に、当該試験連携信号に対応する試験情報として、警報試験を行う旨のメッセージを、前記防災情報より低い音量で音声出力することを特徴とする防災警報連携システム。」 第3.原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 平成27年4月23日付けの手続補正書により補正された請求項1ないし13に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2011-22989号公報 2:特開2003-18673号公報 3:特開2004-311067号公報 4:特表2007-524882号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3には、緊急警報放送に含まれる緊急警報信号と試験信号を判別し、試験信号の場合に確認用ランプを点灯させる等、試験動作を実行する技術的手段(特に、[0029],[0030]等を参照されたい)が記載されている。また、引用文献4に記載されているように、緊急警戒警報信号を受信した際に音声による警報を発する緊急警戒警報機能について、テスト時にも音声による警報出力を予め定められた設定で発生する技術的手段(特に、段落[0025]-[0039]を参照されたい)は当業者にとって周知技術である。 してみれば、緊急放送受信時に警報器に音声出力させる構成とした引用文献1記載の発明において、試験信号の受信に応じて、警報器による予め定められた設定による音声出力を含む動作試験を実施するよう構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。また、動作試験時の音声出力を実際の音声出力と異なる、例えばより低い音量での音声出力とすることは、当業者が適宜なしえた事項である。 2.原査定の理由の判断 2-1.刊行物の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献1(特開2011-22989号公報)には、「警報システム」に関し、図面(特に、図1、図10、図11参照。)とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0009】 本発明は警報システムを提供するものであり、 異常を検出して連動元を示す警報を出力すると共に他の警報器に異常検出信号を無線送信し、一方、他の警報器からの異常検出信号を受信して連動先を示す警報を出力する1又は複数の警報器と、 伝送回線を介して外部の放送設備から送信された告知放送信号を受信して出力すると共に、警報器からの異常検出信号を受信して連動先を示す警報を出力させる告知放送受信機と、 を設けたことを特徴とする。」 イ.「【0015】 告知放送受信機の警報処理部は、告知放送情報を警報器に送信して音声出力させる。」 ウ.「【0018】 また告知放送受信機で緊急放送などを受信した場合、放送情報を警報器に送信して音声出力させることで、緊急放送による情報を警報器の連動関係を利用して住戸内に広く且つ迅速に伝えることができる。」 エ.「【0022】 住警器10-1?10-3は、イベント信号を相互に無線により送受信する機能を備え、住宅全体の火災監視を行っている。告知放送受信機100は同軸ケーブル又は光ファイバーケーブルなどの伝送路により外部の告知放送センター設備にCATCシステムのヘッドエンドを介して接続されており、一般放送や緊急放送を受信して出力する。また本実施形態の告知放送受信機100には住警器10-1?10-3と同じ火災を監視し、またイベント信号を相互に無線により送受信する機能を設けている。 【0023】 いま住宅24の台所で万一、火災が発生したとすると、住警器10-1が火災を検出して警報を開始する。この火災を検出して警報を開始することを、住警器における「発報」という。住警器10-1が発報すると、住警器10-1は連動元として機能し、連動先となる他の住警器10-2,10-3及び告知放送受信機100に対し、火災発報を示すイベント信号を無線により送信する。住警器10-2,10-3及び告知放送受信機100においては、連動元の住警器10-1からの火災発報を示すイベント信号を受信した場合に、警報音と警報表示により連動先としての警報動作を行う。」 オ.「【0082】 告知放送受信機100はワンチップCPUとして知られたプロセッサ150を備え、プロセッサ150に対してはアンテナ118を備えた無線通信部158、センサ部160、メモリ162、伝送回路部152、報知部154、及び操作部156を設けている。 【0083】 無線通信部158には送信回路164と受信回路166が設けられ、住警器10-1?10-3との間でイベント信号を無線により送受信できるようにしている。無線通信部158としては、日本国内の場合には、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD-30またはSTD-T67に準拠した構成を備える。 【0084】 記憶部としてのメモリ162には、イベント信号の順番を示す連続番号である連番48、住警器を特定するID(識別子)となる送信元符号50及び図1のように住宅の設置した住警器10-1?10-3及び告知放送受信機100で連動警報を行う連動グループを構成するためのグループ符号52が格納されている。」 カ.「【0092】 図11は図10の実施形態における告知放送受信機の基本的な処理を示したフローチャートである。図11において、告知放送受信機100の電源を投入すると、ステップS41で初期化及び自己診断を実行し、異常がなければステップS42に進み、告知放送イベント発生の有無を判別している。ステップS42で告知放送イベント発生を判別すると、ステップS43に進み、対応する告知放送処理を実行する。」 キ.記載事項ア.の「伝送回線を介して外部の放送設備から送信された告知放送信号を受信して出力すると共に、警報器からの異常検出信号を受信して連動先を示す警報を出力させる告知放送受信機」との記載、記載事項ウ.の「告知放送受信機で緊急放送などを受信した場合、放送情報を警報器に送信して音声出力させる」との記載、記載事項オ.の段落【0083】の「無線通信部158には送信回路164と受信回路166が設けられ、住警器10-1?10-3との間でイベント信号を無線により送受信できるようにしている。」との記載及び記載事項カ.の「告知放送受信機100の電源を投入すると、ステップS41で初期化及び自己診断を実行し、異常がなければステップS42に進み、告知放送イベント発生の有無を判別している。ステップS42で告知放送イベント発生を判別すると、ステップS43に進み、対応する告知放送処理を実行する。」との記載によれば、告知放送受信機100は、告知放送信号に基づく告知放送イベントの信号を住警器10-1?10-3に送信することが分かり、また、住警器10-1?10-3は当該告知放送イベントの信号に対応する防災情報を音声出力することが分かる。 上記の記載事項及び認定事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「放送設備から送信された告知放送信号の受信を検知した場合に、当該告知放送信号に基づく告知放送イベントの信号を送信する告知放送受信機100と、 住宅24の火災を検知した場合に警報を音声出力すると共に、前記告知放送受信機100から前記告知放送イベントの信号の受信を検知した場合に、当該告知放送イベントの信号に対応する防災情報を音声出力する住警器10-1?10-3と、 を備えた防災情報システム。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献2(特開2003-18673号公報)には、「緊急制御装置」に関し、図面(特に、図1、図2参照。)とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0013】緊急制御システム1は、放送局側からの緊急警報放送を受信し、この緊急警報放送を解析して緊急警報のレベルを把握し、この緊急警報のレベルに応じて、家庭内で使用される種々の家庭内機器(7a、7b、7c、7d、7e)を自動的に制御するシステムである。」 イ.「【0030】そして、緊急制御装置3の制御部13は、解析結果とメモリ部11に蓄積されている地域情報とに基づいて、緊急警報放送による指定地域に自宅場所が含まれているかを判定する(判断する)(S3)。自宅場所が含まれていると判定されない場合には、緊急制御装置1の動作が終了する。自宅場所が含まれていると判定された場合には、緊急制御装置1の家庭内制御手段13bによって、家庭内機器7が以下に述べるように制御される(制御信号が送信される)(S4)。この制御は緊急警報信号の種別によって異なる。 【0031】スタンバイ状態のテレビ7d、ラジオ(図示せず)などの機器の電源が投入される。テレビ7a、ラジオ(図示せず)を緊急警報放送チャンネルにチューニングさせる。夜間の場合、照明器具7eを点灯させる。ステレオ7b、音響機器を制御し、警報音やメッセージを鳴らす。 【0032】さらに、制御部13の警報解析手段13aによる解析結果において、信号種別が第一種信号(大規模地震の警戒)であるかどうかが判断される(S5)。第一種信号であると判断された場合には、ホームサーバ(緊急制御装置1)からの制御によって、ガス器具7c、暖房機器の運転を停止させ、ガスの元栓を締める(S6)。なお、この実施の形態において、信号の種別には、第一種信号:大規模地震の警戒、第二種信号:津波警報、終了信号:緊急警報放送終了時がある。」 (3)原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献3(特開2004-311067号公報)には、「屋外用照明装置」に関し、図面(特に、図3参照。)とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0019】 照明灯6の点灯回路27はその点灯と消灯を制御する制御回路20に接続され、さらに制御回路20には昼夜判別回路21が接続されている。制御回路20は、昼夜判別回路21が夜を判別したとき、点灯回路27に点灯信号を送り、照明灯6を点灯させるように動作する。」 イ.「【0021】 さらに、図3に示すように、制御回路20には緊急放送受信機23が接続される。緊急放送受信機23は、アンテナに接続された同調回路、局部発信回路、中間周波増幅器、検波回路、低周波増幅器、信号識別回路などから構成され、所定の周波数の緊急警報信号を受信するように構成される。緊急警報信号は地震警報のための640Hzと津波警報のための1024Hzの信号からなり、信号識別回路は、受信され検波して取り出した低周波信号を識別して、640Hz、1024Hzの信号を検出する。 【0022】 また、制御回路20には、ラジオ受信機30が接続される。ラジオ受信機30は、アンテナに接続された同調回路、局部発信回路、中間周波増幅器、検波回路、低周波増幅器、スピーカ31などから構成され、例えばNHKなどの放送局から送信されるラジオ放送を受信するように構成される。ラジオ受信機30は、制御回路20によりその動作が制御され、緊急警報信号が緊急放送受信機23によって受信され、その信号が制御回路20に送られたとき、制御回路20は、ラジオ受信機30を受信動作させ、NHKなどの放送を受信してスピーカ31から放送を流すように動作する。 【0023】 さらに、制御回路20には、緊急警報信号の試験信号を受信した際、その試験信号の受信を確認するために点灯される確認用ランプ28が、点灯回路34を介して接続される。緊急警報信号の試験信号は、緊急警報信号とは異なった周波数で送信され、その信号を緊急放送受信機23が受信すると、試験信号の受信信号が出力され、制御回路20は確認用ランプ28を点灯する。その確認用ランプ28は確認がし易いように、支柱2の中間部に取り付けられた制御函9等に設置される。」 ウ.「【0029】 次に、制御回路20は、ステップ190に進み、緊急警報信号の試験信号が受信されたか否かを判定する。このとき、NHKなどの緊急警報放送用実験局免許を得た放送局から、緊急警報信号の試験信号が送信された場合、緊急放送受信機23で、この緊急警報信号の試験信号が受信される。この緊急警報信号の試験信号は、本来の緊急警報信号とは異なった周波数の搬送波で送信され、緊急放送受信機23において、緊急警報信号とは異なった試験信号として検出され出力される。 【0030】 このように、試験信号を受信したとき、制御回路20は、ステップ190からステップ200に進み、点灯回路34に点灯信号を出力して確認用ランプ28を所定時間点灯させる。したがって、照明装置の保守点検を行なう場合、予め決められた試験信号の送信時に、確認用ランプ28の点灯を視認して試験信号の受信を確認するようにすれば、緊急放送受信機23の動作を容易に確認することができる。」 (4)拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された前記引用文献4(特表2007-524882号公報)には、「緊急警戒警報機能を有する装置の自己診断テスト」に関し、図面(特に、図1参照。)とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0004】 特定区域メッセージ符号化(SAME)技術のような技術を使用する緊急警戒警報機能を有する装置では、緊急警戒警報機能の適正な動作を確保することが望ましい。現在このような装置は、週1回放送される/或いは外部のテスト設備から発生される、テスト信号を受信し処理することにより緊急警戒警報機能の動作をテストする。特に、このような装置はテスト信号を処理して、設定プロセスの間にユーザが選択した地理的区域および緊急事態のタイプに該当する非常事態の発生をテスト信号が伝えると、緊急警戒警報機能が確実に起動されるようにする。」 イ.「【0013】 実施例によれば、信号送信源10は、各テレビジョン信号受信機20で受信されるオーディオ(音声)、ビデオ(映像)および他の緊急警戒警報信号を含む信号を送信する。1つの実施例によれば、緊急警戒警報信号は、米国立測候所(NWS)のような当局、または政府政機関などのような他の当局から供給される。信号送信源10は、当局から供給される緊急警戒警報信号を原形のままで送信し、または緊急警戒警報信号を表すディジタル・データを他のデータに追加し、或いは緊急警戒警報信号を、その特定の送信形式のニーズに適するように変更する。緊急警戒警報信号に応答して、各テレビジョン信号受信機20は、1つまたは複数の警報出力を発生し、個々の人々に緊急事態を通知する。信号送信源10は、地上、ケーブル、衛星、光ファイバ、ディジタル加入者線(DSL)、および他の形式の放送/マルチキャスト(同報通信)手段のような、有線または無線リンク(しかし、これらに限定されない)を介して、テレビジョン信号受信機20に信号を送信する。」 ウ.「【0033】 図4に、本発明の実施例によるステップをフローチャート400で説明する。図4のステップは特に、本発明により、緊急警戒警報機能に関する自己診断テストがいかに実行されるかを説明する。図4のステップも、図2のテレビジョン信号受信機20に関して説明する。図4のステップは単に例示的なものであり、本発明を限定することを意図するものではない。 【0034】 ステップ410で、プロセッサ27はテスト・データをメモリ27から取り出し、このテスト・データをデコーダ26に供給する。実施例では、テスト・データは、緊急事態の間にテレビジョン信号受信機20で以前に受信されたSAMEデータを表す。別の実施例では、テスト・データは、緊急警戒警報機能の自己診断テストにのみ使用される所定のSAMEデータを表す。前述したように、SAMEデータには、非常事態のタイプ(例えば、竜巻の注意報、放射線の危険警報、国内の緊急事態など)、および非常事態の影響を受けた特定の地理的区域(エリア)を表示する情報が含まれる。 【0035】 ステップ420で、デコーダ26はテスト・データを復号化し、その復号化された信号を処理して、テレビジョン信号受信機20の緊急警戒警報機能が正常に動作している(誤動作がない)かどうか確認(判定)する。ステップ430で、プロセッサ27はテレビジョン信号受信機20が規定どおりテスト信号に応答しているかどうか検知することにより、これを確認するようプログラムされる。例えば、ステップ430で、プロセッサ27は、図3のステップ310で指定するユーザ設定データと一致するようテレビジョン信号受信機20がテスト信号に応答するかどうか確かめる。 【0036】 ステップ430におけるこの確認がYES(はい)であれば、プロセスの流れはステップ440に進み、ここで、緊急警戒警報機能が正常に動作していることを示す出力が発生される。ステップ440で発生される出力は聴覚的/視覚的出力である。図5は、ステップ440で供給される視覚的出力メッセージの一例を示す。他のタイプの視覚的出力(前述したディスプレイ29の表示要素を使用するようなもの)も、本発明により、ステップ440で発生される。本発明の変形によれば、ステップ440の出力は、緊急警戒警報機能が正常に動作しているので、省略される。ステップ440で出力を発生するかどうか(もしそうであれば、出力のタイプ)の選択は、例えば、図3のステップ310における緊急警戒警報機能の設定プロセスの間にユーザが決定する。 【0037】 ステップ430における確認がNO(いいえ)であれば、プロセスの流れはステップ450に進みここで、緊急警戒警報機能の誤動作が検出されたことを表示する出力が発生される。ステップ450で発生される出力は、聴覚的または視覚的出力である。図6は、ステップ450で発生される視覚的出力メッセージ600の一例を示す。図6に例示するように、出力メッセージ600は、緊急警戒警報機能の動作状態を改善するためにとるべき訂正行為(例えば、信号の受信を改善するためにテレビジョン信号受信機20に外部アンテナを接続するようユーザに指図する)を表示する。他のタイプの視覚的出力(前述した、ディスプレイ29の表示要素を使用するようなもの)も、本発明により、ステップ450で発生される。 【0038】 図4に示す自己診断テスト(self-diagnostic test)は、テレビジョン信号受信機20にユーザが入力する、例えば、『今、テストする(test now)』に応答して実行され、周期的(毎日、1日置き、など)に自動的に実行される。自動的に実行される場合、自己診断テストが実行される頻度は、例えば、図3のステップ310における緊急警戒警報機能に関する設定プロセスでユーザが決定する。図4に示す自己診断テストは、前述した週一回放送されるテストと連係して行われ、それにより、緊急警戒警報機能の適正な動作を確実にする付加的手段が得られる。」 (5)前置報告書において周知技術を示す文献として引用された特開2000-20841号公報(以下、「引用文献5」という。)には、「短絡試験機能を有した音声警報システム」に関し、図面(特に、図1参照。)とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0015】自火報受信機Aは、火災感知器Sのいずれかが発報したことを、火災検出部8で検出すると、情報処理回路1は、表示部11に火災警報表示を行い、内蔵警報装置(不図示)から火災感知器Sが発報したことを音声メッセージなどで出力するとともに、記憶部10を参照する。記憶部10には、予め、各火災感知器Sに対して音声警報を出力するスピーカ回線L1,L2が回線番号などで記憶されているので、情報処理回路1は、発報した火災感知器Sに対応したスピーカ回線L1,L2から音声警報を出力させるべく、そのスピーカ回線L1,L2を指定して、アンプ回路6、トランス7を介し、住戸用音声信号出力部2、共用部用音声信号出力部4から音声警報を出力させる。これによって、発報した火災感知器Sの近くにいる人は、迅速に避難することが出来る。 イ.「【0020】次に、図2に、上記した短絡試験時の自火報受信機Aの動作をフローチャート(100?108)で示す。ここでは、ある1回線のスピーカ回線L1,L2に対してのみ試験を行う場合を示している。まず、スイッチ操作部9の短絡試験スイッチを操作すると(100)、ここでは、音声出力部2,4は、試験対象とするスピーカ回線L1,L2に試験開始メッセージを出力している(101)。例えば、『ただ今から、試験を行います』といったメッセージを出力することによって、住戸人などは、試験による警報出力を、実際の火災の発生などによる警報出力と間違わずに済む。」 (6)前置報告書において周知技術を示す文献として引用された特開昭59-30192号公報(以下、「引用文献6」という。)には、「ガス漏れ警報装置」に関し、図面(特に、第2図参照。)とともに次の事項が記載されている。 ア.「第1図は本発明のガス漏れ警報装置の一実施例を示す。第1図において、検知部1は空気中のガス成分がある濃度以上になるとガス検知を示す電気信号を制御部2へ出力する。一方、テストスイッチ部4はテスト側と通常運転側との2値をとるものであり、前記テストスイッチ部4が通常運転側を指示する信号を前記制御部2へ出力し、かつ前記検知部1からガス検知を示す電気信号が出力された時には、前記制御部2は出力合成部3へ発生すべき警報音あるいは警報音声を指示する出力指示信号を出力し、前記出力合成部3は前記出力指示信号に従った警報音あるいは警報音声を、正弦波発振、シンセサイザー、音声合成等の技術を用いて出力する。又、前記テストスイッチ部4がテスト側を指示する信号を前記制御部2へ出力し、かつ前記検知部1からガス検知を示す電気信号が出力された時には、前記制御部2は出力合成部3ヘテストに関して発生すべき音あるいは音声を指示する出力指示信号を出力し、前記出力合成部3は前記出力指示信号に従った音あるいは音声を、前述の警報音あるいは警報音声よりも6dB程度小さな音量で、『テストは無事完了です。』等のテストに関するメツセ-ジあるいは、単一正弦波等の危機感を与えない効果音として出力する。」(公報第2ページ左下欄第10行ないし右下欄第13行) 2-2.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「告知放送信号」は本願発明における「緊急情報信号」に相当し、以下同様に、「告知放送イベントの信号」は「緊急情報連携信号」に、「告知放送受信機100」は「緊急警報装置」に、「住宅24」は「監視領域」に、「火災」は「異状」に、「住警器10-1?10-3」は「警報器」に、「防災情報システム」は「防災警報連携システム」に、それぞれ相当する。 そこで、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 [一致点] 「放送設備から送信された緊急情報信号の受信を検知した場合に、当該緊急情報信号に基づく緊急情報連携信号を送信する緊急警報装置と、 監視領域の異状を検知した場合に警報を音声出力すると共に、前記緊急警報装置から前記緊急情報連携信号の受信を検知した場合に、当該緊急情報連携信号に対応する防災情報を音声出力する警報器と、 を備えた防災警報連携システム。」 そして、両者は次の点で相違する。 [相違点] 本願発明においては、「緊急警報装置は、前記放送設備から送信された試験信号の受信を検知した場合に、当該試験信号に基づく試験連携信号を前記警報器へ送信し、前記警報器は、前記試験連携信号の受信を検知した場合に、当該試験連携信号に対応する試験情報として、警報試験を行う旨のメッセージを、前記防災情報より低い音量で音声出力する」のに対し、引用発明においては、これらのことが明らかでない点。 2-3.判断 上記相違点について検討する。 本願発明では、「緊急警報装置は、前記放送設備から送信された試験信号の受信を検知した場合に、当該試験信号に基づく試験連携信号を前記警報器へ送信し、前記警報器は、前記試験連携信号の受信を検知した場合に、当該試験連携信号に対応する試験情報として、警報試験を行う旨のメッセージを、前記防災情報より低い音量で音声出力する」ことにより、緊急警報装置により例えば毎月1日の正午前に送信される緊急地震放送の試験放送を検知し、警報器に試験連携信号を送信して試験するようにしたため、人為的な操作を必要とすることなく、所定の点検周期毎に緊急警報装置と警報器の連携および警報器の報知動作の試験を自動的に行うことができ(本願明細書段落【0030】を参照。)、また、消費電流を低減して電池消耗を抑制できるものである(本願明細書段落【0057】を参照。)。 引用文献2(前記「2-1(2)」を参照。)には、緊急制御装置3に関して、放送局側からの緊急警報放送を受信緊急警報放送を受信した場合に、この緊急警報放送を解析して緊急警報のレベルを把握し、テレビ7a、ラジオ、照明器具e等を制御することが記載されている(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)。 しかし、引用文献2に記載された事項における緊急制御装置3は、放送局(本願発明の「放送設備」に相当。)から送信された試験信号を解析するものではなく、放送局から送信された試験信号を試験連携信号として警報器に送信するものでもない。 そうすると、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用したとしても、相違点に係る本願発明の発明特定事項とはならない。 引用文献3(前記「2-1(3)」を参照。)には、屋外用照明装置に関して、緊急放送受信機23は、放送局(本願発明の「放送設備」に相当。)から送信された試験信号の受信を検知した場合に、当該試験信号を照明灯6の制御回路20へ送信し、前記照明灯6の制御回路20は、前記試験信号の受信を検知した場合に、当該試験信号に対応する試験情報として、確認用ランプ28を点灯することが記載されている(以下、「引用文献3に記載された事項」という。)。 しかし、引用文献3に記載された事項における緊急放送受信機23は、放送局から送信された試験信号を試験連携信号として警報器に送信するものではなく、警報器が、該試験連携信号に対応する試験情報として、警報試験を行う旨のメッセージを、前記防災情報より低い音量で音声出力する警報試験を行う旨のメッセージを、防災情報より低い音量で音声出力するものでもない。 そうすると、引用発明に引用文献3に記載された事項を適用したとしても、相違点に係る本願発明の発明特定事項とはならない。 拒絶査定において、周知技術として引用された引用文献4(前記「2-1(4)」を参照。)には、緊急警戒警報機能を有する装置の自己診断テストに関して、テレビジョン信号受信機20は、信号送信源10から送信されたテスト信号の受信を検知した場合に、自己診断テストを実行することが記載されている(以下、「引用文献4に記載された事項」という。)。 前置報告書において周知技術として引用された引用文献5(前記「2-1(5)」を参照。)には、短絡試験機能を有した音声警報システムに関して、自火報受信機A(本願発明の「警報器」に相当。)は、短絡試験スイッチが操作されると、警報試験を行う旨のメッセージを、音声出力することが記載されている(以下、「引用文献5に記載された事項」という。)。 前置報告書において周知技術として引用された引用文献6(前記「2-1(6)」を参照。)には、ガス漏れ警報装置に関して、ガス漏れ警報装置(本願発明の「警報器」に相当。)は、テストスイッチ部4が操作されると、警報試験に関する旨のメッセージを、警報音声より小さい音量で音声出力する出力することが記載されている(以下、「引用文献6に記載された事項」という。)。 しかし、周知技術として引用された引用文献4ないし6に記載された事項は、本願発明の上記相違点に係る発明特定事項である「緊急警報装置は、前記放送設備から送信された試験信号の受信を検知した場合に、当該試験信号に基づく試験連携信号を前記警報器へ送信し、前記警報器は、前記試験連携信号の受信を検知した場合に、当該試験連携信号に対応する試験情報として、警報試験を行う旨のメッセージを、前記防災情報より低い音量で音声出力する」点について、記載または示唆するものではない。 そして、引用文献2及び3に記載された事項は、本願発明の上記相違点に係る構成である「緊急警報装置は、前記放送設備から送信された試験信号の受信を検知した場合に、当該試験信号に基づく試験連携信号を前記警報器へ送信し、前記警報器は、前記試験連携信号の受信を検知した場合に、当該試験連携信号に対応する試験情報として、警報試験を行う旨のメッセージを、前記防災情報より低い音量で音声出力する」点について、記載または示唆するものではないから、たとえ引用発明に引用文献2及び3に記載された事項、並びに周知技術を示す文献として引用された引用文献4ないし6に記載された事項を適用したとしても、本願発明の上記相違点に係る構成に至ることが容易であるとはいえない。 したがって、上記相違点に係る構成を具備する本願発明は、引用発明、引用文献2及び3に記載された事項並びに周知技術として引用された引用文献4ないし6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2-4.小括 したがって、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願の請求項2ないし5に係る発明は、本願発明を引用し、本願発明を更に限定するものであるから、本願発明と同様に、引用発明、引用文献2及び3に記載された事項並びに周知技術として引用された引用文献4ないし6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願の請求項6に係る発明は、システムの発明である本願発明を、実質的に方法の発明である防災警報連携方法としたものであり、また、本願の請求項7に係る発明は、システムの発明である本願発明を、実質的に物の発明である警報器としたものであるから、本願発明と同様に、引用文献2及び3に記載された事項、並びに周知技術を示す文献として引用された刊行物4ないし6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4.当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ア.請求項3の「前記防災情報より低い音量で前記スピーカから出力させる連携先制御部と」における「出力」との記載は、請求項3が引用する請求項1における記載と異なるため明確でない。 イ.請求項7の「監視領域の異状を検知した場合に警報を報知出力する警報器」における「報知出力」との記載は、他の請求項における記載と異なるため明確でない。 ウ.請求項7における「外部装置」とは、どのような装置であるかが明確でない。 エ.請求項7の「前記防災情報より低い音量で前記スピーカから出力させる連携先制御部」における「出力」との記載は、他の請求項における記載と異なるため明確でない。 2.当審拒絶理由の判断 平成28年6月30日付けの手続補正により、請求項3における「出力」は「音声出力」と補正され、請求項7における「報知出力」は「音声出力」と補正され、請求項7における「外部装置」は「放送設備から送信された緊急情報信号の受信を検知した場合に、当該緊急情報信号に基づく緊急情報連携信号を送信する緊急警報装置」と補正され、請求項7における「出力」は「音声出力」と補正された。 よって、当審拒絶理由は解消した。 第5.むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-08-19 |
出願番号 | 特願2011-164924(P2011-164924) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G08B)
P 1 8・ 121- WY (G08B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 二階堂 恭弘、齋藤 正貴、山岸 登 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 小関 峰夫 |
発明の名称 | 防災警報連携システム、防災警報連携方法及び警報器 |
代理人 | 竹内 進 |