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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B22F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1317886
審判番号 不服2015-15067  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-11 
確定日 2016-08-12 
事件の表示 特願2012- 55282「シート状多孔体およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-189666〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年3月13日の出願であって、平成26年10月16日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年5月22日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成27年8月11日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出されたものである。

2.平成27年8月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成27年8月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成27年8月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
金属繊維を用いて構成された金属多孔体であって、前記多孔体には1cm^(3)当たりの空隙率の異なる部位が、少なくとも2以上、含まれており、前記2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10?15%の範囲にあることを特徴とするシート状多孔体。」と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された、「金属多孔体」について、「金属繊維を用いて構成された」と限定するとともに、「空隙率の差異」について、「10?20%の範囲」を「10?15%の範囲」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物の記載事項および引用発明
本件出願前に日本国内において頒布された特開平8-243323号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、湿式積層法で異なる金属短繊維の各スラリーを適度のタイミングで供給し堆積を継続させて積層した後、焼結して積層金属繊維フイルタに製造する金属繊維フイルタの積層製法及び積層金属繊維フイルタに関するものである。」

(イ)「【0020】また、繊維径4μmと繊維径3μm及び繊維径2μmの各金属短繊維で、各単層金属繊維を個別に形成し重ねて焼結した3種(平均空隙率65%、75%、85%)の積層金属繊維フイルタ(従来例)と、同様な各繊維径の金属短繊維で、実施例に基づき継続して積層し焼結した3種の積層金属繊維維フイルタを製造して、これらの試料を試験液(砂SiO_(2) :5mg/リットル,ろ過圧:600mm/H_(2)O,初期流量の1/5まで)でろ過試験して、図2のような各試料のろ過特性図が得られた。図中×印は従来例のろ過特性曲線、O印は実施例のろ過特性曲線を示す。」

ここで、上記記載事項(ア)(イ)を整理するに、上記記載事項(ア)によれば、引用刊行物1は、積層金属繊維フイルタについて開示するものであって、このフィルタは具体的には、上記記載事項(イ)によれば、平均空隙率65%、75%、85%の3つの部位からなる。この内の、平均空隙率65%の部位と75%の部位、75%の部位と85%の部位とのそれぞれ2箇所の部位について、平均空隙率が異なる部位といえる。そして、平均空隙率の差異は、絶対値基準で10%である。ここで、平均空隙率あるいは空隙率の一般的な算出法として、(1-実際の密度(g/cm^(3))/計算上の密度(g/cm^(3)))×100(%)による方法があることから、引用刊行物1には、2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10%であるフィルタが開示されているといえる。

すると、引用刊行物1には、
「積層金属繊維フィルタであって、前記積層金属繊維フィルタには1cm^(3)当たりの空隙率の異なる部位が、少なくとも2以上、含まれており、前記2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10%である積層金属繊維フィルタ。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

(3)対比・判断
両発明を対比すると、引用発明1の「積層金属繊維フィルタ」は、金属繊維からなるフィルタであって、液を透過させるものであるから、金属多孔体ということができ、本願補正発明の「金属繊維を用いて構成された金属多孔体」ということができる。

よって、両者は、下記の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「金属繊維を用いて構成された金属多孔体であって、前記多孔体には1cm^(3)当たりの空隙率の異なる部位が、少なくとも2以上、含まれており、前記2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10%である多孔体。」

(相違点)
本願補正発明の多孔体が、「シート状」であるのに対して、引用発明は、シート状であるか否か不明である点。

上記相違点についての検討する。
フィルタとしてシート状フィルタは一般的であり周知である。金属繊維からなるフィルタに関しても同様であって、例えば、特開2000-129311号公報には、金属繊維からなる主層と補助層とを含むフィルタ等についてシートであるとしたものが開示され、特開平4-337007号公報にも、金属繊維からなるフィルタ等についてシートであるとしたものが開示されている。
そうであれば、引用発明のフィルタにおいて、その使用態様に応じて、そのフィルタをシート状とすることは格別困難といえない。

そして、本願補正発明によって奏される効果も、引用刊行物1に記載された事項及び周知の技術から予測し得る範囲のものであって格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用刊行物1に記載された事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成26年12月3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1、3は以下のとおりである。

「【請求項1】
金属多孔体であって、前記多孔体には1cm^(3)当たりの空隙率の異なる部位が、少なくとも2以上、含まれており、前記2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10?20%の範囲にあることを特徴とするシート状多孔体。
・・・
【請求項3】
前記多孔体が金属繊維を用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート状多孔体。」

そして、請求項3を独立形式で記載すると、次のようになる。
「【請求項3】
金属繊維を用いて構成された金属多孔体であって、前記多孔体には1cm^(3)当たりの空隙率の異なる部位が、少なくとも2以上、含まれており、前記2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10?20%の範囲にあることを特徴とするシート状多孔体。」(以下、請求項3に係る発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物の記載事項および引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に日本国内において頒布された特開2004-315909号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、板面に沿う方向に流体を流すことにより流体中に含まれる異物を効率よく捕捉するフィルタや、毛管作用により吸着した液体を効率よく気化させる媒体および燃料電池のガス拡散層等に利用可能な多空隙質体およびその製造方法に関する。」

(イ)「【0029】
次ぎに、上記ガス拡散層6についてさらに詳細に説明する。
このガス拡散層6は、図1に示すように、四角形の平板状に形成され、その板面に沿う方向において空隙率を異ならせた多空隙質体によって形成されている。そして、この実施の形態において、ガス拡散層6は、平行に対向する一方の辺6Aから他方の辺6Bに向けて空隙率が例えば90%から80%まで漸次低下するように形成されているとともに、一方の辺6Aが上記流入口41、51側に配置され、他方の辺6Bが流出口42、52側に配置されている。すなわち、ガス拡散層6は、前述の図2および図3、後述の図6において、流入口41、51側に空隙率の大の部分が配置され、流出口42、52側に空隙率の小の部分が配置されている。」

(ウ)「【0033】
そして、ガス拡散層6は、上述したステンレス鋼の粉末を原料粉末とし、この原料粉末を40?60重量%、水溶性樹脂バインダーとしてのメチルセルロースを5?14重量%、界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸塩を1?3重量%、発泡剤としてのヘキサンを0.5?3重量%、残部を水および不可避不純物とするものを混練機で混合してなる発泡性スラリー60(図5参照)を原料として成形されたものである。上記原料粉末は、平均粒径が例えば約10μmのものである。」

(エ)「【0054】
例えば、厚さが0.05mmで、空隙率が40%から80%に徐々に変化するものや、厚さが0.2mmで、空隙率が60%から90%に徐々に変化するものや、厚さが2.0mmで、空隙率が90%から97%に徐々に変化するものや、厚さが0.5mmで、空隙率が70%と80%と90%との3つに段階的に変化するもの等からなる面内に空隙率の異なるガス拡散層6を成形することができる。」

(オ)「【0074】
請求項7に記載の発明によれば、発泡性スラリーを段階的に厚さを変えて板状に成形してからこの発泡性スラリーの板状体を発泡させることによってグリーン板を成形し、このグリーン板を、焼成前または焼成後に所定の厚さに圧縮または圧延成形することによって、板面に沿う位置に応じて段階的に空隙率が異なるものを容易に製造することができる。」

・上記記載事項(ア)、(ウ)によれば、フィルタや燃料電池のガス拡散層等に利用可能な、ステンレス鋼の粉末からなる多空隙質体について開示されているといえる。
・上記記載事項(イ)によれば、多空隙質体をガス拡散層とした例で、その板面に沿う方向に空隙率が、90%から80%まで漸次低下させて形成したものが開示されており、また、上記記載事項(オ)を参照すれば、空隙率は段階的に変化させてよいので、空隙率が90%の部位と80%の部位との2箇所の部位に形成させるものも開示されているといえる。この空隙率が90%と80%との2箇所の部位は、空隙率の差異が、絶対値基準で10%である。この場合も同様に1cm^(3)当たりの空隙率が開示されているといえる。
・上記記載事項(エ)には、空隙率が70%と80%と90%との3つに段階的に変化させるものが開示されていることから、ここにも、70%と80%、80%と90%とそれぞれ2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10%であるものが開示されているといえる。
・上記記載事項(イ)には、ガス拡散層として平板状との記載があり、上記記載事項(エ)には、空隙率が3段階に変化するものについて、厚さが0.5mmとあることから、この平板状のガス拡散層はシート状ということができる。

すると、引用刊行物2には、
「ステンレス鋼の粉末からなる多空隙質体であって、前記多空隙質体には1cm^(3)当たりの空隙率の異なる部位が、少なくとも2以上、含まれており、前記2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10%であるシート状多空隙質体。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明と引用発明2を対比すると、引用発明2の「ステンレス鋼の粉末からなる多空隙質体」と、本願発明の「金属繊維を用いて構成された多孔体」は、「金属多孔体」である点で共通する。

よって、両者は、以下のとおりの一致点、相違点を有する
(一致点)
金属多孔体であって、前記多孔体には1cm^(3)当たりの空隙率の異なる部位が、少なくとも2以上、含まれており、前記2箇所の部位の1cm^(3)当たりの空隙率の差異が、絶対値基準で10%であるシート状多孔体。

(相違点)
金属多孔体が、本願発明では、「繊維を用いて構成された」ものであるのに対して、引用発明は、「粉末からなる」点。

(4)相違点についての検討
金属多孔体として、金属粉末を使用するもの、金属繊維を使用するものはいずれも周知であって、どちらも適宜に採用可能であるといえる。例えば前掲の、引用刊行物1、特開2000-129311号公報、特開平4-337007号公報などには金属繊維を使用した多孔体の例が開示されている。また、特開2005-533173号公報には、燃料電池のガス拡散層等に関し金属繊維を使用した例が開示されている。
そして、金属繊維を使用した場合であっても、その多孔体としての空隙率を適宜に変化させ得ることは、上に挙げた周知例などからみて明らかである。
そうであれば、引用発明のような多空隙質体において、金属の粉末に変えて、金属繊維を使用するようにすることは、当業者にとって容易ということができる。

そして、本願発明によって奏される効果も、引用刊行物2に記載された事項及び周知の技術から予測し得る範囲のものであって格別のものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用刊行物2に記載された事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-20 
結審通知日 2016-06-22 
審決日 2016-06-30 
出願番号 特願2012-55282(P2012-55282)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B22F)
P 1 8・ 121- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 河野 一夫
鈴木 正紀
発明の名称 シート状多孔体およびその製造方法  
代理人 末成 幹生  
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