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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1317892 |
審判番号 | 不服2015-22134 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-15 |
確定日 | 2016-08-12 |
事件の表示 | 特願2014- 66425「電子機器、サーバー、および、モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 2日出願公開、特開2015-191942〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成26年3月27日の出願であって、平成27年9月11日付け(発送日:同年9月15日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成27年12月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。 2 平成27年12月15日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の結論] 平成27年12月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1) 補正後の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「筐体に固定され主面にコネクタが搭載された基板と、 前記コネクタに接続される端子部を有し、前記コネクタに対して着脱可能とされるモジュールと、を備え、 前記モジュールは、前記端子部よりも前記コネクタへの装着方向に突出する突出部を備え、 前記基板は、前記突出部を避ける回避部を備え、 前記突出部は、前記モジュールが前記コネクタに対して装着された状態で、前記モジュールの装着方向で、前記筐体の底面と前記基板との間の空間まで突出し、前記モジュールが前記コネクタに対して装着された状態で、前記モジュールの装着方向における前記突出部の前記底面側の端部は、前記底面よりも前記基板側に配され、前記底面側の端部は、前記底面に接触しない位置に配置される電子機器。」 と補正された。 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「突出部」について「前記モジュールが前記コネクタに対して装着された状態で、前記モジュールの装着方向における前記突出部の前記底面側の端部は、前記底面よりも前記基板側に配され、前記底面側の端部は、前記底面に接触しない位置に配置される」との限定(以下「限定事項」という。)を付すものであり、かつ、補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2) 引用文献及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-263495号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「[産業上の利用分野] 本発明は、音響機器等内に収納されている複数の基板間同士の電気的接続に改良を施した、基板接続構造に関するものである。」(1ページ左下欄17行?20行) イ 「なお、本実施例の基板接続構造では、横基板11a,11bの端部に上下プラグ14a,14b,15a,15bを配設したが、本実施例に限定されるものではなく、第7図に示すように、上下基板11a,11bの各々中央に縦基板16を設けた場合、下基板11bの中央に下プラグ19cが装着されている。この下プラグ19cに対応する位置に、上基板11aに逃げのための開口部20が形成されている。この開口部20は、下プラグ19cの外径寸法より大きく設定され、上基板11aが組付けられた後も開口部20を介して下プラグ19cは見ることができる。又、上基板11aにおいては、上基板11aと下基板11bが組付け状態の位置の時に、下プラグ19cと同一直線上に載る様に上プラグ19a,19bが配置されてる。又、各プラグ19a,19b,19cの配置位置は図示しないが、本実施例のβ,γ,δ,εのパラメータと同様に定められている。 一方、縦基板16の両端に、上プラグ19a,19bに対応して上ソケット21a,21bが設けられ、両端部より寸法αだけ突出した突出部22が形成されており、この突出部22に下ソケット21cが配置されている。これら上下ソケット21a,21b,21cの配設位置も、本実施例のβ,γ,δ,εのパラメータと同様に定められている。 この様に構成された基板接続構造においても、上下ソケット21a,21b,21cは同一平面上に設けられているので、上下基板11a,11bに縦基板16を組付けると同時に、上下プラグ19a,19b,19cにソケット21a,21b,21cが挿し込まれ、基板同士の電気的接続ができる。」(3ページ左下欄9行?4ページ左上欄1行) ウ 「[発明の効果] 以上の通り、本発明によれば、あらかじめ配置されている複数枚の横に配設された基板に対して、縦基板を上方より挿し込む作業を1回行うことにより、基板の組付けと同時に基板同士の電気的接続ができ、又、分解する場合も縦基板を抜くだけで容易に解体できるので、基板接続が容易で作業性に優れた信頼性のある基板接続構造の提供が可能となる。」(4ページ左下欄3行?11行) エ 第7図を参照すると、上基板11aには、その上側の面に上プラグ19a、19bが配置されていること、及び縦基板16は、上ソケット21a、21bよりも挿し込む方向に突出した突出部22、及び突出部22に配置された下ソケット21cを備えていることが、見て取れる。 オ 第7図、及び上記「イ」の「この下プラグ19cに対応する位置に、上基板11aに逃げのための開口部20が形成されている。この開口部20は、下プラグ19cの外径寸法より大きく設定され、上基板11aが組付けられた後も開口部20を介して下プラグ19cは見ることができる。」との記載を参照すれば、開口部20は、組付け時に突出部22及び下ソケット21cを逃がすためのものといえる。 カ 第7図、及び上記「イ」の「上下基板11a,11bに縦基板16を組付けると同時に、上下プラグ19a、19b、19cにソケット21a、21b、21cが挿し込まれ、基板同士の電気的接続ができる。」との記載を参照すれば、縦基板16の上ソケット21a、21bが、上基板11aの上プラグ19a、19bに対して挿し込まれた状態で、突出部22に設けられた下ソケット21cが、下基板11bに設けられた下プラグ19cに挿し込まれるようになっているといえる。 キ 上記「ウ」の、「あらかじめ配置されている複数枚の横に配設された基板に対して、縦基板を上方より挿し込む作業を1回行うことにより、基板の組付けと同時に基板同士の電気的接続ができ、又、分解する場合も縦基板を抜くだけで容易に解体できる」との記載を参照すれば、縦基板16は、上基板11aの上プラグ19a、19bに挿し込むこと、及び抜くことができるといえる。 上記の記載事項及び図面の記載を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献には、基板接続構造に関して、第7図の実施例として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「音響機器内に収納されている、上側の面に上プラグ19a、19bが配置されている上基板11aと、 上プラグ19a、19bに対応する上ソケット21a、21bを有し、上プラグ19a、19bに挿し込むこと、及び抜くことができる縦基板16とを備え、 縦基板16は、上ソケット21a、21bよりも挿し込む方向に突出した突出部22、及び突出部22に配置された下ソケット21cを備え、 上基板11aは、組付け時に突出部22及び下ソケット21cを逃がすための開口部20が形成されており、 突出部22及び下ソケット21cは、縦基板16の上ソケット21a、21bが、上基板11aの上プラグ19a、19bに対して挿し込まれた状態で、 突出部22に設けられた下ソケット21cが、下基板11bに設けられた下プラグ19cに挿し込まれるようになっている、 基板が収納されている音響機器。」 (3) 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「上基板11a」は、本願補正発明の「基板」に相当する。 以下、同様に「上側の面」は「主面」に、 「上プラグ19a、19b」は「コネクタ」に、 「上プラグ19a、19bに対応する上ソケット21a、21b」は「コネクタに接続される端子部」に、 「上プラグ19a、19bに挿し込むこと、及び抜くことができる縦基板16」は「コネクタに対して着脱可能とされるモジュール」に、 「上ソケット21a、21bよりも、上記挿し込む方向に突出した突出部22、及び突出部22に配置された下ソケット21c」は「端子部よりも前記コネクタへの装着方向に突出する突出部」に、 「組付け時に突出部22及び下ソケット21cを逃がすための開口部20」は「突出部を避ける回避部」に、 「縦基板16の上ソケット21a、21bが、上基板11aの上プラグ19a、19bに対して挿し込まれた状態」は「モジュールが前記コネクタに対して装着された状態」に、 「基板が収納されている音響機器」は「電子機器」に、それぞれ相当する。 以上のことから、本願補正発明と引用発明とは次の点で一致する。 「主面にコネクタが搭載された基板と、 前記コネクタに接続される端子部を有し、前記コネクタに対して着脱可能とされるモジュールと、を備え、 前記モジュールは、前記端子部よりも前記コネクタへの装着方向に突出する突出部を備え、 前記基板は、前記突出部を避ける回避部を備える、電子機器。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明では、基板は「筐体に固定され」ており、更に、「突出部は、前記モジュールが前記コネクタに対して装着された状態で、前記モジュールの装着方向で、前記筐体の底面と前記基板との間の空間まで突出し、前記モジュールが前記コネクタに対して装着された状態で、前記モジュールの装着方向における前記突出部の前記底面側の端部は、前記底面よりも前記基板側に配され、前記底面側の端部は、前記底面に接触しない位置に配置される」のに対して、 引用発明では、上基板11aは「音響機器内に収納されている」ものの、筐体に固定されているか否かは明らかでなく、更に、「突出部22及び下ソケット21cは、縦基板16の上ソケット21a、21bが、上基板11aの上プラグ19a、19bに対して挿し込まれた状態で、突出部22に設けられた下ソケット21cが、下基板11bに設けられた下プラグ19cに挿し込まれるようになっている」点。 (4) 判断 上記相違点について検討する。 音響機器の外郭は、一般に筐体で構成されている。 また、複数の重なる基板をそれぞれ筐体に固定することは、例えば、原査定に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、 特開2004-281908号公報(特に、図1?3を参照。基板フレーム11、12、21、22、31、32、ベース10及びカバー40が、本願補正発明の「筐体」に相当する。)、特開2004-140114号公報(特に、図1?3を参照。ケーシング12が、本願補正発明の「筐体」に相当する。)、特開2005-26388号公報(特に、図1?3を参照。天板9、左側板11、右側板12及び床板10が、本願補正発明の「筐体」に相当する。)、及び特開2004-281909号公報(特に、図1?7を参照。カバー20及び基板フレーム10が、本願補正発明の「筐体」に相当する。)に記載されているように、本願出願前に周知の技術である。 すると、引用発明において、音響機器の外郭を筐体で構成し、この筐体に上基板11a及び下基板11bをそれぞれ固定することにより、上基板11aを「筐体に固定され」たものとすることは、上記周知の技術から当業者が容易になし得たことである。 そして、引用発明において、上記のように、筐体に上基板11a及び下基板11bをそれぞれ固定した場合には、筐体の底面の上側に下基板11bが設けられ、更にその上側に上基板11aが設けられるから、結果的に、下基板11b及び下基板11bに設けられた下プラグ19cは、筐体の底面と上基板11aとの間に存在するとともに、筐体の底面に接触しない位置に配置されるものとなる。 ここで、引用発明では、「突出部22及び下ソケット21cは、縦基板16の上ソケット21a、21bが、上基板11aの上プラグ19a、19bに対して挿し込まれた状態で、突出部22に設けられた下ソケット21cが、下基板11bに設けられた下プラグ19cに挿し込まれるようになっている」から、 上記のように、筐体に上基板11a及び下基板11bをそれぞれ固定した場合には、「突出部22及び下ソケット21cは、縦基板16の上ソケット21a、21bが、上基板11aの上プラグ19a、19bに対して挿し込まれた状態」では、突出部22及び下ソケット21c(本願補正発明の「突出部」に相当。)は、下基板11bに設けられた下プラグ19cがある辺りまで、すなわちの筐体の底面と上基板11aとの間の空間まで突出し、更に、突出部22及び下ソケット21cの下端(本願補正発明の「突出部の前記底面側の端部」に相当。)は、下基板11bに設けられた下プラグ19cの位置、すなわち筐体の底面よりも上基板11a側で、筐体の底面に接触しない位置に配置されることとなり、 結果的に、本願補正発明の、「突出部は、前記モジュールが前記コネクタに対して装着された状態で、前記モジュールの装着方向で、前記筐体の底面と前記基板との間の空間まで突出し、前記モジュールが前記コネクタに対して装着された状態で、前記モジュールの装着方向における前記突出部の前記底面側の端部は、前記底面よりも前記基板側に配され、前記底面側の端部は、前記底面に接触しない位置に配置される」に相当する構成を備えるものとなる。 すると、引用発明において、本願補正発明の相違点に係る構成とすることは、周知の技術から、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願補正発明により奏される作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。 以上のことから、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5) むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明について (1) 本願発明 平成27年12月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成27年4月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「筐体に固定され主面にコネクタが搭載された基板と、 前記コネクタに接続される端子部を有し、前記コネクタに対して着脱可能とされるモジュールと、を備え、 前記モジュールは、前記端子部よりも前記コネクタへの装着方向に突出する突出部を備え、 前記基板は、前記突出部を避ける回避部を備え、 前記突出部は、前記モジュールが前記コネクタに対して装着された状態で、前記モジュールの装着方向で、前記筐体の底面と前記基板との間の空間まで突出する電子機器。」 (2) 引用文献及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、その記載事項、及び引用発明は、前記「2(2)」に記載したとおりである。 (3) 対比・判断 本願発明は、前記「2」で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに前記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 小括 したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-13 |
結審通知日 | 2016-06-14 |
審決日 | 2016-06-28 |
出願番号 | 特願2014-66425(P2014-66425) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉澤 秀明 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
内田 博之 小関 峰夫 |
発明の名称 | 電子機器、サーバー、および、モジュール |
代理人 | 森 隆一郎 |
代理人 | 伊藤 英輔 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 棚井 澄雄 |