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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1317912
審判番号 不服2015-9564  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-22 
確定日 2016-08-30 
事件の表示 特願2013-186459「ビデオゲーム装置、ゲームの進行方法、サーバ装置及びビデオゲーム処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日出願公開、特開2014- 28277、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年10月10日(以下「分割原出願日」という。)に出願した特願2007-264778号の一部を平成22年6月22日に新たな特許出願とした特願2010-142104号の一部を平成25年9月9日に新たな特許出願としたものであって、平成26年10月14日付けで手続補正がされ、平成27年2月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月22日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成28年2月10日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年3月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1乃至7に係る発明は、上記の平成28年3月30日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下請求項1乃至7に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」乃至「本願発明7」といい、これらを総称して「本願発明」という。)。
「【請求項1】
互いに異なるパラメータが設定され、プレイヤの操作に応じて発令された課題に応じて行動する複数の被発令キャラクタが存在する仮想空間において、前記複数の被発令キャラクタの各々が行動した結果に応じてゲームを進行させるビデオゲーム装置であって、
プレイヤによる入力信号に応じて、ゲームを進行するために達成すべき課題の発令を一又は複数選択する行動選択手段と、
前記行動選択手段により一又は複数の課題の発令が選択された場合に、前記複数の被発令キャラクタのうちの任意の被発令キャラクタを、前記選択により発令された課題と前記任意の被発令キャラクタごとに記憶部に記憶されたパラメータとに従って行動させる被発令キャラクタ行動手段と、
前記被発令キャラクタ行動手段による前記任意の被発令キャラクタの行動が終了した後、該任意の被発令キャラクタが行動した結果である前記課題の達成の成否を出力する際に該任意の被発令キャラクタが該課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を画像として出力する行動結果出力手段と、
を有するビデオゲーム装置。
【請求項2】
前記行動選択手段は、前記複数の被発令キャラクタごとに前記記憶部に記憶されたパラメータおよび前記選択により発令する課題に従って行動させるべき被発令キャラクタを前記発令する課題に基づいて指定する被発令キャラクタ指定手段を含む
請求項1に記載のビデオゲーム装置。
【請求項3】
前記行動結果出力手段は、前記被発令キャラクタ行動手段により前記任意の被発令キャラクタが行動した結果である前記課題の達成の成否及び前記被発令キャラクタのパラメータに応じて、前記行動選択手段によりプレイヤが発令する課題を新たに選択する際に有用な情報を表示装置に表示する
請求項1または2のいずれかに記載のビデオゲーム装置。
【請求項4】
互いに異なるパラメータが設定され、プレイヤの操作に応じて発令された課題に応じて行動する複数の被発令キャラクタが存在する仮想空間において、前記複数の被発令キャラクタの各々が行動した結果に応じてビデオゲーム装置がゲームを進行させる方法であって、
プレイヤによる入力信号に応じて、ゲームを進行するために達成すべき課題の発令を一又は複数選択し、
前記一又は複数の課題の発令が選択された場合に、前記複数の被発令キャラクタのうちの任意の被発令キャラクタを、前記選択により発令された課題と前記任意の被発令キャラクタごとに記憶部に記憶されたパラメータとに従って行動させ、
前記任意の被発令キャラクタの行動が終了した後、該任意の被発令キャラクタが行動した結果である前記課題の達成の成否を出力する際に該任意の被発令キャラクタが該課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を画像として出力する
ゲームの進行方法。
【請求項5】
互いに異なるパラメータが設定され、プレイヤの操作に応じて発令された課題に応じて行動する複数の被発令キャラクタが存在する仮想空間において、前記複数の被発令キャラクタの各々が行動した結果に応じてゲームをコンピュータ装置に実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータ装置の制御部により、
プレイヤによる入力信号に応じて、ゲームを進行するために達成すべき課題の発令を一又は複数選択する行動選択手段、
前記行動選択手段により一又は複数の課題の発令が選択された場合に、前記複数の被発令キャラクタのうちの任意の被発令キャラクタを、前記選択により発令された課題と前記任意の被発令キャラクタごとに記憶部に記憶されたパラメータとに従って行動させる被発令キャラクタ行動手段、
前記被発令キャラクタ行動手段による前記任意の被発令キャラクタの行動が終了した後、該任意の被発令キャラクタが行動した結果である前記課題の達成の成否を出力する際に該任意の被発令キャラクタが該課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を画像として出力する行動結果出力手段、
として前記コンピュータ装置を機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
互いに異なるパラメータが設定され、プレイヤの操作に応じて発令された課題に応じて行動する複数の被発令キャラクタが存在する仮想空間において、前記複数の被発令キャラクタの各々が行動した結果に応じてゲームを進行させるサーバ装置であって、
プレイヤによる入力信号に応じて、ゲームを進行するために達成すべき課題の発令を一又は複数選択する行動選択手段と、
前記行動選択手段により一又は複数の課題の発令が選択された場合に、前記複数の被発令キャラクタのうちの任意の被発令キャラクタを、前記選択により発令された課題と前記任意の被発令キャラクタごとに記憶部に記憶されたパラメータとに従って行動させる被発令キャラクタ行動手段と、
前記被発令キャラクタ行動手段による前記任意の被発令キャラクタの行動が終了した後、該任意の被発令キャラクタが行動した結果である前記課題の達成の成否を出力する際に該任意の被発令キャラクタが該課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を画像として出力させしめる行動結果出力手段と、
を有するサーバ装置。
【請求項7】
互いに異なるパラメータが設定され、プレイヤの操作に応じて発令された課題に応じて行動する複数の被発令キャラクタが存在する仮想空間において、前記複数の被発令キャラクタの各々が行動した結果に応じてゲームを進行させるサーバ装置と通信する機能を携帯ゲーム機に実現させるためのビデオゲーム処理プログラムであって、
プレイヤによる入力信号に応じて、ゲームを進行するために達成すべき課題の発令を一又は複数選択する行動選択手段と、前記行動選択手段により一又は複数の課題の発令が選択された場合に、前記複数の被発令キャラクタのうちの任意の被発令キャラクタを、前記選択により発令された課題と前記任意の被発令キャラクタごとに記憶部に記憶されたパラメータとに従って行動させる被発令キャラクタ行動手段と、前記被発令キャラクタ行動手段による前記任意の被発令キャラクタの行動が終了した後、該任意の被発令キャラクタが行動した結果である前記課題の達成の成否を出力する際に該任意の被発令キャラクタが該課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を画像として出力させしめる行動結果出力手段と、を有するサーバ装置から前記画像に対応する情報を受信する機能を
前記携帯ゲーム機に実現させるためのビデオゲーム処理プログラム。」


第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1、2、4?7
・引用文献1、周知技術1(引用文献2)

・請求項3
・引用文献1、周知技術1(引用文献2)、周知技術2(引用文献3)

・引用文献等一覧
1.特開2004-148003号公報
2.特開2005-193006号公報
3.特開平11-156047号公報

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア.刊行物1
本願の分割原出願日前である平成16年5月27日に頒布された特開2004-148003号公報には、以下の記載がある。
(ア)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようにリアルタイムに対象に関する現在状況を演算すると処理負荷が重くなってしまい、例えば複数対象に関する演算処理を同時進行させることが困難となってしまう。
【0004】
本発明は上記背景の下でなされたものであって、その目的は、現在状況入手対象に関する現在状況情報を軽い処理負荷で出力することができるゲーム装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。」
(イ)「【0013】
携帯電話機12は、LCD等を用いて構成されたディスプレイ24と、方向キー26と、ファンクションボタン28と、丸ボタン群29と、を含んでいる。携帯電話機12は従来公知のものであり、丸ボタン群29でダイヤル入力が可能であり、ディスプレイ24には電話帳や各種設定メニューが表示される。各種設定は方向キー26及びファンクションボタン28により行う。

【0015】
また、携帯電話機12は、上記のようにしてゲームサーバ20にアクセスした後、ゲームデータベース22に記憶されているゲームプログラムをゲームサーバ20からダウンロードすることができるようになっている。そして、こうしてダウンロードされるゲームプログラムを実行して、携帯電話機12のユーザにゲームをプレイさせることができるようになっている。以下、携帯電話機12にダウンロードされるゲームプログラムの内容について説明する。
【0016】
本実施形態では、ゲームサーバ20からダウンロードされるゲームプログラムによって、ロールプレイングゲームが実現されるようになっている。このロールプレイングゲームでは、プレイヤ(又はプレイヤゲームキャラクタ)は世界中から仲間を探し、その仲間によって自分の本拠地(街)を発展させてゆく。本拠地が発展する様子はディスプレイ24に表示される本拠地画像によって任意のタイミングで確認できるようになっている。
【0017】
具体的には、このロールプレイングゲームでは、ゲームスタート時に数名の仲間が用意されている。そして、他の仲間に関する情報を収集すると、その仲間を迎え入れるため、パーティーを編成して派遣する。そして、首尾よく新たな仲間を本拠地に迎え入れることに成功すると、本拠地が発展するようになっている。新たな仲間を獲得できる条件は、例えばパーティーの編成内容、アイテム等の所持品、確率、日時、新たに仲間にしようとするゲームキャラクタと面会した回数等によって定められる。
【0018】
また、一度パーティーを組んで、それを冒険に出発させると、その後は冒険が自動進行するようになっている。パーティーは最大6人編成であり、冒険には、行動種類(情報収集、仲間捜索、アイテム捜索、魔物討伐)、目的地までの距離や難度に応じて、実時間で数時間から数日を要するようになっている。パーティーが冒険に出発した後は、所定操作をプレイヤが行うと、そのパーティーの現在状況情報(ここではメッセージ)をディスプレイ24に表示させることができるようになっている。また、このゲームでは、同時に複数のパーティーを同一又は異なる目的地に向けて冒険に出発させることができるようになっている。以上のようにして、あるパーティーが冒険に派遣された後、本拠地に無事に帰還すると、そのパーティーの構成員に係る経験値やレベル等のパラメータが変化するようになっている。
【0019】
図2乃至図6は、携帯電話機12で実行されるゲームプログラムによってディスプレイ24に表示されるゲーム画面を示す図である。
【0020】
図2は、本実施形態に係るゲームのメインメニュー画面を示す図である。このメインメニュー画面は、本実施形態に係るゲームプログラムによってディスプレイ24に表示されるものであり、同画面においてプレイヤは、「情報」、「現状」、「冒険」及び「その他」の各コマンドを、方向キー26等を用いて選択できるようになっている。そして、プレイヤが「情報」コマンドを選択すると図3に示すサブメニュー画面が、「現状」コマンドを選択すると図4に示すサブメニュー画面が、「冒険」コマンドを選択すると図5に示すサブメニュー画面が、「その他」コマンドを選択すると図6に示すサブメニュー画面が、それぞれディスプレイ24に表示されるようになっている。これらの画面も、本実施形態に係るゲームプログラムによって表示される。

【0023】
図5に示されるサブメニュー画面(冒険)では、冒険に関するコマンド群が表示されている。このうち「新編成」コマンドは、仲間から最大6人を選んで新たにパーティーを編成するためのコマンドである。「変更」コマンドは、既に編成しているパーティーの編成内容を変更するためのコマンドである。「出発」コマンドは、目的地、行動を指定して、既に編成しているパーティーのうち指定した1つを冒険に出発させるためのコマンドである。「現在状況報告」コマンドは、冒険中のパーティーから現在状況の報告を受けるためのコマンドである。」
(ウ)上記(イ)【0015】及び【0016】より、「ユーザ」と「プレイヤ」とは、ゲームを行う主体として共通の概念である。
(エ)上記(イ)【0013】及び【0015】より、携帯電話機12は、ゲームプログラムを実行して、ゲームをプレイすることができる装置で、【0016】、【0018】及び【0019】より、ディスプレイ24にゲーム画像を表示するものであるから、画像表示ゲーム装置といえる。
(オ)上記(イ)【0016】の「このロールプレイングゲームでは、プレイヤ(又はプレイヤゲームキャラクタ)は世界中から仲間を探し、その仲間によって自分の本拠地(街)を発展させてゆく。」及び【0017】の「このロールプレイングゲームでは、ゲームスタート時に数名の仲間が用意されている。そして、他の仲間に関する情報を収集すると、その仲間を迎え入れるため、パーティーを編成して派遣する。そして、首尾よく新たな仲間を本拠地に迎え入れることに成功すると、本拠地が発展するようになっている。」との記載より、ロールプレイングゲームは、ゲームスタート時に数名の仲間が用意され、他の仲間に関する情報を収集し、その仲間を迎え入れるため、パーティーを編成して派遣し、世界中から仲間を探し、首尾よく新たな仲間を本拠地に迎え入れることに成功すると、本拠地が発展するようになっているゲームといえる。
(カ)上記(イ)【0017】の「新たな仲間を獲得できる条件は、例えばパーティーの編成内容…によって定められる。」及び【0018】の「あるパーティーが冒険に派遣された後、本拠地に無事に帰還すると、そのパーティーの構成員に係る経験値やレベル等のパラメータが変化するようになっている」との記載より、パーティーを編成する数名の仲間とパーティーの構成員とは、パーティーを編成するものという意味で共通の概念であり、パーティーの編成内容が新たな仲間の獲得に影響を及ぼすものであるから、パーティーを編成する数名の仲間の個々のパラメータは異なるといえ、冒険に派遣された後に変化するものであるともいえる。
(キ)上記(イ)の【0018】の「一度パーティーを組んで、それを冒険に出発させると、その後は冒険が自動進行するようになっている。」ことから、冒険は、パーティーを編成する数名の仲間のパラメータに従って、自動進行されるといえる。
(ク)上記(イ)【0018】のパーティーが冒険に出発した後の「所定操作」は、パーティーの現在状況情報(ここではメッセージ)をディスプレイ24に表示させるものであるから、【0023】の「現在状況報告」コマンド」といえる。

そうすると、上記(ア)乃至(ク)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ディスプレイを含み、ゲームプログラムを実行して、プレイヤにロールプレイングゲームをプレイさせることができるようになっている画像表示ゲーム装置であって、
ロールプレイングゲームは、ゲームスタート時に数名の仲間から編成されるパーティーが用意され、他の仲間に関する情報を収集し、その仲間を迎え入れるため、パーティーを派遣し、世界中から仲間を探し、首尾よく新たな仲間を本拠地に迎え入れることに成功すると、本拠地が発展するようになっているゲームで、
パーティーを編成する数名の仲間の個々のパラメータは異なるとともに変化するもので、
画像表示ゲーム装置のディスプレイのメインメニュー画面においてプレイヤは、「情報」、「現状」、「冒険」及び「その他」の各コマンドを、方向キー等を用いて選択できるようになっており、「冒険」コマンドを選択するとサブメニュー画面(冒険)が表示され、サブメニュー画面(冒険)では、冒険に関するコマンド群(「新編成」、「変更」、「出発」及び「現在状況報告」)が表示されていて、「出発」コマンドは、目的地、行動を指定して、既に編成しているパーティーのうち指定した1つを冒険に出発させるためのコマンドであり、一度パーティーを組んで、それを冒険に出発させると冒険は、パーティーを編成する数名の仲間のパラメータに従って、自動進行するようになっており、
パーティーが冒険に出発した後は、「現在状況報告」コマンドにより、そのパーティーの現在状況情報(ここではメッセージ)をディスプレイに表示させることができるようになっている画像表示ゲーム装置。」

イ.刊行物2
本願の分割原出願日前の平成17年7月21日に頒布された特開2005-193006号公報には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項6】
第1の表示画面とタッチパネルに覆われた第2の表示画面とを備えるゲーム装置のコンピュータに実行されるゲームプログラムであって、
前記コンピュータを、
プレイヤの入力に応じてその表示態様が変化するプレイヤキャラクタを含んだゲーム影像を前記第1の表示画面に表示するゲーム影像表示制御手段、
前記プレイヤキャラクタに対応するキャラクタ図柄を前記第2の表示画面に表示する図柄表示制御手段、
前記タッチパネルに対して与えられる入力を一定時間間隔で検出し、当該入力の変化が検出されている間の当該タッチパネル上の位置座標を検出することによって入力の変化を検出する入力変化検出手段、
前記入力変化検出手段によって検出された入力が前記キャラクタ図柄に対するものであるとき、前記入力の変化に最も近い入力パターンを予め用意されている入力パターン群の中から抽出する入力パターン抽出手段、
前記入力パターン抽出手段によって抽出された入力パラメータの種類及び当該入力パターンが繰り返された回数に応じて、前記プレイヤキャラクタに関連付けられて記憶されている感情パラメータを変化させる感情パラメータ変化手段、および
前記感情パラメータ変化手段による変化後の感情パラメータに基づいて前記プレイヤキャラクタの表示態様を変化させる影像変化制御手段、として機能させることを特徴とするゲームプログラム。」
(イ)「【0055】
次にゲームプログラムによって実行される処理を図10に示すフローを参照して具体的に説明する。まず、ゲーム装置1の電源がONされた後に第1の表示が画面11aにゲーム影像が表示される。そして、ステップ21において、所与の視点からプレイヤキャラクタP5を含むゲーム空間内の様子がゲーム影像として第1の表示装置11aに表示される。続くステップ22において、通常のゲーム処理と同様に、プレイヤの操作キー14に基づいてプレイヤキャラクタP5をゲーム空間内において移動させる。ステップ23において、プレイヤキャラクタP5がプレイヤキャラクタP6に出会うまで、ステップ22の処理が続けられる。なお、プレイヤキャラクタP6には、感情パラメータとして例えば喜びのパラメータと怒りのパラメータとが関連つけられており、当該プレイヤキャラクタP6はAIプログラムによって当該感情パラメータに応じてその行動が制御される。例えば、プレイヤのタッチパネル13に通じた入力によってプレイヤキャラクタP6を喜ばせることによって特殊なアイテムを受け取たり、怒らせることによってプレイヤキャラクタP5と戦うなどのように行動が制御される。」

ウ.刊行物3
本願の分割原出願日前である平成11年6月15日に頒布された特開平11-156047号公報には、以下の記載がある。
(ア)「【0033】一方、予め設定されたゲーム時間内にゴール地点に到達できないとき(すなわち、予め設定されたゲーム時間内にゲームが完了しないとき)には、その時点で滑走不能となる。このとき、予め設定されたゲーム時間内にゲームが完了しなかった原因(すなわち、操作ミス)に関する評価(すなわち、マイナス評価)がスライド操作、エッジ操作、ジャンプ操作、コイン取得割合等について実施され、その評価結果がモニタ10に図8に示すような態様で表示される。すなわち、「タイムアップ」の表示とともに、マイナス評価結果に対応して次回のプレー時に注意すべきアドバイス内容が文字で表示される。アドバイス内容としては、例えば、下記のものがある。これらのアドバイス内容は、予めROM34等に記憶されている。
【0034】(a)ストックをしっかり握って足を上手にスライドさせよう!
(b)エッジをきかせると急旋回が出来るぞ!
(c)コインを上手に取ってタイムを増やそう!
(d)ジャンプのタイミングをうまく掴め!
(e)ジャンプ台の端ぎりぎりでジャンプするとスーパージャンプが出来るぞ!
(f)ジャンプで避けられる障害物もあるぞ!
(g)自分の滑りのスタイルに合ったプレイヤーをセレクトしよう!
従って、遊技者は、次回のプレー時に表示されたアドバイス内容に注意してスライド操作やエッジ操作等を行うようにすると、操作に不慣れな遊技者であっても比較的容易にプレーを上達させることができ、予め設定されたゲーム時間内にキャラクタMをゴール地点に到達させることが可能となる。」
(イ)「【0045】ステップS35、S37及びS39で判定が肯定されたとき、上述のアドバイス内容(a)がモニタ10に表示される(ステップS41)。なお、ステップS41でアドバイス内容が表示されると、ゲームは終了する。すなわち、本実施形態では、評価要素(上述のアドバイス内容)について予め優先順位を設定しておき、該当する優先順位の高い評価要素の1つだけを表示するようにしている。これは、遊技者に対して複数のアドバイス内容が存在する場合、この複数のアドバイス内容を同時に表示すると遊技者が混乱するため、優先順位の高いものを1つだけ表示することによって順を追ってプレーを上達できるようにするためである。勿論、2つ又は該当するすべてのアドバイス内容を優先順位の順に並べて同時に表示することも可能である。」

(2)対比
そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、
ア.後者の「パラメータ」、「プレイヤ」、「プレイ」、「コマンドの選択」、「パーティーを編成する数名の仲間」及び「ゲーム装置」は、それぞれ、前者の「パラメータ」、「プレイヤ」、「操作」、「課題の発令の選択」、「複数の被発令キャラクタ」及び「ゲーム装置」に相当する。
イ.後者の「パーティーを編成する数名の仲間の個々のパラメータ」は、「異なるとともに変化するもの」であるから、互いに異なるパラメータが設定されるといえ、「パラメータ」とは、一般に、ゲーム装置で実行されるゲームプログラムの動作条件を与えるための情報であるから、ゲーム設定されたパラメータがゲーム装置の記憶部に記憶されていることは自明である。
ウ.後者の「ロールプレイングゲーム」は、ゲームプログラム上で「パーティーを派遣し、世界中から仲間を探す」ものであるから、「複数のキャラクタが存在する仮想空間における」ゲームといえる。
エ.後者は、「一度パーティーを組んで、それを冒険に出発させると冒険は、パーティーを編成する数名の仲間のパラメータに従って、自動進行するようになって」いるものであるから、複数のキャラクタの各々が行動した結果に応じてゲームを進行させるといえる。
オ.後者の「メインメニュー画面」は、「情報」、「現状」、「冒険」及び「その他」の各コマンドを、方向キー等を用いて選択できるようになっているものであるから、「プレイヤによる入力信号に応じて、ゲームを進行するための発令を選択する行動選択手段」といえる。
カ.後者のサブメニュー画面(冒険)では、冒険に関するコマンド群(「新編成」、「変更」、「出発」及び「現在状況報告」)が表示されるものであるから、後者の「冒険」コマンドには、「新編成」、「変更」、「出発」及び「現在状況報告」の各コマンドが含まれ、後者の「ロールプレイングゲーム」のゲーム内容に照らせば、「冒険」コマンドは、ゲームを進行させるために達成すべき課題の発令といえる。
キ.上記エより、後者の「パーティーを編成する数名の仲間」は、「冒険」コマンドにより動作するゲームプログラム上のキャラクタであるから、「発令された課題に応じて行動する複数の被発令キャラクタ」といえる。
ク.上記ウ及びエより、後者の「メインメニュー画面」は、「プレイヤによる入力信号に応じて、ゲームを進行するために達成すべき課題の発令を選択する行動選択手段」といえる。
ケ.後者の「出発」コマンドは、「目的地、行動を指定して、既に編成しているパーティーのうち指定した1つを冒険に出発させるためのコマンドであり、一度パーティーを組んで、それを冒険に出発させると冒険は、パーティーを編成する数名の仲間のパラメータに従って、自動進行するようになって」いるから、複数の被発令キャラクタのうちの任意の被発令キャラクタを、前記選択により発令された課題と前記任意の被発令キャラクタごとに記憶部に記憶されたパラメータとに従って行動させるものといえる。
コ.後者の「サブメニュー画面(冒険)」は、「冒険」コマンドを選択すると表示されるもので、後者の「出発」コマンドは上記ケのとおりであるから、後者の「サブメニュー画面(冒険)」は、行動選択手段により課題の発令が選択された場合に、複数の被発令キャラクタのうちの任意の被発令キャラクタを、選択により発令された課題と任意の被発令キャラクタごとに記憶部に記憶されたパラメータとに従って行動させる被発令キャラクタ行動手段、といえる。
サ.後者は、パーティーが冒険に出発した後に「現在状況報告」コマンドにより、パーティーの現在状況情報を表示するものであるから、「任意の被発令キャラクタが課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を出力する手段」を有するといえる。

したがって、両者は、
「互いに異なるパラメータが設定され、プレイヤの操作に応じて発令された課題に応じて行動する複数の被発令キャラクタが存在する仮想空間において、前記複数の被発令キャラクタの各々が行動した結果に応じてゲームを進行させるゲーム装置であって、
プレイヤによる入力信号に応じて、ゲームを進行するために達成すべき課題の発令を一又は複数選択する行動選択手段と、
前記行動選択手段により一又は複数の課題の発令が選択された場合に、前記複数の被発令キャラクタのうちの任意の被発令キャラクタを、前記選択により発令された課題と前記任意の被発令キャラクタごとに記憶部に記憶されたパラメータとに従って行動させる被発令キャラクタ行動手段と、
前記被発令キャラクタ行動手段による前記任意の被発令キャラクタの行動が終了した後、該任意の被発令キャラクタが行動した結果である前記課題の達成の成否を出力する際に該任意の被発令キャラクタが該課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を画像として出力する行動結果出力手段と、
を有するゲーム装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1が、ビデオゲーム装置であるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。

[相違点2]
本願発明1が、「被発令キャラクタ行動手段による任意の被発令キャラクタの行動が終了した後、該任意の被発令キャラクタが行動した結果である課題の達成の成否を出力する際に該任意の被発令キャラクタが該課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を画像として出力する行動結果出力手段」、を有するのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。

(3)判断
上記相違点2について検討する。
一般に、ゲーム装置において、キャラクタに対応して記憶されているパラメータに応じてキャラクタの行動を決定することは周知の技術事項であって(以下「周知技術1」という。)、例えば、上記「2. イ.刊行物2」にも記載されている。
また、一般に、ゲーム装置において、プレイヤに対して、新たにゲームを行う際に有用な情報を表示することは周知の技術事項であって(以下「周知技術2」という。)、例えば、上記「2. ウ.刊行物3」にも記載されている。
しかし、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、周知技術1とも周知技術2ともいえないし、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
したがって、引用発明1において、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものとすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
よって、上記相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1、上記周知技術1及び上記周知技術2にに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「課題を達成できなかった場合には、課題を達成することのできなかった要因を示す情報などが表示される。一方、発令された課題が課題を達成できた場合には、次のプレイヤキャラクタの行動として好ましい行動のヒントを示す情報などが表示される。」(段落【0065】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明1、上記周知技術1及び上記周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本願発明2乃至7について
本願発明4は、本願発明1の「ビデオゲーム装置」を「ゲームの進行方法」としたものであり、本願発明5は、本願発明1の「ビデオゲーム装置」を「プログラム」としたものであり、本願発明6は、本願発明1の「ビデオゲーム装置」を「サーバ装置」としたものであり、本願発明7は、本願発明1の「ビデオゲーム装置」を「ビデオゲーム処理プログラム」としたものであって、実質的に本願発明1と相違しない。
よって、本願発明4、5、6及び7は、上記(3)と同様の理由により、引用発明1、上記周知技術1及び上記周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2及び3は、上記(3)と同様の理由により、引用発明1、上記周知技術1及び上記周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
(理由)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1、4?7の「課題の達成の成否を出力する際に前記任意の被発令キャラクタが該課題に応じて行った行動の様子の少なくとも一部を画像として出力する」との特定では、平成27年5月22日付け審判請求書で主張する「既に終了している冒険に対し、最終的な冒険の結果の出力に加えてパーティーがこの冒険時(冒険途中)に行った行動の様子が画像として表示される構成」に限定するものではなく、‘自軍キャラクタが課題を進行させている様子を画像として表示すること’も包含され得るから、発明特定事項として不明である。

2.当審拒絶理由の判断
平成28年3月30日に提出された手続補正書において、上記第2のとおり、請求項1、5、6及び7の記載は補正されたことにより、請求項1乃至7に係る発明は明確となった。
したがって、当審拒絶理由は解消した。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、上記周知技術1及び上記周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 
審決日 2016-08-12 
出願番号 特願2013-186459(P2013-186459)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大山 栄成中村 和正  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
吉村 尚
発明の名称 ビデオゲーム装置、ゲームの進行方法、サーバ装置及びビデオゲーム処理プログラム  
代理人 田嶋 諭  

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