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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05H
管理番号 1317919
審判番号 不服2015-11168  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-12 
確定日 2016-08-30 
事件の表示 特願2011- 47543「プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月27日出願公開、特開2012-185975、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成23年3月4日の出願であって、平成26年11月21日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月22日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、同年3月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年6月12日に該拒絶査定を不服として審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成28年4月19日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年6月27日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年7月14日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年同月19日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
本願発明は、平成28年7月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?8により特定される次のとおりのものである(以下、これらの請求項に係る発明を項番号に対応して「本願発明1」などという。)。

「 【請求項1】
大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な処理容器と、
前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部と、
前記処理容器の内部に設けられ、被処理物を載置する載置部と、
前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給部と、
前記処理容器に設けられ、電磁波を透過させる窓部と、
前記窓部の外方に配置され、電磁場を発生させる複数の導体部と複数の容量部とを有した負荷部と、
前記負荷部に電力を印加する電源と、
を備え、
前記負荷部と前記電源とは、前記負荷部の一方の端部に設けられた第1の端子と、他方の端部に設けられた第2の端子と、を介して電気的に接続され、
前記導体部と前記容量部とは、前記負荷部の両端側に導体部が設けられるように電気的に交互に直列接続され、
被処理物のプラズマ処理を行う場合には、
前記容量部同士の間に設けられた前記導体部のインダクタンスは、前記第1の端子および前記第2の端子にそれぞれ接続された前記導体部のインダクタンスの2倍とされ、
前記すべての容量部の容量がそれぞれ等しいものとされたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1の端子と、前記第2の端子と、の間における合計インピーダンスの虚数成分が0(ゼロ)とされたことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記負荷部は、N個の前記導体部と、(N-1)個の前記容量部を有し、
前記第1の端子および前記第2の端子にはそれぞれ前記導体部が接続され、
前記導体部のインダクタンスと、前記容量部の容量と、前記電力の周波数との関係が以下の(4)式乃至(6)式を満たしたことを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【数4】


ここで、C1は前記第1の端子側から見て1番目に設けられた前記容量部の容量、L1は前記第1の端子側から見て1番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、L2は前記第1の端子側から見て2番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【数5】


ここで、Cnは前記第1の端子側から見てn番目に設けられた前記容量部の容量、Lnは前記第1の端子側から見てn番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、Ln+1は前記第1の端子側から見て(n+1)番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【数6】


ここで、C_(N-1)は前記第1の端子側から見て(N-1)番目に設けられた前記容量部の容量、L_(N)は前記第1の端子側から見てN番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、L_(N-1)は前記第1の端子側から見て(N-1)番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【請求項4】
前記導体部のインダクタンス、前記容量部の容量、前記電力の周波数からなる群より選ばれた少なくとも1つを制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記容量部同士の間に設けられた前記導体部の電位を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記測定部による測定結果に基づいて制御を実行することを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部においてインピーダンスの虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるように制御し、
クリーニング処理を行う場合には、前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部において前記インピーダンスの虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生じないように制御することを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記負荷部と前記窓部との間に設けられたファラデーシールドと、
前記負荷部と前記ファラデーシールドとの間に設けられた絶縁部と、
を備えたことを特徴とする請求項1?6のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
誘導結合型プラズマを用いたプラズマ処理方法であって、
両端側に導体部が設けられるように前記導体部と容量部とが電気的に交互に直列接続された負荷部に、電源から電力を印加する工程と、
前記導体部のインダクタンス、前記容量部の容量、前記電力の周波数からなる群より選ばれた少なくとも1つの制御を行う工程と、
を備え、
被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記制御を行う工程において、
前記負荷部と前記電源とは、前記負荷部の一方の端子に設けられた第1の端子と、
他方の端部に設けられた第2の端子と、を介して電気的に接続され、
前記容量部同士の間に設けられた前記導体部のインダクタンスは、前記第1の端子および前記第2の端子にそれぞれ接続された前記導体部のインダクタンスの2倍とされ、
前記すべての容量部の容量がそれぞれ等しいものとなるように制御されることを特徴とするプラズマ処理方法。」


第3 原査定の拒絶理由についての当審の判断
1 原査定について
(1)原査定の平成26年11月21付け拒絶理由の概要は以下のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1,2
負荷部を,導体線路とコンデンサとを直列接続した電気回路要素を複数組み合わせて形成した,プラズマ処理装置は,文献1及び文献2それぞれに記載されている。
このような負荷部に対しては,整合回路(文献1),マッチングボックス(文献2)がそれぞれ設けられており,負荷部の入力端子においてインピーダンスマッチングが取れている(電位差の虚数成分が0である)ものである。
また,文献1においては,導体線路の中点で,電位がVc(チャンバの電位)と同じくなるようにしており,また文献2では,負荷部をなすループアンテナの端子部から,インダクタンス部分を介して入力されていることから,いずれも,導体部において,電位差の虚数成分が0となる位置が生じるようにされていることは明らかである。

・請求項3,4
上述のような負荷部におけるインダクタンスとコンデンサが,共振条件を満たすように設定されることは,当業者であれば通常為し得たことである。
また,共振条件を満たすように,インダクタンスとコンデンサの容量を,適当なものと設定することも,当業者であれば容易に為し得た範囲内のことである。

・請求項5
適当な制御部を設けることは,当業者であれば通常為し得たことである。

・請求項8,9
文献1(【0013】,第8図)には,負荷部と窓との間に導体板を接地することも記載されている。このような導体板と,負荷部との間を,適当な材料により絶縁することは,当業者であれば通常為し得たことである。

・請求項10-13
上記請求項1-4について示したとおりである。

・請求項15,16
文献1には,窓の削れ量を低減することを目的とすることが記載されており,必要なクリーニングを行なうために制御を行うことは,当業者であれば必要に応じて為し得たことである。

引 用 文 献 等 一 覧
引用文献1.特開2003-31558号公報
引用文献2.特開平10-70107号公報

(2)平成27年3月11日付け拒絶査定の概要は以下のとおりである。

この出願については、平成26年11月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1
・引用文献等 2
出願人は,補正をするとともに,意見書において,「新請求項1に係るプラズマ処理装置においては、『被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位が同じ振幅で逆位相になるようにされ、』ます。 この様にすることで、負荷部において電位が最大となる点における電位差を格段に低下させることができます。」と主張する。
しかし,文献2([0018]-[0020])には,部分アンテナとコンデンサの各1個で構成される部分的なLC直列回路を共振状態に置くことが記載されており,このような場合,部分アンテナが基本モードで共振すれば,その両端における電位は同じ振幅で逆位相となる。
また,出願人は,意見書に置いて,「さらに、新請求項1に係るプラズマ処理装置においては、『前記両端側に設けられた、それぞれの導体部における電位の振幅が、前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位の振幅以下とされ』ます。 以上のことより、第1の端子と第2の端子の間における電位差を格段に小さくすることができます。 その結果、両端子間における異常放電を効果的に抑制することが可能となります。」と主張する。
しかし,文献2([0030]-[0031])には,両端の端子41a,45b間の電圧値(V0pp)(この電圧は peak to peak の値を示していると考えられる)が,ほかの測定点の電圧(V1pp?V6pp)の電圧より小さいことが示されており,また,端子間には放電が生じなかったことも記載されている。
してみると,当該補正によっても,上記拒絶の理由を解消したとすることはできない。

・請求項2-5,8-13,15,16
・引用文献等 2
上記拒絶理由通知にて示したとおりである。

・請求項6,14
・引用文献等 2
これらの請求項については,上記拒絶理由通知にて理由2として示していなかったため,本査定の対象とするものではないが,単に測定した結果に基づいて制御を行うようなことに,困難性は認められない。

<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2003-31558号公報
引用文献2.特開平10-70107号公報

2 原査定の理由の判断
(1)本願発明1について
ア 引用文献、引用文献の記載事項及び引用発明
(ア)引用文献1(特開2003-31558号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
a 「【0007】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体デバイス製造用のドライエッチング装置(プラズマ生成装置)20を示す図、図2は、後述する負荷部の詳細を示す図、図3は、後述する電気回路要素の要部拡大図である。ドライエッチング装置20は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属製のチャンバ21を備えている。チャンバ21には、排気装置22a及びチャンバ21内の圧力を調整する圧力調整装置22bが設けられており、ガス導入口21aから導入された反応ガスの圧力を0.05?500Paの範囲で制御できる。尚、図中22c,22dはチャンバ21内の圧力を検出する圧力検出器を示している。チャンバ21の天井部には開口部21bが設けられ、例えば石英やアルミナ等の誘電体またはシリコン等の半導体製の窓24が取り付けられており、この窓24の外方に負荷部30が設置されている。負荷部30は、複数の電気回路要素31を環状に且つ直列に例えば4組接続されたものであり、電気回路要素31は銅又はアルミニウム等の導体製の導体線路32とコンデンサ33を直列接続したものである。コンデンサ33は、図3(a)に示すように、窓24表面から若干(1?3mm程度)上方に浮いた状態で位置しており、これらコンデンサ33を繋ぐ導体線路32は、コンデンサ33間のほぼ中間位置で窓24と接するように略V字状をなしている。尚、窓24と導体線路32及びコンデンサ33との隙間に図3(b)に示すように例えば誘電体或いはシリコン等の半導体などからなる間隔部材34を設けることも可能であり、更に導体線路32は傾斜状に配置する以外に、階段状に配置させても良い。つまり、チャンバ21内で発生するプラズマをより均一化するためには、U字状であってもW字状であっても良く、適宜選択することができる。
【0008】負荷部30の一端には整合回路26bを介して高周波電源26aが接続され、他端はチャンバ21に接続されている。高周波電源26aは数MHz?数百MHzの周波数の電力を供給可能であり、所望の電力を負荷部30に供給する。チャンバ21側壁には、被処理体である例えば半導体ウエハWを出し入れするための搬入搬出口21cが設けられている。チャンバ21内の下方には下部電極25aが設けられ、下部電極25a上に設けられた保持機構25bにより半導体ウエハWを載置保持することができる。また、図1中25cは温度調整装置を示しており、下部電極25a及び保持機構25bの温度を調整する機能を有している。下部電極25aには整合回路27bを介して高周波電源27aが接続され、下部電極25aに数百kHz?数MHzの周波数の電力を供給可能としている。尚、高周波電源26a及び27aは、制御部28によってその出力を独立に制御でき、よって半導体ウエハWに入射するイオンエネルギーを制御することができる。また、高周波電源26a及び27aが同一周波数の場合は、互いに干渉して放電が不安定になることがあるので、制御部28内に位相シフタを設置することで、高周波電源26a及び27aの位相差を調整することで放電を安定させている。
【0009】更に、コンデンサ33の近傍では、導体線路32の近傍に比べて、生成されるブラズマPの密度が小さくなるので、できるだけ均一なプラズマPを負荷部30の近傍で生成する目的で、導体線路32の形状を工夫しても良い。すなわち、図2に示すように、コンデンサ33の下部で2本の導体線路32が並ぶように構成している。この場合には、導体線路32の並ぶ距離が長すぎると、そこでのブラズマPの密度が逆に高くなるので、所望するブラズマ分布になるように構造を最適化するようにしてもよい。このようなドライエッチング装置20では、制御部28により高周波電源26a及び27aのいずれか一方、或いは両方を駆動することで、チャンバ21内にプラズマPを生成するようにしている。尚、処理条件としては、例えば反応ガスであるC4F8を20sccm、Arを500sccmとし、圧力を1Pa、半導体ウエハW上の膜をSiO_(2)、下部電極25aの温度を20℃に設定した。図4(a)は、負荷部30が導体線路32のみで、且つ窓24上に接触して平面的に設けた場合の電圧分布を示している。電圧振幅は高周波電源26a側で最大となり、チャンバ21側でVc(Vcはチャンバ21の電位)となる。また、図4(b)は、出願人が先に出願した特願2001-12320にある、電気回路要素を平面状に配置した場合における電圧分布を示している。このような構造であると、電圧振幅が最大となる位置が導体線路32の電源26a側の端部或いはコンデンサ33側の端部となり、導体線路32の中間点ではほぼVcと等しくなる。窓24がプラズマPにより削られる速度は、導体線路32上に生じる電圧の振幅が大きいほど速くなるので、図4(a)の場合較べ、コンデンサ33を有する先願では、導体線路32上に生じる電圧の振幅を小さくすることができ、誘電体又はシリコン等の半導体から形成される窓24が削られる速度を遅くすることができる。
【0010】本実施の形態においては、更に上記先願における電圧振幅の幅をより平坦化することができ、プラズマPの生成をより均一化すると共に、窓24が削られる速度をより低減することができる。従って、窓24の長寿命化及びチャンバ21内におけるダスト発生を抑制することができる。尚、導体線路32の中点32aの電圧振幅を高電圧プローブとオシロスコープでモニタしながら、その電圧振幅が最小になるように各負荷部30における導体線路32のインダクタンス、各コンデンサ33の容量、高周波電源26aの周波数fを調整する。即ち、チャンバ21の電位をVc(V)、高周波電源26aの周波数をf(Hz)、チャンバ電位点からn番目の導体線路32のインダクタンスをLn(H)、コンデンサ33の容量をCn(F)とした場合に所定の関係になるように調整を行う。以下、その関係について図5に基づいて説明する。なお、n=1は、高周波電源26aから電気回路的に最も遠い電気回路要素31を示すものとする。n番目の電気回路要素31に流れる電流をI(A)とすると、n番目の導体線路32における電圧降下Vn(V)は、
Vn=2πfLnI+Vc …(1)
n-1番目の導体線路32における電圧降下Vn-1(V)は、
Vn-1=2πfLn-1I+Vc …(2)
n番目のコンデンサで上昇する電圧φn(V)は、
φn=I/(2πfCn)+Vc …(3)
であり、n番目の導体線路32の中点で電圧がVc(V)になるためには、
φn=(Vn-1+Vn)/2 …(4)
となればよい。
【0011】式(1)?(3)を式(4)に代入して
2π2f2(Ln-1+Ln)Cn=1 …(5)
が得られる。n=1の場合には、φ1=V1/2となればよいので、
2π2f2L1C1=1 …(6)
となる。上述した式(5),(6)に基づいて、f、Ln、Cnを定めることで、導体線路32上において電圧振幅が最大となる点の電圧振幅の値を小さくできる。特に電気回路要素31の数が多い場合には、その数をnとすると、同じ距離を導体線路32のみで形成する場合に比べて電圧振幅が最大となる点の電圧振幅を2n分の1に低減できる。なお、導体線路32のインダクタンスLnを変化させるための構成としては、例えば導体線路32に数個の接続点を設け、導体線路32とコンデンサ33の接続位置或いは導体線路32と他の電気回路要素31との接続位置を変化させても良い。また、コンデンサ33の容量Cnを変化させるための構成としては、固定容量のコンデンサを適宜取り替える構成、または可変容量のコンデンサを用いる構成であっても良い。」

b 図1


c 図2


上記a?cより、引用文献1には、
「負荷部30は、一端には整合回路26bを介して高周波電源26aが接続され、他端はチャンバ21に接続されて、
前記負荷部30は、複数の電気回路要素31を環状に且つ直列に4組接続されたものであり、電気回路要素31は導体線路32とコンデンサ33を直列接続したものである、プラズマ生成装置。」の事項(以下「引用文献1に記載された事項」という。)が記載されているものと認められる。

(イ)引用文献2(特開平10-70107号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)
a 「【0018】上述の本発明の構成によれば、ループアンテナを複数の部分アンテナに分割し、各部分アンテナ同士をコンデンサによって電気的に接続している。この場合、合計のインダクタンス値がL_(0)であるn個の部分アンテナと、n-1個のコンデンサによってプラズマ励起用アンテナを構成した場合、マッチングボックス内のコンデンサを含めて、部分アンテナとコンデンサ各1個で構成されるn個の部分的なLC直列回路が形成される。従って、それら部分的なLC直列回路の両端に生じる電圧は全体に印加される電圧の1/nになる。
【0019】そのような部分アンテナ1個当たりのインダクタンスをL_(n)、コンデンサ1個当たりのキャパシタンスをC_(n)とした場合、印加される高周波電圧の周波数ωに対し、 ω^(2)・L・C の値を可及的に1に近づけると、部分アンテナとコンデンサの各1個で構成される部分的なLC直列回路を共振状態に置くことができる。
【0020】部分的なLC直列回路が共振状態にある場合、その部分のインピーダンスは最も小さくなる。従って、マッチングボックス内のコンデンサを含めて構成されるn個の部分的なLC直列回路ができるだけ共振状態に近づくように部分アンテナのインダクタンス値とコンデンサのキャパシタンス値を選択すれば、プラズマ励起用アンテナ全体のインピーダンスが小さくなる。従って、小さな高周波電圧で大きな電流を流すことができるようになるので、大電力を投入した場合であってもプラズマ励起用アンテナの電源側の端子と接地側の端子間の電圧差が小さくなり、放電が生じなくなる。
【0021】ところで、プラズマ励起用アンテナをプラズマ発生槽に取り付ける場合、従来ではプラズマ発生槽とプラズマ励起用アンテナ間の間隔を、電源に接続された方を遠く、接地電位に接続された方を近くなるように配置し、プラズマ発生槽内の電界が均一になるようにし、プラズマ中に不純物が混入しないようにしているものがあった。本発明のプラズマ励起用アンテナでは、印加する高周波電圧が低電圧で済むので、プラズマ発生槽との距離を一定にしておいても、プラズマ発生槽内のガスを均一にプラズマ化できる。
【0022】本発明のプラズマ励起用アンテナを複数設けたプラズマ発生槽では、各プラズマ励起用アンテナに独立した高周波電源から電圧を印加して一つのプラズマ発生槽内に導入されたガスをプラズマ化する場合、各プラズマ励起用アンテナの固有共振周波数の値が互いに1kHz以上異なるようにしておく。その場合、各プラズマ励起用アンテナの部分的なLC直列回路に共振を起こさせるときに、各高周波電源の周波数を異ならせることができるので、プラズマ励起用アンテナ間の相互干渉を防止することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】図1を参照し、符号2は、本発明のプラズマ励起用アンテナの一例であるループアンテナであり、5個の部分アンテナ21?25と、4個のコンデンサ71?74とを有している。
【0024】各部分アンテナ21?25は、電磁波の放射を行うインダクタンス部分31?35をそれぞれ有しており、それらインダクタンス部分31?35の両端には、端子41a?45aと端子41b?45bがそれぞれ設けられている。
【0025】インダクタンス部分31?35と端子41a?45a、41b?45bは金属の細板で構成されており、各インダクタンス部分31?35は円弧状に曲げられ、同じ平面内で一つのループ形状(この例では300mmφ)を成すように配置されている。各端子42a?45a、41b?44b、各インダクタンス部分31?35の位置する面に対して垂直になるように同一方向設けられている。
【0026】端子41bと端子42a間、端子42bと端子43a間、端子43bと端子44a間、端子44bと端子45a間には、高耐圧用のコンデンサ71?74がそれぞれ配置され、同図(b)に示すように、各コンデンサ71?74の一方の電極70aは端子42a?45aに固定され、他方の電極70bは端子41b?44bに固定されている。
【0027】このループアンテナ2は、図2(a)に示すようなプラズマ発生槽6を有するプラズマ処理装置3に用いられており、プラズマ発生槽6の天井に設けられたガラス窓8上に、スペーサー91?93を介して載置されている。
【0028】ループアンテナ2の一端の端子41aは、同図(b)に等価回路を示すマッチングボックス11を介して高周波電源に接続されており(マッチングボックスと高周波電源は、この図2(a)では省略した。)、他端の端子45bは接地電位に接続され、高周波電源10を起動して端子41a、45b間に高周波電圧を印加すると、プラズマ発生槽6内に導入されたガスがプラズマ化される。
【0029】このループアンテナ2は、同図(b)に示す等価回路の通り、各インダクタンス部分21?25のインダクタンス成分をL_(1)?L_(5)、各コンデンサ71?74のキャパシタンス成分をC_(2)?C_(5)、マッチングボックス11内でループアンテナ2と高周波電源10との間に接続されているコンデンサ12のキャパシタンス成分をC_(1)で表した場合、各インダクタンス成分L_(1)?L_(5)とキャパシタンス成分C_(1)?_(5)とは交互に位置しているので、C_(1)L_(1)、C_(2)L_(2)、C_(3)L_(3)、C_(4)L_(4)、C_(5)L_(5)の5個の部分的なLC直列回路が形成されている。
【0030】コンデンサ12、71?74に、キャパシタンス成分C_(1)?C_(5)が1000pFのものを用い、高周波電源10を起動して、マッチングボックス11を介して周波数13.56MHzの高周波電圧を印加し、ループアンテナ2内の電圧を測定した。その結果得られた、図2(b)に示すV_(0pp)?V_(6pp)の各測定点の電圧を示す。
【0031】V_(0pp) = 2.3kV
V_(1pp) = 4.3kV
V_(2pp) = 4.5kV
V_(3pp) = 4.4kV
V_(5pp) = 4.5kV
V_(6pp) = 4.3kV
最も近接している両端の端子41a、45b間の電圧値が2.3kV(V_(0pp)の値)と低電圧であり、端子41a、45b間には放電は生じなかった。
【0032】それに対し、図3のループアンテナ102では、上述の場合と同じ周波数で同じ電流が流れるように高周波電圧を印加したところ、ループアンテナ102の両端の電圧Vは13.8kVであり、エッチング中、その両端の端子間に放電が生じる場合があった。なお、そのループアンテナ102には直径350φのものを用い、浮遊容量は20?30pFであった。また、マッチングボックス111内のコンデンサには、キャパシタンス値が500pFのものを用いた。
【0033】以上説明したプラズマ処理装置3は、プラズマ励起用アンテナを天井上に配置するものであったが、図3(b)のように、プラズマ発生槽の外周に配置しても良く、その他、プラズマを安定に発生させられれば取付箇所は問わない。
【0034】<エッチング装置>上述のループアンテナ2は、直径300φであり、コンデンサを4個用いていたが、他の実施の形態として、各500pFの3個のコンデンサを用い、4個の部分インダクタンス(それぞれ約1μH)と交互に直列接続して一つのループアンテナを構成した。また、キャパシタンス値が500pFのコンデンサを用いてマッチングボックスを構成し、そのマッチングボックスを介して13.56MHzの高周波電圧を印加し、表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコンウェハー(8インチ)のエッチングを行った。エッチングガスにはCHF_(3)を用いた。流量50SCCM、圧力0.1Pa、ループアンテナへの投入電力は1kWにした。基板へは周波数13.56MHzで200Wの電力を投入した。
【0035】1カセット25枚ずつ、合計100枚のウェハーを処理したところ、ウェハー面内のシリコン酸化膜のエッチングばらつきは±3%以内であった。
【0036】同様の条件で、従来のループアンテナ102を用いてエッチングを行ったところ、1カセット25枚中、6枚のウェハーがエッチング不足となった。
【0037】以上説明した本発明のプラズマ励起用のループアンテナは、各部分アンテナを円形ループ形状に配置していたが、本発明のプラズマ励起用アンテナには、各部分インダクタンスが四角ループ形状に配置されたループアンテナも含む。
【0038】四角ループ状に配置したプラズマ励起用アンテナの一例として、各500pFの10個のコンデンサと11個の部分インダクタンスとを用い、各コンデンサと部分インダクタンスとを、400mm×500mmの矩形形状に交互に配置したものを用意した。
【0039】マッチングボックス内でループアンテナと直列接続されるコンデンサには500pFのものを用い、矩形形状の基板表面に形成されたITO膜のエッチングを行った。各部分アンテナのインダクタンスの値は約0.15μHであった。
【0040】エッチングガスにはSiCl_(4)ガスとCl_(2)ガスとの混合ガスを用い、流量100SCM、圧力1.0Paにした。プラズマ励起用アンテナへは周波数13.56MHzの高周波電圧を印加し、5kWの電力を投入した。基板へは、周波数13.56MHzの高周波電圧を印加し、200Wの電力を投入した。
【0041】その結果、1500Å/minという高速なエッチング速度が得られた。このときの基板面内のエッチングバラツキは±8%以下であり、エッチングの均一性は良好であった。従来技術のループアンテナを用い、同じ電力を投入してエッチングを行おうとしたが、電源電圧側の端部と接地電位側の端部との間で放電してしまい、安定なエッチングを行えなかった。
【0042】<プラズマCVD>次に、各500pFの5個のコンデンサと6個の部分アンテナを用いてループアンテナを構成し、プラズマCVD装置に適用して基板表面へのシリコン酸化膜の形成を行った。原料ガスとして流量100SCCMのTEOSガスと流量600SCCMのO_(2)ガスの混合ガスを用い、圧力5Pa、マッチングボックス内でループアンテナと直列接続されるコンデンサに500pFのものを用い、投入電力は500Wにした。
【0043】高周波電圧の周波数は、13.56MHzと40.1MHzの2種類を印加し、成膜速度の比較を行った。いずれの場合でも原料ガスのプラズマは安定に発生し、それぞれ180mm/min、560mm/minという高速な成膜速度が得られた。従来技術のループアンテナでは、40.1MHzの場合はプラズマが安定せず、シリコン酸化膜を形成することはできなかった。」

b 図1


c 図2


d 上記cの図1より、ループアンテナ2の端子41a及び45bに部分インダクタンス21、25がそれぞれ接続されていることが看取できることから、上記aの【0034】のエッチング装置のループアンテナ2も、ループアンテナ2の端子41a及び45bに4個の部分インダクタンスのうち2個の部分インダクタンスをそれぞれ接続しているといえる。

上記a?dと、上記aの【0034】のエッチング装置のループアンテナ2は、上記a?cのプラズマ処理装置3に用いられるものであることにより、引用文献2には、
「プラズマ発生槽6を有するプラズマ処理装置3であって、
ループアンテナ2は、前記プラズマ発生槽6の天井に設けられたガラス窓8上に、スペーサー91?93を介して載置され、
前記ループアンテナ2の一端の端子41aは、高周波電源に接続され、他端の端子45bは接地電位に接続され、高周波電源10を起動して端子41a、45b間に高周波電圧を印加すると、プラズマ発生槽6内に導入されたガスがプラズマ化され、
前記ループアンテナ2は、各500pFの3個のコンデンサと、4個の部分インダクタンス(それぞれ約1μH)と交互に直列接続して一つのループアンテナを構成し、さらに、前記ループアンテナ2の端子41a及び45bに前記4個の部分インダクタンスのうち2個の部分インダクタンスをそれぞれ接続し、
キャパシタンス値が500pFのコンデンサを用いてマッチングボックスを構成し、そのマッチングボックスを介して13.56MHzの高周波電圧を印加し、表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコンウェハー(8インチ)のエッチングを行うものであって、
前記部分アンテナ1個当たりのインダクタンスをL_(n)、前記コンデンサ1個当たりのキャパシタンスをC_(n)とした場合、印加される高周波電圧の周波数ωに対し、 ω^(2)・L・C の値を可及的に1に近づけると、部分アンテナとコンデンサの各1個で構成される部分的なLC直列回路を共振状態に置くことができる、
プラズマ処理装置。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

また、引用文献2には、
「プラズマ発生槽6を有するプラズマ処理方法であって、
ループアンテナ2は、前記プラズマ発生槽6の天井に設けられたガラス窓8上に、スペーサー91?93を介して載置され、
前記ループアンテナ2の一端の端子41aは、高周波電源に接続され、他端の端子45bは接地電位に接続され、高周波電源10を起動して端子41a、45b間に高周波電圧を印加すると、プラズマ発生槽6内に導入されたガスがプラズマ化され、
前記ループアンテナ2は、各500pFの3個のコンデンサと、4個の部分インダクタンス(それぞれ約1μH)と交互に直列接続して一つのループアンテナを構成し、さらに、前記ループアンテナ2の端子41a及び45bに前記4個の部分インダクタンスのうち2個の部分インダクタンスをそれぞれ接続し、
キャパシタンス値が500pFのコンデンサを用いてマッチングボックスを構成し、そのマッチングボックスを介して13.56MHzの高周波電圧を印加し、表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコンウェハー(8インチ)のエッチングを行うものであって、
前記部分アンテナ1個当たりのインダクタンスをL_(n)、前記コンデンサ1個当たりのキャパシタンスをC_(n)とした場合、印加される高周波電圧の周波数ωに対し、 ω^(2)・L・C の値を可及的に1に近づけると、部分アンテナとコンデンサの各1個で構成される部分的なLC直列回路を共振状態に置くことができる、
プラズマ処理方法。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

ア 対比・判断
(ア)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「プラズマ発生槽6」、「ガラス窓8」、「部分インダクタンス成分(それぞれ約1μH)」、「コンデンサ」、「ループアンテナ2」、「高周波電源10」、「一端の端子41a」、「他端の端子45b」及び「表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコンウェハー(8インチ)」は、本願発明1の「処理容器」、「窓」、「導体部」、「容量部」、「負荷部」、「電源」、「第1の端子」、「第2の端子」及び「被処理物」に、それぞれ相当する。

b 引用発明1の「プラズマ処理装置」が、本願発明1の「減圧部」、「載置部」、「ガス供給部」を有することは、当業者にとって自明のことである。

上記a及びbより、本願発明1と引用発明1は、
「大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な処理容器と、
前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部と、
前記処理容器の内部に設けられ、被処理物を載置する載置部と、
前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給部と、
前記処理容器に設けられ、電磁波を透過させる窓部と、
前記窓部の外方に配置され、電磁場を発生させる複数の導体部と複数の容量部とを有した負荷部と、
前記負荷部に電力を印加する電源と、
を備え、
前記負荷部と前記電源とは、前記負荷部の一方の端部に設けられた第1の端子と、他方の端部に設けられた第2の端子と、を介して電気的に接続され、
前記導体部と前記容量部とは、前記負荷部の両端側に導体部が設けられるように電気的に交互に直列接続され、
被処理物のプラズマ処理を行う場合には、
前記すべての容量部の容量がそれぞれ等しいものとされた、プラズマ処理装置。」である点で一致し、以下の相違点1で相違する。

<相違点1>
「前記容量部同士の間に設けられた前記導体部のインダクタンス」が、本願発明1では、「前記第1の端子および前記第2の端子にそれぞれ接続された前記導体部のインダクタンスの2倍とされ」るのに対して、引用発明1では、「コンデンサ」同士の間に設けられた「部分インダクタンス」と「前記ループアンテナ2の端子41a及び45bに」「それぞれ接続し」た「2個の部分インダクタンス」とは、いずれも「約1μH」である点。

(イ)判断
相違点1について検討する。
a 引用発明1は「前記部分アンテナ1個当たりのインダクタンスをL_(n)、前記コンデンサ1個当たりのキャパシタンスをC_(n)とした場合、印加される高周波電圧の周波数ωに対し、 ω^(2)・L・C の値を可及的に1に近づけると、部分アンテナとコンデンサの各1個で構成される部分的なLC直列回路を共振状態に置くことができるものであ」り、それによって引用文献1の【0020】に記載された有利な効果が生じるものである。
よって、引用発明1において、「コンデンサ」同士の間に設けられた「部分インダクタンス」を、「前記ループアンテナ2の端子41a及び45bに」「それぞれ接続し」た「2個の部分インダクタンス」の2倍とすることは、上記の有利な効果に対しての阻害要因となるものであるから、当業者といえども想定することができない。
したがって、引用発明1に基いて相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

b 引用発明1の「ループアンテナ2(負荷部)」は、「端子41a及び45bに」「2つの部分インダクタンス(導体部)を接続し」たものであるのに対して、引用文献1に記載された事項では、「負荷部」の両側に「導体線路32」(導体部)が設けられるようにした構成ではないから、引用発明1の「ループアンテナ2」に引用文献1に記載された事項の「負荷部」を組み合わせることはできない。
加えて、相違点1に係る構成は、引用文献1に記載されていない。
したがって、引用発明1及び引用文献1に記載された事項から、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

c よって、本願発明1は、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1をさらに限定するものであるから、本願発明1と同様に、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)本願発明8について
ア 引用文献、引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献、引用文献の記載事項及び引用発明は、上記「(1)」「ア」で示したとおりである。

イ 対比・判断
(ア)対比
本願発明8と引用発明2とを対比する。
a 引用発明2の「部分インダクタンス成分(それぞれ約1μH)」、「コンデンサ」、「表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコンウェハー(8インチ)」、「一端の端子41a」及び「他端の端子45b」は、本願発明8の「導体部」、「容量部」、「被処理物」、「第1の端子」及び「第2の端子」に、それぞれ相当する。

b 引用発明2の「プラズマ処理方法」が、本願発明8の「導体部のインダクタンス、容量部の容量、電力の周波数からなる群より選ばれた少なくとも1つの制御を行う」ことは、当業者にとって自明のことである。

上記a及びbより、本願発明8と引用発明2は、
「誘導結合型プラズマを用いたプラズマ処理方法であって、
両端側に導体部が設けられるように前記導体部と容量部とが電気的に交互に直列接続された負荷部に、電源から電力を印加する工程と、
前記導体部のインダクタンス、前記容量部の容量、前記電力の周波数からなる群より選ばれた少なくとも1つの制御を行う工程と、
を備え、
被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記制御を行う工程において、
前記負荷部と前記電源とは、前記負荷部の一方の端子に設けられた第1の端子と、
他方の端部に設けられた第2の端子と、を介して電気的に接続され、
前記すべての容量部の容量がそれぞれ等しいものとなるように制御される、プラズマ処理方法。」である点で一致し、以下の相違点2で相違する。

<相違点2>
「前記容量部同士の間に設けられた前記導体部のインダクタンス」が、本願発明8では、「前記第1の端子および前記第2の端子にそれぞれ接続された前記導体部のインダクタンスの2倍とされ」るのに対して、引用発明2では、「コンデンサ」同士の間に設けられた「部分インダクタンス」と「前記ループアンテナ2の端子41a及び45bに」「それぞれ接続し」た「2個の部分インダクタンス」とは、いずれも「約1μH」である点。

(イ)判断
相違点2について検討すると、上記「(1)」「イ」「(イ)」で検討したのと同様の理由により、引用発明2及び引用文献1に記載された事項から、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
よって、本願発明8は、引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)小括
以上のとおり、本願発明1?7は、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本願発明8は、引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第4 当審の拒絶理由についての当審の判断
1 当審拒絶理由1の概要
「理由1(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2(明確性要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


理由1について
請求項1、8には、「前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位が同じ振幅で逆位相になるようにされ、前記両端側に設けられた、それぞれの導体部における電位の振幅が、前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位の振幅以下とされ」たこと(以下「記載事項A」という。)が記載されている。
段落【0022】には、「また、制御部24は、エッチング処理などのような被処理物Wのプラズマ処理を行う場合には、容量部同士の間に設けられた導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるように制御する。
この場合、正側と負側における電位の最大値の絶対値が同程度となるように制御することが好ましい。
例えば、導体部の容量部同士の間の中間位置における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるように制御すれば、正側と負側における電位の最大値の絶対値が同程度となるようにすることができる。」と記載されているものの、「導体部の両端における電位」が同じ振幅で逆位相であるかどうか不明である。また、「前記両端側に設けられた、それぞれの導体部における電位の振幅」と「前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位の振幅」との大小関係は不明である。
図6(b)について、「動作周波数において負荷部20b全体に共振」(段落【0030】)するものであるから、インピーダンスの虚数成分は0であって、原理的には、導体部において位相のずれや虚数成分の振幅は生じないことになる。すなわち、「図6(b)は負荷部における電位の分布を例示するための模式グラフ図」(段落【0035】)であって、図6(b)は、プラズマ処理装置の負荷部に高周波電力が印加された場合の図ではない。すると、図6(b)は、「導体部の両端における電位」の位相や、「前記両端側に設けられた、それぞれの導体部における電位の振幅」と「前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位の振幅」との大小関係を示したものではない。
よって、段落【0022】、図6(b)には、記載事項Aについて記載されているとはいえない。
発明の詳細な説明及び図面の他の箇所を参酌しても、記載事項Aについての記載はない。
したがって、上記記載事項Aは、発明の詳細な説明に記載したものでない。
請求項1を引用する請求項についても同様である。
よって、請求項1?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

理由2について
(1)請求項1の「前記導体部と前記容量部とは、両端側に導体部が設けられるように」において、「両端側」が何の両端側であるのか不明である。
(2)請求項1、8の「前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位が同じ振幅で逆位相になるようにされ、前記両端側に設けられた、それぞれの導体部における電位の振幅が、前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位の振幅以下とされ」について、プラズマ処理装置の負荷部に高周波電力が印加され、導体部の電位は変化することになるので、「電位」、「電位の振幅」が何を示しているのか不明である。
(3)請求項1を引用する請求項についても同様である。

よって、請求項1?8に係る発明は明確でない。

2 当審拒絶理由2の概要

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項8の「前記第1の端子」、「前記第2の端子」は、この記載以前の請求項8において「第1の端子」、「第2の端子」の記載がなく、「前記第1の端子」、「前記第2の端子」が何を示しているのか不明である。
よって、請求項8に係る発明は明確でない。

3 当審拒絶理由1及び2の判断
(1)平成28年7月19日付け手続補正により、請求項1、8において、「前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位が同じ振幅で逆位相になるようにされ、前記両端側に設けられた、それぞれの導体部における電位の振幅が、前記容量部同士の間に設けられた、それぞれの前記導体部の両端における電位の振幅以下とされ」たことが、削除されたので、当審拒絶理由1の理由1、理由2(2)及び(3)は解消された。

(2)平成28年7月19日付け手続補正により、請求項1、8において、「両端部」が「前記負荷部の両端部」と補正されたので、当審拒絶理由1の理由2(1)及び(3)は解消された。

(3)平成28年7月19日付け手続補正により、請求項8において、「負荷部に電力を印加する工程」が「負荷部に、電源から電力を印加する工程」と補正され、「第1の端子」と「第2の端子」について「前記負荷部と前記電源とは、前記負荷部の一方の端子に設けられた第1の端子と、他方の端部に設けられた第2の端子と、を介して接続され、」と補正されたので、当審拒絶理由2は解消された。

(4)よって、当審拒絶理由1及び2はすべて解消された。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-17 
出願番号 特願2011-47543(P2011-47543)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05H)
P 1 8・ 537- WY (H05H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田邉 英治  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
井口 猶二
発明の名称 プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法  

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