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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1317935
審判番号 不服2014-15191  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-01 
確定日 2016-08-10 
事件の表示 特願2012-523189「前方誤り訂正機能の有効/無効化指示方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月10日国際公開、WO2011/015072、平成25年 1月10日国内公表、特表2013-501435〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,2010年5月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年8月5日 中国)を国際出願日とする出願であって,平成26年3月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,当審により平成27年5月18日付けで拒絶の理由が通知され,同年8月18日付けで手続補正がなされ,当審により同年8月28日付けで拒絶の理由が通知され,同年12月1日付けで手続補正がなされたものである。
その請求項1に係る発明は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,平成27年12月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下,「本願発明」という。)。
「【請求項1】
前方誤り訂正(FEC:Forward Error correction)ステータス指示識別子を設定し,
事業者側光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)により,加入者側光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)のFECステータス指示識別子と,前記ONUのIDとを対応づけて送信し,
前記ONUにより,受信した自IDに対応する前記指示識別子に応じて,当該ONUのFEC機能を有効又は無効になり,
前記OLTにより,前記ONUのFECステータス指示識別子と,前記ONUのIDとを対応づけて送信するステップは,
ダウンリンクフレームの複数のアロケーション構造から,前記ONUのIDと一致するID(Alloc-ID)により識別されるアロケーション構造を検索し,
前記検索されたアロケーション構造のフラグフィールドの9番目のビットの値として,当該アロケーション構造のAlloc-IDと一致するIDにより識別されるONUのFECステータス指示識別子を設定し,前記ダウンリンクフレームを送信し,
または,
ONT管理及び制御インターフェース(OMCI:ONT Management and Control Interface)メッセージに,ONUのFECステータス属性を追加し,
前記OMCIメッセージに,前記ONUの前記FECステータス属性の値として,前記ONUの前記FECステータス指示識別子を設定し,
前記OMCIメッセージを,ダウンリンクフレームのOMCIフィールドに追加し,
前記ダウンリンクフレームを送信し,
または,
ダウンストリーム物理制御ブロック(PCBd:Physical Control Block downstream)に,FEC指示フィールドを追加し,
前記ONUのIDを,前記FEC指示フィールドのビットのシーケンス番号に対応させ,
前記OLTにより,前記ONUのFECステータス指示識別子を,前記FEC指示フィールドの,当該ONUのIDと一致するシーケンス番号のビットに追加し,ブロードキャストする
前方誤り訂正機能の有効/無効化指示方法。」


2 引用発明及び技術常識
[引用発明]
当審により通知した平成27年8月28日付けの拒絶の理由に引用された中国特許出願公開第101047470号明細書(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「

」(説明書第2ページ第10-26行)
([当審仮訳]:
GPON下りフレームは,下り物理レイヤ制御ブロック(Physical control block downstream, PCBd)及び有効ペイロードで構成され,その構造は図2に示すとおりであり,そのうち,PCBdは左から右に,以下のように分けられる:
物理レイヤ同期(Physical Synchronization, PSync)であって,4バイトを占め,フレームに対して識別を行うもの;
識別子(Ident)フィールドであって,4バイトを占め,その構造は図3に示すとおりであり,1ビットのFEC指示ビット,1ビットの予備ビット及び30ビットのスーパーフレームカウンタ(super frame counter)を含み,そのうちFEC指示ビットは,本下りフレームがFEC符号化を使用したか否かを指示するのに用いられ,スーパーフレームカウンタは下りデータの暗号復号アルゴリズムの入力パラメータとするもの;
下り物理レイヤ運用・管理・保守(Physical Layer Operations, Administration and Maintenance downstream, PLOAMd)であって,13バイトを占め,1つの物理レイヤ運用・管理・保守(Physical Layer Operations, Administration and Maintenance, PLOAM)メッセージを含み,前記PLOAMメッセージはOLT及びONU間のリンク確立プロセス及びリンク保守中の運用・管理・保守(Operations, Administration and Maintenance, OAM)に用いられ,1つのPLOAMメッセージタイプは具体的な機能,それは例えば光パワーメッセージの調整,伝送コンテナ (Transmission Container, T-CONT)メッセージの分配等,に対応するもの;)

(2)「

」(説明書第4ページ第1-4行)
([当審仮訳]:
前記PLOAMメッセージのフレーム構造は図5に示すとおりであって,1つのPLOAMメッセージの長さは13バイトであり:ONU装置のユニークな識別に用いられる1バイトのONU-ID;メッセージタイプを示す1バイトのメッセージ識別子(Message id);メッセージの具体的な内容を保存するのに用いられ,メッセージタイプによって変化する10バイトのデータ(Data);前の12バイトに対してチェックと保護を行う1バイトのCRC;を含む。)

(3)「

」(説明書第6ページ第12-13行)
([当審仮訳]:
好ましくは,ステップAの前記FECイネーブル指示の送信は,FECイネーブル指示ビットを有する物理レイヤ運用・管理・保守PLOAMメッセージを送信することである。)

(4)「

」(説明書第9ページ第18行-第12ページ第19行)
([当審仮訳]:
実施例1:新しく定義したPLOAMメッセージにより,OLTがONUにFEC機能を有効にするか否かを通知することを実現する。
既にあるGPONチップの互換性のために,OLTは新しく追加したPLOAMメッセージがFECイネーブル表示を運ぶ方式により,ONUがFEC機能を有効にするか否かを通知してもよい。PLOAMメッセージ自身がCRCチェックを有するので,この方法を用いることにより,そのFECイネーブル表示は従来技術の下りフレームIdentフィールド中のFECイネーブルビットに比べて信頼性が高い。
上記発明の目的を達成するため,本実施例は1つの専門に定義したPLOAMメッセージを用いて下り方向のFEC機能の設定を実現し,定義したPLOAMメッセージはFECコントロールメッセージ(FEC Control Message)と呼ばれ,具体的な内容は表1に示すとおりである:


表1から分かるように,FECコントロールメッセージ中には目標指示,メッセージ識別子,下りFECイネーブル表示及び下りFECイネーブル状態が有効なスーパーフレームIDを含む。そのうち,目標指示の内容がONU-IDである場合,該メッセージはユニキャストメッセージであることを示し,送信の宛先はONU-IDに対応するONUであり,目標指示の内容が0xFFである場合,該メッセージはブロードキャストメッセージであることを示し,送信の宛先は該OLTに接続される全てのONUである。メッセージ識別子は本メッセージのタイプを示し,本実施例のうち,”00010100”の定義はFECコントロールメッセージのメッセージ識別子であり,実際にはさらにFECコントロールメッセージのメッセージ識別子はその他の値と定義することができる。
表1に示すFECコントロールメッセージを用いて,下り方向のFEC機能設定過程において,ONUの処理プロセスは図7に示すとおりであり,以下のステップを含む:
ステップ701:ONUがOLTからの下りPLOAMメッセージを受信し,受信したメッセージに対してCRCチェックを行い,チェックに通るか否かを判断する。通る場合はステップ702を行い,そうでない場合には該メッセージを破棄して本プロセスを終了する;
ステップ702:メッセージ中の第2バイトの内容に基づき,本メッセージがFECコントロールメッセージであることを確定し,該メッセージの第1バイト中の目標指示が本装置のONU-IDにマッチするか否かを判断し,マッチする場合にはステップ703を行い,そうでない場合には本処理プロセスを終了する;前記マッチは2つの状況があり,1つは目標指示中の内容が本装置のONU-IDに一致することであり,もう1つは目標指示の内容が該メッセージがブロードキャストメッセージであることを示す,すなわち,目標指示の内容が0xFFであることである;メッセージ中の第2バイトの内容に基づき,本メッセージがその他タイプのメッセージであることを確定する場合,対応する処理プロセスに応じて処理を行うが,具体的な処理プロセスは本発明の内容ではない。
ステップ703:該メッセージ中の第4バイトから第7バイトまでのスーパーフレームIDを記録し,第3バイトのFECイネーブル指示に基づきFEC機能を有効又は無効にすることを確定し,OLTに向けてONU-IDを含む確認メッセージを返送し,該確認メッセージを受信した場合,OLTはONUが既にFEC機能設定を受け取ったことを知る;
ステップ704:ONUがOLTからの下りフレームを受信し,受信した下りフレームのスーパーフレームIDが既に記録されたスーパーフレームIDにマッチするか否かを判断し,マッチする場合,ステップ705を行い,そうでない場合には従来のFEC符号化ステータスに応じて下りフレームを処理し,処理完了後に引き続き本ステップを行う;
ステップ705:ステップ703中で記録した下りFEC符号化ステータスに応じてかつ本ONU装置がFEC機能をサポートしているか否かに基づき,該スーパーフレーム及びその後に受信したスーパーフレームに対して対応する処理を行う:記録が下りFEC符号化の開始である場合,ONUが受信した下りフレームはFEC符号化されており,本ONU装置はFEC機能をサポートするときは,本スーパーフレーム及びその後に受信するスーパーフレームに対してFEC誤り訂正復号化処理を行い,本ONU装置がFEC機能をサポートしないときは,予め設定された符号化アルゴリズムに応じて本スーパーフレーム及びその後に受信するスーパーフレーム中の元のデータを抽出する。記録が下りFEC符号化の終了である場合,ONUが受信する下りフレームはFEC符号化されておらず,本ONU装置は受信したフレームを直接処理する。
図8に示すのは特定のONUに向けて送信されるユニキャストイネーブルFECコントロールメッセージのOLTの処理プロセスであって,以下のステップを含み,その中で,FECイネーブル表示はイネーブルに設定されている:
ステップ801:1つのFECコントロールメッセージを生成する。前記FECコントロールメッセージは表1に示す内容に基づいて定義され,目標ONU-ID,予め設定されたFEC機能が有効なスーパーフレームID,下りFECイネーブル表示等を含む;
ステップ802:生成したFECコントロールメッセージを下り方向に送信する;
ステップ803:ONUからの確認メッセージを受信したか否かを判断し,受信した場合,ステップ804を行い,そうでない場合はそれまでのFEC機能状態に応じて下りフレーム処理を続けるか,又はFEC機能が有効なスーパーフレームIDを再確定してステップ801に戻る;無限ループに陥ることを回避するために,FECコントロールメッセージを送信する回数を限定することができ,一定の回数を超えてもまだ確認メッセージを受信しない場合には,それまでのFEC機能状態に基づいて下りフレームを処理する;前記判断の具体的な方法は予め設定されたIDのスーパーフレームの送信前に確認メッセージを受信したか否かを判断することである;又はステップ802でFECコントロールメッセージを送信したときに予め設定された時間長のタイマーを有効にし,そこでの判断は該タイマーのタイムアウト前に確認メッセージを受信したか否かを判断することである;
ステップ804:予め設定されたID及びその後のスーパーフレームに対してFEC符号化処理を有効にし,さらに下り方向にスーパーフレームを送信する。
FECコントロールメッセージが,ディセーブルの下りFECイネーブル表示を運ぶ状況に対しては,図7で示すプロセスに対応するプロセスを与えることができ,それゆえ繰り返し述べない。
該FECコントロールメッセージがブロードキャストメッセージである場合,FECコントロールメッセージの第1バイトが表1に基づいて0xFFになることを除き,ステップ803の前記判断は:既に登録した本OLTの全てのONUの確認メッセージを受信したか否かを判断することであり,具体的な方法は,ONUからの確認メッセージを受信した後に,該確認メッセージ中のONU-IDを記録し,記録したONU-IDとローカルに記録されたONU-IDが全て一致するとき,全てのONUの確認メッセージを受信したとみなすことである。プロセス保護時間を超えてなお全てのONUの確認情報を受信していない場合,さらに一度FECコントロールメッセージを送信し,FEC機能設定を再度トリガする。無限ループに陥ることを回避しかつ操作時間が長すぎるのは適切でない等の要因を考慮し,前記再トリガの回数は1と設定することができる。
本実施例の解決手段のうち,FECイネーブル表示を運ぶPLOAMメッセージはCRCチェックを有し,そのFECイネーブル表示の更なる信頼性を確保する;さらに,スーパーフレームIDを使用することでFEC機能のステータス変更時間を確定し,かつONUがFECイネーブル表示を受信して確認メッセージを返送することで,FEC機能設定の過程におけるパケットロスを回避する。)

(5)「

」(説明書第12ページ第20行-第13ページ第6行)
([当審仮訳]:
本実施例の方式はさらに上り方向のFEC機能設定に用いることができる。上り方向のFEC機能設定を行うのに用いられるPLOAMメッセージの定義は表1と同様であるが,そのうち第2バイトのメッセージ識別子がその他PLOAMメッセージと異なり,該メッセージが上りのFECコントロールメッセージに用いられることを示す。前記方式で定義するPLOAMメッセージに基づき,上りFEC機能設定を行う過程において,ONUの処理プロセスも図7と同様であり,そのうち,ステップ704は,以下のように変わる:
ONUがOLTからの下りフレームを受信して,下りフレームを受信したスーパーフレームIDが既に記録されたスーパーフレームIDとマッチするか否かを判断し,マッチする場合には,ステップ705を行い,そうでない場合にはそれまでのFEC符号化ステータスに応じて上りフレームを処理し,処理後に本ステップを処理する;
ステップ705は,以下のように変わる:ステップ703に記録された上りFEC符号化ステータスに応じて,該下りスーパーフレームを受信した後に送信した上りフレームに対して対応する処理を行う:記録が上りFEC符号化の開始である場合,その後に送信する上りフレームはFEC機能を開始して符号化を行い,記録が上りFEC符号化の終了である場合,その後に送信する上りフレームはFEC機能を使用せず符号化を行わない。
当然のことながら,上り及び下りのFECコントロールメッセージを1つのメッセージに合わせることができ,メッセージ中の上り又は下りのビットを増加すればよい。)


上記引用例の記載及び図面(特に図2,図5,図7,図8)並びにこの分野における技術常識を考慮すると,
ア 上記(4)の記載及び図7,図8によれば,OLTにより,ONUの下りFECイネーブル表示と,前記ONUのONU-IDとを対応付けた,FECコントロールメッセージと呼ばれるPLOAMメッセージがONUに送信されている。ここで,前記下りFECイネーブル表示を含むPLOAMメッセージを送信するために,当該PLOAMメッセージに当該下りFECイネーブル表示を「設定」することは明らかである。
また,上記(5)の記載によれば,上記の構成は上り方向のFEC機能設定すなわちFECコントロールにも用いることができ,その場合,PLOAMメッセージの定義は上述のものと同様であるが,メッセージ識別子がその他のPLOAMメッセージとは異なり,該メッセージが上りのFECコントロールメッセージに用いることを示すものとなる。そして,上記の構成を上り方向のFECコントロールに用いる場合,「下りFECイネーブル表示」に代えて「上りFECイネーブル表示」が用いられることは明らかである。
したがって,引用例には,「上りFECイネーブル表示を設定し,OLTにより,ONUの上りFECイネーブル表示と,前記ONUのONU-IDとを対応付けた,上り方向のFECコントロールメッセージであるPLOAMメッセージを送信」することが記載されていると認められる。

イ 上記(4)の記載及び図7,図8によれば,ONUは,OLTから受信した下りPLOAMメッセージに含まれる目標指示すなわちONU-IDが自身のONU-IDとマッチし,かつ前記下りFECイネーブル表示が下りFECイネーブルを指示する場合には,受信した下りフレームにFEC誤り訂正復号化処理を行い,下りFECディセーブルを指示する場合には,受信した下りフレームのFECエラーデコーディング処理を行わない。すなわち,ONUにより,下りFECイネーブル表示に応じて,当該ONUのFEC機能が有効または無効にされている。
また,上記アで述べたとおり,上記の構成は上り方向のFECコントロールにも用いることができ,その場合,「下りFECイネーブル表示」に代えて「上りFECイネーブル表示」が用いられることは明らかである。
したがって,引用例には,「前記ONUにより,受信した自ONU-IDにマッチする前記上りFECイネーブル表示に応じて,当該ONUの上り方向のFEC機能を有効または無効」にすることが記載されていると認められる。

ウ 上記(1)?(4)の記載及び図5,図7,図8によれば,上記アで述べた,前記OLTにより,前記ONUの下りFECイネーブル表示と,前記ONUのONU-IDとを対応付けた,FECコントロールメッセージと呼ばれるPLOAMメッセージを送信する態様として,前記FECコントロールメッセージと呼ばれるPLOAMメッセージには,当該メッセージがONUのFECコントロールメッセージであることを示すメッセージ識別子を含むとともに,FECコントロールメッセージに含まれる値として,前記ONUの前記下りFECイネーブル表示が設定されていることが記載されている。また,上記(1)の記載及び図2によれば,前記PLOAMメッセージは下りリンクフレームのPLOAMdフィールドに追加されて送信されている。
また,上記アで述べたとおり,上記の構成は上り方向のFEC機能設定すなわちFECコントロールにも用いることができ,その場合,PLOAMメッセージの定義は上述のものと同様であるが,メッセージ識別子がその他のPLOAMメッセージとは異なり,該メッセージが上りのFECコントロールメッセージに用いることを示すものとなる。そして,上記の構成を上り方向のFECコントロールに用いる場合,「下りFECイネーブル表示」に代えて「上りFECイネーブル表示」が用いられることは明らかである。
したがって,引用例には,「前記OLTにより,前記ONUの上りFECイネーブル表示と,前記ONUのONU-IDとを対応付けた,FECコントロールメッセージと呼ばれるPLOAMメッセージを送信することは,前記PLOAMメッセージに,当該メッセージがONUの上り方向のFECコントロールメッセージであることを示すメッセージ識別子を含め,前記PLOAMメッセージに,前記ONUの上り方向のFECコントロールメッセージの値として,前記ONUの前記上りFECイネーブル表示を設定し,前記PLOAMメッセージを,下りリンクフレームのPLOAMdフィールドに追加し,前記下りリンクフレームを送信」することが記載されていると認められる。

エ 上記(4)の記載及び図7,図8によれば,引用例に記載されている方法が,FEC機能の有効化/無効化指示方法に関するものであることは明らかである。
したがって,引用例には,「FEC機能の有効化/無効化指示方法」が記載されていると認められる。


したがって,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「 上りFECイネーブル表示を設定し,
OLTにより,ONUの上りFECイネーブル表示と,前記ONUのONU-IDとを対応付けた,上り方向のFECコントロールメッセージであるPLOAMメッセージを送信し,
前記ONUにより,受信した自ONU-IDにマッチする前記上りFECイネーブル表示に応じて,当該ONUの上り方向のFEC機能を有効または無効にし,
前記OLTにより,前記ONUの上りFECイネーブル表示と,前記ONUのONU-IDとを対応付けた,FECコントロールメッセージと呼ばれるPLOAMメッセージを送信することは,
前記PLOAMメッセージに,当該メッセージがONUの上り方向のFECコントロールメッセージであることを示すメッセージ識別子を含め,
前記PLOAMメッセージに,前記ONUの上り方向のFECコントロールメッセージの値として,前記ONUの前記上りFECイネーブル表示を設定し,
前記PLOAMメッセージを,下りリンクフレームのPLOAMdフィールドに追加し,
前記下りリンクフレームを送信する
FEC機能の有効化/無効化指示方法。」



[技術常識]
引用例には,上記に加えて,図面とともに以下の事項が記載されている。

(6)「

」(説明書第8ページ第13-18行)
([当審仮訳]:
PLOAMメッセージが上りFECサポート能力指示も運ぶことができること,又はOMCI MEが上りFECサポート能力指示を運ぶことによって,ONUのFEC機能に対するサポート能力をOLTに報告することができ,OLTはONUのFEC機能のサポート能力を理解することに基づいてFEC機能を設定することができ,それによって手動の保守作業を減らし,従来技術におけるOLTのFEC機能をサポートしないONUに向けてFECイネーブル命令を送信することでリンクが切れるという現象を回避する。)

(7)「

」(説明書第19ページ第18行-第20ページ第8行)
([当審仮訳]:
実施例5:OMCIプロトコルパケットによりFECサポート能力の報告を実現する。
OMCIは,ONU管理インターフェースであり,OLTはOMCIの管理側となり,OMCIチャンネルを通じて獲得したONU情報によって,ネットワーク上で使用することができ,OLTがローカルに使用することもできる。OMCI管理の情報メッセージの組織単位は,管理エンティティ(Management Entity,ME)であり,1つのMEは1つのクラスの関連する情報の集合であり,ネットワークによる識別及び操作対象として,全てのMEが相互関係に基づいて1つの木状の管理情報ベース(Management Information Base,MIB)を形成する。MEはフィールドから構成され,1つのフィールドは管理側に読み書きなどの操作を行う際のパラメータを提供することができる。OMCIレポートも対応するCRCチェック保護を有している。標準にONU能力報告のOMCI MEが定義されており,従来のONU能力報告に用いられるMEに,FECサポート能力を示す1つのフィールドを追加するだけでよい。
OMCI MEによりFEC能力報告を実現するステップは,以下のとおりである:
ステップa’:ONUがOLTに向けてOMCIレポートを送信し,そのうちOMCI ME中にFECサポート能力フィールドの値を含み,該FEC能力指示ビットの値はONU装置自身がFEC能力をサポートするか否かに基づき設定される;
ステップb’:OLTが受信したFEC能力指示ビットを有するOMCIレポートに対してCRCチェック及びその他レポートの妥当性及びマッチング検査を行い,チェック及び検査に通る場合,そのうちのFEC能力指示ビットの値を記録し,前記OMCIレポートを送信したONUのFEC能力指示とする;チェックに通らない場合,従来のOMCIレポートのチェックに通らなかったときの処理ステップに基づいて対応する処理を行う。)


当審により通知した平成27年8月28日付けの拒絶の理由に引用された特開2006-191589号公報には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(8)「【0030】
ONT/OLTインターフェースの拡張には,物理層OAM(PLOAM)および/またはBPON(ブロードバンドPON)システムで使用されるOMCIプロトコルを拡張することが含まれよう。GPON(ギガビットPON)およびEPON(イーサーネットを利用したPON)の場合は,対応するプロトコル構成要素の拡張が必要であろう。インターフェースプロトコルのPLOAMレベル(またはGPONまたはEPONシステム内の対応する最低レベル)を拡張すれば,高レベルの機能に対する依存度が最小になるので,本明細書でなされる発明の開示の診断値が最高になるであろう。OMCI,またはGPONおよびEPONシステム内の対応するプロトコルの拡張も可能であり,場合によっては,同様のレベルの診断能力を提供するであろう。
【0031】
PLOAMはOLTとONTとの間の管理情報のパケットを交換するための第2層プロトコルである。OMCIは管理チャネルプロトコルである。本明細書の発明の開示による方法及びシステムの実装には,OLTとONTのプロセッサ間でのメッセージの交換をサポートするためのPLOAM転送機構の拡張,またはこの同じ情報を転送するためのOMCIのユーザー定義メッセージ能力の利用のいずれかが含まれる。PLOAMの利用が好適であるが,それはこの戦略では遠隔の技術者とONTの処理デバイス(単数または複数)との間のソフトウエアの量が最小になるからである。しかし,PLOAMの利用には関連するインターフェースプロトコルの拡張が含まれる。OMCIでユーザー定義のメッセージを使用すると標準化の影響は少なくなるが,OLTとONTとの間のプロセッサ間により多くのプロトコルソフトウエアが含まれるので頑強さは低下しよう。どのアプローチが選択されるかに関わりなく,結果として生じた機構は製造業者特有の(例えばプロプライエタリ)コマンドおよび対応する応答データを含むメッセージパケットをONTとOLTとの間で交換可能でなければならない。」


原査定の拒絶の理由に引用された「Gigabit-capable Passive Optical Networks (G-PON): Transmission convergence layer specification([当審仮訳]:ギガビット対応受動光ネットワーク(G-PON):送信コンバージェンスレイヤ仕様)[online],ITU-T Recommendation G.984.3(03/2008),インターネット<URL:https://www.itu.int/rec/dologin_pub.asp?lang=e&id=T-REC-G.984.3-200803-S!!PDF-E&type=items>,2008年3月」には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(9)「8.1 Downstream GTC frame structure
A diagram of the downstream GTC frame structure is shown in Figure 8-2. The frame has a duration of 125 μs and is 38880 bytes long, which corresponds to the downstream data rate of 2.48832 Gbit/s. The PCBd length range depends on the number of allocation structures per frame.

」(第30-31ページ)
([当審仮訳]:8.1 下りストリームGTCフレーム構造
図8-2に下りストリームGTCフレーム構造の図を示す。このフレームは,2.48832 Gbit/sの下りストリームデータレートに対応する125μsの期間と38800バイトの長さを有する。PCBd長さのレンジは,フレームあたりのアロケーション構造の数に依存する。
(図8-2は省略)
)

(10)「9 GTC messages
There are three methods to convey OAM information between the network management station and the OLT on the one hand and the ONUs on the other hand:
(中略)
・Physical layer OAM (PLOAM) messaging channel. A dedicated 13-byte message can be sent downstream by the OLT to the ONUs and by the ONUs upstream to the OLT conveying OAM functions between them.
・ONU management and control interface (OMCI). OMCI messages are transported over a dedicated GEM channel. The OMCI transport mechanism is described in clause 14. The syntax of the OMCI is specified in [b-ITU-T G.984.4].
This clause focuses on the PLOAM messages.」(第48ページ)
([当審仮訳]:
9 GTCメッセージ
ネットワーク管理局とOLT又はONUとの間でOAM情報を運ぶ方法は3つある:
(中略)
・物理レイヤOAM(PLOAM)チャネル。それらの間でOAM機能を運ぶ固有の13バイトのメッセージが,OLTによりONUに向けて下りストリームで,及びONUによりOLTに向けて上りストリームで,送信され得る。
・ONU管理及び制御インターフェース(OMCI)。OMCIメッセージは固有のGEMチャンネル上で転送される。OMCIの転送メカニズムは14節で述べる。OMCIの文法は,[b-ITU-T G.984.4]の中で特定される。
この節ではPLOAMメッセージに焦点をあてる。)

(11)「14.1 OMCI transport schema
As described in [b-ITU-T G.984.4], the OMCI operates on a dedicated bidirectional virtual connection between the management station and the ONU. The management station can be located in the OLT itself, or in a network element farther into the network. In the latter case, then the virtual connection must reach from the ONU to the network element.
To transport the OMCI virtual connection over the G-PON link, the OLT configures a dedicated GEM Port-ID using the appropriate PLOAM message.
The OMCI primitive data units are 48-bytes in length. The 48-byte payloads are encapsulated into GEM frames with a header containing the configured OMCI 12-bit Port-ID. These frames are transported over the G-PON in the GTC payload using the default Alloc-ID in the upstream.」(第100ページ)
([当審仮訳]:14.1 OMCI転送概要
[b-ITU-T G.984.4]にて述べられているように,OMCIは,管理局とONUとの間の固有の双方向の仮想コネクションを扱う。管理局は,OLT自身又はネットワークに対して遠いネットワークエレメントに位置し得る。後者のケースでは,仮想コネクションはONUからネットワークエレメントまで到達するべきである。
G-PONリンク上でのOMCI仮想コネクションの転送のために,OLTは適切なPLOAMメッセージを用いて固有のGEM Port-IDを構成する。
OMCIの原始的なデータユニットは48バイトの長さである。48バイトのペイロードは,構成されたOMCIの12ビットのPort-IDを含むヘッダとともに,GEMフレームにカプセル化される。G-PON上において,これらのフレームは,上りストリームではデフォルトのAlloc-IDを用いて,GTCペイロード内で転送される。)


本件の優先権主張の日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「Gigabit-capable Passive Optical Networks (G-PON): ONT management and control interface specification([当審仮訳]:ギガビット対応受動光ネットワーク(G-PON):ONT管理及び制御インターフェース仕様)[online],ITU-T Recommendation G.984.4(02/2008),インターネット<URL:https://www.itu.int/rec/dologin_pub.asp?lang=e&id=T-REC-G.984.4-200802-I!!PDF-E&type=items>,2008年2月」には,以下の事項が記載されている。

(12)「3.2 optical network termination (ONT): A single subscriber device that terminates any one of the distributed (leaf) endpoints of an ODN, implements a PON protocol, and adapts PON PDUs to subscriber service interfaces. An ONT is a special case of an ONU.」(第4ページ)
([当審仮訳]:
3.2 光ネットワーク終端(ONT):ODNの分散された(葉の)エンドポイントを終端する単一の加入者デバイスであって,PONプロトコルを実装し,そしてPON PDUを加入者サービスインターフェースに適応させる。ONTはONUの特別なケースである。)

(13)「11.1 ONT management and control protocol packet format
11.1.1 Introduction
In GEM mode, each ONT management and control protocol packet is encapsulated directly in a GEM packet. The packet format is shown in Figure 11.1.1-1. Packet contents reflect the ATM heritage of B-PON; only the header is changed. The OMCI trailer is retained and used for its CRC.
The following clauses discuss the details.


11.1.2 GEM header
The header contains the PortID (GEM mode) of the OMCC for the addressed ONT (see clause 10).
The header PTI should equal 000 or 001 for GEM (as per normal fragmentation rules).

(中略)

11.1.4 Message type
The message type field is subdivided into four parts. These are given in Figure 11.1.4-1.


The most significant bit, bit 8, is reserved for the destination bit (DB). In the OMCI this bit is always 0.
Bit 7, acknowledge request (AR), indicates whether or not the message requires an acknowledgement. If an acknowledgement is expected, this bit is set to 1. If no acknowledgement is expected, the coding of this bit is 0. Note that "acknowledge" means a response to an action request, not an acknowledgement at the link layer.
Bit 6, acknowledgement (AK), indicates whether or not this message is an acknowledgement to an action request. If a message is an acknowledgement, this bit is set to 1. If the message is not a response, this bit is set to 0.
Bits 5..1, message type (MT), indicate the message type. Codes 0 to 3 and 29 to 31 are reserved for future use. Codes 4 to 28 are used by this specification. Table 11-1 lists the message types that are defined.

Table 11-1 - OMCI message types
(中略)

11.1.7 Message contents
The layout of the message contents field is message-specific. The detailed layout of all messages is given in Appendix II.」(第330-339ページ)
([当審仮訳]:
11.1 ONT管理及び制御プロトコルパケットフォーマット
11.1.1 序論
GEMモードにおいて,各ONT管理及び制御プロトコルパケットフォーマットはGEMパケットに直接カプセル化される。図11.1.1-1にパケットフォーマットを示す。パケットコンテンツは,B-PONのATMの遺産を反映している;ヘッダのみ変更されている。OMCIトレーラは維持され,それのCRCのために使われる。
以下の節にて詳細を議論する。

(図11.1.1-1は省略)

11.1.2 GEMヘッダ
このヘッダは,宛先ONTのOMCCのPortID(GEMモード)を含む(第10節参照)。
このヘッダPTIは,GEMに対しては(通常フラグメンテーションごとルールのように)000又は001と等しい値であるべきである。

(中略)

11.1.4 メッセージタイプ
メッセージタイプフィールドは4つの部分に分割される。これらは図11.1.4-1にて与えられる。

(図11.1.4-1は省略)

もっとも重要なビットであるビット8は,宛先ビット(DB)のために予約されている。OMCIにおいて,このビットは常に0である。
ビット7,確認要求(AR)は,メッセージが確認を要求するか否かを表示する。もし確認が期待されるならば,このビットは1にセットされる。もし確認が期待されないならば,このビットの符号化は0である。この「確認」は,動作要求に対する応答を意味し,リンクレイヤにおける確認を意味しないことに留意すべきである。
ビット6,確認(AK)は,このメッセージが動作要求の確認であるか否かを表示する。もしメッセージが確認であるならば,このビットは1にセットされる。もしメッセージが応答でないならば,このビットは0にセットされる。
ビット5..1,メッセージタイプ(MT)は,メッセージタイプを表示する。コード0から3と29から31は将来の使用のために予約されている。コード4から29はこの仕様書にて使用されている。表11-1は定義されたメッセージタイプを羅列している。

表11-1 - OMCIメッセージタイプ
(中略)

11.1.7 メッセージコンテンツ
メッセージコンテンツフィールドのレイアウトはメッセージ固有である。全てのメッセージの詳細なレイアウトは付録IIで与えられる。)


G-PONの仕様に係る(10)の記載及び(6)?(8)の記載から明らかなとおり,「OLTとONUやONTなどの加入者側光回線終端装置との間でやりとりされる制御情報を,PLOAMメッセージ又はOMCIメッセージのいずれかにて伝送すること。」は,技術常識であると認める(以下,「技術常識1」という。)。

G-PONの仕様に係る(13)の記載から明らかなとおり,「OLTがONTにOMCIメッセージにて制御情報を伝送する際に,当該OMCIメッセージに当該制御情報に対応するメッセージタイプを追加し,前記OMCIメッセージのメッセージコンテンツフィールドに制御情報の内容(コンテンツ)を設定して送信すること。」は,G-PONの仕様として仕様書に規定された事項である。また,G-PONの仕様に係る(12)の記載からも明らかなように,ONUなる用語にはONTが含まれている。そして,規定された仕様に対応するように技術開発がなされることに鑑みれば,「OLTがONUにOMCIメッセージにて制御情報を伝送する際に,当該OMCIメッセージに当該制御情報に対応するメッセージタイプを追加し,前記OMCIメッセージのメッセージコンテンツフィールドに制御情報の内容(コンテンツ)を設定して送信すること。」は,技術常識であると認める(以下,「技術常識2」という。)。

G-PONの仕様に係る(9)及び(11)の記載から明らかなとおり,「OMCIメッセージが,GTCフレームにて転送されること」は,G-PONの仕様として仕様書に規定された事項である。そして,規定された仕様に対応するように技術開発がなされることに鑑みれば,「OMCIメッセージが,GTCフレームにて転送されること。」は,技術常識であると認める(以下,「技術常識3」という。)。


3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると,

(1)本願明細書の【0003】の「ONUに,アップリンク伝送中にFEC機能を有効又は無効にすることが指示される。」なる記載から,本願発明におけるONUの「FEC機能」とは,アップリンクすなわち「上り方向のFEC機能」を少なくとも含んでいることは明らかである。このため,本願発明の「前方誤り訂正(FEC:Forward Error correction)ステータス指示識別子」は,上り方向に関するものを含んでいるといえる。
また,本願発明の「FECステータス指示識別子」と引用発明の「FECイネーブル表示」とは,いずれも,ONUに対するFEC機能の有効又は無効の指示のためのものである点で共通する。
したがって,引用発明の「上りFECイネーブル表示を設定し」は,本願発明の「前方誤り訂正(FEC:Forward Error correction)ステータス指示識別子を設定し,」に含まれる。

(2)引用発明の「ONU-ID」は,本願発明の「ONUのID」に明らかに相当し,引用発明の「・・・を対応付けた,上り方向のFECコントロールメッセージであるPLOAMメッセージを送信し,」は,本願発明の「・・・とを対応づけて送信し,」に含まれる。
したがって,上記(1)もあわせてみれば,引用発明の「OLTにより,ONUの上りFECイネーブル表示と,前記ONUのONU-IDとを対応付けた,上り方向のFECコントロールメッセージであるPLOAMメッセージを送信し,」は,本願発明の「事業者側光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)により,加入者側光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)のFECステータス指示識別子と,前記ONUのIDとを対応づけて送信し,」に含まれる。

(3)上記(1)のとおりであるから,本願発明の「前方誤り訂正(FEC:Forward Error correction)ステータス指示識別子」は,上り方向に関するものを含んでいるといえる。また,引用発明の「FECイネーブル表示」と本願発明の「FECステータス指示識別子」は,いずれも,ONUに対するFEC機能の有効又は無効の指示のためのものである点で共通する。また,引用発明の「マッチする」は,本願発明の「対応する」に含まれる。
したがって,引用発明の「前記ONUにより,受信した自ONU-IDにマッチする前記上りFECイネーブル表示に応じて,当該ONUの上り方向のFEC機能を有効または無効にし,」は,本願発明の「前記ONUにより,受信した自IDに対応する前記指示識別子に応じて,当該ONUのFEC機能を有効又は無効になり,」に含まれる。

(4)方法の発明において,各処理が「ステップ」により実現されることは明らかであるから,引用発明の各処理を「・・・ステップ」と称することは任意である。そして,上記(2)のとおりであるから,引用発明の「前記OLTにより,前記ONUの上りFECイネーブル表示と,前記ONUのONU-IDとを対応付けた,FECコントロールメッセージと呼ばれるPLOAMメッセージを送信することは,」は,本願発明の「前記OLTにより,前記ONUのFECステータス指示識別子と,前記ONUのIDとを対応づけて送信するステップは,」に含まれる。

(5)本願発明の「ONT管理及び制御インターフェース(OMCI:ONT Management and Control Interface)メッセージ」と引用発明の「PLOAMメッセージ」とは,いずれもOLTとONU(ONT)との間でやりとりされる「制御情報を伝送するメッセージ」である点で共通する。また,引用発明の「メッセージ識別子」は,当該メッセージがONUの上り方向のFECコントロールメッセージであること,すなわち当該メッセージの属性を示すものであるから,本願発明の「FECステータス属性」に対応し,引用発明の「前記ONUの上り方向のFECコントロールメッセージの値」は,本願発明の「前記ONUの前記FECステータス属性の値」に対応する。さらに,上記(1)のとおりであるから,本願発明の「FECステータス指示識別子」は,引用発明の「上りFECイネーブル表示」を含んでいる。
また,本願発明の「前記OMCIメッセージを,ダウンリンクフレームのOMCIフィールドに追加し,前記ダウンリンクフレームを送信し,」と,引用発明の「前記PLOAMメッセージを,下りリンクフレームのPLOAMdフィールドに追加し,前記下りリンクフレームを送信する」とは,「制御情報を伝送するメッセージを,ダウンリンクフレームのフィールドに追加し,前記ダウンリンクフレームを送信し,」の点で共通する。

(6)本願発明の「 ダウンリンクフレームの複数のアロケーション構造から,前記ONUのIDと一致するID(Alloc-ID)により識別されるアロケーション構造を検索し,・・・
または,
ONT管理及び制御インターフェース(OMCI:ONT Management and Control Interface)メッセージに,ONUのFECステータス属性を追加し,・・・
または,
ダウンストリーム物理制御ブロック(PCBd:Physical Control Block downstream)に,FEC指示フィールドを追加し,・・・ブロードキャストする」
なる構成は択一的であるため,本願発明は,3つの選択肢のうち,2つ目の選択肢のみを備える構成を含んでいる。
したがって,本願発明と,引用発明とは,
「 制御情報を伝送するメッセージに,ONUのFECステータス属性を追加し,
前記制御情報を伝送するメッセージに,前記ONUの前記FECステータス属性の値として,前記ONUの前記FECステータス指示識別子を設定し,
前記制御情報を伝送するメッセージを,ダウンリンクフレームのフィールドに追加し,
前記ダウンリンクフレームを送信」する
点で共通する。


したがって,本願発明と引用発明とは,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「前方誤り訂正(FEC:Forward Error correction)ステータス指示識別子を設定し,
事業者側光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)により,加入者側光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)のFECステータス指示識別子と,前記ONUのIDとを対応づけて送信し,
前記ONUにより,受信した自IDに対応する前記指示識別子に応じて,当該ONUのFEC機能を有効又は無効になり,
前記OLTにより,前記ONUのFECステータス指示識別子と,前記ONUのIDとを対応づけて送信するステップは,
制御情報を伝送するメッセージに,ONUのFECステータス属性を追加し,
前記制御情報を伝送するメッセージに,前記ONUの前記FECステータス属性の値として,前記ONUの前記FECステータス指示識別子を設定し,
前記制御情報を伝送するメッセージを,ダウンリンクフレームのフィールドに追加し,
前記ダウンリンクフレームを送信する,
前方誤り訂正機能の有効/無効化指示方法。」


(相違点)
一致点の「制御情報を伝送するメッセージ」に関し,本願発明は,「ONT管理及び制御インターフェース(OMCI:ONT Management and Control Interface)メッセージ」であるのに対し,引用発明は,「PLOAMメッセージ」である点。
それにともない,一致点の「ONUのFECステータス属性」の追加及び「前記ONUの前記FECステータス指示識別子」の設定が,本願発明は,OMCIメッセージに対して行われるのに対し,引用発明は,PLOAMメッセージに対して行われる点,並びに一致点の「前記制御情報を伝送するメッセージ」が追加される「ダウンリンクフレームのフィールド」が,本願発明は,「OMCIフィールド」であるのに対し,引用発明は,「PLOAMdフィールド」である点。


4 検討
上記相違点について検討する。

上記「2 引用発明及び技術常識」の「[技術常識]」の項で述べたとおり,「OLTとONUやONTなどの加入者側光回線終端装置との間でやりとりされる制御情報を,PLOAMメッセージ又はOMCIメッセージのいずれかにて伝送すること。」(技術常識1)は,当業者における技術常識であるから,引用発明において,「PLOAMメッセージ」に替えて,技術常識1に基づき,「OMCIメッセージ」にてFECステータス指示識別子を送信するよう構成することは,格別困難なことではない。
そして,上記「[技術常識]」の項で述べたとおり,「OLTがONUにOMCIメッセージにて制御情報を伝送する際に,当該OMCIメッセージに当該制御情報に対応するメッセージタイプを追加し,前記OMCIメッセージのメッセージコンテンツフィールドに制御情報の内容(コンテンツ)を設定して送信すること。」(技術常識2)及び「OMCIメッセージが,GTCフレームにて転送されること。」(技術常識3)についても,いずれも技術常識であるから,「OMCIメッセージ」にてFECステータス指示識別子を送信するよう構成する際に,OMCIメッセージのメッセージタイプとして「ONUのFECステータス属性」を追加し,OMCIメッセージのメッセージコンテンツフィールドに,「ONUのFECステータス属性」の値として「前記ONUの前記FECステータス指示識別子」を設定するとともに,当該OMCIメッセージを,ダウンリンクのGTCフレームの何らかのフィールドに追加することは,当業者が容易になし得ることである。そして,OMCIメッセージが追加されるフィールドを「OMCIフィールド」と称することは任意である。
したがって,上記相違点は格別困難なことではなく,当業者が容易になし得ることにすぎない。


そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。


5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。


よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-11 
結審通知日 2016-03-15 
審決日 2016-03-28 
出願番号 特願2012-523189(P2012-523189)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷岡 佳彦  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 大塚 良平
▲高▼橋 真之
発明の名称 前方誤り訂正機能の有効/無効化指示方法及びシステム  
代理人 金子 彩子  
代理人 折居 章  
代理人 吉田 望  
代理人 大森 純一  
代理人 中村 哲平  
代理人 金山 慎太郎  

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