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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N |
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管理番号 | 1317936 |
審判番号 | 不服2014-16202 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-08-15 |
確定日 | 2016-08-10 |
事件の表示 | 特願2012-246293「漸次的に解像度を増加させて1以上の生物学的サンプルの観察及び分析のための方法及びその方法のための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月11日出願公開、特開2013- 64743〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2006年(平成18年)9月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年9月29日、米国)を国際出願日とする出願である特願2008-533727号の一部を平成24年11月8日に新たな特許出願としたものであって、平成26年4月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされた。 その後、当審において、平成27年8月12日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対して、平成28年2月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし26に係る発明は、平成28年2月17日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項20に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項20に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 「 解剖学的構造の分析又は図示のうちの少なくとも1を行なうための装置であって、以下の: 解剖学的構造を含む対象内に配置され、そして上記解剖学的構造に関連する第一情報を作成するために、解剖学的構造に光を進めるように構成された、少なくとも1の第一生成要素、ここで当該第一情報が画像を伴い、そして表示用の画像よりも高い解像度を含んでおり; in vivoで、上記解剖学的構造から上記第一情報を受容し、そして当該第一情報に基づいて、上記解剖学的構造の少なくとも1の区分を選択して、上記第一情報の少なくとも一部である第二情報を作成するように構成された少なくとも1の第二処理要素;そして 上記第二情報に基づいて上記解剖学的構造の表示倍率を漸次的に変更するように構成される少なくとも1の第三処理要素 を含む、前記装置。」 第3 当審の平成27年8月12日付け拒絶理由の概要 当審の平成27年8月12日付け拒絶理由の概要は、次のとおりである。 本願の請求項7ないし9、18、19、21、24及び26に係る発明は明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本願の請求項1ないし26に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2001-340292号公報(以下「引用文献1」という。)又はROBB,R.A.“Virtual endoscopy: development and evaluation using the Visible Human Datasets”, Computerized Medical Imaging and Graphics, Volume 24, Issue 3,2000年5月, Pages 133-151に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 引用文献記載の事項 1 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオスコープとプロセッサとを備え、人体の臓器内の画像をTV用モニタに表示することができる電子内視鏡装置に関する。特に、本発明は、観察画像の特定部分を拡大表示することが可能な拡大電子内視鏡装置に関する。」 (2)「【0005】そこで、本発明は、撮像素子の画素を効果的に利用することにより、解像度を低下させることなく観察画像の特定部分を電気的に拡大表示することができる電子内視鏡装置およびそのシステムを得ることを目的とする。」 (3)「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明の電子内視鏡装置は、撮像素子を有するスコープと、スコープが着脱自在に接続されるプロセッサと、プロセッサに接続されるとともに被写体像を表示する表示装置とを備える。電子内視鏡装置は、撮像素子に形成され、撮像素子の全画素によって構成される全画素被写体像に基づいて、表示装置へ表示するための表示被写体像を形成する表示被写体像形成手段と、表示被写体像に応じた画像信号を映像信号に変換し、その映像信号を表示装置へ出力する信号処理手段とを備える。表示被写体像形成手段は、表示被写体像として、全画素被写体像の解像度が変換された被写体像であって、撮像素子の全画素より少ない画素数で構成される通常表示被写体像を形成する通常表示被写体像形成手段を有することを特徴とする。これにより、解像度が変換された被写体像が表示装置に表示される。さらに、表示被写体像形成手段は、表示装置に表示される通常表示被写体像の一部を拡大表示する場合、表示被写体像として、全画素被写体像の一部であって、全画素被写体像の画像領域の一部である部分領域内に位置する画素によって構成される拡大表示被写体像を形成する拡大表示被写体像形成手段を有することを特徴とする。これにより、電気的な拡大表示処理を実行する場合、補間処理を施すことなく、通常表示における被写体像の一部が拡大表示される。したがって、通常表示から拡大表示へ切り替えられても、補間処理による解像度の低下もなく、被写体像が拡大表示される。 【0007】スコープ内にある撮像素子の画素数は、表示装置のカラーテレビジョン方式に応じた有効画素数より多いことが望ましい。この場合、有効画素数以下の画素数で通常表示被写体像が構成される。有効画素数以上の画素数を有する撮像素子が使用されれば、通常表示において有効画素数に近い画素数で通常表示被写体像を構成し、また、拡大表示においても、有効画素数に近い画素数で拡大表示被写体像を構成することができ、通常表示、拡大表示ともに高画質の被写体像を得ることができる。好ましくは、通常表示被写体像を構成する画素数は、部分領域内の画素数と略等しい。なお、有効画素数とは、表示装置に従った撮像素子の使用可能な画素数であり、例えば、NTSC方式の場合、約41万画素である。」 (4)「【0010】電子内視鏡装置は、表示装置に表示される通常表示被写体像の注目部位を指示するための指示マークが表示装置に表示されるように、指示マークに応じたキャラクタ信号を生成して映像信号とともに表示装置へ出力する指示マーク生成手段を有することが望ましい。そして、指示マークによって指示される表示装置の指示位置を変更するため、例えば、指示マークの位置を移動させる移動キーを設けており、指示マークの移動に関する位置情報を出力するキーボードをプロセッサに接続させる。この場合、電子内視鏡装置は、移動キーに対する操作に応じて指示マークの位置が移動するように、指示マークに応じたキャラクタ信号の出力タイミングを調整する指示マーク位置調整手段を有することが望ましい。さらに、キーボードには、通常表示被写体像から拡大表示被写体像への切り替えを実行するための切替キーが設けられていることが望ましく、この場合、電子内視鏡装置は、切替キーに対する操作に応じて、通常表示被写体像から拡大表示被写体像へ切り替える表示状態切替手段を有することが望ましい。このようなキーボードを設けることにより、通常表示被写体像が表示装置に表示されている間、オペレータは、指示マークを移動させながら被写体像の注目部位の場所を指示マークで示すことができる。 【0011】あるいは、キーボードの代わりに、タッチパネルを表示装置の画面上に配置してもよい。タッチパネルは、プロセッサに接続されており、タッチパネルの触れた位置に対応する表示装置の画面上の位置情報をプロセッサへ送る。そして、通常表示被写体像の注目部位を指示するためにオペレータがタッチパネルを触れると、触れられたタッチパネル上の位置に対応する表示装置の指示位置がプロセッサへ送られる。タッチパネルが配置される場合、電子内視鏡装置は、オペレータによるタッチパネルへの接触に応じて、通常表示被写体像から拡大表示被写体像へ切り替える表示状態切替手段を有することが望ましい。 【0012】好ましくは、通常表示被写体像から拡大表示被写体像へ切り替えられる場合、指示位置を中心として通常表示被写体像の一部が拡大表示される。これにより、オペレータが注目する部位として画面上において指示した位置を中心とした映像が得られる。」 (5)「【0024】電子内視鏡装置は、スコープ10とプロセッサ20およびテレビ用モニタ(表示装置)50から構成されており、プロセッサ20にはテレビ用モニタ50が接続されている。スコープ10は、プロセッサ20に着脱自在に接続可能であり、手術や検査などを行う場合、プロセッサ20に接続されて人体の臓器内へ挿入される。なお、電子内視鏡装置全体の動作は、プロセッサ20内のシステムコントロール回路34に設けられたCPU(中央演算処理装置)36により制御されている。 【0025】ハロゲンランプなどの光源29から放射された光は、絞り30および集光レンズ31を介してライトガイド13の入射端13aに入射する。ライトガイド13は、光源29から放射された光をスコープ10の接続端から先端(遠位端)へ導くためのファイババンドル(光束)である。ライトガイド13の入射端13aに入射した光は、ライトガイド13の出射端13bから出射し、配光レンズ14を介してスコープ10の遠位端から出射する。これにより、観察部位Sに光が照射される。なお、スコープ10の接続端は、スコープ10のプロセッサ20との接続側を示す。 【0026】観察部位Sに光が照射されると、観察部位Sにより反射された光がスコープ10内の対物レンズ11を通る。これによって、被写体像がCCD(撮像素子)12に結像される。被写体像が結像されるCCD12の受光面には、光電変換素子であってCCD12の画素となるフォトダイオード(図示せず)が配列されている。本実施形態では、撮像方式として単板式が適用されており、フォトダイオードの上には、後述する1チップの補色カラーフィルタが配列されている。被写体像がCCD12の受光面に結像されると、光電変換により、補色カラーフィルタを通過する色に応じたアナログの画像信号(電荷)が各画素毎に発生する。」 (6)「【0028】被写体像を動画像としてモニタ50に表示する通常表示状態では、CCD12において発生する画像信号は、以下に述べるように処理される。」 (7)「【0036】キーボード51(入力装置)では、オペレータによって患者情報などのデータが入力される。通常表示状態では、図2に示すように、モニタ50においてポインタPが必要に応じて表示され、ポインタPが指示する画面上での場所(指示位置)を変更するためにポインタPを移動させる操作がキーボード51上で行われる。 【0037】キーボード51上に設けられた移動キー51Eが操作されると、操作された移動キー51Eに応じた信号が、システムコントロール回路34へ送られる。キーボード51から送られてくる信号は、ポインタPを移動させる位置の情報をもっており、このポインタPの位置情報に基づき、オペレータが意図する位置にポインタPが表示されるように、制御信号がシステムコントロール回路34からCRTC24へ送られる。これにより、ポインタPは、操作された移動キー51に従った方向へ移動する。ただし、ポインタPは、画面上において、上下左右方向に移動する。ファンクションキー51Fは、通常表示状態と拡大表示状態を切り替えるためのキーであり、ポインタPが所定の位置に表示された状態でファンクションキー51Fが操作されると、ポインタPが指していた被写体像の一部を拡大した被写体像(拡大表示被写体像)がモニタ50の画像領域MAにおいて表示される(図2参照)。このとき、CCD12では、画像変換回路17からの駆動信号に基づいて、拡大表示状態において表示される被写体像を構成する画素に発生する画像信号のみが読み出される。キーボード51のファンクションキー51Fが再び押されると、通常表示状態に切り替わり、通常表示の被写体像がモニタ50に表示される。 【0038】なお、キーボード51の操作によるポインタPの位置の移動に関しては、従来知られているように、被写体像が表示されている画像領域NA内に常に収まるように(枠から外れないように)ポインタPが移動する。そのため、システムコントロール回路34では、位置メモリ35に格納されている接続されたスコープ10に応じた画像領域NAのデータとキーボード51から送られてくるポインタPの移動に関する信号に基づいて、ポインタPが移動する。」 (8)「【0047】このような間引き処理を、CCD12に形成される、すなわち約120万の全画素数で構成される被写体像(全画素被写体像)に対して施すことにより、1/4の画素数となる約30万画素で構成されるとともに、解像度が変換された被写体像が形成される。」 (9)「【0053】画面上においてポインタPの指示した位置を中心として通常表示における被写体像の一部を拡大表示するため、画素P_(c)を中心として部分領域PIを定める。ただし、部分領域PIは、画像形成領域TIの中の一部領域である。そして、この部分領域PI内に位置するすべての画素によって構成される像を拡大表示の被写体像(拡大表示被写体像)とする。」 (10)「【0055】そして、上述したように、部分領域PI内にある画素に発生する画像信号がCCD12から読み出されることにより、拡大表示の被写体像がモニタ50の領域MAに表示される。」 2 引用文献1に記載された発明の認定 上記1(1)ないし(10)を含む引用文献1全体の記載を総合すると、引用文献1には、 「 撮像素子を有するスコープと、スコープが着脱自在に接続されるプロセッサと、プロセッサに接続されるとともに被写体像を表示する表示装置とを備える電子内視鏡装置であって、 光源29から放射された光をスコープの接続端から先端(遠位端)へ導くライトガイド13を備え、検査を行う場合、スコープは人体の臓器内へ挿入されるものであり、 撮像素子に形成され、撮像素子の全画素によって構成される全画素被写体像に基づいて、表示装置へ表示するための表示被写体像を形成する表示被写体像形成手段と、表示被写体像に応じた画像信号を映像信号に変換し、その映像信号を表示装置へ出力する信号処理手段とを備え、 表示被写体像形成手段は、表示被写体像として、全画素被写体像の解像度が変換された被写体像であって、撮像素子の全画素より少ない画素数で構成される通常表示被写体像を形成する通常表示被写体像形成手段と、表示装置に表示される通常表示被写体像の一部を拡大表示する場合、表示被写体像として、全画素被写体像の一部であって、全画素被写体像の画像領域の一部である部分領域内に位置する画素によって構成される拡大表示被写体像を形成する拡大表示被写体像形成手段とを有し、 表示装置に表示される通常表示被写体像の注目部位を指示するための指示マークが表示装置に表示されるように、指示マークに応じたキャラクタ信号を生成して映像信号とともに表示装置へ出力する指示マーク生成手段と、指示マークの位置を移動させる移動キーと、通常表示被写体像から拡大表示被写体像への切り替えを実行するための切替キーと、切替キーに対する操作に応じて、通常表示被写体像から拡大表示被写体像へ切り替える表示状態切替手段とを有し、 オペレータは、指示マークを移動させながら被写体像の注目部位の場所を指示マークで示すことができ、 通常表示被写体像から拡大表示被写体像へ切り替えられる場合、指示位置を中心として通常表示被写体像の一部が拡大表示される電子内視鏡装置。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 第5 本願発明と引用発明との対比 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) ア 引用発明の「臓器」は、本願発明の「解剖学的構造」に相当する。 イ 引用発明が「臓器」を「被写体」とするものであることは明らかである。 ウ 引用発明の「被写体像を表示する」ことは、本願発明の「図示」に相当する。 エ 引用発明の「電子内視鏡装置」は、本願発明の「装置」に相当する。 オ 上記アないしエを踏まえると、引用発明の「被写体像を表示する表示装置」を「備える電子内視鏡装置」は、本願発明の「解剖学的構造の分析又は図示のうちの少なくとも1を行なうための装置」に相当する。 (2) ア 引用発明の「撮像素子の全画素によって構成される全画素被写体像」が、「臓器」に関連するものであり、画像を伴うものであることは明らかである。 イ 引用発明の「通常表示被写体像」は、本願発明の「表示用の画像」に相当する。 ウ 引用発明の「通常表示被写体像」は、「全画素被写体像の解像度が変換された被写体像であって、撮像素子の全画素より少ない画素数で構成される」ものであるから、引用発明において、「全画素被写体像」が「通常表示被写体像」よりも高い解像度を含んでいることは明らかである。 エ 上記アないしウを踏まえると、引用発明の「撮像素子の全画素によって構成される全画素被写体像」、そして「全画素被写体像の解像度が変換された被写体像であって、撮像素子の全画素より少ない画素数で構成される通常表示被写体像」が「形成」されることは、本願発明の「解剖学的構造に関連する第一情報」、「ここで当該第一情報が画像を伴い、そして表示用の画像よりも高い解像度を含んで」いること相当する。 (3) ア 引用発明の「人体」は、本願発明の「対象」に相当する。 イ 引用発明において、「スコープ」の「先端(遠位端)へ導」かれた「光」が、「臓器」に照射されることは明らかである。 ウ 上記ア及びイを踏まえると、引用発明の「検査を行う場合」、「人体の臓器内へ挿入される」「スコープ」に「備えられ」、「光をスコープの接続端から先端(遠位端)へ導くライトガイド13」は、本願発明の「解剖学的構造を含む対象内に配置され」、「解剖学的構造に光を進めるように構成された、少なくとも1の第一生成要素」に相当する。 (4) ア 引用発明において、「ライトガイド13」が、「被写体」である「臓器」の「全画素被写体像」を得るために「スコープの接続端から先端(遠位端)」へ「光」を「導く」ことは明らかである。 イ 上記ア並びに上記(2)及び(3)を踏まえると、引用発明の「検査を行う場合」、「人体の臓器内へ挿入される」「スコープ」に「備えられ」、「光をスコープの接続端から先端(遠位端)へ導くライトガイド13」、そして、「撮像素子の全画素によって構成される全画素被写体像」が「撮像素子に形成され」、「全画素被写体像の解像度が変換された被写体像であって、撮像素子の全画素より少ない画素数で構成される通常表示被写体像」が「形成」されることは、本願発明の「解剖学的構造を含む対象内に配置され、そして上記解剖学的構造に関連する第一情報を作成するために、解剖学的構造に光を進めるように構成された、少なくとも1の第一生成要素、ここで当該第一情報が画像を伴い、そして表示用の画像よりも高い解像度を含んで」いることに相当する。 (5) ア 引用発明の「撮像素子」は、「検査を行う場合」、「人体の臓器内へ挿入される」「スコープ」に備えられていることから、引用発明において、「撮像素子に形成され」る「撮像素子の全画素によって構成される全画素被写体像」が人体内で形成されることは明らかである。 よって、上記(2)エを踏まえると、引用発明の「撮像素子の全画素によって構成される全画素被写体像」が「撮像素子に形成され」ることは、本願発明の「in vivoで、上記解剖学的構造から上記第一情報を受容」することに相当する。 イ 引用発明の「全画素被写体像の一部であって、全画素被写体像の画像領域の一部である部分領域内に位置する画素によって構成される拡大表示被写体像」は、本願発明の「第一情報の少なくとも一部である第二情報」に相当する。 ウ 引用発明の「通常表示被写体像」は「全画素被写体像の解像度が変換された被写体像」であるから、「全画素被写体像」に基づいたものである。 よって、引用発明が「表示装置に表示される通常表示被写体像の注目部位を指示するための指示マークが表示装置に表示されるように、指示マークに応じたキャラクタ信号を生成して映像信号とともに表示装置へ出力する指示マーク生成手段と、指示マークの位置を移動させる移動キー」とを有し、「オペレータは、指示マークを移動させながら被写体像の注目部位の場所を指示マークで示す」ことは、本願発明の「第一情報に基づいて、上記解剖学的構造の少なくとも1の区分を選択」することに相当する。 エ 上記アないしウを踏まえると、引用発明の「撮像素子の全画素によって構成される全画素被写体像」が「形成され」る「撮像素子」、「オペレータ」が「指示マークを移動させながら被写体像の注目部位の場所を指示マークで示すことができ」るようにする「表示装置に表示される通常表示被写体像の注目部位を指示するための指示マークが表示装置に表示されるように、指示マークに応じたキャラクタ信号を生成して映像信号とともに表示装置へ出力する指示マーク生成手段と、指示マークの位置を移動させる移動キー」、及び、「全画素被写体像の一部であって、全画素被写体像の画像領域の一部である部分領域内に位置する画素によって構成される拡大表示被写体像を形成する拡大表示被写体像形成手段」は、本願発明の「in vivoで、上記解剖学的構造から上記第一情報を受容し、そして当該第一情報に基づいて、上記解剖学的構造の少なくとも1の区分を選択して、上記第一情報の少なくとも一部である第二情報を作成するように構成された少なくとも1の第二処理要素」に相当する。 (6)引用発明の「通常表示被写体像から拡大表示被写体像へ切り替える表示状態切替手段」と、本願発明の「上記第二情報に基づいて上記解剖学的構造の表示倍率を漸次的に変更するように構成される少なくとも1の第三処理要素」とは、「第二情報に基づいて解剖学的構造の表示倍率を変更するように構成される少なくとも1の第三処理要素」である点において共通する。 2 一致点及び相違点 よって、本願発明と引用発明とは、 「 解剖学的構造の分析又は図示のうちの少なくとも1を行なうための装置であって、以下の: 解剖学的構造を含む対象内に配置され、そして上記解剖学的構造に関連する第一情報を作成するために、解剖学的構造に光を進めるように構成された、少なくとも1の第一生成要素、ここで当該第一情報が画像を伴い、そして表示用の画像よりも高い解像度を含んでおり; in vivoで、上記解剖学的構造から上記第一情報を受容し、そして当該第一情報に基づいて、上記解剖学的構造の少なくとも1の区分を選択して、上記第一情報の少なくとも一部である第二情報を作成するように構成された少なくとも1の第二処理要素;そして 上記第二情報に基づいて上記解剖学的構造の表示倍率を変更するように構成される少なくとも1の第三処理要素 を含む、前記装置。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 第三処理要素による表示倍率の変更が、本願発明においては、「漸次的」であるのに対し、引用発明においては、そのような特定がなされていない点。 第6 当審の判断 1 上記相違点について検討する。 人体の臓器を画像により観察する際に、表示倍率を複数段階に変更可能とし、表示倍率を順次上げて、すなわち漸次的に変更して表示させることは、例を挙げるまでもなく、本願優先日前において周知である。 よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到しうることである。 2 本願発明の奏する作用効果 本願装置発明によってもたらされる効果は、引用発明及び本願優先日前において周知な事項から当業者が予測し得る程度のものである。 3 まとめ 以上のとおりであり、本願発明は、引用発明及び本願優先日前において周知な事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-03-09 |
結審通知日 | 2016-03-15 |
審決日 | 2016-03-30 |
出願番号 | 特願2012-246293(P2012-246293) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼場 正光 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 麻生 哲朗 |
発明の名称 | 漸次的に解像度を増加させて1以上の生物学的サンプルの観察及び分析のための方法及びその方法のための装置 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 渡辺 陽一 |
代理人 | 津田 英直 |
代理人 | 福本 積 |
代理人 | 武居 良太郎 |