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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
管理番号 1317953
審判番号 不服2015-2815  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-13 
確定日 2016-08-10 
事件の表示 特願2013-151109「無線通信システムにおける、セグメントに応答するスケジューリングのためのプレコーディング」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月26日出願公開、特開2013-258726〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、2006年(平成18年)10月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2005年(平成17年)10月27日 米国)を国際出願日とする出願である特願2008-538009号の一部を、平成23年 5月12日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願とした特願2011-107105号の一部を、さらに平成25年 7月19日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年 8月19日 :翻訳文の提出
平成25年 8月19日 :手続補正書の提出
平成26年 6月 9日付け:拒絶理由の通知
平成26年 9月16日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年10月 9日付け:拒絶査定
平成27年 2月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成27年 9月24日付け:当審による拒絶理由の通知
平成28年 1月14日 :意見書、手続補正書の提出

本願の特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年 1月14日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5に記載された以下のとおりのものと認める。

「 無線通信のための方法であって、
複数のサブキャリア・セグメントのうちの1つのサブキャリア・セグメントに含まれる2つ以上のサブキャリアを介して信号を受信することと、
前記受信した信号に基づいて、少なくとも1つのサブキャリア・セグメントのプレコーディング情報を生成することと、ここで、前記プレコーディング情報は、ユーザの少なくとも1つのチャネル応答情報に基づいて、少なくとも1つのデータストリームのうちの少なくとも1つのシンボルに適用され、前記少なくとも1つのサブキャリア・セグメントは、予め定めた帯域幅を備えるサブ帯域に相当する、
前記プレコーディング情報を示すインデクスを送信することと、ここで、前記複数のサブキャリア・セグメントのうちの各サブキャリア・セグメントは、自身のフィードバック・チャネルを持ち、前記送信することは、受信機に、スケジュールされたサブキャリア・セグメントのためのプリコーディング情報を示すインデクスを、前記サブキャリア・セグメント自身のフィードバック・チャネル上でフィードバックするように構成された、
を備え、
ここで、前記生成することは、前記プレコーディング情報を示す前記インデクスを、プレコーディング重みを示す情報として生成することを備える、方法。」

2.引用発明と技術事項
(1)引用発明
これに対して、当審の拒絶理由で引用された文献であり、本願の優先権主張の日前に公開された、国際公開第2003/058871号(2003年7月17日公開。以下、「引用例」という。)には、「RESOURCE ALLOCATION FOR MIMO-OFDM COMMUNICATION SYSTEMS」([当審仮訳]:MIMO-OFDM通信システムのためのリソース割り当て)の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「[1010] A scheduler may be designed to form one or more sets of terminals for possible (downlink or uplink) data transmission for each of a number of frequency bands. Each set includes one or more active terminals and corresponds to a hypothesis to be evaluated. Each frequency band corresponds to a group of one or more frequency subchannels in the MIMO-OFDM system. The scheduler may further form one or more sub-hypotheses for each hypothesis. For the downlink, each sub-hypothesis may correspond to specific assignments of a number of transmit antennas at the base station to the one or more terminals in the hypothesis. And for the uplink, each sub-hypothesis may correspond to a specific order for processing the uplink data transmissions from the one or more terminals in the hypothesis. The performance of each sub-hypothesis is then evaluated (e.g., based on one or more performance metrics, such as a performance metric indicative of the overall throughput for the terminals in the hypothesis). One sub-hypothesis is then selected for each frequency band based on the evaluated performance, and the one or more terminals in each selected sub-hypothesis are then scheduled for data transmission on the corresponding frequency band.」(3頁)
([当審仮訳]:[1010] スケジューラは、多くの周波数バンドのそれぞれに対して、可能な(ダウンリンク又はアップリンク)データ伝送のための端末の1つ又は複数の集合を形成するように設計されてよい。各集合は、1つ又は複数のアクティブな端末を含み、評価される仮説に相当する。各周波数バンドはMIMO-OFDMシステムの1つ又は複数の周波数サブチャネルのグループに相当する。スケジューラは更に仮説毎に1つ又は複数のサブ仮説を形成することができる。ダウンリンクの場合、各サブ仮説は、仮説における基地局の多くの送信アンテナの1つ又は複数の端末への特定の割り当てに相当してもよい。そしてアップリンクの場合、各サブ仮説は、仮説における1つ又は複数の端末からのアップリンクデータ送信を処理する特定の順序に相当してよい。次に各サブ仮説のパフォーマンスが、(例えば、仮説における端末の全体的なスループットを示すパフォーマンス メトリックのような、1つ又は複数のパフォーマンス メトリックに基づいて)評価される。次に1つのサブ仮説が、評価されたパフォーマンスに基づき周波数バンド毎に選択され、そして各選択されたサブ仮説における1つ又は複数の端末が対応する周波数バンドにおけるデータ伝送のためにスケジュールされる。)

イ 「[1012] Details of various aspects, embodiments, and features of the invention are described below. The invention further provides methods, computer products, schedulers, base stations, terminals, systems, and apparatuses that implement various aspects, embodiments, and features of the invention, as described in further detail below.」(4頁)
([当審仮訳]:[1012] 本発明の多様な態様、実施形態及び特徴の詳細が後述される。更に詳細に後述されるように、本発明は更に、本発明の多様な態様、実施形態及び特徴を実現する方法、コンピュータ製品、スケジューラ、基地局、端末、システム及び装置を提供する。)

ウ 「[1031] With SDMA, the “spatial signatures” associated with different terminals are exploited to allow multiple terminals to operate simultaneously on the same channel, which may be a time slot, a frequency band, a code channel, and so on. A spatial signature constitutes a complete RF characterization of the propagation path between each transmit-receive antenna pair to be used for data transmission. On the downlink, the spatial signatures may be derived at the terminals and reported to the base station. The base station may then process these spatial signatures to select terminals for data transmission on the same channel, and to derive mutually “orthogonal” steering vectors for each of the independent data streams to be transmitted to the selected terminals. On the uplink, the base station may derive the spatial signatures of the different terminals. The base station may then process these signatures to schedule terminals for data transmission and to further process the transmissions from the scheduled terminals to separately demodulate each transmission」(6?7頁)
([当審仮訳]:[1031] SDMAでは、複数の端末が1つのタイムスロット、1つの周波数バンド、1つの符号チャネル等の同じチャネルで同時に動作できるように、異なる端末に関連付けられた「空間シグナチャ」が利用される。空間シグナチャは、データ伝送のために使用される各送信-受信アンテナ対の間における伝播経路の完全なRF特性付けを構成する。ダウンリンクでは、空間シグナチャが端末で導き出され、基地局に報告される。次に基地局はこれらの空間シグナチャを処理し、同じチャネル上でデータ伝送を行う端末を選択し、選択された端末に送信される独立したデータストリームのそれぞれに対して相互に「直交した」ステアリングベクトルを導き出す。アップリンク上で、基地局は異なる端末の空間シグナチャを導き出してよい。次に基地局はデータ伝送を行う端末をスケジュールし、更にスケジュールされた端末からの各伝送を別個に復調するように処理するためにこれらのシグナチャを処理してよい)

エ 「[1035] For a multiple-access OFDM system without MIMO capability, the overall system bandwidth, W, is divided into N_(F) orthogonal frequency subchannels, with each such subchannel having a bandwidth of W/N_(F). For this system, a number of terminals may share the available spectrum via time division multiplexing (TDM). In a “pure” TDM scheme, a single terminal may be assigned the entire system bandwidth, W, for each fixed time interval, which may be referred to as a time slot. Terminals may be scheduled for data transmission by allocating time slots on a demand basis. Alternatively, for this OFDM system, it is possible to assign only a fraction, N_(A) , of the N_(F) frequency subchannels to a given terminal for a given time slot, thus making the remaining (N_(F) - N_(A)) frequency subchannels in the same time slot available to other terminals. In this way, the TDM access scheme is converted into a hybrid TDM/FDM access scheme.」(8頁)
([当審仮訳]:[1035] MIMO機能を持たない多元接続OFDMシステムの場合、全体的なシステム帯域幅WがN_(F)個の直交周波数サブチャネルに分割され、このような各サブチャネルはW/N_(F)の帯域幅を有する。このシステムの場合、多くの端末が時分割多重(TDM)を用いて使用可能なスペクトルを共有してよい。「純粋な」TDM方式では、タイムスロットと呼ばれることのある固定時間間隔毎に単一の端末がシステム帯域幅W全体を割り当てられてよい。端末は、要求に基づいてタイムスロットを割り当てることにより、データ伝送がスケジュールされてよい。代わりに、このOFDMシステムの場合、N_(F)個の周波数サブチャネルの一部分(N_(A)個)だけをある端末のあるタイムスロットに割り当てることが可能で、このようにして同じタイムスロットにおける残りの(N_(F)-N_(A))周波数サブチャネルを他の端末が使用できるようにする。このようにして、TDMアクセス方式はTDM/FDMハイブリッドアクセス方式に変換される。)

オ 「[1044] If the entire system bandwidth is treated as a single frequency channel (e.g., as in a single carrier MIMO system), then the maximum number of terminals that may be scheduled to transmit simultaneously is equal to the number of spatial subchannels, which is N_(S) ≦ min {N_(R) , N_(T)}. If the system bandwidth is divided into N_(F) frequency channels (e.g., as in a MIMO-OFDM system), then the maximum number of terminals that may be scheduled to transmit simultaneously is N_(F)・N_(S) , since each transmission channel (i.e., each frequency subchannel of each spatial subchannel) may be allocated to a different terminal. And if the system bandwidth is divided into N_(G) groups of frequency subchannels, then the maximum number of terminals that may be scheduled to transmit simultaneously is N_(G)・N_(S) , since each frequency subchannel group of each spatial subchannel may be allocated to a different terminal. If the number of terminals is less than the maximum number permitted, then multiple transmission channels may be allocated to a given terminal.」(10頁)
(上記「≦」は、下部の等号が「=」であるが、「-」である原文の記号に代替して用いたものである。以下、同じ。)
([当審仮訳]:[1044] システム帯域幅全体が(例えば単一キャリヤMIMOシステムでのように)単一の周波数チャネルとして扱われる場合には、同時に送信するようにスケジュールされる端末の最大数は空間サブチャネルの数N_(S) ≦ min{N_(R),N_(T)}に等しい。システム帯域幅が(例えばMIMO-OFDMシステムでのように)N_(F)個の周波数チャネルに分割される場合、各伝送チャネル(すなわち、各空間サブチャネルの各周波数サブチャネル)は異なる端末に割り当てることができるから、同時に送信するようにスケジュールされ得る端末の最大数はN_(F)・N_(S)である。そしてシステム帯域幅が周波数サブチャネルのN_(G)個のグループに分割される場合には、各空間サブチャネルの各周波数サブチャネルグループを異なる端末に割り当てることができるので、同時に送信するようにスケジュールされ得る端末の最大数は、N_(G)・N_(S)である。端末の数が許容される最大数未満である場合には、複数の伝送チャネルがある端末に割り当てられてよい。)

カ 「[1048] Each frequency subchannel group may include one or more frequency subchannels and corresponds to a particular frequency band of the overall system bandwidth. Depending on the particular system design, there may be (1) only one group with all N_(F) frequency subchannels, or (2) N_(F) groups, with each group having a single frequency subchannel, or (3) any number of groups between 1 and N_(F). The number of frequency subchannel groups, N_(G) , can thus range between 1 and N_(F) , inclusive (i.e., 1 ≦ N_(G) ≦ N_(F) ). Each group may include any number of frequency subchannels, and the N_(G) groups may include the same or different number of frequency subchannels. Moreover, each group may include any combination of frequency subchannels (e.g., the frequency subchannels for a group need not be adjacent to one another).」(12?13頁)
([当審仮訳]:[1048] 各周波数サブチャネルグループは1つ又は複数の周波数サブチャネルを含んでよく、全体的なシステム帯域幅の内のある特定の周波数バンドに対応する。特定のシステム設計に応じて、(1)N_(F)個の全ての周波数サブチャネルからなるただ1つのグループ、あるいは(2)各グループが単一の周波数サブチャネルを有するN_(F)個のグループ、あるいは(3)1とN_(F)の間の任意の数のグループがあってよい。周波数サブチャネルグループの数N_(G)は、このようにして1とN_(F)を含んだそれらの間の範囲であり得る(すなわち、1 ≦ N_(G) ≦ N_(F))。各グループは任意の数の周波数サブチャネルを含んでよく、N_(G)個のグループは同じ数の又は異なる数の周波数サブチャネルを含んでよい。更に、各グループは周波数サブチャネルの任意の組み合わせを含んでよい(例えば、あるグループの周波数サブチャネルは互いに隣接する必要はない)。)

キ 「[1051] The receiver may periodically estimate the channel response for each transmit-receive antenna pair. The channel estimates may be facilitated in a number of ways such as, for example, with the use of pilot and/or data decision directed techniques known in the art. The channel estimates may comprise the complex-value channel response estimate (e.g., the gain and phase) for each frequency subchannel group of each transmit-receive antenna pair, as shown in equation (1). The channel estimates provide information on the transmission characteristics of (e.g., what data rate is supportable by) each spatial subchannel for each frequency subchannel group.
[1052] The information given by the channel estimates may also be distilled into (1) a post-processed signal-to-noise-and-interference ratio (SNR) estimate (described below) for each spatial subchannel of each frequency subchannel group, and/or (2) some other statistic that allows the transmitter to select the proper rate for each independent data stream. This process of deriving the essential statistic may reduce the amount of data required to characterize a MIMO channel. The complex channel gains and the post-processed SNRs represent different forms of channel state information (CSI) that may be reported by the receiver to the transmitter. For time division duplexed (TDD) systems, the transmitter may be able to derive or infer some of the channel state information based on transmission (e.g., a pilot) from the receiver since there may be sufficient degree of correlation between the downlink and uplink for such systems, as described below. Other forms of CSI may also be derived and reported and are described below.」(13?14頁)
([当審仮訳]:[1051] 受信機は、送信-受信アンテナ対毎にチャネル応答を周期的に推定してよい。チャネル推定値は、例えば当分野で既知のパイロット及び/又はデータ決定指向技術を使用するような、多くの方法で促進されてよい。チャネル推定値は、等式(1)に示されるように各送信-受信アンテナ対の周波数サブチャネルグループ毎に複素数値のチャネル応答推定値(例えば、利得と位相)を含んでよい。チャネル推定値は周波数サブチャネルグループ毎に各空間サブチャネルの伝送特性に関する情報(例えば、各空間サブチャネルによってどのデータレートがサポート可能であるのか)を提供する。
[1052] チャネル推定値により与えられる情報から、(1)各周波数サブチャネルグループの空間サブチャネルごとの後処理された信号対雑音及び干渉比(SNR)推定値(後述)、及び/又は(2)送信機が独立したデータストリーム毎に適切な速度を選択できるようにする他の何らかの統計値を抽出してよい。この本質的な(抽出された)統計値を導出するプロセスは、MIMOチャネルを特性付けるために必要とされるデータの量を削減するだろう。複素数のチャネル利得及び後処理されたSNRは受信機により送信機に報告されてよい様々な形式のチャネル状態情報(CSI)を表す。後述されるように、時分割複信(TDD)システムの場合、このようなシステムのダウンリンクとアップリンクの間に十分な程度の相関があり得るため、送信機は受信機からの送信(例えばパイロット)に基づいてチャネル状態情報のいくつかを導出又は推論することができるだろう。後述される、他の形式のCSIも導出及び報告されてよい。)

ク 「[1057] To simplify the scheduling, the terminals may be allocated transmission channels (and possibly transmit power) based on their priority. Initially, the active terminals may be ranked by their priority, which may be determined based on various factors, as described below. The N_(X) highest priority terminals may then be considered in each scheduling interval. This then allows the scheduler to allocate the available transmission channels to just N_(X) terminals instead of all active terminals. The resource allocation may be further simplified by (1) selecting N_(X) = N_(S) and assigning each terminal with all frequency subchannels of one spatial subchannel, or (2) selecting N_(X) = N_(G) and assigning each terminal with all spatial subchannels of one frequency subchannel group, or (3) making some other simplification. The gains in throughput even with some of these simplifications may be substantial compared to the pure TDM scheduling scheme that allocates all transmission channels to a single terminal for each time slot, particularly if independent frequency selective fading of the N_(X) terminals is considered in the resource allocation.
[1058] For simplicity, several assumptions are made in the following description. First, it is assumed that the average received power for each independent data stream may be adjusted to achieve a particular target energy-per-bit-to-total-noise-and-interference ratio (E_(b)/N_(t)) after signal processing at the receiver (which is the terminal for a downlink transmission and the base station for an uplink transmission). This target E_(b) /N_(t) is often referred to as a power control setpoint (or simply, the setpoint) and is selected to provide a particular level of performance (e.g., a particular PER). The setpoint may be achieved by a closed-loop power control mechanism that adjusts the transmit power for each data stream (e.g., based on a power control signal from the receiver). For simplicity, a common setpoint may be used for all data streams received at the receiver. Alternatively, a different setpoint may be used for each data stream, and the techniques described herein may be generalized to cover this operating mode. Also, for the uplink, it is assumed that simultaneous transmissions from different terminals are synchronized so that the transmissions arrive at the base station within a prescribed time window.」(15?16頁)
([当審仮訳]:[1057] スケジューリングを簡略化するために、端末は、優先順位に基づいて伝送チャネルが割り当てられてよい(及び電力を送信するかもしれない)。後述されるように、当初、アクティブな端末は、多様な要因に基づいて決定されてよいその優先順位によって並べられてよい。そして、優先順位の最も高いN_(X)個の端末が各スケジューリング間隔で考慮されてよい。そしてこれによりスケジューラは、使用可能な伝送チャネルをアクティブな全ての端末の代わりにN_(X)個の端末だけに割り当てることができる。リソース割り当ては、更に、(1)N_(X)=N_(S)を選択し、各端末に1つの空間サブチャネルの全ての周波数サブチャネルを割り当てることによって、あるいは(2)N_(X)=N_(G)を選択し、各端末に1つの周波数サブチャネルグループの全ての空間サブチャネルを割り当てることによって、あるいは(3)何らかの他の簡略化を行うことによって簡略化されてよい。これらの簡略化のいくつかを使った場合でもスループットの利得は、特にN_(X)個の端末の独立した周波数選択性フェージングがリソース割り当てで考慮される場合には、タイムスロット毎に全ての伝送チャネルを単一の端末に割り当てる純粋なTDMスケジューリング方式と比較して多大となるだろう。
[1058] 簡単にするために、以下の説明ではいくつかの仮定がなされる。第1に、独立した各データストリームの平均受信電力は、(ダウンリンク伝送の場合端末であり、アップリンク伝送の場合基地局である)受信機での信号処理の後の特定の目標となるビット当たりのエネルギー対総雑音及び干渉比(E_(b)/N_(t))を達成するために調整されてよいと仮定される。この目標となるE_(b)/N_(t)は、多くの場合電力制御設定点(又は単に設定点)と呼ばれ、特定のレベルのパフォーマンス(例えば特定のPER)を提供するために選択される。設定点は、(例えば、受信機からの電力制御信号に基づき)データストリーム毎に送信電力を調整する閉ループ電力制御機構によって達成されてよい。簡単にするために、受信機で受信される全てのデータストリームに1つの共通した設定点が使用できる。代わりに、データストリーム毎に異なる設定点が使用されてよく、ここで説明される技術はこの動作モードを包含するように一般化されてよい。また、アップリンクの場合、異なる端末からの同時伝送が、伝送が所定の時間窓内で基地局に達するように同期されることが仮定される。)

ケ 「[1216] A TX MIMO processor 820 receives and demultiplexes the modulation symbols from TX data processor 810 and provides a stream of symbol vectors for each transmit antenna used for data transmission, one symbol vector per symbol period. Each symbol vector includes up to N_(F) modulation symbols for the N_(F) frequency subchannels of the transmit antenna. TX MIMO processor 820 may further precondition the modulation symbols if full CSI processing is performed (e.g., if the channel response matrix H(k) is available). MIMO and full-CSI processing is described in further detail in the aforementioned U.S. Patent Application Serial No. 09/993,087. Each symbol vector stream is then received and modulated by a respective modulator (MOD) 822 and transmitted via an associated antenna 824.
[1217] At each terminal 106 to which a data transmission is directed, antennas 852 receive the transmitted signals, and the received signal from each antenna is provided to a respective demodulator (DEMOD) 854. Each demodulator (or front-end unit) 854 performs processing complementary to that performed at modulator 822. The received modulation symbols from all demodulators 854 are then provided to a receive (RX) MIMO/data processor 860 and processed to recover one or more data streams transmitted to the terminal. RX MIMO/data processor 860 performs processing complementary to that performed by TX data processor 810 and TX MIMO processor 820 and provides decoded data to a data sink 862. The processing by terminal 106 is described in further detail below.
[1218] At each active terminal 106, RX MIMO/data processor 860 further estimates the channel conditions for the downlink and provides channel state information (CSI) indicative of the estimated channel conditions. The CSI may comprise post-processed SNRs, channel gain estimates, and so on. A controller 870 receives and may further transform the downlink CSI (DL CSI) into some other form (e.g., rate). The downlink CSI is processed (e.g., coded and symbol mapped) by a TX data processor 880, further processed by a TX MIMO processor 882, modulated by one or more modulators 854, and transmitted back to base station 104 via an uplink (or feedback) channel. The downlink CSI may be reported by the terminal using various signaling techniques, as described below.」(59?60頁)
([当審仮訳]:[1216] TX MIMOプロセッサ820は、TXデータプロセッサ810から変調シンボルを受信し、デマルチプレクスし、シンボルベクトル(シンボル期間当たり1つのシンボルベクトル)のストリームをデータ伝送のために使用される各送信アンテナに提供する。各シンボルベクトルは、送信アンテナのN_(F)個の周波数サブチャネルに対して最高N_(F)個の変調シンボルを含む。TX MIMOプロセッサ820は、完全CSI処理が実行される場合(例えば、チャネル応答行列H(k)が入手可能である場合)、更に、変調シンボルに前処理を行ってもよい。MIMO及び完全CSI処理は前述した米国特許出願番号第09/993,087号に更に詳しく説明されている。次に各シンボルベクトルのストリームは、それぞれの変調器(MOD)822によって受信及び変調され、関連付けられたアンテナ824を介して送信される。
[1217] データ伝送が向けられる各端末106では、アンテナ852が送信された信号を受信し、各アンテナで受信された信号がそれぞれの復調器(DEMOD)854に与えられる。各復調器(又はフロントエンドユニット)854は変調器822で実行された処理に相補的な処理を実行する。全ての復調器854からの受信された変調シンボルは、次に受信(RX)MIMO/データプロセッサ860に供給され、端末に送信された1つ又は複数のデータストリームを復元するために処理される。RX MIMO/データプロセッサ860は、TXデータプロセッサ810とTX MIMOプロセッサ820によって実行された処理に相補的な処理を実行し、データシンク862に復号されたデータを提供する。端末106による処理は更に詳しく後述される。
[1218] それぞれのアクティブな端末106で、RX MIMO/データプロセッサ860はさらに、ダウンリンクのためにチャネル状態を推定し、推定されたチャネル状態を示すチャネル状態情報(CSI)を提供する。CSIは後処理されたSNR、チャネル利得の推定値等を含んでよい。コントローラ870はダウンリンクCSI(DL CSI)を受信し、更に何らかの他の形式(例えばレート)に変換してよい。ダウンリンクCSIはTXデータプロセッサ880によって処理され(例えば、符号化され、シンボルにマップされ)、TX MIMOプロセッサ882によって更に処理され、1つ又は複数の変調器854によって変調され、アップリンク(又はフィードバック)チャネルを介して基地局104に送り返される。後述されるように、ダウンリンクCSIは、多様なシグナリング技術を用いて端末によって報告されてよい。)

コ 「[1272] In yet another embodiment, the CSI comprises one or more signals transmitted on the reverse link from the receiver unit to the transmitter unit. In some systems, a degree of correlation may exist between the downlink and uplink (e.g. for time division duplexed (TDD) systems, where the uplink and downlink share the same system bandwidth in a time division multiplexed manner). In these systems, the quality of the downlink may be estimated (to a requisite degree of accuracy) based on the quality of the uplink, which may be estimated based on signals (e.g., pilot signals) transmitted from the receiver unit. The pilot signals transmitted on the uplink would then represent a means by which the transmitter unit could estimate the CSI as observed at the receiver unit. In TDD systems, the transmitter unit can derive the channel response matrix H(k) (e.g., based on the pilot transmitted on the uplink), account for differences between the transmit and receive array manifolds, and receive an estimate of the noise variance at the receiver unit. The array manifold deltas may be resolved by a periodic calibration procedure that may involve feedback between the receiver unit and transmitter unit.」(72頁)
([当審仮訳]:[1272] 更に別の実施形態では、CSIは受信機ユニットから送信機ユニットへの逆方向リンクで送信される1つ又は複数の信号を含む。いくつかのシステムでは、(例えば、アップリンクとダウンリンクが時分割多重化方式で同じシステム帯域幅を共用する、時分割複信(TDD)システムの場合)ダウンリンクとアップリンクの間に一定の相関が存在し得る。これらのシステムでは、ダウンリンクの品質は、アップリンクの品質に基づいて(必要な精度まで)推定されてよく、それは受信機ユニットから送信される信号(例えばパイロット信号)に基づいて推定されてよい。したがって、アップリンクで送信されるパイロット信号は、それによって送信機ユニットが、受信機ユニットで観測されるようなCSIを推定できる手段になるだろう。TDDシステムでは、送信機ユニットは(例えばアップリンクで送信されるパイロットに基づいて)チャネル応答行列H(k)を導出でき、送信アレイマニフォールドと受信アレイマニフォールドの差を説明でき、受信機ユニットでの雑音の変化の推定値を受信できる。アレイマニフォールドのデルタは、受信機ユニットと送信機ユニットの間のフィードバックを含み得る周期的な較正手順によって解くことができる。)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a 上記イの[1012]、上記ウの[1031]の記載によれば、送受信アンテナ間の伝播経路のRF特性付けを行う空間シグネチャを導き出し、報告し、データ伝送を行う方法が記載されており、該方法が、無線通信のための方法であることは明らかである。

b 上記エの[1035]、上記オの[1044]、上記カの[1048]の記載によれば、上記無線通信はOFDMシステムにより行われ、システム帯域幅に複数の周波数サブチャネルグループが含まれ、1つの周波数サブチャネルグループに2つ以上の周波数サブチャネルが含まれており、さらに、上記ケの[1216]、[1217]の記載によれば、該周波数サブチャネルを介して、信号を受信することは明らかである。

c 上記キの[1051]、[1052]、上記ケの[1217]、[1218]の記載によれば、上記受信した信号に基づいて、少なくとも1つの周波数サブチャネルグループ毎のチャネル状態情報を生成することは明らかである。
また、上記アの[1010]、上記オの[1044]、上記カの[1048]の記載によれば、上記少なくとも1つの周波数サブチャネルグループは、システム帯域幅を複数のグループに分割した特定の周波数バンドに相当すると言える。

d 上記キの[1051]、[1052]、上記ケの[1218]の記載によれば、周波数サブチャネルグループのチャネル状態情報を、フィードバック・チャネルを介して送信すると言える。
また、上記クの[1057]、[1058]の記載によれば、該周波数サブチャネルグループは、端末である各受信機に1つの周波数サブチャネルグループを割り当てるようにスケジューリングされたものであってよい。
そうすると、チャネル状態情報を送信すること、そして、該送信は、各受信機に1つの周波数サブチャネルグループを割り当てるようにスケジュールされた周波数サブチャネルグループのためのチャネル状態情報を、フィードバック・チャネルを介してフィードバックするように構成されたものであることは明らかである。

以上を総合すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「 無線通信のための方法であって、
OFDMシステムの複数の周波数サブチャネルグループのうちの1つの周波数サブチャネルグループに含まれる2つ以上の周波数サブチャネルを介して信号を受信し、
前記受信した信号に基づいて、少なくとも1つの周波数サブチャネルグループ毎のチャネル状態情報を生成し、前記少なくとも1つの周波数サブチャネルグループは、システム帯域幅を複数のグループに分割した特定の周波数バンドに相当し、
チャネル状態情報を送信し、ここで、前記送信は、各受信機に1つの周波数サブチャネルグループを割り当てるようにスケジュールされた周波数サブチャネルグループのためのチャネル状態情報を、フィードバック・チャネルを介してフィードバックするように構成された、方法。」

(2)技術事項
同じく当審の拒絶理由に引用された文献であり、本願の優先権主張の日前に公開された特表2005-509316号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

サ 「【0039】
フィードバック受信機70からのフィードバックデータは、メモリ72内にあるコードブック(codebook)76の送信パラメータを調べるのに制御装置36が使用するコードブックインデックス(codebook index)を含んでいてもよい。」(9頁)

シ 「【0047】
送信機での複数のアンテナを介した複数のデータストリームの送信を制御するために、受信機98は、必ず複合チャネルを測定して、送信機にフィードバックデータを送信する必要がある。図に示すように、無線周波数フロントエンド110の出力は、送信機20の各アンテナ素子26から送信されたパイロット信号を利用して、複数の入力アンテナと複数の出力アンテナとの間の複合チャネルを測定する複合チャネル推定器128にも接続されている。以下に、複合チャネル推定器128の機能、および受信機98のデータフィードバック部の他の多く機能ブロックについて図8を参照してさらに十分に説明する。
【0048】
H行列で表わされる複合チャネル推定器128の出力は、V行列計算機/セレクタ130に入力される。ブロック130の「計算機能」は、送信機20において各データストリームに対して使用されるべき所望のアンテナアレイの重みセットについて記述する行列であるVを計算する。所望のアンテナアレイの重みセットは、複合チャネルの測定値に基づいて計算される。」(10?11頁)

ス 「【0055】
好ましい実施形態において、選択されたアンテナアレイの重みセットは、複合チャネル行列HのSVDの右側の特異ベクトルを計算して決定される。この処理を、図8を参照してより十分に説明する。アンテナアレイの重みセットを表わすのに必要なデータ量を減少させるために、所望の重みセットがコードブックの重みセットと比較され、最も近接した範囲にある1つまたは2つ以上のコードブック重みセットが選択される。コードブックの標識は単一のアンテナアレイの重みセット、またはアンテナアレイの重みセットの組み合わせを表わし得る。」(12頁)

セ 「【0062】
一般に、V行列のコードブックを生成してインデックスを付けることができる。ベクトル量子化のような技術は、コードブックを発生し、かつV行列とコードブックとの間の効率的な対応付け(mapping)を生成するためにも使用することができる。2x2の場合に使用されるようなパラメータの量子化をより大きなV行列に拡張することもできる。」(13頁)

ソ 「【0077】
フィードバックデータを受信した後に、処理は、ブロック410に示すように、電力設定、および各データストリームの符号化および変調方式を選択する。この処理において、これらのパラメータは受信したコードブック値に従って選択されて得る。代替の実施形態において、いくつかのこれらのパラメータは受信したフィードバックデータから計算または導出されてもよい。例えば、第1のデータストリームのアンテナパターンが指示された場合、送信機での処理は、第2のデータストリームに対して使用されるアンテナパターンを導出または計算し得る。これは、例えば、第2のストリームが第1のストリームに直交するように制約されている場合に為され得る。
【0078】
ブロック410に示すように、一旦、送信パラメータが選択されると、ブロック412に示すように、処理は、各データストリームに対して選択された符号化および変調方式が支持している選択されたデータレートに従って、入力データをデータストリームに分離する。この処理は、図3に示すデータスプリット機能28で実行される。例として、データストリーム1が、データストリーム2の2倍の速度で動作する場合には、2つのシンボルがデータストリーム1に送られ、1つのシンボルがデータストリーム2に送られる。同様に、1つのデータストリームに電力ゼロが割り当てられた場合には、すべてのデータシンボルは、割り当てられたある電力を有する残りのデータストリームに送られる。
【0079】
次に、ブロック414に示すように、処理は各データストリームを符号化する。符号化の処理は、ブロック符号器、畳み込み符号器、ターボ符号器、および同種のもので実現することができる。
【0080】
符号化の後、ブロック416に示すように、各データストリームは変調される。この変調は、BPSK変調器、QPSK変調器、M-PSK変調器、M-QUAM変調器(Mは星座点(constellation points)の数である)、および同種のものを使用して実現することができる。
【0081】
変調処理に続いて、ブロック418に示すように、処理は、それぞれの選択されたアレイの重みセットに従って、各変調されたデータストリームの利得および位相を修正して、各アレイアンテナのデータストリームアンテナ信号を生成する。データストリームアンテナ信号の例は、図4における移相器82の出力である。この処理で生成されたデータストリームアンテナ信号の数は、データストリームの数とアンテナアレイにおけるアンテナ素子の数とを掛け合わせたものに等しくなる。
【0082】
各アレイアンテナのデータストリームアンテナ信号を生成した後、ブロック420に示すように、同一のアレイアンテナに関連付けられたデータストリームアンテナ信号はアンテナ信号を生成するために合計される。アンテナ信号の例は図4における加算器84の出力である。これらのアンテナ信号は、選択されたアレイの重みセットに従って、利得および位相において重み付けされた各データストリームからの信号の組み合わせとなる。この複合された信号の組み合わせは、図1に関して上述した送信機で使用されるV行列に従ってより簡潔に記述される。」(16?17頁)

上記シの【0047】、【0048】、上記スの【0055】の記載によれば、受信機が、チャネル行列Hに基づいて、V行列を計算し、上記サの【0039】、上記セの【0062】の記載によれば、V行列のコードブックインデックスがフィードバックされ、上記ソの【0077】?【0082】の記載によれば、フィードバックデータに基づいて、アンテナ信号を生成する際に各データストリームが利得および位相において重み付けされることは明らかである。

そして、上記ソの【0078】の記載によれば、データストリームはシンボルからなり、また、技術常識に照らせば、チャネル行列Hはチャネル応答行列と言える。

そうすると、引用例2には以下の事項(以下、「技術事項」という。)が記載されているものと認める。

「受信機が、チャネル応答行列に基づいて、データストリームのシンボルに適用されアンテナ信号を生成する際に各データストリームを利得および位相において重み付けするV行列のコードブックインデックスをフィードバックすること」

3.対比
本願発明を引用発明と対比すると、

a 引用発明の「OFDMシステム」の「周波数サブチャネルグループ」は、「システム帯域幅を複数のグループに分割した」ものであり、「サブチャネル」がサブキャリアからなることは技術常識より明らかであるから、本願発明の「サブキャリア・セグメント」に相当する。
また、引用発明の「1つの周波数サブチャネルグループ」には、「2つ以上の周波数サブチャネル」が含まれるから、上述したように「サブチャネル」がサブキャリアからなることを踏まえれば、2つ以上のサブキャリアが含まれることも明らかである。
そうすると、引用発明の「OFDMシステムの複数の周波数サブチャネルグループのうちの1つの周波数サブチャネルグループに含まれる2つ以上の周波数サブチャネルを介して信号を受信」することは、本願発明の「複数のサブキャリア・セグメントのうちの1つのサブキャリア・セグメントに含まれる2つ以上のサブキャリアを介して信号を受信」することに相当する。

b 本願明細書の記載(翻訳文の段落【0006】、【0022】、【0035】、【0037】)によれば、本願発明の「プレコーディング情報」は、チャネル状態情報(CSI)のフィードバックを必要とする空間多重化の技術において、データ・ストリームのシンボルに適用されるプレコーディング重みの情報であり、チャネル状態に応じて計算される情報と言えるから、引用発明の「チャネル状態情報」と、本願発明の「プレコーディング情報」とは、「チャネル状態に応じた情報」である点で共通する。
また、上記aの検討を踏まえれば、引用発明の「前記受信した信号に基づいて、少なくとも1つの周波数サブチャネルグループ毎のチャネル状態情報を生成」することと、本願発明の「前記受信した信号に基づいて、少なくとも1つのサブキャリア・セグメントのプレコーディング情報を生成」することとは、「前記受信した信号に基づいて、少なくとも1つのサブキャリア・セグメントのチャネル状態に応じた情報を生成」することである点で共通する。
さらに、引用発明の「システム帯域幅を複数のグループに分割した特定の周波数バンド」は、「システム帯域幅」が分割されており、「サブ帯域」と言えるから、上記aの検討を踏まえれば、引用発明の「前記少なくとも1つの周波数サブチャネルグループは、システム帯域幅を複数のグループに分割した特定の周波数バンドに相当」することと、本願発明の「前記少なくとも1つのサブキャリア・セグメントは、予め定めた帯域幅を備えるサブ帯域に相当」することとは、「前記少なくとも1つのサブキャリア・セグメントは、サブ帯域に相当」することである点で共通する。

c 上記bの検討を踏まえれば、引用発明の「チャネル状態情報を送信」することと、本願発明の「前記プレコーディング情報を示すインデクスを送信」することとは、「チャネル状態に応じた情報を送信」することである点で共通する。
また、上記a及びbの検討を踏まえれば、引用発明の「前記送信は、各受信機に1つの周波数サブチャネルグループを割り当てるようにスケジュールされた周波数サブチャネルグループのためのチャネル状態情報を、フィードバック・チャネルを介してフィードバックするように構成され」ることと、本願発明の「前記送信することは、受信機に、スケジュールされたサブキャリア・セグメントのためのプリコーディング情報を示すインデクスを、前記サブキャリア・セグメント自身のフィードバック・チャネル上でフィードバックするように構成され」ることとは、「前記送信することは、受信機に、スケジュールされたサブキャリア・セグメントのためのチャネル状態に応じた情報を、フィードバック・チャネル上でフィードバックするように構成され」ることである点で共通する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 無線通信のための方法であって、
複数のサブキャリア・セグメントのうちの1つのサブキャリア・セグメントに含まれる2つ以上のサブキャリアを介して信号を受信することと、
前記受信した信号に基づいて、少なくとも1つのサブキャリア・セグメントのチャネル状態に応じた情報を生成することと、前記少なくとも1つのサブキャリア・セグメントは、サブ帯域に相当する、
チャネル状態に応じた情報を送信することと、ここで、前記送信することは、受信機に、スケジュールされたサブキャリア・セグメントのためのチャネル状態に応じた情報を、フィードバック・チャネル上でフィードバックするように構成された、
を備える、方法。」

(相違点1)
一致点の「チャネル状態に応じた情報」の生成及び送信に関して、本願発明では、「ユーザの少なくとも1つのチャネル応答情報に基づいて、少なくとも1つのデータストリームのうちの少なくとも1つのシンボルに適用され」る「前記プレコーディング情報を示す前記インデクスを、プレコーディング重みを示す情報として生成」して「送信」するのに対し、引用発明では、「チャネル状態情報」を「生成」して「送信」する点。

(相違点2)
一致点の「フィードバック・チャネル」に関して、本願発明では、「前記複数のサブキャリア・セグメントのうちの各サブキャリア・セグメントは、自身のフィードバック・チャネルを持ち」、「前記サブキャリア・セグメント自身のフィードバック・チャネル上でフィードバック」するのに対し、引用発明では、各周波数サブチャネルグループが自身のフィードバック・チャネルを持ち、各周波数サブチャネルグループ自身のフィードバック・チャネル上でフィードバックすることが明示されていない点。

(相違点3)
一致点の「サブ帯域」が、本願発明では、「予め定めた帯域幅を備える」のに対し、引用発明では、「予め定めた帯域幅を備える」ことについて明示されていない点。

4.検討
上記相違点1について検討する。
上記「2.引用発明と技術事項」の項中の「(2)技術事項」の項で認定したように、「受信機が、チャネル応答行列に基づいて、データストリームのシンボルに適用されアンテナ信号を生成する際に各データストリームを利得および位相において重み付けするV行列のコードブックインデックスをフィードバックすること」は、公知の技術事項である。

ここで、技術常識を踏まえれば、当該技術事項の「アンテナ信号を生成する際に各データストリームを利得および位相において重み付けするV行列のコードブックインデックス」は、本願発明の「前記プレコーディング情報を示す前記インデクス」であって、「プレコーディング重みを示す情報」に相当する。

また、上記技術事項の「チャネル応答行列」が、ユーザの使用する「受信機」において測定されるものであることは明らかである。

してみると、上記技術事項においても、「ユーザの少なくとも1つのチャネル応答情報に基づいて、少なくとも1つのデータストリームのうちの少なくとも1つのシンボルに適用され」る「前記プレコーディング情報を示す前記インデクスを、プレコーディング重みを示す情報として生成」して送信すると言える。

そして、当該技術事項と、引用発明はいずれも、チャネル状態に応じた情報をフィードバックすることで、チャネルの状態に応じた通信を行うものであるから、引用発明の「チャネル状態情報」のフィードバックに、当該技術事項を適用し、本願発明のように、「ユーザの少なくとも1つのチャネル応答情報に基づいて、少なくとも1つのデータストリームのうちの少なくとも1つのシンボルに適用され」る「前記プレコーディング情報を示す前記インデクスを、プレコーディング重みを示す情報として生成」して送信するようにすることは格別困難な事項とは言えない。

上記相違点2について検討する。
引用例1(上記キの[1052]、上記コの[1272])では、時分割複信(TDD)が示唆されているから、引用発明の「無線通信」を時分割複信(TDD)により行うことに格別の困難性はない。

そして、引用発明では、「各受信機」に「1つの周波数サブチャネルグループ」が割り当てられるから、時分割複信(TDD)により「無線通信」を行う場合、上記「1つの周波数サブチャネルグループ」の帯域でダウンリンクとアップリンクの通信が行われる。

そうすると、引用発明において、「信号」を「受信」する帯域と、該「信号」に基づいて生成した「チャネル状態情報」を送信する「フィードバック・チャネル」の帯域とは、同じ上記「1つの周波数サブチャネルグループ」の帯域となるから、上記「信号」を「受信」した「1つの周波数サブチャネルグループ」自身の「フィードバック・チャネル」上でフィードバックを行うこととなる。

また、引用発明の「複数の周波数サブチャネルグループ」の各々は、いずれかの端末に割り当てられた場合に、同「周波数サブチャネルグループ」自身の帯域の「フィードバック・チャネル」でフィードバックを行うこととなるから、各「周波数サブチャネルグループ」が自身のフィードバック・チャネルを持つようにしておくことは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

したがって、本願発明のように、「前記複数のサブキャリア・セグメントのうちの各サブキャリア・セグメントは、自身のフィードバック・チャネルを持ち」、「前記サブキャリア・セグメント自身のフィードバック・チャネル上でフィードバック」することは格別の事項とは言えない。

上記相違点3について検討する。
引用発明の「周波数バンド」の帯域幅を予め定めた幅とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

そして、本願発明が奏する効果も引用発明及び技術事項から容易に予測できる範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び引用例2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-08 
結審通知日 2016-03-15 
審決日 2016-03-29 
出願番号 特願2013-151109(P2013-151109)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 篤男  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 林 毅
坂本 聡生
発明の名称 無線通信システムにおける、セグメントに応答するスケジューリングのためのプレコーディング  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井関 守三  
代理人 奥村 元宏  
代理人 蔵田 昌俊  

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