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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1317965 |
審判番号 | 不服2015-13250 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-10 |
確定日 | 2016-08-10 |
事件の表示 | 特願2012- 37963「無線金融トランザクションでプッシュ技術を実施するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月28日出願公開、特開2012-123834〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成17年11月8日を国際出願日(優先権主張日:2004年11月8日、米国)とする特許出願(特願2007-540163号)の一部を平成24年2月23日に新たな特許出願(特願2012-037963号)としたものであって,平成25年8月21日付けの拒絶理由通知に対して平成26年2月27日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成26年5月27日付けで,最後の拒絶理由通知がなされ,平成26年12月3日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが,平成27年3月2日付けで補正の却下の決定がなされるとともに同日付で拒絶査定がなされ,これに対して平成27年7月10日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年7月10日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 平成27年7月10日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。 <本件補正後の特許請求の範囲> 「【請求項1】 少なくとも1つのプロセッサにより、ネットワークを介してアイテムの情報を装置に通信するステップを有し、 前記装置は、前記装置のボタンの選択に応じて、前記装置のユーザが前記アイテムについて1つ以上の入札及び/又は売り出しを提示するために、前記装置と他の電子装置との間に接続が確立されるように構成され、 前記装置が承認された地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して前記アイテムについて入札及び/又は売り出しを提示することが許可され、 前記装置が承認されていない地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して前記アイテムについて入札及び/又は売り出しを提示することが許可されず、 前記ユーザが前記アイテムについて1つ以上の入札及び/又は売り出しを提示するために、前記装置と前記他の電子装置との間に接続が確立された後、且つ、前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムについて入札及び/又は売り出しを提示することを可能にする前に、 前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップと、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるという判定に少なくとも部分的に基づいて、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムについて1つ以上の入札及び/又は売り出しを提示することを許可するステップと を更に有し、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、ジオ・フェンシング、GPS技術、三角測量及び前記装置に配置されたセンサのうち少なくとも1つを通じて前記装置の前記位置を判定することを有する方法。」(なお、下線は補正箇所を示すものとして請求人が付与したものである。) 本件補正前の特許請求の範囲は、次のとおりである。 <本件補正前の特許請求の範囲> 「【請求項1】 少なくとも1つのプロセッサにより、ネットワークを介してアイテムの情報を装置に通信するステップを有し、 前記装置は、前記装置のボタンの選択に応じて、ユーザが前記アイテムを取引するために、前記装置と他の電子装置との間に接続が確立されるように構成され、 前記装置が承認された地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して前記アイテムを取引することが許可され、 前記装置が承認されていない地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して前記アイテムを取引することが許可されず、 前記ユーザが前記アイテムを取引するために、前記装置と前記他の電子装置との間に接続が確立された後、且つ、前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムを取引することを可能にする前に、 前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップと、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるという判定に少なくとも部分的に基づいて、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムを取引することを許可するステップと を更に有し、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、ジオ・フェンシング、GPS技術、三角測量及び前記装置に配置されたセンサのうち少なくとも1つを通じて前記装置の前記位置を判定することを有する方法。 【請求項2】 前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムを取引することを可能にする前に、音声パターン又は音声認識を通じて前記装置の前記ユーザを認証するステップを更に有する、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、ジオ・フェンシングを通じて前記装置の前記位置を判定することを有する、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、GPS技術を通じて前記装置の前記位置を判定することを有する、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、三角測量を通じて前記装置の前記位置を判定することを有する、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記装置の位置に関する情報を前記装置から受信するステップを更に有し、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、前記装置から受信した前記情報に少なくとも部分的に基づいて判定を行うことを有する、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記アイテムは、金融商品、金融資産及び物理的資産のうち少なくとも1つを有する、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサに電子的に結合された少なくとも1つのメモリ装置とを有する機器であって、 前記メモリ装置は、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合、前記少なくとも1つのプロセッサに対して、ネットワークを介してアイテムの情報を装置に通信するように指示するソフトウェアを格納し、 前記装置は、前記装置のボタンの選択に応じて、ユーザが前記アイテムを取引するために、前記装置と他の電子装置との間に接続が確立されるように構成され、 前記装置が承認された地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して前記アイテムを取引することが許可され、 前記装置が承認されていない地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して前記アイテムを取引することが許可されず、 前記ソフトウェアは、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合、前記少なくとも1つのプロセッサに対して、 前記ユーザが前記アイテムを取引するために、前記装置と前記他の電子装置との間に接続が確立された後、且つ、前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムを取引することを可能にする前に、 前記装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定し、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるという判定に少なくとも部分的に基づいて、前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムを取引することを許可するように更に指示し、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定することは、ジオ・フェンシング、GPS技術、三角測量及び前記装置に配置されたセンサのうち少なくとも1つを通じて前記装置の前記位置を判定することを有する機器。 【請求項9】 前記ソフトウェアは、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合、前記少なくとも1つのプロセッサに対して、 前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムを取引することを可能にする前に、音声パターン又は音声認識を通じて前記装置の前記ユーザを認証するように更に指示する、請求項8に記載の機器。 【請求項10】 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定することは、ジオ・フェンシングを通じて前記装置の前記位置を判定することを有する、請求項8に記載の機器。 【請求項11】 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定することは、GPS技術を通じて前記装置の前記位置を判定することを有する、請求項8に記載の機器。 【請求項12】 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、三角測量を通じて前記装置の前記位置を判定することを有する、請求項8に記載の機器。 【請求項13】 前記ソフトウェアは、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合、前記少なくとも1つのプロセッサに対して、 前記装置の位置に関する情報を前記装置から受信するように指示し、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定することは、前記装置から受信した前記情報に少なくとも部分的に基づいて判定を行うことを有する、請求項8に記載の機器。 【請求項14】 前記アイテムは、金融商品、金融資産及び物理的資産のうち少なくとも1つを有する、請求項8に記載の機器。 2.補正の目的について 本件補正後の請求項1において、「前記アイテムを取引する」を「前記アイテムについて1つ以上の入札及び/又は売り出しを提示する」又は「前記アイテムについて入札及び/又は売り出しを提示する」とする補正は、アイテムを取引する際に、「入札及び/又は売り出しを提示する」との限定を加えるものである。 よって、上記請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)引用例 (1-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-204480号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。 (a)「【0011】図1は、第1の実施形態を示す金融取引システムの構成図である。4は金融機関と取引を行うユーザが携帯する取引装置であり、パーソナルコンピュータのような情報処理装置によって構成される。」 (b)「【0012】取引装置4はGPS衛星11から送られる電波によって取引装置4が所在する地点のXYデータを測定する。取引装置4が取引のためのトランザクションを入力すると、その地点を示す情報を付加して回線接続装置5へ送信する。」 (c)「【0017】取引装置4の取引要求処理部47は、表示装置43上に案内画面を表示し、入力装置42を介して入力された取引要求についてのデータにユーザID441及びパスワード442を付加して取引トランザクションを構成して一時的に記憶装置44に格納する。次に地点認識制御部46は地点認識装置41に指示して地点情報を取得し、取引要求処理部47を介してX地点データ443及びY地点データ444を取引トランザクションに付加する。次に通信制御部48は、通信インタフェース45を介して取引装置4をユーザが所属する地域の回線接続装置5に接続した状態で回線接続装置5に回線接続要求を発行し、取引要求処理部47は記憶装置44から取引トランザクションを読み出して通信回線12を介して回線接続装置5へ送信する。」 (d)「【0018】回線接続装置5は、この回線接続要求を受信し、受け取った取引トランザクションにその回線接続装置5が保有する地域情報(地域1、地域2、地域3の情報)又はネットワークアドレスを付加し、ネットワーク13を介して地点管理装置6-1へこの取引トランザクションを送信する。」 (e)「【0019】図6は、地点管理装置6-1の処理の流れを示すフローチャートである。地点管理装置6-1は、ネットワーク13を介して回線接続装置5から取引トランザクションを受信し(ステップ51)、ユーザID441及びパスワード442をキーにしてユーザ地域テーブル61を検索し(ステップ52)、対応する地域情報を取り出す。次に図示しないX地点データ/Y地点データの地点情報とこの地点を含む地域との対応を設定するテーブルを検索してX地点データ443及びY地点データ444を地域情報に変換し、得られた地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致するかどうか判定する(ステップ53)。あるいはステップ53でX地点データ443及びY地点データ444がユーザ地域テーブル61に登録されたX地点データ及びY地点データと一致するか否かを判定してもよい。地点情報が妥当であり(ステップ53YES)、取引トランザクションに付加された地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致すれば(ステップ54YES)、取引装置4へ取引許可メッセージを送信し(ステップ55)、取引トランザクションに付加したX地点データ443、Y地点データ444及び地域情報を除いた残りのトランザクション・データをホストコンピュータ14へ送る(ステップ56)。なお取引トランザクションにネットワークアドレスが付加されている場合には、地点管理装置6-1は図示しないネットワークアドレスを地域情報へ変換する変換テーブルを参照してネットワークアドレスを地域情報へ変換した上でステップ54の比較を行う。ユーザ地域テーブル61中に該当するデータが見つからないか又は地点情報が妥当でない(ステップ53NO)か、取引トランザクションに付加された地域情報が登録された地域情報に一致しない(ステップ54NO)とき、地点管理装置6-1は取引装置4へ取引を許可しない旨のメッセージを送信する(ステップ57)。取引装置4の取引要求処理部47は、ネットワーク13、回線接続装置5、通信回線12、通信インタフェース45及び通信制御部48を介して許可メッセージ又は不許可メッセージを受信し、表示装置43上に表示する。一方ホストコンピュータ14は取引許可されたトランザクション・データを受信し、取引コード445に応じて処理を行い、その結果を地点管理装置6-1、ネットワーク13、回線接続装置5及び通信制御部48を介して取引要求処理部47へ送信し、取引要求処理部47はこの結果を表示装置43上に表示する。」 (1-2)以上の記載によれば、引用例1には次のことが記載されている。 (ア)上記(a)には、「4は金融機関と取引を行うユーザが携帯する取引装置」であることが記載されている。 また、上記(b)には、「取引装置4はGPS衛星11から送られる電波によって取引装置4が所在する地点のXYデータを測定する」ことが記載されている。 よって、ここには、「取引装置4は、金融機関と取引を行うユーザが携帯するものであり、GPS衛星11から送られる電波によって取引装置4が所在する地点を測定する」ことが記載されている。 (イ)上記(c)には、「取引装置4の取引要求処理部47は、表示装置43上に案内画面を表示し、入力装置42を介して入力された取引要求についてのデータにユーザID441及びパスワード442を付加して取引トランザクションを構成して一時的に記憶装置44に格納する」こと、「地点認識制御部46は地点認識装置41に指示して地点情報を取得し、X地点データ443及びY地点データ444を取引トランザクションに付加する」こと、及び、「取引要求処理部47は記憶装置44から取引トランザクションを読み出して通信回線12を介して回線接続装置5へ送信する」ことが記載されている。 よって、ここには、「取引装置4は、表示装置43上に案内画面を表示し、入力装置42を介して入力された取引要求についてのデータにユーザID441及びパスワード442を付加して取引トランザクションを構成し、地点認識装置41に指示して地点情報を取得して取引トランザクションに付加し、取引トランザクションを通信回線12を介して回線接続装置5へ送信すること」が記載されている。 (ウ)上記(d)には、「回線接続装置5は、受け取った取引トランザクションにその回線接続装置5が保有する地域情報を付加し、ネットワーク13を介して地点管理装置6-1へこの取引トランザクションを送信すること」が記載されている。 (エ)上記(e)には、「地点管理装置6-1は、ネットワーク13を介して回線接続装置5から取引トランザクションを受信し(ステップ51)、ユーザID441及びパスワード442をキーにしてユーザ地域テーブル61を検索し(ステップ52)、対応する地域情報を取り出す」こと、及び、「X地点データ443及びY地点データ444を地域情報に変換し、得られた地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致するかどうか判定する(ステップ53)」ことが記載されている。 ここで、地域情報に変換する「X地点データ443及びY地点データ444」は、上記(c)に、「X地点データ443及びY地点データ444を取引トランザクションに付加する」と記載されていることから、「取引トランザクションから取得した地点情報」であることは明らかである。 よって、ここには、「地点管理装置6-1は、ネットワーク13を介して回線接続装置5から取引トランザクションを受信し、ユーザID441及びパスワード442をキーにしてユーザ地域テーブル61を検索して対応する地域情報を取り出し、取引トランザクションから取得した地点情報を地域情報に変換し、得られた地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致するかどうか判定する」ことが記載されている。 (オ)上記(e)には、「地点情報が妥当であり(ステップ53YES)、取引トランザクションに付加された地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致すれば(ステップ54YES)、取引装置4へ取引許可メッセージを送信し(ステップ55)、トランザクション・データをホストコンピュータ14へ送る(ステップ56)」こと記載されている。 ここで、「取引トランザクションに付加された地域情報」は、上記(d)に、「回線接続装置5は、受け取った取引トランザクションにその回線接続装置5が保有する地域情報を付加」することが記載されていることから、「回線接続装置5が付加した地域情報」であることは明らかである。 よって、ここには、「地点情報が妥当であり、回線接続装置5が付加した地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致する場合に、取引装置4へ取引許可メッセージを送信し、トランザクション・データをホストコンピュータ14へ送る」ことが記載されている。 (カ)上記(e)には、「地点情報が妥当でない(ステップ53NO)か、取引トランザクションに付加された地域情報が登録された地域情報に一致しない(ステップ54NO)とき、地点管理装置6-1は取引装置4へ取引を許可しない旨のメッセージを送信する(ステップ57)」ことが記載されている。 よって、ここには、「地点情報が妥当でないか、取引トランザクションに付加された地域情報が登録された地域情報に一致しない場合に、地点管理装置6-1は取引装置4へ取引を許可しない旨のメッセージを送信すること」が記載されている。 (キ)以上のことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明 」という。)が記載されている。 「取引装置4は、金融機関と取引を行うユーザが携帯するものであり、GPS衛星11から送られる電波によって取引装置4が所在する地点を測定し、 取引装置4は、表示装置43上に案内画面を表示し、入力装置42を介して入力された取引要求についてのデータにユーザID441及びパスワード442を付加して取引トランザクションを構成し、地点認識装置41に指示して地点情報を取得して取引トランザクションに付加し、取引トランザクションを通信回線12を介して回線接続装置5へ送信し、 回線接続装置5は、受け取った取引トランザクションにその回線接続装置5が保有する地域情報を付加し、ネットワーク13を介して地点管理装置6-1へこの取引トランザクションを送信し、 地点管理装置6-1は、ネットワーク13を介して回線接続装置5から取引トランザクションを受信し、ユーザID441及びパスワード442をキーにしてユーザ地域テーブル61を検索して対応する地域情報を取り出し、取引トランザクションから取得した地点情報を地域情報に変換し、得られた地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致するかどうか判定し、 地点情報が妥当であり、回線接続装置5が付加した地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致する場合に、取引装置4へ取引許可メッセージを送信し、トランザクション・データをホストコンピュータ14へ送り、 地点情報が妥当でないか、取引トランザクションに付加された地域情報が登録された地域情報に一致しない場合に、地点管理装置6-1は取引装置4へ取引を許可しない旨のメッセージを送信する方法」 (2)対比 次に、本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「取引装置4」、「地点管理装置6-1」は、本件補正発明の「装置」、「他の電子装置」に対応している。 (イ)引用発明の「地点管理装置6-1」は、「取引トランザクションから取得した地点情報を地域情報に変換し、得られた地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報と一致するかどうか判定」するものであり、取引トランザクションから取得した地点情報は、取引装置4が所在する地点を測定して取引装置4が付加したものであるから、「地点管理装置6-1」は、取引装置4の位置を示す地点情報が、ユーザ地域テーブルに登録されている地域情報に含まれるかどうかを判定するものである。 また、地点情報が妥当である場合に、取引装置4へ取引許可メッセージを送信し、地点情報が妥当でない場合に、取引装置4へ取引を許可しない旨のメッセージを送信するのであるから、地点情報が取引を許可する地域内(承認する地域内)にあるか、許可しない地域内(承認されていない地域内)にあるかを判定しているものといえる。 そして、引用発明の「取引装置4」は、GPS衛星11から送られる電波によって取引装置4が所在する地点を測定するのであるから、「地点管理装置6-1」が判定する地点情報は、GPS技術を利用して測定されたものであり、また、引用発明の「地点管理装置6-1」は、判定処理をプロセッサにより行うことは自明である。 してみれば、引用発明の「地点管理装置6-1」は、「プロセッサにより、装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップ」を有し、「装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、GPS技術を通じて前記装置の位置を判定する」点で、本件補正発明と共通している。 (ウ)引用発明の「地点管理装置6-1」は、地点情報が妥当であり、回線接続装置5が付加した地域情報とユーザ地域テーブル61から取り出した地域情報とを比較して一致する場合に、取引装置4へ取引許可メッセージを送信し、トランザクション・データをホストコンピュータ14へ送るのであるから、地点情報が妥当であるという判定に部分的に基づいて、取引許可メッセージやトランザクション・データを送信するものである。 また、「地点管理装置」は、取引装置4へ取引許可メッセージを送信し、トランザクション・データをホストコンピュータ14へ送るのであるから、取引装置のユーザが、取引装置を介してホストコンピュータを利用した取引をすることを許可しているものといえる。 そして、上記(イ)に示したように、地点情報が妥当であるか否かの判断は、地点情報が取引を許可する地域内(承認する地域内)にあるかを判定しているものであり、また、取引許可メッセージやトランザクション・データの送信をプロセッサにより処理することは自明であるから、引用発明の「地点管理装置」は、「前記装置の前記位置が承認された地域内にあるという判定に少なくとも部分的に基づいて、プロセッサにより、前記ユーザが前記装置を介して取引をすることを許可するステップ」を有する点で、本件補正発明と共通している。 (エ)引用発明の「地点管理装置」は、地点情報が妥当である場合に、「取引装置4へ取引許可メッセージを送信し、トランザクション・データをホストコンピュータ14へ送り」、地点情報が妥当でない場合に、「取引装置4へ取引を許可しない旨のメッセージを送信する」のであるから、地点情報が妥当である場合に、取引装置を介してホストコンピュータを利用した取引をすることが許可され、地点情報が妥当でない場合に、取引装置を介してホストコンピュータを利用した取引をすることが許可されないものである。 そして、上記(イ)に示したように、地点情報が妥当であるか否かの判断は、地点情報が取引を許可する地域内(承認する地域内)にあるか、許可しない地域内(承認されていない地域内)にあるかを判定しているものであるから、引用発明は、「装置が承認された地域内でユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して取引をすることが許可され、前記装置が承認されていない地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して取引をすることが許可されない」点で、本件補正発明と共通している。 (オ)以上の(ア)乃至(エ)から、本件補正発明と引用発明 は、次の点で一致している。 「装置が承認された地域内でユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して取引をすることが許可され、 前記装置が承認されていない地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して取引をすることが許可されず、 プロセッサにより、装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップと、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるという判定に少なくとも部分的に基づいて、プロセッサにより、前記ユーザが前記装置を介して取引をすることを許可するステップと、 を有し、 前記装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、GPS技術を通じて前記装置の位置を判定する方法。」 また、本件補正発明と引用発明は、次の点で相違している。 [相違点1] 本件補正発明の「少なくとも1つのプロセッサにより、ネットワークを介してアイテムの情報を装置に通信するステップ」を有するのに対し、引用発明は、そのようなステップを有するのか否か不明である点。 [相違点2] 本件補正発明は、取引をする際、「アイテムについて1つ以上の入札及び/又は売り出しを提示する」のに対し、引用発明は、入札及び/又は売り出しを提示するものではない点。 [相違点3] 本件補正発明は、「装置のボタンの選択」に応じて、「装置と他の電子装置との間に接続が確立されるように構成され」るのに対し、引用発明は、どのようにして接続が確立されるのか不明である点。 「相違点4」 本件補正発明は、装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップを、「装置と他の電子装置との間に接続が確立された後、且つ、ユーザが前記装置を介して前記アイテムについて入札及び/又は売り出しを提示することを可能にする前」に行うのに対し、引用発明は、地点情報についての判定を、地点管理装置6-1が「取引要求についてのデータ」を含んだ取引トランザクションを受信した後に、つまり、取引トランザクションを受信により「取引装置4と地点管理装置6-1との間に取引のための接続を確立した後、且つ、ユーザが取引要求についてのデータを送信して取引要求を行うことが可能となった後」に行うものである点。 (3)当審の判断 (3-1)相違点1について 引用発明の取引装置4は、表示装置43上に案内画面を表示し、入力装置42を介して取引要求を入力するものであるが、この「案内画面」を表示するための情報をどこから取得するのかは明らかでない。 しかしながら、所定の処理を依頼する端末装置において、ネットワークに接続された処理の依頼先の装置から、処理に関する情報を取得して表示することは普通に行われていることであるから、引用発明においても、取得装置4がネットワーク13を介して地点管理装置6-1から、取引に関する情報を取得して「案内画面」に表示する構成とし、地点管理装置6-1のプロセッサにより、ネットワークを介して取引に関する情報(アイテムの情報)を取引装置4に送信するステップを設けることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 (3-2)相違点2について 金融機関が扱う取引として、株式等の入札及び/又は売り出しの取引を行うことは周知の事項であり、引用発明において、アイテムについて1つ以上の入札及び/又は売り出しを提示する取引を行うよう構成することは、当業者であれば容易に成し得たことである。 (3-3)相違点3について ボタン操作に応じて所定の処理を開始することは、情報処理装置一般において普通に行われていることであり、引用発明においても、ボタン操作に応じて取引トランザクションの送信を開始し、取引装置4と地点管理装置6-1との間で、取引のための接続を確立することは、当業者であれば容易に成し得たことである。 (3-4)相違点4について 引用発明は、「取引要求についてのデータにユーザID441及びパスワード442を付加して取引トランザクションを構成し、地点認識装置41に指示して地点情報を取得して取引トランザクションに付加」するものであり、地点管理装置6-1が「ユーザID441及びパスワード442」及び「地点情報」を用いて取引を許可するか否かを判定することから、取引トランザクションには、「取引要求についてのデータ」と、「取引を許可するか否かを判定するためのデータ(ユーザID441及びパスワード442、及び、地点情報)」とが含まれている。そして、これらのデータが取引装置4より同時に送信されるため、地点管理装置6-1で取引が許可されなかった場合は、取引装置4で行った「取引要求についてのデータ」の入力や「取引要求についてのデータ」の送信は、全て無駄になってしまうという課題を有している。 また、例えば、ユーザ認証や許可条件の判定により許可された場合に所定の処理要求を行う等、許可を受けてから所定の処理要求を行うことは、情報処理システムにおいて普通に行われていることである。 してみれば、引用発明において上記課題を解決するために、取引装置4が取引許可メッセージを受信してから取引要求を行う構成、つまり、先に、取引装置4から「取引を許可するか否かを判定するためのデータ」を送信して、地点管理装置6-1で地点情報の判定を行い、その後、取引装置4が取引許可メッセージを受信した場合に「取引要求についてのデータ」を送信して取引を要求することは当業者であれば容易に想到し得たことである。 そしてこの際、地点管理装置6-1による地点情報についての判定は、取引装置4から「取引を許可するか否かを判定するためのデータ」を受信した後、且つ、取引装置4へ取引許可メッセージを送信する前に行われるものであるから、取引のための接続を確立した後、且つ、ユーザが取引装置4から「取引要求についてのデータ」を送信して取引要求を行うことを可能とする前に行われるものといえる。 また、上記「(3-2)相違点2について」で示したように、アイテムについて入札及び/又は売り出しを提示する取引を行うよう構成することも、当業者であれば容易に成し得たことである。 (3-5)そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願の請求項に係る発明について 平成27年7月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年2月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも1つのプロセッサにより、ネットワークを介してアイテムの情報を装置に通信するステップを有し、 前記装置は、前記装置のボタンの選択に応じて、ユーザが前記アイテムを取引するために、前記装置と他の電子装置との間に接続が確立されるように構成され、 前記装置が承認された地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して前記アイテムを取引することが許可され、 前記装置が承認されていない地域内で前記ユーザにより使用されている場合、前記ユーザは、前記装置を介して前記アイテムを取引することが許可されず、 前記ユーザが前記アイテムを取引するために、前記装置と前記他の電子装置との間に接続が確立された後、且つ、前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムを取引することを可能にする前に、 前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記装置の位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップと、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるという判定に少なくとも部分的に基づいて、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記ユーザが前記装置を介して前記アイテムを取引することを許可するステップと を更に有し、 前記装置の前記位置が承認された地域内にあるか、承認されていない地域内にあるかを判定するステップは、ジオ・フェンシング、GPS技術、三角測量及び前記装置に配置されたセンサのうち少なくとも1つを通じて前記装置の前記位置を判定することを有する方法。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「3.独立特許要件について」の「(1)引用例」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「3.独立特許要件について」で検討した本件補正発明からアイテムを取引する際に、「入札及び/又は売り出しを提示する」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「3.独立特許要件について」の「(3)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 4.まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-03-14 |
結審通知日 | 2016-03-15 |
審決日 | 2016-03-29 |
出願番号 | 特願2012-37963(P2012-37963) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田付 徳雄 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
緑川 隆 石川 正二 |
発明の名称 | 無線金融トランザクションでプッシュ技術を実施するシステム及び方法 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |