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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1317967
審判番号 不服2014-24806  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-04 
確定日 2016-08-30 
事件の表示 特願2012- 38739「半導体パッケージ構造の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月13日出願公開,特開2012-178565,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年2月24日(パリ条約による優先権主張2011年2月25日,台湾)の出願であって,平成25年8月28日付けで拒絶理由が通知され,同年12月2日付けで意見書と手続補正書が提出され,平成26年7月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という)がされ,これに対し,同年12月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,手続補正書が提出され,平成27年8月25日付けで当審から審尋を行い,同年11月30日に回答書が提出され,その後,当審において平成28年2月8日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という)が通知され,同年5月6日付けで意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-5に係る発明は,平成28年5月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるものと認められるところ,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップと,表面に非導電性フィルムであるアンダーフィルが設けられた基材と,を提供する工程と,
前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させ,各前記導電バンプを前記基材に接触させない工程と,
前記基材を除去することにより前記アンダーフィルを露出させる工程と,
前記チップを前記アンダーフィルによりパッケージ基板に結合させ,前記アンダーフィルを熱溶融することで,前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させ,さらに,前記アンダーフィルを硬化させることで,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに接触させることにより,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに電気的に接触させる工程と,
を備え,
前記基材と前記アンダーフィルとの間には離型層が設けられ,前記離型層を剥離することにより前記基材を除去することを特徴とする半導体パッケージ構造の製造方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
1.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

2.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・理由1,2
・請求項1-7
・引用文献1
・備考:
引用文献1の,特に【0020】-【0034】,【0037】-【0042】,【図4】-【図6】を参照すると,回路上に導通用突起物を有する半導体ウエハの回路面に,離型処理された剥離性シート上に積層された接着性薄膜層を貼付けし,半導体ウエハの裏面研削を行い,半導体ウエハを切断分離して得られたチップを,チップ搭載用基板に載置する前に剥性性シートを剥離し,チップをチップ搭載用基板上に載置した後,接着性薄膜層を加熱して流動化させ,導通用突起物を介してチップとチップ搭載用基板との導通を確保した後,チップを固着し,樹脂封止して半導体装置を得ることが記載されている。
よって,請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明と同一,または,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,請求項2-7に係る発明も,請求項1に係る発明と同様の理由で拒絶すべきものである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2001-144140号公報

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
引用文献1には,【図4】-【図6】とともに以下の記載がある。
・「【0020】絶縁性接着剤は,導電性粒子を含まない以外は,前記異方導電性接着剤と同様であり,また熱硬化性のものであっても,熱可塑性のものであっても,また粘接着剤からなるものであってもよい。すなわち,熱硬化性絶縁性接着剤層22は,前述した熱硬化性のバインダー樹脂を主成分としてなり,導電性粒子を含まないものであり,また,熱可塑性絶縁性接着剤層22は,前述した熱可塑性のバインダー樹脂を主成分としてなり,導電性粒子を含まないものである。
【0021】また粘接着性の絶縁性接着剤層22は,前述した粘接着剤を主成分としてなり,導電性粒子を含まないものである。絶縁性接着剤層22の膜厚は,好ましくは1?200μm程度であり,特に好ましくは10?70μm程度である。なお,本発明においては,図1または図4に示すように,接着性薄膜層12または22の片面に,剥離性シート11または21が貼着されていてもよい。
【0022】接着性薄膜層は所定の工程を剥離性シートを積層した形で使用され,その後剥離性シートからウエハまたはチップに転写される。剥離性シートは,たとえば接着性薄膜層をウエハに貼付する際に,張力により変形しないように補強のために用いられる。また,研削工程や切断分離工程の際に接着性薄膜層の表面を保護することもできる。
【0023】剥離性シートとしては,従来より粘着テープ等の基材として用いられている各種の薄層品が特に制限されることなく用いられ,たとえば紙,金属箔や,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリプロピレン,ナイロン,ウレタン,ポリ塩化ビニリデン,ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂フィルムが用いられる。また,これらの積層品であってもよい。
【0024】本発明では,接着性薄膜層を剥離性シート表面から剥離し,チップ等への転写容易にするために,これら剥離性シートの表面に,必要に応じシリコーン樹脂やアルキッド樹脂などで離型処理を施してもよい。このような剥離性シート11または21の表面張力は,40mN/m以下であることが好ましく,さらに20?40mN/mの範囲にあることが好ましく,特に30?35mN/mの範囲にあることが好ましい。
【0025】剥離性シートの表面張力が40mN/mより大きいと,接着性薄膜層の剥離性シートへの密着性が高くなり,チップ体への転写ができないことがある。一方,20mN/m未満では,研削工程で剥離性シートと接着性薄膜層の間に研削水が侵入しウエハを破損するおそれがあり,また接着性薄膜層の性状によっては剥離性シート上に接着性薄膜層を形成できないことがある。
【0026】上記のような剥離性シート11または21の厚さは,通常5?300μmであり,好ましくは10?200μmである。本発明の半導体装置の製造方法においては,接着性薄膜の形成工程,切断分離工程,チップの接着固定工程が行なわれる。また,所望により裏面研削工程が行なわれても良い。
【0027】接着性薄膜層12または22の半導体ウエハ1への形成は,貼付装置による貼付によって行なわれる。貼付の際の圧力は,貼付装置の貼付方法(ゴムローラー式,真空密着式)により適宜に設定されるが,加圧条件が弱過ぎるとウエハに接着性薄膜層が密着しないことがあり,また強過ぎるとウエハを破損することがある。
【0028】貼付温度は,使用する接着性薄膜層の性質による。通常は,バインダー樹脂の可塑化温度以上180℃以下の温度が好ましい。なお,粘接着剤を使用した場合は,常温で貼付できる。貼付温度が高過ぎると,ウエハの研削後,ウエハに反りを発生させるおそれがある。またウエハの回路面に設けられる導通用突起物の高さが50μm以上となるようなウエハの回路面の凹凸が大きい場合は,標準の加圧条件よりも強い条件または高い貼付温度で貼付を行ない,ウエハ回路面に密着させることが好ましい。
【0029】本発明においては,半導体ウエハ1の切断分離等の各種の所要工程をウエハ1の回路面に接着性薄膜層12または22が貼着された状態で行なう。また,切断分離に先立ち,必要に応じ,半導体ウエハ1の裏面研削を行なってもよい。半導体ウエハ1の裏面研削工程は,回路形成時においてウエハ裏面に形成される酸化物被膜を除去し,ウエハの厚さを所定の厚さまで研削する工程である。裏面研削は,たとえば研削装置等の従来公知の方法により行いうる。本発明においては,接着性薄膜層が,裏面研削時において,ウエハ回路面の保護シートとしての機能をも発現する。
【0030】次に,ウエハの切断分離を行う。ウエハの切断分離は,通常のダイシング装置を用いて行なわれる。この際,ウエハの裏面にダイシングテープを貼着し,これを介して円形のフレームに固定してダイシングが行なわれる。続いて,ピックアップ装置やチップボンダーを用いて切断分離されたチップを個別にチップトレー等に回収する。
【0031】このような所要の工程を経て,図2または図5に示すように,回路面に接着性薄膜層が形成されたチップ2が得られる。本発明において接着性薄膜層は,剥離性シートを用いる場合は,剥離性シートの剥離面上に接着剤の組成物を塗布し,必要に応じて乾燥するか,薄膜状にキャスト成形した後,剥離性シートを積層して形成される。また剥離性シートを用いない場合は,キャスト成形等により製造される。
【0032】接着性薄膜層に剥離性シートが積層されている場合,剥離性シートは,切断分離された個別のチップを,チップ搭載用基板に載置する前に,接着性薄膜層から剥離される。剥離性シートを接着性薄膜層から剥離する方法としては,幅広の粘着シートを剥離性シートの全面に貼り付けた後に鋭角で引き剥がすことなどにより行なわれる。剥離性シートの剥離は切断分離の後に行なうことが好ましいが,切断分離の前であってもよい。
【0033】次いで,本発明に係る半導体装置の製造方法においては,チップ2を,接着性薄膜層を介して,チップ搭載用基板30上に載置し,チップ2の固着を行う(図3または図6参照)。チップ2には,表面に所定の回路が形成され,さらに回路表面にチップ搭載基板30と導通するための電極が形成されている。該電極は,好ましくは金,銅,ハンダ等の導電材料からなる突起物(導通用突起物31)からなり,その高さおよび径は,通常10?100μm程度である。またチップ2の回路面の電極以外の部分は絶縁被膜が形成されている。
【0034】チップ搭載用基板30は,たとえばポリイミドなどの絶縁性で耐熱性のシート材料上に,銅箔等の導電材料で形成された回路が積層されている。この回路は図8に示すように,チップの電極に相対する端部と,外部装置と導通するための電極用端部を継ぐ複数個の配線からなる。接着性薄膜層に絶縁性接着剤を用いる場合は,チップの電極に相対する端部に導通用突起物31’を設けることが好ましい。この突起物は,上記のチップ上の突起物と同様に,金,銅,ハンダ等の導電材料からなり,その高さおよび径は,通常10?100μm程度である。」

・「【0037】また,前記接着性薄膜層12が絶縁性接着剤からなる場合には,チップ2として,回路上に導通用突起物31を有するチップを用いるか,あるいは導通用突起物31’を有するチップ搭載用基板30を用いる。もちろんこれらを併用してもよい。図6に示したものは,導通用突起物31を有するチップ2および導通用突起物31’を有するチップ搭載用基板30を併用した例である。
【0038】この場合には,回路面に絶縁性接着剤層22が転写されたチップ2を,該絶縁性接着剤層22を介して,導通用突起物31,31’を有するチップ搭載用基板30上に載置する。この時点では,チップ2とチップ搭載用基板30との導通はとれていないので,絶縁性接着剤22を流動化させて該導通用突起物31,31’を介してチップ2とチップ搭載用基板30とを接続し,導通を確保した後,チップ2の固着を行う。
【0039】上記絶縁性接着剤層22が,熱硬化性絶縁性接着剤または粘接着剤型絶縁性接着剤からなる場合には,チップ2を該絶縁性接着剤層22を介してチップ搭載用基板上30に載置した後,該絶縁性接着剤を硬化しないように加熱して,流動化させ,該導通用突起物31,31’を介してチップ2とチップ搭載用基板30との間の導通を確保した後,絶縁性接着剤の硬化温度以上に加熱して,チップの固着を行う。
【0040】また,上記絶縁性接着剤層22が,熱可塑性絶縁性接着剤からなる場合には,チップ2を該熱可塑性絶縁性接着剤を介してチップ搭載用基板30上に載置した後,該熱可塑性絶縁性接着剤を加熱して,流動化させ,該導通用突起物31,31’を介してチップ2とチップ搭載用基板30との間の導通を確保した後,該熱可塑性絶縁性接着剤の可塑化温度未満に冷却して,チップの固着を行う。
【0041】チップ2とチップ搭載用基板30との接着固定は,フリップチップボンダー等により行うことができる。フリップチップボンダーは,加熱条件,加圧条件を精度良く設定できるものが好ましい。このような本発明に係る半導体装置の製造方法によれば,チップ2とチップ搭載用基板30とを,空間を生じることなく,密着した状態で固着できるので,樹脂封止を行っても,ボイドのない,信頼性の高い,半導体装置を得ることができる。
【0042】樹脂封止に用いられる樹脂としては,従来より半導体装置の樹脂封止に用いられてきた種々の熱硬化性樹脂が用いられる。このような熱硬化性樹脂としては,具体的には,クレゾールノボラック型エポキシ,ナフタレン型エポキシ,ビフェニル型エポキシあるいは芳香族多官能型エポキシを主原料とし,フェノールノボラック等の一般に用いられる硬化剤およびシリカ,シリコーン,カーボン,フィラー等を混合した樹脂が好ましく用いられる。加熱硬化の条件は,使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜に定められる。」

・図4は,引用文献1に記載された発明に係る製造方法の概略を示す図であって,発明の詳細な説明を参酌すれば,同図から,絶縁性接着剤層22の片面に,剥離性シート21が,その他面に,半導体ウエハ1の回路面が貼着されていること,及び,チップ2の表面に形成された所定の回路の回路表面に形成された,チップ搭載基板30と導通するための,突起物(導通用突起物31)からなる電極が埋設され,当該突起物(導通用突起物31)からなる電極が,前記剥離性シート21に接触していない状態を,見て取ることができる。

・図5は,引用文献1に記載された発明に係る製造方法の概略を示す図であって,発明の詳細な説明を参酌すれば,同図から,剥離性シート21が除去され,接着性薄膜層22が露出している状態を,見て取ることができる。

・図6は,引用文献1に記載された発明に係る製造方法の概略を示す図であって,発明の詳細な説明を参酌すれば,同図から,チップ2とチップ搭載用基板30とが接続されていること,及び,「チップ2の表面に形成された所定の回路の回路表面に形成された,チップ搭載基板30と導通するための,突起物(導通用突起物31)からなる電極」と,「『銅箔等の導電材料で形成された回路』の『端部』に設けられた『金,銅,ハンダ等の導電材料からな』る『導通用突起物31’』」とが,接触している状態を,見て取ることができる。

そうすると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されている。
「対向するウエハ回路面及びウエハ裏面を有し,前記ウエハ回路面に複数の突起物(導通用突起物31)からなる電極が設けられたチップと,熱硬化性絶縁性接着剤または粘接着剤型絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層であって,チップを該絶縁性接着剤層を介してチップ搭載用基板上に載置した後,該絶縁性接着剤を硬化しないように加熱して,流動化させ,該突起物(導通用突起物31)からなる電極を介してチップとチップ搭載用基板との間の導通を確保した後,絶縁性接着剤の硬化温度以上に加熱して,チップの固着を行う絶縁性接着剤層を表面に設けた剥離性シートと,を提供する工程と,
前記チップのウエハ回路面を前記絶縁性接着剤層に結合させることにより各前記突起物(導通用突起物31)からなる電極を前記絶縁性接着剤層に埋設させ,各前記突起物(導通用突起物31)からなる電極を前記剥離性シートに接触させない工程と,
前記剥離性シートを除去することにより前記絶縁性接着剤層を露出させる工程と,
前記チップを前記絶縁性接着剤層によりチップ搭載用基板に結合させ,前記絶縁性接着剤層を熱溶融することで,前記チップを各前記突起物(導通用突起物31)からなる電極により前記チップ搭載用基板に電気的に接続させ,さらに,前記絶縁性接着剤層を硬化させることで,各前記突起物(導通用突起物31)からなる電極を前記チップ搭載用基板の銅箔等の導電材料で形成された回路の端部に設けられた金,銅,ハンダ等の導電材料からなる導通用突起物31’に接触させることにより,各前記突起物(導通用突起物31)からなる電極を前記チップ搭載用基板の銅箔等の導電材料で形成された回路の端部に設けられた金,銅,ハンダ等の導電材料からなる導通用突起物31’に電気的に接触させる工程と,
を備え,
前記剥離性シートと前記絶縁性接着剤層との間には,絶縁性接着剤層を剥離性シート表面から剥離し,チップ等への転写容易にするために,これら剥離性シートの表面に必要に応じ施されたシリコーン樹脂やアルキッド樹脂などが設けられ,前記絶縁性接着剤層を剥離性シート表面から剥離し,チップ等への転写容易にするために,これら剥離性シートの表面に必要に応じ施されたシリコーン樹脂やアルキッド樹脂などを剥離することにより前記剥離シート基材を除去する半導体装置の製造方法。」

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「突起物(導通用突起物31)からなる電極」,「チップ」,「絶縁性接着剤層」,「絶縁性接着剤層を剥離性シート表面から剥離し,チップ等への転写容易にするために,これら剥離性シートの表面に必要に応じ施されたシリコーン樹脂やアルキッド樹脂など」,「剥離性シート」,「チップ搭載用基板」,「半導体装置」が,それぞれ,本願発明の「導電バンプ」,「チップ」,「非導電性フィルムであるアンダーフィル」,「離型層」,「基材」,「パッケージ基板」,「半導体パッケージ構造」に相当する。
また,引用文献1には,「絶縁性接着剤22を流動化させて該導通用突起物31,31’を介してチップ2とチップ搭載用基板30とを接続し,導通を確保した後,チップ2の固着を行う」(【0038】)ことが記載されているので,チップは導電バンプによりパッケージ基板に電気的に接続しているものである。
さらに,引用発明1の「銅箔等の導電材料で形成された回路の端部に設けられた金,銅,ハンダ等の導電材料からなる導通用突起物31’」と,本願発明の「半田パッド」は,「導電性部材」である点で一致する。
したがって,本願発明と引用発明1は,以下の点で,一致,及び,相違する。

[一致点]
「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップと,表面に非導電性フィルムであるアンダーフィルが設けられた基材と,を提供する工程と,
前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させ,各前記導電バンプを前記基材に接触させない工程と,
前記基材を除去することにより前記アンダーフィルを露出させる工程と,
前記チップを前記アンダーフィルによりパッケージ基板に結合させ,前記アンダーフィルを熱溶融することで,前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させ,さらに,前記アンダーフィルを硬化させることで,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の導電性部材に接触させることにより,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の導電性部材に電気的に接触させる工程と,
を備え,
前記基材と前記アンダーフィルとの間には離型層が設けられ,前記離型層を剥離することにより前記基材を除去する半導体パッケージ構造の製造方法。」

[相違点]
チップに設けられた導電バンプに接触するパッケージ基板の導電性部材が,本願発明では「半田パッド」であるのに対して,引用発明1では「銅箔等の導電材料で形成された回路の端部に設けられた金,銅,ハンダ等の導電材料からなる導通用突起物31’」である点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点について,引用文献1には,チップ搭載用基板に「半田パッド」を設け,チップとチップ搭載用基板との導通の確保を,該「半田パッド」を介して行うことについて何らの記載もない。また,上記拒絶理由には,引用文献1以外の他の引用文献は存在しない。
したがって,引用発明1において,「銅箔等の導電材料で形成された回路の端部に設けられた金,銅,ハンダ等の導電材料からなる導通用突起物31’」に替えて,「半田パッド」を用いることについて,証拠が不足しており,また,このような変更に思い至る動機も見いだすことはできないから,当該変更を容易に想到することができたとはいえない。

(4)小括
したがって,本願発明は,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2-5に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるので,本願発明と同様に,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
1 請求項1について
引用文献等 1?6
(1)引用文献1?3の記載事項
ア 引用文献1の段落【0001】?【0002】,【0015】?【0030】,図1?7の記載からみて,同文献には,「複数のバンプ3が設けられた半導体チップ1を,搭載ツール7で吸着し,上面に端子電極5が形成された配線基板4であって,配線基板4と端子電極5の上にアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂6が貼り付けられた配線基板4の上に,半導体チップ1のバンプ3が各相対応する端子電極5の上に重なり合うように搭載し,圧着ツール8により半導体チップ1を配線基板4に加熱しながら押圧するフリップチップ実装方法」の発明が記載されている。
イ 引用文献2の段落【0010】?【0014】,図1?4の記載からみて,同文献には,「表面に複数のAuスタッドバンプ4が形成されたチップ3を,Auメッキランド2が形成された配線基板1であって,アンダーフィル樹脂5が載せられた配線基板1に,配線基板1のAuメッキランド2とチップ3のAuスタッドバンプ4とが超音波熱圧着されるようにフリップチップ接続する半導体装置の製造方法」の発明が記載されている。
ウ 引用文献3の段落【0041】?【0050】,図1の記載からみて,同文献には,「金バンプを用いて実装した複数のバンプ電極2が形成されているLSIチップ1を,電極パッド4が形成され,この電極パッド4の領域に形成された接着剤3が仮圧着されたビルドアップ層6と基板コア材5からなる基板に,バンプ電極2が電極パッド4に対応する位置でマウントし,熱圧着加重する半導体構造の製造プロセス」の発明が記載されている。

(2)対比
ア 引用文献1に記載の発明との対比
(ア)引用文献1の段落【0016】の「バンプ3は主に金,銅,パラジウム,ニッケル,錫,アルミニウム,半田等の少なくとも1種類から形成されている。」との「バンプ3」の材質に関する記載より,引用文献1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)における,「バンプ3」は,導電性があり,また,同文献の図1の記載より,「半導体チップ1」は,「複数のバンプ3」が設けられた面と,同面と対向する面を有することが窺えるから,引用発明1の「半導体チップ1」は,請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップ」に対応するものであるといえる。そして,引用発明1の「半導体チップ1」は,実装のために供され,「搭載ツール7」により吸着等されて実装されることとなるから,引用発明1も「半導体チップ1」を提供する工程を有し,引用発明1は「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップ」「を提供する工程」を有するといい得る。
(イ)引用発明1の「絶縁性樹脂6」は,「アンダーフィル樹脂」であるから,本願発明の「アンダーフィル」に相当する。
(ウ)引用文献1の段落【0017】には,「厚みが0.2?0.4mmの配線基板4は,ガラスエポキシ基板(アラミド基板,シリコン基板,シリコンインターポーザでもよい)で,上面には銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極5が形成されている。」との記載があり(当審注.下線は当審が付した。以下同様。),また,一般に銅の端子電極は半田濡れ性が良好であることは技術常識であるから,引用発明の「端子電極5」は,本願発明の「半田パッド」に相当するものである。
(エ)上記(ウ)を考慮すると,引用発明1の「配線基板4」は,本願発明の「パッケージ基板」に相当する。
(オ)引用文献1の段落【0018】の「図1(b)に示すように搭載ツール7で半導体チップ1を吸着し,半導体チップ1のバンプ3が各相対応する端子電極5の上に重なり合うように配線基板4の上に搭載される。この時点で,バンプ3は絶縁性樹脂6に突き刺さった状態である。一部のバンプ3は絶縁性樹脂6を貫通し,端子電極5に当たって変形している。位置決め荷重は,1バンプ当たり10g程度である。」との記載,及び,図1の記載,及び,同【0027】の「次に図7に示すように,圧着ツール8によって加圧をつづけ,半導体チップ1のバンプ3を除々に変形させながら,同時に,枠体10もまたフィルム13越しに半導体チップ1からはみ出ている絶縁性樹脂6を加圧し続ける。圧着ツール8で荷重を加えることによって,バンプ3のすべてが絶縁性樹脂6を突き破り,配線基板4の端子電極5に接触しながら変形していく。」との記載より,引用発明1において,「半導体チップ1を,搭載ツール7で吸着し,上面に端子電極5が形成された配線基板4であって,前記配線基板4と前記端子電極5の上にアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂6が貼り付けられた前記配線基板4の上に,前記半導体チップ1の前記バンプ3が各相対応する前記端子電極5の上に重なり合うように搭載し,圧着ツール8により前記半導体チップ1を前記配線基板4に加熱しながら押圧する」ことで,「半導体チップ1」を「アンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂6」により「配線基板4」に結合させることで「半導体チップ1」を「バンプ3」により「配線基板4」に電気的に接続させ,各「バンプ3」を「配線基板4」の「端子電極5」に接触させることにより,各「バンプ3」を「配線基板4」の「端子電極5」に電気的に接触させることとなるといい得るから,上記(ア)?(エ)の対応関係を併せて考慮すると,引用発明1は,「前記チップをアンダーフィルによりパッケージ基板に結合させることで前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させ,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに接触させることにより,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに電気的に接触させる工程」を備えるといえる。
(カ)引用発明1の「フリップチップ実装方法」は,「半導体チップ1」を「配線基板4」に実装する方法であるから,「半導体パッケージ構造の製造方法」と称することができるものである。
イ 引用文献2に記載の発明との対比
(ア)引用文献2に記載された発明(以下「引用発明2」という。)における,「複数のAuスタッドバンプ4」は,導電性を有することは明らかであるから,請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)における「複数の導電バンプ」に相当する。
(イ)引用発明2の「チップ3」は,「表面に複数のAuスタッドバンプ4」が形成されており,引用文献2の段落【0014】,及び,図1の記載からみて,「表面」と対向する「裏面」を有するものであり,引用発明の「チップ3」の「表面」及び「裏面」は,ぞれぞれ,本願発明の「チップ」の「能動面」及び「受動面」に対応する。
(ウ)上記(ア)?(イ)より,引用発明2の「チップ3」は,「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップ」であるということができ,「チップ3」は,フリップチップ接続のために供されるから,引用発明2は,「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップ」「を提供する工程」を備える点で,本願発明と共通する。
(エ)引用発明2の「アンダーフィル樹脂5」は,本願発明の「アンダーフィル」に相当する。
(オ)引用発明2の「Auメッキランド2」は,Auメッキされているから,半田濡れ性に優れることは当業者に自明であり,本願発明の「半田パッド」に相当する。
(カ)上記(オ)を考慮すると,引用発明2の「配線基板1」は,本願発明の「パッケージ基板」に相当する。
(キ)引用発明2において,「チップ3」を「配線基板1のAuメッキランド2とチップ3のAuスタッドバンプ4とが超音波熱圧着されるようにフリップチップ接続する」ことは,「配線基板1」に「アンダーフィル樹脂5が載せられ」ているから,「チップ3」を「アンダーフィル樹脂5」により「配線基板1」に結合させることで「チップ3」を各「Auスタッドバンプ4」により「配線基板1」に電気的に接続させ,各「Auスタッドバンプ4」を「配線基板1」の「Auメッキランド2」に接触させることにより,各「Auスタッドバンプ4」を「配線基板1」の「Auメッキランド2」に電気的に接触させる工程ということができる。
(ク)上記(ウ)?(キ)より,引用発明2は,「前記チップをアンダーフィルによりパッケージ基板に結合させることで前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させ,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに接触させることにより,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに電気的に接触させる工程」を備える点で,本願発明と共通する。
(ケ)引用発明2の「半導体装置の製造方法」は,「チップ3」を「配線基板1」に実装する方法であるから,「半導体パッケージ構造の製造方法」と称することができるものである。
ウ 引用文献3に記載の発明との対比
(ア)引用文献3に記載された発明(以下「引用発明3」という。)における,「金バンプを用いて実装した複数のバンプ電極2」は,金バンプが導電性を有することが明らかであるから,請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)における「複数の導電バンプ」に相当する。
(イ)引用発明3の「LSIチップ1」は,引用文献3の図1の記載からみて,「バンプ電極2」が形成されている面と,その面と対向する面を有するから,これらの面は,ぞれぞれ,本願発明の「チップ」の「能動面」,「受動面」に対応する。
(ウ)上記(ア)?(イ)より,引用発明3の「LSIチップ1」は,「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップ」であるということができ,「LSIチップ1」は,基板に搭載されるために供されるから,引用発明3は,「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップ」「を提供する工程」を備える点で,本願発明と共通する。
(エ)引用文献3の段落【0047】?【0049】の,「【0047】この際,熱圧着荷重によってバンプ電極2群は基板搭載面の平坦度にならうように変形し,その状態でバンプ電極2群の周辺を一括封止する形で接着剤3が硬化する。
【0048】これにより,LSIチップ1上に形成されたバンプ電極2群は,圧着時の残留応力や接着剤3の熱収縮および硬化収縮により,配線基板上に形成された電極パッド2群と接触圧力によって電気的に接続される。
【0049】なお,接着剤3の材料としては,接着信頼性が高く熱膨張係数も比較的小さいエポキシ系の熱硬化性樹脂を用いることが望ましく,例えば,ニッケル(Ni)等の導電性の粒子(またはフィラーと称す)を混入させることにより異方導電材料とし,電気的に接続信頼性のマージン向上が可能である。」との記載(当審注.下線は当審が付した。以下同様)より,引用発明3の「接着剤3」は,アンダーフィルと称することができるものである。
(オ)引用発明3の「電極パッド4」は,引用文献3の図1の記載からみて,Cu,又は,Cu/Ni/Auを有することが窺えるから,半田濡れ性が良好であることが当業者に自明であり,本願発明の「半田パッド」に対応する。
(カ)引用文献3の段落【0045】?【0046】の記載,及び,図1の記載からみて,ビルドアップ層6は基板コア材5の上に積み上げられた配線層である点を考慮すると,引用発明3の「ビルドアップ層6と基板コア材5からなる基板」は,配線基板を構成するものであり,本願発明の「パッケージ基板」に対応するものである。
(キ)引用発明3において,「LSIチップ1を,電極パッド4が形成され,この電極パッド4の領域に形成された接着剤3が仮圧着されたビルドアップ層6と基板コア材5からなる基板に,バンプ電極2が電極パッド4に対応する位置でマウントし,熱圧着加重する」ことは,上記(ア)?(カ),及び,引用文献3の段落【0047】?【0048】の「【0047】この際,熱圧着荷重によってバンプ電極2群は基板搭載面の平坦度にならうように変形し,その状態でバンプ電極2群の周辺を一括封止する形で接着剤3が硬化する。
【0048】これにより,LSIチップ1上に形成されたバンプ電極2群は,圧着時の残留応力や接着剤3の熱収縮および硬化収縮により,配線基板上に形成された電極パッド2群と接触圧力によって電気的に接続される。」との記載からみて,本願発明の「前記チップをアンダーフィルによりパッケージ基板に結合させることで前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させ,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに接触させることにより,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに電気的に接触させる工程」と共通する処理であるといい得る。
(ク)引用発明3の「半導体構造の製造プロセス」は,「LSIチップ1」を基板に実装する方法であるから,「半導体パッケージ構造の製造方法」と称することができるものである。

(3)一致点及び相違点
上記(2)から,本願発明と引用発明1?3の各々との一致点及び相違点は,それぞれ以下のとおりであると認められる。
ア 一致点
「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップを提供する工程と,
前記チップをアンダーフィルによりパッケージ基板に結合させることで前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させ,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに接触させることにより,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の半田パッドに電気的に接触させる工程と,
を備える,
ことを特徴とする半導体パッケージ構造の製造方法。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明では,「表面に非導電性フィルムであるアンダーフィルが設けられた基材と,を提供する工程と,
前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させる工程と,
前記基材を除去することにより前記アンダーフィルを露出させる工程と,」を備えるのに対し,引用発明1?3では,そのような工程を備えない点。

(イ)相違点2
本願発明では,「前記チップを前記アンダーフィルによりパッケージ基板に結合させ」ており,「前記アンダーフィル」は,「前記チップの能動面」に「結合された」「アンダーフィル」であるのに対し,引用発明1?3では,「アンダーフィル」は「チップの能動面」に「結合された」ものでない点。

(ウ)相違点3
本願発明では,「前記基材と前記アンダーフィルとの間には離型層が設けられ,前記離型層を剥離することにより前記基材を除去する」のに対し,引用発明1?3では,そのような処理を行っていない点。

(4)判断
ア 上記相違点1?上記相違点3について
一般に,アンダーフィルを基板側に設けるのではなく,チップ側に設けておくようにすることは,引用文献4(段落【0019】?【0032】,図4?5)のほか,引用文献5(段落【0012】?【0013】,図2?3),引用文献6(第5頁第20行?第6頁第9行,第3図)等に記載されるように,当業者にとって,適宜採用し得る,周知技術に過ぎない。
また,引用文献4には,チップを基板に搭載する処理に関連して,シリコーン樹脂等により離型処理を施した,基材となる剥離性シート21に,熱硬化性絶縁性接着剤層22(本願発明の「アンダーフィル」に対応)を積層し,この剥離性シートをチップ1に貼付することにより,チップ1の導通用突起物31を熱硬化性絶縁性接着剤層22に埋没させ,その後,剥離性シート21を除去し,熱硬化性絶縁性接着剤層22を露出させる技術も記載されている。(段落【0001】?【0007】,【0012】?【0042】,図4?6を参照。)
してみると,引用発明1?3のいずれかの発明において,上記周知技術,及び,引用文献4に記載の上記技術を採用することとして,相違点1?3を構成することは,当業者であれば,容易になし得たことである。

よって,上記相違点1?3はいずれも格別なものでなく,請求項1に係る発明(本願発明)は引用文献1?3のいずれかに記載の発明に基いて,引用文献4?6に記載の技術を採用して,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

2 請求項2について
引用文献等 1?6
基材を剥離により除去することは,引用文献4(段落【0021】?【0025】,【0032】)に記載されている。
よって,請求項2に記載の限定は格別なものではない。

3 請求項3について
引用文献等 1?6
引用文献4に記載の技術では,アンダーフィルを,基材の剥離によりチップに転写し,基材とは分離させることが予定されている(段落(段落【0022】,【0025】などを参照。)から,引用発明1?3のいずれかの発明に引用文献4に記載の技術を適用する際に,結合力を請求項3記載のようにすることは,当業者が普通になし得ることである。
よって,請求項3に記載の限定は格別なものではない。

4 請求項4について
引用文献等 1?6
引用発明1?3も,チップをバンプにより基板の半田パッドと接触させて直接電気的に接続している。
よって,請求項4に記載の限定は格別なものではない。

5 請求項5について
引用文献等 1?6
バンプが設けられていない裏面(本願の請求項5に係る発明における「受動面」に相当)を研磨してチップの薄化を図ることは,普通に行われていることであるし,また,基材となる剥離性シートの除去前に研削を行うことも,引用文献4(段落【0029】)に記載されている。
よって,請求項5に記載の限定は格別なものではない。

6 請求項6について
引用文献等 1?6
アンダーフィルを熱溶融して,導電バンプを基板に電気的に接続させた状態で,アンダーフィルを硬化させることは,引用文献1(段落【0026】?【0028】),引用文献2(段落【0013】,図3)等に記載されているし,また,当業者にとって,普通に行い得ることでもある。
よって,請求項6に記載の限定は格別なものではない。

7 請求項7について
引用文献等 1?6
チップを被覆するように,封止樹脂をパッケージ基板に形成させることは,引用文献1(段落【0033】?段落【0035】,図10?15),引用文献2(段落【0017】,図7?8)に記載されているように,モールディングとして,普通に行われ得ることに過ぎない。
よって,請求項7に記載の限定は格別なものではない。

<引用文献等一覧>
1.特開2010-153670号公報
2.特開2007-67047号公報
3.特開2002-50718号公報
4.特開2001-144140号公報
5.特開2005-116624号公報
6.実願平1-151702号(実開平3-92039)のマイクロフィルム

2 当審拒絶理由の判断
(1)引用文献の記載事項
当審引用文献1には,図1ないし図20とともに,以下の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体装置のフリップチップ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,電子機器の小型化,薄型化の要求により,裸(ベア)の半導体チップを配線基板上に直接に実装(ベアチップ実装)した半導体装置が要求されている。特に,半導体チップの回路面を配線基板上に向き合わさるようにひっくり返して実装(フリップチップ実装)された半導体装置が要求されている。」

・「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,本発明の実施の形態を図1?図18に基づいて説明する。
図1?図14はフリップチップ実装の工程を示し,図15が完成した半導体装置である。
【0016】
先ず,図1(a)(b)に示す前工程を説明する。
図1(a)に示すように半導体チップ1の電極パッド2の上には,バンプ3が設けられている。半導体チップ1の厚みは0.15?0.2mmを使用した。バンプ3は主に金,銅,パラジウム,ニッケル,錫,アルミニウム,半田等の少なくとも1種類から形成されている。このバンプ3は公知のワイヤーボンディング法によりスタッドバンプや引きちぎりバンプが形成されてもよいし,バンプ3を形成するためのワイヤーには微量元素を添加,含有してもよい。この場合のバンプ高さは約50μm,台座径は55μmとした。バンプ3は公知のめっき法,印刷法により形成されてもよい。
【0017】
厚みが0.2?0.4mmの配線基板4は,ガラスエポキシ基板(アラミド基板,シリコン基板,シリコンインターポーザでもよい)で,上面には銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極5が形成されている。配線基板4と端子電極5の上には,半導体チップ1よりも必要に応じて若干大きな寸法にてカットされたアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂6が貼り付けられている。ここでは,180℃で硬化するエポキシ樹脂を絶縁性樹脂6として用いた。
【0018】
図1(b)に示すように搭載ツール7で半導体チップ1を吸着し,半導体チップ1のバンプ3が各相対応する端子電極5の上に重なり合うように配線基板4の上に搭載される。この時点で,バンプ3は絶縁性樹脂6に突き刺さった状態である。一部のバンプ3は絶縁性樹脂6を貫通し,端子電極5に当たって変形している。位置決め荷重は,1バンプ当たり10g程度である。搭載ツール7は内蔵するヒータにより加熱してもよいが樹脂を100%以上硬化させてはいけない。搭載ツール7は半導体チップ1を搭載した後に離脱させる。
【0019】
なお,絶縁性樹脂6は,配線基板4の上に粘着して貼り付けられるように,あらかじめ,50?80℃程度の温度で配線基板4を加熱しておいてもよいし,貼り付け装置のツール(図示せず)が加熱されるようになっていてもよい。貼り付け荷重は,5?10kgf/cm^(2)程度である。
【0020】
この絶縁性樹脂6の厚みは50μmのものを使用した。絶縁性樹脂6が保護用セパレータ(図示せず)と2層になっていれば,それを剥がす。絶縁性樹脂6の絶縁性樹脂は,例えば,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,ポリイミド,また,絶縁性熱可塑性樹脂では,ポリフェニレンサルファイド(PPS),ポリカーボネイト,変性ポリフェニレンオキサイド(PPO),または,これら,絶縁性熱硬化性樹脂と絶縁性熱可塑性樹脂を混合したものなどが使用できる。無機フィラー量は50wt%のものを使用した。フィラー量は半導体チップ1と配線基板4との熱膨張,反りにより発生する応力から決定する。また,吸湿リフロー試験や湿中バイアス試験等による耐湿密着性による信頼性で決定する。また,絶縁性樹脂6は,リフロー耐熱性(265℃10秒間)を有することが好ましい。
【0021】
次に後工程を説明する。
後工程では,図1(b)の実装状態の半導体チップ1の上に図2(b)(c)に示す圧着ツール8を用いて,図6に示すようにフィルム13を押し付けて絶縁性樹脂6のフィレットの成形が行われる。
【0022】
圧着ツール8は,図2(a)(b)に示すように押圧部9とこの押圧部9の下面にネジ11によって交換自在に取り付けられた枠体10とで構成されている。枠体10の材質は,熱硬化性のエポキシ樹脂,フェノール樹脂や,ポリイミド,シリコーン,または,テフロン,さらに,ゴム系樹脂でもよく,これら,絶縁性熱硬化性樹脂と絶縁性熱可塑性樹脂を混合したものでも良い。
【0023】
図3(a)に示すように圧着ツール8とステージ15の間に,支持治具12a,12bの間にフィルム13が架張した状態で設けられており,フィルム13の下方位置のステージ15の上に,図1(b)の実装状態の半導体チップ1がセットされている。フィルム13の大きさは縦横とも半導体チップ1よりも大きい。フィルム13は,耐熱性(NCF硬化温度)を有するフィルムが望ましい。フィルム13の材質は,例えば,ポリイミド,ポリフェニレンサルファイド,フッ素樹脂,シリコーンゴム,これらの2層構造等の耐熱性熱可塑フィルムが好ましい。ここではフィルム13の厚みは20?30μm程度のものを使用した。フィルム13の両面は,フラットで,特にパターンは形成されていない。
【0024】
図4では,ステージ15に向かって支持治具12a,12bを降下させて当接させ,支持治具12a,12bによるフィルム13の保持を緩めて,フィルム13が半導体チップ1のほぼ上部に配置され,かつ,半導体チップ1の周囲にはみ出て貼り付けられている絶縁性樹脂6のほぼ上部に配置される。
【0025】
図5では,ステージ15に向かって圧着ツール8をさらに降下させて前記枠体10を半導体チップ1の上に被せ,半導体チップ1の上面と絶縁性樹脂6のフィレットの部分を,フィルム13を介して加熱しながら押圧する。
【0026】
なお,フィルム13は配線基板4もしくはステージ15側から吸着等で絶縁性樹脂6の上部に誘導配置されてもよい。
次に図6に示すように,フィルム13を介して圧着ツール8によって半導体チップ1を配線基板4に加熱しながら更に押圧するとともに,半導体チップ1からはみ出た絶縁性樹脂6にフィルム13を介して枠体10が押し当てられて加熱加圧する。
【0027】
次に図7に示すように,圧着ツール8によって加圧をつづけ,半導体チップ1のバンプ3を除々に変形させながら,同時に,枠体10もまたフィルム13越しに半導体チップ1からはみ出ている絶縁性樹脂6を加圧し続ける。圧着ツール8で荷重を加えることによって,バンプ3のすべてが絶縁性樹脂6を突き破り,配線基板4の端子電極5に接触しながら変形していく。
【0028】
圧着ツール8で半導体チップ1のバンプ3の高さを所望の値にし,絶縁性樹脂6を硬化する。これによって,次に図8に示すように,半導体チップ1の端からはみ出ている絶縁性樹脂6にフィルム13のフラットな表面形状13aが転写される。
【0029】
このときのバンプ変形荷重は1バンプ当たり50g程度である。バンプ3のサイズによって荷重をコントロールするが,この場合,バンプ高さは25μmtとした。また,必要に応じて,ステージ15を加熱したり,冷却して,絶縁性樹脂6にかかる内圧をコントロールし,ボイドの発生を抑えてもよい。
【0030】
圧着ツール8および支持治具12a,12bを解除してフリップチップ実装体が得られる。
次に,図8の状態のフリップチップ実装体における絶縁性樹脂6のフィレット部分6aに,図9(a)(b)のようにして凹凸層16を形成し硬化する。」

そうすると,当審引用文献1には,以下の発明(以下「当審引用発明1」という。)が記載されている。
「対向する半導体チップの回路面及び裏面を有し,前記回路面の複数の電極パッドの上にバンプが設けられた半導体チップと,保護用セパレータと2層になったアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂が,その上に設けられた上面に銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極5が形成されている配線基板と,を提供する工程であって,
前記アンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂は,180℃で硬化するエポキシ樹脂を含み,前記端子電極は,前記アンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂に埋設され,前記端子電極は前記保護用セパレータに接触させない工程と,
前記保護用セパレータを剥がし,前記アンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂を露出させる工程と,
前記半導体チップを前記アンダーフィルとしての絶縁性樹脂により配線基板に結合させ,前記アンダーフィルとしての絶縁性樹脂を熱溶融することで,前記半導体チップを各前記電極パッドの上のバンプにより前記配線基板に電気的に接続させ,さらに,前記アンダーフィルとしての絶縁性樹脂を硬化させることで,各前記電極パッドの上のバンプを前記配線基板の端子電極に接触させることにより,各前記電極パッドの上のバンプを前記配線基板の端子電極に電気的に接触させる工程と,
を備えるフリップチップ実装方法。」

(2)対比
ア 当審引用発明1と本願発明との対比
(ア)当審引用文献1の段落【0016】の「バンプ3は主に金,銅,パラジウム,ニッケル,錫,アルミニウム,半田等の少なくとも1種類から形成されている。」との「バンプ3」の材質に関する記載より,当審引用発明1における,「バンプ」は,導電性があり,また,同文献の図1の記載より,「半導体チップ」は,「複数のバンプ」が設けられた面と,同面と対向する面を有することが窺えるから,当審引用発明1の「半導体チップ」は,本願発明の「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップ」に対応するものであるといえる。そして,当審引用発明1の「半導体チップ」は,実装のために供され,搭載ツールにより吸着等されて実装されることとなるから,当審引用発明1も「半導体チップ」を提供する工程を有し,当審引用発明1は「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップ」「を提供する工程」を有するといい得る。
(イ)当審引用発明1の「保護用セパレータ」は,本願発明の「基材」に相当する。
(ウ)当審引用発明1の「アンダーフィルとしての絶縁性樹脂」は,「アンダーフィル樹脂」であるから,本願発明の「アンダーフィル」に相当する。
(エ)当審引用発明1の「配線基板」は,本願発明の「パッケージ基板」に相当する。
(オ)当審引用文献1の段落【0018】の「図1(b)に示すように搭載ツール7で半導体チップ1を吸着し,半導体チップ1のバンプ3が各相対応する端子電極5の上に重なり合うように配線基板4の上に搭載される。この時点で,バンプ3は絶縁性樹脂6に突き刺さった状態である。一部のバンプ3は絶縁性樹脂6を貫通し,端子電極5に当たって変形している。位置決め荷重は,1バンプ当たり10g程度である。」との記載,及び,図1の記載,及び,同【0027】の「次に図7に示すように,圧着ツール8によって加圧をつづけ,半導体チップ1のバンプ3を除々に変形させながら,同時に,枠体10もまたフィルム13越しに半導体チップ1からはみ出ている絶縁性樹脂6を加圧し続ける。圧着ツール8で荷重を加えることによって,バンプ3のすべてが絶縁性樹脂6を突き破り,配線基板4の端子電極5に接触しながら変形していく。」との記載より,当審引用発明1において,「半導体チップ1を,搭載ツール7で吸着し,上面に端子電極5が形成された配線基板4であって,前記配線基板4と前記端子電極5の上にアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂6が貼り付けられた前記配線基板4の上に,前記半導体チップ1の前記バンプ3が各相対応する前記端子電極5の上に重なり合うように搭載し,圧着ツール8により前記半導体チップ1を前記配線基板4に加熱しながら押圧する」ことで,「半導体チップ」を「アンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂」により「配線基板」に結合させることで「半導体チップ」を「バンプ」により「配線基板」に電気的に接続させ,各「バンプ」を「配線基板」の「端子電極」に接触させることにより,各「バンプ」を「配線基板」の「端子電極」に電気的に接触させることとなるといい得るから,上記(ア)?(エ)の対応関係を併せて考慮すると,当審引用発明1は,「前記チップを前記アンダーフィルによりパッケージ基板に結合させ,前記アンダーフィルを熱溶融することで,前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させ,さらに,前記アンダーフィルを硬化させることで,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の電極に接触させることで,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の電極に電気的に接触させる工程」を備えるといえる。
(カ)当審引用発明1の「フリップチップ実装方法」は,「半導体チップ」を「配線基板」に実装する方法であるから,「半導体パッケージ構造の製造方法」と称することができるものである。
(キ)当審引用発明1の「保護用セパレータと2層になったアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂が,その上に設けられた上面に銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極5が形成されている配線基板」は,当該「保護用セパレータ」を基準として観察すると,「保護用セパレータ」の表面に「アンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂」が設けられ,更に当該「アンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂」の表面に「配線基板」が設けられた構造であるとも解される。
したがって,当審引用発明1の「保護用セパレータと2層になったアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂が,その上に設けられた上面には銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極5が形成されている配線基板」と,本願発明の「表面に非導電性フィルムであるアンダーフィルが設けられた基材」とは,「表面に非導電性フィルムであるアンダーフィルが設けられた基材」である点で一致する。
(ク)当審引用発明1の「銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極」と,本願発明の「半田パッド」とは,「電極」である点で一致する。

イ したがって,本願発明と当審引用発明1とを対比すると,以下の点で,一致,及び,相違する。
[一致点]
「対向する能動面及び受動面を有し,前記能動面に複数の導電バンプが設けられたチップと,表面に非導電性フィルムであるアンダーフィルが設けられた基材と,を提供する工程と,
前記基材を除去することにより前記アンダーフィルを露出させる工程と,
前記チップを前記アンダーフィルによりパッケージ基板に結合させ,前記アンダーフィルを熱溶融することで,前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させ,さらに,前記アンダーフィルを硬化させることで,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の電極に接触させることにより,各前記導電バンプを前記パッケージ基板の電極に電気的に接触させる工程と,
を備える半導体パッケージ構造の製造方法。」

[相違点]
・相違点1:本願発明が「前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させ,各前記導電バンプを前記基材に接触させない工程」を備えるのに対して,当審引用発明1では,「保護用セパレータと2層になったアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂が,その上に設けられた電極が形成されている配線基板と,を提供する工程であって,・・・前記電極は,前記アンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂に埋設され,前記電極は前記保護用セパレータに接触させない工程」を備える点。

・相違点2:パッケージ基板の「電極」が,本願発明では「半田パッド」であるのに対して,当審引用発明1では「銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極」である点。

・相違点3:本願発明が「前記基材と前記アンダーフィルとの間には離型層が設けられ,前記離型層を剥離することにより前記基材を除去する」ものであるのに対して,当審引用発明1では,このような構成が特定されていない点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
当審拒絶理由で通知した引用文献4(以下「当審引用文献4」という。)は,原査定で引用した引用文献1であって,当該文献には,上記「第3 2(1)」で摘記した事項が記載されており,その図4には,チップ2の表面に形成された所定の回路の回路表面に形成された突起物(導通用突起物31)からなる電極が埋設され,当該突起物(導通用突起物31)からなる電極が,剥離性シート21に接触していない構造が示されており,当該図4の構造は,本願発明の「前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させ,各前記導電バンプを前記基材に接触させない」構造に相当する。

他方,当審引用文献4の図4に示された前記構造は,当審引用文献4の図6に示される,「チップ2の表面に形成された所定の回路の回路表面に形成された,チップ搭載基板30と導通するための,突起物(導通用突起物31)からなる電極」と,「『銅箔等の導電材料で形成された回路』の『端部』に設けられた『金,銅,ハンダ等の導電材料からな』る『導通用突起物31’』」とが,接触している構造を得ることを前提としたものであり,「各前記電極パッドの上のバンプを前記配線基板の電極に接触させることにより,各前記電極パッドの上のバンプを前記配線基板の電極に電気的に接触させる」構造を得ることを前提とした当審引用発明1とは,アンダーフィルに埋設された導電バンプが接触する必要がある導電性部材の形状が異なる点で相違する。

すなわち,当審引用文献4の図6において,アンダーフィルに埋設された導電バンプが接触する必要がある導電性部材は,「導通用突起物31’」であり,チップをアンダーフィルによりパッケージ基板に結合させ,前記アンダーフィルを熱溶融することで,前記チップを各前記導電バンプにより前記パッケージ基板に電気的に接続させるにあたり,当該「導通用突起物31’」の尖状の先端部の形状が,前記アンダーフィルに突き刺さり押し入ることを容易にするものと理解できる。

これに対し,当審引用発明1の「銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極」は,その上面が平坦であるから,当審引用文献4の「導通用突起物31’」の場合に比べて,アンダーフィルに押し入ることは困難であると認められる。

そうすると,当審引用文献4において,本願発明の「前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させ,各前記導電バンプを前記基材に接触させない」構造に相当する構造が公知であるとしても,当該構造は,専ら,当審引用文献4の図6に示されるような「導通用突起物31’」との接触を目的とした製造方法において用いられるものと解され,前記構造を,当審引用発明1におけるような,その上面が平坦であり,アンダーフィルに押し入ることが,前記「導通用突起物31’」の場合に比べて困難であると認められる,「銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極」との接触に用いることを,当業者が容易に想到し得たとは認められない。

このことは,当審拒絶理由で通知した引用文献5及び6(以下「当審引用文献5」及び「当審引用文献5」という。)の記載からも妥当なものと認められる。
すなわち,当審引用文献5の図1ないし図3,及び,当審引用文献6の第3図には,いずれも,上面が平坦な導電性部材に,アンダーフィルに埋設された導電バンプを接触させる工程を備えた半導体パッケージ構造の製造方法において,当該導電バンプの頂部が,前記アンダーフィルから露出している構造が示されている。
そうすると,上面が平坦な導電性部材に,アンダーフィルに埋設された導電バンプを接触させる工程を備えた半導体パッケージ構造の製造方法において,当該導電バンプの頂部を,前記アンダーフィルから露出するような構造を採用することが普通に行われているものと理解される。

したがって,当審引用発明1において,「保護用セパレータと2層になったアンダーフィル樹脂としての絶縁性樹脂」を,「上面に銅(ニッケル+Auメッキしてもよい)の端子電極5が形成されている配線基板」の上に設けることに替えて,「チップの能動面」に設けることとし,さらに,当審引用発明1の「バンプ」を,「アンダーフィルに埋設させ」かつ,「基材に接触させない」ものとすること,すなわち上記相違点1について,本願発明の構成を採用することは,当業者が容易になし得たこととはいえない。

さらに,当審拒絶理由で通知した,引用文献2ないし3,及び,引用文献5ないし6には,「前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させ,各前記導電バンプを前記基材に接触させない工程」は記載されていない。

(4)小括
したがって,他の相違点2ないし3について検討するまでもなく,本願発明は,当業者が当審引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
本願の請求項2-5に係る発明についても,本願発明をさらに限定したものであるので,本願発明と同様に,当業者が当審引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。

(5)引用文献2又は3の記載から引用発明を認定した場合の検討
当審拒絶理由で通知した引用文献2及び3には,本願発明の「前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させ,各前記導電バンプを前記基材に接触させない工程」が記載されていないから,前記引用文献2又は3の記載から引用発明を認定して本願発明と対比すると,引用発明は,本願発明の上記の構成を備えていない点で少なくとも相違する。
そして,上記(3)のとおり,本願発明の上記の構成は,引用文献1及び引用文献5ないし6のいずれにも記載されていない。
そうすると,上記引用文献2及び3のいずれから引用発明を認定した場合でも,本願発明と引用発明との相違点である本願発明の上記構成は,他の引用文献に基づいて,当業者が容易になし得たこととはいえない。
さらに,当審引用文献4に,本願発明の「前記チップの能動面を前記アンダーフィルに結合させることにより各前記導電バンプを前記アンダーフィルに埋設させ,各前記導電バンプを前記基材に接触させない」構造に相当する構成が記載されていると認めることができるとしても,上記(3)で検討したように,当該構成は,専ら,当審引用文献4の図6に示されるような「導通用突起物31’」との接触を目的とした製造方法において用いられるものと解され,前記構成を,当審拒絶理由で通知した引用文献2及び3に記載されるような,前記「導通用突起物31’」に相当する構造を有さない部材との接触に用いることを,当業者が容易に想到し得たとは認められない。
以上から,本願発明は,当業者が当審拒絶理由で通知した引用文献2又は3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
本願の請求項2-5に係る発明についても,本願発明をさらに限定したものであるので,本願発明と同様に,当業者が当審拒絶理由で通知した引用文献2又は3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。

(6)まとめ
したがって,もはや,当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-15 
出願番号 特願2012-38739(P2012-38739)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小田 浩田代 吉成水野 浩之溝本 安展  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 加藤 浩一
鈴木 匡明
発明の名称 半導体パッケージ構造の製造方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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