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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1317989
審判番号 不服2014-14733  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-28 
確定日 2016-08-08 
事件の表示 特願2011-170704「固体発光デバイス用のリードフレームベースのパッケージ、および固体発光デバイス用のリードフレームベースのパッケージを形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日出願公開、特開2011-233928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年7月13日に特許出願された特願2007-184533号(パリ条約による優先権主張2006年7月13日 米国)の一部を分割して、平成23年8月4日に新たな特許出願として出願したものであって、出願後の手続の経緯は以下のとおりである。

平成23年 8月23日 手続補正書・上申書
平成24年10月31日 拒絶理由通知(同年11月2日発送)
平成25年 4月24日 意見書・手続補正書
平成25年 9月 3日 拒絶理由通知(同年9月6日発送)
平成26年 3月 5日 意見書・手続補正書
平成26年 3月26日 拒絶査定(同年3月28日謄本の送達)
平成26年 7月28日 審判請求書
平成26年 9月 8日 手続補正書(方式)
平成27年 6月19日 拒絶理由通知(同年6月23日発送
以下「当審拒絶理由通知」という。)
平成27年10月23日 意見書・手続補正書

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成27年10月23日付け手続補正により補正された請求項1乃至20に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりである。
「発光デバイス用のパッケージ向けのリードフレームであって、
上面と、
下面を有する中心領域であって、前記リードフレームの前記上面と前記中心領域の前記下面との間の第1の厚さを有する中心領域と、
前記中心領域から横方向に遠ざかるように延びる電気リードであって、下面と、前記リードフレームの前記上面から、前記中心領域に隣接した前記電気リードの前記下面までの第2の厚さとを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも薄い電気リードとを含み、
前記中心領域は、前記中心領域から前記電気リードの方向に延びるリップ部分であって、前記第2の厚さを有し、前記電気リードから電気的に分離されているリップ部分を含み、
前記リップ部分の上面は、前記中心領域の上面に対応し、前記電気リードの上面と共通の平面をなすことを特徴とするリードフレーム。」(以下「本願発明」という。)

3 当審拒絶理由通知
当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由の概要は、本件出願の特許請求の範囲の請求項1乃至20に係る発明は、その優先日(2006年7月13日)前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



特開2003-318448号公報(以下「刊行物1」という。)
特開2006-179541号公報(以下「刊行物2」という。)
特開平2-129948号公報(以下「刊行物3」という。)
国際公開第2003/100873号(以下「刊行物4」という。)

4 引用発明
(1)刊行物1の記載事項
刊行物1には、図と共に以下の記載がある(当審注:下線は当審が付加した。以下、同様である。)。
ア 「【請求項6】表面に設けられた凹部内に発光素子チップを収納するパッケージと、少なくとも前記凹部を被覆し透光性を有する柔軟性部材と、該柔軟性部材の上方に載置され透光性を有する剛性部材、とを有する発光装置であって、
前記パッケージは、少なくとも前記第一の凹部上方にて少なくとも外側へ向かって広がる第一の主面と、該第一の主面より上方にて外側へ広がる第二の主面と、該第二の主面より上方にて外側へ広がりパッケージの外部となる第三主面とを有し、
前記剛性部材は、前記第二の主面の外郭内に少なくとも3以上の接点を有して内接しており、
前記第一の主面および前記第二の主面は、ぞれぞれ前記剛性部材の各接点間外部に露出部を有し、
前記柔軟性部材は、前記第一の主面、前記第二の主面、および前記剛性部材の下端部に渡り連続的に設けられていることを特徴とする発光装置。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はバックライト光源、ディスプレイ、照明など各種光源や光センサに利用される発光装置に係わり、特に、良好な信頼性と光学特性とを兼ね合わせた発光装置に関するものである。」

ウ 「【0033】
【発明の実施の形態】…以下、本発明の各構成について詳述する。
【0034】(パッケージ1)パッケージは、例えば図1に示すように、正のリード電極と負のリード電極5、およびヒートシンクとなる金属基体とが、それぞれ対向した側面よりインサートされて閉じられた金型内に、下面側にあるゲートから溶融された成形樹脂を流し込み硬化して形成される。
【0035】詳細に説明すると、パッケージは、主面側に第一の凹部を有し、該凹部底面より前記パッケージの一側面より挿入された金属基体6の主面が露出している。前記金属基体6の主面には、発光素子が収納可能な第二の凹部が設けられている。
【0036】一方、前記第一の凹部の上方において外側へ広がる第一の主面、及び前記第一の主面の上方において外側へ広がる第二の主面が設けられている。前記第一の主面より前記パッケージの一側面と対向した他方の側面より挿入された正負一対のリード電極の主面が露出している。前記リード電極の主面は、前記発光素子の各電極とそれぞれワイヤにて電気的に接続されている。また、前記第二の主面は上方に載置される剛性部材の位置決めの役割を成している。
【0037】このような構成を有するパッケージを用い、前記パッケージの凹部底面に発光素子が電気的に接続され、これらを第一の封止部材である柔軟性部材および第二の封止部材である剛性部材にて密封して本発明の発光装置が得られる。

【0040】(リード電極5)リード電極は、銅や鉄入り銅等の高熱伝導体を用いて構成することができる。また、発光素子からの光の反射率の向上及びリード基材の酸化防止等のために、リード電極の表面に銀、アルミ、銅や金等の金属メッキを施すこともでき、またリード電極の表面の反射率を向上させるため平滑にすることが好ましい。また、リード電極の面積は大きくすることが好ましく、このようにすると放熱性を高めることができ、配置される発光素子チップの温度上昇を効果的に抑制することができる。これによって、発光素子チップに比較的多くの電力を投入することが可能となり光出力を向上させることができる。
【0041】リード電極は、例えば、0.15mm厚の銅合金属からなる長尺金属板をプレスを用いた打ち抜き加工により形成される。本実施の形態では、一方向に正のリード電極と負のリード電極が連なるようにプレス加工を施している。
【0042】本発明の発光装置において、リード電極の背面と側面との交わる角は曲線を帯びていることが好ましい。このように、樹脂を注入する方向に合わせてリード電極の端部に丸みを設けると成形樹脂の流れがスムーズとなり、前記リード電極と成形樹脂部との密着性が強化させる。また、パッケージ底面に露出された一対のリード電極間の空間に隙間なく樹脂を充填させることができる。また、成形樹脂部のリード電極との接合ラインは、前記リード電極と対応した形状となる。よって上記の形状を有するリード電極を用いると、成形樹脂部の側面上の前記背面との接合ラインは、底角が曲線を帯びた凹部形状とすることができる。これにより前記接合ラインにおける応力集中が回避されパッケージ・クラックの発生を抑制することができる。
【0043】また更に、リード電極の主面と側面との交わる角は鋭角に盛り上がっていることが好ましい。これにより、リード電極と第一の封止部材との密着性が向上され、これらの界面での剥離を抑制することができる。
【0044】また、パッケージ成形体の外壁から突き出した正のリード電極と負のリード電極のアウタ・リード部は、背面が成型樹脂部の背面、および金属基体の背面と同一平面を成すようにガルウィング型に加工され、正負の接続端子部となっている。尚、本発明の接続端子部の構造は、ガルウィング型に限られるものではなく、J-ベンド(Bend)等、他の構造であってもよい。
【0045】(金属基体6)本実施の形態の発光装置に用いられるパッケージは、中央部に、発光素子を収納し前記発光素子からの発熱を良好に放熱することが可能な金属基体を有する。前記金属基体は、主面側に凹部を有し、背面は発光装置の実装面、つまりリード電極の接続端子部背面、および成型樹脂部背面とほぼ同一平面上に位置しており、実装基板と接するように構成されている。このように構成することにより、発光素子からの発熱を直接実装基板へと放熱することができ、発光素子への電流投下量を増大させ出力向上を図ることができる。前記凹部底面の膜厚は、良好な放熱性を有するように薄膜に形成されている。前記凹部は、発光装置の中央部に位置することが好ましく、これにより良好な指向特性が得られる。また凹部は、前記発光素子全体を収納することが可能な容積を有することが好ましい。これにより、発光素子の四方側面から発光される光を前記凹部内壁にて良好に正面方向へ取り出すことができる。…。本発明に用いられる金属パッケージは、特に発光素子が配置される凹部の放熱性が優れているため、前記色変換層の各部材は無機物に限らず有機物を用いることも可能であり、大電流投下による前記有機物の劣化はほとんどおこらず、良好な光学特性が得られる。また、前記凹部の内壁は、容積が開口側へいくほど大きくなるようにがテーパー形状であることが好ましく、これにより更に高輝度に発光することが可能な発光装置が得られる。
【0046】前記凹部は、例えば金属平板に絞り加工を施すことにより構成される。本実施の形態では、金属平板の主面方向から絞り加工を施して金属を背面方向に流し凹部を形成する。これにより、背面の外郭は凹凸を有する形状となり、成型樹脂部との接触面積が増大され、構造的一体性を強化することができる。
【0047】前記リード電極及び金属基体の熱伝導率はそれぞれ、10W/m・K以上100W/m・K以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは15W/m・K以上80W/m・K以下、更に好ましくは15W/m・K以上50W/m・K以下である。、信頼性を維持しながら大電流を長時間投下することが可能な発光装置が得られる。」

エ 「【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の発光装置を示す模式的平面図である。
【図2】図2は、図1のII-II線における模式的断面図である。
…」

オ 図2は、以下のとおりである。

カ 上記ウ、エの記載を踏まえて図2を見ると、以下の事項が看取できる。
(ア)正・負のリード電極5は、主面と背面を有すること。
(イ)金属基体6は、主面、主面に設けられた凹部、背面を有すること。
(ウ)正・負のリード電極5は、金属基体6から横方向に遠ざかるように配置されていること。
(エ)正・負のリード電極5の厚さは、金属基体6の厚さより薄いこと。

(2)引用発明
ア 上記(1)ウ【0034】の記載によれば、パッケージは、正・負のリード電極、ヒートシンクとなる金属基体、硬化した成形樹脂で構成されることが理解できる。

イ 上記(2)アの記載によれば、
「表面に設けられた凹部内に発光素子チップを収納するパッケージと、少なくとも前記凹部を被覆し透光性を有する柔軟性部材と、該柔軟性部材の上方に載置され透光性を有する剛性部材、とを有する発光装置であって、
前記パッケージは、少なくとも前記第一の凹部上方にて少なくとも外側へ向かって広がる第一の主面と、該第一の主面より上方にて外側へ広がる第二の主面と、該第二の主面より上方にて外側へ広がりパッケージの外部となる第三主面とを有し、
前記剛性部材は、前記第二の主面の外郭内に少なくとも3以上の接点を有して内接しており、
前記第一の主面および前記第二の主面は、ぞれぞれ前記剛性部材の各接点間外部に露出部を有し、
前記柔軟性部材は、前記第一の主面、前記第二の主面、および前記剛性部材の下端部に渡り連続的に設けられている発光装置。」
が開示されている。

ウ 上記(2)ウ【0041】の記載によると、リード電極は、例えば、0.15mm厚の銅合金属からなる長尺金属板をプレスを用いた打ち抜き加工により形成される。

エ 上記(2)ウ【0045】、【0046】の記載によると、金属基体は、主面側に凹部を有し、背面は発光装置の実装面とほぼ同一平面上に位置しており、実装基板と接するように構成され、発光素子からの発熱を直接実装基板へと放熱できる。また、前記凹部は、例えば金属平板に絞り加工を施すことにより構成され、前記凹部の内壁は容積が開口部側へいくほど大きくなるようにテーパー形状である。

オ 上記(2)ウ【0047】の記載によると、前記リード電極及び金属基体の熱伝導率はそれぞれ、10W/m・K以上100W/m・K以下の範囲であることが好ましい。

カ 上記(2)ウ【0036】の記載によれば、リード電極の主面は、発光素子の各電極とそれぞれワイヤにて電気的に接続されている。

キ 上記ア乃至カと上記(1)カによれば、刊行物には、
「表面に設けられた凹部内に発光素子チップを収納するパッケージと、少なくとも前記凹部を被覆し透光性を有する柔軟性部材と、該柔軟性部材の上方に載置され透光性を有する剛性部材、とを有する発光装置であって、
前記パッケージは、少なくとも前記第一の凹部上方にて少なくとも外側へ向かって広がる第一の主面と、該第一の主面より上方にて外側へ広がる第二の主面と、該第二の主面より上方にて外側へ広がりパッケージの外部となる第三主面とを有し、
前記剛性部材は、前記第二の主面の外郭内に少なくとも3以上の接点を有して内接しており、
前記第一の主面および前記第二の主面は、ぞれぞれ前記剛性部材の各接点間外部に露出部を有し、
前記柔軟性部材は、前記第一の主面、前記第二の主面、および前記剛性部材の下端部に渡り連続的に設けられており、
前記パッケージは、正・負のリード電極、ヒートシンクとなる金属基体、及び硬化した成形樹脂で構成され、
前記正・負のリード電極は、例えば、0.15mm厚の銅合金属からなる長尺金属板をプレスを用いた打ち抜き加工により形成され、主面と背面を有し、
前記金属基体は、主面側に凹部を有し、背面は発光装置の実装面とほぼ同一平面上に位置しており、実装基板と接するように構成され、発光素子からの発熱を直接実装基板へと放熱でき、前記凹部は、例えば金属平板に絞り加工を施すことにより構成され、前記凹部の内壁は容積が開口部側へいくほど大きくなるようにテーパー形状であり、
前記正・負のリード電極及び金属基体の熱伝導率はそれぞれ、10W/m・K以上100W/m・K以下の範囲であることが好ましく、
前記正・負のリード電極は、前記金属基体から横方向に遠ざかるように配置され、
前記正・負のリード電極の厚さは、前記金属基体の厚さより薄く、
前記正・負のリード電極の主面は、前記発光素子チップの各電極とそれぞれワイヤにて電気的に接続されている、
発光装置。」
が開示されている。
ここで、硬化した成形樹脂とともにパッケージを構成する正・負のリード電極と金属基体に着目すると、刊行物には、
「硬化した成形樹脂と共にパッケージを構成する、正・負のリード電極と、ヒートシンクとなる金属基体であって、
前記パッケージは、表面に設けられた凹部内に発光素子チップを収納し、柔軟性部材、剛性部材と共に発光装置を構成するものであり、
前記柔軟性部材は、少なくとも前記凹部を被覆し透光性を有するものであり、
前記剛性部材は、前記柔軟性部材の上方に載置され透光性を有するものであり、
前記パッケージは、少なくとも前記第一の凹部上方にて少なくとも外側へ向かって広がる第一の主面と、該第一の主面より上方にて外側へ広がる第二の主面と、該第二の主面より上方にて外側へ広がりパッケージの外部となる第三主面とを有するものであり、
前記剛性部材は、前記第二の主面の外郭内に少なくとも3以上の接点を有して内接するものであり、
前記第一の主面および前記第二の主面は、ぞれぞれ前記剛性部材の各接点間外部に露出部を有するものであり、
前記柔軟性部材は、前記第一の主面、前記第二の主面、および前記剛性部材の下端部に渡り連続的に設けられるものであり、
前記正・負のリード電極は、例えば、0.15mm厚の銅合金属からなる長尺金属板をプレスを用いた打ち抜き加工により形成され、主面と背面を有し、
前記金属基体は、主面側に凹部を有し、背面は発光装置の実装面とほぼ同一平面上に位置しており、実装基板と接するように構成され、発光素子からの発熱を直接実装基板へと放熱でき、前記凹部は、例えば金属平板に絞り加工を施すことにより構成され、前記凹部の内壁は容積が開口部側へいくほど大きくなるようにテーパー形状であり、
前記正・負のリード電極及び金属基体の熱伝導率はそれぞれ、10W/m・K以上100W/m・K以下の範囲であることが好ましく、
前記正・負のリード電極は、前記金属基体から横方向に遠ざかるように配置され、
前記正・負のリード電極の厚さは、前記金属基体の厚さより薄く、
前記正・負のリード電極の主面は、前記発光素子チップの各電極とそれぞれワイヤにて電気的に接続されるものである、
正・負のリード電極と金属基体。」(以下「引用発明」という。)
が開示されている。

(4)対比
ア 本願発明の「発光デバイス用のパッケージ向けのリードフレーム」と、引用発明の「硬化した成形樹脂と共にパッケージを構成する、正・負のリード電極と、ヒートシンクとなる金属基体」を対比する。
引用発明の「パッケージ」が「表面に設けられた凹部内に発光素子チップを収納し、…発光装置を構成するもの」であることを踏まえると、引用発明の「パッケージ」は、本願発明の「発光デバイス用のパッケージ」に相当する。
また、本願発明の「リードフレーム」は、「…中心領域と、…電気リードとを含」むところ、本願発明の「中心領域」と引用発明の「金属基体」は、「中心部材」の点で一致し、引用発明の「正・負のリード電極」は、本願発明の「電気リード」に相当する。
してみると、両者は、「発光デバイス用のパッケージ向けの中心部材と電気リード」の点で一致する。

イ 本願発明の「下面を有する中心領域であって、前記リードフレームの前記上面と前記中心領域の前記下面との間の第1の厚さを有する中心領域」と、引用発明の「主面側に凹部を有し、背面は発光装置の実装面とほぼ同一平面上に位置して」いる「金属基体」を対比する。
引用発明の「金属基体」は、上記アに記載したとおり、本願発明の「中心領域」と「中心部材」の点で一致し、また、引用発明の「背面」は、本願発明の「下面」に相当する。そして、引用発明の「金属基体」が「主面」と「背面」の間に所定の厚さを有することは明らかであるところ、前記所定の厚さが本願発明の「前記上面と前記中心領域の前記下面との間の第1の厚さ」に相当する。
してみると、両者は「下面を有する中心部材であって、上面と前記中心部材の前記下面との間の第1の厚さを有する中心部材」の点で一致する。

ウ 本願発明の「前記中心領域から横方向に遠ざかるように延びる電気リードであって、下面と、前記リードフレームの前記上面から、前記中心領域に隣接した前記電気リードの前記下面までの第2の厚さとを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも薄い電気リード」と、引用発明の「前記金属基体から横方向に遠ざかるように配置され、…厚さは、前記金属基体の厚さより薄」い「正・負のリード電極」を対比する。

引用発明の「前記金属基体から横方向に遠ざかるように配置され」る「前記正・負のリード電極」は、本願発明の「前記中心領域から横方向に遠ざかるように延びる電気リード」と「前記中心部材から横方向に遠ざかるように延びる電気リード」の点で一致する。また、引用発明の「前記正・負のリード電極の厚さは、前記金属基体の厚さより薄」いことは、本願発明の「電気リード」が「上面から、前記中心領域に隣接した前記電気リードの前記下面までの第2の厚さとを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも薄い」ことに相当する。
してみると、両者は「前記中心部材から横方向に遠ざかるように延びる電気リードであって、下面と、上面から、前記中心部材に隣接した前記電気リードの前記下面までの第2の厚さとを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも薄い電気リード」の点で一致する。

エ 以上によれば、本願発明と引用発明は、
「発光デバイス用のパッケージ向けの中心部材と電気リードであって、
下面を有する中心部材であって、上面と前記中心部材の前記下面との間の第1の厚さを有する中心部材と、
前記中心部材から横方向に遠ざかるように延びる電気リードであって、下面と、上面から、前記中心部材に隣接した前記電気リードの前記下面までの第2の厚さとを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも薄い電気リードとを含む、
中心部材と電気リード。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:中心部材と電気リードに関し、本願発明は、中心領域と電気リードをリードフレームとして備え、前記リードフレームが上面を有するのに対し、引用発明は、そのようなものではない点。

相違点2:「中心部材」に関し、本願発明は、「前記中心領域から前記電気リードの方向に延びるリップ部分であって、前記第2の厚さを有し、前記電気リードから電気的に分離されているリップ部分を含み、前記リップ部分の上面は、前記中心領域の上面に対応し、前記電気リードの上面と共通の平面をなす」のに対し、引用発明は、そのようなものではない点。

(5)判断
上記相違点1、2について、まとめて検討する。
ア はじめに、本願発明が有する「リップ部分」の技術的意義について検討する。
本願の発明の詳細な説明には、「リップ部分」に関して以下の記載がある。
「【0045】
中心領域102には、反射カップ124が形成されている。反射カップ124は、リードフレーム100の上面100aから中心領域102内に位置する底124bまで延びる斜めの側壁を含む。反射カップ124は、任意の周囲形状を有することができる。しかし、図2A?2Cに示された実施形態では、反射カップ124は、全体に円形の周囲形状を有する。したがって、反射カップ124の斜めの側壁は、反射カップ124がリードフレーム100の上面100aと交わる全体に、円形の上部リップ(upper lip)124aを形成することができる。図2A?Cに示された反射カップ124の側壁は、錐体切断体(例えば、錐台)の形状を有する。しかし、反射カップ124の側壁は、他の形状、例えば立体放物体切断体の形状をなすことができる。
【0046】
反射カップ124の底124bは、中心領域102の幅(すなわち、中心領域102の側壁102c間の距離)よりも小さい直径を有する。さらに、反射カップ124の上部リップ124aは、中心領域102の幅以下とすることができる直径を有する。さらに、反射カップ124の底124bと中心領域102の下面102bとの間の中心領域102の厚さは、電気リード104、106よりも厚くすることができる。後により詳細に説明されるように、固体発光デバイス用のパッケージは、リード104、106を通してではなく、リードフレーム100の中心領域102を通して熱を放散させることができる。したがって、中心領域102の相対的な物理寸法(physical dimension)は、パッケージの熱抵抗を低減させることにより、パッケージの熱放散特性を向上させることができる。」
上記記載によれば、本願の明細書には、リップ部分を形成できることや、直径について記載されているものの、その技術的意義は明記されていない。
そこで、審判請求書(平成26年9月8日に提出した手続補正書(方式))を参酌すると、審判請求書の「3.(a)」には、「リードフレームの周囲にパッケージ本体を、例えば熱可塑性樹脂で形成したときに、図3Bに示されるように、パッケージ本体がリップ部分の下側にも回りこみ、その結果、他の実施形態について本願明細書[0060]に記載されているのと同様に、接着剤を必要とすることなく、パッケージ本体とリードフレームとの強い機械的接続を形成することができるという、顕著な作用効果を奏することができる。」との記載がある。該記載によれば、リップ部分は、その下側にパッケージ本体(熱可塑性樹脂)が回り込むことにより、パッケージ本体とリードフレームとの機械的接続を強くする意義を有するものと解される。

イ 上記アを踏まえ、相違点1、2について、まとめて検討する。
(ア)当審拒絶理由通知で引用した刊行物2には、コイニング、絞り等の加工によって形成されたヒートシンク部と、長尺金属材料を打抜き、曲げ、たたき等の加工によって形成されたリード部を金型内の所定位置に配置して加熱溶融樹脂を注入して樹脂製ボディー部を形成する従来技術は、高精度の位置合わせが必要である等の問題があること(【0002】乃至【0015】の記載を参照。)、そして、前記問題は、厚肉部と通常部とを長手方向に並べた長尺異形状金属材料を用い、ヒートシンク部とリード部とを同一金属材料で一体のリードフレームとして製造することにより解決できる旨の技術事項(【0017】乃至【0020】の記載を参照。)が開示されている。
ところで、引用発明の「正・負のリード電極」と「金属基体」は、何れも、主面と背面を有する部材であり、金属板や金属平板から形成されており、熱伝導率の好ましい範囲が共通する。また、刊行物の【0034】の記載によれば、引用発明のパッケージは、「正・負のリード電極」と「金属基体」がインサートされて閉じられた金型内に、溶融された成形樹脂を流し込み硬化して形成されるものである。
そうすると、引用発明と刊行物2に開示された上記技術事項は、何れも、ヒートシンクとなる金属基体(ヒートシンク部)、リード電極(リード部)、硬化した成形樹脂(樹脂製ボディー部)を備える発光装置の点で共通する技術分野に属するところ、刊行物2に接した当業者であれば、刊行物1の「正・負のリード電極」と、「ヒートシンクとなる金属基体」を同一金属材料で一体の、上面を有するリードフレームとして製造することは当業者が容易に想到しうることである。
(イ)また、一般に、リードフレーム等の部材を樹脂でモールドする際、部材と樹脂の密着性を高める目的で部材の側面に鍔等の凸部を設ける技術手段は、例えば、当審拒絶理由通知で引用した刊行物3(特許請求の範囲(1)の記載等を参照。)、刊行物4(図39及びその説明箇所の記載、特に鍔42aを参照。)に記載されるように周知の技術手段である。そして、引用発明の金属基体は、硬化した成形樹脂と共にパッケージを構成しており、金属基体と成型樹脂の密着性を高めることは周知の技術課題であるところ、引用発明に上記周知の技術手段を採用し、金属基体からリード電極の方向に延びるとともに、リード電極と電気的に分離する鍔等の凸部(本願発明の「リップ部分」に相当する。)を設けることは当業者が容易に想到しうることである。そして、該鍔等の凸部は、樹脂との密着性が高まる位置に設ければ良いところ、上記(ア)の如く、「正・負のリード電極」と、「ヒートシンクとなる金属基体」を同一金属材料で一体のリードフレームとして製造する際に、金属基体に設ける鍔部等の凸部をも含めて一体のリードフレームとして製造できるように、鍔部等の凸部の厚さをリード部の厚さと同じ厚さとし、正・負のリード電極、金属基体、鍔部等の凸部それぞれの上面が共通の平面をなすように構成することは当業者にとって自然なことであり、格別の困難性は無い。
(ウ)してみると、引用発明に、刊行物2に開示された上記技術事項、上記周知の技術手段を適用し、上記相違点1、2に係る本願発明の発明特定事項を備えるように為すことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
ウ そして、引用発明に、刊行物2に開示された上記技術事項、上記周知の技術手段を適用したものは、鍔等の凸部の下側に樹脂が回り込むことを踏まえると、本願発明が奏する作用効果は、当業者が、引用発明、刊行物2に開示された上記技術事項、上記周知の技術手段に基づいて容易に予測しうる程度のものであり、格別顕著なものとは認められない。

(6)小括(本願発明について)
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、刊行物2に開示された技術事項、及び上記周知の技術手段に基づいて容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、刊行物2に開示された技術事項、及び上記周知の技術手段に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-07 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-29 
出願番号 特願2011-170704(P2011-170704)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 靖記  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 小松 徹三
星野 浩一
発明の名称 固体発光デバイス用のリードフレームベースのパッケージ、および固体発光デバイス用のリードフレームベースのパッケージを形成する方法  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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