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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1317992
審判番号 不服2015-4402  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-05 
確定日 2016-08-09 
事件の表示 特願2012-513966「固体発光デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日国際公開、WO2010/141215、平成24年11月15日国内公表、特表2012-529176〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成22年 5月19日 国際特許出願(パリ条約による優先権主張外国 庁受理2009年6月5日、米国)
平成24年 3月 9日 手続補正書
平成25年12月 5日 拒絶理由通知(同年12月9日発送)
平成26年 3月10日 意見書・手続補正書
平成26年 5月13日 拒絶理由通知(最後、同年5月16日発送)
平成26年 8月15日 意見書・手続補正書
平成26年10月31日 補正の却下の決定(平成26年8月15日付け 手続補正)
拒絶査定(同年11月5日送達)
平成27年 3月 5日 本件審判請求・手続補正書

第2 平成27年3月5日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年3月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概略
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、

「少なくとも1つの固体発光体とともに使用される発光パッケージであって、前記発光パッケージは、
複数の電気リードを含むリードフレームと、
前記リードフレームの少なくとも一部分を内包し、少なくとも1つの外部側壁を含む本体構造と、
前記本体構造に保持され、前記複数の電気リードの各々から電気的に絶縁されたヒートシンクと、を備え、
前記複数の電気リードのうちの第1電気リードは、前記少なくとも1つの外部側壁を通って延びる複数の第1電気リードセグメントを有し、各第1電気リードセグメントは、少なくとも1つの第1開口によって前記少なくとも1つの外部側壁に沿って他の各第1電気リードセグメントから分離され、前記少なくとも1つの第1開口の少なくとも一部分は前記少なくとも1つの外部側壁の外側に配置される、発光パッケージ。」

とあったものを、

「少なくとも1つの固体発光体とともに使用される発光パッケージであって、前記発光パッケージは、
複数の電気リードと、前記複数の電気リードの各々から物理的に分離されたヒートシンクであって、少なくとも1つの固体発光体のための実装面を含むヒートシンクと、を含むリードフレームと、
前記リードフレームの少なくとも一部分を内包し、少なくとも1つの外部側壁を含む本体構造と、を備え、
前記ヒートシンクは、前記本体構造によって保持され、前記複数の電気リードの各々から電気的に絶縁され、前記ヒートシンクの一部分が、前記本体構造から延びて、前記複数の電気リードとは同一平面上になく、
前記複数の電気リードのうちの第1電気リードは、前記少なくとも1つの外部側壁を通って延びる複数の第1電気リードセグメントを含み、各第1電気リードセグメントは、少なくとも1つの第1開口によって前記少なくとも1つの外部側壁に沿って他の各第1電気リードセグメントから分離され、前記少なくとも1つの第1開口の少なくとも一部分は前記少なくとも1つの外部側壁の外側に配置される、発光パッケージ。」(当審注:下線は、請求人が補正箇所に付した下線である。)

と補正する補正事項を含むものである。
上記請求項1についてする補正は、「ヒートシンク」について、
(1)「複数の電気リードの各々から物理的に分離」されていることを特定する補正事項、
(2)「少なくとも1つの固体発光体のための実装面を含む」ことを特定する補正事項、
(3)「前記ヒートシンクの一部分が、前記本体構造から延びて、前記複数の電気リードとは同一平面上にな」いことを特定する補正事項、
を含んでいる。上記補正事項(1)?(3)は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定する事項であるヒートシンクに発明特定事項を付加して限定する補正事項であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて検討する。

2 引用する刊行物と引用発明
(1) 刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
本願の優先日前である平成20年4月24日に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2008-98218号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及び前記第1の面と対向する第2の面とを備える導電性のリード(100)と、
前記リード(100)の少なくとも第1の面側を覆い、且つ断面凹状の開口部を形成し、該開口部の底面に前記第1の面の一部を露出させるように形成されたパッケージと、
前記パッケージの開口部の底面において、前記リード(100)の第1の面上に熱伝導状態で固定された半導体発光素子と、
前記パッケージの開口部を封止する封止樹脂と、
を備える半導体発光装置であって、
前記リード(100)の両端部は、前記パッケージの両側面から外部に突出して各々アウターリード領域(104)を構成しており、
前記アウターリード領域(104)は、一対のアウターリード突部(104a)と、前記アウターリード突部(104a)の間に位置するリード端子短部(111a)とを外部に向かって突出させており、
前記リード端子短部(111a)の、前記リード(100)の長手方向と直交する面における端面は、前記アウターリード突部(104a)の端面よりも低くなるように、突出量を調整してなることを特徴とする半導体発光装置。 」

(イ) 「【実施例1】
【0026】
図1に、本発明の一実施例による半導体発光装置1の斜視図を示す。図2は、図1で示す半導体発光装置1のII-II’線における断面図である。以下、図1及び図2に基づいて、実施例1の半導体発光装置1の概略を説明する。半導体発光装置1は、リード100上に、上部に向かって略凹形状に開口している空間を備えるパッケージ2が装着されてなる。さらに、このパッケージ2の空間内であって、露出しているリード100上に複数の発光素子10が実装されている。つまり、パッケージ2は、発光素子10を包囲する枠体となっている。また、パッケージ2の開口している空間内にはツェナーダイオード5等、規定電圧以上の電圧が印加されると通電状態になる保護素子5も載置されている。さらに、発光素子10は金線3やバンプ等を介して、リード100と電気的に接続されている。加えて、パッケージ2の開口している空間部は封止樹脂4により充填されている。
以下に個々の部材について説明する。

【0030】
(リード100)
図4は、実施例1の半導体発光装置1の一製造工程を示す平面図である。導電性部材からなるリードフレーム110上に、複数のリード100のパターンがマトリックス状に配置されている。すなわち、枠状のリードランナー112に、リード連結部111を介してリード100が枝状に連結されるよう、リードフレーム110を打抜加工等により形成する。この複数のリード100は、後述する製造工程を経て半導体発光装置1へと同時に加工されていく。そして、ある段階の工程で、リード連結部111が切断されることにより個々の半導体発光装置1に分離される。
【0031】
図5(a)は、図4のリードフレーム110上に、マトリックス状に配置された一のリード100の拡大斜視図である。図5(b)は、図5(a)のV-V’線によるリード100の断面図である。
【0032】
ここで、本発明においてリード100とは、枠体の外部に露出した部分のみではなく、半導体発光装置1の枠体内部にも含有されており、芯材の役目を果たしている。図5(a)、(b)に示すようにリード100は、ほぼ中央部にあって、発光素子10を搭載するリード中央領域101と、発光素子10と電気的に接続されるリード周辺領域102と、折曲されるリード折曲領域103と、アウターリード領域104と、から構成される。さらにアウターリード領域104の端部は、略凸形状の突出部が同一面上から延伸され構成されており、この突出部をアウターリード突部104aと称す。図5の例では、アウターリード突部104aは左右のアウターリード領域104において、各々3つ設けられている。すなわち、アウターリード領域104の両側に設けられた端部アウターリード突部104aと、中央に設けられた幅広の中間アウターリード突部104a1で構成される。また一方、アウターリード領域104にはリード連結部111が備わっており、このリード連結部111を介してリード100は、隣接するリードランナー112(図4)と連結されている。なお、これらリード中央領域101、リード周辺領域102、リード折曲領域103、アウターリード領域104、アウターリード突部104a、リード連結部111は説明のためリードの部位によって命名されたものであって、本実施例においては全て同一の素材で一体的に構成されている。ただし、リード上の電気的接続領域における正負の電極は絶縁されているものとする。
【0033】
リード100において、発光素子10が搭載される面を上面(図5(b)の上面)とし、上面と対向する面を底面(図5(b)の下面)とする。リード中央領域101の上面とリード周辺領域102の上面はほぼ同一の高さにある。リード折曲領域103は、底面側へ斜めに折曲される。これによりアウターリード領域104が、リード中央領域101の上面及びリード周辺領域102の上面と平行を維持したまま一段低くなる。つまり、図5(b)で示すように、リード中央領域101及びリード周辺領域102の上面、リード折曲領域103の上面、アウターリード領域104の上面は、この順に低くなる。すなわち、アウターリード領域104の底面が、リード中央領域101の底面と同一面になるように、リード折曲領域103が調節する役割を果たす。よってリード折曲領域103は傾斜を帯びるよう折曲されており、このリード折曲領域103の折曲角度はアウターリード領域104とリード周辺領域102との段差により調節される。リード折曲領域103の形成加工は、プレス加工により行うことができる。このリード折曲領域103は、後述するパッケージ2の内部に配置されるよう配置される。
【0034】
折曲加工されたリード100は、後工程でその上に発光素子10が載置され、これと電気的に接続される。ただし、リード上の電気的接続領域における正負の電極は互いに分離され島状になっており、これらは絶縁されているものとする。また、外部電極とも電気的に接続可能とする。よってリード100は銅、リン青銅、鉄、ニッケル等の電気良導体とする。実施例1では銅製のものを使用した。さらに、発光素子10と外部電極との接続部位のみをリード100上で露出させ、他のリード部分は金属の腐食を防止するため、折曲加工後に、銀、金、パラジウム、ロジウム等の貴金属めっきを施すことが好ましい。ただし、光の反射効率を向上させるため接続部位以外の部分が露出していてもよい。

【0071】
また、図2に示すように、発光素子10が載置されているリード中央領域101の底面は外部に露出しており、半導体発光装置1の底面の一部を構成している。つまり、半導体発光装置1が被接着体20と接着する際、リード中央領域101の底面部101aが被接着体20と接面することになる。よって、被接着体20に熱伝導性に優れたを部材を使用することで、発光素子10が発光する際に生じる熱が、リード中央領域101を介して直接、被接着体20に伝わり、さらには半導体発光装置1の外部へと放熱されることになる。よって発光素子の発熱による半導体発光装置1内の蓄熱を防ぎ、ひいては半導体発光装置1の長寿命化につながる。
【0072】
さらにまた、このリード中央領域101の底面部101aにより、半導体発光装置1と被接着体20とが安定して固着される。これにより、半導体発光装置1が傾斜して被接着体20に固着されるのを防ぎ、光到達点がずれることを回避できる。」

(ウ) 「【0084】
【図1】実施例1に係る半導体発光装置の斜視図である。
【図2】実施例1に係る半導体発光装置を被接着体上に固定した状態を示す断面図である。

【図5】図5(a)は実施例1に係る半導体発光装置の製造方法の一工程を示す斜視図であり、図5(b)は(a)のV-V’線における断面図である。
…」

(エ)図1、図2、図5は、以下のとおりである。
図1 図2

図5

イ 引用発明
(ア) 上記ア(ア)によれば、以下の半導体発光装置が記載されている。

「第1の面及び前記第1の面と対向する第2の面とを備える導電性のリードと、
前記リードの少なくとも第1の面側を覆い、且つ断面凹状の開口部を形成し、該開口部の底面に前記第1の面の一部を露出させるように形成されたパッケージと、
前記パッケージの開口部の底面において、前記リードの第1の面上に熱伝導状態で固定された半導体発光素子と、
前記パッケージの開口部を封止する封止樹脂と、
を備える半導体発光装置であって、
前記リードの両端部は、前記パッケージの両側面から外部に突出して各々アウターリード領域を構成しており、
前記アウターリード領域は、一対のアウターリード突部と、前記アウターリード突部の間に位置するリード端子短部とを外部に向かって突出させており、
前記リード端子短部の、前記リードの長手方向と直交する面における端面は、前記アウターリード突部の端面よりも低くなるように、突出量を調整してなる半導体発光装置。」

ここで、「半導体発光素子」、「封止樹脂」とともに「半導体発光装置」を構成する「導電性のリード」及び「パッケージ」に着目すると、
「半導体発光素子、封止樹脂とともに半導体発光装置を構成する導電性のリード及びパッケージであって、
前記導電性のリードは、第1の面及び前記第1の面と対向する第2の面とを備え、
前記パッケージは、前記リードの少なくとも第1の面側を覆い、且つ断面凹状の開口部を形成し、該開口部の底面に前記第1の面の一部を露出させるように形成され、
前記半導体発光素子は、前記パッケージの開口部の底面において、前記リードの第1の面上に熱伝導状態で固定され、
前記封止樹脂は、前記パッケージの開口部を封止し、
前記リードの両端部は、前記パッケージの両側面から外部に突出して各々アウターリード領域を構成しており、
前記アウターリード領域は、一対のアウターリード突部と、前記アウターリード突部の間に位置するリード端子短部とを外部に向かって突出させており、
前記リード端子短部の、前記リードの長手方向と直交する面における端面は、前記アウターリード突部の端面よりも低くなるように、突出量を調整してなる、
半導体発光素子、封止樹脂とともに半導体発光装置を構成する導電性のリード及びパッケージ。」
が開示されている。

(イ)上記ア(イ)の記載を踏まえて図1、図2、図5を見ると、以下の事項が看取できる。
a 導電性のリード100は、第1の面及び前記第1の面と対向する第2の面とを備え、リード中央領域101、リード周辺領域102、リード折曲領域103、アウターリード領域104からなる部材(以下「第1のリード部材」という。特に、図5の左側の部材を参照。)と、リード周辺領域102、リード折曲領域103、アウターリード領域104からなる部材(以下「第2のリード部材」という。特に、図5の右側の部材を参照。)の2つの部材からなること(特に図5参照)。

b 前記第1、第2のリード部材は、何れもリード周辺領域102の端部からリード折曲領域103を超えてアウターリード領域104の端部に至る開口を有すること(特に図5参照)。

c リード折曲領域103は、開口を挟んで開口の両側にそれぞれ位置すること(特に図5参照)。

d パッケージ2は側面を有し、開口の端部がパッケージ2の前記側面の外側に位置すること(図1、図2参照)

e リード中央領域は、その周囲のパッケージ2の底面と同一の平面部と該平面部から下方に突出する底面部を有し、前記同一の平面部は、第1、第2のリード部材の何れの面とも同一平面上にないこと(図2参照)。

(ウ)上記ア(イ)【0071】の記載によれば、発光素子は、リード中央領域に載置される。そして、リード中央領域の底面は、外部に露出して半導体発光装置の底面の一部を構成し、発光素子が発光する際に生じる熱は、リード中央領域を介して直接、半導体発光装置を接着する被接着体に伝わり、さらには半導体発光装置の外部へと放熱される。

(エ)してみると、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「半導体発光素子、封止樹脂とともに半導体発光装置を構成する導電性のリード及びパッケージであって、
前記導電性のリードは、第1の面及び前記第1の面と対向する第2の面とを備え、
前記パッケージは、前記リードの少なくとも第1の面側を覆い、且つ断面凹状の開口部を形成し、該開口部の底面に前記第1の面の一部を露出させるように形成され、
前記半導体発光素子は、前記パッケージの開口部の底面において、前記リードの第1の面上に熱伝導状態で固定され、
前記封止樹脂は、前記パッケージの開口部を封止し、
前記リードの両端部は、前記パッケージの両側面から外部に突出して各々アウターリード領域を構成しており、
前記アウターリード領域は、一対のアウターリード突部と、前記アウターリード突部の間に位置するリード端子短部とを外部に向かって突出させており、
前記リード端子短部の、前記リードの長手方向と直交する面における端面は、前記アウターリード突部の端面よりも低くなるように、突出量を調整してなり、
前記導電性のリードは、リード中央領域、リード周辺領域、リード折曲領域、アウターリード領域からなる部材(以下「第1のリード部材」という。)と、リード周辺領域、リード折曲領域、アウターリード領域からなる部材(以下「第2のリード部材」という。)の2つの部材からなり、
前記第1、第2のリード部材は、何れも前記リード周辺領域の端部から前記リード折曲領域を超えて前記アウターリード領域の端部に至る開口を有し、
前記リード折曲領域は、前記開口を挟んで前記開口の両側にそれぞれ位置し、
パッケージ2は側面を有し、前記開口の端部がパッケージ2の前記側面の外側に位置し、
前記リード中央領域は、その周囲のパッケージ2の底面と同一の平面部と該平面部から下方に突出する底面部を有し、前記同一の平面部は、第1、第2のリード部材の何れの面とも同一平面上になく、
前記半導体発光素子は、前記リード中央領域に載置され、
前記リード中央領域の底面は、外部に露出して前記半導体発光装置の底面の一部を構成し、前記半導体発光素子が発光する際に生じる熱は、前記リード中央領域を介して直接、前記半導体発光装置を接着する被接着体に伝わり、さらには前記半導体発光装置の外部へと放熱される、
半導体発光素子、封止樹脂とともに半導体発光装置を構成する導電性のリード及びパッケージ。」(以下「引用発明」という。)

3 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)本願補正発明の「少なくとも1つの固体発光体とともに使用される発光パッケージ」と、引用発明の「半導体発光素子、封止樹脂とともに半導体発光装置を構成する導電性のリード及びパッケージ」を対比する。
引用発明の「導電性のリード及びパッケージ」は、本願補正発明の「発光パッケージ」に相当する。そして、引用発明の「半導体発光素子」は、本願補正発明の「固体発光体」に相当し、引用発明の「導電性のリード及びパッケージ」が「半導体発光素子…とともに半導体発光装置を構成する」ことは、本願補正発明の「少なくとも1つの固体発光体とともに使用される」ことに相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

(2)本願補正発明の「複数の電気リードと、前記複数の電気リードの各々から物理的に分離されたヒートシンクであって、少なくとも1つの固体発光体のための実装面を含むヒートシンクと、を含むリードフレーム」と、引用発明の「リード中央領域、リード周辺領域、リード折曲領域、アウターリード領域からなる部材(以下「第1のリード部材」という。)と、リード周辺領域、リード折曲領域、アウターリード領域からなる部材(以下「第2のリード部材」という。)の2つの部材からな」る「前記導電性のリード」であって、「前記リード中央領域」に「前記半導体発光素子」が「載置され」、「前記リード中央領域の底面は、外部に露出して前記半導体発光装置の底面の一部を構成し、前記半導体発光素子が発光する際に生じる熱は、前記リード中央領域を介して直接、前記半導体発光装置を接着する被接着体に伝わり、さらには前記半導体発光装置の外部へと放熱される」ことを対比する。
ア 引用発明の「第1のリード部材」の内の「リード周辺領域、リード折曲領域、アウターリード領域からなる部材」と「第2のリード部材」は、本願補正発明の「複数の電気リード」に相当する。
イ 引用発明の「リード中央領域」は、そ「の底面は、外部に露出して前記半導体発光装置の底面の一部を構成し、前記半導体発光素子が発光する際に生じる熱は、前記リード中央領域を介して直接、前記半導体発光装置を接着する被接着体に伝わり、さらには前記半導体発光装置の外部へと放熱される」から、引用発明の「リード中央領域」は、本願補正発明の「ヒートシンク」に相当する。
ウ 引用発明の「前記リード中央領域」に「前記半導体発光素子」が「載置され」ることは、本願補正発明のヒートシンクが「固体発光体のための実装面を含む」ことに相当する。
エ 引用発明の「導電性のリード」は、本願補正発明の「リードフレーム」に相当する。
オ してみると、両者は、「複数の電気リードと、少なくとも1つの固体発光体のための実装面を含むヒートシンクと、を含むリードフレーム」の点で一致する。

(3)本願補正発明の「前記リードフレームの少なくとも一部分を内包し、少なくとも1つの外部側壁を含む本体構造」と、引用発明の「前記リードの少なくとも第1の面側を覆い、且つ断面凹状の開口部を形成し、該開口部の底面に前記第1の面の一部を露出させるように形成され」る「パッケージ」であって、「前記開口の端部が」「側面の外側に位置」する「パッケージ」を対比する。
引用発明の「パッケージ」は、本願補正発明の「本体構造」に相当する。そして、引用発明の「パッケージ」が「前記リードの少なくとも第1の面側を覆い、且つ断面凹状の開口部を形成し、該開口部の底面に前記第1の面の一部を露出させるように形成され」ることは、本願補正発明の「本体構造」が「前記リードフレームの少なくとも一部分を内包」することに相当する。
また、引用発明の「側面」は、本願補正発明の「外部側壁」に相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

(4)本願補正発明の「前記ヒートシンクは、前記本体構造によって保持され、前記複数の電気リードの各々から電気的に絶縁され、前記ヒートシンクの一部分が、前記本体構造から延びて、前記複数の電気リードとは同一平面上にな」いことと、引用発明の「前記リード中央領域は、その周囲のパッケージ2の底面と同一の平面部と該平面部から下方に突出する底面部を有し、前記同一の平面部は、第1、第2のリード部材の何れの面とも同一平面上にな」いことを対比する。
ア はじめに、本願補正発明の発明特定事項である「前記ヒートシンクの一部分が、前記本体構造から延びて、前記複数の電気リードとは同一平面上にな」いことの技術的意味について検討する。
本願の発明の詳細な説明には、ヒートシンクの一部分が本体構造から延びて、複数の電気リードとは同一平面にない旨を説明する記載はない。上記発明特定事項は、平成27年3月5日付け手続補正により補正されたものであるところ、同日付けの審判請求書によれば、上記発明特定事項は、図9の記載に基づく旨説明されている。そこで、図9を参酌すれば、ヒートシンク70の下表面72は、本体構造10から延びていると言え、複数の電気リード51、61のリードタブ56、66等と同一平面上にないことが理解できる。そうすると、本願補正発明における、「前記本体構造から延びて、前記複数の電気リードとは同一平面上にな」い「前記ヒートシンクの一部分」とは、例えば、「ヒートシンク70の下表面72」を意味するものと解される。
イ 上記アの解釈を踏まえて対比する。
上記(2)イで検討したとおり、引用発明の「リード中央領域」は、本願補正発明の「ヒートシンク」に相当する。また、上記(3)で検討したとおり、引用発明の「パッケージ」は、本願補正発明の「本体構造」に相当する。引用発明の「前記リード中央領域は、その周囲のパッケージ2の底面と同一の平面部と該平面部から下方に突出する底面部を有し」ているところ、「周囲のパッケージ2の底面と同一の平面部」は、パッケージ2の底面から延びていると言え、第1、第2のリード部材の何れの面とも同一平面上にな」い。してみると、引用発明の「リード中央領域」が有する「周囲のパッケージ2の底面と同一の平面部」は、本願発明の「前記本体構造から延びて、前記複数の電気リードとは同一平面上にな」い「前記ヒートシンクの一部分」に相当する。
してみると、両者は、「前記ヒートシンクの一部分が、前記本体構造から延びて、前記複数の電気リードとは同一平面上にな」い点で一致する。

(5)本願補正発明の「前記複数の電気リードのうちの第1電気リードは、前記少なくとも1つの外部側壁を通って延びる複数の第1電気リードセグメントを含み、各第1電気リードセグメントは、少なくとも1つの第1開口によって前記少なくとも1つの外部側壁に沿って他の各第1電気リードセグメントから分離され」ることと、引用発明の「前記第1、第2のリード部材は、何れも前記リード周辺領域の端部から前記リード折曲領域を超えて前記アウターリード領域の端部に至る開口を有し、前記リード折曲領域は、前記開口を挟んで前記開口の両側にそれぞれ位置」し、「前記開口の端部がパッケージ2の前記側面の外側に位置」することを対比する。
引用発明の「第1、第2のリード部材」は、本願補正発明の「複数の電気リード」に相当し、引用発明の「開口」が、本願補正発明の「第1開口」に相当する。また、引用発明の「前記第1、第2のリード部材は、…開口を有し、」「前記開口の端部がパッケージ2の前記側面の外側に位置」することは、本願補正発明の「第1開口によって前記少なくとも1つの外部側壁に沿って他の各第1電気リードセグメントから分離され」ることに相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

(6)本願補正発明の「前記少なくとも1つの第1開口の少なくとも一部分は前記少なくとも1つの外部側壁の外側に配置される」ことと、引用発明の「前記開口の端部がパッケージ2の前記側面の外側に位置」することを対比する。
上記(5)で検討したとおり、引用発明の「開口」は、本願補正発明の「第1開口」に相当するから、引用発明の「開口の端部」は、本願補正発明の「前記少なくとも1つの第1開口の少なくとも一部分」に相当する。
また、上記(3)で検討したとおり、引用発明の「側面」は、本願補正発明の「外部側壁」に相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

(7)以上によれば、両者は、
「少なくとも1つの固体発光体とともに使用される発光パッケージであって、前記発光パッケージは、
複数の電気リードと、少なくとも1つの固体発光体のための実装面を含むヒートシンクと、を含むリードフレームと、
前記リードフレームの少なくとも一部分を内包し、少なくとも1つの外部側壁を含む本体構造と、を備え、
前記ヒートシンクの一部分が、前記本体構造から延びて、前記複数の電気リードとは同一平面上になく、
前記複数の電気リードのうちの第1電気リードは、前記少なくとも1つの外部側壁を通って延びる複数の第1電気リードセグメントを含み、各第1電気リードセグメントは、少なくとも1つの第1開口によって前記少なくとも1つの外部側壁に沿って他の各第1電気リードセグメントから分離され、前記少なくとも1つの第1開口の少なくとも一部分は前記少なくとも1つの外部側壁の外側に配置される、発光パッケージ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:ヒートシンクが、本願補正発明では、「前記複数の電気リードの各々から物理的に分離され」、「前記本体構造によって保持され、前記複数の電気リードの各々から電気的に絶縁され」るものであるのに対し、引用発明では、第1のリード部材の一領域であるリード中央領域であり、そのようなものではない点。

4 判断
(1)以下、上記相違点について検討する。
本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-93470号公報(以下「周知例1」という。)には、一対のリード部とヒートシンクを、直接、接触しないように離間して配置し、樹脂を充填して樹脂パッケージを構成した発光装置が開示されている(【0024】?【0029】)。
また、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-72092号公報(以下「周知例2」という。)には、中心領域102と、電気リード104、106を含むリードフレームが記載されている。電気リード104、106は、中心領域から電気的に分離されていても良いこと(【0043】参照)、電気リード104、106を通してではなく、中心領域102を通して熱を放散させること(【0046】参照)、リードフレームの周囲にパッケージ本体を形成すること(【0051】参照)、中心領域102と電気リード104、106が離れていること(図2Aより看取できる事項である。)が開示されている。
以上によれば、ヒートシンクを電気リードの各々から物理的・電気的に分離すること、ヒートシンクを本体構造によって保持することは、何れも周知の技術手段と認められる。
そして、引用発明において上記周知の技術手段を採用し、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。


(2)本願補正発明の効果について
本願補正発明が奏する作用効果は、引用発明と周知の技術手段に基いて当業者が容易に予測しうる程度のものである。

(3)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明と周知の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成23年改正前特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年3月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「少なくとも1つの固体発光体とともに使用される発光パッケージであって、前記発光パッケージは、
複数の電気リードを含むリードフレームと、
前記リードフレームの少なくとも一部分を内包し、少なくとも1つの外部側壁を含む本体構造と、
前記本体構造に保持され、前記複数の電気リードの各々から電気的に絶縁されたヒートシンクと、を備え、
前記複数の電気リードのうちの第1電気リードは、前記少なくとも1つの外部側壁を通って延びる複数の第1電気リードセグメントを有し、各第1電気リードセグメントは、少なくとも1つの第1開口によって前記少なくとも1つの外部側壁に沿って他の各第1電気リードセグメントから分離され、前記少なくとも1つの第1開口の少なくとも一部分は前記少なくとも1つの外部側壁の外側に配置される、発光パッケージ。」(以下「本願発明」という。)

2 引用する刊行物と引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、上記「第2 1」(1)?(3)の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 4」に記載したとおり引用発明と周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明と周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-14 
結審通知日 2016-03-15 
審決日 2016-03-30 
出願番号 特願2012-513966(P2012-513966)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 ▲高▼ 芳徳
近藤 幸浩
発明の名称 固体発光デバイス  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  

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