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審決分類 |
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1318000 |
審判番号 | 不服2015-20795 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-24 |
確定日 | 2016-08-08 |
事件の表示 | 特願2011-228660「透明導電性フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月13日出願公開、特開2013- 89007〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年10月18日の出願であって、平成27年4月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月24日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 2.本願発明 平成27年11月24日付けの手続補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を、新請求項1とするものであるから、請求項の削除を目的とするものであって、特許法第17条の2第3?5項の規定に適合するものと認められる。 したがって、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成27年11月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 透明接着層と、 前記透明接着層の一方の面に積層された第1ポリシクロオレフィンフィルムと、 前記透明接着層の他方の面に積層された第2ポリシクロオレフィンフィルムと、 前記第1ポリシクロオレフィンフィルムの、前記透明接着層とは反対側の面に形成された第1透明電極パターンと、 前記第2ポリシクロオレフィンフィルムの、前記透明接着層とは反対側の面に形成された第2透明電極パターンとを有し、 前記第1ポリシクロオレフィンフィルムの面内の位相差値および前記第2ポリシクロオレフィンフィルムの面内の位相差値が、いずれも波長590nmにおいて20nm以下である透明導電性フィルム。」 3.引用発明 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特許第4683164号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。) ア.「技術分野】 【0001】 本発明は、透明導電性積層体および透明導電性積層体の製造方法に関する。」(3頁45?47行) イ.「【発明を実施するための形態】 【0030】 以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いながら説明する。なお、本発明は、以下に記載する実施の形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれるものである。 【0031】 ・・・(中略)・・・ 【0032】 ・・・(中略)・・・ 【0033】 ・・・(中略)・・・ 【0034】 ・・・(中略)・・・ 【0035】 図5は、本発明の透明導電性積層体の断面例5の説明図である。透明導電性積層体11は、第一の透明基板1aの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第一の透明導電層3aと、第二の透明基板1bの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第二の透明導電層3bと、第一の透明導電層3aと第二の透明導電層3bを外側にして、第一の透明基板1aと第二の透明基板1bとの間に設けた粘着層6とから構成される。」(7頁38行?8頁29行) ウ.「【0039】 本発明で用いる透明基板層1、1a及び1bは、ガラスの他に、樹脂からなるプラスチックフィルムが用いられる。プラスチックフィルムとしては、成膜工程および後工程において十分な強度があり、表面の平滑性が良好であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアリレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。その厚さは部材の薄型化と基材の可撓性とを考慮し、10μm以上200μm以下程度のものが用いられる。 【0040】 本発明で用いる透明基板層1、1a及び1bは、光を吸収することが好ましい。光を吸収することにより、透明基板層1の両面の透明導電層にパターンを形成する場合、透明基板層1の一方の面側から照射された光のうち、レジストに吸収されなかった光を透明基板層1で吸収し、透明基板層1の他方の面側のレジストに光が到達することを防ぐことができるからである。特に、透明基板層1の両面で異なるパターンを同時に形成する場合、一方の面側のレジストのみを露光することができるため、一方の面のパターンが他方の面のパターンと重なることを防止することができる。同様の理由で、透明基板層1a及び1bも光を吸収することが好ましい。」(9頁1行?18行) エ.「【0062】 本発明の粘着層6は、第一の透明基板1aと第二の透明基板1bとを接着するための層である。粘着層6に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられ、クッション性や透明性に優れた樹脂を用いることが好ましい。 【0063】 本発明の粘着層6は、透明基板層1、1a及び1bと同様の理由により、レジストを露光するための光、特に、紫外光を吸収することが好ましい。紫外光を吸収する樹脂層としては、紫外線吸収剤を含有させた樹脂層や、紫外線吸収機能を有する樹脂を含有させた樹脂層などが挙げられ、具体的な光吸収材料としては、透明基板層1、1a及び1bに含有させる材料と同じ材料が挙げられる。また、光吸収材料の含有量も、透明基板層1、1a及び1bへの含有量と同程度含有することが好ましい。 【0064】 粘着層6は、粘着層単独で光を吸収する機能を有してもよく、また、透明基板層1、1a及び1b又は樹脂層5a、5bと共に光を吸収する機能を有してもよい。透明基板層1、1a及び1b又は樹脂層5a、5bと共に光を吸収する機能を有することにより、透明基板層の一方の面のレジストに吸収されなかった光を十分吸収することができ、一方の面のパターンが他方の面のパターンと重なることを、より防止することができる。」(12頁17?33行) オ.「【0068】 第一の透明導電層3a及び第二の透明導電層3bは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのいずれか、または、それらの2種類もしくは3種類の混合酸化物、さらには、その他添加物が加えられた物などが挙げられるが、目的・用途により種々の材料が使用でき、特に限定されるものではない。現在のところ、最も信頼性が高く、多くの実績のある材料は酸化インジウムスズ(ITO)である。」(13頁5?10行) 上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。 a.上記ア.、及び上記イ.の段落【0035】の記載によれば、引用例1には、第一の透明基板1aの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第一の透明導電層3aと、第二の透明基板1bの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第二の透明導電層3bと、第一の透明導電層3aと第二の透明導電層3bを外側にして、第一の透明基板1aと第二の透明基板1bとの間に設けた粘着層6とから構成された、透明導電性積層体、が記載されている。 b.上記ウ.の段落【0039】の記載によれば、上記「第一の透明基板1a、及び第二の透明基板1b」は、環状ポリオレフィンフィルムであってもよいものであり、さらに、その厚さは部材の薄型化と基材の可撓性とを考慮し、10μm以上200μm以下としてもよいものである。 したがって、引用例1には、前記第一の透明基板1a、及び前記第二の透明基板1bは、環状ポリオレフィンフィルムであり、その厚さは部材の薄型化と基材の可撓性とを考慮し10μm以上200μm以下としたものも記載されているといえる。 c.上記エ.の段落【0062】の記載によれば、上記「粘着層6」は、第一の透明基板1aと第二の透明基板1bとを接着するための層であり、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂などのクッション性や透明性に優れた樹脂からなっているといえる。 d.上記オの段落【0068】の記載によれば、上記「第一の透明導電層3a、及び前記第二の透明導電層3b」は、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのいずれか、または、それらの2種類もしくは3種類の混合酸化物としてもよいものである。 したがって、引用例1には、前記第一の透明導電層3a、及び前記第二の透明導電層3bは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのいずれか、または、それらの2種類もしくは3種類の混合酸化物としたものが記載されているといえる。 上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、結局、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。 「第一の透明基板1aの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第一の透明導電層3aと、第二の透明基板1bの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第二の透明導電層3bと、第一の透明導電層3aと第二の透明導電層3bを外側にして、前記第一の透明基板1aと前記第二の透明基板1bとの間に設けた粘着層6とから構成された、透明導電性積層体であって、 前記第一の透明基板1a、及び前記第二の透明基板1bは、環状ポリオレフィンフィルムであり、その厚さは部材の薄型化と基材の可撓性とを考慮し10μm以上200μm以下程度のものであり、 前記粘着層6は、前記第一の透明基板1aと前記第二の透明基板1bとを接着するための層であり、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂などのクッション性や透明性に優れた樹脂からなる、 前記第一の透明導電層3a、及び前記第二の透明導電層3bは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのいずれか、または、それらの2種類もしくは3種類の混合酸化物とした、 透明導電性積層体。」 (2)引用例2 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2008-292751号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 ア.「【0024】 つぎに、本発明の位相差フィルム、液晶パネルおよび液晶表示装置について、例を挙げて説明する。 【0025】 [A.位相差フィルム] 前述のように、本発明の位相差フィルムは、非液晶性ポリマーから形成された複屈折層を有し、前記位相差フィルムの屈折率楕円体は、nx≧ny>nzの関係を示し、前記複屈折層のヘイズは5%以下である。 【0026】 前述のように、本発明の位相差フィルムの形態は、例えば、透明高分子フィルムの上に、前記複屈折層が形成されているという形態であってもよい。前記位相差フィルムの前記屈折率楕円体は、nx=ny>nzでもよいし、nx>ny>nzでもよいが、好ましくは、nx=ny>nzである。」(5頁34?43行) イ.「【0044】 [C.透明高分子フィルム] 前記透明高分子フィルムとしては、特に制限されず、従来公知の透明高分子フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明高分子フィルムの材質の具体例としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂(例えば、商品名「ARTON」(JSR社製)、商品名「ZEONOR」、商品名「ZEONEX」(日本ゼオン社製)等)、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂や、これらの混合物等があげられる。また、液晶ポリマー等も使用できる。さらに、例えば、特開平2001-343529号公報(WO 01/37007号)に記載されているような、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物等も使用できる。具体例としては、例えば、イソブテンとN-メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物等である。これらの形成材料の中でも、例えば、透明フィルムを形成した際の複屈折率を、相対的により一層低く設定できる材料が好ましく、具体的には、前述の側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物が好ましい。前記の樹脂のなかで、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマーフィルム、ノルボルネン系ポリマーフィルム(「ARTON」(JSR)、「ZEONOR」、「ZEONEX」(日本ゼオン)等)が代表的なものとして挙げられる。 【0045】 前記透明高分子フィルムの厚みは、例えば、5μm以上300μm以下の範囲、好ましくは、30μm以上200μm以下の範囲、より好ましくは50μm以上100μm以下の範囲である。 【0046】 前記透明高分子フィルムの面内位相差値Re[590]は、例えば、0nm以上5nmの範囲であり、好ましくは、0nm以上3nm以下の範囲であり、より好ましくは、0nm以上1nm以下の範囲である。前記透明高分子フィルムの厚み方向の位相差値Rth[590]は、例えば、0nm以上15nm以下の範囲であり、好ましくは、0nm以上12nm以下の範囲であり、より好ましくは、0nm以上5nm以下の範囲であり、最も好ましくは、0nm以上3nm以下の範囲である。」(8頁34行?9頁18行) ウ.「【0087】 前記ノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルムとしては、例えば、市販のフィルムをそのまま用いることができる。あるいは、前記市販のフィルムに延伸処理および収縮処理の少なくとも一方の処理等の2次的加工を施したものを用いることができる。前記市販のノルボルネン系樹脂を含有する位相差フィルムとしては、例えば、JSR(株)製の商品名「アートンシリーズ(ARTON F、ARTON FX、ARTON D)、(株)オプテス製の商品名「ゼオノアシリーズ(ZEONOR ZF14、ZEONOR ZF15、ZEONOR ZF16)等が挙げられる。」(15頁32?39行) 上記引用例2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、結局、以下の事項(以下、「周知技術」という。)が周知であったと認められる。 「液晶パネルの位相差フィルムに用いられる透明高分子フィルムとしては、複屈折率を相対的により一層低く設定できる材料が好ましく、特に、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーフィルム、ノルボルネン系ポリマーフィルムが代表的なものとして挙げられ、このような位相差フィルムに用いられる透明高分子フィルムの波長590nmにおける面内位相差は、0nm以上5nmの範囲であり、好ましくは、0nm以上3nm以下の範囲であり、より好ましくは、0nm以上1nm以下の範囲の範囲であることが望ましい。」 4.対 比 本願発明と引用発明1とを対比する。 a.引用発明1の「粘着層6」は、「前記第一の透明基板1aと前記第二の透明基板1bとを接着するための層であり」、「透明性に優れた」ものであるから、本願発明の「透明接着層」に相当する。 b.引用発明1の「第一の透明基板1a」、及び「第一の透明基板1a」は、各々「環状ポリオレフィンフィルム」からなり、さらに、「第一の透明基板1aと第二の透明基板1bとの間」に「粘着層6」が設けられるものであるから、「第一の透明基板1aと第二の透明基板1b」は「粘着層」に対して積層されているといえ、引用発明1の「第一の透明基板1a」、及び「第二の透明基板1a」は、本願発明の「第1ポリシクロオレフィンフィルム」、及び「第2ポリシクロオレフィンフィルム」に相当する。 c.引用発明1の「第一の透明基板1aの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第一の透明導電層3a」、及び「第二の透明基板1bの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第二の透明導電層3b」は、互いが「外側に」なるように構成されているから、引用発明1の「第一の透明基板1aの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第一の透明導電層3a」、及び「第二の透明基板1bの片面に設けられた導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bを形成した第二の透明導電層3b」は、各々、本願発明の「第1ポリシクロオレフィンフィルムの、前記透明接着層とは反対側の面に形成された第1透明電極パターン」、及び「第2ポリシクロオレフィンフィルムの、前記透明接着層とは反対側の面に形成された第2透明電極パターン」に相当する。 d.引用発明1の「透明導電性積層体」は、該「透明導電性積層体」を構成する「第一の透明基板1a」、及び「第二の透明基板1b」の厚さが、「10μm以上200μm以下」の「環状ポリオレフィンフィルム」であり、また、「粘着層」は「第一の透明基板1a」、及び「第二の透明基板1b」を接着するための層であるから極めて薄い層と認められ、さらに、「透明導電性積層体」の他の構成要素である「第一の透明導電層3a」、「第二の透明導電層3b」も、薄膜であるから、「透明導電性積層体」全体もフィルム状のものと認められることから、引用発明1の「透明導電性積層体」は、本願発明の「透明導電性フィルム」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1とは次の点で一致、ないし相違している。 (一致点) 「透明接着層と、 前記透明接着層の一方の面に積層された第1ポリシクロオレフィンフィルムと、 前記透明接着層の他方の面に積層された第2ポリシクロオレフィンフィルムと、 前記第1ポリシクロオレフィンフィルムの、前記透明接着層とは反対側の面に形成された第1透明電極パターンと、 前記第2ポリシクロオレフィンフィルムの、前記透明接着層とは反対側の面に形成された第2透明電極パターンとを有する、 透明導電性フィルム。」 (相違点) 本願発明では、「前記第1ポリシクロオレフィンフィルムの面内の位相差値および前記第2ポリシクロオレフィンフィルムの面内の位相差値が、いずれも波長590nmにおいて20nm以下である」のに対して、引用発明1では、「第一の透明基板1a」及び「第二の透明基板1b」に関して、面内の位相差について特定がされていない点。 5.判断 表示画面の前面に設けられ、表示画面を透過して見るタッチパネルなどに用いられる透明フィルムにおいては、光学特性として画面に色むらが発生しないように、面内位相差が小さいもの(低複屈折性)が要求されることは、技術常識(例えば、特願2002-212312号公報(特に、段落【0002】-【0005】等参照)、特開2011-122012号公報(特に、段落【0002】、【0100】-【0110】等参照)、特開2002-313121(特に、段落【0045】-【0049】、【0070】、【0085】、【0097】等参照))である。 また、引用例2に記載されるように、液晶パネルの位相差フィルムに用いられる透明高分子フィルムとしては、屈折率を相対的により一層低く設定できる材料が好ましく、特に、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーフィルム、ノルボルネン系ポリマーフィルムが代表的なものとして挙げられ、このような位相差フィルムに用いられる透明高分子フィルムの波長590nmにおける面内位相差は、0nm以上5nmであり、好ましくは、0nm以上3nm以下の範囲であり、より好ましくは、0nm以上1nm以下の範囲の範囲であることが望ましいことは周知技術である。 引用発明1における「環状ポリオレフィンフィルム」である「第一の透明基板1a」及び「第二の透明基板1b」として、どのような「環状ポリオレフィンフィルム」を採用するかは、当業者が技術常識を考慮して適宜選択可能な事項である。 そして、表示画面の前面に設けられる透明フィルムの光学特性としては、表示画面に色むらが発生しないように面内位相差が小さい(低複屈折性)ものが望ましいという上記の技術常識を考慮すれば、引用発明1の「第一の透明基板1a」及び「第二の透明基板1b」の「環状ポリオレフィンフィルム」として、低複屈折率のものを採用することに何等困難性はなく、引用例2に記載された、液晶パネルの透明高分子フィルムとして周知である、複屈折率の相対的に低いノルボルネン系ポリマーフィルム(ポリシクロオレフィン)であり、波長590nmにおける面内位相差が0nm以上5nmの範囲であるものを採用することは当業者が容易に想到し得た事項である。 以上のことは、引用発明1において、相違点に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味する。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1の記載事項及び周知技術から当業者が予想し得る範囲を超えるものとはいえない。 6.むすび 以上のとおりであって、本願発明は、上記引用発明1、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-07 |
結審通知日 | 2016-06-09 |
審決日 | 2016-06-28 |
出願番号 | 特願2011-228660(P2011-228660) |
審決分類 |
P
1
8・
571-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 浜岸 広明、猪瀬 隆広 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 千葉 輝久 |
発明の名称 | 透明導電性フィルム |
代理人 | 楠本 高義 |